出血の制御及び出血性疾患の治療のための止血剤としての細胞由来微粒子
血小板凝集を誘導し、且つ出血性疾患、詳細には血小板機能不全を含む出血性疾患の治療に有用な、膜由来微粒子及び合成微粒子を含む組成物。微粒子は、上皮由来微粒子(EMP)、血小板由来微粒子(PMP)、赤血球由来微粒子(RMP)、及び合成微粒子(SMP)を含み、化学療法により生じた血小板減少症のような疾患の治療に使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、血小板粘着、凝集、血栓形成を促進する膜由来微粒子を含む組成物に関し、また、出血性疾患の治療方法、詳細には低血小板数の場合の血小板機能疾患、血液凝固疾患の治療方法に関する。本発明はまた、哺乳動物、詳細には外傷患者、失血が相当量あり得る侵襲性の外科的又は内科的処置を受けている患者の失血を最小限にするのにも有用である。
【背景技術】
【0002】
2.背景
(A)臨床的な出血性疾患
(B)細胞由来微粒子(C−MP)
【0003】
2(A) 臨床的な出血性疾患
持続的な出血症状を呈する多くの医学的疾患は、(i)血小板障害、(ii)凝血障害(clotting disorder)、(iii)十分に定義されていない出血性疾患に分類できる。
【0004】
(i)血小板障害。血小板障害の患者は、血小板の数が不十分である(血小板減少症)ため、又は血小板の数は正常でも血小板機能が損なわれている(血小板機能不全)ために、しばしば過剰出血する。例えば、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)の患者は血小板を十分にもたないため、痣ができやすく、出血しやすい。血小板減少症(低血小板数)は薬物療法によって、特に集中的な化学療法の後に起こることがある。アスピリンなどの多くの薬剤は血小板機能を損なわせ、患者の血小板数が正常にもかかわらず過剰の出血を生じさせる。全身疾患には、後天的な血小板障害を引き起こすものもある。血小板減少症又は血小板機能不全は先天性又は後天性であってよい。
【0005】
(ii)凝血障害。フォンウィルブランド病(vWd)及びその他の凝固障害(coagulation disorder)を含む遺伝的出血性疾患群は、持続的な出血という共通性で特徴づけられる。これらの凝血障害患者の多くでは、血中の第VIII因子(FVIII)若しくはフォンウィルブランド因子(vWf)などのような凝固因子の量及び/又は機能が不十分である。vWfは血小板の粘着、凝集を促進し、凝固第VIII因子(FVIII)を運搬する。FVIIIはトロンビンの生成及び続く血液凝固に必須である。
【0006】
(iii)出血性疾患には、十分に定義されていないものがたくさんあり、その中には、血管壁に関係するものもある。
【0007】
出血性疾患には様々な治療法が利用できるが、より効果の高い及び/又は副作用の少ない治療法が必要とされている。
例えば、現在、出血性疾患治療の中心は、血小板及び凝固因子のような同種間血液製剤(患者ではなくドナー由来の血液製剤)輸血である。しかしこれらの薬剤には、肝炎、HIVウイルスのような血液感染症の危険があり、免疫性の輸血反応を引き起こすことがある。これらの問題を回避しようと、組換え凝固因子又は効果的な小分子の生産が活発に追求されている。そのような薬剤には臨床的に利用可能なものもある(例えば、Coagulin-A(登録商標)、Kogenate(登録商標))が、それらはまだ非常に高価であり、また、全ての患者がこれらの薬剤に反応するわけではない。その他の治療法の例として、ヒトvWf含有血漿の寒冷沈降物又はヒトの精製vWfの投与を挙げることができる。直接注入されたvWfはクリアランス時間が非常に短く、治療をさらに複雑にする。その上、患者の中には、外来タンパク質を拒絶し、これらの補充療法に反応しない患者もいる。一部の血友病及びvWd患者の治療には、デスモプレシン(DDAVP)のような他の止血剤が使用されているが、多くの患者はこの治療には反応しない。したがって、自然発症的又は外傷により誘導される出血がしばしば合併症となり時には命を脅かす出血性疾患の、新規な治療法が依然として必要とされている。
【0008】
本発明は、自己血液製剤又は血液感染性病原菌の伝染能及び免疫反応誘導能の低下した異種血液製剤を使用する効果的で安全な治療法を開発することよって、これらの問題全てに取り組んでいる。本方法は、出血性疾患患者の生活の質を改善し、多くの命を救うと考えられる。さらに、輸血医療でますます問題となっている深刻な血液供給不足を解決すると思われる。
【0009】
2(B)細胞由来微粒子(MP)
細胞活性化又はアポトーシスの間に、細胞膜由来微粒子(MP)が遊離することが示されている。血小板、リンパ球、赤血球、及び上皮細胞からのMPの遊離が証明されている(それぞれ、PMP、LMP、RMP、EMP)(非特許文献1〜3参照)。ほとんどのMPは、ホスファチジルセリン(PS)のような凝固促進性(procoagulant)陰性リン脂質を露出していて(非特許文献4〜7参照)、血小板第3因子活性(PF3)を有する(非特許文献8参照)。この活性はin vivoにおけるMPの主要な機能と考えられている。より最近になって、リンパ球MP(LMP)(非特許文献9〜11参照)、上皮MP(EMP)(非特許文献11〜14参照)、及び血小板MP(PMP)(非特許文献10及び15参照)上で組織因子(TF)が同定され、止血及び血栓形成(thrombosis)における重要な役割がさらに示唆された。本開示前において、TFはRMP上には局在していなかった。
【0010】
本発明者らは以前に、PMP、LMP、EMPが止血、血栓形成及び炎症において重要な役割を果たしていることを実証した(非特許文献1〜3参照)。本発明者らは、EMP上の表面抗原は特徴的であるが、それらはアポトーシスや活性化などの上皮細胞傷害の種類に大きく依存していることを報告した(非特許文献16参照)。EMPには凝固促進活性があり、ループス、MS、及びその他の慢性的炎症性疾患などを含む多くの血栓性及び炎症性状態に関係していることが示されている(非特許文献2、3及び10参照)。EMPはさらに組織因子(TF)を運搬することが知られている。それにもかかわらず、疾患回復におけるMPの機能的役割は明らかにされていない。MPは凝固促進性であるから出血性疾患の治療薬として使用できるだろうというのが本発明者らの仮説である(非特許文献3参照)。
【0011】
Collerと同僚は、1992年、赤血球にRGDをコンジュゲートさせることで止血活性をもたせ、その生産物をthromboerythrocytesと名づけた(非特許文献17参照及び特許文献1参照)。しかし、Collerの発明は、本発明の微粒子の使用を開示も予測もしていない。
その他に報告されている止血用リポソーム製剤の例として、止血活性のある小胞にするためにFVIII(非特許文献18及び19参照)及びフィブリノーゲン(非特許文献20及び21参照)のような凝固因子を結合させたリポソーム製剤やアルブミン粒子がある。
人工リポソームの化学修飾物には、「人工血小板」を作製するために合成リポソーム又はアルブミンにコンジュゲートさせた、GpIIb/IIIa及びIb/IXのような血小板特異的粘着分子が含まれる(非特許文献22〜25参照)。
【0012】
これらの方法には不利な点がある。合成微粒子は、補体カスケードを活性化して副作用で合併症を引き起こすかもしれないし、免疫反応を誘導して自己免疫反応を引き起こすかもしれない。臨床に実施できるような、合成MP又は赤血球を用いた方法はまだなく、追跡研究もほとんどされていない。
本発明は新規の微粒子(MP)、詳細には赤血球微粒子(RMP)を、本目的のための薬剤として用いる。1つの実施形態では、細胞由来微粒子は、患者のもたないタンパク質又は因子へのコンジュゲートである。好ましい実施形態では、自己細胞由来赤血球微粒子を止血剤として用いる。本方法のかかる実施形態は明確な利点を有し、組成物が自己由来であるため、同種血輸血又は合成物質によりしばしば引き起こされる免疫系の活性化が回避され、血液感染性病原体の感染リスクが除かれる。赤血球は最も豊富に存在する血液細胞であるので、少量の血液(全血液体積5000ml以上のうち、50〜100ml)であれば患者から安全に採血でき、RMPを作製して同じ患者に注入して戻すことができる。本組成物の供給は患者にとって安全且つ便利である。
【特許文献1】米国特許第5,328,840号
【非特許文献1】Horstman LL, AhnYS. Platelet microparticles: A wide-angle perspective (Review). Crit Rev Oncol/Hematol 1999; 30: 111-142.
【非特許文献2】Horstman LL, JyW, Jimenez JJ, Ahn YS. Endothelial microparticlesas markers of endothelial dysfunction (Review). Frontiers in Bioscience 2004; 9: 1118-1135.
【非特許文献3】Ahn YS. Cell-derived microparticles: Miniature envoys with many faces. J Thromb and Hemostasis. 3:884-887, May, 2005.
【非特許文献4】Dachary-Prigent JD, FreyssinetJ-M, Pasquet J-M, CarronJ-C, Nurden AT. Annexin V as a probe of aminophospholipidexposure and platelet membrane vesiculation: A flow cytometric study showing a role for free sulfhydryl groups. Blood 1993; 81: 2554-2565.
【非特許文献5】Mallat Z, HugelB, Ohan J, Leseche G, Freyssinet JN, Tedgui A. Shed membrane microparticleswith procoagulant potential in human atherosclerotic plaques: A role for apoptosis in plaque thrombogenicity. Circulation 1999; 99:348-353.
【非特許文献6】Zwaal RFA, SchroitAJ. Pathophysiologicimplications of membrane phospholipid asymmetry in blood cells. Blood 1997; 89: 1121-1132.
【非特許文献7】Sims PJ, WiedmerT. Unravellingthe mysteries of phosphlolipid scrambling. Thromb Haemost 2001; 86: 266-275.
【非特許文献8】Jy W, HorstmanLL, Wang F, Duncan R, Ahn YS. Platelet factor 3 in plasma fractions: Its relation to microparticle size and thromboses. Thromb Res 1995; 80: 471-482.
【非特許文献9】Satta N, Toti F, Feugeas O et al. Monocyte vesiculationas a possible mechanism of dissemination of membrane-associated procoagulant activities and adhesion molecules after stimulation by lipopolysaccharide. J Immunol 1994; 153:3245-3255.
【非特許文献10】Biro E, Sturk-MaquelinKN, Vogel GM Human cell-derived microparticles promote thrombus formation in vivo in a tissue factor-dependent manner. J ThrombHaemost. 2003; 1:2561-8.
【非特許文献11】Shet AS, Aras O, Gupta K et al. Sickle blood contains tissue factor-positive microparticles derived from endothelial cells and monocytes. Blood. 2003; 102:2678-83.
【非特許文献12】Combes V, Simon AC, Grau GE et al. In vitro generation of endothelial microparticles and possible prothrombotic activity in patients with lupus anticoagulant. J Clin Invest 1999; 104: 93-102.
【非特許文献13】Abid Hussein MN, MeestersEW, Osmanovic N, Romijn FP, Nieuwland R, Sturk A. Antigenic characterization of endothelial cell-derived microparticlesand their detection ex vivo. J Thromb Haemost. 2003; 1:2434-43.
【非特許文献14】Jimenez J, JyW, Mauro L, Horstman L, AhnY. Elevated endothelial microparticles in thrombotic thrombocytopenic purpura (TTP): Findings from brain and renal microvascular cell culture and patients with active disease. Br J Haematol 2001; 112: 81-90.
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【非特許文献16】Jimenez JJ, JyW, Mauro L, Soderland C, HorstmanLL, Ahn YS. Endothelial cells release phenotypically and quantitatively distinct microparticles in activation and apoptosis. Thromb Res 2003; 109: 175-180.
【非特許文献17】BS Coller, et al: Thromboerythrocytes: In vitro studies of a potential autologous, semi-artificial alternative to platelet transfusions. J Clin Invest 1992; 89(Feb): 546-55.
【非特許文献18】G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996.
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【非特許文献20】G Agam, A A Livne: Erythrocytes with covalently bound fibrinogen as a cellular replacement for the treatment of thrombocytopenia. Eur J Clin Invest 1992; 22(2): 105-12.
【非特許文献21】M Levy, et al: Fibringogen-coated albumin microcapsules reduce bleeding in severely thrombocytopenic rabbits. Nat Med 1999; 5(1): 107-11.
【非特許文献22】Y Teramura, et al: Hemostatic effects of polymerized albumin particles bearing rGP Ia/IIain thrombocytopemic mice. Biochem Biophys Res Com2003; 306: 256-60.
【非特許文献23】T Nishaya, et al: Targeting of liposome carryng recombinant fragments of platelet membrane glycoprotein 1b-alpha to immobilized von Willebrand factor underflow conditions. Biochem Biophys Res Com 2000; 270(755-760).
【非特許文献24】T Nishaya, et al: Reconstitution of adhesive properites of human platelets in liposomes carrying both recombinant glycoproteins Ia/IIa and Ib-alpha under flow conditions: specific synergy of receptor-ligand interactions. Blood2002; 100(1): 136-42.
【非特許文献25】T Kamata, et al: Membrane-proximal alpha/beta stalk interactions differentially rgulate integrin activation. J Biol Chem 2005; 280(26): 24775-83.
