凧
【課題】突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができるとともに、揚力を十分に確保して高い飛行性能を有する凧を提供すること。
【解決手段】凧シート2に、凧1の対象軸となる中心骨4と、前記中心骨4に直交する主翼11の主要部に配置された主翼主骨5と、前記中心骨4と前記主翼主骨5との交点より下方から前記主翼主骨5に向かって傾斜して配置された主翼補強骨6と、主翼前縁部分から主翼翼端11aに向かって配置した主翼細骨13とを配置してなる凧1において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨5、主翼補強骨6及び主翼細骨13の配置位置を覆い、かつ、主翼11の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨4を対象軸として、対となるように凧シート2に貼り付ける。
【解決手段】凧シート2に、凧1の対象軸となる中心骨4と、前記中心骨4に直交する主翼11の主要部に配置された主翼主骨5と、前記中心骨4と前記主翼主骨5との交点より下方から前記主翼主骨5に向かって傾斜して配置された主翼補強骨6と、主翼前縁部分から主翼翼端11aに向かって配置した主翼細骨13とを配置してなる凧1において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨5、主翼補強骨6及び主翼細骨13の配置位置を覆い、かつ、主翼11の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨4を対象軸として、対となるように凧シート2に貼り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行特性を改善した凧に関し、特に、その組立方法を改善した凧に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より種々の凧が考案され、用いられているが、近年、流体力学、特に、航空機力学を設計に取り入れることにより、飛行特性を改善した凧が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この凧は、図10〜図12に示すように、中心骨21、主翼主骨22、主翼前縁骨23、主翼補強骨24、主翼中間縦骨25、尾翼骨26、主翼延長骨27、主翼細骨28、凧シート29を主要構成部材とし、中心骨21と主翼主骨22は、主翼主骨継手33によって、また、中心骨21と主翼補強骨24は、主翼補強骨継手34によって取り付けられている。
ここで、32は、主翼中間補強骨を、31、32は、それぞれ、主翼、尾翼を示すものである。
【0004】
そして、この凧20は、組み立てるに際して、まず、凧シート29の中心対称軸に中心骨21を配置する。次に、水平方向の主翼主骨22を主翼31の主要部に配置する。中心骨21と主翼主骨22、図12(a)に示すような樹脂製の主翼主骨継手33を使って連結し、中心骨21を中心に屈曲できる構造とする。主翼補強骨24も同様にして、主翼補強骨継手34を使って組み立てる。骨材は組み立て次第、凧シート29に接着し、相互に固定する。
【0005】
残りの骨材も同様に接着していき、骨組みが完成したら、図11に示すように、左右の主翼主骨22をバネ35とバネ継手36、36で上反角θaをもたせて組み立てる。図12(b)では、バネ継手36を鈍角に折り曲げて使用しているが、鋭角に折り曲げて使用する場合もある。
【0006】
各継手には骨材をはめ込んで固定する複数の穴、又は溝が設けられている。溝は断面が略U字形であるが、入口が少し狭い馬蹄形にして骨材を固定できるようになっている。
【0007】
また、組み立て作業の効率化を図るために、凧シートに各骨を配置する箇所を印刷しておき、両面テープや接着剤によって各骨を貼り付けるようにする凧も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、揚力がもっとも発生する、一方の主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通り他方の主翼前縁中央部分を板骨によって覆うことにより、揚力の確保と中心骨の保護とを行うことのできる凧も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−262772号公報
【特許文献2】特許第3954950号公報
【特許文献3】特許第3699677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、この凧20は、各骨を凧シート29に直接貼り付けるため、各骨材で構成される骨組みに歪が生じやすいという問題があった。
また、凧シート29は、軽量化の観点から不織布が使用されている。不織布を凧シートとして使用する場合、風が抜けやすく、揚力のロスが発生しやすくなるとともに、強風時に貼り付けられた各骨材で形成される骨組みに歪みが生じ、凧20に傾きや回転が発生し、墜落の一因となるという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記従来の凧の有する問題点に鑑み、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨材で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができるとともに、揚力を十分に確保して高い飛行性能を有する凧を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の凧は、凧シートに、凧の対象軸となる中心骨と、前記中心骨に直交する主翼の主要部に配置された主翼主骨と、前記中心骨と前記主翼主骨との交点より下方から前記主翼主骨に向かって傾斜して配置された主翼補強骨と、主翼前縁部分から主翼翼端に向かって配置した主翼細骨とを配置してなる凧において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けたことを特徴とする。
