説明

凹多面体シート構造

【課題】柔軟なシートから形成できる筒形の凹多面体シート構造に関する。
【解決手段】底辺を共有する台形(三角形を含む)ペアよりなる六角形の平面敷詰めのパターンで主として覆われ、該パターンを構成する辺に折り筋を付与したことを特徴とする凹多面体シート構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟な凹多面体形状のシート(紙、プラスチック、及びその積層体等)からなる筒形の凹多面体シート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属のドリンク缶において、通称ダイヤ・カット缶と呼ばれる凹多面体形状のものが多く使われている。これは、第一に同じ肉厚の円筒缶と比較して、外圧に対する剛性が、約3倍になる特性による。第二にその凹凸の形状が手の感触、熱の伝導性などで、デザイン性に優れているからである。(非特許文献1、2)
【0003】
【非特許文献1】Miura,K.PCCP SHELLS,New Approaches to Structural Mechanics,Shells and Biological Structures,Kluwer Academic Publishers,2002.
【非特許文献1】三浦公亮、たたむ〜エアーバッグから宇宙船まで〜、発明Vol.102,No.1,pp.30−35
【0004】
しかし、前記技術を可能としたのは、薄肉金属缶の可塑性加工によるのであって、紙などのシートでは類似の構造物を製造することは殆ど不可能である。
【0005】
一方、紙などの材料は、そのエコロジック・サイクルの見地から、推奨される素材である。したがって、これらの比較的柔軟な素材を用いて、ダイヤ・カット缶的な形状を実現できれば、適度な剛性と柔軟性を兼ね備えた、筒形の構造を実現する可能性が予見される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することを目的として、紙などのシートにより、適度の剛性と柔軟性を兼ね備え、かつ手触りや熱伝導性の点でデザイン性の優れた、筒形のシート構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る凹多面体シート構造は、底辺を共有する台形(三角形を含む)ペアよりなる六角形の平面敷詰めのパターンで主として覆われ、該パターンを構成する辺に折り筋を付与したことを特徴とする凹多面体シート構造にある。
【0008】
本発明の請求項2に係る凹多面体シート構造は、請求項1の複数の凹多面体シートを結合して筒形の形状を形成したことを特徴とする凹多面体シート構造にある。
【0009】
本発明の請求項3に係る凹多面体シート構造は、請求項2の筒形の凹多面体シート構造の端部をクロージャーにより閉じたことを特徴とする容器にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について以下に詳細に説明する。
【0011】
本発明の請求項1に係る発明を体現する凹多面体シート1は、底辺を共有する台形(三角形を含む)ペアよりなる六角形の平面敷詰めのパターン10で主として覆われ、該パターンを構成する辺に折り筋11を付与したことを特徴とする凹多面体シートである。図1では、底辺を共有する三角形のペアの平面敷き詰めのパターン10で、折り筋11が形成されたシートを示している。台形の小さい辺の極限は三角形となり、その本質は変らないから、以後三角形で説明することにする。
【0012】
図2では、前記凹多面体シート1を、三角形の上下方向を軸線として筒状に曲げた場合の形状を示している。折り筋が形成されているこの場合、結果はあたかもダイヤ・カット缶の表面のように、凹多面体になるか、あるいは単に筒形になるかである。後者は折り筋11が充分に形成されていない場合に起る。これを要するに、前記のパターンの折り筋があらかじめきちんと形成されていると、曲げようとすると自然に凹多面体の形状となる特徴を示している。
【0013】
本発明の請求項2、3に係る凹多面体シート構造は、請求項1の凹多面体シートを複数用いることを特徴とする凹多面体シート構造である。図3は、二つのシート1、2の左右縁だけを貼り合わせて作られる構造物(図3、正面図、断面図)である。
【0014】
さて、本発明の凹多面体シート構造には、柔軟性と剛性の交じり合った、独特の形状特性が認められる。図2に示される凹多面体形状は、もしそれぞれの三角形の面が剛な平板から構成されると、これは正確にダイヤ・カット缶と同様の形状を保つことは明らかである。
【0015】
しかし、図3に示されるように、この二枚のシートには内部には折り筋11があるが、両側の帯状部12には折り筋が無い。したがって、このシートを筒形に変形しようとすると、内部はダイヤ・カット形状になろうとするが、帯状部はその変形に関係なく平面を保とうとする。さらにこの部分は裏側で互いに接合しているから、平面を保とうとする傾向が強い。これら拮抗する勢力の結果、帯状部に近い面のダイヤ・カット形状はややフラットにおさえられる。結果として、このシート構造の安定な巨視的形状は、円筒というより扁平なレンズ状になる(図4)。
【0016】
以上を要するに、このシート構造には、二つの安定な状態がある。第一は折り筋が起動しなくて平らな状態、第二は扁平なレンズ状態である。元来柔軟なシートであるから、荷重か拘束により形状を変えるが、荷重か拘束をとりされば、レンズ状か平面に戻る。多くの場合、レンズ状の形態に戻ることが予想される。もちろん、表面のダイヤ・カット形状は維持される。従って、巨視的には柔軟に変形するが、局所的にはダイヤ・カットの剛性を保持することが出来る。これは本発明に係る凹多面体シート構造の非常に重要な性質である。
【0017】
本発明に係る凹多面体シート構造の、もう一つの特徴は、その生産の容易さにある。
その生産は、要するに、平面シートに決められた折り筋を付与するだけであるから、生産は容易で且つ高速に実行できる。
【0018】