【発明の開示】
【0013】
本発明は、出血を減少させるための細胞由来微粒子(MP)又はその化学修飾変種の組成物及び使用方法に関する。
【0014】
様々な疾患、例えば、限定されるものではないが、免疫性若しくは突発性の血小板減少性紫斑病(ITP)、薬剤や化学療法で誘発された血小板減少症及び様々な原因によるその他の血小板減少症、並びに凝固障害(フォンビルブランド病、血友病、及びその他の出血性疾患を含む)において、血液凝固促進、並びに血小板の粘着及び凝集の亢進、凝血効率の改善並びに出血時間の短縮のために、上皮微粒子(EMP)、血小板由来微粒子(PMP)、赤血球由来微粒子(RMP)、及び組成/機能の似た合成微粒子(SMP)、又はそれらの化学修飾変種が使用できる。また、本発明は、MPの望ましい生物学的特性を強化させる、MPの化学修飾も包含すると考えられる。組換え及び精製された置換要素は商業的に利用可能であり、当該技術分野でよく知られている。1つの機序に限定するものではないが、本発明者らの考えでは、上記微粒子の働きは、凝固開始時においてより効率的な血小板の粘着及び凝集を引き起こすことによるもので、少なくとも部分的には、微粒子表面上にvWf、FVIII又は同様の物質の形態で凝固因子を提供し血栓形成を促進及び加速することによるものである。しかし、本発明者らは、この理論又は他のどのような理論にも限定することを意図しない。
【0015】
本発明の使用に適した微粒子は様々な方法で製剤されてよい。例えばEMPは、(例えば、腎臓、脳、又は冠状動脈由来の)ECを培養し、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)で上記細胞を活性化してEMPを生産させ、生じたEMPを培養液上清から沈殿させ、洗浄することで作製できる。
【0016】
PMPは、血小板を、ADP、コラーゲン、エピネフリン、又はトロンビンのような刺激性アゴニストと一緒にインキュベートすることで作製できる。
RMPは、超音波破砕またはカルシウムイオノフォアとインキュベートすることで作製できる。
このように作製されたMPは、特定の目的のための血液凝固促進効果をさらに増すように修飾されていてよい。
【0017】
本発明者らは、正常な血液におけるPMP、EMP、LMP、及びRMPの存在比が、それぞれ総MPの50〜70%、5〜10%、10〜15%、及び10〜15%であることを見出した(図13)(W Jy, JJ Jimenez, LL Horstman, L Mauro, C Bidot Jr, M Yaniz, M Gonzalez, E R Ahn, CJ Bidotand YS Ahn. MicroparticlesDerived from Platelets (PMP), Endothelia (EMP), and Leukocytes (LMP) Exhibit Distinctive Hemostatic and Inflammatory Activities. Blood 2005; 106(11):1029a.[To be presented at the meeting of American Society of Hematology in December 12, 2005 at Atlanta, GA.])。異なる種類の微粒子は異なる止血機能を示す(図14)(W Jy, JJ Jimenez, LL Horstman, L Mauro, C BidotJr, M Yaniz, M Gonzalez, E R Ahn, CJ Bidot and YS Ahn. Microparticles Derived from Platelets (PMP), Endothelia (EMP), and Leukocytes (LMP) Exhibit Distinctive Hemostatic and Inflammatory Activities. Blood 2005; 106(11):1029a.[To be presented at the meeting of American Society of Hematology in December 12, 2005at Atlanta, GA.])。
【0018】
上記微粒子は当業者に公知のいかなる便利且つ効果的な方法で投与されてもよく、特に静脈内投与又は止血が必要若しくは望まれる部位への直接の適用(例えば、局所的に、又は注射によって)であってよい。そのような方法は過度な実験なしに理解され、及び/又は容易に決定されるだろう。
【0019】
したがって、血液凝固を促進する又は血小板粘着、凝集、血栓形成を刺激する微粒子を含有する組成物を、必要とする哺乳動物に投与することを含む止血亢進方法を提供することが1つの目的である。止血の亢進が望まれるいかなる動物、特にヒトも含まれると考えられる。
【0020】
本発明の更なる目的は、本発明の方法に従って使用できる、本明細書に記載された微粒子を含有する医薬組成物を提供することである。上記医薬組成物は、通常少なくとも、薬学的に許容される希釈剤、添加剤(excipient)及び/又は担体を含有する。
【0021】
「薬学的に許容される希釈剤、添加剤及び/又は担体」とは、上記微粒子と相性がよく、且つ本発明に従って動物、特にヒト又はその他の動物に局所又は全身投与するのに適していると、当業者に理解される化合物を意味する。例えば、上記微粒子は、生理学的に許容される食塩水のような、許容される水性の運搬体によって送達されてもよい。有用な溶液は、薬学分野で周知のいかなる方法で調製されてもよく、そのような方法は例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 1990 (Gennaro, A., ed.), Mack Pubに記載されている。
【0022】
本発明はまた、これらの医薬組成物の、上述した方法、例えば、様々な疾患及び障害における血小板の粘着、凝集の亢進、凝血効率の改善、出血時間の短縮のための使用を含む。上記疾患及び障害には、限定されるものではないが、免疫性若しくは突発性血小板減少性紫斑病、薬剤及び化学療法で誘発された血小板減少症、並びにその他の血小板減少症、並びにフォンウィルブランド病、血友病、その他の出血性疾患が含まれる。
【0023】
治療が必要な動物は、遺伝性又は後天性の、凝固障害又は血小板障害に罹患していてよい。突発性血小板減少性紫斑病、血小板減少症を生じさせる治療若しくは事故による細胞毒性薬剤(cytotoxic agents)への被爆(例えば、がん化学療法)、或いは先天性若しくは後天性の又は薬剤若しくは全身疾患による血小板機能障害のような様々な原因による血小板減少症。凝固障害には、vWd、血友病、その他の凝固因子欠損が含まれる。血管壁の異常のような、十分な定義がされていないその他の止血異常も本発明の利益を受けることができる。EMP、PMP、RMP、及びLMPのような本明細書に記載の微粒子は、凝固及び止血を亢進し、過剰出血を緩和する。微粒子の有効投与量は当業者が過度な実験を行うことなく決定でき、一般的には106〜1012/kgの間、さらに一般的には108〜1010/kgの間であると予想される。
【0024】
EMP、RMP、及びその他の微粒子は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は当業者に公知のその他の生理学的に許容される緩衝液を含む薬学的に好適ないかなる医薬組成物中で投与されてもよく、また、任意で、利点をもたらすと考えられ得る付加的な治療用化合物、添加剤、及び担体と一緒に投与されてもよい。上記緩衝液のpHは一般的に7.4以下であろう。
【0025】
本発明の有用性はいかなる理論にも依存しないが、本発明者らは、血管の損傷中に遊離したEMPが、膜に結合したvWfマルチマー及びアドヘシンを介して素早く凝固因子並びに/又は血小板と相互作用して、局所的微小環境において血小板凝集物を安定化することで止血を助けており、また、赤血球から遊離したRMPは、組織因子及び表面リン脂質のような凝固因子を提供して血栓形成を促進するのではないかと考えている。
【0026】
RMPの使用に特に利点があることが分かった。1つの実施形態では、個体自身の赤血球を用いて、その個体に投与するRMPを生成する。赤血球は豊富にあるので、例えば出血性疾患の治療を必要とする患者又は外科手術を受けている若しくは外傷性傷害を受けた患者からでも、少量の赤血球であれば安全に採集することができ、治療のため及び失血を減らすために使用するRMPを生成することができるだろう。RMPはTF及び/又はFVIIIを自然に発現していてもよく、又はそのような因子を発現若しくは送達するように生体外でRMPを処置してもよい。出血性疾患の治療のためのRMPの調製方法は本明細書の以下に記載する。本発明の1つの実施形態では、TF発現RMPは、出血性疾患患者或いは外科手術、外傷性損傷、又は侵襲性の診断方法若しくは治療方法を受けた患者のような出血のリスクがある誰にでも、出血防止における基本的又は普遍的止血剤として使用できる。上記侵襲性の診断方法若しくは治療方法の例として、診断を目的とする心臓カテーテル法、気管支鏡検査、結腸鏡検査及び内視鏡検査、胸膜若しくは脊椎の穿刺、動脈造影図、静脈造影図、並びに様々な生検法などに加えて、治療を目的とするIV若しくは中心ライン挿入、又は透析のための特別なカテーテル挿入、心臓若しくはその他の臓器へのステント、血漿交換療法、幹細胞採集などを挙げることができる。
【0027】
超音波破砕又はその他の方法で作製されたRMPは止血活性を有し、出血を減少させるという目的に有用である。しかし、条件によっては、その効果を高めるためのさらなる処置が必要とされてもよい。必要に応じ、RMPは、より効果を高めるために修飾されていてもよく、これを止血性修飾RMP(hmRMP)と呼ぶ。hmRMPはまた、失血を減らす又は出血状態を治療するために患者に輸血することができる。他の従来の治療方法と比べて、RMPを使用することで、HIV、肝炎などの血液感染症が除外され、患者の安全性が高まるだろう。また、合成小胞などが使用されたときに起き得る、合成物質又は外来性物質に対する自己免疫反応のリスクも取り除かれ、それにより、長期的合併症である自己免疫疾患のリスクが取り除かれるだろう。加えて、RMPの調製は、他の細胞由来微粒子や合成膜小胞を調製するよりはるかに廉価である。したがって、個体自身の血液から得られるRMPを用いて、予期される又は起こっている出血性合併症を治療するというかかる新規なアプローチは、輸血や外来性物質の注入に共通する重大な潜在的副作用を取り除くだろう。
【0028】
MP、特にRMPに関してさらに言及する。例えば、組織因子(TF)、フィブリノーゲン、RDGペプチド又はその他のアドヘシンをRMPに付着させることができる。原則的に血液感染性病原体を含まない、多くの組換え又は化学精製産物が本目的のために利用可能であり、使用されてよい。特定のタンパク質又はペプチドをリン脂質(PL)小胞にコンジュゲートさせる方法は当該分野ではよく知られており、詳細には、Greg T. Hermansonによる包括的な教科書であるBioconjugate Techniques(G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996)を参照のこと。細胞由来微粒子は本質的にPL小胞であり、同じ方法が適用可能であることが合理的に予測される。
【0029】
特定の因子欠乏に罹患している特定の患者を、その特定の出血性疾患を直す(correct)又は改善するために、その因子をコンジュゲートさせたMPで治療してもよい。例えば、血友病患者を、患者自身の赤血球(自己RMP)から作製したMPを用いて、FVIIIにコンジュゲートさせたMPで治療してもよい。同様に、フォン・ウィルブランド病患者の治療において、RMPにvWfをコンジュゲートさせてもよい。MP又はRMPにコンジュゲートさせて止血性修飾MP又はRMP(hmRMP)とするために、血液感染性病原体を含まない組換え又は精製産物が利用可能である。
【0030】
RMP治療は、多くの患者で、同種血輸血の必要を削減するか取り除くだろう。本治療法は、反復又は重度の輸血の必要性を削減することで、ますます重大な医療問題となっている血液供給不足を大いに緩和するだろう。
【0031】
RMP及びhmRMP又はその他のMP並びにその化学修飾変種の利益を受ける個体には、様々な血液凝固疾患、(血小板減少症又は血小板機能障害のような)血小板障害、及びよく定義されていない出血性疾患及び血管壁の問題に起因する出血性疾患の患者が含まれる。加えて、出血がしばしば合併症となる侵襲性の診断方法若しくは大きな外科手術を受けなければならない個体、又は何もしなければかなりの失血が予想される個体は、RMP又はhmRMPの注入によって利益を得られる。利益は、時間が許せば患者自身の血液由来のMP製剤であってもよいし、又はドナー血液由来のRMP又はhmRNPによるものであってもよい。さらに、傷害や外傷を被りやすい個体(例えば、平衡感覚障害者、及びホッケー選手やプロボクサーなどのような身体的外傷リスクのある活動に参加している患者)は、自身のRMPを事前に注入することで利益を得られる。RMP治療はまた、化学療法や何であれ出血リスクを増加させる内科的治療を受けている患者、凝固障害又は血小板機能障害又はその他の内科的若しくは外科的治療に関連した出血状態に罹患した患者、血栓を防ぐためのクマジン(Coumadin)又はその他の血液抗凝結薬又は抗血小板薬のような薬物の過剰投与による出血性合併症患者、及び慢性腎不全、慢性肝疾患又はその他の出血リスクを増加させる疾患のような、出血リスクを増加させる慢性病の患者にも利益を与える。
【0032】
RMP、EMP、及びその他のMPは、(例えばキットの成分として)保存可能で、出血しやすい人又はかなりの出血を起こす処置が予定されている人が必要としたときに使用することができる。
【0033】
本発明の更なる実施形態では、ある臨床状況においてはMPを組み合わせて与えることができる。例えば、EMPを最初に投与し、その後にRMPが注入される、又は同時に与えられる。
【0034】
本明細書中で使用されているように、「過剰出血状態」とは、長引く出血又は通常よりも過剰な出血を起こす又は起こし得るあらゆる状態を指す。そのような状態の例として、限定されるものではないが、突発性血小板減少性紫斑病、薬剤若しくは化学療法により誘導された血小板減少症、先天的若しくは後天的な様々な原因による血小板減少症、又は先天的及び後天的な様々な原因による血小板機能障害、又は先天性若しくは後天性フォンウィルブランド病、若しくは血友病、若しくはその他の凝血障害を含む凝固障害のような臨床的出血性疾患、身体的外傷、侵襲性の診断手段並びに外科手術を挙げることができる。
【0035】
本出願は、米国仮出願第60/633,417号の優先権を主張し、これを本出願に引用して援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明者らは、以前、vWfがEMPの亜種(subspecies)に結合していることを示した(Andre P, Denis CV, Ware J et al. Platelets adhere to and translocate on von Willebrandfactor presented by endothelium in stimulated veins. Blood 2000; 96: 3322-3328)が、その機能的意義は分かっていなかった。本明細書の以下に記載する結果で、血小板−EMP相互作用がvWfによって仲介されていることを実証し、また、EMPにより形成された血小板凝集物と正常な血小板、Humate-P、及びTTP血漿により形成された血小板凝集物の安定性とを比較する。加えて、フォンウィルブランド病(vWd)患者由来の血漿の、リストセチン誘導による凝集性に対する、vWf陽性EMPの効果を調べた。さらに、本発明者らは、vWfマルチマーのサイズを、EMP結合vWfと正常血漿、TTP血漿、及びHumate-P由来の可溶性vWfとの間で比較し、血小板凝集物の安定性と関連付けた。
さらに、本発明者らは、高レベルのRMPと平均的ITP患者集団に比べて出血の発症数が少ないこととを関連付ける、重度ITP患者2人からの結果、及びRMPが有効な止血剤であることを実証するin vitroの実験室データを提出する。
【0037】
方法と材料
材料
脳又は腎臓、及び冠状動脈由来のヒト培養上皮細胞はCell Systems 社(Kirkland, WA)から入手した。FITC標識抗CD62E抗体(クローン1.2B6、カタログ番号F−0674)はSigma社(St. Louis, MO)から入手した。抗CD42b抗体(クローンSZ2、カタログ番号IM0409)及び抗CD41抗体(カタログ番号IM0649)はBeckman-Coulter(Miami, FL)から入手した。HRPコンジュゲート抗vWf抗体(カタログ番号AHP062−P)はSerotec Inc. (Raleigh, NC)から購入した。ゲル電気泳動の試薬及び装置はBio-Rad (Richmond, CA) から入手した。リストセチン(Sigma社製、St. Louis, MO)はChrono-Log社から購入した。濃縮第VIII因子及びvWfマルチマーを含有する治療用薬剤であるHumate-P(登録商標)はAventis-Behring (Marburg, Germany)から入手した。その他の化学物質はSigma社(St. Louis, MO)から購入した。
【0038】
EMP及び血小板の調製
脳、腎臓、又は冠状動脈由来のヒト培養上皮細胞(EC)をTNF−α(10ng/mL)で24時間活性化し、EMP産生を誘導した(Abid Hussein MN, MeestersEW, Osmanovic N, Romijn FP, Nieuwland R, Sturk A. Antigenic characterization of endothelial cell-derived microparticlesand their detection ex vivo. J Thromb Haemost. 2003; 1:2434-43.)。その後、培養液上清を、15,000×gで30分遠心してEMPを沈殿させた。次いで、この沈殿をPBS緩衝液で3回洗浄し、PBSで元の1/10の体積になるように再懸濁した。EMP濃度は、Jimenez JJ, JyW, Mauro LM, Horstman LL, SoderlandC, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902に記載されているように、FITC標識抗CD62E抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
洗浄された血小板を調製するために、多血小板血漿(PRP)を10mMのEGTA及び1μMのPGE1存在下で600g、10分遠心した。このペレットをPBSで2回洗浄し、その後、1×108/mLとなるようにPBSで懸濁した。
【0039】
フローサイトメトリーによる、EMP−血小板相互作用及びリストセチン依存性凝集の分析。 終濃度5〜100×106/mLのEMPを、終濃度1×107/mLの通常の洗浄後血小板と、リストセチン(1mg/mL)の存在下若しくは非存在下で、10分間穏やかにオービタルシェイキング(100rpm)しながらインキュベートした。EMPの血小板への結合は、EMPマーカーCD62E及び血小板マーカーCD41を共発現させて、フローサイトメトリーで評価した。これらの実験においては、記載されているように、1%〜15%の血漿及び0.02〜0.4U/mLのHumate-Pを用いた。フローサイトメトリー(Jimenez JJ, JyW, Mauro L, Soderland C, HorstmanLL, Ahn YS. Endothelial cells release phenotypically and quantitatively distinct microparticlesin activation and apoptosis. Thromb Res 2003; 109: 175-180)によって、血小板凝集物(>5μm)を表すビットマップにシフトした遊離血小板(<5μm)の数を計測することで、血小板凝集を測定した。Coulter XLフローサイトメーターの流速は中程度にセットし、ディスクリミネータは前方散乱光(FS)レベル3にセットした。血小板数は、濃度既知の標準ビーズで較正した。血漿中にリストセチンが存在するとき、(血小板凝集物数の増加を伴う)単独の(singular)遊離血小板の減少が観察された。リストセチン(1mg/mL)と最大量の血漿又はHumate-Pでは、5%未満の血小板のみが単独(遊離)のままであった。血小板凝集物形成の指標としては、微小凝集物の数を計測するのではなく、リストセチン存在下及び非存在下での単独の血小板数の減少を測定した。なぜなら、前者は大きさが不均一に分布しており、且つフローチャンバー及びチューブに粘着するため不明瞭であるからである。