【0013】
この場合において、前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造とすることができる。
【0014】
また、軽量平板を、発泡樹脂シート部材とすることができる。
【0015】
これらの場合において、前記中心骨に錘を位置調節可能に配設することができる。
【0016】
中心骨に錘を位置調節可能に配設するときは、前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を取り付けることができる。
【0017】
また、前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割することができる。
【0018】
また、この場合において、前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の凧によれば、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けるようにしたから、凧を構成する骨材のうち主要となる主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨を凧シートとは別となる軽量平板に配置し、十分な強度と面精度を確保して凧を組み立てることができ、優れた微風特性を損なうことなく、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができる凧を提供することができる。
【0020】
また、前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造としたときは、主翼主骨及び主翼補強骨からなる骨組み構造を面精度の高い定盤等の上で十分な面精度を確保しながら組み立ててから軽量平板に配置することができる。この場合、主翼主骨及び主翼補強骨に加え、中心骨と平行となる縦骨を主翼主骨の両端に位置させた骨組み構造とすることもできる。
【0021】
また、前記軽量平板を、発泡樹脂シート部材とするときは、翼弦長の1/4〜1/3までという揚力がもっとも発生する範囲を凧シートよりもはるかに折り曲げ強度を有する発泡樹脂シート部材で覆っているので、揚力発生時の空気漏れや面の軽量平板からの歪みによる揚力の低減を減少させ、同じ風速を受けてもはるかに高揚力の安定した飛行をすることができる。
【0022】
また、前記中心骨に錘を位置調節可能に配設するときは、凧の重心を簡単に変更することが可能となり、例えば、錘を中心骨の尾翼の後端に配設し、重心を尾翼側に移動させることによって、凧を手で投げた場合の滑空速度を失速させることができる。
【0023】
また、前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を配設するときは、鉄心状の錘を中心骨の中空内に嵌入することによって容易に着脱可能になるとともに、位置調節も簡単に行うことができる。
【0024】
また、前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割するときは、大型の凧の持ち運びを容易にするために、四つ折れの構造を採用することができ、凧の翼を二段上反角をもって飛行させることができる。
【0025】
また、前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設するときは、翼端軽量平板が、中央軽量平板と翼端軽量平板との間を揺動中心として揺動する際の揺動幅を規制して最適二段上反角をもって飛行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の凧の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図6に、本発明の凧の一実施例を示す。
【0028】
この凧1は、凧1の対象軸となる中心骨4と、主翼11の主要部となる空力中心の近傍に配置された主翼主骨5、前記中心骨4と前記主翼主骨5との交点より下方から前記主翼主骨5に向かって傾斜して配置された主翼補強骨6とを主要構成部材とし、主翼前縁部分から主翼翼端11aに向かって配置した主翼細骨13と、尾翼12の側方外縁部分の形状保持のための尾翼骨10とを凧シート2に貼り付けて構成されている。
そして、この凧1は、主翼前縁中央部分から中心骨4の先端部分を通って前記主翼主骨5及び主翼補強骨6の配置位置を覆い、主翼主骨5、主翼補強骨6及び主翼主骨5の両端に中心骨4と平行となる縦骨7、7を配置した中央軽量平板S1と、主翼前縁中央部分から主翼翼端11aを通って前記主翼細骨13の配置位置を覆い、主翼細骨13を配置した翼端軽量平板S2とを、中心骨4を対象軸として、対となるように凧シート2に貼り付けるようにしている。
軽量平板は、大型で四つ折れ構造の凧ではなく、二段上反角をもって飛行させることのない二つ折れの凧の場合には中央軽量平板S1と翼端軽量平板S2との分割構造にする必要ない。
【0029】
中央軽量平板S1及び翼端軽量平板S2の材質は、特に限定されず、不織布等を使用する凧シート2より強度を有し、かつ、軽量な材料である発泡樹脂平板、例えば、スチレン発泡樹脂平板等を利用することができる。
【0030】
中央軽量平板S1に配置する主翼主骨5、主翼補強骨6及び縦骨7、7は、図2(a)に示すように、予め定盤等、面精度の高い作業台30の上で、エポキシ接着剤等の強力接着剤で接着して組み立てた骨組み構造3とすることができる。
