説明

分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料

【課題】 シート材料全体として必要とされる吸水性(吸湿性)を備えながら、同時に実用的な伸縮自在性をも備えた新しい伸縮性シートを提供すること。
【解決手段】 それ自体に所定の伸縮性と通気性を持ったシート材料の一面側に所定サイズ及び形状に分割した吸水性ポリマーなどによるシート状の非伸縮性且つ吸水性部材を相互に重なり合わないように並べて固定し、隣接する非伸縮性且つ吸水性部材同士の切断隙間部を占める伸縮性シート材料の伸縮性によってシート材料全体として必要とする伸縮性を維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材料全体として必要とされる吸水性(吸湿性)を備えながら、同時に実用的な伸縮自在性をも備えた新しい伸縮性シートを提供しようとするものである。
【0002】
伸縮性のシート材料は多様な目的に使用できるものとして広く普及している。さらに別な機能をも付加する工夫も色々と提案されるようになっている。
【0003】
例えば、肌着などに用いる素材としても伸縮性シートは便利なものであり、通気性と共に汗などの身体からの水分を適切に吸収する機能が求められている。
また、使い捨ての紙おむつや失禁パッド、生理用品などでも十分な吸水性が要求されることは当然である。
【0004】
例えば、吸水機能を重視する生理用品として現在実際に市販されている、紙おむつや失禁パッド、生理用品などに使用されている吸水性部材は、その殆どがパルプや化学繊維などからなる綿状の吸収帯であったり、吸収性ティッシュなどと吸収性ポリを混合し、耐水性の部材でその表面と裏面を固定・安定化したものである。これら既存の吸水性部材ではその伸縮性はまったく考慮されておらず、その安定性のみを重視してきたので、使用者が激しい動きをしたような場合にはベースである伸縮性素材の伸縮に吸水性部材が追随することができず、剥がれなどの原因となりそれが洩れにつながってしまっていた。
【0005】
伸縮性のシートが織物である場合には適宜な通気性が確保しやすいことは明らかであるが、汗などの水分を適切に吸収して保持させるためには吸水性ポリマー材料などを用いて織物シートなどと積層化するしかないのが現状である。
【0006】
このように伸縮性シート材と吸水性素材とを積層一体化した素材としては以下のようなものが既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−284373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シート材料としての用途に相応しい伸縮性を既存の吸水性材料シートそのものに持たせることは相当な困難がある。つまり、実用的な吸水性を維持させながら衣料などに用いるシート素材と同等の伸縮性を確保することはできていないのである。
上記した特許文献1のものは、不織布の一面にゼラチンとグリセリンの複合物を皮膜化させるもので、伸縮性と吸水性を兼備えたものとなっている。しかし、既存の吸水性ポリマーを利用したもののような肌触りの良さを実現することは困難で、繰り返し伸縮動作への追随性能も十分でなく、製造工程も煩雑でコスト的に高いものとなってしまうのが現状である。
【0009】
したがって、両者を兼ね備えたシート材料を十分な使用性能を確保しながら簡単且つ安価に実現することが本発明の解決しようとする課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解消すべく研究を重ねて実現されたものであって、伸縮シートの持った伸縮性を十分に維持しながら吸水性機能をも発揮させるために、吸水性ポリマーなどによるシート状の非伸縮性且つ吸収性部材を複数分割して適切な配置を伸縮シート面上で行う事を提案するものであって、より具体的には以下のとおりである。
【0011】
(1) それ自体に所定の伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の一面側に所定サイズ及び形状に分割した吸水性ポリマーなどによるシート状の非伸縮性且つ吸水性部材を相互に重なり合わないように並べて固定し、隣接する非伸縮性且つ吸水性部材同士の切断隙間部を占める伸縮性シート材料の伸縮性によってシート材料全体として必要とする伸縮性を維持していることを特徴とする分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【0012】
(2) 分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料全体の伸縮性が伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の有効伸縮性の10%以上75%以下であることを特徴とする前記(1)項に記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【0013】
(3) 必要とする伸縮性を確保するために非伸縮性かつ吸水性の分割シート材料の個数および並べ方を規制していることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【0014】
(4) 紙おむつや失禁用パッド、女性の生理用品、汗取りパッド、傷保護用シートの何れかに使用することを特徴とする前記(1)項〜(3)項の何れか1つに記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【発明の効果】
【0015】
(a)それ自体に所定の伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の一面側に所定サイズ及び形状に分割した吸水性ポリマーなどによるシート状の非伸縮性且つ吸水性部材を相互に重なり合わないように並べて固定し、隣接する非伸縮性且つ吸水性部材同士の切断隙間部を占める伸縮性シート材料の伸縮性によってシート材料全体として必要とする伸縮性を維持していることにより、吸水性部材自体には伸縮性がないにも関わらず、それを固定したシート材料の伸縮性は損なわれないことになるので、元から有する伸縮性と通気性に加えて吸水性をも備えたシート状素材が実現されることになる。