【0040】
リストセチン誘導血小板凝集物の解離 室温における血小板凝集物形成の20分後にサンプルをPBSで希釈(体積比1:20)し、時間依存的解離を誘導した。希釈後の遊離血小板数の増加を、フローサイトメトリーで間隔を置いてモニターし、血小板凝集物の解離の時間経過を決定した。
【0041】
vWfマルチマー分析。 Jy W, HorstmanLL, Park H, Mao WW, Valant P, AhnYS. Platelet aggregates as markers of platelet activation: Characterization of flow cytometricmethod suitable for clinical applications. Am J Hematol1998; 57: 33-42の方法を、以下のように小さな変更を加えて用いた。電気泳動中の冷却は、氷水スラリーに浸したアルミブロック上に水平型ゲル電気泳動装置を置くことで行い、緩衝液容器(buffer chamber)も氷上に置いた。数種類のアガロースゲル濃度を試し、広い範囲のマルチマーのサイズを示すのに0.8%が最適であることが分かった。ウェスタンブロッティングは、抗vWf抗体にHRP(Serotec Inc.社製, Raleigh, NC; カタログ番号:AHP062−P)をあらかじめコンジュゲートさせておき500倍希釈(25ml中に50μl)して用いた以外は、Raines et al記載の通り行った。ゲル中のタンパク質を、PBSを転写バッファーとして用い、PVDF膜の一番上にペーパータオルを何枚も重ねて毛細拡散によりPVDF膜に転写した。上記PVDF膜を0.5%カゼイン溶液でブロッキング処理した。PVDF膜の染色は、4−クロロ−1−ナフトール色素(4CN;Sigma社製、カタログ番号C−8890)を用いたNakaneの方法(Nakane PK. Simultaneous localization of multiple tissue antigens using the peroxidase-l;abeled antibody method: a study on pituitary glands of the rat. J Histochem Cytochem1968; 16(9): 557-560)で行った。上記色素は、5mLのエタノールに30mgを溶かし、0.03%のH2O2(100mL中に1mLの3%H2O2)を含む50mMのトリス緩衝液(pH7.6)で100mLにメスアップすることで調製した。
【0042】
臨床研究。 実施例4〜6において、TTP患者4人及び1型vWd患者4人からクエン酸血を得た。上記のTTP患者4人は全員、古典的なTTPの3徴候である、重度血小板減少症(血小板数<2×107/mL)、細血管障害性溶血性貧血及び精神機能障害を発症していた。1型vWd患者は、全vWf抗原量が少ないこと及びリストセチン補因子活性の欠損によって特徴付けられる。本プロトコールは施設内治験審査委員会の承認を受けており、患者のインフォームドコンセントを得ている。
実施例8では、標準的な臨床実験で特徴付けた非定型的(「非出血性」)ITP患者から(最適な保存のためにクエン酸を添加した)血液を得、正常コントロール及び典型的なITP患者と比較した。
【0043】
統計解析。 3つ以上のグループを比較するために、一元配置分散分析を用いてp値を求めた。p<0.05のとき、Studentの両側t検定を用いて2つのグループの平均値の間の差異の有意性(p<0.05)を分析した。データが正規性検定に合格しなかった場合には、Mann-Whitneyの順位和検定を用いた。全てのデータ解析は、ウィンドウズ(登録商標)に基づいたプログラムであるStatmostを使用して行った。
【0044】
微粒子生成方法
I.血小板微粒子
血小板微粒子は、以下に示すような、当業者に周知である、少なくとも3つの方法で調製されてよい。
【0045】
1)血液銀行起源。 保存された血小板は時間と共に豊富なPMPを遊離した(引用文献1の”Platelet Storage Lesion”のセクション4.5を参照)。通常なら捨てられる、有効期限が切れた血小板濃縮物を5日間まで利用するために本方法を利用してもよい。
【0046】
方法:有効期限の切れて1〜5日の血小板を、室温で無菌的に、200×g、10分遠心することで沈殿させた。無菌操作を用い、上清にPBS/クエン酸を加えて2倍体積に希釈し、その後、8,000×g、30分遠心することで微粒子を沈殿させた。この再懸濁したPMPは冷凍保存、次いで使用前に再洗浄してもよい。所望のi.v.溶媒(例えば生理食塩水)に再懸濁すること。
【0047】
2)超音波法。PMPは音波破砕によって高収量で得ることができる。
【0048】
方法:(凝集を最小限にするために)事前に1mM EDTA/5mM MgSO4を含むPBS緩衝液で2回洗浄した、生理的濃度(2.5×105/μL)の新鮮な(又は最近期限が切れた)血小板を、50mLのポリプロピレンチューブ中で超音波破砕した(室温、3〜5秒のバーストを3〜5回)(Branson Instruments社製;5mmのチタンプローブ使用)。残留した血小板及び残骸を遠心分離によって除去し、上清中のPMPを高速スピンで沈殿させた後、上述のように洗浄した。
【0049】
動物実験に適切な無菌操作は、音波プローブが通れるようにチューブのキャップに開けた穴にはめた綿栓からなる。上記音波プローブは、無菌の綿のふち(cotton collar)を通して挿入する前にアルコール綿で拭く。ヒトへの使用における適切な無菌操作は当業者に公知である。
【0050】
3)カルシウム活性化法。正常な生理学においては、細胞質ゾルのカルシウム濃度の上昇は、細胞活性化への経路全ての最終共通段階である。A23138のような試薬カルシウムイオノフォアの使用は、膜に外部培地からカルシウムを選択的に通す孔を創り、豊富なPMPを遊離させる。その結果には、より生理学的な意義があるかも知れない。
【0051】
方法:PMPの調製にはJ. Arnout, E. Huybrechts, M. Vanrusselt, J. Vermylen: A new lupus anticoagulant test based on platelet-derived vesicles. Brit J Haemat 1992; 80: 341-346の方法が利用でき、生じたPMPは、電気泳動/ブロッティングで有意なvWfを発現する[未発表]。簡潔には、1.0mLの洗浄した血小板を2.5×105/μLとなるようにpH7.4のHEPES/生理食塩水に懸濁し、最終濃度1μmol/Lとなるのに十分なイオノフォアA23187(アルコールストック溶液から前もって希釈してある)を50μlの緩衝液中に加え、最終濃度2mMとなるのに十分なカルシウムを加え、その後、室温で20分穏やかに振盪した。遠心して大きな残骸を除去し、上記したように上清からPMPを回収した。
代替法:イオノフォアがPMPに残存する懸念がある場合は、イオノフォアの代わりにサポニンで血小板を透過処理してもよい。その後、上記の通りに進める。代替法:イオノフォアによる活性化と同様の作用強度をもつことが報告されているトロンビン+コラーゲンで血小板を活性化してもよい。
【0052】
II.赤血球由来微粒子(RMP)
上のI(1)に記載したように、患者自身の血又は血液銀行の血はまた、豊富なRMPを自然に放出することが知られている。したがって、それらはI(1)記載の方法そのままで回収されてよい。I(2〜4)記載の新鮮なRBC及び保存したRBCがRMPの作製に使用可能である。
【0053】
III.合成微粒子
リポソームによる方法(合成MP)。凝固促進性リン脂質(PL)に結合したvWfそれ自身のみで血小板減少症患者を有意に止血保護するのに十分であると仮定すれば、vWf−セファリン(又はレシチン)リポソームは効果があってしかるべきだろう。本発明者らの実験は、ダイズ及び卵のレシチン両方が、凝固アッセイ(組織因子、及びループスコアグラント)において、この目的に従来使用されている粗脳脂質であるセファリンとほとんど同じ活性を有することを示している。この方法の実質的利点は、vWf自体以外には免疫原タンパクが限られていることである。
【0054】
方法:簡潔には、(Humate-P(登録商標)又は院内で血漿から調製された均等物のような)vWfの濃縮物を、当該分野で周知の濃度のセファリン又はレシチンのリポソーム存在下で、超音波エネルギーにさらす。適切な条件下では、原則的に全てのvWfがリポソームに(表面又は膜貫通的に)強く結合する。最適条件は、当業者に過度な実験なしに決定可能である。
【実施例1】
【0055】
EMPで誘導した血小板凝集。 EMPを、上述したように通常の洗浄をした血小板とインキュベートした。終濃度4×107/mLのEMPは、リストセチン依存性の血小板凝集を強く誘導した。図1に見られる通り、EMPにより引き起こされたリストセチン依存性血小板凝集の程度は、8%の正常血漿による誘導と同程度であった。リストセチン非存在下では、EMP、Humate-P、又は正常血漿は血小板凝集物をほとんど形成させなかった。EMP誘導及び血漿誘導の両方の血小板凝集は、抗CD42bブロッキングmAb(anti-CD42b blocking mAb)で抑制された。これらの結果は、EMPがvWf依存性の血小板凝集物形成を誘導したことを証明している。
EMP、正常血漿、又はHumate-Pで誘導した血小板凝集の投与量−反応曲線を図2に示す。3つの薬剤全てで、曲線の形が似ていることに気づく。血小板及びEMPは両方とも事前に洗浄してあり、基本的に血漿を含まないので、これらの結果は、リストセチンによる完全な血小板凝集誘導において、EMP結合vWfが、血漿又はHumate-P中の可溶性vWfに代わりとなり得ることを示している。このデータは、3.5%の血漿で50%の凝集が起こり、これは1×107/mLのEMPに相当し、また0.075U/mLのHumate-Pに相当することを示している。
【0056】
微粒子結合vWfの存在をさらに確認するために、EMPの大部分を保持することが知られている0.1μmのフィルターによる濾過の影響を調べた。図3に示す通り、この濾過によりEMP誘導血小板凝集はほとんど消失したが、正常血漿又はHumate-P誘導血小板凝集には有意な影響はなかった。
【0057】
【表1】
【実施例2】
【0058】
異なる起源の上皮に由来するEMP。 本発明者らは3つの異なる起源(腎臓及び脳毛細血管、並びに冠状動脈大血管)のECに由来するEMPの凝集活性を比較した。3つのECは全て、以前に詳述されている条件と似た条件で培養し(Abid Hussein MN, MeestersEW, Osmanovic N, Romijn FP, Nieuwland R, Sturk A. Antigenic characterization of endothelial cell-derived microparticlesand their detection ex vivo. J Thromb Haemost. 2003; 1:2434-43、Jimenez JJ, Jy W, Mauro LM, Horstman LL, Soderland C, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902、Jimenez JJ, Jy W, Mauro L, Soderland C, Horstman LL, Ahn YS. Endothelial cells release phenotypically and quantitatively distinct microparticles in activation and apoptosis. Thromb Res 2003; 109: 175-180)、同じ濃度のTNF−α、で24時間刺激した。EMPを上述したように回収及び洗浄し、フローサイトメトリーで計測後、等濃度に調整した。表1は、リストセチンによるvWf依存性血小板凝集における、これらの3つの起源のEMPの相対的比活性を示している。腎臓又は脳の毛細血管EC由来EMPの方が、冠状動脈EC由来EMPよりも強力であることがわかる。これは、腎臓又は脳EMPはvWf+EMP含有率が高いという本発明者らの以前の知見(Jimenez JJ, JyW, Mauro LM, Horstman LL, SoderlandC, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902)、及び異常に活性なvWfの臨床症状が主に微小血管性血栓症に関係しているという事実と一致する。
「方法」セクションに記載したようにして腎臓、脳、及び冠状動脈の上皮細胞(EC)から得られたEMPは、リストセチン存在下での凝集促進活性(proaggregatory activity)を評価する前に等濃度に調製した。この表は、リストセチン誘導血小板凝集において、異なるEC株からのEMPは異なる活性を示したことを示しており、その順番は以下の通りである:腎臓>脳>>冠状動脈EC。N=4、平均値±S.D.。*は、「腎臓EMP」又は「脳EMP」グループを「冠状動脈EMP」グループと比較したときにp<0.01であることを示す。
【実施例3】
【0059】
凝集物の安定性評価。 予備実験の過程で、血漿+リストセチンで誘導した血小板凝集物をPBS緩衝液で20倍希釈したとき、時間依存的に、凝集物集団が徐々に減少し、遊離血小板の数が増加したことが観察された。図4は、血漿、Humate-P、及びEMPで誘導した血小板凝集物の解離の時間経過を示している。血小板凝集物を10分間誘導した後、混合物をPBSで20倍希釈して、解離を開始させた。50%解離時間は、血漿、Humate-P、及びEMPで、それぞれ15分、25分、及び60分であった。これらの結果は、EMPで誘導した血小板凝集物の方が血漿又はHumate-Pで誘導した血小板凝集物より安定であることを示している。本発明者らは、EMPにより形成された凝集物の大きな安定性は(i)EMP上の非常に大きなvWfマルチマーの存在、及び/又は(ii)EMPと血小板を架橋するその他の粘着分子の存在、によると仮定した。
【実施例4】
【0060】
リストセチン誘導血小板凝集物形成へのTTP血漿の影響。 TTPにおいては異常な程度のvWfマルチマー化が関係していることから(akane PK. Simultaneous localization of multiple tissue antigens using the peroxidase-l;abeledantibody method: a study on pituitary glands of the rat. J HistochemCytochem 1968; 16(9): 557-560、Levy GG, Nichols WC, Lian EC, et al. Mutations in a member of the ADAMTS gene family cause thrombotic thrombocytopenicpurpura. Nature 2001; 413: 488-494)、本発明者らは、急性期(A)及び寛解期(B)のTTP患者4人に由来する血漿を調べ、正常にプールされた血漿と比較した。表2に示されているように、TTP患者は、急性期及び寛解期両方で、リストセチン誘導血小板凝集の有意な増加を示した。
【0061】
【表2】
【0062】
急性期(A)及び寛解期(R)の4人の異なるTTP患者のPPP(4%)、並びにプールされたコントロール血漿を、血小板及びリストセチンと一緒に10分間インキュベートし、残っている遊離の血小板をフローサイトメトリーで分析した。急性期及び寛解期のTTP血漿による血小板凝集物形成をコントロールグループと比較した。平均値±S.D.。*は、急性期のTTP又は寛解期のTTPと「コントロール」グループを比較したときにp<0.05であることを示す。
【0063】
TTP血漿により生成された血小板凝集物はまた、正常血漿によるものよりも顕著に安定であった。図5に示すように、TTP血漿による血小板凝集物は、20倍希釈後の解離に対して、正常血漿よりはるかに抵抗性であり、これは急性(増悪)期及び寛解期両方でみられた。TTP血漿を、0.1μm以上の大きさのMPを除去するために0.1μm濾過すると、解離が一部促進された。急性期血漿のTTP血漿での解離の時間経過は、EMPでの解離の時間経過と類似していた(図4)。これらの結果は、TTP血漿中のEMP結合vWfが、血小板凝集物の安定化に部分的に寄与し得ることを示している。
【実施例5】
【0064】
EMP結合vWfのvWd血漿への適用 図6に示す通り、4人のvWd患者の血漿を使用して、該患者らのvWf依存性血小板凝集活性を評価した。vWd患者の血漿は非常に弱い血小板凝集活性を示した。しかし、この活性はHumate-P(終濃度0.1U/mL)を加えた後に劇的に上昇した。本図はまた、vWd患者の血漿にin vitroでEMPを添加(終濃度5×106/mL)すると、vWd血漿の凝集活性が部分的に回復されることを示している。組み合わせたEMP及びHumata-Pの相乗効果が、血小板凝集物を強く誘導する。
【実施例6】
【0065】
正常血漿、TTP血漿、及びHumate-P由来のvWfと比較したEMP結合vWfのマルチマー分析。 本発明者らは、観察されたリストセチン誘導血小板凝集へのEMPの効果が、EMP上に通常とは異なる大きなvWfマルチマー(ULvWf)が存在するためであると仮説を立てた。図7に示すとおり、マルチマー分析によって、EMP結合vWfマルチマー(レーン4)は、正常血漿由来のマルチマー(レーン3)よりも大きく、Humate-P由来のマルチマー(レーン5)やULvWfを呈する血漿をもつTTP患者由来の血漿(レーン2)よりさらに大きいことが確認された。また本発明者らは、1型vWd患者由来のvWfマルチマーのバンドがほとんど無いことに気づいた(レーン1)。EMPサンプルのvWfマルチマーのバンドは、可溶性vWfでみられるように明瞭には分離されないことに気づいた。これに対する可能な説明として、膜結合vWfマルチマーが、特定の膜リン脂質に強く結合しているために、SDSで完全に解離されず、バンドがより拡散されてしまうのかも知れない。
【実施例7】
【0066】
in vivoにおける出血時間を短縮するためのEMP組成物の使用。 in vivoにおけるEMPの効果を実証するために、成獣のFischerラットを3つのグループに分けた。グループ1を正常コントロールとした。グル−プ2及び3には、血小板減少症を誘導するためにシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与した。4〜5日後、処置グループで血小板数が5×105/μL未満に減少したときに、麻酔下で尾の先端2mmを切断し、出血時間を測定した。試験前に、グループ3には、2×108個のEMPを含む0.5mlのPBSを、尾の切断2分前に静脈内注射した。図8に示すとおり、正常コントロールでは、出血時間は1分未満であった。CTXのみを投与されたグループ2では平均出血時間は800秒を超えた。CTX+EMPを投与されたグループP3では、グループ2に比べ、出血時間(200秒未満)は大幅に短縮された。これらの結果により、in vivoにおけるEMPの止血効力が証明された。
【実施例8】
【0067】
非出血性である非定型ITP患者の臨床観察。 本発明者らは最近、重度の血小板減少症にも関わらず出血症状が無い(無症候性)という非常に変わった、限られた数のITP患者を観察してきた。30年以上に渡るITP臨床期間のほとんどの間、その患者らの血小板数は、10,000以下であった。しかし、患者らは大量出血を経験せずに、極めて普通の生活を送っている。この患者らの調査によって、並外れて高レベルのRMPが示された(2つ示す。A、B)。図9参照。患者らは、他には非出血を説明する異常な特徴を何も示さなかった。本発明者らは、患者らの無症候性という特徴は、以下のデータでも裏付けられるように、その高RMPの保護的効果に起因すると考える。
【0068】
2人の患者が、重度のITP(血小板数が10,000以下)と診断されたにもかかわらず、40年以上にわたり大量出血の発症の1つもなく普通の生活を送った。この患者らを注意深く調査したところ、他の出血しやすいITP患者に比べ、2人とも極めて高レベルの赤血球微粒子(RMP)を有していることが明らかになった(Janowsky EC, Kupper LL, Hulka BS: Meta-analysis of the relation between silicone breast implants and the risk of connective-tissue diseases. NEJM 342(11):781-90, 2000、Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation)。図9参照。これら2人の患者の臨床観察(以下の症例研究A及びB)から、RMPには止血活性があり、この患者らの通常と異なる非出血性は高レベルのRMPによって説明されることが示唆された。
