説明

分割壁式精留を用いた融通性のある減圧ガスオイル変換方法

本発明は、減圧ガスオイルの選択的変換のための方法に関する。減圧ガスオイルは2ステッププロセスで処理される。第1のステップは、熱変換であり、第2のステップは熱変換生成物の接触分解である。熱分解および接触分解ステップにおいて条件を変更することならびに分解ステップにおいて触媒を変更することによって、生成物スレートを変動させることができる。熱分解および接触分解からの組合せ生成物は分割壁式精留塔内で分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素含有量を有する炭化水素フィードの選択的変換のための方法に関する。炭化水素フィードは2ステッププロセスで処理される。第1のステップは熱変換であり、第2のステップは熱変換による塔底残油生成物の接触分解である。熱分解および接触分解ステップにおいて条件を変更することならびに分解ステップにおいて触媒を変更することによって、生成物スレート(product slate)を変動させることができる。熱分解および接触分解由来の組合せ生成物は分割壁式精留塔内で分離される。
【背景技術】
【0002】
より軽質でより貴重な生成物への常圧および減圧残留油(残油)のグレードアップは、ビスブレーキングおよびコーキングなどの熱分解によって達成されてきた。ビスブレーキングにおいては、減圧蒸留塔から減圧残油がビスブレーカーに送られ、ここで熱分解される。プロセス条件は、所望の生成物を生産しコークス形成を最小限におさえるように制御される。減圧蒸留塔からの減圧ガスオイルは典型的には、流動接触分解(「FCC」)ユニットに直接送られる。
【0003】
ビスブレーカー内での変換は、フィード中のアスファルテンおよびコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量に依存する。一般に、ビスブレーキングには、アスファルテンおよびCCRレベルが低い方が有利である。値が高くなると、コーキングが増大し、軽質液の収量は低くなる。ビスブレーカーからの生成物は、粘度と流動点が低く、ナフサ、ビスブレーカーガスオイルおよびビスブレーカー残渣を含む。ビスブレーカー由来の塔底残油は、重油例えば重油燃料である。ビスブレーカーには、さまざまな処理スキームが取込まれてきた。
【0004】
石油コーキングは、フィードのものよりも低い大気沸点を有する石油コークスおよび炭化水素生成物へと残油を変換させるためのプロセスに関するものである。遅延コーキングなどの一部のコーキングプロセスは、コークスを蓄積させその後反応装置容器から取出すバッチプロセスである。流動床コーキング例えば流動コーキングおよびFLEXICOKING(登録商標)(ExxonMobil Research and Engineering Co.,(Fairfax,Va)より入手可)においては、流動化されたコークス粒子の一部を燃焼させることにより供給される熱を用いて、典型的に約480〜590℃(896〜1094°F)の高い反応温度でフィードを熱分解することによって、低沸点生成物が形成される。
【0005】
コーキングの後、低沸点の炭化水素生成物例えばコーカーガスオイルは分離領域内で分離され、保管またはさらなる処理のためプロセス外に導かれる。多くの場合、特に流動床コーキングが利用される場合に、分離された炭化水素生成物はコークス粒子を含む。このようなコークス粒子のサイズは、直径でサブミクロンから数百ミクロンまでの範囲内にあってよいが、典型的には、サブミクロンから約50ミクロンの直径範囲内にある。一般には、さらなる処理のために用いられる下流側触媒床の汚染を防止するために直径約25ミクロン超の粒子を除去することが望ましい。生成物からコークスを除去するためには、分離ゾーンの下流側に置かれたフィルタが利用される。分離された低沸点炭水化物生成物中に存在する固体炭化水素質粒子は相互にそしてフィルタに対して物理的に結合して、フィルタを汚染しフィルタの処理能力を削減する可能性がある。汚染したフィルタは、逆流洗浄するか、取外して機械的に清浄するか、またはその両方を行なって汚染物を除去する必要がある。
【0006】
石油流中の構成成分を分離する目的で、蒸留は今なお最も使用されることの多い分離プロセスであり続けている。蒸留が非効率的であるのと共に、エネルギーを大量に消費するものでもあることは周知である。現在、蒸留塔の一方の側と他方の側を分離する仕切りを有する分割壁式蒸留または精留塔を蒸留分離のために使用できることが、公知である。このような分割壁式蒸留の例は、(特許文献1)、(特許文献2)および(特許文献3)の中に記載されている。
【0007】
しかしながら、業界では、減圧ガスオイルなどの高沸点範囲炭化水素フィードを処理して、これらの炭化水素フィードから生産される留出物沸点範囲生成物の生産を増加させるための改良型プロセスに対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,230,533号明細書
