説明

処置用内視鏡

【課題】滅菌作業が行いやすく、高い清潔度を確保して手技を行うことができる処置用内視鏡を提供する。
【解決手段】本発明は、可撓性を有し、湾曲操作が可能なシースと、シースよりも先端側を観察する観察手段と、シースの先端から突出して湾曲操作が可能なアーム部302A、302Bと、アーム部302A、302Bを操作するための操作部1350と、アーム部302A、302B及び操作部1350に接続され、操作部1350の操作をアーム部302A、302Bに伝達する伝達部材とを備えた処置用内視鏡1300であって、伝達部材は、着脱自在に操作部302A、302Bに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内で各種手技を行うための処置用内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の臓器に対して観察や処置等の医療行為を行う場合には、腹壁を大きく切開する代わりに、腹壁に開口を複数開けて、開口のそれぞれに腹腔鏡や、鉗子といった処置具を挿入して手技を行う腹腔鏡手術が知られている。このような手術では、腹壁に小さい開口を開けるだけで済むので、患者への負担が小さくなるという利点がある。
【0003】
近年では、さらに患者への負担を低減する手法として、患者の口や鼻、肛門等の自然開口から軟性の内視鏡を挿入して手技を行うものが提案されている。このような手技に使用される処置用内視鏡の一例が、特許文献1に開示されている。
【0004】
ここで開示されている処置用内視鏡は、患者の口から挿入される軟性の挿入部に配された複数のルーメンに、先端が湾曲可能なアーム部がそれぞれ挿通されている。これらのアーム部にそれぞれ処置具を挿通することにより、処置部位にそれぞれの処置具を異なる方向からアプローチさせることができ、一つの内視鏡を体内に挿入した状態で、複数の手技を連続して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0065397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の処置用内視鏡は、様々な手技を可能にするためにアーム部の複雑な操作を可能にしようとすると、特にアーム部を操作するための操作部が大型化しやすく、その形状や構造も複雑化しやすい。当該処置用内視鏡を用いて行う手技には、外科手術と同様に高い清潔度が要求されるため、処置用内視鏡は滅菌される必要があるが、上述のように操作部が大型化、複雑化した場合は、滅菌作業が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、滅菌作業が行いやすく、高い清潔度を確保して手技を行うことができる処置用内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の処置用内視鏡は、可撓性を有し、湾曲操作が可能なシースと、前記シースよりも先端側を観察する観察手段と、前記シースの先端から突出して湾曲操作が可能なアーム部と、前記アーム部を操作するための操作部と、前記アーム部及び前記操作部に接続され、前記操作部の操作を前記アーム部に伝達する伝達部材とを備えており、前記伝達部材は、着脱自在に前記操作部に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処置内視鏡によれば、滅菌作業が行いやすく、高い清潔度を確保して手技を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の処置用内視鏡の基本構造の例を示す全体図である。
【図2】操作部の拡大図である。
【図3】第1操作部の軸線方向に沿った図2のAA矢視図である。
【図4】図3のAB矢視図である。
【図5】図4のAC−AC断面図である。
【図6】図4のAD−AD断面図である。
【図7】一方の回動軸の分解図である。
【図8】他方の回動軸と支持片及び湾曲ワイヤを示す斜視図である。
【図9】図8のAE−AE断面図である。
【図10】第1操作スティック及び処置具の操作部を上方からみた平面図である。
【図11】図10のAF−AF断面図であって、処置具を挿入する前の図である。
【図12】ピストンの斜視図である。
【図13】図6の第1操作スティックを拡大して示す断面図である。
【図14】チャンネルを拡大して示す図である。
【図15】処置具を示す平面図である。
【図16】図15のAG−AG断面図である。
【図17】リングに保護部材を装着する様子を説明する図である。
【図18】リングに保護部材を装着した図である。
【図19】(a)及び(b)は、いずれもカムの斜視図である。
【図20】図19(b)のAH矢視図である。
【図21】図15のAI−AI断面図である。
【図22】図15のAJ−AJ断面図である。
【図23】装置具を第1操作スティックの挿入するときのカムとピストンと連結板の動作を説明する模式図である。
【図24】カムがピストンを押し上げた図である。
【図25】連結板が後退可能になったときの図である。
【図26】カムが連結板の2つの溝の間にあるときの図である。
【図27】カムが第2の溝に係合した図である。
【図28】処置具を引き抜くときにカムでピストンを押し上げる動作を説明する図である。
【図29】カムを回転させてピストンを押し上げた図である。
【図30】第2湾曲用スライダに連動する操作部を側部に配置した操作部を示す図である。
【図31】図30に示す構成において、第2湾曲用スライダと操作部を連結させる構成を示す断面図である。
【図32】カムの変形例を示す図である。
【図33】処置具の送り操作を説明する図である。
【図34】処置具の送り操作を説明する図である。
【図35】処置用内視鏡とオーバーチューブを併用した場合の図である。
【図36】本発明の第1実施形態の処置用内視鏡の構成を示す図である。
【図37】同処置用内視鏡の操作部を示す図である。
【図38】第1ワイヤユニットを示す斜視図である。
【図39】同第1ワイヤユニットを分解して示す図である。
【図40】同第1ワイヤユニットを、ユニットカバー及びワイヤカバーを除いて示す図である。
【図41】同第1ワイヤユニットのベース部に挿通されたプーリの断面図である。
【図42】同第1ワイヤユニットを、ユニットカバーを除いて示す図である。
【図43】同第1ワイヤユニット及び第1被装着部を示す図である。
【図44】図43の断面図である。
【図45】装着部の嵌合穴及び第2保持部の嵌合部材の動作を示す断面図である。
【図46】装着部と第2保持部とが嵌合した状態を示す図である。
【図47】第2ワイヤユニットを、ユニットカバー及びワイヤカバーを除いて示す図である。
【図48】ワイヤユニットを操作部に装着するときの動作を示す図である。
【図49】第1ワイヤユニットが第1被装着部に装着された状態を示す断面図である。
【図50】本発明の変形例の処置用内視鏡における装着部の嵌合穴及び第2保持部の嵌合部材の動作を示す断面図である。
【図51】本発明の変形例におけるワイヤユニットを示す図である。
【図52】同ワイヤユニットを操作部に装着する動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。まず、本発明の処置用内視鏡の基本構造について説明するが、当該基本構造については、本出願と関連する米国出願11/331,963、11/435,183、及び11/652,880にも開示されている。
【0012】
[基本構造]
本発明の処置用内視鏡は、処置に必要なところ、つまりアーム部の操作及び処置具の操作を行う部分を抽出した操作部と、内視鏡の操作を行う内視鏡操作部とが機能分割され、操作部を内視鏡から離れた位置で操作可能に構成されている。内視鏡操作部に操作部を内蔵させた場合には、術者が全ての操作を行わなければならないので操作が煩雑になっていたが、この実施の形態では2人の操作者を内視鏡操作と処置する操作に役割分担することが可能になり、操作が容易になる。
【0013】
図1は、本発明の処置用内視鏡の基本構造の一例を示す図である。図1に示すように、本例の処置用内視鏡501は、内視鏡操作部502の一端から内視鏡挿入部503が一体に延設されている。内視鏡挿入部503は、長尺で可撓性を有し、その構成は、米国出願11/435,183や11/652,880に記載されたものと同様である。すなわち、内視鏡挿入部503は、シース301を有し、その先端には第一、第二のアーム部302A、302Bが設けられている。各アーム部302A、302Bの先端からは、処置具504A、504Bの処置部505A、505Bが各々突出している。各アーム部302A、302Bには、先端側から順番に第一湾曲部306と第二湾曲部308が形成されており、第一のシース301に形成された第三湾曲部203Bと協働させることで、体内で湾曲操作が可能になっている。第一、第二アーム部302A、302Bは、米国出願11/652,880に記載されるように、シース301の先端から突出する別のシース内に挿通されてもよい。
なお、図1では、理解を容易にするために操作部520を拡大させて図示している。
【0014】
内視鏡操作部502は、内視鏡挿入部503に連なる一端部側の側面に鉗子栓510が設けられている。鉗子栓510は、第一のシース301内に形成された作業用チャンネルに連通しており、ここから不図示の別の処置具を挿入すれば、内視鏡挿入部503の先端から別の処置具を突出させることもできる。内視鏡操作部502には、この他にもスイッチ511や、アングルノブ512や、不図示の制御装置に接続されるユニバーサルケーブル513が配設されている。スイッチ511は、例えば、第一のシース301内に形成されたチャンネルを通して送気や、送水、吸引を行う際に操作する。アングルノブ512は、第三湾曲部203Bを軸線に対して4方向に湾曲させる際に使用する。
そして、内視鏡操作部502の他端部からは、長尺で可撓性を有する連結シース515が延設されており、連結シース515の端部に操作部520が設けられている。
【0015】
操作部520は、連結シース515を固定するベース521を有し、ベース521に対して第一の操作ユニット530Aと、第二の操作ユニット530Bが取り付けられている。第一の操作ユニット530Aは、第一アーム部302Aに通される処置具504Aの操作部506Aが挿入される操作スティック531Aを有し、操作スティック531Aを介して操作部506Aが軸線方向の進退自在に、かつ軸線を中心にした4方向に傾倒自在に支持される。第二の操作ユニット530Bは、第二アーム部302Bに通される処置具504Bの操作部506Bが挿入される操作スティック531Bを有し、操作スティック531Bを介して操作部506Bが軸線方向の進退自在に、かつ軸線を中心に4方向に傾倒自在に支持される。なお、操作部520は、手術ベッドなどに固定して使用されるので、第一、第二操作ユニット530A、530Bを操作することが可能である。
【0016】