【0069】
症例研究(A) 患者AがITPを発症したのは4歳のときで、痣ができやすいことに彼女の母親が気づき、その後の評価でITPと診断された。彼女は、代替療法が失敗した後、脾臓摘出を受けた。脾臓摘出後1年間は寛解が続いたが、ポリオワクチン接種後すぐにITPが再発した。彼女のITPは、高用量の糖質コルチコイド、IVガンマグロブリンに一過性でだけ反応し、他の方法(ビンカアルカロイド、ダナゾール、コルヒチン、Prosorbaカラム,WinRhoなど)には全く反応しなかった。慢性ITPの47年間の間、彼女の血小板はおよそ10,000/μLのままであった。彼女は軽度の外傷で痣ができ、時おり点状出血がみられたが、粘膜出血に苦しむことはほとんどなかったし、輸血を必要とする大量出血は経験しなかった。彼女は多量の月経出血を経験し、出血を制御する経口避妊薬の処方を一時的に必要とした。現在、彼女は活動的な妻であり母として普通の生活を送っている。彼女はまた頻繁に偏頭痛になり、頻繁に経口鎮痛薬を必要とした。重度の血小板減少症のため、CNS出血の恐れから、複合的なCATスキャン(multiple CAT scans)及びMRIが行われたが、陰性であった。彼女がこの合併症をもつことはなかった。
【0070】
臨床結果:血小板 7,000/μL、ヘモグロビン 13.3、ヘマトクリット値 39.1%、WBC 9.3で、正常差異であった。LDHを含む血液化学は全て正常であった。PT、aPTT及びその他の凝固試験は全て正常範囲内であった。ANA、C3、C4、は正常であった。抗リン脂質抗体及びループスアンチコアグラントは陰性であった。
【0071】
血小板糖タンパク質IIb/IIIa及びIb/IXに対する抗体は、血小板関連IgG性質決定アッセイ(platelet associated IgGcharacterization assays)「PAICA」(Macchi L et al: PAICA: a Method for characterizing platelet-associated antibodies. Thrombosis and Haemostasis 76:1020-9, 1996)により測定したところ、強く陽性であり、ITPの診断を裏付けた。細胞由来微粒子は、血小板由来(PMP)、白血球由来(LMP)、上皮由来(EMP)の全てで正常であったが、RMPは顕著に上昇しており、4,639/μLであった。これは、正常なコントロールの約3倍、ITPの限界値の2倍であった(正常平均値=1500/μL;通常ITP平均値=2200/μL)。
【0072】
症例研究(B) 患者Bは幼少期にITPであることが判明し、4ヶ月のときに脾臓摘出を受け、部分寛解した。彼女のITPは糖質コルチコイドによく反応したが、彼女は糖質コルチコイドに耐性がほとんどなかった。治療なしでは、血小板は通常10,000未満であった。彼女には激しい月経があったが、これは彼女が普通の活動をすることを妨げはしなかった。今では50年以上になる慢性ITPの間、大量出血の発症もなく、輸血を必要とすることもなく、彼女は普通の活動及び営みを行った。彼女は異常な出血もなく2人の子供を出産し、足首及び膝の手術に耐えた。彼女は軽度の外傷で容易に痣ができ、注意深い検査によりいくつかの点状出血があったが、鼻血若しくは歯肉出血のような持続的な粘膜出血、又はGI若しくはGU出血は経験しなかった。
【0073】
臨床結果:血小板 9,000/μL、ヘモグロビン 13.7、ヘマトクリット値 44%、WBC 10,300で、正常差異であった。血液化学及び血液凝固検査は全て正常範囲内であった。患者らの抗核抗体(ANA)検査は陰性であった。
抗リン脂質抗体及びループスアンチコアグラントは全て陰性であった。血小板糖タンパク質IIb/IIIa及びIb/IXに対する抗体は強く陽性であり、ITPと一致した。彼女の凝集試験の分析(血小板、白血球、上皮細胞由来の細胞由来微粒子(それぞれPMP、LMP、EMP)の分析)は全て正常範囲内であった。唯一異常であったのは、RMPが4,438/μLに顕著に上昇していたことである。これは通常のITP患者のほぼ2倍である。
【0074】
50年以上の期間にわたる重度の慢性ITP患者2人を調査した結果、RMPは(他のITP患者と比べて異常に)顕著に上昇しているが、血小板微粒子(PMP)、白血球微粒子(EMP)のような他の細胞由来微粒子及びその他の実験室的調査では上昇がないことが明らかとなった。これらの知見は、RMP以外の全てで実験室での結果がITP患者と類似していたことから、生命を脅かす出血発症から患者らを保護するのにRMPが中心的役割を果たしていたという結論を裏付けている。
【実施例9】
【0075】
RMPが有効な止血剤であることを裏付けるin vitro実験室データ。 本発明者らはin vitroでRMPを作製する複数の方法を開発した。RMP作製後、組織因子(TF)及び凝固因子VIII(FVIII)の発現を免疫学的方法で分析した。加えて、本発明者らは、RMPが凝血時間を短縮するかを決定するための機能的検査を行った(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation)。
【0076】
本発明者らは、以下に記載及び図10に示すように、TF及びFVIIIを自然に発現しているRMPを調製した。TF発現RMPは、出血性疾患の患者及び外科的処置又は診断手法のような状況中で出血のリスクのある健常者において、出血予防における基本的又は普遍的止血剤として使用できる。採血した新鮮な正常血液から、様々な方法を用いてRMPを作製した。簡潔には、(a)イオノフォア法。洗浄したRBCを、添加したカルシウム存在下でカルシウムイオノフォアにさらした。(b)浸透圧ショック法。洗浄したRBCを低張食塩水(等張の1/3)にさらした。(c)超音波法。洗浄したRBCを、超音波プローブからのバースト波に短時間さらした(超音波破砕)。(d)抗D抗体法(補体あり/なし)。通常通り等張生理食塩水で3回洗浄した新鮮なRBCを開始物質とした。2つのレベルの抗D抗体(WinRho)でテストし、原血液1mLあたり10U及び50U、50%のHtに添加し、その後、穏やかに振盪しながら50分間インキュベートした。次いで、低速遠心で無傷のRBCを除去し、通常通り、高速遠心でRMPをペレットにし、再懸濁し、フローサイトメトリーを行った。
【0077】
フローサイトメトリー。 RMPは、RBCマーカーグリコホリンAに対する蛍光モノクローナル抗体(mAb)により確認した。組織因子(TF)及び凝固因子VIII(FVIII)もまた、mAbによりRMP上に測定された。蛍光アネキシンV(AnV)を使用して凝固促進性フォスフォチジルセリン(PS)の露出を測定し、FITC標識したUlex europaeus(Ulex)のレクチンを使用して総MPを評価した(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation))。
【0078】
3つの方法(a、b、c)全てでRMPが豊富に生産されることが、フローサイトメトリーによって示された。特に興味を引いたことは、強力に凝固を開始させる組織因子(TF)(非常に低レベルで活性がある)が、弱くではあるが有意に陽性で発現していることである。FVIIIが同レベルで確認された(図10参照)。
【0079】
3つの方法(イオノフォア、超音波破砕、及び抗D抗体)による9つの実験の代表的結果。 図10はグリコホリンに陽性である粒子の数で定義される総RMPを示しており、またこの画分がTF、FVIII、及びAnnVに陽性であることを示している。(AnV陽性に反映される)PSの露出が通常低いことに留意されたい。PSが貪食の引き金であることから、これは循環における半減期が良好であることを示唆している。
【0080】
RMPの凝固促進活性の分析。 標準的に調製された1.5mlのRMPからのRMPを8,000×g、15分遠心(エッペンドルフ微量遠心機)することで沈殿させ、上清を除去した。次いで、標準(正常)血漿を添加してRMPを再懸濁した。凝固促進活性を評価するために、混合物にRMPを添加し、カルシウムを添加(2mM)することでカルシウム再沈着時間を測定した。凝血時間は手作業で測定した。
【0081】
その結果(図11に示す)から、以下にさらに詳述するように、RMPが有意な凝固促進活性を有することが証明された。血液凝固には、少なくとも2つの経路が知られている。1つはトウモロコシのトリプシン阻害剤で完全に阻害される「内因性」経路で、1つはTFが仲介する「外因性」経路である。いずれか特定の経路に限定されることなく、本発明者らは、トウモロコシトリプシン阻害剤存在下でもRMPの凝固促進活性があったことから、RMPの凝固促進活性はTFの仲介によるものであると推察する。(TFが仲介しない凝固促進活性を消失させる)トウモロコシトリプシン阻害剤を含む実験は示していない。
【0082】
RMPの凝固促進活性。 図11は再カルシウ化凝血時間を、分単位、複数回の平均値±標準偏差で、上記の方法を用いて示している。RMP存在下において凝血時間の顕著な短縮が見られる。驚くべきことに、本実験においてRMPは、同様の量の白血球由来MP(LMP)よりも効果があった(しかし、その差異は有意ではなかった)。同様な結果がトウモロコシトリプシン阻害剤存在下で確認された(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation))。
【実施例10】
【0083】
RMPに止血活性があることを示すin vivo動物データ。
本発明者らは、成獣のFischerラットにおいて、赤血球微粒子(RMP)の効果投与量依存的に調べた。動物をランダムに4つのグループに分けた。グループ1正常コントロールとした。グループ2、3、及び4には、血小板減少症を誘導するためにシクロフォスファミド(75mg/kg)をi.p.単回投与した。5日目、処置グループで血小板数が5×105/マイクロリットルに減少したときに、麻酔下で尾の先端2mmを切断して出血時間を測定した。出血時間を調べる2分前に、グループ3及び4には、それぞれ1×107及び1×108のRMPを注射した。RMPは基本的に以下の通り調製した:全体を通して厳密に無菌操作を行った。新たに採血したクエン酸加血からの全RBCを10倍体積の等張生理食塩水で2回洗浄し、ヘマトクリット値が17%となるように懸濁した。次いで、超音波バースト(Cole-Parmer社製, Model 4710, Ultrasonic Homogenizer, 小さなプローブが取り付けられている)に1秒間さらした。大きな残骸を低速遠心(8分、200×g、Beckman社製の 臨床用遠心機)で除去し、エッペンドルフ微量遠心機で8,000×g、15分、上清を遠心分離し(1.5mLポリプロピレンチューブ内)、暗紅色の上清を除去した。RMPの小さなペレットを小体積で懸濁し、FITC標識Ulex europaeusで計測後、実験動物に注入する前に表示の濃度に希釈した。結果を図12に示す。正常コントロールにおいては、出血時間は1分未満であった。シクロフォスファミドのみを投与されて血小板減少症を誘導されたグループ2では、出血時間は700秒を超えた。血小板減少症誘導後に1×107のRMPを投与したグループ3では、グループ2と比較して出血時間が大幅に短縮された。1×108のRMPで処置された動物では、さらに大幅に出血時間が短縮され、RMP投与の投与量依存的効果が観察された。
【実施例11】
【0084】
RMPへの凝固因子のコンジュゲート又は粘着。RMPは、いくつかの適用において止血活性を増加させるように、生化学的修飾されてもよい。例えばRMPはポリエチレングリコール(PEG)の超音波的な取り込みによって修飾されていてもよい。なぜなら、ペグ化リポソームはFVIII及びvWfの両方を貪欲に、しかし非共有結合的に吸収することが示されているからである(M Baru, EtAl: Factor VIII efficient and specific non-covalent binding to PEGylated liposomesenables prolongation of its circulation time and haemostatic efficiency. Thromb Haemost 2005; 93(1061-1068))。別の方法では、RMPはRGDペプチドの共有結合的付加で修飾されてもよい[53、62]。特定のタンパク質又はペプチドをリン脂質(PL)小胞にコンジュゲートさせる方法は、当該技術分野で周知である。詳細には、Greg T. Hermansonによる網羅的な教科書であるBioconjugate Technique(G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996)を参照のこと。細胞由来微粒子は原則的にPL小胞であるから、同じ方法が適用可能であるとが合理的に予想される。
RMPにコンジュゲートさせる薬剤(agent)(例えばRGDペプチド)は、前もって活性化されている中間体でもよく、且つ無菌的に凍結乾燥させた形態で保存できると考えられる(例えば、G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996の236ページ参照)。これを、必要時に患者のRMPに添加してもよく、その結果、1時間のインキュベート後にタンパク質−RMPコンジュゲートを生じ、その後必要なのはこのコンジュゲートRMPから過剰の試薬を洗浄で除くことだけである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】リストセチン存在下及び非存在下におけるEMP誘導血小板凝集物形成の比較。リストセチン存在下(1mg/mL)、腎臓EMP(4×107/mL)は強力に血小板凝集を誘導し、これは8%の血漿により誘導される血小板凝集と同程度であった。EMP誘導及び血漿誘導血小板凝集は両方とも、抗CD42bmAbによるブロッキングによって阻害された(CD42bは血小板上にあり、フォンウィルブランド因子(vWf)及びトロンビンの受容体結合部位である)。対照的に、リストセチン非存在下では、EMPは血小板凝集をほとんど誘導しなかった。N=5;平均値±SD。*は「血漿+リストセチン+α−CD42b」グループ及び「EMP+リストセチン」グループの間で比較してp<0.01であることを示す。**は、「EMP+リストセチン+α−CD42b」グループ及び「EMP+リストセチン」グループの間で比較してp<0.03であることを示す。
【図2】リストセチン存在下における血漿、Humate-P、又はEMP誘導血小板凝集物形成の投与量反応曲線。腎臓EMP/リストセチン誘導血小板凝集の投与量反応曲線は、1×107EMP/mLのvWf補因子活性と、3.5%の血漿又は0.075U/mLのHumate-PのvWf補因子活性が同等であることを示している。N=5;平均値±S.D.。
【図3】リストセチン存在下における血漿、EMP、又はEMP誘導血小板凝集物形成に対する0.1μm濾過の影響。0.1μmのフィルターを用いた濾過は、腎臓EMP誘導血小板凝集を大幅に消失させたが、血漿又はHumata-P誘導血小板凝集にはほとんど又は全く影響しなかった。N=4;平均値±S.D.。*は、「濾過EMP」グループと「未濾過EMP」グループを比較してp<0.01であることを示す。
【図4】血漿又はEMPによって形成された血小板凝集物の解離の時間経過。血小板凝集物を20分間誘導した後、混合物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で20倍希釈し、凝集物の解離を開始させた。間隔をおいて、サンプルの遊離血小板の増加をフローサイトメトリーで測定した。50%解離する時間は、血漿、Humate-P、及びEMPでそれぞれ15、25、及び60分であった。N=4;平均値±S.D.。
【図5】突発性血小板減少性紫斑病(TTP)血漿又はEMPで誘導した血小板凝集物は、正常血漿で誘導したものより解離に対して抵抗性である(0.1μm濾過又は未濾過)。図5記載のように、急性期の4人の異なるTTP患者由来の4%のPPPとコントロール血漿を、血小板及びリストセチンと一緒に20分インキュベートし、その後、サンプルを大体積のPBSで希釈して(20倍希釈)、凝集物の解離を開始させた。この図は、TTP血漿又はEMPで誘導した血小板凝集物が正常血漿で誘導したものより解離に抵抗性であることを示している。TTP血漿の濾過によって、凝集物の解離が約20〜30%失われた。コントロールの各データは6サンプルの平均である。TTP血漿の各データは異なる4サンプルの平均値である。
【図6】vWd血漿へのEMPの添加は、vWd血漿の血小板凝集活性をレスキューした。vWd血漿へのEMP又はHumate-Pの添加によって、vWd血漿の血小板凝集活性が回復した。低濃度のEMP(5×106/mL)と低用量のHumate-P(0.1U/mL)を組み合わせることで相乗効果が得られた。N=4;平均値±S.D.。
【図7】0.8%アガロースゲル電気泳動及びウェスタンブロッティングによる、異なる起源のvWfマルチマーの解析。レーン1は1型vWd患者由来血漿(5μL)、レーン2は急性期のTTP患者由来血漿(5μL)、レーン3は正常コントロール由来の血漿(5μL)、レーン4は腎臓EMP(2×107個)、レーン5は希釈Humate-P(0.01U)である。
【図8】in vivo血小板減少症モデルにおける、止血活性に対する上皮微粒子の効果。成獣Fischerラットにシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与し、血小板減少症を誘導し、4〜5日後に尾を切断した。結果には、コントロール、CTX処置及びCTX+EMP処置動物の出血時間が示されている。
【図9】古典的ITP患者と長期間出血をしていない患者(本文中の症例研究の患者A及びBを参照)のRMP比較による臨床的実験室試験(clinical laboratory studies)。重度のITP(血小板数が10,000以下)でありながら30年以上ほとんど出血のない2人のITP患者のデータを、通常の出血症状を呈している典型的なITP患者及び健康なコントロールと比較した。PMP、EMP、LMP、凝固検査及び血液化学は、症例A及びBを含む全てのITP患者間で似通っていた。症例A及びBで唯一異なっていたのは異常に高レベルなRMPであった。
【図10】3つの方法(イオノフォア、超音波破砕、及び抗D抗体)で作製したRMP上でのTF、FVIII、アネキシンVの発現。この結果は、TF(空洞の棒グラフ)、FVIII(1本斜線の棒グラフ)、AnnV(2本斜線の棒グラフ)のRMP内での陽性な発現を示しており、総RMPに対する割合で示している。グリコホリン陽性粒子の数を総RMPと定義する。
【図11】in vitroにおけるRMP及びLMPの凝集促進活性。トウモロコシトリプシン阻害剤存在下(1U/mL)で、PRPにRMP又はLMPを1×108添加し、次いでカルシウム(10mM)を添加して凝血過程を開始させた。この結果から、血栓形成促進において、RMPがLMPより強力であることが示された。
【図12】in vivoにおけるRMPの止血活性。成獣Fischerラット3頭にシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与し、血小板減少症(低血小板数)を誘導し、4〜5日後に尾切断により出血時間を調べた。示されている通り、コントロール(CTX未処理)ラットの60秒と比べて、CTXによる処置は出血時間を長引かせる(760秒)。CTX処置ラットにRMPを1×107及び1×108の2種類の投与量で注入したところ、出血時間は劇的に短縮された。高投与量(1×108)においては、出血時間は220秒に短縮された。
【図13】正常血液中の細胞由来微粒子の存在比。血漿中のPMP、EMP、LMP、及びRMPの数をフローサイトメトリーで分析した。円グラフは、正常血漿中におけるこれら4種類の微粒子の存在比を示している。
【図14】異なる種の微粒子は異なる止血機能を発揮する。図中に示されているように、vWf+微粒子は血小板粘着及び凝集を誘導する。TF+/PS+微粒子は血液凝固を開始及び促進する。CD62+/CD54+微粒子は白血球を活性化する拡散性伝達物質(diffusable messenger)として働く。
