分割壁カラムを使用するニトロアルカンの下流回収法
炭化水素原料と含水硝酸との反応によりニトロアルカン類を合成するための方法と装置が開示される。分割壁カラムを使用することにより、エネルギーと資本コストを下げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロアルカン類を合成するための方法に関する。さらに詳しくは本発明は、分割壁カラム(dividing wall column)を使用するニトロアルカン強化回収法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素のニトロ化では、反応条件と原料組成物に依存して様々な生成物が製造される。例えばプロパンの蒸気相ニトロ化は典型的には、基本的に固定された相対濃度の4つのニトロ−パラフィン生成物(ニトロメタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン、及びニトロエタン)の混合物を与える。プロパンの高圧ニトロ化は、例えば1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタンのような他の低分子量ニトロアルカン類よりも2-ニトロプロパンを選択的に生成することができる。シクロヘキサンの高圧ニトロ化は典型的には、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ニトロシクロヘキサン、及び酸化生成物を生成させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロパンの典型的な蒸気相及び高圧ニトロ化の副産物は、特に、低分子量ニトロアルカン類(2-ニトロプロパン、1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタン)間でよく似た沸点を有するため、分離を困難にしている。従来の反応後に蒸留という順序は背の高いカラムと高い還流比を使用し、これは高価であり多量のエネルギーを消費する。他の従来の分離法は、所望のニトロパラフィンを回収するために追加の多量分離剤を使用する。従って所望のニトロアルカン生成物を回収するためのより経済的でエネルギー効率の良い方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡単な要約
ある態様において、少なくとも1つのニトロアルカンの合成法が提供される。この方法は、反応器中で炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、生成物流を生成させ、生成物流を少なくとも油相と水相とに分離し、油相から実質的にすべての有機酸を分離し、その後、分割壁カラム中で油相を蒸留して、少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、そして、中間部生成物から少なくとも1つのニトロアルカンを回収することを含んでなる。
【0005】
別の態様において、ニトロアルカン回収法が提供される。この方法は、ニトロパラフィンニトロ化法からの生成物流を少なくとも1つの油相と水相とに分離し、分割壁カラム中で油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、中間生成物から少なくとも第1のニトロアルカンを回収し、下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収することを含んでなる。
【0006】
さらに別の態様において、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置が提供される。この装置は、炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、反応生成物流を生成させるための反応器と、反応生成物流を少なくとも油相と水相とに分離するための相分離装置と、油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物にするための分割壁カラムとを含んでなり、ここで、中間部生成物は少なくとも1つのニトロアルカンの少なくとも一部を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例に従う、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置の模式図である。
【図2】実施例に従う、少なくとも第1のニトロアルカンと第2のニトロアルカンとを合成するための装置の模式図である。
【図3】実施例に従う、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置の模式図である。
【図4】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図5】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図6】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図7】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図8】高圧ニトロ化の881 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【図9】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図10】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図11】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図12】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図13】高圧ニトロ化の1855 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【図14】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図15】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図16】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図17】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図18】改変高圧ニトロ化の923 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ある態様において、少なくとも1つのニトロアルカンの合成法が提供される。この方法は、2つの蒸留カラムの代わりに分割壁カラムを有効に使用して少なくとも1つのニトロアルカンを回収し、従ってニトロアルカン類の合成に伴う資本とエネルギーコストを低下させる。
【0009】
図1は、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置100を例示する。炭化水素原料101と含水硝酸102は反応器103に導入される。炭化水素原料101と含水硝酸102は反応器の圧力と反応温度で反応し、その結果ニトロ化化合物を副産物とを含む生成物流104が生成される。
【0010】
炭化水素原料101と含水硝酸102は混合されるか又は部分的に混合されて、次に反応器103に入るか、あるいはこれらは個々に添加されて反応器103内で混合が起きる。さらに炭化水素原料101と含水硝酸102は、一緒にもしくは別々に添加されて、あらかじめ加熱された後、反応器103に入れられる。
【0011】
ある例では炭化水素原料101は、基本的にプロパンと酢酸とからなる。他の例では炭化水素原料101は、特に限定されないが、以下の1つ以上を含んでよい:アルカン類とシクロアルカン類(アルキル置換シクロアルカン類を含む)、例えばプロパン、イソブタン、n-ブタン、イソペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、及びメチルシクロヘキサン;アリールアルカン類、例えばエチルベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン;1-メチルナフタレンと2-メチルナフタレンと4-メチルビフェニル;縮合シクロアルカン類;アルキル置換縮合アリール化合物;縮合シクロアルカン−アリール化合物(アルキル置換誘導体を含む)、例えばテトラリン、デカリン、及びメチルナフタレン;及びカルボン酸類、例えば酢酸、プロパン酸、ブタン酸、及びヘキサン酸。反応物がまだ利用可能な水素を有する場合は、すでに1つ以上のニトロ置換基を有する反応物のニトロ化も企図される。
【0012】
含水硝酸は、少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約15重量%、さらに好ましくは少なくとも約20重量%の酸を含有する水溶液の形で、反応器103に供給される。さらにこの溶液は、約50重量%未満の、好ましくは約40重量%未満の、さらに好ましくは約35重量%未満の酸を含有する。さらなる実施態様において硝酸溶液は、約15〜約40重量%の酸を含有する。別の実施態様において硝酸溶液は、約18〜約35重量%の酸を含有する。
【0013】