これによって、凧1を構成する主要な骨材の組み立てを十分な面精度を確保して行った骨組み構造3によって支持された発泡樹脂の平板を凧シート2に貼り付けて完成した凧1は面の歪みが生じにくく、突風や強風時の飛行の際の安定を保つことができる。
【0031】
凧1を構成する各骨材は、図2(a)に示す丸材のほか、角材を使用することもでき、その材料としては、グラスファイバ、カーボン強化樹脂、ヒノキ、ラミン等の木材、中実、中空又は発泡した樹脂材料、竹ひご、ピアノ線等の金属材料等からなる所要の剛性を有する線材を使用することができる。
【0032】
作業台30の上で組み立てた主翼主骨5、主翼補強骨6及び縦骨7、7からなる骨組み構造3を、図2(c)に示すように、作業台30の上で中央軽量平板S1に配置し、適宜手段で貼り付ける。
このとき、中央軽量平板S1に、中央軽量平板S1から翼端軽量平板S2に向かって突出し、翼端軽量平板S2の揺動を規制する規制部材16を配設することが好ましい。
【0033】
規制部材16は、その構成を特に限定されず、例えば、板バネ等を利用することができる。規制部材16の配設位置は、中心骨4から離れた位置の縦骨7と中央軽量平板S1との間で、表面が中央軽量平板S1と同一面となるように、中央軽量平板S1に段差部分を設けて配設することが好ましい。
【0034】
そして、図3(a)〜図3(b)に示すように、中央軽量平板S1と、主翼細骨13を配置し、前記規制部材16を固定するための固定部材17を配設した翼端軽量平板S2とを中心骨4及び尾翼骨10を貼り付けた凧シート2の所定箇所に配置し、適宜手段で貼り付ける。
この場合、規制部材16の表面に貼着した面ファスナMと固定部材17の裏面(翼端軽量平板S2との当接面)に貼着した面ファスナM’とによって規制部材16を翼端軽量平板S2に固定するようにしている。これによって、四つ折れの大型凧の場合の収納を容易に行うことができる。
【0035】
また、規制部材16の固定方法は、図4に示すように、翼端軽量平板S2を中央軽量平板S1と同一面上に位置させたときに規制部材16が位置する部分を切り欠き、切り欠き部分の両横に面ファスナMを貼着し、翼端軽量平板S2を中央軽量平板S1と同一面上に位置させたときに規制部材16の表面に貼着した面ファスナMと併せて同一面上の3箇所に面ファスナMを配設するようにして、前記3箇所の面ファスナMと対応する位置に面ファスナM’を貼着した固定部材17を押し当てることによって固定することもできる。
【0036】
凧1の対象軸となる中心骨4には、錘18を位置調節可能に配設することができる。
この錘18の取付方法は、特に限定されるものではなく、例えば、外部から中心骨4を挟み込むように取り付けることができるほか、図5(a)に示すように、中心骨4を中空構造として、その内部に錘18を取り付けるようにすることができる。
この場合、錘18の外径を中心骨4の内径とほぼ同寸法の鉄心として、嵌入するようにして取り付けることが好ましい。
また、図5(b)〜図5(c)に示すように、中心骨4の中央近傍に錘18を配設するときは、例えば、中心骨4にスリット4aを設け、錘18から突出させた突出部18aをスリット4aから突出させることによって、矢印方向へ錘18を簡単に移動させることができる。
【0037】
本実施例の凧1は、揚力が大きく、飛行性能が優れているが、さらに、例えば、尾翼12の後端に錘18を位置調節可能に取り付け、重心を後部にずらせることにより、滑空速度を低下させることができる。
そして、この特性を利用して、体育館等の室内で、例えば、釣竿等の長い竿に凧1を取り付け、竿を横方向に振ると、凧1が水平飛行を行いながら、発生した揚力により上昇し、さらに、竿を振る方向を反転させると、凧1はこれに追随し反転した後、水平飛行を続けながら上昇をする。この動作を繰り返すことにより凧は、頭上に達するが、このとき、竿を振るのをやめると、凧が頭上を起点に滑空を始める。糸がたわまないように、滑空をさせた後、高度がある程度下がったときに、再び竿を左右に振ると揚力を発生させて上昇を行う。
以下、この動作を繰り返すことで、凧1は、揚力発生による上昇と滑空を繰り返し、風のない室内でも容易に凧揚げを行うことができる。
【0038】
また、前記規制部材16によって、図6(a)に示すように、凧1は、二段上反角をもって飛行することができ、主翼翼端11aの揺動幅を規制することかできる。
また、固定部材17及びバネ14を外すことによって、図6(b)に示すように、簡単に折りたたんで保管・運搬をすることができる。
【0039】
そして、中央軽量平板S1及び翼端軽量平板S2を凧シート2に貼り付けた後に、従来例と同様、左右の主翼主骨5をバネ14とバネ継手15、15で上反角をもたせ、凧糸取付部分8に凧糸を取り付けて組み立てを完了する(図6(a)参照)。
【0040】
次に、無風状態で飛ぶ凧1の飛行原理を説明する。
図7は、二次元翼、すなわちソアリングする鷲鷹類の翼の形状に似たアスペクト比の高い平面形状を持つ翼であって、断面が平板の翼の迎角と風圧中心の関係を示したものである。
図7に示すように、二次元平板翼の場合、風圧中心は、迎角が失速角以下の非失速飛行の場合は、迎角の大きさにかかわらず翼の前縁から翼幅cの1/4の点にある。
この点で風に平行に翼を支えると、迎角にかかわらず翼には、翼の角度を変えようとするモーメントが変化しないので、風圧中心ともいわわれる。
また、この点では翼に加わるモーメントが常にゼロと一定であるので空力中心ともいわれる(通常、航空機は、重心を空力中心よりも前にして飛行している。)。
また、一般に断面形状がキャンバーを持つ非平面翼では、モーメントはゼロではないが一定となる点がある。これが一般の空力中心といわれるもので、普通、空力中心と風圧中心は一致しない。
一方、平板翼の場合は、空力中心と風圧中心が一致するという特性を有している。