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、血小板粘着、凝集、血栓形成を促進する膜由来微粒子を含む組成物に関し、また、出血性疾患の治療方法、詳細には低血小板数の場合の血小板機能疾患、血液凝固疾患の治療方法に関する。本発明はまた、哺乳動物、詳細には外傷患者、失血が相当量あり得る侵襲性の外科的又は内科的処置を受けている患者の失血を最小限にするのにも有用である。
【背景技術】
【0002】
2.背景
(A)臨床的な出血性疾患
(B)細胞由来微粒子(C−MP)
【0003】
2(A) 臨床的な出血性疾患
持続的な出血症状を呈する多くの医学的疾患は、(i)血小板障害、(ii)凝血障害(clotting disorder)、(iii)十分に定義されていない出血性疾患に分類できる。
【0004】
(i)血小板障害。血小板障害の患者は、血小板の数が不十分である(血小板減少症)ため、又は血小板の数は正常でも血小板機能が損なわれている(血小板機能不全)ために、しばしば過剰出血する。例えば、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)の患者は血小板を十分にもたないため、痣ができやすく、出血しやすい。血小板減少症(低血小板数)は薬物療法によって、特に集中的な化学療法の後に起こることがある。アスピリンなどの多くの薬剤は血小板機能を損なわせ、患者の血小板数が正常にもかかわらず過剰の出血を生じさせる。全身疾患には、後天的な血小板障害を引き起こすものもある。血小板減少症又は血小板機能不全は先天性又は後天性であってよい。
【0005】
(ii)凝血障害。フォンウィルブランド病(vWd)及びその他の凝固障害(coagulation disorder)を含む遺伝的出血性疾患群は、持続的な出血という共通性で特徴づけられる。これらの凝血障害患者の多くでは、血中の第VIII因子(FVIII)若しくはフォンウィルブランド因子(vWf)などのような凝固因子の量及び/又は機能が不十分である。vWfは血小板の粘着、凝集を促進し、凝固第VIII因子(FVIII)を運搬する。FVIIIはトロンビンの生成及び続く血液凝固に必須である。
【0006】
(iii)出血性疾患には、十分に定義されていないものがたくさんあり、その中には、血管壁に関係するものもある。
【0007】
出血性疾患には様々な治療法が利用できるが、より効果の高い及び/又は副作用の少ない治療法が必要とされている。
例えば、現在、出血性疾患治療の中心は、血小板及び凝固因子のような同種間血液製剤(患者ではなくドナー由来の血液製剤)輸血である。しかしこれらの薬剤には、肝炎、HIVウイルスのような血液感染症の危険があり、免疫性の輸血反応を引き起こすことがある。これらの問題を回避しようと、組換え凝固因子又は効果的な小分子の生産が活発に追求されている。そのような薬剤には臨床的に利用可能なものもある(例えば、Coagulin-A(登録商標)、Kogenate(登録商標))が、それらはまだ非常に高価であり、また、全ての患者がこれらの薬剤に反応するわけではない。その他の治療法の例として、ヒトvWf含有血漿の寒冷沈降物又はヒトの精製vWfの投与を挙げることができる。直接注入されたvWfはクリアランス時間が非常に短く、治療をさらに複雑にする。その上、患者の中には、外来タンパク質を拒絶し、これらの補充療法に反応しない患者もいる。一部の血友病及びvWd患者の治療には、デスモプレシン(DDAVP)のような他の止血剤が使用されているが、多くの患者はこの治療には反応しない。したがって、自然発症的又は外傷により誘導される出血がしばしば合併症となり時には命を脅かす出血性疾患の、新規な治療法が依然として必要とされている。
【0008】
本発明は、自己血液製剤又は血液感染性病原菌の伝染能及び免疫反応誘導能の低下した異種血液製剤を使用する効果的で安全な治療法を開発することよって、これらの問題全てに取り組んでいる。本方法は、出血性疾患患者の生活の質を改善し、多くの命を救うと考えられる。さらに、輸血医療でますます問題となっている深刻な血液供給不足を解決すると思われる。
【0009】
2(B)細胞由来微粒子(MP)
細胞活性化又はアポトーシスの間に、細胞膜由来微粒子(MP)が遊離することが示されている。血小板、リンパ球、赤血球、及び上皮細胞からのMPの遊離が証明されている(それぞれ、PMP、LMP、RMP、EMP)(非特許文献1〜3参照)。ほとんどのMPは、ホスファチジルセリン(PS)のような凝固促進性(procoagulant)陰性リン脂質を露出していて(非特許文献4〜7参照)、血小板第3因子活性(PF3)を有する(非特許文献8参照)。この活性はin vivoにおけるMPの主要な機能と考えられている。より最近になって、リンパ球MP(LMP)(非特許文献9〜11参照)、上皮MP(EMP)(非特許文献11〜14参照)、及び血小板MP(PMP)(非特許文献10及び15参照)上で組織因子(TF)が同定され、止血及び血栓形成(thrombosis)における重要な役割がさらに示唆された。本開示前において、TFはRMP上には局在していなかった。
【0010】
本発明者らは以前に、PMP、LMP、EMPが止血、血栓形成及び炎症において重要な役割を果たしていることを実証した(非特許文献1〜3参照)。本発明者らは、EMP上の表面抗原は特徴的であるが、それらはアポトーシスや活性化などの上皮細胞傷害の種類に大きく依存していることを報告した(非特許文献16参照)。EMPには凝固促進活性があり、ループス、MS、及びその他の慢性的炎症性疾患などを含む多くの血栓性及び炎症性状態に関係していることが示されている(非特許文献2、3及び10参照)。EMPはさらに組織因子(TF)を運搬することが知られている。それにもかかわらず、疾患回復におけるMPの機能的役割は明らかにされていない。MPは凝固促進性であるから出血性疾患の治療薬として使用できるだろうというのが本発明者らの仮説である(非特許文献3参照)。
【0011】
Collerと同僚は、1992年、赤血球にRGDをコンジュゲートさせることで止血活性をもたせ、その生産物をthromboerythrocytesと名づけた(非特許文献17参照及び特許文献1参照)。しかし、Collerの発明は、本発明の微粒子の使用を開示も予測もしていない。
その他に報告されている止血用リポソーム製剤の例として、止血活性のある小胞にするためにFVIII(非特許文献18及び19参照)及びフィブリノーゲン(非特許文献20及び21参照)のような凝固因子を結合させたリポソーム製剤やアルブミン粒子がある。
人工リポソームの化学修飾物には、「人工血小板」を作製するために合成リポソーム又はアルブミンにコンジュゲートさせた、GpIIb/IIIa及びIb/IXのような血小板特異的粘着分子が含まれる(非特許文献22〜25参照)。
【0012】
これらの方法には不利な点がある。合成微粒子は、補体カスケードを活性化して副作用で合併症を引き起こすかもしれないし、免疫反応を誘導して自己免疫反応を引き起こすかもしれない。臨床に実施できるような、合成MP又は赤血球を用いた方法はまだなく、追跡研究もほとんどされていない。
本発明は新規の微粒子(MP)、詳細には赤血球微粒子(RMP)を、本目的のための薬剤として用いる。1つの実施形態では、細胞由来微粒子は、患者のもたないタンパク質又は因子へのコンジュゲートである。好ましい実施形態では、自己細胞由来赤血球微粒子を止血剤として用いる。本方法のかかる実施形態は明確な利点を有し、組成物が自己由来であるため、同種血輸血又は合成物質によりしばしば引き起こされる免疫系の活性化が回避され、血液感染性病原体の感染リスクが除かれる。赤血球は最も豊富に存在する血液細胞であるので、少量の血液(全血液体積5000ml以上のうち、50〜100ml)であれば患者から安全に採血でき、RMPを作製して同じ患者に注入して戻すことができる。本組成物の供給は患者にとって安全且つ便利である。
【特許文献1】米国特許第5,328,840号
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【非特許文献3】Ahn YS. Cell-derived microparticles: Miniature envoys with many faces. J Thromb and Hemostasis. 3:884-887, May, 2005.
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【発明の開示】
【0013】
本発明は、出血を減少させるための細胞由来微粒子(MP)又はその化学修飾変種の組成物及び使用方法に関する。
【0014】
様々な疾患、例えば、限定されるものではないが、免疫性若しくは突発性の血小板減少性紫斑病(ITP)、薬剤や化学療法で誘発された血小板減少症及び様々な原因によるその他の血小板減少症、並びに凝固障害(フォンビルブランド病、血友病、及びその他の出血性疾患を含む)において、血液凝固促進、並びに血小板の粘着及び凝集の亢進、凝血効率の改善並びに出血時間の短縮のために、上皮微粒子(EMP)、血小板由来微粒子(PMP)、赤血球由来微粒子(RMP)、及び組成/機能の似た合成微粒子(SMP)、又はそれらの化学修飾変種が使用できる。また、本発明は、MPの望ましい生物学的特性を強化させる、MPの化学修飾も包含すると考えられる。組換え及び精製された置換要素は商業的に利用可能であり、当該技術分野でよく知られている。1つの機序に限定するものではないが、本発明者らの考えでは、上記微粒子の働きは、凝固開始時においてより効率的な血小板の粘着及び凝集を引き起こすことによるもので、少なくとも部分的には、微粒子表面上にvWf、FVIII又は同様の物質の形態で凝固因子を提供し血栓形成を促進及び加速することによるものである。しかし、本発明者らは、この理論又は他のどのような理論にも限定することを意図しない。
【0015】
本発明の使用に適した微粒子は様々な方法で製剤されてよい。例えばEMPは、(例えば、腎臓、脳、又は冠状動脈由来の)ECを培養し、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)で上記細胞を活性化してEMPを生産させ、生じたEMPを培養液上清から沈殿させ、洗浄することで作製できる。
【0016】
PMPは、血小板を、ADP、コラーゲン、エピネフリン、又はトロンビンのような刺激性アゴニストと一緒にインキュベートすることで作製できる。
RMPは、超音波破砕またはカルシウムイオノフォアとインキュベートすることで作製できる。
このように作製されたMPは、特定の目的のための血液凝固促進効果をさらに増すように修飾されていてよい。
【0017】
本発明者らは、正常な血液におけるPMP、EMP、LMP、及びRMPの存在比が、それぞれ総MPの50〜70%、5〜10%、10〜15%、及び10〜15%であることを見出した(図13)(W Jy, JJ Jimenez, LL Horstman, L Mauro, C Bidot Jr, M Yaniz, M Gonzalez, E R Ahn, CJ Bidotand YS Ahn. MicroparticlesDerived from Platelets (PMP), Endothelia (EMP), and Leukocytes (LMP) Exhibit Distinctive Hemostatic and Inflammatory Activities. Blood 2005; 106(11):1029a.[To be presented at the meeting of American Society of Hematology in December 12, 2005 at Atlanta, GA.])。異なる種類の微粒子は異なる止血機能を示す(図14)(W Jy, JJ Jimenez, LL Horstman, L Mauro, C BidotJr, M Yaniz, M Gonzalez, E R Ahn, CJ Bidot and YS Ahn. Microparticles Derived from Platelets (PMP), Endothelia (EMP), and Leukocytes (LMP) Exhibit Distinctive Hemostatic and Inflammatory Activities. Blood 2005; 106(11):1029a.[To be presented at the meeting of American Society of Hematology in December 12, 2005at Atlanta, GA.])。
【0018】
上記微粒子は当業者に公知のいかなる便利且つ効果的な方法で投与されてもよく、特に静脈内投与又は止血が必要若しくは望まれる部位への直接の適用(例えば、局所的に、又は注射によって)であってよい。そのような方法は過度な実験なしに理解され、及び/又は容易に決定されるだろう。
【0019】
したがって、血液凝固を促進する又は血小板粘着、凝集、血栓形成を刺激する微粒子を含有する組成物を、必要とする哺乳動物に投与することを含む止血亢進方法を提供することが1つの目的である。止血の亢進が望まれるいかなる動物、特にヒトも含まれると考えられる。
【0020】
本発明の更なる目的は、本発明の方法に従って使用できる、本明細書に記載された微粒子を含有する医薬組成物を提供することである。上記医薬組成物は、通常少なくとも、薬学的に許容される希釈剤、添加剤(excipient)及び/又は担体を含有する。
【0021】
「薬学的に許容される希釈剤、添加剤及び/又は担体」とは、上記微粒子と相性がよく、且つ本発明に従って動物、特にヒト又はその他の動物に局所又は全身投与するのに適していると、当業者に理解される化合物を意味する。例えば、上記微粒子は、生理学的に許容される食塩水のような、許容される水性の運搬体によって送達されてもよい。有用な溶液は、薬学分野で周知のいかなる方法で調製されてもよく、そのような方法は例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 1990 (Gennaro, A., ed.), Mack Pubに記載されている。
【0022】
本発明はまた、これらの医薬組成物の、上述した方法、例えば、様々な疾患及び障害における血小板の粘着、凝集の亢進、凝血効率の改善、出血時間の短縮のための使用を含む。上記疾患及び障害には、限定されるものではないが、免疫性若しくは突発性血小板減少性紫斑病、薬剤及び化学療法で誘発された血小板減少症、並びにその他の血小板減少症、並びにフォンウィルブランド病、血友病、その他の出血性疾患が含まれる。
【0023】
治療が必要な動物は、遺伝性又は後天性の、凝固障害又は血小板障害に罹患していてよい。突発性血小板減少性紫斑病、血小板減少症を生じさせる治療若しくは事故による細胞毒性薬剤(cytotoxic agents)への被爆(例えば、がん化学療法)、或いは先天性若しくは後天性の又は薬剤若しくは全身疾患による血小板機能障害のような様々な原因による血小板減少症。凝固障害には、vWd、血友病、その他の凝固因子欠損が含まれる。血管壁の異常のような、十分な定義がされていないその他の止血異常も本発明の利益を受けることができる。EMP、PMP、RMP、及びLMPのような本明細書に記載の微粒子は、凝固及び止血を亢進し、過剰出血を緩和する。微粒子の有効投与量は当業者が過度な実験を行うことなく決定でき、一般的には106〜1012/kgの間、さらに一般的には108〜1010/kgの間であると予想される。
【0024】
EMP、RMP、及びその他の微粒子は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は当業者に公知のその他の生理学的に許容される緩衝液を含む薬学的に好適ないかなる医薬組成物中で投与されてもよく、また、任意で、利点をもたらすと考えられ得る付加的な治療用化合物、添加剤、及び担体と一緒に投与されてもよい。上記緩衝液のpHは一般的に7.4以下であろう。
【0025】
本発明の有用性はいかなる理論にも依存しないが、本発明者らは、血管の損傷中に遊離したEMPが、膜に結合したvWfマルチマー及びアドヘシンを介して素早く凝固因子並びに/又は血小板と相互作用して、局所的微小環境において血小板凝集物を安定化することで止血を助けており、また、赤血球から遊離したRMPは、組織因子及び表面リン脂質のような凝固因子を提供して血栓形成を促進するのではないかと考えている。
【0026】
RMPの使用に特に利点があることが分かった。1つの実施形態では、個体自身の赤血球を用いて、その個体に投与するRMPを生成する。赤血球は豊富にあるので、例えば出血性疾患の治療を必要とする患者又は外科手術を受けている若しくは外傷性傷害を受けた患者からでも、少量の赤血球であれば安全に採集することができ、治療のため及び失血を減らすために使用するRMPを生成することができるだろう。RMPはTF及び/又はFVIIIを自然に発現していてもよく、又はそのような因子を発現若しくは送達するように生体外でRMPを処置してもよい。出血性疾患の治療のためのRMPの調製方法は本明細書の以下に記載する。本発明の1つの実施形態では、TF発現RMPは、出血性疾患患者或いは外科手術、外傷性損傷、又は侵襲性の診断方法若しくは治療方法を受けた患者のような出血のリスクがある誰にでも、出血防止における基本的又は普遍的止血剤として使用できる。上記侵襲性の診断方法若しくは治療方法の例として、診断を目的とする心臓カテーテル法、気管支鏡検査、結腸鏡検査及び内視鏡検査、胸膜若しくは脊椎の穿刺、動脈造影図、静脈造影図、並びに様々な生検法などに加えて、治療を目的とするIV若しくは中心ライン挿入、又は透析のための特別なカテーテル挿入、心臓若しくはその他の臓器へのステント、血漿交換療法、幹細胞採集などを挙げることができる。
【0027】
超音波破砕又はその他の方法で作製されたRMPは止血活性を有し、出血を減少させるという目的に有用である。しかし、条件によっては、その効果を高めるためのさらなる処置が必要とされてもよい。必要に応じ、RMPは、より効果を高めるために修飾されていてもよく、これを止血性修飾RMP(hmRMP)と呼ぶ。hmRMPはまた、失血を減らす又は出血状態を治療するために患者に輸血することができる。他の従来の治療方法と比べて、RMPを使用することで、HIV、肝炎などの血液感染症が除外され、患者の安全性が高まるだろう。また、合成小胞などが使用されたときに起き得る、合成物質又は外来性物質に対する自己免疫反応のリスクも取り除かれ、それにより、長期的合併症である自己免疫疾患のリスクが取り除かれるだろう。加えて、RMPの調製は、他の細胞由来微粒子や合成膜小胞を調製するよりはるかに廉価である。したがって、個体自身の血液から得られるRMPを用いて、予期される又は起こっている出血性合併症を治療するというかかる新規なアプローチは、輸血や外来性物質の注入に共通する重大な潜在的副作用を取り除くだろう。
【0028】
MP、特にRMPに関してさらに言及する。例えば、組織因子(TF)、フィブリノーゲン、RDGペプチド又はその他のアドヘシンをRMPに付着させることができる。原則的に血液感染性病原体を含まない、多くの組換え又は化学精製産物が本目的のために利用可能であり、使用されてよい。特定のタンパク質又はペプチドをリン脂質(PL)小胞にコンジュゲートさせる方法は当該分野ではよく知られており、詳細には、Greg T. Hermansonによる包括的な教科書であるBioconjugate Techniques(G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996)を参照のこと。細胞由来微粒子は本質的にPL小胞であり、同じ方法が適用可能であることが合理的に予測される。
【0029】
特定の因子欠乏に罹患している特定の患者を、その特定の出血性疾患を直す(correct)又は改善するために、その因子をコンジュゲートさせたMPで治療してもよい。例えば、血友病患者を、患者自身の赤血球(自己RMP)から作製したMPを用いて、FVIIIにコンジュゲートさせたMPで治療してもよい。同様に、フォン・ウィルブランド病患者の治療において、RMPにvWfをコンジュゲートさせてもよい。MP又はRMPにコンジュゲートさせて止血性修飾MP又はRMP(hmRMP)とするために、血液感染性病原体を含まない組換え又は精製産物が利用可能である。
【0030】
RMP治療は、多くの患者で、同種血輸血の必要を削減するか取り除くだろう。本治療法は、反復又は重度の輸血の必要性を削減することで、ますます重大な医療問題となっている血液供給不足を大いに緩和するだろう。
【0031】