【特許文献2】米国特許第4,582,569号明細書
【特許文献3】米国特許第5,755,933号明細書
【特許文献4】米国特許第4,892,644号明細書
【特許文献5】米国特許第4,933,067号明細書
【特許文献6】米国特許第4,016,218号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一実施形態は、炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法において、
a) 熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の炭化水素フィードを処理するステップと;
b) 分割壁を有する精留塔に熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c) 熱分解塔底残油を分離するために精留塔の分割壁部分を用いるステップと;
d) 熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e) 接触分解生成物を生産するために有効な流動式接触分解条件下で熱分解塔底残油を触媒により変換するステップと;
f) 接触分解生成物を分割壁の最上部分より低い点で精留塔に導き、接触分解生成物の一部分を熱分解留出物および熱分解ナフサと共に混蔵するステップと;
g) 精留塔からの混蔵ナフサ、混蔵留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、精留塔の分割壁部分を使用して、接触分解塔底残油が熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法である。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態は、炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法において、
a) 熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の炭化水素フィードを処理するステップと;
b) 分割壁を有する精留塔に熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c) 熱分解塔底残油を分離するために精留塔の分割壁部分を用いるステップと;
d) 熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e) 有効な流動式接触分解条件下で熱分解塔底残油を触媒により変換して、接触分解生成物を生産するステップと;
f) 接触分解生成物を分割壁の最上部分より低い点で精留塔に導き、接触分解生成物の一部分を熱分解ナフサと共に混蔵するステップと;
g) 精留塔からの混蔵ナフサ、熱分解留出物、接触分解留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、精留塔の分割壁部分を使用して、熱分解留出物が接触分解留出物から隔離され、接触分解塔底残油が熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法である。
【0011】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法において、
a) 熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の炭化水素フィードを処理するステップと;
b) 分割壁を有する精留塔に熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c) 熱分解塔底残油を分離するために精留塔の分割壁部分を用いるステップと;
d) 熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e) 接触分解生成物を生産するために有効な流動式接触分解条件下で熱分解塔底残油を触媒により変換するステップと;
f) 分割壁の最上部分より低い点で精留塔に接触分解生成物を導くステップと;
g) 精留塔からの熱分解ナフサ、接触分解ナフサ、熱分解留出物、接触分解留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、精留塔の分割壁部分を使用して、熱分解ナフサが接触分解ナフサから隔離され、熱分解留出物が接触分解留出物から隔離され、接触分解塔底残油が熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】混蔵された熱分解および接触分解留出物および混蔵された熱分解および接触分解ナフサを熱分解および接触分解塔底残油生成物から分離するために、分割壁が使用されている本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。