さて、図8に示す凧1は、竿で水平に引っ張ることによって凧1が失速角以下の迎角で飛行しているときの力のバランスを示している。
凧1の重心は、凧1の後端に調整可能な状態で置かれた錘18の位置の微調整で、航空機とは異なり、風圧中心、つまり、空力中心よりもやや後方に置かれている。
一方、竿の水平運動によって糸目中心に加えられる推力Pが加えられるので、重心にかかる重力をGとしたとき、迎角θが次の関係式で表される。
Tanθ=G×(風圧中心〜糸目中心間の距離)/(P×(糸目中心〜風圧中心間の距離))
ここで、この推力Pを調整することによって、迎角θを失速角以下の大きな値に保って、図9に示すように大きな揚力係数が得られ、飛行速度が低くても効率よく揚力を発生して飛行を続けるようにすることができる。
そして、このとき発生する揚力が重力Gよりも大きくなれば、凧1は無風でも上昇することになる。
ここで、竿を引くのを止めると、凧1は自力で滑空しようとする。
凧1の重心は、図8に示すように、失速角以下の迎角θの場合の風圧中心よりやや後方にとってあるので、凧糸からの推力Pが反転する瞬間に生じる推力ゼロの瞬時の自力滑空では、重力Gに引っ張られて、凧は頭をもたげる。
その結果、凧1は失速し、図7に示すように、風圧中心が重心より後方に移動する。
すると、凧1は再び頭を下げて非失速飛行することとなり、風圧中心が重心より前方に移動し、凧1は再び失速状態になる。これをピッチング飛行という。
普通、ピッチング飛行では失速飛行時の抗力により滑空速度が極端に低下し、1〜3回のピッチングで速度を失い墜落する。
そして、このピッチング飛行が持続する短い瞬間に竿を逆方向に引っ張ると、凧1は糸目中心で引っ張られて再び非失速状態となり揚力を受けて上昇する。
このような竿の動きを繰り返すことにより、凧1は無風にもかかわらず上昇していくものとなる。
以上の例では竿を使って手動で揚げた例であるが、おもちゃの電動自動車や電車を使って前進後退を繰り返せば室内の狭い空間でも小さい凧1を安全に揚げることができる。
【0041】
以上、本発明の凧について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の凧は、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨材で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができるとともに、揚力を十分に確保して高い飛行性能を有するものであることから、屋外で使用する凧のほか、室内で使用する凧の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の凧の一実施例を示す平面図である。
【図2】中央軽量平板に主翼主骨、主翼補強骨及び縦骨の骨組み構造を配置する作業方法を示し、(a)は作業台上で主翼主骨、主翼補強骨及び縦骨の骨組み構造を組み立てるところを、(b)は中央軽量平板を、(c)は中央軽量平板に骨組み構造を配置するところを示す。
【図3】凧シートに中央軽量平板及び翼端軽量平板を貼り付ける作業方法を示し、(a)は凧シートに両シートを配置する前を、(b)は配置して貼り付けたところを示す。
【図4】規制部材の別の固定方法を示し、(a)は翼端軽量平板が貼り付けられている主翼翼端を中央軽量平板が貼り付けられている主翼に対して約90度曲げた状態を、(b)は主翼翼端を主翼と同一面上にした状態を、(c)は固定部材で規制部材を固定した状態を示す。
【図5】同凧の中心骨を中空構造として内部に錘を配設する例を示し、(a)は尾翼部分に配設した例を、(b)は中央付近に移動可能に配設した例を、それぞれ示し、(c)は(b)のA部の拡大図である。
【図6】同凧の正面図を示し、(a)は上二段反角の状態を、(b)は主翼を折りたたんだ状態を示す。
【図7】凧の迎角によって変わる風圧中心の前縁からの距離を示すグラフである。
【図8】無風状態で安定飛行する凧に加わる力のバランスの説明図である。
【図9】迎角と揚力係数との関係を示すグラフである。
【図10】従来の凧の平面図である。
【図11】同凧にバネを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】同凧の骨組みに用いる継手の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 凧
2 凧シート
3 骨組み構造
4 中心骨
5 主翼主骨
6 主翼補強骨
7 縦骨
11 主翼
11a 主翼翼端
16 規制部材
17 固定部材
18 錘
S1 中央軽量平板
S2 翼端軽量平板
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行特性を改善した凧に関し、特に、その組立方法を改善した凧に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より種々の凧が考案され、用いられているが、近年、流体力学、特に、航空機力学を設計に取り入れることにより、飛行特性を改善した凧が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この凧は、図10〜図12に示すように、中心骨21、主翼主骨22、主翼前縁骨23、主翼補強骨24、主翼中間縦骨25、尾翼骨26、主翼延長骨27、主翼細骨28、凧シート29を主要構成部材とし、中心骨21と主翼主骨22は、主翼主骨継手33によって、また、中心骨21と主翼補強骨24は、主翼補強骨継手34によって取り付けられている。
ここで、32は、主翼中間補強骨を、31、32は、それぞれ、主翼、尾翼を示すものである。
【0004】