図2にさらに拡大して示すように、これら操作ユニット530A、530Bは、連結シース515側が近接するように傾斜して配置されており、2つの操作部506A、506B(又は2つの操作スティック531A、531B)が20°〜100°の範囲で開いて配置される。操作部506A、506Bが操作者に向かって開くように角度を持って配置されることで、操作者が楽な姿勢で操作でき、操作性が良好になる。これに加えて、連結シース515側の操作部520の幅が縮小できる。また、米国出願11/652,880に示すように、第一のシース301に取り付けられた観察デバイス(観察手段)の対物レンズを通して取得する内視鏡画像における各アーム部302A、302Bの配置(左右方向)と、2つの操作ユニット530A、530Bの配置(左右方向)を一致させることができるようになる。操作者の感覚と体内での実際の動作が対応付け易くなり、手技が容易になる。さらに、操作者は操作スティック531A、531B及び処置具504A、504Bの操作部506A、506Bのみを操作するので、操作に要する力量が軽く済む。
なお、必要に応じて、左右方向の対応や上下方向の対応が逆転するように配置すると、腹腔鏡用処置具の操作に近い感覚にすることが可能である。
【0017】
第1の操作ユニット530Aの構成について説明する。
図2から図4に示すように、第1の操作ユニット530Aは、ベース521に固定されたブラケット551Aを有する。ブラケット551Aは、開口552Aが第1の操作ユニット530Aの中心線に略直交するように固定されている。ブラケット551Aの左右方向の側面には、第一回動機構561Aが取り付けられている。第一回動機構561Aは、ブラケット551Aの開口552Aを挟むように固定された一対の支持片562A、563Aを有し、これら支持片562A、563Aのそれぞれに回動軸564A、565Aが1つずつ配置されている。回動軸564A、565Aは、同軸に配置されており、これら一対の回動軸564A、565Aによってフレーム567Aがブラケット551に対して回動自在に支持されている。フレーム567Aは、四角形を有し、開口が第1の操作ユニット530Aの中心線に直交する向きに配置されている。フレーム567Aには、操作スティック531Aが挿入されている。操作スティック531Aは、回動軸564A、565Aの回動方向にはフレーム567Aと係合し、回動軸564A、565Aの軸線方向には独立して傾倒可能に挿入されている。
【0018】
図5に示すように、操作スティック531Aの先端部571Aは、フレーム567Aを超えて伸びている。先端部571Aには、ボールローラ572Aが設けられている。ボールローラ572Aは、操作スティック531Aの中心線を挟んで1つずつ設けられており、2つのボールローラ572Aの中心を結ぶ線分と第一回動機構561Aの回動軸564A、565Aの軸線は図の状態(操作スティック531Aを傾倒させていない状態)では平行になっている。回動軸564A、565Aからボールローラ572Aまでの距離Laaは、例えば、50〜200mmになっている。
さらに、ボールローラ572Aを挟み、かつボールローラ572Aに摺接するように第二回動機構581Aのフレーム580Aが配置されている。フレーム580Aは、一対の回動軸584A、585Aによって回動自在に支持されている。一対の回動軸584A、585Aは、同軸上に配置され、その軸線は第一回動機構561Aの一対の回動軸564A、565Aと直交し、かつ第1の操作ユニット530Aの中心線とも直交するように配置されている。これら回動軸584A、585Aは、ブラケット551Aの上下方向の側面に1つずつ固定された支持片582A、583Aに回動自在に支持されている。
【0019】
ここで、第二回動機構581Aの回動軸584A、585Aの構成について説明する。回動軸584A、585Aは同様の構成になっているので、回動軸584Aを例にして説明する。
図6及び図7に示すように、回動軸584Aは、支持片582Aに固定される軸受け591を有する。軸受け591は、円筒の一端にフランジを形成してあり、フランジに穿設した孔にボルトを通して支持片582Aに固定される。軸受け591の筒部の内側には2つのベアリング592、593の外輪が軸線方向に離間して圧入されており、これらベアリング592、593を介して駆動軸594が軸受け591に対して回動自在に支持される。駆動軸594は、細径化された部分が軸受け591を貫通している。
【0020】
駆動軸594の一方の端部は、軸受け591の外径に略等しい径まで拡径されており、駆動軸594の外周から軸受け591の円筒部の外周にかけてコイルスプリング596が巻装されている。コイルスプリング596の両方の末端596C、596Dは、折り曲げられている。一方の末端596Cは、駆動軸594の端部に形成されたフランジ594Cに刻んだ溝に係合させられている。コイルスプリング596の素線形状は角形状である。角形状であれば、正方形でも長方形でも良い。
【0021】
駆動軸594のフランジ594C側の端面は、中心軸上に円柱状の突起594Dが突設されている。突起594Dの周囲には、複数のネジ孔が等間隔に穿設されている。これらネジ孔のうち、周方向に180度ずれた2つのネジ孔に回転ピン597が1つずつ螺入されている。突起594Dには、ベアリング598の内輪が圧入固定される。ベアリング598の外周には、軸受け599が装着される。軸受け599は、フランジが形成された円筒部599Dを有する。円筒部599Dには、予めリング押さえ部材600が挿入されており、サラバネ601を介して与圧ネジ602でリング押さえ部材600を駆動軸594に向けて押圧している。軸受け599のフランジには、複数の貫通孔599Cが周方向に等間隔に形成されている。これら貫通孔599Cの配置は、駆動軸594のネジ孔の配置と等しい。貫通孔599Cの径は、回転ピン597の頭部の外径より大きく、遊びを持たせている。
【0022】
さらに、軸受け594のフランジ594C及びコイルバネ576を覆うように円筒形のカバー603が装着されている。カバー603の基端部には切り欠き603Cが形成されており、ここにコイルスプリング596の他方の末端596Dが引っ掛けられる。そして、軸受け599でカバー603から突出する円筒部599Dがピンでフレーム580Aに固定される。
【0023】
ここで、コイルスプリング596は、初期状態では駆動軸594と軸受け591のそれぞれの外周を締め付けているので、駆動軸594と軸受け591がコイルスプリング596を介して連結されている。軸受け591は支持片582Aに固定されているので、駆動軸594はコイルスプリング596が締め付けられる方向には回転できない。コイルスプリング596が緩む方向には回転できる。これに対して、操作者が操作スティック531Aを、コイルスプリング596を締め付ける方向に傾倒させると、これに当接させられているフレーム580Aが傾斜する。フレーム580Aが傾斜すると、回動軸584Aの軸受け594及びカバー603が回動させられる。カバー603が回転することで、コイルスプリング596が緩められ、駆動軸594と軸受け591のロックが解除される。その結果、駆動軸594が回動可能になってスプロケット595に回転が伝達されるようになる。このように、操作スティック531A側の回動動作を伝達し、スプロケット595側からコイルスプリング596を締め付けるような回動動作は伝達しないように本構成を回動軸585Aに操作スティック531Aに対して対称に配置することにより、操作者の操作は伝達するが、操作者が操作を停止したときはスプロケット595からの反力が維持されてその位置が維持されるようになり、操作が楽になる。
【0024】
このようなスプリングクラッチに用いられるコイルスプリング596は、高硬度な材料から製造する必要があるが、鉄などのように比重が高い材料を用いると操作部520の重量増加の原因になる。このため、高硬度でありながらも比重の軽い材料、例えば、ジュラルミン(2000番)や、超々ジュラルミン(7000番)を使用すると良い。
【0025】
なお、コイルスプリング596を緩めてロックを解除したときは、コイルスプリング596を介して回転を伝達させると、コイルスプリング596に過大な力が作用してしまう。このような状態が持続しないように、ロックを解除した後に、駆動軸594の回転ピン597の頭部が軸受け594の貫通孔599Cの周壁に当接するように遊びを設定している。回転ピン597を使った回転伝達を行うことで、コイルスプリング596の破断を防止している。このようにして構成されるスプリングクラッチは、本実施態様に限定されず、処置具の回転機構やオーバーチューブの回転機構にも用いることができる。
【0026】
また、駆動軸584は、軸受け591のフランジ側から突出しており、ベアリング613、614によって中空軸612に回転自在に支持されている。中空軸611には、スプロケット595が固定されている。なお、スプロケット595の代わりに、ワイヤを押し引きする回転体として、例えばワイヤプーリなどを使用しても良い。
【0027】
中空軸612は、軸受け591に対してもベアリング592で回転自在になっている。駆動軸594及び中空軸612は、スプロケット595を越えて突出し、トルクリミッタ611内に挿入されている。トルクリミッタ611は、中空軸612に固定されるアウター611Cと、駆動軸594が固定されるインナー611Dを有し、予め設定されたトルクがかかるまではインナー611Dとアウター611Cが一体に回転する。設定トルクを越えると、インナー611Dに対してアウター611Cが滑って回転が伝達されなくなる。
【0028】
ここで、図8に回動軸585A側の構成として示すように、スプロケット595は、支持片583Aに形成された円形の凹部621に回転自在に収められている。スプロケット595の歯には、チェーン622が巻き掛けられている。支持片583Aには、凹部621に連なってチェーン622の端部を引き込み可能な溝623が形成されている。溝623は、凹部621より深く刻まれている。溝623と凹部621の間に段差624を設けることでチェーン622がスプロケット595と凹部621の間に巻き込まれることなく、溝623に案内される。
チェーン622の一方の端部には、第1湾曲ワイヤ315Aが固定されている。第1湾曲ワイヤ315Aは、図1において第一アーム部302Aの第一湾曲部306を右方向に湾曲させるためのワイヤである。
【0029】
図8に示すように、第1湾曲ワイヤ315Aは、支持片583Aの溝623の端部に配置された調整具641に引き込まれ、調整具641に連結されたコイルシース642内を通ってコイルシース642と共に連結シース515に導入され、第一アーム部302Aまで引き回されている。図8及び図9に示すように、調整具641は、支持片583Aに固定されるコイルベース651を有する。コイルベース651は、ネジ孔651Aが形成されており、ネジ孔651Aには外周にネジが刻まれた調整軸652が螺入されている。調整軸652は、有低筒形状を有し、底部に相当するエンド部652Aからコイル止め具653が挿入されている。コイル止め具653は、フランジ状の突起653Aをエンド部652Aの内面に係合させることで抜け止めされている。反対方向への抜け止めは、ロックネジ654を外周に装着することで行われている。コイル止め具653には、コイルシース642の端部が固定されている。第1湾曲ワイヤ315Aは、調整軸652からコイル止め具653を通ってコイルシース642に通される。処置用内視鏡501を使用する過程で第1湾曲ワイヤ315Aが延びて弛むことがあるが、このような場合には、調整軸652の孔652Bに治具を挿入して回転させると、コイルシース642が調整軸652ごと軸線方向に進退する。コイルシース642を前進させることでコイルシース642に対して第1湾曲ワイヤ315Aを引っ張る状態になって弛みが調整される。ネジ調整で弛み調整が行えるようになるので、装置を分解等する必要がなくなる。調整軸652とコイル止め具653は回転自在に係合しているので、調整軸652を回転させてもコイルシース642が回ることはない。