RMP及びhmRMP又はその他のMP並びにその化学修飾変種の利益を受ける個体には、様々な血液凝固疾患、(血小板減少症又は血小板機能障害のような)血小板障害、及びよく定義されていない出血性疾患及び血管壁の問題に起因する出血性疾患の患者が含まれる。加えて、出血がしばしば合併症となる侵襲性の診断方法若しくは大きな外科手術を受けなければならない個体、又は何もしなければかなりの失血が予想される個体は、RMP又はhmRMPの注入によって利益を得られる。利益は、時間が許せば患者自身の血液由来のMP製剤であってもよいし、又はドナー血液由来のRMP又はhmRNPによるものであってもよい。さらに、傷害や外傷を被りやすい個体(例えば、平衡感覚障害者、及びホッケー選手やプロボクサーなどのような身体的外傷リスクのある活動に参加している患者)は、自身のRMPを事前に注入することで利益を得られる。RMP治療はまた、化学療法や何であれ出血リスクを増加させる内科的治療を受けている患者、凝固障害又は血小板機能障害又はその他の内科的若しくは外科的治療に関連した出血状態に罹患した患者、血栓を防ぐためのクマジン(Coumadin)又はその他の血液抗凝結薬又は抗血小板薬のような薬物の過剰投与による出血性合併症患者、及び慢性腎不全、慢性肝疾患又はその他の出血リスクを増加させる疾患のような、出血リスクを増加させる慢性病の患者にも利益を与える。
【0032】
RMP、EMP、及びその他のMPは、(例えばキットの成分として)保存可能で、出血しやすい人又はかなりの出血を起こす処置が予定されている人が必要としたときに使用することができる。
【0033】
本発明の更なる実施形態では、ある臨床状況においてはMPを組み合わせて与えることができる。例えば、EMPを最初に投与し、その後にRMPが注入される、又は同時に与えられる。
【0034】
本明細書中で使用されているように、「過剰出血状態」とは、長引く出血又は通常よりも過剰な出血を起こす又は起こし得るあらゆる状態を指す。そのような状態の例として、限定されるものではないが、突発性血小板減少性紫斑病、薬剤若しくは化学療法により誘導された血小板減少症、先天的若しくは後天的な様々な原因による血小板減少症、又は先天的及び後天的な様々な原因による血小板機能障害、又は先天性若しくは後天性フォンウィルブランド病、若しくは血友病、若しくはその他の凝血障害を含む凝固障害のような臨床的出血性疾患、身体的外傷、侵襲性の診断手段並びに外科手術を挙げることができる。
【0035】
本出願は、米国仮出願第60/633,417号の優先権を主張し、これを本出願に引用して援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明者らは、以前、vWfがEMPの亜種(subspecies)に結合していることを示した(Andre P, Denis CV, Ware J et al. Platelets adhere to and translocate on von Willebrandfactor presented by endothelium in stimulated veins. Blood 2000; 96: 3322-3328)が、その機能的意義は分かっていなかった。本明細書の以下に記載する結果で、血小板−EMP相互作用がvWfによって仲介されていることを実証し、また、EMPにより形成された血小板凝集物と正常な血小板、Humate-P、及びTTP血漿により形成された血小板凝集物の安定性とを比較する。加えて、フォンウィルブランド病(vWd)患者由来の血漿の、リストセチン誘導による凝集性に対する、vWf陽性EMPの効果を調べた。さらに、本発明者らは、vWfマルチマーのサイズを、EMP結合vWfと正常血漿、TTP血漿、及びHumate-P由来の可溶性vWfとの間で比較し、血小板凝集物の安定性と関連付けた。
さらに、本発明者らは、高レベルのRMPと平均的ITP患者集団に比べて出血の発症数が少ないこととを関連付ける、重度ITP患者2人からの結果、及びRMPが有効な止血剤であることを実証するin vitroの実験室データを提出する。
【0037】
方法と材料
材料
脳又は腎臓、及び冠状動脈由来のヒト培養上皮細胞はCell Systems 社(Kirkland, WA)から入手した。FITC標識抗CD62E抗体(クローン1.2B6、カタログ番号F−0674)はSigma社(St. Louis, MO)から入手した。抗CD42b抗体(クローンSZ2、カタログ番号IM0409)及び抗CD41抗体(カタログ番号IM0649)はBeckman-Coulter(Miami, FL)から入手した。HRPコンジュゲート抗vWf抗体(カタログ番号AHP062−P)はSerotec Inc. (Raleigh, NC)から購入した。ゲル電気泳動の試薬及び装置はBio-Rad (Richmond, CA) から入手した。リストセチン(Sigma社製、St. Louis, MO)はChrono-Log社から購入した。濃縮第VIII因子及びvWfマルチマーを含有する治療用薬剤であるHumate-P(登録商標)はAventis-Behring (Marburg, Germany)から入手した。その他の化学物質はSigma社(St. Louis, MO)から購入した。
【0038】
EMP及び血小板の調製
脳、腎臓、又は冠状動脈由来のヒト培養上皮細胞(EC)をTNF−α(10ng/mL)で24時間活性化し、EMP産生を誘導した(Abid Hussein MN, MeestersEW, Osmanovic N, Romijn FP, Nieuwland R, Sturk A. Antigenic characterization of endothelial cell-derived microparticlesand their detection ex vivo. J Thromb Haemost. 2003; 1:2434-43.)。その後、培養液上清を、15,000×gで30分遠心してEMPを沈殿させた。次いで、この沈殿をPBS緩衝液で3回洗浄し、PBSで元の1/10の体積になるように再懸濁した。EMP濃度は、Jimenez JJ, JyW, Mauro LM, Horstman LL, SoderlandC, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902に記載されているように、FITC標識抗CD62E抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
洗浄された血小板を調製するために、多血小板血漿(PRP)を10mMのEGTA及び1μMのPGE1存在下で600g、10分遠心した。このペレットをPBSで2回洗浄し、その後、1×108/mLとなるようにPBSで懸濁した。
【0039】
フローサイトメトリーによる、EMP−血小板相互作用及びリストセチン依存性凝集の分析。 終濃度5〜100×106/mLのEMPを、終濃度1×107/mLの通常の洗浄後血小板と、リストセチン(1mg/mL)の存在下若しくは非存在下で、10分間穏やかにオービタルシェイキング(100rpm)しながらインキュベートした。EMPの血小板への結合は、EMPマーカーCD62E及び血小板マーカーCD41を共発現させて、フローサイトメトリーで評価した。これらの実験においては、記載されているように、1%〜15%の血漿及び0.02〜0.4U/mLのHumate-Pを用いた。フローサイトメトリー(Jimenez JJ, JyW, Mauro L, Soderland C, HorstmanLL, Ahn YS. Endothelial cells release phenotypically and quantitatively distinct microparticlesin activation and apoptosis. Thromb Res 2003; 109: 175-180)によって、血小板凝集物(>5μm)を表すビットマップにシフトした遊離血小板(<5μm)の数を計測することで、血小板凝集を測定した。Coulter XLフローサイトメーターの流速は中程度にセットし、ディスクリミネータは前方散乱光(FS)レベル3にセットした。血小板数は、濃度既知の標準ビーズで較正した。血漿中にリストセチンが存在するとき、(血小板凝集物数の増加を伴う)単独の(singular)遊離血小板の減少が観察された。リストセチン(1mg/mL)と最大量の血漿又はHumate-Pでは、5%未満の血小板のみが単独(遊離)のままであった。血小板凝集物形成の指標としては、微小凝集物の数を計測するのではなく、リストセチン存在下及び非存在下での単独の血小板数の減少を測定した。なぜなら、前者は大きさが不均一に分布しており、且つフローチャンバー及びチューブに粘着するため不明瞭であるからである。
【0040】
リストセチン誘導血小板凝集物の解離 室温における血小板凝集物形成の20分後にサンプルをPBSで希釈(体積比1:20)し、時間依存的解離を誘導した。希釈後の遊離血小板数の増加を、フローサイトメトリーで間隔を置いてモニターし、血小板凝集物の解離の時間経過を決定した。
【0041】
vWfマルチマー分析。 Jy W, HorstmanLL, Park H, Mao WW, Valant P, AhnYS. Platelet aggregates as markers of platelet activation: Characterization of flow cytometricmethod suitable for clinical applications. Am J Hematol1998; 57: 33-42の方法を、以下のように小さな変更を加えて用いた。電気泳動中の冷却は、氷水スラリーに浸したアルミブロック上に水平型ゲル電気泳動装置を置くことで行い、緩衝液容器(buffer chamber)も氷上に置いた。数種類のアガロースゲル濃度を試し、広い範囲のマルチマーのサイズを示すのに0.8%が最適であることが分かった。ウェスタンブロッティングは、抗vWf抗体にHRP(Serotec Inc.社製, Raleigh, NC; カタログ番号:AHP062−P)をあらかじめコンジュゲートさせておき500倍希釈(25ml中に50μl)して用いた以外は、Raines et al記載の通り行った。ゲル中のタンパク質を、PBSを転写バッファーとして用い、PVDF膜の一番上にペーパータオルを何枚も重ねて毛細拡散によりPVDF膜に転写した。上記PVDF膜を0.5%カゼイン溶液でブロッキング処理した。PVDF膜の染色は、4−クロロ−1−ナフトール色素(4CN;Sigma社製、カタログ番号C−8890)を用いたNakaneの方法(Nakane PK. Simultaneous localization of multiple tissue antigens using the peroxidase-l;abeled antibody method: a study on pituitary glands of the rat. J Histochem Cytochem1968; 16(9): 557-560)で行った。上記色素は、5mLのエタノールに30mgを溶かし、0.03%のH2O2(100mL中に1mLの3%H2O2)を含む50mMのトリス緩衝液(pH7.6)で100mLにメスアップすることで調製した。
【0042】
臨床研究。 実施例4〜6において、TTP患者4人及び1型vWd患者4人からクエン酸血を得た。上記のTTP患者4人は全員、古典的なTTPの3徴候である、重度血小板減少症(血小板数<2×107/mL)、細血管障害性溶血性貧血及び精神機能障害を発症していた。1型vWd患者は、全vWf抗原量が少ないこと及びリストセチン補因子活性の欠損によって特徴付けられる。本プロトコールは施設内治験審査委員会の承認を受けており、患者のインフォームドコンセントを得ている。
実施例8では、標準的な臨床実験で特徴付けた非定型的(「非出血性」)ITP患者から(最適な保存のためにクエン酸を添加した)血液を得、正常コントロール及び典型的なITP患者と比較した。
【0043】
統計解析。 3つ以上のグループを比較するために、一元配置分散分析を用いてp値を求めた。p<0.05のとき、Studentの両側t検定を用いて2つのグループの平均値の間の差異の有意性(p<0.05)を分析した。データが正規性検定に合格しなかった場合には、Mann-Whitneyの順位和検定を用いた。全てのデータ解析は、ウィンドウズ(登録商標)に基づいたプログラムであるStatmostを使用して行った。
【0044】
微粒子生成方法
I.血小板微粒子
血小板微粒子は、以下に示すような、当業者に周知である、少なくとも3つの方法で調製されてよい。
【0045】
1)血液銀行起源。 保存された血小板は時間と共に豊富なPMPを遊離した(引用文献1の”Platelet Storage Lesion”のセクション4.5を参照)。通常なら捨てられる、有効期限が切れた血小板濃縮物を5日間まで利用するために本方法を利用してもよい。
【0046】
方法:有効期限の切れて1〜5日の血小板を、室温で無菌的に、200×g、10分遠心することで沈殿させた。無菌操作を用い、上清にPBS/クエン酸を加えて2倍体積に希釈し、その後、8,000×g、30分遠心することで微粒子を沈殿させた。この再懸濁したPMPは冷凍保存、次いで使用前に再洗浄してもよい。所望のi.v.溶媒(例えば生理食塩水)に再懸濁すること。
【0047】
2)超音波法。PMPは音波破砕によって高収量で得ることができる。
【0048】
方法:(凝集を最小限にするために)事前に1mM EDTA/5mM MgSO4を含むPBS緩衝液で2回洗浄した、生理的濃度(2.5×105/μL)の新鮮な(又は最近期限が切れた)血小板を、50mLのポリプロピレンチューブ中で超音波破砕した(室温、3〜5秒のバーストを3〜5回)(Branson Instruments社製;5mmのチタンプローブ使用)。残留した血小板及び残骸を遠心分離によって除去し、上清中のPMPを高速スピンで沈殿させた後、上述のように洗浄した。
【0049】
動物実験に適切な無菌操作は、音波プローブが通れるようにチューブのキャップに開けた穴にはめた綿栓からなる。上記音波プローブは、無菌の綿のふち(cotton collar)を通して挿入する前にアルコール綿で拭く。ヒトへの使用における適切な無菌操作は当業者に公知である。
【0050】
3)カルシウム活性化法。正常な生理学においては、細胞質ゾルのカルシウム濃度の上昇は、細胞活性化への経路全ての最終共通段階である。A23138のような試薬カルシウムイオノフォアの使用は、膜に外部培地からカルシウムを選択的に通す孔を創り、豊富なPMPを遊離させる。その結果には、より生理学的な意義があるかも知れない。
【0051】
方法:PMPの調製にはJ. Arnout, E. Huybrechts, M. Vanrusselt, J. Vermylen: A new lupus anticoagulant test based on platelet-derived vesicles. Brit J Haemat 1992; 80: 341-346の方法が利用でき、生じたPMPは、電気泳動/ブロッティングで有意なvWfを発現する[未発表]。簡潔には、1.0mLの洗浄した血小板を2.5×105/μLとなるようにpH7.4のHEPES/生理食塩水に懸濁し、最終濃度1μmol/Lとなるのに十分なイオノフォアA23187(アルコールストック溶液から前もって希釈してある)を50μlの緩衝液中に加え、最終濃度2mMとなるのに十分なカルシウムを加え、その後、室温で20分穏やかに振盪した。遠心して大きな残骸を除去し、上記したように上清からPMPを回収した。
代替法:イオノフォアがPMPに残存する懸念がある場合は、イオノフォアの代わりにサポニンで血小板を透過処理してもよい。その後、上記の通りに進める。代替法:イオノフォアによる活性化と同様の作用強度をもつことが報告されているトロンビン+コラーゲンで血小板を活性化してもよい。
【0052】
II.赤血球由来微粒子(RMP)
上のI(1)に記載したように、患者自身の血又は血液銀行の血はまた、豊富なRMPを自然に放出することが知られている。したがって、それらはI(1)記載の方法そのままで回収されてよい。I(2〜4)記載の新鮮なRBC及び保存したRBCがRMPの作製に使用可能である。
【0053】
III.合成微粒子
リポソームによる方法(合成MP)。凝固促進性リン脂質(PL)に結合したvWfそれ自身のみで血小板減少症患者を有意に止血保護するのに十分であると仮定すれば、vWf−セファリン(又はレシチン)リポソームは効果があってしかるべきだろう。本発明者らの実験は、ダイズ及び卵のレシチン両方が、凝固アッセイ(組織因子、及びループスコアグラント)において、この目的に従来使用されている粗脳脂質であるセファリンとほとんど同じ活性を有することを示している。この方法の実質的利点は、vWf自体以外には免疫原タンパクが限られていることである。
【0054】
方法:簡潔には、(Humate-P(登録商標)又は院内で血漿から調製された均等物のような)vWfの濃縮物を、当該分野で周知の濃度のセファリン又はレシチンのリポソーム存在下で、超音波エネルギーにさらす。適切な条件下では、原則的に全てのvWfがリポソームに(表面又は膜貫通的に)強く結合する。最適条件は、当業者に過度な実験なしに決定可能である。
【実施例1】
【0055】
EMPで誘導した血小板凝集。 EMPを、上述したように通常の洗浄をした血小板とインキュベートした。終濃度4×107/mLのEMPは、リストセチン依存性の血小板凝集を強く誘導した。図1に見られる通り、EMPにより引き起こされたリストセチン依存性血小板凝集の程度は、8%の正常血漿による誘導と同程度であった。リストセチン非存在下では、EMP、Humate-P、又は正常血漿は血小板凝集物をほとんど形成させなかった。EMP誘導及び血漿誘導の両方の血小板凝集は、抗CD42bブロッキングmAb(anti-CD42b blocking mAb)で抑制された。これらの結果は、EMPがvWf依存性の血小板凝集物形成を誘導したことを証明している。
EMP、正常血漿、又はHumate-Pで誘導した血小板凝集の投与量−反応曲線を図2に示す。3つの薬剤全てで、曲線の形が似ていることに気づく。血小板及びEMPは両方とも事前に洗浄してあり、基本的に血漿を含まないので、これらの結果は、リストセチンによる完全な血小板凝集誘導において、EMP結合vWfが、血漿又はHumate-P中の可溶性vWfに代わりとなり得ることを示している。このデータは、3.5%の血漿で50%の凝集が起こり、これは1×107/mLのEMPに相当し、また0.075U/mLのHumate-Pに相当することを示している。
【0056】
微粒子結合vWfの存在をさらに確認するために、EMPの大部分を保持することが知られている0.1μmのフィルターによる濾過の影響を調べた。図3に示す通り、この濾過によりEMP誘導血小板凝集はほとんど消失したが、正常血漿又はHumate-P誘導血小板凝集には有意な影響はなかった。
【0057】
【表1】
【実施例2】
【0058】
異なる起源の上皮に由来するEMP。 本発明者らは3つの異なる起源(腎臓及び脳毛細血管、並びに冠状動脈大血管)のECに由来するEMPの凝集活性を比較した。3つのECは全て、以前に詳述されている条件と似た条件で培養し(Abid Hussein MN, MeestersEW, Osmanovic N, Romijn FP, Nieuwland R, Sturk A. Antigenic characterization of endothelial cell-derived microparticlesand their detection ex vivo. J Thromb Haemost. 2003; 1:2434-43、Jimenez JJ, Jy W, Mauro LM, Horstman LL, Soderland C, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902、Jimenez JJ, Jy W, Mauro L, Soderland C, Horstman LL, Ahn YS. Endothelial cells release phenotypically and quantitatively distinct microparticles in activation and apoptosis. Thromb Res 2003; 109: 175-180)、同じ濃度のTNF−α、で24時間刺激した。EMPを上述したように回収及び洗浄し、フローサイトメトリーで計測後、等濃度に調整した。表1は、リストセチンによるvWf依存性血小板凝集における、これらの3つの起源のEMPの相対的比活性を示している。腎臓又は脳の毛細血管EC由来EMPの方が、冠状動脈EC由来EMPよりも強力であることがわかる。これは、腎臓又は脳EMPはvWf+EMP含有率が高いという本発明者らの以前の知見(Jimenez JJ, JyW, Mauro LM, Horstman LL, SoderlandC, Ahn YS. Endothelial microparticles released in thrombotic thrombocytopenic purpura express von Willebrandfactor and markers of endothelial activation. Br J Haematol2003; 123: 896-902)、及び異常に活性なvWfの臨床症状が主に微小血管性血栓症に関係しているという事実と一致する。