そして、この凧20は、組み立てるに際して、まず、凧シート29の中心対称軸に中心骨21を配置する。次に、水平方向の主翼主骨22を主翼31の主要部に配置する。中心骨21と主翼主骨22、図12(a)に示すような樹脂製の主翼主骨継手33を使って連結し、中心骨21を中心に屈曲できる構造とする。主翼補強骨24も同様にして、主翼補強骨継手34を使って組み立てる。骨材は組み立て次第、凧シート29に接着し、相互に固定する。
【0005】
残りの骨材も同様に接着していき、骨組みが完成したら、図11に示すように、左右の主翼主骨22をバネ35とバネ継手36、36で上反角θaをもたせて組み立てる。図12(b)では、バネ継手36を鈍角に折り曲げて使用しているが、鋭角に折り曲げて使用する場合もある。
【0006】
各継手には骨材をはめ込んで固定する複数の穴、又は溝が設けられている。溝は断面が略U字形であるが、入口が少し狭い馬蹄形にして骨材を固定できるようになっている。
【0007】
また、組み立て作業の効率化を図るために、凧シートに各骨を配置する箇所を印刷しておき、両面テープや接着剤によって各骨を貼り付けるようにする凧も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、揚力がもっとも発生する、一方の主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通り他方の主翼前縁中央部分を板骨によって覆うことにより、揚力の確保と中心骨の保護とを行うことのできる凧も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−262772号公報
【特許文献2】特許第3954950号公報
【特許文献3】特許第3699677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、この凧20は、各骨を凧シート29に直接貼り付けるため、各骨材で構成される骨組みに歪が生じやすいという問題があった。
また、凧シート29は、軽量化の観点から不織布が使用されている。不織布を凧シートとして使用する場合、風が抜けやすく、揚力のロスが発生しやすくなるとともに、強風時に貼り付けられた各骨材で形成される骨組みに歪みが生じ、凧20に傾きや回転が発生し、墜落の一因となるという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記従来の凧の有する問題点に鑑み、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨材で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができるとともに、揚力を十分に確保して高い飛行性能を有する凧を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の凧は、凧シートに、凧の対象軸となる中心骨と、前記中心骨に直交する主翼の主要部に配置された主翼主骨と、前記中心骨と前記主翼主骨との交点より下方から前記主翼主骨に向かって傾斜して配置された主翼補強骨と、主翼前縁部分から主翼翼端に向かって配置した主翼細骨とを配置してなる凧において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けたことを特徴とする。
【0013】
この場合において、前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造とすることができる。
【0014】
また、軽量平板を、発泡樹脂シート部材とすることができる。
【0015】
これらの場合において、前記中心骨に錘を位置調節可能に配設することができる。
【0016】
中心骨に錘を位置調節可能に配設するときは、前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を取り付けることができる。
【0017】
また、前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割することができる。
【0018】
また、この場合において、前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の凧によれば、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けるようにしたから、凧を構成する骨材のうち主要となる主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨を凧シートとは別となる軽量平板に配置し、十分な強度と面精度を確保して凧を組み立てることができ、優れた微風特性を損なうことなく、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができる凧を提供することができる。
【0020】
また、前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造としたときは、主翼主骨及び主翼補強骨からなる骨組み構造を面精度の高い定盤等の上で十分な面精度を確保しながら組み立ててから軽量平板に配置することができる。この場合、主翼主骨及び主翼補強骨に加え、中心骨と平行となる縦骨を主翼主骨の両端に位置させた骨組み構造とすることもできる。
【0021】
また、前記軽量平板を、発泡樹脂シート部材とするときは、翼弦長の1/4〜1/3までという揚力がもっとも発生する範囲を凧シートよりもはるかに折り曲げ強度を有する発泡樹脂シート部材で覆っているので、揚力発生時の空気漏れや面の軽量平板からの歪みによる揚力の低減を減少させ、同じ風速を受けてもはるかに高揚力の安定した飛行をすることができる。
【0022】
また、前記中心骨に錘を位置調節可能に配設するときは、凧の重心を簡単に変更することが可能となり、例えば、錘を中心骨の尾翼の後端に配設し、重心を尾翼側に移動させることによって、凧を手で投げた場合の滑空速度を失速させることができる。