【0030】
なお、回動軸584A側のスプロケット595も同様に、支持片582Aに収容され、チェーン622が巻き掛けられている。チェーン622には図示しない第1湾曲ワイヤが取り付けられている。第1湾曲ワイヤは、図1において第一アーム部302Aの第一湾曲部306を左方向に湾曲させるためのワイヤである。支持片582Aにも調整具641が設けられており、第1湾曲ワイヤを通すコイルシース642を進退させて弛みを調整できるようになっている。第1湾曲ワイヤは、コイルシース642に挿入され、コイルシース642と共に連結シース515に導入され、第一アーム部302Aまで引き回される。
【0031】
ここで、前記したように、回動軸584A、585Aにトルクリミッタ611が設けられているので、操作スティック531A側から入力される力が大きすぎると、回動軸585Aの回転がスプロケット595に伝達されなくなる。その結果、第1湾曲ワイヤ315Aに過大な力がかかることがなくなる。仮に、トルクリミッタ611を設けない場合には、過大な力が第1湾曲ワイヤ315Aにかかって破断する可能性が考えられるが、トルクリミッタ611で最大トルクを制御することで第1湾曲ワイヤ315Aの破断が防止される。また、軸方向でトルクリミッタ611と、スプロケット595と、回動軸564A、565Aを、外側からこの順番で配置したので、支持片582A、583A間の距離を短くでき、ブラケット551Aを小型化することができる。レイアウトの自由度が増加すると共に、小型軽量化にも資する。
【0032】
次に、第一回動機構561Aについて図5を主に参照して説明する。
一方の回動軸564Aは、回転ピン597を介して駆動軸594がフレーム567Aに回転方向に係合するように取り付けられている他は、第二回動機構581Aの回動軸584Aと同様の構成になっている。同様に、他方の回動軸565Aは、回転ピン597を介して駆動軸594がフレーム567Aに回転方向に係合するように取り付けられている他は、第二回動機構581Aの回動軸585Aと同様の構成になっている。
【0033】
さらに、一方の回動軸564Aのスプロケット595には、チェーン622を介して図示しない第1湾曲上方操作ワイヤが連結されている。他方の回動軸565Aのスプロケット595には、チェーン622を介して図示しない第1湾曲下方操作ワイヤが連結されている。第1湾曲下方操作ワイヤと第1湾曲上方操作ワイヤは、図72において第一アーム部302Aの第一湾曲部306をそれぞれ下方向、上方向にそれぞれ湾曲させるためのワイヤである。各支持片562A、563Aにも調整具641が設けられており、第1湾曲下方操作ワイヤや第1湾曲上方操作ワイヤを通すコイルシース642を進退させて弛みを調整できるようになっている。
【0034】
次に、操作スティック531Aについて説明する。
図5及び図6、図10に示すように、操作スティック531Aは、ボールローラ572Aが取り付けられる先端部に円筒形のシャフト701、702、703が3本束ねられるように固定されている。中央のシャフト701は、他の2つのシャフト702,703より長く、他の2つのシャフト702、703は、第1回動機構561Aのフレーム567Aに当接して回動支点となる突き当て部710までしかないのに対し、中央のシャフト701は突き当て部710を越えて延びている。
【0035】
中央のシャフト701には、第2湾曲用スライダ711が軸線方向に進退自在に取り付けられている。さらに、シャフト701の基端には、ラチェットベース712が固定されている。第2湾曲用スライダ711は、初期状態で第2湾曲用スライダ711に接続された連結板713によってラチェットベース712に連結されており、進退不能になっている。
【0036】
図11に示すように、ラチェットベース712は、中央に処置具504Aの操作部506Aを挿入するときの入口となる貫通孔712Aが形成されている。さらに、ラチェットベース712の外周部の一部712Bが軸線方向に直交する方向の延出している。ここに親指を掛けると、第2湾曲用スライダ711の進退がスムーズに行える。ラチェットベース712内には、ピストン715が径方向に摺動可能に収容されている。ピストン715は、コイルバネ716によって軸線方向に直交する径方向に付勢されており、先端の突起715Aが処置具504Aの挿入経路となる貫通孔712A内に突出している。ピストン715には、スリット717が形成されており、スリット717内に係合片717Aが形成されている。この係合片717Aには、ラチェットベース712を貫通するスリット712Cから挿入された連結板713の第1の溝718が係合させられている。なお、図12に示すように、ピストン715には、径方向に平行な縦溝715を刻んでも良い。縦溝717Cにラチェットベース712の外面から螺入するクランピングボルト716A(図10参照)の先端部を挿入させることで、ピストン715の回転を防止できる。これにより、ピストン715と連結板713がかじらないようになって、後述するピストン715の動作や連結板713の動作がスムーズになる。
【0037】
連結板713は、先端側が支点ピン721で第2湾曲用スライダ711に連結されており、ここからラチェットベース712に向かって軸線に略平行に延びている。第1の溝718は、ピストン715の係合片717Aが進入可能な凹形状を有し、第1の溝718の先端側の壁面が途中から傾斜面718Aになっている。傾斜面718Aによって、第1の溝718の幅が途中から先端側に徐々に拡げられている。第1の溝718よりさらに先端側には、第2の溝719が刻まれている。第2の溝719は、ピストン715の係合片717Aが進入可能な凹形状を有する。第2の溝719の深さは、第1の溝718より浅い。第2の溝719の基端側の壁面は、傾斜面719Aになっている。傾斜面719Aによって、第2の溝719の幅が基端側に徐々に拡げられている。ここで、第1の溝718は、図1に示す第一アーム部302Aの第二湾曲部308がストレートになる位置に形成されている。第2の溝719は、第二湾曲部308が曲がって第一アーム部302Aを開かせる位置に形成されている。このため、ピストン715に第1の溝718を係合させるとアーム部302Aが閉じ、第2の溝719を係合させると第二アーム部303Aを開かせることができる。前記したように溝718、719には傾斜面718A、719Aが形成されているので、ピストン715と溝718、719の係合を解除するときに小さい力で係合を解除することができる。ピストン715と溝718、719の係合位置の切り替えがスムーズになる。
図23に示すように、処置具504Aが挿入されていないときは、図13に示すバネ791の力でスライダ711と連結板713が先端側に位置し、第1の溝718とピストン715は係合する。図25に示すように、処置具504Aが挿入されるとピストン715が処置具504Aの操作部506Aによって押し上げられる。この状態では、傾斜面718Aを係合片717Aが登れる高さになっているので、スライダ711を引くことができ、第2湾曲部308を開くことができる。これは、第2湾曲部308が開いた状態では処置具504Aの先端が通過し難いため、処置具504Aが挿入された状態でないとスライダ711を引けないようにしてある。図27に示すように、スライダ711が基端側に引かれた状態では、係合片717Aが傾斜面719Aに接している。スライダ711は、図13に示すように、後述する第2湾曲ワイヤ316A、316Bのテンションによって先端側に付勢されている。図28から図29のようにピストン715を持ち上げるため、傾斜面719Aが90°に近い角度だと強い力が必要であり、水平に近い角度だと第2湾曲ワイヤ316A、316Bのテンションで勝手にピストン715が持ち上がってスライダ711が先端側へ移動して第2湾曲部308が閉じてしまう。傾斜面719Aの角度αは、60°≦α<90°が適当である。
【0038】
第2湾曲用スライダ711は、操作スティック531Aの軸線に同軸に配置されている。第1の操作ユニット530Aがコンパクトになる。基端側に指掛け用の縁部711Aが形成されている。シャフト701に対してスムーズに摺動できるように、シャフト701に接する部分にリニアストローク722が内蔵されている。
【0039】
図13に示すように、第2湾曲用スライダ711の先端側には、パイプ731が軸線を挟んで左右に一本ずつ取り付けられている。これらパイプ731の中には、第2湾曲ワイヤ316A、316Bが1本ずつ通されている。第2湾曲ワイヤ316A、316Bは、第2湾曲用スライダ711内で係止部材732に固定されており、第2湾曲ワイヤ316A、316Bが第2湾曲用スライダ711から抜けないようになっている。第2湾曲用スライダ711の両側に第2湾曲ワイヤ316A、316Bを対称に配置したことで第2湾曲用スライダ711にかかる力が均等になって動作がスムーズになる。
【0040】
パイプ731は、さらに先端側にある2つのシャフト702、703に1つずつ挿入されている。パイプ731及び第2湾曲ワイヤ316A、316Bが挿入される側部のシャフト702、703は、基端側に受け部材741を有する。受け部材741には別のパイプ742が先端側から挿入されており、パイプ742内にパイプ731及び第2湾曲ワイヤ316A、316Bが通されている。パイプ742の先端は、コイル受けケース743に支持されている。コイル受けケース743は、筒状のプッシャ744の孔内にネジ止めされている。プッシャ744の基端には、コイルバネ745の一端部が当接させられている。コイルバネ745の他端部は、受け部材741に突き当てられており、コイルバネ745によってプッシャ744が先端側に付勢されている。第2湾曲ワイヤ316A、316Bを引く力が過大になったときには、相対的にコイルシース747が手元側へ移動すべく力が加わり、プッシャ744を介してコイルバネ745が圧縮される。コイルバネ745を予め所定の力を発する長さに圧縮した状態でセットしておけば、その所定の力を超えたときにコイルバネ745が縮み始める。コイルバネ745が縮んだ分だけ第2湾曲ワイヤ316A、316Bをさらに引くことが可能になるので、第2湾曲ワイヤ316A、316Bに過大の力がかからないようになる。また、過大な力がかかったときでもコイルバネ745が縮むことができる間は第2湾曲ワイヤ316A、316Bに加わる力が急激に増大することはなく、オーバーロード量が抑えられるので切れることはない。なお、コイルバネ745は、シャフト702、703の先端側から螺入されるプッシャ押さえ部材746によって圧縮されている。プッシャ押さえ部材746の押し込み量でプッシャ744の初期位置が調整できるので、コイルバネ745の強度の個体差や、湾曲に必要な力量の固体差を調整することができる。
【0041】
