説明

分与カートリッジ及びミキサー付き2成分用分与組み立て体

分与カートリッジ又は分与装置及びミキサーを含む2成分分与システムを開示した。前記カートリッジ1又は装置とミキサー5との間に、双方に連結可能な移送部3が間挿されている。一好適実施例では、アダプタ10,20が移送部3の両端に配置されている。移送部3には、円筒状バー38が備えられ、このバーの周面には2つの長手方向溝39,40が設けられている。バー38が管状のジャケット28によって密接に取り囲まれることで、材料が一方の通路から他方の通路へ入ることがない2つの通路17,18が形成されている。この構成により、移送部の簡単な製造が可能になり、信頼のおける作業条件が得られ、このことは、特に腹腔鏡を用いた処置の場合に重要である。分与カートリッジと腹腔内の処置部位との距離は、かなり長いからである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
大部分の分与組み立て体の場合、ミキサーはカートリッジに固定され、組み立て体はそうした形式で使用される。ミキサーには、しばしば付属部品が付加されて、混合された成分の形状に影響が与えられ、特定の状況で意図した箇所を目標にして材料を適用することができる。しかし、多くの用途、特に医学分野の用途では、分与カートリッジ、ミキサー、付属器具のこうした単純な組み立て体では不十分である。
医学分野では、現在、一定の接合部は縫合よりも、むしろ封止により接合され、その目的で2成分シーラントが使用されている。このため、例えば内視鏡の使用を含む手術時に分与組み立て体を適用する場合、特に腹腔鏡による処置の場合には、カートリッジとミキサー間に長い移送部が必要である。腹腔鏡処置の場合、比較的長い管が腹腔内へ挿入されるので、カートリッジと分与先端間にかなり長い距離がある。
【0002】
WO−A2−03/039375には、請求項1の前文に記載の腹腔鏡処置用スプレー器具が開示されているが、このスプレー器具は、入口側に分与器具を、出口側にスプレー器具を、それぞれ連結するようにされた管状移送部を含み、該スプレー器具は、可撓性の混合部材を備えた混合チャンバを含んでいる。管状の移送部は、2つの長手方向孔を含んでいる。細い長手方向孔を有する管の製造は、長い管が必要な場合には問題になる。
WO−A1−99/32173には、生物学的液体を分与にするスプレー用アプリケータが開示されているが、このアプリケータは、入口側に分与器具を、出口側にスプレーヘッドを、それぞれ連結するようにされた細長の胴部を含んでいる。このアプリケータは、腹腔鏡処置用でもなければ、腹腔鏡処置に適してもいない。
WO−A−01/74253に開示された分与器具は、可撓性部分によって互に結合された2つの剛性部分を有する分与先端部を含んでいる。この器具は、腹腔鏡処置用ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の先行技術を背景として、本発明が目的とすることは、移送部を介して比較的離れた位置に配置されたミキサー又はその他の付属部品、例えばスプレーヘッドに接続できる分与カートリッジ又は分与器具を有し、かつ安価に製造できる分与組み立て体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、特許請求の範囲第1項に記載された分与組み立て体によって達成された。
【実施例1】
【0005】
以下で、図面につき本発明の一好適実施例を詳説する。
図1は、移送部3を取り付けるための連結リング2と、移送部にはめ込まれた補償器具4とを付加された複式カートリッジ1を示している。連結リングとカートリッジとは、自体公知のバヨネット(差し込み継ぎ手)式固定手段を含んでいる。他の固定手段、例えばスナップリングを用いてもよい。補償器具は、分与作業又は混合作業の始めから複数成分の精確な混合比が保証されるように成分レベルを相互調整するのに役立ち、かつまた複式カートリッジから空気を完全に排除し、空気の内包を防止するのに役立っている。精確な成分混合比と空気の不含有という2条件は、医療技術の分野では特に重要である。
【0006】
内視鏡や腹腔鏡を使用する処置の場合、移送部とミキサーは、一定の小直径を超えないのがよく、また段状部があってはならない。しかし、経済上の理由から、市販のカートリッジは他の用途にも使用されるため、カートリッジの隣接する2つの出口又は同心的な出口は、移送部の許容直径より事実上大きい全直径となり、このため、カートリッジ出口と移送部通路との間を材料が通過し得るには、カートリッジ/移送部間にはアダプタが必要となる。更に、移送部とミキサー又は補償器具との間にもアダプタを設けることも勧められる。
複式カートリッジの各貯蔵シリンダ11,12は、入口アダプタ10内の各通路15,16へ通じる出口13,14を含んでいる。この好適実施例では、双方の貯蔵シリンダの容積又は横断面積と出口とが互に異なっており、その比は、用途や配合に応じて1:1から1:10まで変更される。
【0007】
製造技術に関連する理由から、入口アダプタ10は、2部分から作られ、通路15,16を有するアダプタ体35と、出口側のフランジ部分36とから構成され、フランジ部分36の管状部37の外側に移送部3のジャケット28がはめ込まれている。