炭化水素原料101と含水硝酸102のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。
【0014】
反応圧は少なくとも約500psi(34atm)、好ましくは少なくとも約1000psi(68atm)、さらに好ましくは少なくとも約1200psi(82atm)である。さらに圧力は、約1600psi(109atm)未満、好ましくは約1500psi(102atm)未満、さらに好ましくは約1400psi(95atm)未満である。別の実施態様において、圧力は約1000psi(68atm)〜1400psi(95atm)である。例えば背圧調整器の使用により、圧力を所望の範囲に維持するために、当該分野で公知の種々の方法が使用される。
【0015】
反応器内の反応温度は、約140℃より高く約325℃未満になるように制御される(例えば、熱交換液を用いて、又は反応から発生する熱を使用して)。他の実施態様において温度は、約215℃より高く約325℃未満である。ある実施態様において温度は約180℃より高く、約200℃より高く、約230℃より高く、又は約240℃より高い。さらなる実施態様において温度は、約290℃未満、約280℃未満、約270℃未満、又は約250℃未満である。他の実施態様において温度は、約200〜250℃である。さらに別の実施態様において温度は、約215〜280℃、又は約220〜約270℃である。
【0016】
反応器103中の反応物の滞留時間は、好ましくは少なくとも約30秒、さらに好ましくは少なくとも約90秒である。滞留時間は、例えば反応器の長さ及び/もしくは幅、又は充填材料の使用を含む種々の方法により制御される。滞留時間は、反応器の容積を入り口流速で割ることにより決定される。
【0017】
反応器103は、下向構成の反応器でもよい。すなわち、長円形で細長い(例えばチューブ型)反応器が、入り口を通って又は反応器の上部の近くで反応物が添加され、次に反応が起き所望の生成物が生成するのに充分な滞留時間の間、反応器を流れるように配置される。生成物混合物は、出口を通って又は反応器の底の近くで採取される。
【0018】
下向構成の反応器の操作は、一般に水平の、上向の、コイル状の、又はバッチ型のオートクレーブ型の装置を利用する先行技術のシステムに対していくつかの利点を提供する。特に本発明の下向構成は、そのような先行技術のシステムと比較して、比較的低レベルの酸化副産物を含有するニトロ化化合物を提供する。
【0019】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、下向反応器の利点は、反応器内の液相の量と滞留時間を最小にする能力により得られると考えられる。一般に液相は、低モル比の炭化水素対硝酸を含む。この低モル比は、ニトロ化を犠牲にして酸化作用を促進し、従って酸化は主に液相で起きる。下向反応器(細流床反応器とも呼ばれる)では、気体は連続相であり、液体は反応器の壁又は充填物に沿ってしたたる。従って下向構成反応器中の液相の量は低レベルで維持され、従って酸化作用は最小となる。
【0020】
これに対して上向反応器(気泡カラムとも呼ばれる)では、液体は連続相である(及び気泡は連続液相に沿って急速に上昇する)。すなわち上向反応器は、液体の滞留を最大にする。上記したように酸化は主に液相で起きるため、上向反応器は酸化副産物の生成を最大にする。同様に、コイル型及び水平型反応器構成はまた、液体の滞留時間を上昇させ、従って下向反応器と比較して酸化作用を上昇させる。コイル型反応器のさらなる欠点は、この形での大規模反応器の作成が困難なため、工業的規模の製造にあまり適していないことである。
【0021】
反応物の混合と熱伝達を改良するために、及び/又は反応器の容積を変化させるために、反応器103はまた充填材料を充填される。反応器の充填は、例えば、プロパンニトロ化系が好ましく、ここで生成物流中の2,2-ジニトロプロパンの濃度を上げることが好ましい。適切な充填材料には、例えば、ガラスビーズ、ランダム充填物、又は組織化充填物(例えば、蒸留装置中で一般的に使用されるような充填物)がある。他の充填材料は当該分野で公知であり、使用される。
【0022】
次に、生成物流104は、生成物流104から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器105に入り、炭化水素気体流106と気体回収混合物107を生成する。炭化水素気体流106は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流106中の未反応の炭化水素は、反応器103に再循環される。炭化水素気体流106中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流106中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物107はストリッパー108に入り、ここで水相109が気体回収混合物107から除去されて、第2の気体回収混合物110が生成される。次に第2の気体回収混合物110は分離器111に入り、ここで第2の気体回収混合物110は、油相112と第2の水相113に分離される。第2の水相113は再循環されて相分離装置108に戻される。相分離装置108からの水相109は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器103に戻される。次に油相112は中和/水洗装置114に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相112から除去され、少なくとも中和された油相115と廃棄物流116が得られる。次に中和された油相115は分割壁カラム117に入り、これは中和された油相115を蒸留する。
【0023】
分割壁カラム117は、蒸気分割比が約0.3:0.7〜0.7:0.3、好ましくは約0.4:0.6〜0.6:0.4、さらに好ましくは0.5:0.5で操作される。分割壁カラム117は、液体分割比が約0.2:0.8〜0.8:0.2、好ましくは約0.3:0.7〜0.7:0.3、さらに好ましくは0.3:0.7〜0.5:0.5で操作される。別の実施態様において液体分割比が約0.35:0.65〜0.4:0.6、好ましくは約0.37:0.63でもよい。さらに別の実施態様において液体分割比が約0.35:0.65でもよい。さらなる実施態様において液体分割比が約0.45:0.65〜0.5:0.5、好ましくは約0.46:0.54でもよい。
【0024】
分割壁カラム117は、冷却器118とリボイラー119とを含んでよい。冷却器118は20〜80℃の温度で操作される。リボイラー119は、75〜85℃の温度で操作される。
【0025】
分割壁カラム117は、少なくとも上部生成物120、中間部生成物121、及び下部生成物122を回収する。中間部生成物121から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に2-ニトロプロパンとニトロシクロヘキサンがある。
【0026】
図2は、1つ以上のニトロアルカン類を合成するための装置200を例示する。炭化水素原料201と含水硝酸202が反応器203に導入される。反応器203は、図1の反応器103と同様である。炭化水素原料201と含水硝酸202は、反応器圧と反応温度で反応して、ニトロ化化合物と副産物とを含む生成物流204が生成される。
【0027】
炭化水素原料201と含水硝酸202は混合されるか又は部分的に混合され、次に反応器203に入るか、あるいは、これらは個々に添加され、反応器203内で混合が起きる。さらに炭化水素原料201と含水硝酸202とは、一緒に加えても個々に加えても、あらかじめ加熱した後、反応器203に入れられる。
【0028】
炭化水素原料201は、図1の炭化水素原料101と同様である。含水硝酸202は、図1の含水硝酸102と同様の組成を有する。炭化水素原料201と含水硝酸202のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。反応器圧、反応温度、及び滞留時間は、図1と同様である。
【0029】
次に生成物流204は、生成物流204から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器205に入り、炭化水素気体流206と気体回収混合物207を生成する。炭化水素気体流206は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流206中の未反応の炭化水素は、反応器203に再循環される。炭化水素気体流206中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流206中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物207はストリッパー208に入り、ここで水相209が気体回収混合物207から除去されて、第2の気体回収混合物210が生成される。次に第2の気体回収混合物210は分離器211に入り、ここで第2の気体回収混合物210は、油相212と第2の水相213に分離される。第2の水相213は再循環されて相分離装置208に戻される。相分離装置208からの水相209は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器203に戻される。次に油相212は中和/水洗装置214に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相212から除去され、少なくとも中和された油相215と廃棄物流216が得られる。次に中和された油相215は分割壁カラム217に入り、これは中和された油相215を蒸留する。