ここで、パイプ742からは、第2湾曲ワイヤ316A、316Bのみが引き出されている。第2の湾曲ワイヤ316A、316Bは、コイル受けケース743内でコイルシース747に挿入され、コイルシース747と共に連結シース515に導入され、第二湾曲部308まで引き回される。コイルシース747の基端は、コイル受けケース743内でパイプ状のコイル受け748にロー付け等で固定されている。コイル受けケース743には、先端側からコイル受け押さえ部材749が螺入されている。コイル受け押さえ部材749はコイル受け748を回転自在に係止するので、コイルシース747がコイル受けケース743から抜け出ることはなく、コイルシース747が捩れることもない。コイルシース747と第2湾曲ワイヤ316A,316Bの相対的な長さに組立上の誤差が生じたり、第2湾曲ワイヤ316A、316Bが伸びて誤差が生じたりすることがあるが、このような場合には、プッシャ744に対するコイル受けケース743の螺入量を調整することで誤差を調整することができる。
【0042】
図13及び図14に示すように、中央のシャフト701内には、処置具504Aを通すチャンネル801が内蔵されている。チャンネル801は、基端側から、処置具504Aを受け入れる受け部802と、受け部802と先端部571Aの間に挿入されるコイルスプリング803と、コイルスプリング803内に配置された伸縮式のパイプ804とを有する。受け部802は、処置具504Aを通すときの入口になる孔802Aが中央に形成されている。孔802Aは、基端側の開口径が広がるテーパ状になっている。孔802Aをロート状にすることで、処置具504Aの挿入部507Aの遠位端を挿入し易くなっている。伸縮式のパイプ804は、同軸上に配置された径の異なる3つのパイプ805、806、807を有し、パイプ805、806には抜け止め808が取り付けられている。パイプ806、807には、抜け止め808に係止されるストッパ809が取り付けられている。つまり、3つのパイプ805〜807が略重なったときに伸縮式のパイプ804が最も短くなる。抜け止め808にストッパ809が係止するまで各パイプ805〜807を引き伸ばしたときに、伸縮式のパイプ804が最も長くなる。コイルスプリング803は、圧縮された状態が図示されているが、無負荷状態では復元し、受け部802がシャフト701の基端近傍で、ピストン715の遠位側近くまで移動する。処置具504Aが挿入されていない状態では、受け部802がシャフト701の基端に配置されるので、処置具504Aの挿入部507Aを挿入し易くなる。受け部802は、処置具504Aの挿入時に、処置具504Aの操作部506Aの先端部に押されて前進し、図13に示す位置まで移動させられる。なお、伸縮式のパイプ807は、3重管構造に限定されない。
【0043】
3つのシャフト701〜703を連結させる先端部571A内には、処置具504Aを通すスペースが確保されている。処置具504Aが挿入される経路中には、気密弁811が設けられており、術中に処置具504Aを抜いても体内側の気密が保たれるようになっている。気密弁811は、例えば、シャフト701に連通する孔571Bを密閉するように配置されたゴムシートからなる。ゴムシートには、処置具504Aの挿入部を挿入可能な切り込みが入れられている。処置具504Aを通すときは、切り込みを押し開かれる。処置具504Aを抜いたときは、切り込みが閉じて気密が保たれる。気密弁811の固定には、押さえ部材812が用いられている。押さえ部材812をネジで先端部571Aに固定すれば、ゴムシートからなる気密弁811を容易に交換できる。なお、処置具504Aは、押さえ部材812内に形成された孔812Aを通って体内に導入されるが、孔812Aを先端側に向かってテーパ状にすることで処置具504Aを挿入し易くしている。
【0044】
第2の操作ユニット530Bの構成について説明する。
第2の操作ユニット530Bは、操作部520の左右方向の中心線に対して第1の操作ユニット530Aと対称な構成になっている。第2の操作ユニット530Bの構成要素は、第1の操作ユニット530Aと区別するために一部の符号に「B」を付与している。
【0045】
次に、操作部520に挿入させる処置具504Aについて説明する。処置具504Aのみを説明するが、処置具504Bも同様の構成になっている。なお、処置具504A、504Bは一方を高周波ナイフや、穿刺針、スネア、クリップ、その他の鉗子等にしても良い。
【0046】
図15に示すように、処置具504Aは、先端の処置部505A(図1参照)と操作部506Aを長尺で可撓性の挿入部507Aで連結させた構成になっている。操作部506Aは、先端にカム910が固定された本体部911を有し、本体部911の基端側に処置部505Aを駆動させるスライダ912が軸線方向に進退自在に取り付けられている。そして、本体部911の基端には、指掛け用のリング913が装着されている。
【0047】
図16に示すように、リング913は、本体部911にEリング915を介して連結されている。Eリング915を介してリング913を軸線回りに回転させることができるので、操作性が良好である。ここで、図17及び図18に示すように、リング913の内側にゴム製の保護部材916を嵌めて使用しても良い。保護部材916は、外周に溝916Aが設けられており、リング913に対して着脱自在になっている。ゴムを使うことで操作時に指が痛くならなくなる。また、着脱自在な構成であるため、洗浄性、滅菌性に優れる。保護部材916を例えばシリコーンゴム製にすれば、耐薬品性と耐滅菌性を持たせることができる。
【0048】
図5及び図15に示すように、カム910は、先端部がテーパによって縮径されている。このテーパ面910Aは、操作スティック531Aに挿入されたときに、ピストン715を押し上げる役割と、チャンネル801を押し込む役割を担う。カム910の外周は、シャフト701の内径に略等しく摺動可能になっている。カム910の基端部は、軸線方向の延びる羽部921が周方向に等間隔に4つ延設されている。図19(a)に示すように、各羽部921は、カム910の外周部分のみに設けられており、周方向の一方の側面921Aが中心側から径方向外側に向かって曲面を形成しつつ傾斜している。
【0049】
また、図19(b)及び図20に示すように、カム910の傾斜する側面921Aの外周側に、径方向に立ち上がる段差面921Bと共に先端側に向かうスロープ921Cを設けても良い。スロープ921Cによって傾斜する側面921Aとカム910の外周の段差921Dが滑らかに解消させられている。なお、羽部921において、側面921Aの反対側の側面921Eは、周方向に隣り合う他の羽部921の側面921Aとの間に、ピストン715の直径より少し大きい隙間を形成している。側面921Eは、側面921Aの傾斜方向と同じ方向に傾斜し、傾斜角度が大きい急斜面になっている。
【0050】
カム910の内孔には、本体部911が螺入によって固定されている。本体部911の外径は、カム910内に挿入される部分から拡径されたストッパ922に至るまで、基端側に向かって徐々に減少させても良い。つまり、図15は先端側の直径d1より基端側の直径d2の方が小さくなっている例を示している。これは、操作スティック531Aに対して処置具504Aの操作部506Aの寸法に遊びがあり、操作部506Aが傾いたり、撓んだりした場合でも、本体部911がピストン715を押し上げないようにするためである。また、ピストン715が第2の溝719に係合した状態において、ピストン715の先端がシャフト701内に突出したときにピストン715との間に隙間を有する関係に設定されている。ピストン715と本体部911の干渉が防止され、処置具504Aの進退が軽くなる。なお、ストッパ922は、処置具504Aを操作スティック531Aに挿入するときにラチェットベース712に当接し、そこから先に処置具504Aが押し込まれないように規制する。
【0051】
図21に示すように、スライダ912には、パイプ931が固定されており、パイプ931内に処置部505Aを駆動させるための操作ワイヤ932が通されている。操作ワイヤ932とパイプ931の基端は、係止部材933でスライダ912に係止されている。パイプ931は、本体部911のスリット911Aを通って、樹脂性のパイプ受け934に進退自在に支持されている。操作ワイヤ932は、パイプ受け934に固定された別のパイプ935内を通って引き出され、パイプ935と共に中間ツナギ941に進入し、この中で金属製の単層コイル942に挿入される。パイプ935は、熱収縮チューブで被覆されることで絶縁されている。
【0052】
図22に示すように、中間ツナギ941の基端側には、単層コイル942の基端が固定されるコイル受け943が収容されている。前記したパイプ935の先端は、コイル受け943内に挿入されている。中間ツナギ941には、コイル受け943が先端側に抜けないようにする縮径部941Aが設けられている。単層コイル942は、縮径部941Aより先端側で多層コイル951に挿入される。多層コイル951は、3つ以上のコイルを同軸上に配置した構成を有する。例えば、3層構造の場合、最内層のコイルと最外層のコイルの巻き回し方向を同じにし、中間層のコイルの巻き回し方向を逆向きにする。このようにすると、最内層と最外層のコイルを緩める方向に回転させると、中間層のコイルが締まって、中間層と最内層のコイルが干渉して回転トルクが先端の処置部505Aまで伝達される。反対方向に回転させると、緩む中間層のコイルと締まる最外層のコイルが干渉して回転トルクが処置部505Aまで伝達される。なお、多層コイル951を金属製にすると回転トルクの伝達性が良好になる。絶縁性を考慮する必要がある場合は樹脂製のコイルを使用した方が良い。
【0053】
多層コイル951は、コイル受け952がロー付けされている。コイル受け952は、絶縁性の中間ツナギ941に刻まれた長溝941Bにスライド自在に挿入されている。このため、多層コイル951と中間ツナギ941は、回転方向には係合するが、進退方向には係合しない。なお、中間ツナギ941の先端側には、樹脂製の抜け止め具953が装着されており、抜け止め具953がコイル受け952の突出を規制するので、多層コイル951が中間ツナギ941から抜け出ることはない。また、コイル受け952が本体部911に接触することはない。このような構成にすることにより、処置の際に単層コイル942が縮んだり、伸びたりしても多層コイル951の長さに影響は与えない。
【0054】
また、多層コイル951をコイル受け952をロー付けした後、単層コイル942とコイル受け943をロー付けする際、コイル受け943を基端側にスライドさせて中間ツナギ941から引き出した状態でロー付けすることができる。なお、中間ツナギ941は、ロー付け時に高温になるため、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の耐熱性の高い樹脂で製造することが望ましい。
【0055】
さらに、中間ツナギ941から引き出される多層コイル951の外周は、絶縁チューブ954で被覆される。絶縁チューブ954をフッ素樹脂で製造すると摺動抵抗が少なく、回転性が良好になる。絶縁被覆された多層コイル951は、蛇行を防止するパイプ955内を通った後、カム910の先端に形成された孔910Cから引き出される。
【0056】
なお、耐久性を考慮すると、本体部911を金属材料から製造することが好ましい。この場合には、操作部506Aの絶縁がとれるようにしておけば、高周波を使って処置を行う処置具504Aを実現できる。このため、抜け止め具953、中間ツナギ941、パイプ935の熱収縮チューブ、パイプ受け934、スライダ912を樹脂製にすることによって、本体部911と操作ワイヤ932及び各コイル942、951との間の絶縁性を確保している。このようにすることで、処置具504Aを切開ナイフや高周波鉗子などのように高周波を印加するタイプに、又は併用することもできる。多層コイル951の絶縁被覆は、高周波を印加する処置具でない場合には設けなくても良い。この場合は、被覆に使用する熱収縮チューブの肉厚分を多層コイル951の肉厚を増やすことに利用すれば、より回転性が良い処置具になる。肉厚分を単層コイル942にまわせば、圧縮や伸びにさらに強くなる。