【0023】
また、前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を配設するときは、鉄心状の錘を中心骨の中空内に嵌入することによって容易に着脱可能になるとともに、位置調節も簡単に行うことができる。
【0024】
また、前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割するときは、大型の凧の持ち運びを容易にするために、四つ折れの構造を採用することができ、凧の翼を二段上反角をもって飛行させることができる。
【0025】
また、前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設するときは、翼端軽量平板が、中央軽量平板と翼端軽量平板との間を揺動中心として揺動する際の揺動幅を規制して最適二段上反角をもって飛行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の凧の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図6に、本発明の凧の一実施例を示す。
【0028】
この凧1は、凧1の対象軸となる中心骨4と、主翼11の主要部となる空力中心の近傍に配置された主翼主骨5、前記中心骨4と前記主翼主骨5との交点より下方から前記主翼主骨5に向かって傾斜して配置された主翼補強骨6とを主要構成部材とし、主翼前縁部分から主翼翼端11aに向かって配置した主翼細骨13と、尾翼12の側方外縁部分の形状保持のための尾翼骨10とを凧シート2に貼り付けて構成されている。
そして、この凧1は、主翼前縁中央部分から中心骨4の先端部分を通って前記主翼主骨5及び主翼補強骨6の配置位置を覆い、主翼主骨5、主翼補強骨6及び主翼主骨5の両端に中心骨4と平行となる縦骨7、7を配置した中央軽量平板S1と、主翼前縁中央部分から主翼翼端11aを通って前記主翼細骨13の配置位置を覆い、主翼細骨13を配置した翼端軽量平板S2とを、中心骨4を対象軸として、対となるように凧シート2に貼り付けるようにしている。
軽量平板は、大型で四つ折れ構造の凧ではなく、二段上反角をもって飛行させることのない二つ折れの凧の場合には中央軽量平板S1と翼端軽量平板S2との分割構造にする必要ない。
【0029】
中央軽量平板S1及び翼端軽量平板S2の材質は、特に限定されず、不織布等を使用する凧シート2より強度を有し、かつ、軽量な材料である発泡樹脂平板、例えば、スチレン発泡樹脂平板等を利用することができる。
【0030】
中央軽量平板S1に配置する主翼主骨5、主翼補強骨6及び縦骨7、7は、図2(a)に示すように、予め定盤等、面精度の高い作業台30の上で、エポキシ接着剤等の強力接着剤で接着して組み立てた骨組み構造3とすることができる。
これによって、凧1を構成する主要な骨材の組み立てを十分な面精度を確保して行った骨組み構造3によって支持された発泡樹脂の平板を凧シート2に貼り付けて完成した凧1は面の歪みが生じにくく、突風や強風時の飛行の際の安定を保つことができる。
【0031】
凧1を構成する各骨材は、図2(a)に示す丸材のほか、角材を使用することもでき、その材料としては、グラスファイバ、カーボン強化樹脂、ヒノキ、ラミン等の木材、中実、中空又は発泡した樹脂材料、竹ひご、ピアノ線等の金属材料等からなる所要の剛性を有する線材を使用することができる。
【0032】
作業台30の上で組み立てた主翼主骨5、主翼補強骨6及び縦骨7、7からなる骨組み構造3を、図2(c)に示すように、作業台30の上で中央軽量平板S1に配置し、適宜手段で貼り付ける。
このとき、中央軽量平板S1に、中央軽量平板S1から翼端軽量平板S2に向かって突出し、翼端軽量平板S2の揺動を規制する規制部材16を配設することが好ましい。
【0033】
規制部材16は、その構成を特に限定されず、例えば、板バネ等を利用することができる。規制部材16の配設位置は、中心骨4から離れた位置の縦骨7と中央軽量平板S1との間で、表面が中央軽量平板S1と同一面となるように、中央軽量平板S1に段差部分を設けて配設することが好ましい。
【0034】
そして、図3(a)〜図3(b)に示すように、中央軽量平板S1と、主翼細骨13を配置し、前記規制部材16を固定するための固定部材17を配設した翼端軽量平板S2とを中心骨4及び尾翼骨10を貼り付けた凧シート2の所定箇所に配置し、適宜手段で貼り付ける。
この場合、規制部材16の表面に貼着した面ファスナMと固定部材17の裏面(翼端軽量平板S2との当接面)に貼着した面ファスナM’とによって規制部材16を翼端軽量平板S2に固定するようにしている。これによって、四つ折れの大型凧の場合の収納を容易に行うことができる。
【0035】
また、規制部材16の固定方法は、図4に示すように、翼端軽量平板S2を中央軽量平板S1と同一面上に位置させたときに規制部材16が位置する部分を切り欠き、切り欠き部分の両横に面ファスナMを貼着し、翼端軽量平板S2を中央軽量平板S1と同一面上に位置させたときに規制部材16の表面に貼着した面ファスナMと併せて同一面上の3箇所に面ファスナMを配設するようにして、前記3箇所の面ファスナMと対応する位置に面ファスナM’を貼着した固定部材17を押し当てることによって固定することもできる。
【0036】
凧1の対象軸となる中心骨4には、錘18を位置調節可能に配設することができる。
この錘18の取付方法は、特に限定されるものではなく、例えば、外部から中心骨4を挟み込むように取り付けることができるほか、図5(a)に示すように、中心骨4を中空構造として、その内部に錘18を取り付けるようにすることができる。
この場合、錘18の外径を中心骨4の内径とほぼ同寸法の鉄心として、嵌入するようにして取り付けることが好ましい。