つまり、相互に適当な隙間を持つように配置して吸水性部材を伸縮性シートの少なくとも一面上に固着させるので、吸水性部材をくっつけた部分の伸縮性は失われるが、吸水性部材相互間の切断隙間部分を占める伸縮性シート材料の伸縮性は残されているので、これを利用して本発明のシート状材料全体としては必要とする伸縮性を持ったものとなし得るのである。
通気性に関しては、本発明を応用した製品を利用者の身体に直接ふれるような状態で使用する場合にはこれを備えていることが望ましいが、通気性そのものは本発明において必須のものではない。
吸水性部材のサイズ及び形状としては一辺の長さが3〜50mm程度で厚さ2〜5mm程度の方形シートが標準的であるが、用途やデザイン上の要求にしたがって他のサイズや形状(円形など)を採用しても構わない。さらに吸水性材料を複数個配置する際の相互の隙間についても1〜5mmくらいが普通であるが、これも各種要求にしたがって適宜な変更を加えて構わない。
【0016】
(b)分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料全体の伸縮性が伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の有効伸縮性の10%以上75%以下であることにより、本来伸縮性を持たない吸水性部材を固着したにも関わらず、本発明のシート状材料は用途に応じた必要な伸縮性を持ったものとして実現可能なものとなる。
つまり、上記したような吸水性部材相互の隙間や接着部分面積の採り方により、伸縮性シート材料の用途に応じた有効伸縮性能を多大に損なうことなく本発明のシート状材料とすることができることを確認しており、さまざまな用途に応じた吸水性且つ伸縮性のシート状材料が実現されているのである。
【0017】
(c)必要とする伸縮性を確保するために非伸縮性かつ吸水性の分割シート材料の個数および並べ方を規制していることにより、本発明のシート材料の伸縮性能に関してその程度や方向性を任意にコントロールすることができるようになる。
つまり、本発明のシート材料が有する伸縮性能を規制する要因として、吸水性部材相互の隙間部分の存在があるが、本発明での伸縮性はこの切断隙間部分の間隔の大きさによって、すなわち、切断隙間部分同士の間隔が大きければその間の伸縮性シート材料の伸縮性能が活かされてより大きな伸縮性が実現される。一方、隙間部分同士の間隔が小さければ本発明シート材料の伸縮性も小さいものになるのである。
また、この切断隙間部分の数が多くなれば当然に全体として大きな伸縮性能が達成できることも理解でき、したがって、伸縮性シート材料上への吸水性シート部材の配列個数を工夫することでも所望方向への伸縮性がコントロールできると理解されるのである。
【0018】
(d) 紙おむつや失禁用パッド、女性の生理用品、汗取りパッド、傷保護用シートの何れかに使用することで、本発明は多様な製品に応用可能であることがわかる。本発明はこれを応用する対象に合わせて、消臭性や抗菌性などを自由に加味することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料の構造を平面図的および断面図的に示した説明図である。
【図2】図2は、本発明の伸縮性シート材料が実際に伸縮する様子を示した説明図である。
【図3】図3は、本発明の伸縮性シート材料の伸縮性能を吸水性部材の配列方法によってコントロールする様子を示した説明図である。
【図4】図4は、本発明を女性の生理用品に応用する場合の1例に関しての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のより具体的な実施形態の若干例を添付図面に従って以下説明する。
図1に示される本発明の伸縮性シート材料1は、伸縮性且つ通気性を持ったシート材料2の少なくとも一面側に一辺が15mmの正方形で厚さ1mmとされた吸水(湿)性シート部材3を複数個規則正しく配列することで構成されている。
さらに、実際の製品化に際しては、同じく伸縮性と通気性を持ったカバーシート材料4で吸水性シート部材3を覆うようにすることが好ましい。
【0021】
伸縮・通気性シート材料2の素材としてはこのような性能を有する既存のものを広く採用することが可能であり、吸水性シート部材3としても既知のポリマー材料を採用すればよい。どの程度の性能のものを選択するかは用途やコストとの関係から適宜に選択して組み合わせればよい。
【0022】
また、吸水性シート部材3、3相互の間の切れ目である切断隙間部5は本発明においてシート材料1に伸縮性と吸水性の両者を兼ね備えさせるために必須のもので、この部分が存在することによって本来伸縮性を持たない吸水性シート部材3を固着させてもシート材料1全体としては必要とされる伸縮性能を維持できるのである。図1ではこの切断隙間部5を、吸水性シート部材3、3相互の間を切り離しているものである。
【0023】
図2は、本発明のシート材料1がいかにして伸縮性と吸水性とを両立させているかを説明して示している。すなわち、図示のように本発明のシート材料1を左右に引っ張ると、伸縮・通気性シート材料2の伸縮性能によって左右方向に延びるが、このとき吸水性シート部材3、3の間の切断隙間部5も延ばされることになるので、結果として吸水性シート部材3も左右に広がったのと同じことになるのである。仮にこのような隙間部5がないとすると、吸水性シート材料3は伸縮・通気性シート材料2に留まることになり、せっかく伸縮・通気性シート材料2が左右に延びても吸水性能はそこまで及ばないことになるのである。
【0024】
このように吸水性シート部材3を複数個に分割して切断隙間部5を持たせながら配列することで伸縮・通気性シート材料2の伸縮性能を維持しながらも吸水性シート部材3による吸水・吸湿性能をも伸縮するシート状材料1の全面において平均して実現することができるようになるのである。