「方法」セクションに記載したようにして腎臓、脳、及び冠状動脈の上皮細胞(EC)から得られたEMPは、リストセチン存在下での凝集促進活性(proaggregatory activity)を評価する前に等濃度に調製した。この表は、リストセチン誘導血小板凝集において、異なるEC株からのEMPは異なる活性を示したことを示しており、その順番は以下の通りである:腎臓>脳>>冠状動脈EC。N=4、平均値±S.D.。*は、「腎臓EMP」又は「脳EMP」グループを「冠状動脈EMP」グループと比較したときにp<0.01であることを示す。
【実施例3】
【0059】
凝集物の安定性評価。 予備実験の過程で、血漿+リストセチンで誘導した血小板凝集物をPBS緩衝液で20倍希釈したとき、時間依存的に、凝集物集団が徐々に減少し、遊離血小板の数が増加したことが観察された。図4は、血漿、Humate-P、及びEMPで誘導した血小板凝集物の解離の時間経過を示している。血小板凝集物を10分間誘導した後、混合物をPBSで20倍希釈して、解離を開始させた。50%解離時間は、血漿、Humate-P、及びEMPで、それぞれ15分、25分、及び60分であった。これらの結果は、EMPで誘導した血小板凝集物の方が血漿又はHumate-Pで誘導した血小板凝集物より安定であることを示している。本発明者らは、EMPにより形成された凝集物の大きな安定性は(i)EMP上の非常に大きなvWfマルチマーの存在、及び/又は(ii)EMPと血小板を架橋するその他の粘着分子の存在、によると仮定した。
【実施例4】
【0060】
リストセチン誘導血小板凝集物形成へのTTP血漿の影響。 TTPにおいては異常な程度のvWfマルチマー化が関係していることから(akane PK. Simultaneous localization of multiple tissue antigens using the peroxidase-l;abeledantibody method: a study on pituitary glands of the rat. J HistochemCytochem 1968; 16(9): 557-560、Levy GG, Nichols WC, Lian EC, et al. Mutations in a member of the ADAMTS gene family cause thrombotic thrombocytopenicpurpura. Nature 2001; 413: 488-494)、本発明者らは、急性期(A)及び寛解期(B)のTTP患者4人に由来する血漿を調べ、正常にプールされた血漿と比較した。表2に示されているように、TTP患者は、急性期及び寛解期両方で、リストセチン誘導血小板凝集の有意な増加を示した。
【0061】
【表2】
【0062】
急性期(A)及び寛解期(R)の4人の異なるTTP患者のPPP(4%)、並びにプールされたコントロール血漿を、血小板及びリストセチンと一緒に10分間インキュベートし、残っている遊離の血小板をフローサイトメトリーで分析した。急性期及び寛解期のTTP血漿による血小板凝集物形成をコントロールグループと比較した。平均値±S.D.。*は、急性期のTTP又は寛解期のTTPと「コントロール」グループを比較したときにp<0.05であることを示す。
【0063】
TTP血漿により生成された血小板凝集物はまた、正常血漿によるものよりも顕著に安定であった。図5に示すように、TTP血漿による血小板凝集物は、20倍希釈後の解離に対して、正常血漿よりはるかに抵抗性であり、これは急性(増悪)期及び寛解期両方でみられた。TTP血漿を、0.1μm以上の大きさのMPを除去するために0.1μm濾過すると、解離が一部促進された。急性期血漿のTTP血漿での解離の時間経過は、EMPでの解離の時間経過と類似していた(図4)。これらの結果は、TTP血漿中のEMP結合vWfが、血小板凝集物の安定化に部分的に寄与し得ることを示している。
【実施例5】
【0064】
EMP結合vWfのvWd血漿への適用 図6に示す通り、4人のvWd患者の血漿を使用して、該患者らのvWf依存性血小板凝集活性を評価した。vWd患者の血漿は非常に弱い血小板凝集活性を示した。しかし、この活性はHumate-P(終濃度0.1U/mL)を加えた後に劇的に上昇した。本図はまた、vWd患者の血漿にin vitroでEMPを添加(終濃度5×106/mL)すると、vWd血漿の凝集活性が部分的に回復されることを示している。組み合わせたEMP及びHumata-Pの相乗効果が、血小板凝集物を強く誘導する。
【実施例6】
【0065】
正常血漿、TTP血漿、及びHumate-P由来のvWfと比較したEMP結合vWfのマルチマー分析。 本発明者らは、観察されたリストセチン誘導血小板凝集へのEMPの効果が、EMP上に通常とは異なる大きなvWfマルチマー(ULvWf)が存在するためであると仮説を立てた。図7に示すとおり、マルチマー分析によって、EMP結合vWfマルチマー(レーン4)は、正常血漿由来のマルチマー(レーン3)よりも大きく、Humate-P由来のマルチマー(レーン5)やULvWfを呈する血漿をもつTTP患者由来の血漿(レーン2)よりさらに大きいことが確認された。また本発明者らは、1型vWd患者由来のvWfマルチマーのバンドがほとんど無いことに気づいた(レーン1)。EMPサンプルのvWfマルチマーのバンドは、可溶性vWfでみられるように明瞭には分離されないことに気づいた。これに対する可能な説明として、膜結合vWfマルチマーが、特定の膜リン脂質に強く結合しているために、SDSで完全に解離されず、バンドがより拡散されてしまうのかも知れない。
【実施例7】
【0066】
in vivoにおける出血時間を短縮するためのEMP組成物の使用。 in vivoにおけるEMPの効果を実証するために、成獣のFischerラットを3つのグループに分けた。グループ1を正常コントロールとした。グル−プ2及び3には、血小板減少症を誘導するためにシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与した。4〜5日後、処置グループで血小板数が5×105/μL未満に減少したときに、麻酔下で尾の先端2mmを切断し、出血時間を測定した。試験前に、グループ3には、2×108個のEMPを含む0.5mlのPBSを、尾の切断2分前に静脈内注射した。図8に示すとおり、正常コントロールでは、出血時間は1分未満であった。CTXのみを投与されたグループ2では平均出血時間は800秒を超えた。CTX+EMPを投与されたグループP3では、グループ2に比べ、出血時間(200秒未満)は大幅に短縮された。これらの結果により、in vivoにおけるEMPの止血効力が証明された。
【実施例8】
【0067】
非出血性である非定型ITP患者の臨床観察。 本発明者らは最近、重度の血小板減少症にも関わらず出血症状が無い(無症候性)という非常に変わった、限られた数のITP患者を観察してきた。30年以上に渡るITP臨床期間のほとんどの間、その患者らの血小板数は、10,000以下であった。しかし、患者らは大量出血を経験せずに、極めて普通の生活を送っている。この患者らの調査によって、並外れて高レベルのRMPが示された(2つ示す。A、B)。図9参照。患者らは、他には非出血を説明する異常な特徴を何も示さなかった。本発明者らは、患者らの無症候性という特徴は、以下のデータでも裏付けられるように、その高RMPの保護的効果に起因すると考える。
【0068】
2人の患者が、重度のITP(血小板数が10,000以下)と診断されたにもかかわらず、40年以上にわたり大量出血の発症の1つもなく普通の生活を送った。この患者らを注意深く調査したところ、他の出血しやすいITP患者に比べ、2人とも極めて高レベルの赤血球微粒子(RMP)を有していることが明らかになった(Janowsky EC, Kupper LL, Hulka BS: Meta-analysis of the relation between silicone breast implants and the risk of connective-tissue diseases. NEJM 342(11):781-90, 2000、Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation)。図9参照。これら2人の患者の臨床観察(以下の症例研究A及びB)から、RMPには止血活性があり、この患者らの通常と異なる非出血性は高レベルのRMPによって説明されることが示唆された。
【0069】
症例研究(A) 患者AがITPを発症したのは4歳のときで、痣ができやすいことに彼女の母親が気づき、その後の評価でITPと診断された。彼女は、代替療法が失敗した後、脾臓摘出を受けた。脾臓摘出後1年間は寛解が続いたが、ポリオワクチン接種後すぐにITPが再発した。彼女のITPは、高用量の糖質コルチコイド、IVガンマグロブリンに一過性でだけ反応し、他の方法(ビンカアルカロイド、ダナゾール、コルヒチン、Prosorbaカラム,WinRhoなど)には全く反応しなかった。慢性ITPの47年間の間、彼女の血小板はおよそ10,000/μLのままであった。彼女は軽度の外傷で痣ができ、時おり点状出血がみられたが、粘膜出血に苦しむことはほとんどなかったし、輸血を必要とする大量出血は経験しなかった。彼女は多量の月経出血を経験し、出血を制御する経口避妊薬の処方を一時的に必要とした。現在、彼女は活動的な妻であり母として普通の生活を送っている。彼女はまた頻繁に偏頭痛になり、頻繁に経口鎮痛薬を必要とした。重度の血小板減少症のため、CNS出血の恐れから、複合的なCATスキャン(multiple CAT scans)及びMRIが行われたが、陰性であった。彼女がこの合併症をもつことはなかった。
【0070】
臨床結果:血小板 7,000/μL、ヘモグロビン 13.3、ヘマトクリット値 39.1%、WBC 9.3で、正常差異であった。LDHを含む血液化学は全て正常であった。PT、aPTT及びその他の凝固試験は全て正常範囲内であった。ANA、C3、C4、は正常であった。抗リン脂質抗体及びループスアンチコアグラントは陰性であった。
【0071】
血小板糖タンパク質IIb/IIIa及びIb/IXに対する抗体は、血小板関連IgG性質決定アッセイ(platelet associated IgGcharacterization assays)「PAICA」(Macchi L et al: PAICA: a Method for characterizing platelet-associated antibodies. Thrombosis and Haemostasis 76:1020-9, 1996)により測定したところ、強く陽性であり、ITPの診断を裏付けた。細胞由来微粒子は、血小板由来(PMP)、白血球由来(LMP)、上皮由来(EMP)の全てで正常であったが、RMPは顕著に上昇しており、4,639/μLであった。これは、正常なコントロールの約3倍、ITPの限界値の2倍であった(正常平均値=1500/μL;通常ITP平均値=2200/μL)。
【0072】
症例研究(B) 患者Bは幼少期にITPであることが判明し、4ヶ月のときに脾臓摘出を受け、部分寛解した。彼女のITPは糖質コルチコイドによく反応したが、彼女は糖質コルチコイドに耐性がほとんどなかった。治療なしでは、血小板は通常10,000未満であった。彼女には激しい月経があったが、これは彼女が普通の活動をすることを妨げはしなかった。今では50年以上になる慢性ITPの間、大量出血の発症もなく、輸血を必要とすることもなく、彼女は普通の活動及び営みを行った。彼女は異常な出血もなく2人の子供を出産し、足首及び膝の手術に耐えた。彼女は軽度の外傷で容易に痣ができ、注意深い検査によりいくつかの点状出血があったが、鼻血若しくは歯肉出血のような持続的な粘膜出血、又はGI若しくはGU出血は経験しなかった。
【0073】
臨床結果:血小板 9,000/μL、ヘモグロビン 13.7、ヘマトクリット値 44%、WBC 10,300で、正常差異であった。血液化学及び血液凝固検査は全て正常範囲内であった。患者らの抗核抗体(ANA)検査は陰性であった。
抗リン脂質抗体及びループスアンチコアグラントは全て陰性であった。血小板糖タンパク質IIb/IIIa及びIb/IXに対する抗体は強く陽性であり、ITPと一致した。彼女の凝集試験の分析(血小板、白血球、上皮細胞由来の細胞由来微粒子(それぞれPMP、LMP、EMP)の分析)は全て正常範囲内であった。唯一異常であったのは、RMPが4,438/μLに顕著に上昇していたことである。これは通常のITP患者のほぼ2倍である。
【0074】
50年以上の期間にわたる重度の慢性ITP患者2人を調査した結果、RMPは(他のITP患者と比べて異常に)顕著に上昇しているが、血小板微粒子(PMP)、白血球微粒子(EMP)のような他の細胞由来微粒子及びその他の実験室的調査では上昇がないことが明らかとなった。これらの知見は、RMP以外の全てで実験室での結果がITP患者と類似していたことから、生命を脅かす出血発症から患者らを保護するのにRMPが中心的役割を果たしていたという結論を裏付けている。
【実施例9】
【0075】
RMPが有効な止血剤であることを裏付けるin vitro実験室データ。 本発明者らはin vitroでRMPを作製する複数の方法を開発した。RMP作製後、組織因子(TF)及び凝固因子VIII(FVIII)の発現を免疫学的方法で分析した。加えて、本発明者らは、RMPが凝血時間を短縮するかを決定するための機能的検査を行った(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation)。
【0076】
本発明者らは、以下に記載及び図10に示すように、TF及びFVIIIを自然に発現しているRMPを調製した。TF発現RMPは、出血性疾患の患者及び外科的処置又は診断手法のような状況中で出血のリスクのある健常者において、出血予防における基本的又は普遍的止血剤として使用できる。採血した新鮮な正常血液から、様々な方法を用いてRMPを作製した。簡潔には、(a)イオノフォア法。洗浄したRBCを、添加したカルシウム存在下でカルシウムイオノフォアにさらした。(b)浸透圧ショック法。洗浄したRBCを低張食塩水(等張の1/3)にさらした。(c)超音波法。洗浄したRBCを、超音波プローブからのバースト波に短時間さらした(超音波破砕)。(d)抗D抗体法(補体あり/なし)。通常通り等張生理食塩水で3回洗浄した新鮮なRBCを開始物質とした。2つのレベルの抗D抗体(WinRho)でテストし、原血液1mLあたり10U及び50U、50%のHtに添加し、その後、穏やかに振盪しながら50分間インキュベートした。次いで、低速遠心で無傷のRBCを除去し、通常通り、高速遠心でRMPをペレットにし、再懸濁し、フローサイトメトリーを行った。
【0077】
フローサイトメトリー。 RMPは、RBCマーカーグリコホリンAに対する蛍光モノクローナル抗体(mAb)により確認した。組織因子(TF)及び凝固因子VIII(FVIII)もまた、mAbによりRMP上に測定された。蛍光アネキシンV(AnV)を使用して凝固促進性フォスフォチジルセリン(PS)の露出を測定し、FITC標識したUlex europaeus(Ulex)のレクチンを使用して総MPを評価した(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation))。
【0078】
3つの方法(a、b、c)全てでRMPが豊富に生産されることが、フローサイトメトリーによって示された。特に興味を引いたことは、強力に凝固を開始させる組織因子(TF)(非常に低レベルで活性がある)が、弱くではあるが有意に陽性で発現していることである。FVIIIが同レベルで確認された(図10参照)。
【0079】
3つの方法(イオノフォア、超音波破砕、及び抗D抗体)による9つの実験の代表的結果。 図10はグリコホリンに陽性である粒子の数で定義される総RMPを示しており、またこの画分がTF、FVIII、及びAnnVに陽性であることを示している。(AnV陽性に反映される)PSの露出が通常低いことに留意されたい。PSが貪食の引き金であることから、これは循環における半減期が良好であることを示唆している。
【0080】
RMPの凝固促進活性の分析。 標準的に調製された1.5mlのRMPからのRMPを8,000×g、15分遠心(エッペンドルフ微量遠心機)することで沈殿させ、上清を除去した。次いで、標準(正常)血漿を添加してRMPを再懸濁した。凝固促進活性を評価するために、混合物にRMPを添加し、カルシウムを添加(2mM)することでカルシウム再沈着時間を測定した。凝血時間は手作業で測定した。
【0081】
その結果(図11に示す)から、以下にさらに詳述するように、RMPが有意な凝固促進活性を有することが証明された。血液凝固には、少なくとも2つの経路が知られている。1つはトウモロコシのトリプシン阻害剤で完全に阻害される「内因性」経路で、1つはTFが仲介する「外因性」経路である。いずれか特定の経路に限定されることなく、本発明者らは、トウモロコシトリプシン阻害剤存在下でもRMPの凝固促進活性があったことから、RMPの凝固促進活性はTFの仲介によるものであると推察する。(TFが仲介しない凝固促進活性を消失させる)トウモロコシトリプシン阻害剤を含む実験は示していない。
【0082】
RMPの凝固促進活性。 図11は再カルシウ化凝血時間を、分単位、複数回の平均値±標準偏差で、上記の方法を用いて示している。RMP存在下において凝血時間の顕著な短縮が見られる。驚くべきことに、本実験においてRMPは、同様の量の白血球由来MP(LMP)よりも効果があった(しかし、その差異は有意ではなかった)。同様な結果がトウモロコシトリプシン阻害剤存在下で確認された(Ahn YS et al: Extremely high RMP levels among patients with severe ITP who manifest little sign of bleeding. (manuscript in preparation))。
【実施例10】
【0083】
RMPに止血活性があることを示すin vivo動物データ。
本発明者らは、成獣のFischerラットにおいて、赤血球微粒子(RMP)の効果投与量依存的に調べた。動物をランダムに4つのグループに分けた。グループ1正常コントロールとした。グループ2、3、及び4には、血小板減少症を誘導するためにシクロフォスファミド(75mg/kg)をi.p.単回投与した。5日目、処置グループで血小板数が5×105/マイクロリットルに減少したときに、麻酔下で尾の先端2mmを切断して出血時間を測定した。出血時間を調べる2分前に、グループ3及び4には、それぞれ1×107及び1×108のRMPを注射した。RMPは基本的に以下の通り調製した:全体を通して厳密に無菌操作を行った。新たに採血したクエン酸加血からの全RBCを10倍体積の等張生理食塩水で2回洗浄し、ヘマトクリット値が17%となるように懸濁した。次いで、超音波バースト(Cole-Parmer社製, Model 4710, Ultrasonic Homogenizer, 小さなプローブが取り付けられている)に1秒間さらした。大きな残骸を低速遠心(8分、200×g、Beckman社製の 臨床用遠心機)で除去し、エッペンドルフ微量遠心機で8,000×g、15分、上清を遠心分離し(1.5mLポリプロピレンチューブ内)、暗紅色の上清を除去した。RMPの小さなペレットを小体積で懸濁し、FITC標識Ulex europaeusで計測後、実験動物に注入する前に表示の濃度に希釈した。結果を図12に示す。正常コントロールにおいては、出血時間は1分未満であった。シクロフォスファミドのみを投与されて血小板減少症を誘導されたグループ2では、出血時間は700秒を超えた。血小板減少症誘導後に1×107のRMPを投与したグループ3では、グループ2と比較して出血時間が大幅に短縮された。1×108のRMPで処置された動物では、さらに大幅に出血時間が短縮され、RMP投与の投与量依存的効果が観察された。
【実施例11】
【0084】