本発明に係る凹多面体シート構造の、さらに他の特徴は、多くの場合製品は平らにして保存できるから、使用時に筒形にすれば自動的に筒形の凹多面体が起動することである。その効果は、保存と輸送の費用が軽減できることであるが、視点を変えると、包装材としての利用が視野に現れてくる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施例を示して、詳細に説明する。実施例1は、図1、5で示した凹多面体シート構造を汎用の基本素材として用いる実施例である。従って、筒形であり、表面の剛性が高く、かつデザイン性に富むということで、その利用は広範囲にわたる。その形状は、台形あるいは三角形のパターンを適宜変更することにより、巨視的に円筒から円錐まで自在に設計することが可能である。また、内外部に何らかの拘束があれば、形態はより安定する。
【0020】
具体的には、円筒とそれに接する凹多面体シートを接合して、一種の補強円筒殻を作ることが一つの代表である。凹多面体シートは、円筒に沿って曲げることによって、自然に凹凸形状を発現するという柔軟性をもつとともに、いったん固定されると高い剛性を発揮するからである。さらに進んで、二つの薄肉円筒のあいだに、凹多面体シートを挿入して接合すれば、サンドイッチ円筒殻となり、より高い剛性が得られる。もちろんこれらの方法は、円錐形の場合にも適用される。図5では、前記三角形パターンを一様でなく、位置によって可変20とすることで、切頭円錐形状の凹多面体の設計図を示した。これに限らず、多種なパターンと多種な組み合わせにより、多様な凹多面体シート構造を構成することができる。
【0021】
実施例2は、パウチ包装体への利用である(図6)。図3に示すような、長方形の前面シート1と後面シート2を重ね合わせる。図6の点線に示されるように、その下端部内側に、二つ折りした底部クロージャー14を、折り目を内側にして装填してある。
【0022】
そして、上端部13は内容物を充填するための未シール開口部として、その前面シート1の両縁部12と後面シート2の両縁部12を接合し、前記前面シートの下端部、後面シートの下端部と底部クロージャーを適宜接合することで、パウチ包装体ができる(図6)。
【0023】
さて、前記パウチ包装体に内容物を充填すると、両面のシートは図4に示すような筒形凹多面体に変形する。その横断面は図4bのような形状である。シート面は、斜めの山折りと水平方向の谷折りの折り目とからなる筒形凹多面体である。シート両縁部は接合によりフラットとなり、筒形凹多面体との境界面は遷移領域となる。この例では、横方向に菱形が3個形成されるように設計されている。
【0024】
前記の平衡位置は、折り筋の設計と、シートの材料特性によって制御できるから、実用上適当な形状を得ることができる。また前記のように、パターンを構成する要素は、常に同一である必要はなく、その位置によって徐々に変化させることができるから、設計の多様性は広い。
【0025】
他の例として、ここにあげるのは、一枚のシートは前記の例のごとく、適宜なパターンを生成し、その適宜折り畳み位置で、フラットな剛性の高いシートを第二のシートとして結合することである。この拘束によって、剛性のきわめて高いパウチ包装体ができる。これと同類の技術は、通常の二枚のシートによるパウチ包装体の間に、フラットな第三のシートを挿入することである。この場合、第三のシートには、拘束が目的であって、包むという機能は必要ないから、穴を開けたり、帯状であったり、また張力部材だけでも良い。
【0026】
なお、実施例2,3では二枚のシートを用いたが、場合によっては一枚のシートで、これらを実現できることは明らかである、
【発明の効果】
【0027】
本発明の凹多面体シート構造は、巨視的には柔軟でありながら、局所的には凹多面体の剛性を保ち、かつ手触りや熱の伝わり方の点など、デザイン性に優れたものである。
【0028】
また、使用目的に応じて、形状の設計の自由度は高く、多様な要求に適応する。
【0029】
また、その製造は、通常の製造装置に、折り筋あるいは折り目を付与する工程を付加するだけであるから、大きな変更を伴わないで実現可能である。
【0030】
また、多くの場合これらの製品は平らにして保存でき、使用時に凹多面体シートに変換できるから、その保存と輸送の費用が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】凹多面体シート(1a正面図、1b縦断面図)
【図2】変形後の凹多面体シート(2a正面図、2b縦断面図、2c平面図)
【図3】二枚の凹多面体シートによる構造(3a正面図、3b平面図)
【図4】変形後の二枚の凹多面体シートによる構造(4a正面図、4b平面図)
【図5】切頭円錐形になる凹多面体シートのパターン(正面図)
【図6】パウチ包装体の例(斜視図)
【符号の説明】
【0032】
1、2 凹多面体シート
10 台形または三角形ペアのパターン
11 折り筋または折り目(破線−−−−−)
12 凹多面体シート縁部
13 パウチ包装体開口部
14 パウチ包装体底部クロージャー
20 可変三角形ペアのパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底辺を共有する台形(三角形を含む)ペアよりなる六角形の平面敷詰めのパターンで主として覆われ、該パターンを構成する辺に折り筋を付与したことを特徴とする凹多面体シート構造。
【請求項2】
請求項1の複数の凹多面体シートを結合して筒形を形成したことを特徴とする凹多面体シート構造。
【請求項3】
請求項2の筒形の凹多面体シート構造の端部をクロージャーにより閉じたことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84336(P2011−84336A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255505(P2009−255505)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(591048139)
【出願人】(304020074)
【Fターム(参考)】