説明

刃先交換式切削工具

【課題】 刃先交換式切削工具に大きな切削インサートを取り付けるように切屑ポケット部を大きくしたり、径が小さい工具本体を用いた場合にも、切削インサートが取り付けられた部分の強度が大きく低下するのを防止する。
【解決手段】 工具本体10の軸方向先端側外周部における切屑ポケット部11に切削インサート1を着脱自在に取り付け、工具本体の軸方向後端側をボルト頭部12bに締付け穴部12cが設けられた取付ボルト12によりアーバーに取り付ける刃先交換式切削工具において、工具本体の軸方向後端側の中央部に設けた案内収容穴部14内に取付ボルトのボルト頭部を収容させ、この取付ボルトを保持手段20により回転可能な状態に保持させると共に、ボルト頭部よりも小径の締付け用穴15を工具本体の軸方向先端側から案内収容穴部に貫通するように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸心線回りに回転される工具本体の軸方向先端側の外周部に設けられた切屑ポケット部に切削インサートを着脱自在に取り付けると共に、この工具本体の軸方向後端側を取付ボルトによってアーバーに取り付けるようにした刃先交換式切削工具に関するものである。特に、上記の切屑ポケット部に大きな切削インサートを取り付けるようにした刃先交換式切削工具や、工具本体の径が小さい刃先交換式切削工具において、切削インサートが取り付けられた部分における強度が大きく低下するのを防止すると共に、この刃先交換式切削工具が取付ボルトによってアーバーに適切に取り付けられるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、刃先交換式切削工具としては、特許文献1,2等に示されるように、軸線回りに回転される略円筒状になった工具本体の先端側外周部に複数の切屑ポケット部を設け、各切屑ポケット部に切削インサートを着脱自在に取り付けるようにしたものが広く利用されている。
【0003】
そして、このような刃先交換式切削工具においては、その工具本体の軸方向後端側をアーバーに取り付け、アーバーを介してこの刃先交換式切削工具を回転させて、上記の切削インサートにより被削材を切削加工するようになっている。
【0004】
ここで、上記のような刃先交換式切削工具をアーバーに取り付けるにあたり、従来においては、工具本体の中央部に取付ボルトのボルト軸を挿通させる挿通穴を設け、取付ボルトのボルト軸を工具本体の軸方向先端側から挿通穴に挿入し、工具本体の軸方向先端側における取付ボルトのボルト頭部を回転させて、この挿通穴を通して延出された取付ボルトのボルト軸をアーバーに設けられた雌ネジ部にねじ込み、取付ボルトのボルト頭部とアーバーとの間で工具本体を挟み込むようにして、この刃先交換式切削工具をアーバーに取り付けるようにしている。
【0005】
また、このように取付ボルトのボルト頭部とアーバーとの間で工具本体を挟み込むようにして刃先交換式切削工具をアーバーに取り付けるにあたり、刃先交換式切削工具をアーバーに強固に取り付けるために、上記の取付ボルトにボルト頭部の径が大きいものが広く利用されている。
【0006】
一方、近年においては、このような刃先交換式切削工具において、取付けるインサートの形状やその取付け方法等が改良されて、高送りでの切削加工が行われるようになり、これに対応して、切削インサートの強度を高めるために、大きな切削インサートが用いられるようになり、このため、この切削インサートを取り付ける切屑ポケット部を大きくすることが必要になった。
【0007】
しかし、上記のように取付ボルトのボルト軸を工具本体の軸方向先端側から挿通穴に挿入し、工具本体の軸方向先端側における取付ボルトのボルト頭部を回転させて、刃先交換式切削工具をアーバーに取り付ける場合、工具本体の軸方向先端側には、最低限、上記の取付ボルトのボルト頭部に対応した穴部や空間部が必要になり、上記のように切削インサートを取り付ける切屑ポケット部を大きくすると、切削インサートを取り付ける部分の肉厚が非常に薄くなり、工具本体の強度や剛性が大きく低下するという問題が生じた。
【0008】
また、近年においては、このような刃先交換式切削工具を用いて、幅の狭い加工面を切削するため、上記の工具本体に径の小さいものを用いることが検討されるようになったが、この場合にも、切削インサートを取り付ける部分の肉厚が非常に薄くなり、工具本体の強度や剛性が大きく低下するという問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−5921号公報