【0030】
中和された油相215は図1の中和された油相115と同様である。分割壁カラム217は図1の分割壁カラム117と同様であり、冷却器218とリボイラー219とを有する。
【0031】
分割壁カラム217は、少なくとも上部生成物220、中間部生成物221、及び下部生成物222を回収する。中間部生成物221から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に、2-ニトロプロパンとニトロシクロヘキサンがある。
【0032】
下部生成物222は、追加のニトロアルカン類を含む。例えば下部生成物222は、1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタンを含む。下部生成物は蒸留カラム223に入り、少なくとも1つの追加のニトロアルカンを回収する。蒸留カラム223下部生成物222を蒸留して、少なくとも1つの第2の上部生成物224と第2の下部生成物225が産生される。第2の上部生成物224は、追加のニトロアルカン、例えば、1-ニトロプロパンを含む。
【0033】
図3は、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置300を例示する。炭化水素原料301と含水硝酸202が反応器203に導入される。反応器303は、図1の反応器103と同様である。炭化水素原料301と含水硝酸302は、反応器圧と反応温度で反応して、ニトロ化化合物と副産物とを含む生成物流304が生成される。
【0034】
炭化水素原料301と含水硝酸302は混合されるか又は部分的に混合され、次に反応器303に入るか、あるいは、これらは個々に添加され、反応器303内で混合が起きる。さらに炭化水素原料301と含水硝酸302とは、一緒に加えても個々に加えても、あらかじめ加熱した後、反応器303に入れられる。
【0035】
炭化水素原料301は、図1の炭化水素原料101と同様である。含水硝酸302は、図1の含水硝酸102と同様の組成を有する。炭化水素原料301と含水硝酸302のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。反応器圧、反応温度、及び滞留時間は、図1と同様である。
【0036】
次に生成物流304は、生成物流304から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器305に入り、炭化水素気体流306と気体回収混合物307を生成する。炭化水素気体流306は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流306中の未反応の炭化水素は、反応器303に再循環される。炭化水素気体流306中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流306中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物307はストリッパー308に入り、ここで水相309が気体回収混合物307から除去されて、第2の気体回収混合物310が生成される。次に第2の気体回収混合物310は分離器311に入り、ここで第2の気体回収混合物310は、油相312と第2の水相313に分離される。第2の水相313は再循環されて相分離装置308に戻される。相分離装置308からの水相309は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器303に戻される。例えば水相309は、有機酸(例えば酢酸)を含み、これは反応器303に戻される。次に油相312は中和/水洗装置314に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相312から除去され、少なくとも中和された油相315と廃棄物流316が得られる。次に中和された油相315は分割壁カラム317に入り、これは中和された油相315を蒸留する。
【0037】
中和された油相315は図1の中和された油相115と同様である。分割壁カラム317は図1の分割壁カラム117と同様であり、冷却器318とリボイラー319とを有する。
【0038】
分割壁カラム317は、少なくとも上部生成物320、中間部生成物321、及び下部生成物322を回収する。中間部生成物321から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に2-ニトロプロパンがある。実施態様では少なくとも1つのニトロアルカンが上部生成物320から回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に、ニトロメタンがある。
【0039】
他の実施態様では、中和された油相315は炭化水素を回収するための回収装置に入った後、分割壁カラム317に入る。回収装置は、中和された油相315から、例えば、シクロヘキサンを回収する。
【実施例】
【0040】
コンピューターシミュレーションを使用して種々の例を示す。
【0041】
[実施例1:プロパンの高圧ニトロ化]
プロパンを30重量%の含水硝酸と、約1200psi(77.4atm)の反応器圧力、約250℃の平均反応温度(220〜290℃の範囲)、約120秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約1.5:1で、高圧ニトロ化法で反応させて、生成物流を作成する。次に生成物流を分割壁カラム(DWC)に送る。DWCに供給される生成物流の主要な成分を以下の表に要約する。スキームは2-ニトロプロパン製造速度5420 lb/hで設計され、2-ニトロプロパンより軽い比較的低率の成分、次に大きなモル分率の所望の生成物2-ニトロプロパン、次に、2-ニトロプロパンより重い比較的少量の成分からなる。
【表1】
【0042】
DWCは、生成物流を上部生成物、中間部生成物、そして下部生成物に分離するように操作される。DWCからの上部生成物は基本的に、揮発性物質(ニトロメタン、ニトロエタン、及びアセトン)と水であり、中間部生成物は基本的に純粋な2-ニトロプロパンであり、下部生成物は基本的に1-ニトロプロパンと重い物質(ニトロブタン、2,2-ジニトロプロパン、及びケロシン)である。DWCの後に別のカラムにより、下部生成物から1-ニトロプロパンを回収する。
【0043】
2-ニトロプロパンの所望の純度は99.6%で回収率>99.5%である。これらの規格を達成するためのDWCの設計を以下の表2に示す。全部で84段が必要であり、原料供給段は冷却器から51段目である。2-ニトロプロパン生成物の取り出しは、冷却器からの43段目から取り出される。
【0044】
不純物は、上部生成物中の2-ニトロプロパン、中間部生成物中のニトロエタンと1-ニトロプロパン、及び下部生成物中の2-ニトロプロパンを含む。図4〜7に示すようにリボイラーの効率が上昇すると不純物レベルが低下する。図4〜7は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図8に示すように37:63である。図8は、エネルギー単位比が881 BTU/lb(リボイラー効率5.35 MMBTU/h)での液体分割比(0.35〜040)の不純物の変動の拡大部分を示す。中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパン不純物の最少量は、プレ精留塔への37%の液体原料であり、従って本例の最適な液体分割比は0.37:0.63である。
【0045】
表2は、DWC構成について上記表1に要約した生成物流を使用したシミュレーション結果を、最終トレインで2つの蒸留カラムを使用する従来のスキームで表1の生成物流を使用したシミュレーション結果とを比較する。通常のシーケンスは、2つの蒸留カラム内で全部で106段を使用して、分離要件について7.32 MMBTU/時間を消費する。従ってDWCのエネルギー節約は、直接シーケンスに対して約29%である。直接シーケンスの2つのカラムの代替となる1つのDWCは、その代替するカラムのいずれよりも直径と面積が大きいが、これはほんのわずかである。2.4メートル(8.15フィート)の直径の1つのDWCは、2つの直接シーケンスカラムを代替する。
【表2】
【0046】
[実施例2:プロパンの蒸気相ニトロ化]
蒸気相ニトロ化は、2-ニトロプロパンに対する選択性が低い。プロパンを70重量%の含水硝酸と、約185psi(9.7atm)の反応器圧力、約370℃の平均反応温度、約2.3秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約4:1で、蒸気相ニトロ化法で反応させて、生成物流を作成する。表3は、蒸気相ニトロ化法からの水洗中和部分から出てくる生成物流の典型的な組成物を、高圧ニトロ化法からの同様の流れの流れ組成物と比較して要約する。
【表3】
【0047】
次にこの生成物流は分割壁カラム(DWC)に送られる。DWCへの生成物流供給原料の主要な成分を以下の表4に要約する。
【表4】
【0048】
蒸気相ニトロ化では、高圧ニトロ化と比較してより多くの低級ニトロアルカン類(ニトロメタン、ニトロエタン、及び1-ニトロプロパン)が生成され、従って2-ニトロプロパンの重量割合ははるかに小さい。DWCの結果としてのエネルギーと資本の利益は、原料流中の中間部成分の重量割合(この場合は2-ニトロプロパン)に正比例する。