【0057】
次に、処置用内視鏡501を用いて手技を行う手順について説明する。なお、以下においては、自然開口である患者の口から内視鏡を導入し、胃に形成した開口から腹腔内に処置具を導入して組織を把持する場合について説明するが、それ以外の部位又は経路から行うことも可能である。また、処置具504A及び第1の操作ユニット530Aを中心に説明するが、処置具504B及び第2の操作ユニット530Bも左右が対称なだけで同様に、かつ独立して使用できる。
【0058】
処置用内視鏡501に2つの処置具504A,503Bを挿入する。処置具504Aは、第一の操作ユニット530Aに挿入される。図23に模式的に示すように、処置具504Aが未挿入のときは、第1操作スティック531Aの基端のラチェットベース712に設けられたピストン715が連結板713の第1の溝718に係合して連結板713を係止している。ラチェットベース712は移動不可なので、連結板713が係止されることで第2湾曲用スライダ711の移動が禁止されている。
このときの位置は、第二湾曲部308がストレートになる位置である。つまり、この処置用内視鏡501では、処置具504Aを挿入するときは、第二湾曲部308が常にストレートになる。図24に示すように、操作部506Aが第1操作スティック531Aに進入すると、ピストン715が操作部506Aの先端のカム910のテーパ面910Aによって押し上げられる。図25に示すように、ピストン715は、連結板713の第1の溝718の傾斜面718Aを登ることが可能になるので、矢印で示す方向に第2湾曲用スライダ711を操作できるようになる。
【0059】
処置具504Aの挿入部507Aは、図5に示すように、チャンネル801内を通り、連結シース515内のチャンネルに導かれる。さらに、内視鏡操作部502、内視鏡挿入部503を通り、第一アーム部302Aの先端まで導かれる。同様にして処置具504Bも第2の操作ユニット530Bの第2操作スティック531Bから挿入され、第二アーム部303Aの先端まで導かれる。
【0060】
処置具504A、504Bを通したら、2つのアーム部302A、303Aを閉じた状態で、内視鏡挿入部503を予め胃壁に形成してある開口から体腔に導入する。このとき、予め体内に挿入したオーバーチューブ内を通しても良い。
【0061】
内視鏡挿入部503の先端に設けられた撮像デバイスで取得した内視鏡画像を不図示のモニタで観察しながら処置を行う部位を確認する。この際に、第1の操作者が内視鏡操作部502のアングルノブ512を操作して第3湾曲部203Bを湾曲させる。さらに、第2の操作者が必要に応じて、第二湾曲部308、第一湾曲部306も湾曲させる。
【0062】
第二湾曲部308を湾曲させるときは、操作スティック531A、531Bに設けられた第2湾曲用スライダ711を後退させる。図25に示すように、ピストン715が持ち上げられた状態で第2湾曲用スライダ711を後退させると、ピストン715の係止片717Aが傾斜面718Aをせり上がり、図26に示すように、連結板713がピストン715に摺動する。そして、図27に示すように、ピストン715が第2の溝719に収まると、これ以上は第2湾曲用スライダ711を後退させることできない。この位置では、図1に示す第二湾曲部308が湾曲して第一アーム部302Aが開く。なお、第2の溝719は、第1の溝718より浅く、第2の溝719にピストン715が係合しているときは、操作部506Aの本体部911との間に隙間Ssが形成されている。本体部911とピストン715が擦れないので、本体部911の進退をスムーズに行える。
さらに、第一湾曲部306を湾曲させる場合は、内視鏡画像を確認しながら、処置具504A、504Bの操作部506A、506Bを傾ける。
【0063】
図4に示すように、操作部506Aを操作者からみて上方向に傾倒させると、傾倒角度に応じて第1回動機構561Aの回動軸564A、565Aが回動する。各回動軸564A、565Aに取り付けられたスプロケット595が回動してチェーン622に取り付けられた第1湾曲ワイヤ315A、315Bが押し引きされ、第一湾曲部306が上方向に湾曲する。反対に、操作部506Aを操作者からみて下方向に倒すと、傾倒角度に応じて第1回動機構561Aの回動軸564A、565Aが上方向のときと逆方向に回動する。各回動軸564A、565Aに取り付けられたスプロケット595が逆方向に回動してチェーン622に取り付けられた第1湾曲ワイヤ315A、315Bが反対向きに押し引きされ、第一湾曲部306が下方向に湾曲する。
【0064】
また、操作部506Aを操作者からみて右方向に傾倒させると、傾倒角度に応じて第2回動機構581Aの回動軸584A、585Aが回動する。各回動軸584A、585Aに取り付けられたスプロケット595が回動してチェーン622に取り付けられた第1湾曲下方操作ワイヤ、第1湾曲上方操作ワイヤが押し引きされ、第一湾曲部306が右方向に湾曲する。反対に、操作部506Aを操作者からみて左方向に倒すと、傾倒角度に応じて第2回動機構581Aの回動軸584A、585Aが逆方向に回動する。各回動軸584A、585Aに取り付けられたスプロケット595が逆方向に回動してチェーン622に取り付けられた第1湾曲下方操作ワイヤ、第1湾曲上方操作ワイヤ、第一湾曲部306が左方向に湾曲する。
【0065】
第1回動機構561Aを駆動させたときは、第2回動機構581Aが駆動せず、第2回動機構581Aを駆動させたときは、第1回動機構561Aが駆動しないので、互いに影響を及ぼすことなく湾曲させることができる。なお、操作部506Aを斜めに倒したときは、その上下方向と左右方向の割合に応じて第1、第2回動機構561A、581Aが駆動して第一湾曲部306が操作部506Aの傾倒方向と同じ方向に斜めに湾曲する。なお、各回動軸564A、565A、584A、585Aの位置に操作スティック531Aの長手方向の中心又は重心が略一致するように配置されているので、操作者が手を離しても操作スティック531A及び処置具504Aの操作部506Aが重力で下側に下がることはなく、誤動作が防止される。
【0066】
ここで、第一湾曲部306の操作は、電気的な手段を用いずにワイヤ操作しているので、操作に要する力量が適切な値になるように調整されている。具体的には、操作者が力を入力する操作スティック531Aの操作部分を回動軸564A、565A、584A、585Aから切り離してオフセットさせることで減速させている。図6に示すように、処置具504Aの操作部506Aの基端部から、回動軸564A、565A、584A、585Aまでの距離Lrと、スプロケット595の半径Rsの比に応じた減速比が得られるので、操作部520の小型化を図りつつ、小さい力量で湾曲操作ができる。また、減速したことで分解能があがって精密な湾曲操作が可能になる。
【0067】
さらに、図5及び図6に示すように、第1操作スティック531Aから第2回動機構581Aに力が伝達される箇所が図6に示すローラベアリング572Aのように回動軸564A、565Aから先端側にオフセットした位置になっているので、伝達位置での力量が下がって部品間の摩擦が低減されている。構成部品に要求される強度を下げ、操作部520の小型軽量化が図れる。また、第1操作スティック531Aから第2回動機構581Aへの力伝達位置にボールローラ572Aを使用したので、第1操作スティック531Aを上下に回動させときに第2回動機構581Aとの摩擦が低減され、上下操作時に必要な力量を低減させられる。
【0068】
組織を把持するときは、処置具504Aの操作部506Aで開閉動作させる鉗子部材の位置を調整する。例えば、第1操作スティック531Aに操作部506Aを押し込むと、処置部505Aが第一アーム部302Aからさらに突出する。また、第1操作スティック531Aから操作部506Aを引き出すと、処置部505Aが第一アーム部302Aに引き込まれる。この際、図28に示すように、カム910がピストン715に引っかかるので、処置具504Aが不用意に第1操作スティック531Aから抜け出ることはない。
【0069】
処置具504Aの軸線回りの向きを調整するときは、操作部506Aの本体部911を軸線回りに回転させる。図21及び図22に示す中間ツナギ941に回転方向に係合されている多層コイル951に回転トルクが入力される。多層コイル951の各コイルが巻き回し方向と操作部506Aの回転方向の組み合わせによってコイルが締まったり、緩んだりして径方向に隣り合って配置される2つのコイルが干渉し、回転トルクが伝達される。多層コイル951の先端には、処置部505Aが固定されているので、回転トルクの伝達によって処置部505Aが軸線回りに回転する。所望する向きになったことを内視鏡画像で確認してから手元側の回転を停止させる。
【0070】
処置部505Aの向きや位置を調整したら、スライダ912を前進させる。操作ワイヤ932が処置部505Aの開閉機構を動作させて一対の把持片を開かせる。操作ワイヤ932を押し込むことによって発生する伸びる力は、単層コイル942で受ける。多層コイル951は、進退方向には操作部506Aに係合していないので、多層コイル951に伸びる力はかからない。このため、把持片を開いた状態でも処置部505Aの向きを調整できる。そして、スライダ912を後退させると、把持片が閉じて組織が把持される。このときに発生する圧縮力は、単層コイル942で受ける。
【0071】
必要な処置が終了したら、処置具504A、505Bを処置用内視鏡501から抜去する。また、処置中に必要な処置具を入れ替えるときも処置具504A,505Bを処置用内視鏡501から抜去する。ここで、図28を用いて説明したように、カム910がピストン715に突き当たったら、操作部506Aを軸線回りに回転させる。ピストン715がカム910の羽部921の傾斜した側面921Aに沿って押し上げられる。傾斜した側面921Aを設けたことによって、図29に示すように、少ない力でピストン715を押し上げることができる。なお、図19B及び図20に示すように、段差面921Bを設けた場合、処置具504Aが回転し過ぎることはない。さらに、スロープ921Cが設けられていることで、軸線方向(スラスト方向)にピストン715とカム910の位置がずれ易くなって、容易に引き抜けるようになる。なお、カム910は、破損を防止するために、金属で製造することが望ましい。第1操作スティック531A内でカム910の進退操作が容易になるように、滑り性が良いPOM(ポリオキシメチレン)で製造しても良い。
【0072】
しかしながら、ピストン715とカム910の係合を解除できても、アーム部302A、303Aの第二湾曲部308が開いていると、処置部505A、504Bを抜去できない。この操作部520では、カム910でピストン715が持ち上げられると、自動的に第二湾曲部308がストレートに戻るようになっている。すなわち、ピストン715が持ち上げられて第2の溝719との係合が解除されると、第二湾曲用スライダ711が第2湾曲ワイヤ316A、316Bのテンションとコイルバネ745の復元力で引き戻される。その結果、第二湾曲部308がストレートに戻る。なお、このとき、第二湾曲用スライダ711が勢い良く戻ることを防止するために、図13のバネ792のような弾性部材を追加しても良い。そして、処置具504Aを抜いた後、処置用内視鏡501を体内から抜去する。