RMPへの凝固因子のコンジュゲート又は粘着。RMPは、いくつかの適用において止血活性を増加させるように、生化学的修飾されてもよい。例えばRMPはポリエチレングリコール(PEG)の超音波的な取り込みによって修飾されていてもよい。なぜなら、ペグ化リポソームはFVIII及びvWfの両方を貪欲に、しかし非共有結合的に吸収することが示されているからである(M Baru, EtAl: Factor VIII efficient and specific non-covalent binding to PEGylated liposomesenables prolongation of its circulation time and haemostatic efficiency. Thromb Haemost 2005; 93(1061-1068))。別の方法では、RMPはRGDペプチドの共有結合的付加で修飾されてもよい[53、62]。特定のタンパク質又はペプチドをリン脂質(PL)小胞にコンジュゲートさせる方法は、当該技術分野で周知である。詳細には、Greg T. Hermansonによる網羅的な教科書であるBioconjugate Technique(G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996)を参照のこと。細胞由来微粒子は原則的にPL小胞であるから、同じ方法が適用可能であるとが合理的に予想される。
RMPにコンジュゲートさせる薬剤(agent)(例えばRGDペプチド)は、前もって活性化されている中間体でもよく、且つ無菌的に凍結乾燥させた形態で保存できると考えられる(例えば、G T Hermanson: Bioconjugate Techniques. New York: Academic Press, 1996の236ページ参照)。これを、必要時に患者のRMPに添加してもよく、その結果、1時間のインキュベート後にタンパク質−RMPコンジュゲートを生じ、その後必要なのはこのコンジュゲートRMPから過剰の試薬を洗浄で除くことだけである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】リストセチン存在下及び非存在下におけるEMP誘導血小板凝集物形成の比較。リストセチン存在下(1mg/mL)、腎臓EMP(4×107/mL)は強力に血小板凝集を誘導し、これは8%の血漿により誘導される血小板凝集と同程度であった。EMP誘導及び血漿誘導血小板凝集は両方とも、抗CD42bmAbによるブロッキングによって阻害された(CD42bは血小板上にあり、フォンウィルブランド因子(vWf)及びトロンビンの受容体結合部位である)。対照的に、リストセチン非存在下では、EMPは血小板凝集をほとんど誘導しなかった。N=5;平均値±SD。*は「血漿+リストセチン+α−CD42b」グループ及び「EMP+リストセチン」グループの間で比較してp<0.01であることを示す。**は、「EMP+リストセチン+α−CD42b」グループ及び「EMP+リストセチン」グループの間で比較してp<0.03であることを示す。
【図2】リストセチン存在下における血漿、Humate-P、又はEMP誘導血小板凝集物形成の投与量反応曲線。腎臓EMP/リストセチン誘導血小板凝集の投与量反応曲線は、1×107EMP/mLのvWf補因子活性と、3.5%の血漿又は0.075U/mLのHumate-PのvWf補因子活性が同等であることを示している。N=5;平均値±S.D.。
【図3】リストセチン存在下における血漿、EMP、又はEMP誘導血小板凝集物形成に対する0.1μm濾過の影響。0.1μmのフィルターを用いた濾過は、腎臓EMP誘導血小板凝集を大幅に消失させたが、血漿又はHumata-P誘導血小板凝集にはほとんど又は全く影響しなかった。N=4;平均値±S.D.。*は、「濾過EMP」グループと「未濾過EMP」グループを比較してp<0.01であることを示す。
【図4】血漿又はEMPによって形成された血小板凝集物の解離の時間経過。血小板凝集物を20分間誘導した後、混合物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で20倍希釈し、凝集物の解離を開始させた。間隔をおいて、サンプルの遊離血小板の増加をフローサイトメトリーで測定した。50%解離する時間は、血漿、Humate-P、及びEMPでそれぞれ15、25、及び60分であった。N=4;平均値±S.D.。
【図5】突発性血小板減少性紫斑病(TTP)血漿又はEMPで誘導した血小板凝集物は、正常血漿で誘導したものより解離に対して抵抗性である(0.1μm濾過又は未濾過)。図5記載のように、急性期の4人の異なるTTP患者由来の4%のPPPとコントロール血漿を、血小板及びリストセチンと一緒に20分インキュベートし、その後、サンプルを大体積のPBSで希釈して(20倍希釈)、凝集物の解離を開始させた。この図は、TTP血漿又はEMPで誘導した血小板凝集物が正常血漿で誘導したものより解離に抵抗性であることを示している。TTP血漿の濾過によって、凝集物の解離が約20〜30%失われた。コントロールの各データは6サンプルの平均である。TTP血漿の各データは異なる4サンプルの平均値である。
【図6】vWd血漿へのEMPの添加は、vWd血漿の血小板凝集活性をレスキューした。vWd血漿へのEMP又はHumate-Pの添加によって、vWd血漿の血小板凝集活性が回復した。低濃度のEMP(5×106/mL)と低用量のHumate-P(0.1U/mL)を組み合わせることで相乗効果が得られた。N=4;平均値±S.D.。
【図7】0.8%アガロースゲル電気泳動及びウェスタンブロッティングによる、異なる起源のvWfマルチマーの解析。レーン1は1型vWd患者由来血漿(5μL)、レーン2は急性期のTTP患者由来血漿(5μL)、レーン3は正常コントロール由来の血漿(5μL)、レーン4は腎臓EMP(2×107個)、レーン5は希釈Humate-P(0.01U)である。
【図8】in vivo血小板減少症モデルにおける、止血活性に対する上皮微粒子の効果。成獣Fischerラットにシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与し、血小板減少症を誘導し、4〜5日後に尾を切断した。結果には、コントロール、CTX処置及びCTX+EMP処置動物の出血時間が示されている。
【図9】古典的ITP患者と長期間出血をしていない患者(本文中の症例研究の患者A及びBを参照)のRMP比較による臨床的実験室試験(clinical laboratory studies)。重度のITP(血小板数が10,000以下)でありながら30年以上ほとんど出血のない2人のITP患者のデータを、通常の出血症状を呈している典型的なITP患者及び健康なコントロールと比較した。PMP、EMP、LMP、凝固検査及び血液化学は、症例A及びBを含む全てのITP患者間で似通っていた。症例A及びBで唯一異なっていたのは異常に高レベルなRMPであった。
【図10】3つの方法(イオノフォア、超音波破砕、及び抗D抗体)で作製したRMP上でのTF、FVIII、アネキシンVの発現。この結果は、TF(空洞の棒グラフ)、FVIII(1本斜線の棒グラフ)、AnnV(2本斜線の棒グラフ)のRMP内での陽性な発現を示しており、総RMPに対する割合で示している。グリコホリン陽性粒子の数を総RMPと定義する。
【図11】in vitroにおけるRMP及びLMPの凝集促進活性。トウモロコシトリプシン阻害剤存在下(1U/mL)で、PRPにRMP又はLMPを1×108添加し、次いでカルシウム(10mM)を添加して凝血過程を開始させた。この結果から、血栓形成促進において、RMPがLMPより強力であることが示された。
【図12】in vivoにおけるRMPの止血活性。成獣Fischerラット3頭にシクロフォスファミド(CTX、75mg/kg)を腹腔内単回投与し、血小板減少症(低血小板数)を誘導し、4〜5日後に尾切断により出血時間を調べた。示されている通り、コントロール(CTX未処理)ラットの60秒と比べて、CTXによる処置は出血時間を長引かせる(760秒)。CTX処置ラットにRMPを1×107及び1×108の2種類の投与量で注入したところ、出血時間は劇的に短縮された。高投与量(1×108)においては、出血時間は220秒に短縮された。
【図13】正常血液中の細胞由来微粒子の存在比。血漿中のPMP、EMP、LMP、及びRMPの数をフローサイトメトリーで分析した。円グラフは、正常血漿中におけるこれら4種類の微粒子の存在比を示している。
【図14】異なる種の微粒子は異なる止血機能を発揮する。図中に示されているように、vWf+微粒子は血小板粘着及び凝集を誘導する。TF+/PS+微粒子は血液凝固を開始及び促進する。CD62+/CD54+微粒子は白血球を活性化する拡散性伝達物質(diffusable messenger)として働く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の過剰出血状態の治療に有効な細胞由来微粒子又はその化学修飾変異物を含む組成物を投与することを含む止血亢進方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
過剰出血状態が臨床的疾患によるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
ヒトが血液凝固疾患に罹患していることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
ヒトが、免疫性又は特発性血小板減少性紫斑病、薬剤又は化学療法により誘発された血小板減少症、先天的及び後天的な異なる原因による血小板減少症、並びに先天的及び後天的な血小板機能障害からなる群から選択される疾患又は障害に罹患していることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
血小板減少症が、化学的毒性薬剤により誘発されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項7】
化学的毒性薬剤が、化学療法中に投与されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
過剰出血状態が、外傷性傷害、又は出血や失血が多量となり得る外科的処置又は侵襲性の診断手段若しくは治療手段により引き起こされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
微粒子が上皮微粒子(EMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
微粒子が血小板由来微粒子(PMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項11】
微粒子が赤血球由来微粒子(RMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項12】
RMPが、投与される個体の赤血球に由来することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
微粒子が化学修飾されている微粒子であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項14】
血栓形成を促進し且つ血小板の粘着及び凝集を刺激する微粒子を含有する組成物を、必要としている患者に投与することを含む、過剰出血状態を処置する方法。
【請求項15】
微粒子の投与量が106〜1012/kgであることを特徴とする請求項1〜14いずれか記載の方法。
【請求項16】
投与量が108〜1010/kgであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
組成物が静脈内投与されることを特徴とする請求項1〜16いずれか記載の方法。
【請求項18】
組成物が局所的又は部分的に(locally or topically)投与されることを特徴とする請求項1〜17いずれか記載の方法。
【請求項19】
膜由来微粒子(MP)及び薬学的に許容される添加剤又は担体を含有する、止血亢進に適した剤形の医薬組成物。
【請求項20】
MPが、上皮微粒子(EMP)、血小板由来微粒子(PMP)、及び赤血球由来微粒子(RMP)からなる群から選択されることを特徴とする請求項19記載の組成物。
【請求項21】
MPがRMPであることを特徴とする請求項20記載の組成物。
【請求項22】
添加剤又は担体が生理学的に許容される食塩水を含むことを特徴とする請求項19〜21いずれか記載の組成物。
【請求項23】
微粒子106〜1012/kgの投与量を送達するように製剤された請求項19〜22いずれか記載の組成物。
【請求項24】
静脈内での送達用に製剤された請求項19〜23いずれか記載の組成物。
【請求項25】
局所的送達用に製剤された請求項19〜23いずれか記載の組成物。
【請求項26】
止血を亢進するための、請求項19〜25いずれか記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
血液凝固の促進並びに/又は血小板粘着及び/若しくは血小板凝集の刺激を必要とする哺乳動物、特にヒトにおいて、血液凝固を促進並びに/又は血小板粘着及び/若しくは血小板凝集を刺激するための、請求項19〜25いずれか記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
哺乳動物が血小板障害に罹患しているヒトであることを特徴とする請求項26又は27記載の使用。
【請求項29】
血小板障害が、突発性血小板減少性紫斑病、薬剤若しくは化学療法で誘発された血小板減少症、先天的及び後天的な様々な原因による血小板減少症、並びに先天的及び後天的な様々な原因による血小板障害、並びにフォンウィルブランド病、血友病、若しくはその他の凝血障害を含む先天的及び後天的な凝固障害からなる群から選択されることを特徴とする請求項28記載の使用。
【請求項30】
哺乳動物が外傷性傷害を受けた又は侵襲性の内科処置若しくは外科処置を受けていることを特徴とする請求項26又は27記載の方法。
【請求項31】
様々な内科処置又は外科処置における出血を減少させるための止血剤としての使用に適した剤形のMPを含むキット。
【請求項32】
必要な個体において止血を亢進するための、EMP、RMP、及びPMPからなる群から選択される少なくとも2つのMPの使用。
【請求項1】
哺乳動物の過剰出血状態の治療に有効な細胞由来微粒子又はその化学修飾変異物を含む組成物を投与することを含む止血亢進方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
過剰出血状態が臨床的疾患によるものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
ヒトが血液凝固疾患に罹患していることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
ヒトが、免疫性又は特発性血小板減少性紫斑病、薬剤又は化学療法により誘発された血小板減少症、先天的及び後天的な異なる原因による血小板減少症、並びに先天的及び後天的な血小板機能障害からなる群から選択される疾患又は障害に罹患していることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
血小板減少症が、化学的毒性薬剤により誘発されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項7】
化学的毒性薬剤が、化学療法中に投与されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
過剰出血状態が、外傷性傷害、又は出血や失血が多量となり得る外科的処置又は侵襲性の診断手段若しくは治療手段により引き起こされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
微粒子が上皮微粒子(EMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
微粒子が血小板由来微粒子(PMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項11】
微粒子が赤血球由来微粒子(RMP)であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項12】
RMPが、投与される個体の赤血球に由来することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
微粒子が化学修飾されている微粒子であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の方法。
【請求項14】
血栓形成を促進し且つ血小板の粘着及び凝集を刺激する微粒子を含有する組成物を、必要としている患者に投与することを含む、過剰出血状態を処置する方法。
【請求項15】
微粒子の投与量が106〜1012/kgであることを特徴とする請求項1〜14いずれか記載の方法。
【請求項16】
投与量が108〜1010/kgであることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
組成物が静脈内投与されることを特徴とする請求項1〜16いずれか記載の方法。
【請求項18】
組成物が局所的又は部分的に(locally or topically)投与されることを特徴とする請求項1〜17いずれか記載の方法。
【請求項19】
膜由来微粒子(MP)及び薬学的に許容される添加剤又は担体を含有する、止血亢進に適した剤形の医薬組成物。
【請求項20】
MPが、上皮微粒子(EMP)、血小板由来微粒子(PMP)、及び赤血球由来微粒子(RMP)からなる群から選択されることを特徴とする請求項19記載の組成物。
【請求項21】
MPがRMPであることを特徴とする請求項20記載の組成物。
【請求項22】
添加剤又は担体が生理学的に許容される食塩水を含むことを特徴とする請求項19〜21いずれか記載の組成物。
【請求項23】
微粒子106〜1012/kgの投与量を送達するように製剤された請求項19〜22いずれか記載の組成物。
【請求項24】
静脈内での送達用に製剤された請求項19〜23いずれか記載の組成物。
【請求項25】
局所的送達用に製剤された請求項19〜23いずれか記載の組成物。
【請求項26】
止血を亢進するための、請求項19〜25いずれか記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
血液凝固の促進並びに/又は血小板粘着及び/若しくは血小板凝集の刺激を必要とする哺乳動物、特にヒトにおいて、血液凝固を促進並びに/又は血小板粘着及び/若しくは血小板凝集を刺激するための、請求項19〜25いずれか記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
哺乳動物が血小板障害に罹患しているヒトであることを特徴とする請求項26又は27記載の使用。
【請求項29】
血小板障害が、突発性血小板減少性紫斑病、薬剤若しくは化学療法で誘発された血小板減少症、先天的及び後天的な様々な原因による血小板減少症、並びに先天的及び後天的な様々な原因による血小板障害、並びにフォンウィルブランド病、血友病、若しくはその他の凝血障害を含む先天的及び後天的な凝固障害からなる群から選択されることを特徴とする請求項28記載の使用。
【請求項30】
哺乳動物が外傷性傷害を受けた又は侵襲性の内科処置若しくは外科処置を受けていることを特徴とする請求項26又は27記載の方法。
【請求項31】
様々な内科処置又は外科処置における出血を減少させるための止血剤としての使用に適した剤形のMPを含むキット。
【請求項32】
必要な個体において止血を亢進するための、EMP、RMP、及びPMPからなる群から選択される少なくとも2つのMPの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−522974(P2008−522974A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544614(P2007−544614)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044064
【国際公開番号】WO2006/062945
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507170284)ユニバーシティー オブ マイアミ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044064
【国際公開番号】WO2006/062945
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507170284)ユニバーシティー オブ マイアミ (1)
【Fターム(参考)】
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