【0049】
実施例1と同様に、不純物は上部生成物中に2-ニトロプロパン、中間部生成物中にニトロエタンと1-ニトロプロパン、そして下部生成物中に2-ニトロプロパンを含む。図9〜12に示すように、リボイラー効率が上昇すると不純物レベルが低下する。図9〜12は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図13に示すように46:54である。図13は、エネルギー単位比が1835 BTU/lb(リボイラー効率4.35 MMBTU/h)での液体分割比(0.45〜0.5)の不純物の変動の拡大部分を示す。上部生成物中の2-ニトロプロパンと中間部生成物中のニトロエタン不純物の最少量は、プレ精留塔への47%の液体原料供給であるが、中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパンの量は、急激に上昇して46%を超え、従って本例の最適な液体分割比は0.46:0.64である。
【0050】
上記表4に要約した生成物流を使用する提唱されたDWC分離と、表4の生成物流を使用する従来の直接スキームとの比較を、以下の表5に示す。
【表5】
【0051】
直接スキームでは、純度99.05%の2-ニトロプロパン生成物の規格は、全部で87の平衡段数の2つのカラムを必要とするが、72の平衡段数の1つの分割壁カラムは25%少ないエネルギーを利用して同じ規格を達成する。DWCへの原料は冷却器から45段目でDWCに入り、冷却器から41段目で2-ニトロプロパン生成物が取り出される。
【0052】
[実施例:改変高圧ニトロ化]
高圧法の改変法では、主要な酸化副産物(カルボン酸類)は、廃水処理に捨てられずに再生利用されて貴重なニトロパラフィン生成物を与える。プロパンは30重量%の硝酸と、約1200psi(77.4atm)の反応器圧力、約235℃の平均反応温度(180〜290℃の範囲)、約120秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約0.5:1で反応される。プロパンニトロ化の主要な副産物は高圧ニトロ化では酢酸である(酢酸はまた、定常状態プロセスをより速く得るために開始時にも添加される)。この副産物は濃縮し反応器に再循環されると、典型的な高圧ニトロ化法条件で多量のニトロメタンを生成する。ニトロメタン選択性は約55%であり、これは商業的方法を使用して達成される最大値より約30%高い。改変高圧法の水洗中和部分から出てくる典型的な生成物流の組成を以下の表6に示し、高圧流及び蒸気相(商業的)流と比較する。
【表6】
【0053】
中沸点成分である2-ニトロプロパンの組成は、高圧法から改変高圧法にかけて徐々に低下する。従ってDWCを使用する利点もまた同じ傾向をたどる。しかし以下の分析で示されるように、資本とエネルギーの節約はまだ存在する。次に生成物流は分割壁カラム(DWC)に送られる。DWCへの生成物流原料の主要成分を、以下の表7に要約する。
【表7】
【0054】
実施例1及び2と同様に、不純物は、上部生成物中に2-ニトロプロパン、中間部生成物中にニトロエタンと1-ニトロプロパン、そして下部生成物中に2-ニトロプロパンを含む。図14〜17に示すように、リボイラー効率が上昇すると不純物レベルは低下する。図14〜17は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図18に示すように46:54である。図18は、エネルギー単位比が923 BTU/lb(リボイラー効率4.8 MMBTU/h)での液体分割比(0.3〜0.4)の不純物の変動の拡大部分を示す。上部生成物中の2-ニトロプロパンと中間部生成物中のニトロエタン不純物の最少量は、プレ精留塔への36%の液体原料供給であるが、中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパン不純物の量は、急激に上昇して35%を超え、従って本例の最適な液体分割比は0.35:0.65である。
【0055】
上記表7に要約した生成物流を使用する提唱されたDWC構成と、表7の生成物流を使用する従来のスキームとの比較を、以下の表8に示す。
【表8】
【0056】
直接スキームでは、純度99.18%の2-ニトロプロパン生成物の規格は、全部で90の平衡段数の2つのカラムを必要とするが、76の平衡段数の1つの分割壁カラムは約22%少ないエネルギーを利用して同じ規格を達成する。DWCへの原料は冷却器から46段目で入り、冷却器から53段目で2-ニトロプロパン生成物が取り出される。5200 lb/hの原料流を処理するのに、4.8 MMBTU/hのリボイラー効率が必要である。
【0057】
好適な実施態様に従って上記で本発明を説明したが、本開示の本質と範囲内で修飾が可能である。すなわち本出願は、本明細書に開示した一般的原理を使用して本発明の任意の変更、利用、又は改変を包含するものである。さらに本出願は、本発明に関する分野の既知のもしくは一般的な慣習内の、かつ以下の請求項の範囲内にある、本開示から展開されるものも包含するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロアルカン類を合成するための方法に関する。さらに詳しくは本発明は、分割壁カラム(dividing wall column)を使用するニトロアルカン強化回収法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素のニトロ化では、反応条件と原料組成物に依存して様々な生成物が製造される。例えばプロパンの蒸気相ニトロ化は典型的には、基本的に固定された相対濃度の4つのニトロ−パラフィン生成物(ニトロメタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン、及びニトロエタン)の混合物を与える。プロパンの高圧ニトロ化は、例えば1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタンのような他の低分子量ニトロアルカン類よりも2-ニトロプロパンを選択的に生成することができる。シクロヘキサンの高圧ニトロ化は典型的には、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ニトロシクロヘキサン、及び酸化生成物を生成させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロパンの典型的な蒸気相及び高圧ニトロ化の副産物は、特に、低分子量ニトロアルカン類(2-ニトロプロパン、1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタン)間でよく似た沸点を有するため、分離を困難にしている。従来の反応後に蒸留という順序は背の高いカラムと高い還流比を使用し、これは高価であり多量のエネルギーを消費する。他の従来の分離法は、所望のニトロパラフィンを回収するために追加の多量分離剤を使用する。従って所望のニトロアルカン生成物を回収するためのより経済的でエネルギー効率の良い方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡単な要約
ある態様において、少なくとも1つのニトロアルカンの合成法が提供される。この方法は、反応器中で炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、生成物流を生成させ、生成物流を少なくとも油相と水相とに分離し、油相から実質的にすべての有機酸を分離し、その後、分割壁カラム中で油相を蒸留して、少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、そして、中間部生成物から少なくとも1つのニトロアルカンを回収することを含んでなる。
【0005】
別の態様において、ニトロアルカン回収法が提供される。この方法は、ニトロパラフィンニトロ化法からの生成物流を少なくとも1つの油相と水相とに分離し、分割壁カラム中で油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、中間生成物から少なくとも第1のニトロアルカンを回収し、下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収することを含んでなる。
【0006】
さらに別の態様において、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置が提供される。この装置は、炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、反応生成物流を生成させるための反応器と、反応生成物流を少なくとも油相と水相とに分離するための相分離装置と、油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物にするための分割壁カラムとを含んでなり、ここで、中間部生成物は少なくとも1つのニトロアルカンの少なくとも一部を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例に従う、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置の模式図である。
【図2】実施例に従う、少なくとも第1のニトロアルカンと第2のニトロアルカンとを合成するための装置の模式図である。