【0073】
以下に、この実施形態の変形例について説明する。
図30に示すように、第2湾曲用スライダ711を操作する操作部1001A、1001Bを操作スティック531A、531Bのそれぞれの軸線と平行にブラケット551A,551Bに1つずつ固定しても良い。各操作部1001A,1001Bは、進退自在なスライダを有し、スライダを移動させると、コイルシース1002内のワイヤが進退するようになっている。図31に示すように、コイルシース1002は、ラチェットベース712に取り付けられたコイル受け1003に固定されている。コイル受け1003内には、パイプ1004が通されている。パイプ1003は、コイルシース1002内に通されると共に、第2湾曲用スライダ711にワイヤ受け1005を介して第二湾曲ワイヤ316A、316Bと共に回転自在に係合させられている。パイプ1004内には、操作部1001A、1001Bのスライダに連結されたワイヤ1006が通されている。操作部1001A、1001Bのスライダを手元側に引けばワイヤ1006が移動して第二湾曲用スライダ711が引かれて第二湾曲部308が開く。この構成では、操作部520をコンパクトにでき、第二湾曲部308の操作が容易になる。また、第二湾曲部308を操作するときに、操作スティック531A、531Bが動いてしまうことがなくなる。把持中の組織が不意に移動したりしなくなる。
【0074】
図32に示すように、カム910の基端側を傾斜面1010にしても良い。処置具504Aを第1操作スティック531Aから引くと、ピストン715が傾斜面1010を上がった後に処置具504Aが抜去される。処置中に処置具504Aを手元側に引いた程度の力では誤って抜けることはない。力をさらに加えて引けば抜去ができる。この構成では、操作部506Aを回転させることなく処置具504Aを抜去できるようになる。
【0075】
また、処置具504A、504Bを大きく回転させたいときの操作を図33及び図34を参照して説明する。このような場合としては、例えば、組織を把持したいときに、処置部505Aの向きを最適な方向に調整したいときなどがあげられる。図33に示すように、スライダ912を人指し指と中指で挟む。スライダ912を挟んだまま時計回りに90°回転させる。図34に示す位置までスライダ912及び本体部911が回転したら、人差し指と中指をスライダ912から離す。スライダ912から手を離したまま、図33の位置まで90°反時計回りに手を回転させる。このとき、処置具504Aの挿入部507Aは、第1操作スティック531Aから第二アーム部302Aに至るまでのチャンネル、つまりチャンネル801や、連結シース515内のチャンネル、内視鏡挿入部503のチャンネルとの間に摩擦があるため、スライダ912と指が多少触れても反時計回りに回転することはなく、その位置関係を保持する。上記の手順を繰り返すことで、処置具504Aを90°ずつ送り操作することができる。
【0076】
図35に示すように、処置用内視鏡501をオーバーチューブ90に通し使用しても良い。内視鏡操作部502の第1の操作者は、例えば、左手で通常の内視鏡操作を行い、右手で内視鏡挿入部503の操作とオーバーチューブ90の操作を行う。オーバーチューブ90の湾曲を使用することで腹腔内での目標位置へのアプローチ性が向上する。
【0077】
[実施形態]
次に、本発明の一実施形態の処置用内視鏡について説明する。本実施形態の処置用内視鏡は、上述した例と同様の基本構造を有しており、処置を行うアーム部に操作部の操作を伝達するワイヤと操作部とが着脱自在となっている。
【0078】
図36は、本実施形態の処置用内視鏡1300の構成を示す図である。処置用内視鏡1300は、処置用内視鏡501と同様の内視鏡操作部502及び内視鏡挿入部503と、処置用内視鏡501の操作部520とほぼ同様の基本構造を有する操作部1350とを備えている。図36に示すように、内視鏡挿入部503からは2本のアーム部302A、302Bが延びている。突出するシース301の先端には、アーム部302A、302Bを観察できるように、図示しない観察デバイスが取り付けられている。アーム部302A、302Bに対して操作部1350の操作を伝達するためのワイヤは、連結シース515を通って、操作部1350に着脱自在なワイヤユニット(装着部)に接続されている。ワイヤユニットは1本のアーム部に対して、上下移動用の第1ワイヤユニット1301、左右移動用の第2ワイヤユニット1302の2つの第1湾曲用ワイヤユニットと、1つの第2湾曲用ワイヤユニット1303の計3個が設けられている。したがって、本実施形態では、第1アーム部302Aと接続された各ワイヤユニット1301A、1302A、1303Aと、第2アーム部302Bと接続された各ワイヤユニット1301B、1302B、1303Bとの計6個のワイヤユニットが設けられている。
【0079】
図37は操作部1350を示す図である。操作部1350は第1実施形態の操作部520とほぼ同様の構造であり、第1アーム部302Aを操作するための第1操作ユニット1350Aと第2アーム部302Bを操作するための第2操作ユニット1350Bとから構成されている。
【0080】
第1ワイヤユニット1301A、1301Bは、各操作ユニット1350A、1350Bの第1回動機構1351A、1351B(不図示)に取り付けられる。第2ワイヤユニット1302A、1302Bは、各操作ユニットの第2回動機構1352A、1352B(不図示)に取り付けられる。第2湾曲用ワイヤユニット1303A、1303Bは、各操作ユニットにおいて、第1回動機構と第2回動機構との間に設けられた第2湾曲操作機構1353A、1353B(不図示)に着脱自在に取り付けられる。
【0081】
図38は、第1ワイヤユニット1301を示す斜視図であり、図39は第1ワイヤユニット1301を分解して示す図である。なお、第2ワイヤユニット1302も接続されるワイヤが異なる点を除いて同一の構造である。
【0082】
図38及び図39に示すように、第1ワイヤユニット1301は、アーム部から延びるワイヤが挿通されるコイル1304と、コイル1304が固定されるコイルベース1305と、コイルベース1305に挿通されてワイヤが巻きまわされるプーリ(装着部材)1306と、プーリ1306に対して回転自在に取り付けられるワイヤカバー1307と、コイルベース1305に取り付けられるユニットカバー1308とを備えて構成されている。
【0083】
図40は、第1ワイヤユニット1301を、ユニットカバー1308及びワイヤカバー1307を除いて示す図である。コイルベース1305は、樹脂等で形成され、各機構が取り付けられるベース部1309と、ベース部1309から下方に延出して設けられた突起部(第1の突起部)1310とを有している。そして、一方の端部の左右には、固定部材1311を介してコイル1304が固定されている。
【0084】
図41は、ベース部1309に挿通されたプーリ1306の断面図である。図41に示すように、プーリ1306は、アーム部から伸びるワイヤが巻き回される円盤部1312と、円盤部1312の下方に延びる装着部(第2の突起部)1313とを有している。装着部1313は、円盤部1312の下方に設けられ、円盤部1312よりも径の小さい第1装着部1313Aと、第1装着部1313Aの下方に設けられ、円盤部1312よりも径が小さく、かつ第1装着部1313Aよりも径が大きい第2装着部1313Bとを有している。プーリ1306はコイルベース1305のベース部1309に設けられた孔部1314に装着部1313が回転自在に挿通されて配置されている。図39に示すように、孔部1314は、第2装着部1313Bよりも径が大きい円形孔1314Aと第1装着部1313Aの径より大きく、かつ第2装着部1313Bの径よりも小さい幅の溝1314Bを有している。したがって、円盤部1312はベース部1309上に位置し、装着部1313はベース部1309の下方に突出する。そして、プーリ1306は、第1装着部1313Aが溝1314B内に位置するように配置される。
【0085】
アーム部に接続されたワイヤ315C及び315Dは、コイル1304に挿通されて左右の固定部材1311から突出している。各ワイヤ315C、315Dは、それぞれ円盤部1312の外周に巻きまわされ、円盤部1312の固定部材1311と反対側の端部から円盤部1312の内部に挿通される。円盤部1312の上面には溝1312Aが設けられており、ワイヤ315C、315Dの端部は溝1312A内に露出する。そして、ワイヤ315C、315Dの端部はワイヤ固定部材1315によって円盤部1312に固定されている。こうして、ワイヤ315C、315Dはプーリ1306と一体に接続されている。
なお、図40に示した固定態様は一例であり、ワイヤ315C、315Dが左右いずれの固定部材1311に挿通されるかは、操作部1350への取り付け位置等を考慮して、操作部1350の操作によってアーム部302A、302Bが適切に操作できるように適宜決定される。
【0086】
この状態で、図39及び図42に示すように、略円盤状のワイヤカバー1307がプーリ1306の上方から取り付けられ、ワイヤ固定部材1315がワイヤカバー1307によって押さえられる。ワイヤカバー1307の径は、プーリ1306の円盤部1312より大きく、その周方向に側面を有するため、プーリ1306に巻き回されたワイヤ315C、315Dの外側がワイヤカバー1307に被覆される。
【0087】
ワイヤカバー1307には、ワイヤが通るための切欠き1307Aとコイルベース1305と当接する平面部1307Bとが形成されている。図42に示すように、固定部材1311から突出したワイヤ315C及び315Dは、切欠き部1307Aを通ってプーリ1306に巻き回される。平面部1307Bはコイルベース1305に形成された突起1305Aと当接する。これによって、ワイヤカバー1307は回転を規制され、プーリ1306が回転してもワイヤカバー1307は回転しない。したがって、切欠き1307Aの位置も変化せず、固定部材1311との位置関係を保持してワイヤ315C、315Dとワイヤカバー1307とが接触するのが防止される。
【0088】
図39に示すように、ユニットカバー1308は、コイルベース1305のベース部1309より大きい本体1316と、本体1316の周縁付近から下方に延出するように設けられた4箇所の係合爪1317とから構成されている。ユニットカバー1308は、ベース部1309に設けられた4箇所の係合孔1318と係合爪1317とが係合するように、ベース部1309の上方から取り付けることによって、コイルベース1305と一体となり、ワイヤカバー1307が浮き上がるのを防止する。
【0089】
係合爪1317と係合孔1318とは、係合状態を保持したまま、係合爪1317が係合孔1318内において、コイルベース1305の幅方向及び長手方向に所定の長さ、例えば数ミリメートル程度移動可能に遊びが設けられている。したがって、ユニットカバー1308は、コイルベース1305と一体となった状態で、コイルベース1305に対してコイルベース1305の幅方向及び長手方向に所定の長さ相対移動が可能となっている。