また、図5(b)〜図5(c)に示すように、中心骨4の中央近傍に錘18を配設するときは、例えば、中心骨4にスリット4aを設け、錘18から突出させた突出部18aをスリット4aから突出させることによって、矢印方向へ錘18を簡単に移動させることができる。
【0037】
本実施例の凧1は、揚力が大きく、飛行性能が優れているが、さらに、例えば、尾翼12の後端に錘18を位置調節可能に取り付け、重心を後部にずらせることにより、滑空速度を低下させることができる。
そして、この特性を利用して、体育館等の室内で、例えば、釣竿等の長い竿に凧1を取り付け、竿を横方向に振ると、凧1が水平飛行を行いながら、発生した揚力により上昇し、さらに、竿を振る方向を反転させると、凧1はこれに追随し反転した後、水平飛行を続けながら上昇をする。この動作を繰り返すことにより凧は、頭上に達するが、このとき、竿を振るのをやめると、凧が頭上を起点に滑空を始める。糸がたわまないように、滑空をさせた後、高度がある程度下がったときに、再び竿を左右に振ると揚力を発生させて上昇を行う。
以下、この動作を繰り返すことで、凧1は、揚力発生による上昇と滑空を繰り返し、風のない室内でも容易に凧揚げを行うことができる。
【0038】
また、前記規制部材16によって、図6(a)に示すように、凧1は、二段上反角をもって飛行することができ、主翼翼端11aの揺動幅を規制することかできる。
また、固定部材17及びバネ14を外すことによって、図6(b)に示すように、簡単に折りたたんで保管・運搬をすることができる。
【0039】
そして、中央軽量平板S1及び翼端軽量平板S2を凧シート2に貼り付けた後に、従来例と同様、左右の主翼主骨5をバネ14とバネ継手15、15で上反角をもたせ、凧糸取付部分8に凧糸を取り付けて組み立てを完了する(図6(a)参照)。
【0040】
次に、無風状態で飛ぶ凧1の飛行原理を説明する。
図7は、二次元翼、すなわちソアリングする鷲鷹類の翼の形状に似たアスペクト比の高い平面形状を持つ翼であって、断面が平板の翼の迎角と風圧中心の関係を示したものである。
図7に示すように、二次元平板翼の場合、風圧中心は、迎角が失速角以下の非失速飛行の場合は、迎角の大きさにかかわらず翼の前縁から翼幅cの1/4の点にある。
この点で風に平行に翼を支えると、迎角にかかわらず翼には、翼の角度を変えようとするモーメントが変化しないので、風圧中心ともいわわれる。
また、この点では翼に加わるモーメントが常にゼロと一定であるので空力中心ともいわれる(通常、航空機は、重心を空力中心よりも前にして飛行している。)。
また、一般に断面形状がキャンバーを持つ非平面翼では、モーメントはゼロではないが一定となる点がある。これが一般の空力中心といわれるもので、普通、空力中心と風圧中心は一致しない。
一方、平板翼の場合は、空力中心と風圧中心が一致するという特性を有している。
さて、図8に示す凧1は、竿で水平に引っ張ることによって凧1が失速角以下の迎角で飛行しているときの力のバランスを示している。
凧1の重心は、凧1の後端に調整可能な状態で置かれた錘18の位置の微調整で、航空機とは異なり、風圧中心、つまり、空力中心よりもやや後方に置かれている。
一方、竿の水平運動によって糸目中心に加えられる推力Pが加えられるので、重心にかかる重力をGとしたとき、迎角θが次の関係式で表される。
Tanθ=G×(風圧中心〜糸目中心間の距離)/(P×(糸目中心〜風圧中心間の距離))
ここで、この推力Pを調整することによって、迎角θを失速角以下の大きな値に保って、図9に示すように大きな揚力係数が得られ、飛行速度が低くても効率よく揚力を発生して飛行を続けるようにすることができる。
そして、このとき発生する揚力が重力Gよりも大きくなれば、凧1は無風でも上昇することになる。
ここで、竿を引くのを止めると、凧1は自力で滑空しようとする。
凧1の重心は、図8に示すように、失速角以下の迎角θの場合の風圧中心よりやや後方にとってあるので、凧糸からの推力Pが反転する瞬間に生じる推力ゼロの瞬時の自力滑空では、重力Gに引っ張られて、凧は頭をもたげる。
その結果、凧1は失速し、図7に示すように、風圧中心が重心より後方に移動する。
すると、凧1は再び頭を下げて非失速飛行することとなり、風圧中心が重心より前方に移動し、凧1は再び失速状態になる。これをピッチング飛行という。
普通、ピッチング飛行では失速飛行時の抗力により滑空速度が極端に低下し、1〜3回のピッチングで速度を失い墜落する。
そして、このピッチング飛行が持続する短い瞬間に竿を逆方向に引っ張ると、凧1は糸目中心で引っ張られて再び非失速状態となり揚力を受けて上昇する。
このような竿の動きを繰り返すことにより、凧1は無風にもかかわらず上昇していくものとなる。
以上の例では竿を使って手動で揚げた例であるが、おもちゃの電動自動車や電車を使って前進後退を繰り返せば室内の狭い空間でも小さい凧1を安全に揚げることができる。
【0041】
以上、本発明の凧について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の凧は、突風や強風時の飛行の場合であっても、各骨材で形成される骨組みに歪みを生じさせることなく安定した飛行を行うことができるとともに、揚力を十分に確保して高い飛行性能を有するものであることから、屋外で使用する凧のほか、室内で使用する凧の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の凧の一実施例を示す平面図である。
【図2】中央軽量平板に主翼主骨、主翼補強骨及び縦骨の骨組み構造を配置する作業方法を示し、(a)は作業台上で主翼主骨、主翼補強骨及び縦骨の骨組み構造を組み立てるところを、(b)は中央軽量平板を、(c)は中央軽量平板に骨組み構造を配置するところを示す。
【図3】凧シートに中央軽量平板及び翼端軽量平板を貼り付ける作業方法を示し、(a)は凧シートに両シートを配置する前を、(b)は配置して貼り付けたところを示す。