【図3】実施例に従う、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置の模式図である。
【図4】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図5】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図6】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図7】高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図8】高圧ニトロ化の881 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【図9】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図10】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図11】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図12】蒸気相ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図13】高圧ニトロ化の1855 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【図14】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての上部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図15】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中のニトロエタンのモル分率のグラフである。
【図16】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての中間部生成物中の1-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図17】改変高圧ニトロ化の液体分割比と効率との関数としての下部生成物中の2-ニトロプロパンのモル分率のグラフである。
【図18】改変高圧ニトロ化の923 BTU/lbのエネルギー比での液体分割比の関数としての不純物のモル分率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ある態様において、少なくとも1つのニトロアルカンの合成法が提供される。この方法は、2つの蒸留カラムの代わりに分割壁カラムを有効に使用して少なくとも1つのニトロアルカンを回収し、従ってニトロアルカン類の合成に伴う資本とエネルギーコストを低下させる。
【0009】
図1は、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置100を例示する。炭化水素原料101と含水硝酸102は反応器103に導入される。炭化水素原料101と含水硝酸102は反応器の圧力と反応温度で反応し、その結果ニトロ化化合物を副産物とを含む生成物流104が生成される。
【0010】
炭化水素原料101と含水硝酸102は混合されるか又は部分的に混合されて、次に反応器103に入るか、あるいはこれらは個々に添加されて反応器103内で混合が起きる。さらに炭化水素原料101と含水硝酸102は、一緒にもしくは別々に添加されて、あらかじめ加熱された後、反応器103に入れられる。
【0011】
ある例では炭化水素原料101は、基本的にプロパンと酢酸とからなる。他の例では炭化水素原料101は、特に限定されないが、以下の1つ以上を含んでよい:アルカン類とシクロアルカン類(アルキル置換シクロアルカン類を含む)、例えばプロパン、イソブタン、n-ブタン、イソペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、及びメチルシクロヘキサン;アリールアルカン類、例えばエチルベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン;1-メチルナフタレンと2-メチルナフタレンと4-メチルビフェニル;縮合シクロアルカン類;アルキル置換縮合アリール化合物;縮合シクロアルカン−アリール化合物(アルキル置換誘導体を含む)、例えばテトラリン、デカリン、及びメチルナフタレン;及びカルボン酸類、例えば酢酸、プロパン酸、ブタン酸、及びヘキサン酸。反応物がまだ利用可能な水素を有する場合は、すでに1つ以上のニトロ置換基を有する反応物のニトロ化も企図される。
【0012】
含水硝酸は、少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約15重量%、さらに好ましくは少なくとも約20重量%の酸を含有する水溶液の形で、反応器103に供給される。さらにこの溶液は、約50重量%未満の、好ましくは約40重量%未満の、さらに好ましくは約35重量%未満の酸を含有する。さらなる実施態様において硝酸溶液は、約15〜約40重量%の酸を含有する。別の実施態様において硝酸溶液は、約18〜約35重量%の酸を含有する。
【0013】
炭化水素原料101と含水硝酸102のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。
【0014】
反応圧は少なくとも約500psi(34atm)、好ましくは少なくとも約1000psi(68atm)、さらに好ましくは少なくとも約1200psi(82atm)である。さらに圧力は、約1600psi(109atm)未満、好ましくは約1500psi(102atm)未満、さらに好ましくは約1400psi(95atm)未満である。別の実施態様において、圧力は約1000psi(68atm)〜1400psi(95atm)である。例えば背圧調整器の使用により、圧力を所望の範囲に維持するために、当該分野で公知の種々の方法が使用される。
【0015】
反応器内の反応温度は、約140℃より高く約325℃未満になるように制御される(例えば、熱交換液を用いて、又は反応から発生する熱を使用して)。他の実施態様において温度は、約215℃より高く約325℃未満である。ある実施態様において温度は約180℃より高く、約200℃より高く、約230℃より高く、又は約240℃より高い。さらなる実施態様において温度は、約290℃未満、約280℃未満、約270℃未満、又は約250℃未満である。他の実施態様において温度は、約200〜250℃である。さらに別の実施態様において温度は、約215〜280℃、又は約220〜約270℃である。
【0016】
反応器103中の反応物の滞留時間は、好ましくは少なくとも約30秒、さらに好ましくは少なくとも約90秒である。滞留時間は、例えば反応器の長さ及び/もしくは幅、又は充填材料の使用を含む種々の方法により制御される。滞留時間は、反応器の容積を入り口流速で割ることにより決定される。
【0017】
反応器103は、下向構成の反応器でもよい。すなわち、長円形で細長い(例えばチューブ型)反応器が、入り口を通って又は反応器の上部の近くで反応物が添加され、次に反応が起き所望の生成物が生成するのに充分な滞留時間の間、反応器を流れるように配置される。生成物混合物は、出口を通って又は反応器の底の近くで採取される。
【0018】
下向構成の反応器の操作は、一般に水平の、上向の、コイル状の、又はバッチ型のオートクレーブ型の装置を利用する先行技術のシステムに対していくつかの利点を提供する。特に本発明の下向構成は、そのような先行技術のシステムと比較して、比較的低レベルの酸化副産物を含有するニトロ化化合物を提供する。
【0019】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、下向反応器の利点は、反応器内の液相の量と滞留時間を最小にする能力により得られると考えられる。一般に液相は、低モル比の炭化水素対硝酸を含む。この低モル比は、ニトロ化を犠牲にして酸化作用を促進し、従って酸化は主に液相で起きる。下向反応器(細流床反応器とも呼ばれる)では、気体は連続相であり、液体は反応器の壁又は充填物に沿ってしたたる。従って下向構成反応器中の液相の量は低レベルで維持され、従って酸化作用は最小となる。
【0020】
これに対して上向反応器(気泡カラムとも呼ばれる)では、液体は連続相である(及び気泡は連続液相に沿って急速に上昇する)。すなわち上向反応器は、液体の滞留を最大にする。上記したように酸化は主に液相で起きるため、上向反応器は酸化副産物の生成を最大にする。同様に、コイル型及び水平型反応器構成はまた、液体の滞留時間を上昇させ、従って下向反応器と比較して酸化作用を上昇させる。コイル型反応器のさらなる欠点は、この形での大規模反応器の作成が困難なため、工業的規模の製造にあまり適していないことである。
【0021】
反応物の混合と熱伝達を改良するために、及び/又は反応器の容積を変化させるために、反応器103はまた充填材料を充填される。反応器の充填は、例えば、プロパンニトロ化系が好ましく、ここで生成物流中の2,2-ジニトロプロパンの濃度を上げることが好ましい。適切な充填材料には、例えば、ガラスビーズ、ランダム充填物、又は組織化充填物(例えば、蒸留装置中で一般的に使用されるような充填物)がある。他の充填材料は当該分野で公知であり、使用される。
【0022】