結局、本発明のシート状材料1の伸縮性能は吸水性シート部材3、3間の切断隙間部5をどの程度のものにするかによって変更可能なものであるが、あまり切断隙間部5を大きく取り過ぎると延ばされた際に吸水性能が十分でない部分が生じることになるので、用途や目的に応じて適宜な切断隙間部5の間隔を設定することになる。
【0025】
本発明では、本質的に非伸縮性である吸水性シート部材3に切れ目を入れて切断隙間部5として、縦横に複数個分割配置したものであるが、吸水性シート部材3はこのことによって伸縮性シート材料2の伸縮動作に追随した動きが可能となるものである。ここで、本発明のシート材料1の伸縮率は、分割された吸水性シート3の個々の大きさ(単位面積当たりの個数)によって変化することが理解できる。つまり、非伸縮性の吸水性シート3をより細かく分割して単位面積当たりの個数を多くすることで本発明のシート材料1の伸縮率は高くなり、逆に大きく分割して単位面積当たりの個数を少なくすると本発明シート材料1の伸縮率は低くなるのである。
【0026】
図3は、吸水性シート部材3の配列の仕方を工夫することで、本発明シート状材料1の伸縮性能を方向毎に変化させることが可能であることを簡単に示している。
すなわち、図3では吸水性シート部材3を縦3列、横2列として配列した例を示しているが、シート状材料1を左右に引き延ばした場合には2本の切断隙間部5がそれぞれに延ばされることになり、上下に引き延ばした場合には1本のみの切断隙間部5が延ばされることになるとわかる。つまり、この場合には上下方向よりも左右方向への伸縮性の方が大きなものとなるのである。
このようにして、吸水性シート材料3の配列を適宜に変更することで所望の方向に大きな伸縮性を持たせたり、別の方向への伸縮性を相対的に小さなものとするなどといったことが可能となるのである。
【実施例1】
【0027】
本発明の伸縮性シート1を部分的に用いた肌着を作成した。すなわち、汗をかきやすく曲げ伸ばしの頻度も高いわきの下部分に本発明の通気性且つ伸縮性を備えた吸水性シート1を貼り付けた肌着のシャツを着用して実際に発汗する程度のジョギング運動を30分間行った。
【0028】
その結果、わきの下からの発汗による水分は有効に吸水性シート1に取り込まれながら、通気性も確保していることから蒸れなどによる殊更な不快感も生じなかった。
また、本発明シート1の伸縮性によって運動による身体の伸縮にも適切に追随することができたので発汗部分を十分にカバーすることができることも確認された。
【実施例2】
【0029】
図4に示すように、本発明の吸水性シート1を女性の生理用品に採用して、吸水性部材3部分も十分にベース素材の伸縮動作に追随できるものとして試作品を作成した。
実際に5人の女性に使用してみてもらったところ、既存のものと比較して着用感が劣るといったことはなく、逆に吸水部分の伸縮性が向上していることから使い心地が良いものとなっているという感想を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記したような本発明によれば、通気性や伸縮性と共に吸水・吸湿性をも十分に備えた新規なシート状材料を提供することができるようになり、さまざまな用途への応用が考えられるものである。また、芳香材料や消臭剤、抗菌・殺菌素材などとの適切な組み合わせを行うことで、生理用品や医療用品その他の更なる応用範囲を広げることも可能である。
したがって、このような可能性を持った本発明は十分な産業上の利用可能性を有するものであると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明のシート状材料
2 伸縮・通気性シート材料
3 吸水・吸湿性シート部材
4 カバーシート材料
5 切断隙間部(切れ目)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それ自体に所定の伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の一面側に所定サイズ及び形状に分割した吸水性ポリマーなどによるシート状の非伸縮性且つ吸水性部材を相互に重なり合わないように並べて固定し、隣接する非伸縮性且つ吸水性部材同士の切断隙間部を占める伸縮性シート材料の伸縮性によってシート材料全体として必要とする伸縮性を維持していることを特徴とする分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【請求項2】
分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料全体の伸縮性が伸縮性と望ましくは通気性を持ったシート材料の有効伸縮性の10%以上75%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【請求項3】
必要とする伸縮性を確保するために非伸縮性かつ吸水性の分割シート材料の個数および並べ方を規制していることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。
【請求項4】
紙おむつや失禁用パッド、女性の生理用品、汗取りパッド、傷保護用シートの何れかに使用することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の分割吸水性部材を備えた伸縮性シート材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6002(P2013−6002A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152286(P2011−152286)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500099858)クリエーティブカミヤ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】