【図2】混蔵された熱分解および接触分解ナフサ、熱分解留出物および接触分解留出物を熱分解塔底残油生成物および接触分解塔底残油生成物から分離するために、分割壁が使用されている本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。分割壁式精留塔から取出され混蔵された熱分解および接触分解ナフサの一部分は、任意選択により、FCC反応装置に再循環されてもよい。
【図3】熱分解ナフサ、熱分解留出物および熱分解塔底残油生成物を、接触分解ナフサ、接触分解留出物および接触分解塔底残油生成物から分離するために、分割壁が使用される、本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。分割壁式精留塔から取出された熱分解および/または接触分解ナフサの一部分は、FCC反応装置に再循環されてもよい。
【図4】本発明の熱分解および接触分解されたパラフィン系VGOフィードに対する、接触分解のみのパラフィン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収量の比較を示すグラフである。
【図5】本発明の熱分解および接触分解されたナフテン系VGOフィードに対する、接触分解のみのナフテン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収量の比較を示すグラフである。
【図6】本発明の熱分解および接触分解された水素処理済みナフテン系VGOフィードに対する、接触分解のみのナフテン系VGOフィードからのナフサおよび留出物収量の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
原料
本発明の熱変換方法向け原料は、炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードである。本明細書において、1つの流れ(stream)のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量は、ASTM D4530、「残留炭素の決定のための標準試験方法」(Standard Test Method for Determination of Carbon Residue(Micro Method))の試験方法によって決定される通りの値に等しいものとして定義されている。好ましいフィードの例としては、減圧ガスオイルおよび水素処理された減圧ガスオイルが含まれる。減圧ガスオイル(VGO)とは、ASTM D2887により測定した場合に約343℃〜約566℃(650°F〜1050°F)の公称常圧沸点範囲を有する留出物留分を意味する。減圧ガスオイルの通常の供給源は蒸留塔であるが、VGOの厳密な供給源は重要ではない。VGOは、CCR含有量および金属含有量が低い傾向にある。CCRは、標準試験方法ASTM D189によって決定される。1重量%超のCCRを有する炭化水素フィードには同様に、残油構成成分も含まれているかもしれない。熱分解装置への原料は、独立した炉によってかまたはFCCユニット自体への供給炉によって、熱分解装置内での反応温度まで加熱されてよい。
【0014】
熱変換
約0〜6重量%のCCRを有する炭化水素フィードは、まず最初に、熱変換ゾーン内で熱変換される。VGO留分は、CCRおよび金属が低い傾向にあり、炭化水素フィードが、かなりの量のVGO留分炭化水素を含む場合、熱変換ゾーンは、熱分解される典型的減圧残油フィードに比べて過度のコークス、発生ガス、トルエン不溶性物質または反応装置壁被着物の生成を制限しながら、より厳しい条件下で作動することができる。熱変換ゾーンが最大留出物生産を達成するための条件は、所望される生成物の性質によって変動する。一般に、熱変換ゾーンは、その中に望ましくない量のコークス、コークス前駆物質またはその他の望まれない炭素質被着物を発生させ被着させることなく、所望の生成物を最大限にするような温度および圧力で作動させられてよい。これらの条件は実験により決定され、一般に、熱変換ゾーン内の炭化水素フィードの温度および滞留時間の両方に応じて左右される過酷度として表現される。
【0015】
過酷度は、全体が参照により本明細書に援用されている特許文献4および特許文献5の中で等価反応時間(ERT)として記述されている。特許文献4で記述されている通り、ERTは、427℃という定温での秒単位の滞留時間として表現され、一次速度式を用いて計算される。特許文献4特許内のERT範囲は、427℃で250〜1500ERT秒、より好ましくは500〜800ERT秒である。特許権者により指摘されているように、温度の上昇は、作業がさらに厳しくなる原因となる。事実、427℃から456℃まで温度を上昇させると、過酷度は5倍に増加する。
【0016】
本発明において、(特許文献4で使用されている427℃に対比して)468℃での等価秒で表現された過酷度を決定するために、類似の方法が使用されている。本出願人らの方法においては、過酷度は468℃で25〜450等価秒の範囲内にある。本出願人らがCCRの低いフィードを使用していることから、本発明の方法は、減圧残油のビスブレーキングについて記述されたものよりも高い過酷度で作動可能である。本明細書で用いられた低いCCRの炭化水素フィードは、壁被着物およびコークスを形成させる傾向が低く、熱変換において生産される低品質ナフサの収量を最小限に抑える。