次に、生成物流104は、生成物流104から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器105に入り、炭化水素気体流106と気体回収混合物107を生成する。炭化水素気体流106は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流106中の未反応の炭化水素は、反応器103に再循環される。炭化水素気体流106中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流106中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物107はストリッパー108に入り、ここで水相109が気体回収混合物107から除去されて、第2の気体回収混合物110が生成される。次に第2の気体回収混合物110は分離器111に入り、ここで第2の気体回収混合物110は、油相112と第2の水相113に分離される。第2の水相113は再循環されて相分離装置108に戻される。相分離装置108からの水相109は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器103に戻される。次に油相112は中和/水洗装置114に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相112から除去され、少なくとも中和された油相115と廃棄物流116が得られる。次に中和された油相115は分割壁カラム117に入り、これは中和された油相115を蒸留する。
【0023】
分割壁カラム117は、蒸気分割比が約0.3:0.7〜0.7:0.3、好ましくは約0.4:0.6〜0.6:0.4、さらに好ましくは0.5:0.5で操作される。分割壁カラム117は、液体分割比が約0.2:0.8〜0.8:0.2、好ましくは約0.3:0.7〜0.7:0.3、さらに好ましくは0.3:0.7〜0.5:0.5で操作される。別の実施態様において液体分割比が約0.35:0.65〜0.4:0.6、好ましくは約0.37:0.63でもよい。さらに別の実施態様において液体分割比が約0.35:0.65でもよい。さらなる実施態様において液体分割比が約0.45:0.65〜0.5:0.5、好ましくは約0.46:0.54でもよい。
【0024】
分割壁カラム117は、冷却器118とリボイラー119とを含んでよい。冷却器118は20〜80℃の温度で操作される。リボイラー119は、75〜85℃の温度で操作される。
【0025】
分割壁カラム117は、少なくとも上部生成物120、中間部生成物121、及び下部生成物122を回収する。中間部生成物121から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に2-ニトロプロパンとニトロシクロヘキサンがある。
【0026】
図2は、1つ以上のニトロアルカン類を合成するための装置200を例示する。炭化水素原料201と含水硝酸202が反応器203に導入される。反応器203は、図1の反応器103と同様である。炭化水素原料201と含水硝酸202は、反応器圧と反応温度で反応して、ニトロ化化合物と副産物とを含む生成物流204が生成される。
【0027】
炭化水素原料201と含水硝酸202は混合されるか又は部分的に混合され、次に反応器203に入るか、あるいは、これらは個々に添加され、反応器203内で混合が起きる。さらに炭化水素原料201と含水硝酸202とは、一緒に加えても個々に加えても、あらかじめ加熱した後、反応器203に入れられる。
【0028】
炭化水素原料201は、図1の炭化水素原料101と同様である。含水硝酸202は、図1の含水硝酸102と同様の組成を有する。炭化水素原料201と含水硝酸202のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。反応器圧、反応温度、及び滞留時間は、図1と同様である。
【0029】
次に生成物流204は、生成物流204から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器205に入り、炭化水素気体流206と気体回収混合物207を生成する。炭化水素気体流206は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流206中の未反応の炭化水素は、反応器203に再循環される。炭化水素気体流206中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流206中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物207はストリッパー208に入り、ここで水相209が気体回収混合物207から除去されて、第2の気体回収混合物210が生成される。次に第2の気体回収混合物210は分離器211に入り、ここで第2の気体回収混合物210は、油相212と第2の水相213に分離される。第2の水相213は再循環されて相分離装置208に戻される。相分離装置208からの水相209は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器203に戻される。次に油相212は中和/水洗装置214に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相212から除去され、少なくとも中和された油相215と廃棄物流216が得られる。次に中和された油相215は分割壁カラム217に入り、これは中和された油相215を蒸留する。
【0030】
中和された油相215は図1の中和された油相115と同様である。分割壁カラム217は図1の分割壁カラム117と同様であり、冷却器218とリボイラー219とを有する。
【0031】
分割壁カラム217は、少なくとも上部生成物220、中間部生成物221、及び下部生成物222を回収する。中間部生成物221から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に、2-ニトロプロパンとニトロシクロヘキサンがある。
【0032】
下部生成物222は、追加のニトロアルカン類を含む。例えば下部生成物222は、1-ニトロプロパン、ニトロメタン、及びニトロエタンを含む。下部生成物は蒸留カラム223に入り、少なくとも1つの追加のニトロアルカンを回収する。蒸留カラム223下部生成物222を蒸留して、少なくとも1つの第2の上部生成物224と第2の下部生成物225が産生される。第2の上部生成物224は、追加のニトロアルカン、例えば、1-ニトロプロパンを含む。
【0033】
図3は、少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置300を例示する。炭化水素原料301と含水硝酸202が反応器203に導入される。反応器303は、図1の反応器103と同様である。炭化水素原料301と含水硝酸302は、反応器圧と反応温度で反応して、ニトロ化化合物と副産物とを含む生成物流304が生成される。
【0034】
炭化水素原料301と含水硝酸302は混合されるか又は部分的に混合され、次に反応器303に入るか、あるいは、これらは個々に添加され、反応器303内で混合が起きる。さらに炭化水素原料301と含水硝酸302とは、一緒に加えても個々に加えても、あらかじめ加熱した後、反応器303に入れられる。
【0035】
炭化水素原料301は、図1の炭化水素原料101と同様である。含水硝酸302は、図1の含水硝酸102と同様の組成を有する。炭化水素原料301と含水硝酸302のモル比は、少なくとも約0.3:1、さらに好ましくは少なくとも約0.5:1である。反応器圧、反応温度、及び滞留時間は、図1と同様である。
【0036】
次に生成物流304は、生成物流304から水溶性成分と脂溶性成分を吸収するための吸収器305に入り、炭化水素気体流306と気体回収混合物307を生成する。炭化水素気体流306は、未反応の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸化窒素、亜酸化窒素、及び窒素を含む。炭化水素気体流306中の未反応の炭化水素は、反応器303に再循環される。炭化水素気体流306中の残りの気体は処理されて、酸化窒素が硝酸として回収される。炭化水素気体流306中のさらなる残りの気体は焼却器を介して送られ、放射される。次に気体回収混合物307はストリッパー308に入り、ここで水相309が気体回収混合物307から除去されて、第2の気体回収混合物310が生成される。次に第2の気体回収混合物310は分離器311に入り、ここで第2の気体回収混合物310は、油相312と第2の水相313に分離される。第2の水相313は再循環されて相分離装置308に戻される。相分離装置308からの水相309は廃棄されるか、又はさらに再循環されて反応器303に戻される。例えば水相309は、有機酸(例えば酢酸)を含み、これは反応器303に戻される。次に油相312は中和/水洗装置314に入り、ここで実質的にすべての有機酸が油相312から除去され、少なくとも中和された油相315と廃棄物流316が得られる。次に中和された油相315は分割壁カラム317に入り、これは中和された油相315を蒸留する。
【0037】
中和された油相315は図1の中和された油相115と同様である。分割壁カラム317は図1の分割壁カラム117と同様であり、冷却器318とリボイラー319とを有する。
【0038】