【0090】
図43は、第1ワイヤユニット1301と操作部1350の第1回動機構1351に設けられた第1被装着部1354を示す図である。第1ワイヤユニット1301は汚染を防ぐため、ドレープ1319を間に挟んで第1被装着部1354に取り付けられる。この取り付け手順については後述する。
【0091】
図44は、図43の断面図である。第1ワイヤユニット1301の下方には、コイルベース1305の突起部1310と、プーリ1306の装着部1313が突出している。突起部1310及び装着部1313は、いずれも略円柱状であり、先端が徐々に細くなるテーパ状に形成されている。そして、テーパ状の先端を除く外周面の一部が切りかかれており、装着部1313の軸線に平行な第2外周面1310A、1313Cがそれぞれ形成されている。第2外周面1310A、1313Cは曲率ゼロの平面に形成されているため、第2外周面を通って軸線と直行する断面は、突起部1310及び装着部1313のいずれにおいてもD字状である。
【0092】
第2外周面1310A、1313Cには、第1被装着部1354と嵌合するための嵌合穴1320A、1320Bが径方向内側に向かってそれぞれ設けられている。嵌合穴1320Aはコイル1304側に開口するように設けられているが、異なる向きに設けられてもよい。また、装着部1313の嵌合穴1320Bは、プーリ1306の回転に伴ってその向きが変わるが、図44に示すように、コイル1304と反対側に嵌合穴1320Bが開口する状態において、アーム部が内視鏡の挿入部の軸線と平行である初期状態となるように、ワイヤ315C、315Dとプーリ1306とが接続されている。
【0093】
また、各嵌合穴1320A、1320Bは、第2外周面1310A、1313Cにおける開口が突起部1310及び装着部1313の軸線方向に長い形状になっており、各嵌合穴1320A、1320Bは、突起部1310及び装着部1313の先端に近づくにつれて浅くなるようにテーパ状に加工されている。各嵌合穴1320A、1320Bのテーパ角は30〜40度前後に設定されると、装着強度と取り外しのしやすさとのバランスが良好になる。
【0094】
第1被装着部1354は、突起部1310が挿入される第1挿入部1355と、回転自在に第1挿入部1355に取り付けられ、装着部1313が挿入される第2挿入部1356と、突起部1310と第1挿入部1355とを着脱自在に一体に保持する第1保持部1357と、装着部1313と第2挿入部1356とを着脱自在に一体に保持する第2保持部1358とを備えて構成されている。
【0095】
第1挿入部1355は、平板状のベース部1359と、ベース部1359に回転不能に取り付けられた略円筒状の挿入穴1360とを有している。第2挿入部1356は、略円筒状であり、ベース部1359に設けられた孔1359Aにベアリング1361を介して取り付けられている。すなわち、第2挿入部1356はベース部1359に対して回転自在である。第2挿入部1356は第1回動機構1351の回転軸と連結されており、当該回転軸を回転すると、連動して回転する。
また、挿入穴1360及び第2挿入部1356のベース部1359側の端面には、突起部1310及び装着部1313の挿入を容易にするために面取り加工が施されている。
【0096】
第1保持部1357及び第2保持部1358は、略同一の構造を有し、それぞれ挿入穴1360及び第2挿入部1356に固定される固定部1362A、1362Bと、固定部1362内に収容された嵌合部材1363A、1363Bとを有している。以下、第2保持部1358について説明するが、その構成や動作は、第1保持部1357についても概ね同様である。
【0097】
第2保持部1358の固定部1362Bは、略円筒状の部材であり、第2挿入部1356の外面に互いの軸線が直交するように取り付けられている。そして、第2保持部1358の軸線が挿入穴1360と第2挿入部1356の軸線を結ぶ直線と平行になるときに、第1回動機構1351の操作量がゼロの初期状態となるように設定されている。嵌合部材1363Bは、固定部1362Bより径の小さい略円筒状の部材であり、固定部1362B内に収容されている。固定部1362Bと嵌合部材1363Bとの間には渦巻きばね等の付勢部材1364Bが介装されており、嵌合部材1363Bを第2挿入部1356側に付勢している。第2挿入部1356の固定部1362Bが取り付けられた部分の壁面は切りかかれており、嵌合部材1363Bが付勢部材1364Bの付勢力によって、所定の長さだけ第2挿入部1356内に突出するようになっている。嵌合部材1363Bの先端には、嵌合穴1320Bと嵌合可能な形状の嵌合突起1365Bが設けられている。
【0098】
図45及び図46は、装着部1313の嵌合穴1320B及び第2保持部1358の嵌合部材1363Bの動作を示す断面図である。上述のように、嵌合穴1320Bが設けられた部分の装着部1313の外周面は、平坦な第2外周面1313Cを有している。また、装着部1313の円弧状の外周1313D付近の第2外周面1313Cは、わずかに径方向外側に向かって凸となるように曲面状に形成されている。
【0099】
図45に示すように、嵌合穴1320Bと嵌合部材1363Bの嵌合突起1365Bとが正対していないときは、嵌合突起1365Bと第2外周面1313Cとが接触すると、嵌合部材1363Bに作用する付勢力Fの一部が装着部1313の外周1313Dに対する接線方向に分解され、嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとが近づく方向に装着部1313を回転させるトルクTとして作用する。これによって、装着部1313が回転し、図46に示すように嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとが正対して嵌合し、第2挿入部1356と装着部1313とが一体に保持される。
【0100】
なお、本実施形態では、プーリ1306が巻き回されたワイヤの張力によって強く保持されているため、装着部1313がトルクTによって回転するのに加えて、トルクTの反力によって第2保持部1358及び第2挿入部1356もある程度回転する。そして、装着部1313及び第2保持部1358が互いに回転することによって嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとが正対して嵌合する。また、コイルベース1305の突起部1310と第1挿入部1355も同様の態様で一体に保持されるが、挿入穴1360は、ベース部1359に対して回転不能であるため、上述のような相対回転は起こらずに嵌合穴1320Aと嵌合突起1365Aとが嵌合する。
【0101】
図47は、第2湾曲用ワイヤユニット1303を、ユニットカバー1308及びワイヤカバー1307を除いて示す図である。第2湾曲用ワイヤユニット1303は、第1ワイヤユニット1301とほぼ同一の構造を有するが、プーリ1306がコイル1304と反対側(矢印の方向)に所定の距離移動できるように、コイルベース1305の孔1314の形状が設定されている。
【0102】
第2湾曲用ワイヤユニット1303は、図37に示すように、装着対象である第2湾曲操作機構1353に設けられた第3被装着部1366に着脱自在に装着される。第3被装着部1366は、上述の第1被装着部1354と略同様の構造を有しているが、プーリ1306が挿入される第2挿入部は第1挿入部に対して回転不能かつ第2保持部側に所定の距離移動可能に取り付けられている。第3被装着部1366の第2挿入部は、操作スティック1367に設けられたスライダ1368と図示しないワイヤ等の伝達部材で接続されており、スライダ1368を手元側に引くことによって第2挿入部及び第2湾曲用ワイヤユニット1303のプーリが手元側に移動し、アーム部の第2湾曲308(図36参照)が屈曲する。
【0103】
上記のように構成された処置用内視鏡1300の使用時の動作について、以下に説明する。ここでは、操作部1350が未滅菌で繰り返し使用する部分、操作部1350以外が滅菌済みの使い捨て部分である構成を例として説明する。
【0104】
まず、操作部1350によるアーム部302A、302Bの操作を可能とするために、アーム部302A、302Bのワイヤが接続された6つのワイヤユニットを操作部1350に接続する。このとき、患者の体腔内に挿入されるアーム部302A、302B等を含む滅菌済みの部分が、未滅菌の操作部1350に接触することをできるだけ避ける必要がある。
【0105】
そこで、図48に示すように、操作部1350全体をドレープ1319で覆う。ドレープ1319には、第1ワイヤユニット1301が装着される第1被装着部1354、第2ワイヤユニット1302が装着される第2被装着部1369、第2湾曲用ワイヤユニット1303が装着される第3被装着部1366の位置に対応する箇所に開口1321が設けられている。なお、第2被装着部1369は、第2回動機構1352に取り付けられており、その構造は第1被装着部1354と同一である。また、図48には第1操作ユニット1350Aのみ示しているが、第2操作ユニット1350Bも同様にドレープ1319で覆われる。
【0106】
次に、第1ワイヤユニット1301を第1被装着部1354に装着する。装着時には、各ワイヤユニットのユニットカバー1308を把持し、コイルベース1305の突起部1310が第1挿入部1355の挿入穴1360に、プーリ1306の装着部1313が第2挿入部1356に挿入されるように押圧する。
【0107】
このとき、突起部1310及び装着部1313の先端がテーパ形状であり、かつ挿入穴1360及び第2挿入部1356に面取りが施されているため、互いの軸線がある程度離間して押圧されても、突起部1310及び装着部1313が挿入穴1360及び第2挿入部1356と同軸となって挿入されるように誘導される。
【0108】
さらに、ユニットカバー1308とコイルベース1305とが、ユニットカバー1308の長手方向及び幅方向にある程度相対移動可能に一体となっているので、装着動作が正確でなくても、挿入穴1360及び第2挿入部1356の位置に合わせてコイルベース1305がユニットカバー1308に対してある程度相対移動して、操作のズレを吸収する。その結果、容易に突起部1310及び装着部1313を挿入穴1360及び第2挿入部1356に挿入することができる。
【0109】
突起部1310及び装着部1313が挿入穴1360及び第2挿入部1356に挿入された状態で、ユーザがさらにユニットカバー1308に圧力を加えると、図49に示すように、突起部1310の嵌合穴1320Aと第1保持部1357の嵌合突起1365Aとが嵌合する。同時に、嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとが正対するように装着部1313及び第2保持部1358が相対移動して、両者が嵌合する。それと同時に、アーム部302A、302Bの初期状態と操作部1350の第1回動機構1351の初期状態とが関連付けられる。すなわち、第1回動機構1351を初期状態にするとアーム部302A、302Bが初期状態となるように、第1ワイヤユニット1301と第1被装着部1354との相対位置関係が固定される。
【0110】