【特許文献2】特開2006−88332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、軸心線回りに回転される工具本体の軸方向先端側の外周部に設けられた切屑ポケット部に切削インサートを着脱自在に取り付けると共に、この工具本体の軸方向後端側を取付ボルトによってアーバーに取り付けるようにした刃先交換式切削工具における上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明は、上記のような刃先交換式切削工具において、大きな切削インサートを取り付けるように切屑ポケット部を大きくした場合や、径が小さい工具本体を用いるようにした場合に、切削インサートが取り付けられた部分における工具本体の強度が大きく低下するのを防止すると共に、この刃先交換式切削工具が取付ボルトによってアーバーに適切に取り付けられるようにした点に特徴を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては、上記のような課題を解決するため、軸心線回りに回転される工具本体の軸方向先端側の外周部に設けられた切屑ポケット部に切削インサートが着脱自在に取り付けられると共に、この工具本体の軸方向後端側が取付ボルトによってアーバーに取り付けられる刃先交換式切削工具において、ボルト頭部に締付け穴部が設けられた取付ボルトを用い、工具本体の軸方向後端側の中央部に、上記の取付ボルトのボルト頭部を工具本体の軸方向後端側から案内して収容させる案内収容穴部を設けると共に、この案内収容穴部内に収容された上記の取付ボルトを回転可能な状態で案内収容穴部内に保持させる保持手段を設け、上記の取付ボルトのボルト頭部よりも小径の締付け用穴を、工具本体の軸方向先端側から上記の案内収容穴部に貫通するように設けた。
【0013】
ここで、上記の刃先交換式切削工具において、上記の取付ボルトを保持手段によって案内収容穴部内に保持させるにあたっては、案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に載置させる平面が非円形のクランプ部材の中央部に挿通穴を設け、この挿通穴に取付ボルトのボルト軸を挿通させて、この非円形のクランプ部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、このクランプ部材を回転させて、案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させるようにすることができる。
【0014】
また、上記の平面が非円形のクランプ部材を回転させて、案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させるにあたっては、このクランプ部材に、小径の円弧状になった小径円弧部と大径の円弧状になった大径円弧部とを設けると共に、上記の案内収容穴部内における係止部の内周側を上記の小径円弧部に対応した形状に形成し、このクランプ部材の小径円弧部を、係止部の内周側に沿わせて案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に導き、このクランプ部材を回転させて、上記の大径円弧部を上記の係止部に係止させるようにすることが好ましい。
【0015】
また、上記のように案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させて、取付ボルトを保持手段によって案内収容穴部内に保持させるにあたっては、案内収容穴部内に設けられた係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止する回転抑止部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、この回転抑止部材をネジ部材により案内収容穴部内に固定させるようにすることができる。
【0016】
また、このように回転抑止部材を上記の案内収容穴部内に収容させて、案内収容穴部内に設けられた係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止するにあたっては、上記の回転抑止部材を係止部が設けられた案内収容穴部に対応した平面形状に形成し、この回転抑止部材に取付ボルトのボルト軸を挿通させる挿通穴を設けると共に、上記の係止部に係止されたクランプ部材と案内収容穴部との間の空間部に挿入させる脚部を設けるようにすることができる。
【0017】