分割壁カラム317は、少なくとも上部生成物320、中間部生成物321、及び下部生成物322を回収する。中間部生成物321から少なくとも1つのニトロアルカンが回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に2-ニトロプロパンがある。実施態様では少なくとも1つのニトロアルカンが上部生成物320から回収される。回収されるニトロアルカン類の例には、特に、ニトロメタンがある。
【0039】
他の実施態様では、中和された油相315は炭化水素を回収するための回収装置に入った後、分割壁カラム317に入る。回収装置は、中和された油相315から、例えば、シクロヘキサンを回収する。
【実施例】
【0040】
コンピューターシミュレーションを使用して種々の例を示す。
【0041】
[実施例1:プロパンの高圧ニトロ化]
プロパンを30重量%の含水硝酸と、約1200psi(77.4atm)の反応器圧力、約250℃の平均反応温度(220〜290℃の範囲)、約120秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約1.5:1で、高圧ニトロ化法で反応させて、生成物流を作成する。次に生成物流を分割壁カラム(DWC)に送る。DWCに供給される生成物流の主要な成分を以下の表に要約する。スキームは2-ニトロプロパン製造速度5420 lb/hで設計され、2-ニトロプロパンより軽い比較的低率の成分、次に大きなモル分率の所望の生成物2-ニトロプロパン、次に、2-ニトロプロパンより重い比較的少量の成分からなる。
【表1】
【0042】
DWCは、生成物流を上部生成物、中間部生成物、そして下部生成物に分離するように操作される。DWCからの上部生成物は基本的に、揮発性物質(ニトロメタン、ニトロエタン、及びアセトン)と水であり、中間部生成物は基本的に純粋な2-ニトロプロパンであり、下部生成物は基本的に1-ニトロプロパンと重い物質(ニトロブタン、2,2-ジニトロプロパン、及びケロシン)である。DWCの後に別のカラムにより、下部生成物から1-ニトロプロパンを回収する。
【0043】
2-ニトロプロパンの所望の純度は99.6%で回収率>99.5%である。これらの規格を達成するためのDWCの設計を以下の表2に示す。全部で84段が必要であり、原料供給段は冷却器から51段目である。2-ニトロプロパン生成物の取り出しは、冷却器からの43段目から取り出される。
【0044】
不純物は、上部生成物中の2-ニトロプロパン、中間部生成物中のニトロエタンと1-ニトロプロパン、及び下部生成物中の2-ニトロプロパンを含む。図4〜7に示すようにリボイラーの効率が上昇すると不純物レベルが低下する。図4〜7は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図8に示すように37:63である。図8は、エネルギー単位比が881 BTU/lb(リボイラー効率5.35 MMBTU/h)での液体分割比(0.35〜040)の不純物の変動の拡大部分を示す。中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパン不純物の最少量は、プレ精留塔への37%の液体原料であり、従って本例の最適な液体分割比は0.37:0.63である。
【0045】
表2は、DWC構成について上記表1に要約した生成物流を使用したシミュレーション結果を、最終トレインで2つの蒸留カラムを使用する従来のスキームで表1の生成物流を使用したシミュレーション結果とを比較する。通常のシーケンスは、2つの蒸留カラム内で全部で106段を使用して、分離要件について7.32 MMBTU/時間を消費する。従ってDWCのエネルギー節約は、直接シーケンスに対して約29%である。直接シーケンスの2つのカラムの代替となる1つのDWCは、その代替するカラムのいずれよりも直径と面積が大きいが、これはほんのわずかである。2.4メートル(8.15フィート)の直径の1つのDWCは、2つの直接シーケンスカラムを代替する。
【表2】
【0046】
[実施例2:プロパンの蒸気相ニトロ化]
蒸気相ニトロ化は、2-ニトロプロパンに対する選択性が低い。プロパンを70重量%の含水硝酸と、約185psi(9.7atm)の反応器圧力、約370℃の平均反応温度、約2.3秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約4:1で、蒸気相ニトロ化法で反応させて、生成物流を作成する。表3は、蒸気相ニトロ化法からの水洗中和部分から出てくる生成物流の典型的な組成物を、高圧ニトロ化法からの同様の流れの流れ組成物と比較して要約する。
【表3】
【0047】
次にこの生成物流は分割壁カラム(DWC)に送られる。DWCへの生成物流供給原料の主要な成分を以下の表4に要約する。
【表4】
【0048】
蒸気相ニトロ化では、高圧ニトロ化と比較してより多くの低級ニトロアルカン類(ニトロメタン、ニトロエタン、及び1-ニトロプロパン)が生成され、従って2-ニトロプロパンの重量割合ははるかに小さい。DWCの結果としてのエネルギーと資本の利益は、原料流中の中間部成分の重量割合(この場合は2-ニトロプロパン)に正比例する。
【0049】
実施例1と同様に、不純物は上部生成物中に2-ニトロプロパン、中間部生成物中にニトロエタンと1-ニトロプロパン、そして下部生成物中に2-ニトロプロパンを含む。図9〜12に示すように、リボイラー効率が上昇すると不純物レベルが低下する。図9〜12は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図13に示すように46:54である。図13は、エネルギー単位比が1835 BTU/lb(リボイラー効率4.35 MMBTU/h)での液体分割比(0.45〜0.5)の不純物の変動の拡大部分を示す。上部生成物中の2-ニトロプロパンと中間部生成物中のニトロエタン不純物の最少量は、プレ精留塔への47%の液体原料供給であるが、中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパンの量は、急激に上昇して46%を超え、従って本例の最適な液体分割比は0.46:0.64である。
【0050】
上記表4に要約した生成物流を使用する提唱されたDWC分離と、表4の生成物流を使用する従来の直接スキームとの比較を、以下の表5に示す。
【表5】
【0051】
直接スキームでは、純度99.05%の2-ニトロプロパン生成物の規格は、全部で87の平衡段数の2つのカラムを必要とするが、72の平衡段数の1つの分割壁カラムは25%少ないエネルギーを利用して同じ規格を達成する。DWCへの原料は冷却器から45段目でDWCに入り、冷却器から41段目で2-ニトロプロパン生成物が取り出される。
【0052】
[実施例:改変高圧ニトロ化]
高圧法の改変法では、主要な酸化副産物(カルボン酸類)は、廃水処理に捨てられずに再生利用されて貴重なニトロパラフィン生成物を与える。プロパンは30重量%の硝酸と、約1200psi(77.4atm)の反応器圧力、約235℃の平均反応温度(180〜290℃の範囲)、約120秒の滞留時間、及びプロパン対硝酸のモル比が約0.5:1で反応される。プロパンニトロ化の主要な副産物は高圧ニトロ化では酢酸である(酢酸はまた、定常状態プロセスをより速く得るために開始時にも添加される)。この副産物は濃縮し反応器に再循環されると、典型的な高圧ニトロ化法条件で多量のニトロメタンを生成する。ニトロメタン選択性は約55%であり、これは商業的方法を使用して達成される最大値より約30%高い。改変高圧法の水洗中和部分から出てくる典型的な生成物流の組成を以下の表6に示し、高圧流及び蒸気相(商業的)流と比較する。
【表6】
【0053】
中沸点成分である2-ニトロプロパンの組成は、高圧法から改変高圧法にかけて徐々に低下する。従ってDWCを使用する利点もまた同じ傾向をたどる。しかし以下の分析で示されるように、資本とエネルギーの節約はまだ存在する。次に生成物流は分割壁カラム(DWC)に送られる。DWCへの生成物流原料の主要成分を、以下の表7に要約する。
【表7】
【0054】
実施例1及び2と同様に、不純物は、上部生成物中に2-ニトロプロパン、中間部生成物中にニトロエタンと1-ニトロプロパン、そして下部生成物中に2-ニトロプロパンを含む。図14〜17に示すように、リボイラー効率が上昇すると不純物レベルは低下する。図14〜17は、プレ精留塔に送られる液体分割割合に対する上記不純物と、単位比(BTU/lb)の熱効率対供給原料の比率の変動を示す。蒸気分割比は50:50に固定されるが、リボイラー効率に対する最適液体分割比は、図18に示すように46:54である。図18は、エネルギー単位比が923 BTU/lb(リボイラー効率4.8 MMBTU/h)での液体分割比(0.3〜0.4)の不純物の変動の拡大部分を示す。上部生成物中の2-ニトロプロパンと中間部生成物中のニトロエタン不純物の最少量は、プレ精留塔への36%の液体原料供給であるが、中間部生成物中の1-ニトロプロパン不純物と下部生成物中の2-ニトロプロパン不純物の量は、急激に上昇して35%を超え、従って本例の最適な液体分割比は0.35:0.65である。
【0055】
上記表7に要約した生成物流を使用する提唱されたDWC構成と、表7の生成物流を使用する従来のスキームとの比較を、以下の表8に示す。
【表8】
【0056】
直接スキームでは、純度99.18%の2-ニトロプロパン生成物の規格は、全部で90の平衡段数の2つのカラムを必要とするが、76の平衡段数の1つの分割壁カラムは約22%少ないエネルギーを利用して同じ規格を達成する。DWCへの原料は冷却器から46段目で入り、冷却器から53段目で2-ニトロプロパン生成物が取り出される。5200 lb/hの原料流を処理するのに、4.8 MMBTU/hのリボイラー効率が必要である。
