説明

出巾木カバー

【課題】本発明は、浴室を改装する際に、短期間に改修工事が行え、現行浴室の広さを変えないで、防水性を確保しつつ、均一でない出巾木の段差を容易に覆うことができる出巾木カバーを提供することを目的とする。
【解決手段】平面視長方形の平板と、この平板の一方の長辺に立設される上壁面と、上記平板の他方の長辺に垂下する下壁面とを備え、上記下壁面が、その先端辺に舌片を有する出幅木カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部に用いられる壁パネルの下端部に適用される出巾木カバーに関する。更に詳しくは、マンション、一般住宅等に既に設置されている浴室を改装する際に、浴室を構成する壁パネルに好適に使用できる出巾木カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション、一般住宅等に、在来工法で設置された浴室の例について図面を用いて説明する。図6は、浴室の概略平面図であり、図7は、浴室の概略断面図である。
在来工法では、コンクリート製の建築物躯体8の床面及び周囲に、防水層7を形成するとともに、その防水層7の上にモルタル9の層を形成し、浴室内の一方に浴槽載置場を、他方には洗い場を形成する。
防水層7は、壁面にも施され、その防水層7を保護するために防水層7の上にモルタル9等が塗られ仕上げられる(以下、「出巾木5」という。)。更に、洗い場には、モルタルまたは軽量コンクリート13等で嵩上げされ、その上面にタイル22等が貼り付けられる。また、壁面にもタイル22等が貼り付けられる。
【0003】
図6及び図7に示すような浴室を長年使用すると、浴室内は、室内の高温多湿が誘因となり、床面、壁面及び天井面に除去困難な黒カビ等が発生し、外観不良、カビ臭並びにタイルの剥がれ等の問題が生じてくる。
【0004】
そこで、このような問題が生じた場合に、従来よく行われていた浴室壁の改修方法(在来の改修方法)は、既設浴室12の既設壁面4、既設床6、モルタル等のはつり作業(削る作業)を行った後、その上にモルタルをもり、更にタイルを貼り、浴室を復元させる方法である。この方法によれば、改修前と同様な浴室を形成することができる。
【0005】
別の方法としては、特許文献1に開示された方法で、両面テープ又は接着剤等を用いて、既設の床、壁等に壁パネルを貼り付ける方法である。この方法であれば、はつり作業がないので、手間と時間が、先に述べた改修方法に比べてかなり省くことができる。
【0006】
また別の方法としては、特許文献2に開示される方法で、既設浴室に防水パン及び壁パネル等を用いてユニット化されたバスルームにより改装する方法である。この方法によれば、現地での組立作業時間が削減される。
【特許文献1】特開2000−116563号公報
【特許文献2】特開2003−232134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、在来工法での改修方法は、図8の部分拡大断面図に示すように、まず、既設床のタイル及びモルタル等と既設壁面のタイル及びモルタル等をはつり、清掃後、新規に防水層7を形成し、その上に防水層7を保護するためのモルタル9を塗り、新規床14及び新規壁面15にタイルを貼り付ける。以上のように作業が煩雑で改修に時間がかかり、工事期間である約1週間は、入浴できない不便さがある。
【0008】
特許文献1に開示されたものでは、図9の壁部断面部に示すように、防水層を保護するためにモルタルが塗られ、モルタルが壁面4の防水層の上に塗られることにより壁面4に1段内側に出る段差(出巾木5)が生じている。この出巾木5の段差を解消するために、段差分の厚みを有した壁下地材10を、接着剤及びビス等で貼り付けた後、その上に壁パネル3等を貼り付ける作業となり、これに時間要す。
また、図9に示す改修方法では、現場毎に出巾木5の段差が均一でなく、壁面毎に壁下地材10の厚みを変えて貼り付ける必要が生じる。
図10に示す改修方法では、出巾木5と、壁面4の平面部に壁パネル3を貼り付けた後、段差部に樹脂製のアングル材11等を貼り付け、このアングル材11の端部又はアングル材11と壁面との隙間を、コーキング剤2等で埋めているが、アングル材11と壁パネル3との隙間はコーキング剤3のみでの止水となり防水性に問題がある。
【0009】