また、上記の刃先交換式切削工具においては、上記の案内収容穴部から上記の切屑ポケット部に貫通した冷媒供給穴を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の刃先交換式切削工具においては、工具本体の軸方向先端側の外周部に設けられた切屑ポケット部に切削インサートが着脱自在に取り付けられた工具本体の軸方向後端側を取付ボルトによってアーバーに取り付けるにあたり、工具本体の軸方向後端側の中央部に設けられた案内収容穴部内に、締付け穴部が設けられた取付ボルトのボルト頭部を収容させ、この取付ボルトを保持手段により案内収容穴部内に回転可能な状態で保持させる。そして、この状態で、工具本体の軸方向先端側から案内収容穴部に貫通するように設けた締付け用穴を通して、レンチなどの締付け用具を取付ボルトのボルト頭部に設けられた締付け穴部に挿入させ、この締付け用具により取付ボルトを回転させて、この工具本体の軸方向後端側をアーバーに取り付けるようにする。
【0019】
このようにすると、切屑ポケット部に切削インサートが取り付けられる工具本体の軸方向先端側の中央部には、上記のレンチなどの締付け用具を挿通させる取付ボルトのボルト頭部より小径の締付け用穴を設けるだけでよく、大きな切削インサートを取り付けるために切屑ポケット部を大きくした場合や、径が小さい工具本体を用いた場合においても、切削インサートが取り付けられた部分における工具本体の肉厚が薄くなって強度が大きく低下するのが防止されると共に、この刃先交換式切削工具を上記のようにして取付ボルトによりアーバーに適切に取り付けることができるようになる。
【0020】
また、上記の刃先交換式切削工具において、上記の取付ボルトを保持手段によって案内収容穴部内に保持させるにあたり、案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に載置させる平面が非円形のクランプ部材の中央部に挿通穴を設け、この挿通穴に取付ボルトのボルト軸を挿通させて、この非円形のクランプ部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、このクランプ部材を回転させて、案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させるようにすると、このクランプ部材によって取付ボルトが案内収容穴部内に回転可能な状態で適切に保持されるようになる。
【0021】
また、このようにクランプ部材によって取付ボルトを案内収容穴部内に保持させるにあたり、クランプ部材に小径の円弧状になった小径円弧部と大径の円弧状になった大径円弧部とを設けると共に、上記の案内収容穴部内における係止部の内周側を上記の小径円弧部に対応した形状に形成し、このクランプ部材の小径円弧部を係止部の内周に沿わせて取付ボルトのボルト頭部の上に導き、このクランプ部材を回転させて、上記の大径円弧部を上記の係止部に係止させるようにすると、この係止部と接触するクランプ部材の面積が大きくなり、上記のように取付ボルトを回転させて工具本体の軸方向後端側をアーバーに取り付けた場合における保持力を高めることができる。
【0022】
また、案内収容穴部内に設けられた係止部に係止されたクランプ部材に対して、このクランプ部材の回転を抑止する回転抑止部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、この回転抑止部材をネジ部材により案内収容穴部内に固定させると、上記のように回転させて係止部に係止させたクランプ部材が勝手に回転して係止部から外れるのが防止されるようになる。
【0023】
また、このように回転抑止部材を案内収容穴部内に収容させて、案内収容穴部内に設けられた係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止するにあたり、この回転抑止部材を係止部が設けられた案内収容穴部に対応した平面形状に形成し、この回転抑止部材に取付ボルトのボルト軸を挿通させる挿通穴を設けると共に、上記の係止部に係止されたクランプ部材と案内収容穴部との間の空間部に挿入させる脚部を設けると、係止部が設けられた案内収容穴部にこの回転抑止部材が嵌り込んで、係止部が設けられた部分における案内収容穴部がこの回転抑止部材によって閉塞されると共に、上記の脚部によって係止部に係止されたクランプ部材の回転が抑止されるようになる。
【0024】
そして、上記の刃先交換式切削工具において、上記案内収容穴部から切屑ポケット部に貫通した冷媒供給穴を設け、案内収容穴部から冷媒供給穴を通して空気や冷却油等の冷媒を切屑ポケット部に供給して切削部分を冷却させるにあたり、上記のように係止部が設けられた部分における案内収容穴部を回転抑止部材によって閉塞させると、上記の冷媒がクランプ部材やボルト頭部が収容された部分に流れ込むのが抑制され、冷媒が上記の冷媒供給穴を通して切屑ポケット部に適切に供給されるようになり、切屑を適切に飛散させて、切屑が切屑ポケット部等に詰まったり、溶着されたりするのを適切に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る刃先交換式切削工具の概略正面図である。