このとき、装着部1313の嵌合穴1320Bが設けられた部分の外周面は、外周1313Dを含む円柱状の部分よりも曲率の値が小さい第2外周面1313Cとして形成されているので、嵌合部材1363Bが付勢部材1364Bで付勢されていても、トルクTによってプーリ1306と第2保持部1358とが良好に相対移動することができる。
【0111】
こうして、第1ワイヤユニット1301と第1被装着部1354とが一体に装着され、プーリ1306は、第2保持部1358によって第2挿入部1356と一体に保持され、第2挿入部1356が操作部1350の操作によって回転すると、連動して回転する。
【0112】
ここで、第1挿入部1355の挿入穴1360と第2挿入部1356との軸線間の距離L1は、図44に示すようにプーリ1306がコイルベース1305のベース部1309に設けられた孔部1314のコイル1304側(図128における左側)の壁面に密着した状態における、突起部1310と装着部1313との軸線間の距離L2より長く設定されている。そのため、第1ワイヤユニット1301と第1被装着部1354とが一体に装着されると、プーリ1306が円形孔1314A側に移動して孔部1314のコイル1304側の壁面とプーリ1306との間に間隙Gが確保され、ベース部1309と装着部1313とが非接触の状態となる。これによって、孔部1314のコイル1304側の壁面とプーリ1306との間に生じる摩擦力によって第1回動機構1351の回転操作が重くなるのを防ぐことができる。
【0113】
さらに、図46に示すように、嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとが嵌合した状態において、装着部1313と嵌合部材1363Bとは、嵌合穴1320Bだけでなく、嵌合穴1320B周辺の第2外周面1313Cにおいても接触している。したがって、第2保持部1358とプーリ1306とが連動して回転する際に、第2外周面1313Cと嵌合部材1363Bとの接触面積が大きくなるため、当該連動によって嵌合突起1365Bに作用する応力が軽減され、嵌合突起1365Bや嵌合穴1320Bの破損等が起きにくくなる。なお、嵌合突起1365Bの端面の面積より、その周囲において第2外周面1313Cと接触する部分の面積が大きくなるように嵌合突起1365Bの径等の寸法を設定すると、嵌合突起1365Bや嵌合穴1320Bの破損等をより好適に防ぐことができる。
【0114】
同様の手順で、図48に示すように、第2ワイヤユニット1302を第2被装着部1369に、第2湾曲用ワイヤユニット1303を第3被装着部1366に、それぞれ装着する。図示しない第2操作ユニット1350Bに対しても、同様の装着操作を行う。すると、アーム部302A、302Bのすべてのワイヤが操作部1350に接続され、操作部1350によってアーム部302A、302Bを操作することが可能となる。その後は、操作スティック1367に使用する処置具1322を挿入して第1実施形態の処置用内視鏡501と同様の操作で所望の手技を行う。
【0115】
手技終了後、操作スティック1367から使用済みの処置具1322を抜去し、各ワイヤユニットを各被装着部から取り外す。取り外す際は、ユニットカバー1308を把持して突起部1310及び装着部1313の軸線と平行にワイヤユニットを引き上げる。すると、嵌合穴1320A、1320Bのテーパ形状によって、第1保持部1357及び第2保持部1358の嵌合部材1363A,1363Bが固定部1362A,1362B側に徐々に後退して、ワイヤユニットと被装着部との嵌合が解除され、取り外すことができる。
【0116】
本実施形態の処置用内視鏡1300は、各ワイヤユニット1301、1302、1303と、各被装着部1354、1366、1369を設けることによって、構造が複雑で滅菌が困難である操作部1350と、体内に挿入されるアーム部302A、302Bを操作するためのワイヤとを着脱自在に構成している。したがって、アーム部や内視鏡部を滅菌済みの使い捨てユニットにしたり、滅菌して再利用したりすることによって、より衛生度の高い状態で手技を行うことができる。
【0117】
また、操作部1350を覆うドレープ1319の開口1321から未滅菌の操作部の1350の一部が外部に突出しておらず、各ワイヤユニット1301、1302、1303側の滅菌された突起物(例えば、突起部1310や装着部1313)がドレープ1319の内側の各被装着部1354、1366、1369に挿入されて固定されるため、各ワイヤユニットに接続されたワイヤが操作部1350によって汚染されにくい。
【0118】
また、各ワイヤユニットがほぼ同一の形状に形成されているので、製造の際の部品の種類が少なくなり、使い捨てユニットを量産する場合も低コストで製造することができる。
【0119】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、プーリ1306の第2装着部1313Bにおいて、嵌合穴1320Bが設けられた第2外周面1313Cが平坦に形成されている例を説明したが、図50に示す変形例のように、第2外周面が、外周1313Dを含む外周面よりも小さい曲率を有する第2外周面1313Eとして形成されてもよい。このようにしても、同様にトルクTが発生するため、嵌合穴1320Bと嵌合突起1365Bとをスムーズに嵌合させることができる。
【0120】
また、図51及び図52に示す変形例のように、各ワイヤユニット1301A、1302A、1303A、1301B、1302B、1303Bを、ビニールや布等の一定の伸縮性を有する連結部材1370によって、各被装着部1354、1369、1368に対応するように連結してもよい。このようにすると、各ワイヤユニットを対応しない被装着部に誤って装着することを防止することができる。そして、ドレープで操作部全体を覆う必要がなくなり、手技に要するコストを低減することができる。
【0121】
さらに、上述の実施形態では、操作部が第1操作ユニットと第2操作ユニットとから構成される例を説明したが、アーム部のアームの本数に応じて操作ユニットの数は適宜変更されてよい。また、アーム部に第2湾曲が設けられない場合は、第2湾曲用ワイヤユニット及び第3被装着部を備えない構成としてもよい。
【0122】
加えて、上述の実施形態では、コイルベースの突起部とプーリの装着部のいずれも一部断面がD字状に加工されている例を説明したが、第1挿入部の装着穴は取り付けられたベース部に対して回転しないため、コイルベースの突起部はD字状に加工されなくてもよい。
この他、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0123】
301 シース
302A、302B アーム部
315C、315D ワイヤ(伝達部材)
1300 処置用内視鏡
1301A、1301B 第1ワイヤユニット(装着部)
1302A、1302B 第2ワイヤユニット(装着部)
1303A、1303B 第2湾曲用ワイヤユニット(装着部)
1305 コイルベース(ベース)
1306 プーリ(装着部材)
1308 ユニットカバー(カバー)
1310 突起部(第1の突起部)
1313 装着部(第2の突起部)
1313C 第2外周面
1320B 嵌合穴
1350 操作部
1354 第1被装着部
1355 第1挿入部(第1被装着部材)
1356 第2挿入部(第2被装着部材)
1360 挿入穴(第1の装着穴)
1363B 嵌合部材
1365B 嵌合突起
1366 第3被装着部
1369 第2被装着部
1370 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、湾曲操作が可能なシースと、
前記シースよりも先端側を観察する観察手段と、
前記シースの先端から突出して湾曲操作が可能なアーム部と、
前記アーム部を操作するための操作部と、
前記アーム部及び前記操作部に接続され、前記操作部の操作を前記アーム部に伝達する伝達部材と、
を備えた処置用内視鏡であって、
前記伝達部材は、着脱自在に前記操作部に接続されている。
【請求項2】
請求項1に記載の処置用内視鏡であって、
円柱状の装着部を有し、前記伝達部材の前記操作部と接続される側の端部が取り付けられる装着部材と、
前記操作部に設けられ、前記装着部材の前記装着部が挿入される装着穴を有する被装着部と、
前記被装着部の前記装着穴の内部に、前記装着穴の軸線に対して突出するように付勢されて設けられた嵌合部材と、
前記装着部の外周面に前記嵌合部材と嵌合可能に設けられた嵌合穴と、
をさらに備え、
前記装着部は、前記嵌合穴が設けられた部分の外周面が、前記装着部の軸線に直交する断面において前記円柱の外周面よりも曲率の値が小さい第2外周面として形成されており、前記嵌合部材と前記嵌合穴とが嵌合することによって、前記装着部材が前記被装着部に着脱自在に装着される。
【請求項3】
請求項2に記載の処置用内視鏡であって、前記第2外周面は、前記装着部の軸線と平行な平面に形成されており、前記第2外周面を通って前記装着部の軸線と直交する前記装着部の断面はD字状である。
【請求項4】
請求項2に記載の処置用内視鏡であって、
前記嵌合部材は、
前記装着穴の内部に突出する先端に設けられ、前記嵌合穴と嵌合する嵌合突起と、
前記嵌合突起と前記嵌合穴とが嵌合したときに前記装着部の前記第2外周面と接触し、かつ前記嵌合突起の端面の面積より大きい面積を有する接触面と、を有する。
【請求項5】
請求項2に記載の処置用内視鏡であって、前記装着部の前記嵌合穴は、前記被装着部に挿入される先端に近づくにしたがって、徐々に浅くなるように形成されている。
【請求項6】
請求項1に記載の処置用内視鏡であって、
円柱状の突起部を有し、前記伝達部材の前記操作部と接続される側の端部が取り付けられる装着部と、
前記操作部に設けられ、前記装着部の前記突起部が挿入される装着穴を有する被装着部と、
をさらに備え、
前記装着部は、
先端に向かって細くなるようにテーパ状に加工された第1の突起部を有するベースと、
先端に向かって細くなるようにテーパ状に加工された第2の突起部を有し、前記ベースに対して回転自在に取り付けられ、前記伝達部材が巻きまわされたプーリと、
前記プーリを挟むように前記ベースに取り付けられたカバーと、を有し、
前記被装着部は、
前記第1の突起部が挿入される第1の装着穴を有する第1被装着部材と、
前記第2の突起部が挿入される第2の装着穴を有し、前記第1被装着部材に回転自在に取り付けられた第2被装着部材と、を有し、
前記カバーは、前記ベースに対して、所定の範囲相対移動可能に取り付けられており、
前記第1の装着穴及び前記第2の装着穴の少なくとも一方の壁面は、前記第1の突起部又は前記第2の突起部が挿入される側の端部に向かって徐々に薄くなるように面取りされている。
【請求項7】
請求項6に記載の処置用内視鏡であって、前記装着部が前記被装着部に装着されたときに、前記プーリの前記第2の突起部は、前記ベースと非接触の状態となる。
【請求項8】
請求項1に記載の処置用内視鏡であって、前記伝達部材を複数備え、各々の前記伝達部材が、伸縮性を有する連結部材で連結されている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2009−183699(P2009−183699A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13615(P2009−13615)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】