特許文献2に開示されたものでは、在来工法で形成された浴室が、浴室毎に大きさ及び排水口の位置が異なり、工事の都度浴室の大きさ及び排水口位置等を正確に測定し、防水パン及び壁パネル等を測定した寸法に合わせ製作する必要がある。
そして、このような特殊サイズの防水パン及び壁パネルは、その製作に約1ヶ月の期間を要する。その上、防水パンの壁載せ面に壁パネルを建て込むために、防水パン外周部から壁パネル内面まで距離に相当するだけ、改修後の浴室広さを小さくしてしまう。
出巾木がある場合は壁面より内側に突出しているため、更に改修後の浴室広さを小さくしてしまう。
【0010】
本発明は、浴室を改装する際に、短期間に改修工事が行え、現行浴室の広さを変えないで、防水性を確保しつつ、均一でない出巾木の段差を容易に覆うことができる出巾木カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のものに関する。
(1)平面視長方形の平板と、この平板の一方の長辺に立設される上壁面と、上記平板の他方の長辺に垂下する下壁面とを備え、上記下壁面が、その先端辺に舌片を有する出巾木カバー。
(2)項(1)において、平板が、その長辺に平行な溝を1本以上有している出巾木カバー。
(3)項(1)又は(2)において、下壁面が、その裏面にリブを有している出巾木カバー。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出巾木カバーの下壁面が出巾木の前面に垂れ下がり、容易に出巾木を覆うことができる。また、本発明の出巾木カバーは、舌片を備えているので、防水に対する信頼度を向上させることができる。
平板が溝を有する場合には、溝部にて容易に切断作業を行うことができ、様々な厚みの出巾木に対応することができる。
下壁面がリブを有する場合には、面強度を上げることができ、貼り付けする部分の凹凸に対しても曲がらず、直線的に貼り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる出巾木カバーは、使用する材質を特に限定するものではないが、具体的にはプラスチック類やステンレス等の金属類から作られ、特に押出成形に適し、カッター等で容易に切断できる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、出巾木カバーの平板、上壁面及び下壁面の厚みは、その材質によっても異なるが、0.5〜5mmとすることが好ましい。
【0014】
本発明にて述べる出巾木カバーの平板は、上壁面から下壁面に向かい下り傾斜となる1/50乃至1/5程度の勾配が設けられていることが好ましい。
これは、水がかかった場合に水滴として残らないようにすることを目的として勾配を設けることとしている。
【0015】
本発明にて述べる舌片は、下壁面下端より更に下方へと突出するものであり、下方への突出長さは、1mm〜5mm程度にすることが好ましい。
また、この舌片は、先端になるほど薄くなる構造とすることが好ましく、軟質材にて形成されることが更に好ましい。
舌片は、出巾木カバーの下方より水が入りこむことを阻止している。
【0016】
本発明にて述べる溝は、平板を切断することを容易に行うものであり、具体的には、2mm〜5mm程度の間隔で、上壁面に近い20mm〜50mm程度の間に設けられていることが好ましい。また、溝は、平板裏面に形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の出巾木カバーを溝にて切断して使用する場合は、切断部同士を重ね合わせる部分が、両面テープ又は防水パッキン等を介して重ねあわされ、その重ね合わせ部分が出巾木部上面にくるように切断することが好ましい。また前記重ね合わせ部は少なくとも5mm以上になるように出巾木カバーを切断することが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す出巾木カバーの斜視図である。出巾木カバー1は、平板16と、上壁面17と、下壁面18と、舌片19とを備えている。
平板16、上壁面17、下壁面18は、一体成形されたものであり、これに舌片19を接着剤にて固定している。
【0019】
図2は、図1に示す出巾木カバーの断面図である。本実施例の出巾木カバー1は、平板16の長辺に対し上壁面17及び下壁面18が配置され、平板16に対し上壁面17から下壁面18へと下り傾斜するようになっており、勾配を1/30としている。