【図2】同実施形態に係る刃先交換式切削工具の分解斜視図である。
【図3】同実施形態に係る刃先交換式切削工具に用いた取付ボルトの斜視図である。
【図4】同実施形態に係る刃先交換式切削工具において、保持手段であるクランプ部材を工具本体に設けられた案内収容穴部内に収容させ、このクランプ部材を回転させて、案内収容穴部に設けた係止部にクランプ部材を係止させる状態を示した概略説明図である。
【図5】同実施形態に係る刃先交換式切削工具において、案内収容穴部内に回転抑止部材を収容させて、案内収容穴部の係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止する状態を示した一部断面説明図である。
【図6】同実施形態に係る刃先交換式切削工具において、案内収容穴部内に回転抑止部材を収容させて、案内収容穴部の係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止する状態を示した横断面説明図である。
【図7】同実施形態に係る刃先交換式切削工具の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態に係る刃先交換式切削工具を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明における刃先交換式切削工具は、特に下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0027】
この実施形態における刃先交換式切削工具においては、図1及び図2に示すように、工具本体10の軸方向先端側の外周部に、周方向に間隔を介して複数(図に示す例では3つ)の切屑ポケット部11を設け、各切屑ポケット部11におけるチップ取付座11aに、それぞれ切削インサート1を取付ネジ2と押圧部材3とによって着脱自在に取り付けるようにしている。なお、この実施形態においては、上記の切削インサート1として、平面が略七角形状になったものを用いるようにしたが、使用する切削インサート1の形状はどのようなものであってもよく、三角形状や四角形状等の他の多角形状や丸形状のものであってもよい。
【0028】
そして、この刃先交換式切削工具においては、この工具本体10の軸方向後端側を取付ボルト12によってアーバー(図示せず)に取り付けるにあたり、上記の取付ボルト12として、図3に示すように、ネジ切りされたボルト軸12aの頂部におけるボルト頭部12bに六角形状になった締付け穴部12cが設けられたものを用いている。
【0029】
また、この刃先交換式切削工具においては、上記のアーバーの回転が適切に伝達されるようにするため、この工具本体10の軸方向後端面に、上記のアーバーに設けられたキー(図示せず)を嵌め合わせるキー溝13を設けている。
【0030】
さらに、この工具本体10の軸方向後端側の中央部に、上記の取付ボルト12のボルト頭部12bを工具本体10の軸方向後端側から案内して収容させる案内収容穴部14を設け、この案内収容穴部14内に収容された上記の取付ボルト12を、保持手段20により回転可能な状態で案内収容穴部14内に保持させるようにすると共に、上記の取付ボルト12のボルト頭部12bよりも小径で、締付け穴部12cに対応した大きさになった締付け用穴15を、工具本体10の軸方向先端側から上記の案内収容穴部14に貫通するように設けている。
【0031】
ここで、この実施形態における刃先交換式切削工具においては、図2及び図4(A),(B)に示すように、上記の保持手段20として、小径の円弧状になった小径円弧部21aと大径の円弧状になった大径円弧部21bとを有する非円形のクランプ部材20であって、その中央部に取付ボルト12のボルト軸12aを挿通させる挿通穴22が設けられたものを用いている。一方、このクランプ部材20を収容させる上記の案内収容穴部14内に、このクランプ部材20を回転させて係止させる係止部14aを突出するように設け、この係止部14aの内周側が上記のクランプ部材20の小径円弧部21aに沿うように形成している。
【0032】
そして、上記のクランプ部材20の挿通穴22に取付ボルト12のボルト軸12aを挿通させて、このクランプ部材20を案内収容穴部14内に導き、このクランプ部材20の小径円弧部21aを案内収容穴部14内に設けられた係止部14aの内周に沿わせて、クランプ部材20を上記の取付ボルト12のボルト頭部12bの上に導き、その後、このクランプ部材20を回転させて、その大径円弧部21bを上記の係止部14aの下に導いて、このクランプ部材20を上記の係止部14aに係止させるようにしている。