【0057】
好適な実施態様に従って上記で本発明を説明したが、本開示の本質と範囲内で修飾が可能である。すなわち本出願は、本明細書に開示した一般的原理を使用して本発明の任意の変更、利用、又は改変を包含するものである。さらに本出願は、本発明に関する分野の既知のもしくは一般的な慣習内の、かつ以下の請求項の範囲内にある、本開示から展開されるものも包含するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのニトロアルカンを合成する方法であって、以下のステップ:
反応器中で炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、生成物流を生成させ、
該生成物流を少なくとも油相と水相とに分離し、
該油相から実質的にすべての有機酸を除去し、
その後、分割壁カラム中で該油相を蒸留して、少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、そして
該中間部生成物から少なくとも1つのニトロアルカンを回収する、
を含む方法。
【請求項2】
前記有機酸を反応器に戻すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上部生成物からニトロメタンを回収することをさらに含み、前記有機酸は酢酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分割壁カラムは冷却器とリボイラーとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却器は20〜80℃の温度で操作される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リボイラーは75〜85℃の温度で操作される、請求項4又はに記載の方法。
【請求項7】
前記分割壁カラムは蒸気分割比約0.5:0.5で操作される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.37:0.63で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.46:0.54で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.35:0.65で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記下部生成物を蒸留して、少なくとも1つの追加のニトロアルカンを回収することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追加のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ニトロアルカンの回収方法であって、以下のステップ:
ニトロパラフィンニトロ化法からの生成物流を少なくとも1つの油相と水相とに分離し、
分割壁カラム中で該油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、
該中間生成物から少なくとも第1のニトロアルカンを回収し、そして
該下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収する、
を含む方法。
【請求項15】
前記第1のニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置であって、
炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、反応生成物流を生成させるための反応器と、
該反応生成物流を少なくとも油相と水相とに分離するための相分離装置と、
該油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物にするための分割壁カラムとを含み、ここで、該中間部生成物は少なくとも1つのニトロアルカンの少なくとも一部を含む前記装置。
【請求項18】
前記下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収するための蒸留カラムをさらに含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記第2のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項18又は19に記載の装置。
【請求項1】
少なくとも1つのニトロアルカンを合成する方法であって、以下のステップ:
反応器中で炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、生成物流を生成させ、
該生成物流を少なくとも油相と水相とに分離し、
該油相から実質的にすべての有機酸を除去し、
その後、分割壁カラム中で該油相を蒸留して、少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、そして
該中間部生成物から少なくとも1つのニトロアルカンを回収する、
を含む方法。
【請求項2】
前記有機酸を反応器に戻すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上部生成物からニトロメタンを回収することをさらに含み、前記有機酸は酢酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分割壁カラムは冷却器とリボイラーとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却器は20〜80℃の温度で操作される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リボイラーは75〜85℃の温度で操作される、請求項4又はに記載の方法。
【請求項7】
前記分割壁カラムは蒸気分割比約0.5:0.5で操作される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.37:0.63で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.46:0.54で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記分割壁カラムは液体分割比約0.35:0.65で操作される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記下部生成物を蒸留して、少なくとも1つの追加のニトロアルカンを回収することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追加のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ニトロアルカンの回収方法であって、以下のステップ:
ニトロパラフィンニトロ化法からの生成物流を少なくとも1つの油相と水相とに分離し、
分割壁カラム中で該油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物を回収し、
該中間生成物から少なくとも第1のニトロアルカンを回収し、そして
該下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収する、
を含む方法。
【請求項15】
前記第1のニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのニトロアルカンを合成するための装置であって、
炭化水素原料に含水硝酸を反応させて、反応生成物流を生成させるための反応器と、
該反応生成物流を少なくとも油相と水相とに分離するための相分離装置と、
該油相を蒸留して少なくとも上部生成物、中間部生成物、及び下部生成物にするための分割壁カラムとを含み、ここで、該中間部生成物は少なくとも1つのニトロアルカンの少なくとも一部を含む前記装置。
【請求項18】
前記下部生成物から少なくとも第2のニトロアルカンを回収するための蒸留カラムをさらに含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのニトロアルカンは、2-ニトロプロパンである、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記第2のニトロアルカンは、1-ニトロプロパンである、請求項18又は19に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2013−508363(P2013−508363A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535205(P2012−535205)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048480
【国際公開番号】WO2011/049681
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048480
【国際公開番号】WO2011/049681
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【Fターム(参考)】
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