移送部は、ジャケット28で取り囲まれた円筒形のバー38から成っている。図3に見られるように、バー38は直径方向両側に2つの溝を備え、これらの溝がジャケットと共に2つの通路17,18を形成している。ここで注意せねばならないのは、材料が一方の通路から他方の通路へ入り込まないように、2つの溝又は通路は密封分離されている点である。この密封は、例えばバー上へジャケットをプレスばめすることで達せられるが、他の密封方法、例えば漏れ止めビード又はセメント接着も可能である。
【0008】
この実施例では、通路17,18は、カートリッジの2つの出口13,14より相互間隔が小さく、入口アダプタの通路15,16は、その出口19,20が移送部の通路17,18と合致するように形成されている。図1又は図4に見られるように、ジャケット28の端部は、カートリッジ側にフランジ29を有し、このフランジが連結リングの肩によって支えられている。
移送部の他端には、通路22を有する出口アダプタ21が設けられ、これらの通路22が中心通路23と同心的に設けられ、これらの通路22の出口が、補償器具の入口24,25又はミキサーの入口26,27と連通している。ジャケット28は、出口アダプタより先へ延びており、これにより、補償器具の相応に付形された入口又はミキサー入口がこの管内へ挿入される一方、付加的にミキサーの安定化が得られる。
【0009】
図6から分かるように、外側通路18は、ほぼ中心に設けられた通路23と、横通路41を介して接続されている。図の左方に位置する通路17は、出口アダプタの周方向の肩42のところまで延びている長方形の通路43で終わっており、肩42はジャケットより小さい直径を有していることで、材料が肩の周囲を流れることができる。周方向肩42の上には通路22が通路23の周囲を同心的に延びている。更に、肩42は、ミキサーの支持部として役立っている。
補償器具4は、囲い30と2つのチャンバ31,32を含み、多孔フィルタ33で終わっており、多孔フィルタは、実質的に空気のみを通し、材料は通過させない。また、多孔フィルタの代わりに、単一又は複数の毛細開口を有するキャップを使用することもできる。補償器具の囲いは、好ましくは透明の材料で作られることで、2つの貯蔵シリンダのレベルが整合しているかどうか、移送部に成分が完全に充填されているかどうかを、眼で確認することができる。この場合重要なことは、複数成分がミキサーに同時に到着することでシーラント混合物が腹腔内での分与作業の開始時から使用可能になることである。
【0010】
図1及び図2では、補償器具が移送部に取り付けられており、出口アダプタの通路22,23が補償器具の入口24,25と接続していることが分かる。補償器具を取り外した後、2成分の充填レベルは異なる高さになるため、この場合には反応が生じないことが保証される。
図4及び図5には、同じカートリッジ、同じ連結リング、出口アダプタ21を有する同じ移送部が示されているが、移送部にはミキサー5が取り付けられている。ミキサーの入口は連結部6を有し、連結部6は肩8を有する弾性的な舌状部7を有し、肩8は、出口アダプタの対応段状部9の後背部に係合し、ミキサーが、移送部の管内へ挿入された後に、外れることが防止される。ミキサーは公知のミキサー部材34を含んでいる。
図4及び図5に見られるように、中心に設けられた出口アダプタ通路23は、他の通路22又はミキサー入口の舌状部によって、同心的に取り囲まれており、該通路は、ミキサー入口26,27と連通している。
【0011】
一連の作業は、次のように説明できよう。充填したカートリッジから閉鎖キャップを除去した後、前組み立て済みの入口及び出口アダプタ付き移送部を、連結リングによってカートリッジに固定する。次いで、補償器具を可能なかぎり移送部内へ挿入し、補償器具と共に組み立て体全体を垂直に上へ向けて頂部から空気が抜けるようにする。
引き続いて、両成分が補償器具内に見えるようになるまで、材料を分与にする。これによって、両成分は分与作業の最初から確実にミキサーに到達していることが保証され、その結果最初からシーラント混合物が得ることができる。更に、これらの措置により、カートリッジと移送部との2つの貯蔵シリンダからも空気を排除することができる。
次いで、補償器具を除去して、処分し、ミキサーの接続部を移送部の管内へ挿入し、スナップばめされるまで押し込む。これでミキサーは作業可能となる。
【0012】
補償器具又は取り付けられたミキサーの出口部分及び入口部分の通路の設計が各々異なるため、2成分が互に接触することが防止される。
以上の好適実施例で説明したカートリッジの場合は、その入口アダプタが並置出口と並置入口を有し、同じく移送部も並置通路を有しているが、出口アダプタは同心的な通路で終わり、ミキサーと補償器具との入口は同心的に終わっている。しかし、カートリッジ、移送部、補償器具又はミキサーのこのシステムは、2成分が全体的に又は部分的に同心的に配置される一方、アダプタも相応に設計されている構成に適用することもできる。
【0013】
更に、分与組み立て体を3成分の使用の場合にも拡大することができる。
内視鏡処置に本発明の組み立て体を適用する場合には、移送部及びミキサーの寸法及び構成を内視鏡の管の内径に適合させる一方、ミキサーのどの部分の外径も移送部の管の外径より大きくせず、出口へ向かって円錐形にできるものと理解される。その他の用途の場合には、もちろん別の寸法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の組み立て体に補償器具を付加した場合の縦断面図。(実施例1)