【0033】
また、この刃先交換式切削工具においては、上記のように案内収容穴部14内に設けられた係止部14aに係止されたクランプ部材20の回転を抑止する回転抑止部材30として、図5及び図6に示すように、係止部14aが設けられた部分における案内収容穴部14の形状に対応した平面形状を有する基板部31に取付ボルト12のボルト軸12aを挿通させる挿通穴32が設けられると共に、上記の係止部14aに係止されたクランプ部材20と案内収容穴部14との間の空間部Sに挿入させる脚部33とを有するものを用いている。
【0034】
そして、この回転抑止部材30の挿通穴32に取付ボルト12のボルト軸12aを挿通させて、この回転抑止部材30を案内収容穴部14内に導き、この回転抑止部材30の脚部33を上記のように係止部14aに係止させたクランプ部材20と案内収容穴部14との間の空間部Sに挿入させ、この脚部33により上記のクランプ部材20が案内収容穴部14内において回転するのを抑止すると共に、この回転抑止部材30の基板部31を係止部14aが設けられた部分における案内収容穴部14に嵌め合わせて、係止部14aが設けられた部分における案内収容穴部14をこの回転抑止部材30によって閉塞させるようにしている。
【0035】
また、上記の工具本体10の周壁から回転抑止部材30が収容された案内収容穴部14に至る取付ネジ穴16を設け、この取付ネジ穴16にネジ部材17を挿入し、このネジ部材17によって上記の回転抑止部材30を案内収容穴部14内に固定させるようにしている。
【0036】
また、この刃先交換式切削工具においては、図7に示すように、回転抑止部材30を固定させた位置よりも工具本体10の軸方向後部側における案内収容穴部14から工具本体10の軸方向先端側の外周部に設けられた上記の各切屑ポケット部11に貫通した冷媒供給穴18を設け、案内収容穴部14からこの冷媒供給穴18を通して空気や冷却油等の冷媒を各切屑ポケット部11に導いて、上記の切削インサート1による切削部分を冷却させるようにしている。
【0037】
ここで、このように案内収容穴部14から冷媒供給穴18を通して冷媒を各切屑ポケット部11に導くようにした場合、上記のように係止部14aが設けられた部分における案内収容穴部14が上記の回転抑止部材30によって閉塞された状態になっているため、冷媒がクランプ部材20や取付ボルト12のボルト頭部12bが収容された案内収容穴部14内に流れ込むのが抑制され、冷媒が案内収容穴部14から冷媒供給穴18を通して各切屑ポケット部11に適切に導かれるようになる。この結果、各切削インサート1によって切削された切屑が適切に飛散されて、切屑が切屑ポケット部11等に詰まったり、溶着されたりするのが適切に防止されるようになる。
【0038】
そして、この実施形態の刃先交換式切削工具においては、上記のように工具本体10の軸方向後端側の中央部に設けた案内収容穴部14内に取付ボルト12とクランプ部材20と回転抑止部材30とを収容させて、回転抑止部材30をネジ部材17によって案内収容穴部14内に固定させた状態で、この工具本体10の軸方向後端面に設けたキー溝13にアーバーに設けられたキーを嵌め合わせるようにする。
【0039】
そして、この状態で、工具本体10の軸方向先端側から案内収容穴部14に貫通するように設けた上記の締付け用穴15を通して、六角棒レンチなどの締付け用具(図示せず)を取付ボルト12のボルト頭部12bに設けられた締付け穴部12cに挿入させ、この締付け用具により取付ボルト12を回転させて、この工具本体10の軸方向後端側をアーバーに取り付けるようにする。
【0040】
このようにすると、前記のように工具本体10の軸方向先端側の中央部には、上記の六角棒レンチなどの締付け用具を挿通させる取付ボルト12のボルト頭部12bより小径の締付け用穴15を設けるだけでよく、大きな切削インサート1を取り付けるように切屑ポケット部11を大きくした場合や、径が小さい工具本体10を用いた場合においても、切削インサート1が取り付けられた部分における工具本体10の肉厚を十分に確保することができるようになり、工具本体10の強度が大きく低下するということがなくなる。
【0041】
また、この刃先交換式切削工具を用いて被削材を切削加工するにあたり、上記のように案内収容穴部14から冷媒供給穴18を通して空気や冷却油等の冷媒を各切屑ポケット部11に導くようにすると、冷媒が切削インサート1による切削部分に適切に供給されて、切削部分が十分に冷却されるようになり、切屑が切削インサート1等に溶着されるのが適切に防止されるようになる。