【図4】規制部材の別の固定方法を示し、(a)は翼端軽量平板が貼り付けられている主翼翼端を中央軽量平板が貼り付けられている主翼に対して約90度曲げた状態を、(b)は主翼翼端を主翼と同一面上にした状態を、(c)は固定部材で規制部材を固定した状態を示す。
【図5】同凧の中心骨を中空構造として内部に錘を配設する例を示し、(a)は尾翼部分に配設した例を、(b)は中央付近に移動可能に配設した例を、それぞれ示し、(c)は(b)のA部の拡大図である。
【図6】同凧の正面図を示し、(a)は上二段反角の状態を、(b)は主翼を折りたたんだ状態を示す。
【図7】凧の迎角によって変わる風圧中心の前縁からの距離を示すグラフである。
【図8】無風状態で安定飛行する凧に加わる力のバランスの説明図である。
【図9】迎角と揚力係数との関係を示すグラフである。
【図10】従来の凧の平面図である。
【図11】同凧にバネを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】同凧の骨組みに用いる継手の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 凧
2 凧シート
3 骨組み構造
4 中心骨
5 主翼主骨
6 主翼補強骨
7 縦骨
11 主翼
11a 主翼翼端
16 規制部材
17 固定部材
18 錘
S1 中央軽量平板
S2 翼端軽量平板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凧シートに、凧の対象軸となる中心骨と、前記中心骨に直交する主翼の主要部に配置された主翼主骨と、前記中心骨と前記主翼主骨との交点より下方から前記主翼主骨に向かって傾斜して配置された主翼補強骨と、主翼前縁部分から主翼翼端に向かって配置した主翼細骨とを配置してなる凧において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けたことを特徴とする凧。
【請求項2】
前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造としたことを特徴とする請求項1記載の凧。
【請求項3】
前記軽量平板を、発泡樹脂シート部材としたことを特徴とする請求項1又は2記載の凧。
【請求項4】
前記中心骨に錘を位置調節可能に配設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の凧。
【請求項5】
前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を取り付けたことを特徴とする請求項4記載の凧。
【請求項6】
前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の凧。
【請求項7】
前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設したことを特徴とする請求項6記載の凧。
【請求項1】
凧シートに、凧の対象軸となる中心骨と、前記中心骨に直交する主翼の主要部に配置された主翼主骨と、前記中心骨と前記主翼主骨との交点より下方から前記主翼主骨に向かって傾斜して配置された主翼補強骨と、主翼前縁部分から主翼翼端に向かって配置した主翼細骨とを配置してなる凧において、主翼翼端から主翼前縁中央部分、さらに、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨、主翼補強骨及び主翼細骨の配置位置を覆い、かつ、主翼の揚力が有効に作用する翼の前縁近傍を覆う軽量平板を、中心骨を対象軸として、対となるように凧シートに貼り付けたことを特徴とする凧。
【請求項2】
前記軽量平板に配置する主翼主骨及び主翼補強骨を、接着剤で接着することによって予め組み立てて骨組み構造としたことを特徴とする請求項1記載の凧。
【請求項3】
前記軽量平板を、発泡樹脂シート部材としたことを特徴とする請求項1又は2記載の凧。
【請求項4】
前記中心骨に錘を位置調節可能に配設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の凧。
【請求項5】
前記中心骨を中空構造とし、中心骨の内部に錘を取り付けたことを特徴とする請求項4記載の凧。
【請求項6】
前記軽量平板を、主翼前縁中央部分から中心骨の先端部分を通って前記主翼主骨及び主翼補強骨の配置位置を覆い、主翼主骨、主翼補強骨及び主翼主骨の両端に中心骨と平行となる縦骨を配置した中央軽量平板と、主翼前縁中央部分から主翼翼端を通って前記主翼細骨の配置位置を覆い、主翼細骨を配置した翼端軽量平板とに分割したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の凧。
【請求項7】
前記軽量平板に、中央軽量平板から翼端軽量平板に向かって突出した規制部材を配設したことを特徴とする請求項6記載の凧。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−142471(P2009−142471A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323174(P2007−323174)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(501486741)株式会社森久エンジニアリング (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(501486741)株式会社森久エンジニアリング (4)
【Fターム(参考)】
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