【図2】図1の円内部分の拡大詳細図。
【図3】図2のIII−III線に沿って截断した断面図。
【図4】本発明の分与組み立て体にミキサーを付加した場合の縦断面図。
【図5】図3の円内部分の拡大詳細図。
【図6】図5のVI−VI線に沿って截断した断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 複式カートリッジ
2 連結リング
3 移送部
4 補償器具
6 連結部
8 肩
9 段状部
10 入口アダプタ
11,12 貯蔵シリンダ
13,14 カートリッジ出口
15,16 通路
17,18 移送部通路
19,20 入口アダプタの出口
21 出口アダプタ
22 周囲通路
23 中心通路
24,25 補償器具入口
26,27 ミキサー入口
28 ジャケット
29 フランジ
30 囲い
31,32 チャンバ
33 多孔フィルタ
34 混合部材
38 円筒形バー
39,40 溝
41 横通路
42 肩
43 長方形通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分用の分与組み立て体であって、分与カートリッジ又は分与器具とミキサーとを含み、分与カートリッジ(1)又は分与器具とミキサー(5)との間に移送部(3)が間挿され、該移送部が分与カートリッジ又は分与器具とミキサーとの双方に接続可能であり、かつ少なくとも2通路を含む形式のものにおいて、
前記移送部(3)が円筒形のバー(38)を含み、該バーの周面に2つの長手方向溝(39,40)が設けられており、かつまた該バーがジャケット(28)で取り囲まれることにより2通路(17,18)が形成され、これらの通路が、一方の通路から他方の通路へ材料が入らないように密封されていることを特徴とする、2成分用の分与組み立て体。
【請求項2】
各アダプタ(10,21)が移送部の各端部に備えられていることを特徴とする、請求項1に記載された分与組み立て体。
【請求項3】
前記アダプタ(10;21)が、一端に入口(15,16)を、他端に出口(19,20)を含み、これらの出入口が、一方では、カートリッジの出口(13,14)と補償器具の入口(24,25)又はミキサーの入口(26,27)とそれぞれ接続され、他方では、移送部の通路(17,18)と接続されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された分与組み立て体。
【請求項4】
前記ミキサーの入口がミキサー連結部(6)を備え、該連結部が、移送部のジャケット(28)内へ挿入可能、かつ移送部(3)の出口アダプタ(21)と連結可能であり、更に可とう性の舌状部(7)を含み、該舌状部が、出口アダプタ(21)の対応肩と協働する各肩(8)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。
【請求項5】
前記出口アダプタ(21)が同心配置された2つの出口(22,23)を含み、前記ミキサー入口が同心配置された2つの入口(24,25)を含むことを特徴とする、請求項4に記載された分与組み立て体。
【請求項6】
分与組み立て体が補償器具(4)を含み、この補償器具が、移送部(3)に備えられた出口アダプタ(21)に連結可能であることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。
【請求項7】
前記補償器具が、透明材料製の2つの別個のチャンバ(31,32)を有する囲い(30)を含み、該囲いが、多孔フィルタ(33)又は単一又は複数の毛管開口で終わることを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。
【請求項8】
前記カートリッジの出口、移送部の入口/通路/出口のいずれか又はすべてが、並置されるか又は同心配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。
【請求項9】
ミキサー及び/又は補償器具の入口が並置されていることを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。
【請求項10】
前記移送部の直径及び前記ミキサーの直径が、内視鏡器具の内径に適合するようにされ、かつまたミキサーの外径が移送部の管の外径より大きくされないことを特徴とする、内視鏡器具に関連する請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された分与組み立て体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−503272(P2007−503272A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529532(P2006−529532)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000295
【国際公開番号】WO2004/100798
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504254390)ミックスパック システムズ アーゲー (8)
【Fターム(参考)】