【符号の説明】
【0042】
1 切削インサート
2 取付ネジ
3 押圧部材
10 工具本体
11 切屑ポケット部
11a チップ取付座
12 取付ボルト
12a ボルト軸
12b ボルト頭部
12c 締付け穴部
13 キー溝
14 案内収容穴部
14a 係止部
15 締付け用穴
16 取付ネジ穴
17 ネジ部材
18 冷媒供給穴
20 クランプ部材(保持手段)
21a 小径円弧部
21b 大径円弧部
22 挿通穴
30 回転抑止部材
31 基板部
32 挿通穴
33 脚部
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心線回りに回転される工具本体の軸方向先端側の外周部に設けられた切屑ポケット部に切削インサートが着脱自在に取り付けられると共に、この工具本体の軸方向後端側が取付ボルトによってアーバーに取り付けられる刃先交換式切削工具において、ボルト頭部に締付け穴部が設けられた取付ボルトを用い、工具本体の軸方向後端側の中央部に、上記の取付ボルトのボルト頭部を工具本体の軸方向後端側から案内して収容させる案内収容穴部を設けると共に、この案内収容穴部内に収容された上記の取付ボルトを回転可能な状態で案内収容穴部内に保持させる保持手段を設け、上記の取付ボルトのボルト頭部よりも小径の締付け用穴を、工具本体の軸方向先端側から上記の案内収容穴部に貫通するように設けたことを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の刃先交換式切削工具において、上記の取付ボルトを保持手段によって案内収容穴部内に保持させるにあたり、案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に載置させる平面が非円形のクランプ部材の中央部に挿通穴を設け、この挿通穴に取付ボルトのボルト軸を挿通させて、この非円形のクランプ部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、このクランプ部材を回転させて、案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項3】
請求項2に記載の刃先交換式切削工具において、上記の平面が非円形のクランプ部材に、小径の円弧状になった小径円弧部と大径の円弧状になった大径円弧部とを設けると共に、上記の案内収容穴部内における係止部の内周側を上記の小径円弧部に対応した形状に形成し、このクランプ部材の小径部を、係止部の内周側に沿わせて案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に導き、このクランプ部材を回転させて、上記の大径円弧部を上記の係止部に係止させることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の刃先交換式切削工具において、案内収容穴部内に設けられた係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止する回転抑止部材を上記の案内収容穴部内に収容させると共に、この回転抑止部材をネジ部材により案内収容穴部内に固定させることを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項5】
請求項4に記載の刃先交換式切削工具において、上記の回転抑止部材を係止部が設けられた案内収容穴部に対応した平面形状に形成し、この回転抑止部材に取付ボルトのボルト軸を挿通させる挿通穴を設けると共に、上記の係止部に係止されたクランプ部材と案内収容穴部との間の空間部に挿入させる脚部を設けたことを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の刃先交換式切削工具において、上記案内収容穴部から上記の切屑ポケット部に貫通した冷媒供給穴を設けたことを特徴とする刃先交換式切削工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253656(P2010−253656A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109124(P2009−109124)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(390002521)ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】