また、平板の裏面には、複数の溝20を設けてあり、この溝20に沿って平板16を切断しやすくしてある。
更に、下壁面18の裏面には、リブ21を複数設けてあり、カバー強度を向上させている。
【0020】
図3は、図1に示す出巾木カバーの切断後斜視図である。出巾木の突出長さが、平板16の奥行き長さよりも短い場合は、図に示すように、平板16の裏面に設けた溝(図視省略)に沿って平板16を切断し、出巾木カバー1a及び出巾木カバー1bに分割して使用する。
【0021】
図4は、図3に示す分割した出巾木カバーの使用状態を示す斜視図である。
出巾木カバー1a及び出巾木カバー1bとは、出巾木カバー1bの平板16の上に、防水パッキンを介して出巾木カバー1aの平板16を重ねて使用され、平板16同士の重ねしろ分だけ平板の奥行きを短くして使用することができる。
【0022】
図5は、図4にて示した出巾木カバーを浴室に設置した際の斜視断面図である。
本図面を用いて出巾木カバーの設置方法を以下に説明する。
先ず、出巾木5には、その壁面に壁パネル3が、両面テープ及び接着剤を用いて固定される。施工者は、この状態で、既設壁面4から出巾木5の突出寸法を測定し、この寸法に合わせて出巾木カバー1を切断する。出巾木カバー1の切断は、切断後に重なる平板16の重ねしろが、5mm以上となるようにして、カッターにて行う。
出巾木カバーの設置は、先に出巾木カバー1bを、出巾木5の上面及び既設壁面4に対し、両面テープ及び接着剤にて固定する。次いで、出巾木カバー1bの上壁面の上部及びその上の既設壁面4の上に、壁パネル3を、両面テープ及び接着剤を用いて固定する。その後、出巾木カバー1bの平板16の上に、防水パッキンを介して、出巾木カバー1aを両面テープ及び接着剤にて固定する。この際、舌片19の先端が、壁パネル3に当接するように注意する。
最後に、壁パネル3の下端と、出巾木カバー1bと、出巾木カバー1aとに囲まれた部分に、コーキング剤2を塗布する。これにより、水漏れせず容易に壁パネル及び出巾木カバーを貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の1実施例である出巾木カバーの斜視図である。
【図2】図1に示す出巾木カバーの断面図である。
【図3】図1に示す出巾木カバーの切断後斜視図である。
【図4】図3に示す切断された出巾木カバーの使用状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す出巾木カバーを浴室に設置した状態での斜視断面図である。
【図6】従来例である在来工法で設置された浴室の概略平面図である。
【図7】図6に示した浴室の概略断面図である。
【図8】従来例である在来工法で改装した出巾木部の拡大断面図である。
【図9】従来例で改装した出巾木部の拡大断面図である。
【図10】従来例で改装した出巾木部の斜視断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…出巾木カバー、1a…出巾木カバー、1b…出巾木カバー、2…コーキング剤、3…壁パネル、4…既設壁面、5…出巾木、6…既設床、7…防水層、8…建築物躯体、9…モルタル、10…壁下地材、11…アングル材、12…既設浴室、13…軽量コンクリート、14…新規床、15…新規壁面、16…平板、17…上壁面、18…下壁面、19…舌片、20…溝、21…リブ、22…タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形の平板と、この平板の一方の長辺に立設される上壁面と、上記平板の他方の長辺に垂下する下壁面とを備え、上記下壁面が、その先端辺に舌片を有する出巾木カバー。
【請求項2】
請求項1において、平板が、その長辺に平行な溝を1本以上有している出巾木カバー。
【請求項3】
請求項1又は2において、下壁面が、その裏面にリブを有している出巾木カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−144396(P2008−144396A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330368(P2006−330368)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【Fターム(参考)】