【0017】
所望の生成物に応じて、当業者は所望の生成物分布を達成するよう、温度、圧力、滞留時間およびフィード速度を含めた条件を制御するであろう。熱分解ユニットのタイプは変動してよい。ユニットを連続モードで動作させることが好ましい。
【0018】
精留
熱変換ゾーンからの熱分解生成物は、精留塔に導かれる。本発明の方法は、分割壁式精留塔を使用する。分割壁式精留塔は、例えば、特許文献1に記載されている。分割壁は、典型的な蒸留塔(精留塔)を2つの別個の蒸留ゾーンに分離する仕切りである。精留塔(蒸留塔)内で分離される生成物の特性は、一部には、蒸留塔内部の分割壁の高さにより左右される。精留塔への1つまたは複数の主フィード流は、分割壁の頂部の下にある場所で精留塔に入る。フィードは、分割壁のその側面によって形成された蒸留ゾーン(チャンバ)内で精留される。分割壁によって形成された別個のチャンバを含む蒸留塔自体は、沸点に基づき液体を分離するための公知の理論的プレートを有する複数の蒸留手段を有する。分割壁の頂部より高いところでは、蒸気および液体が蒸留塔の内部で混蔵されている。さまざまな混蔵生成物流が、オペレータの望むとおりに、蒸留塔のさまざまな高さのところから取出されてよい。C−炭化水素を含む軽質流を、蒸留塔の頂部で取出してよい。
【0019】
一実施形態において、別個に回収すべき熱分解および接触分解された1つまたは複数の生成物が高沸点(例えば343℃を超える沸点)のものである場合には、分割壁の高さは蒸留塔自体の高さに比べて低いものとなる。すなわち、分割壁の高さは精留塔自体の全体的有効高さの約25%〜50%となる。精留塔へのフィードは、分割壁の頂部より低い点で精留塔に入るか、または、精留塔内の分割壁のもう一方のチャンバ内に入り、重質生成物は分離されて精留塔の底面部分まで下降し得る。このようにして、分離された塔底残油の流れを得ることができる。分割壁の頂部より高い場所の生成物は、低沸点のものであり、混蔵される。
【0020】
別の実施形態において、分割壁の高さが蒸留塔の中央部分まで上昇した場合、例えば分割壁の高さが蒸留塔の全体的有効高さの約33%から約66%までとなった場合には、蒸留塔の内部で分割壁により形成された別個のチャンバを用いて、別個の熱分解および接触分解留出物生成物を回収することができる。留出物というのは、ディーゼル、灯油、ケロシンなどの沸点範囲を有する炭化水素を意味する。蒸留塔へのフィードはこうして、分割壁を用いて別個の留出物生成物の流れへと分離可能である。例えば、こうして、熱分解由来の比較的高セタン価留出物をFCCから得た比較的低いセタン価の留出物から隔離することができる。
【0021】
別の実施形態においては、分割壁の高さが蒸留塔の頂部近くまで上昇した場合、例えば分割壁の高さが蒸留塔の全体的有効高さの約75%から約95%までとなった場合には、分割壁により形成された別個のチャンバを用いて、別個の塔底残油生成物および留出物生成物のみならずナフサ流も回収することができる。ナフサとは、約15〜約210℃(59°F〜430°F)の範囲内の沸点を有する低沸点流を意味する。一実施形態においては、熱変換ゾーンから得られたナフサを接触分解されたナフサから隔離することができる。熱分解由来のナフサは、よりパラフィン系であり、さらにオレフィンへと処理でき、一方接触分解由来のナフサはより芳香族系でガソリンへ直接配合してよい。こうして、蒸留塔へのフィードを、別個のナフサ生成物ならびに別個の留出物および別個の塔底残油生成物へと分離することもできる。分割壁の頂部が蒸留塔の上部に充分な空間を含み、流れ(好ましくはナフサおよび軽質最終生成物を含むもの)を蒸留塔から取り出すことができるのが好ましい。
【0022】
FCC処理
一実施形態において、精留塔からの熱分解塔底残油生成物は、低沸点生成物への接触分解のためFCC反応装置に送られる。約343℃(650°F)より高い沸点をもつ熱分解生成物の留分が、望ましくない量の硫黄および/または窒素含有汚染物質を含む場合には、その留分を任意選択によりFCC反応装置に送る前に水素処理してよい。先に言及した通り、出発VGOを水素処理装置に送り、熱変換ユニット内での処理の前に硫黄および窒素の少なくとも一部分を除去し得るという選択肢もある。一実施形態においては、熱変換ゾーンから得られた343℃+の生成物留分の少なくとも一部分を、硫黄および/または窒素汚染物質の少なくとも一部分を除去するのに有効な条件下で水素処理用触媒と接触させて、水素処理済み留分を生成させる。本明細書において使用するのに適した水素処理用触媒は、少なくとも1つの第6族(第1〜18族を有するIUPAC周期表に基づく)の金属および少なくとも1つの第8〜10族の金属を含むものおよびその混合物である。好ましい金属としてはNi、W、Mo、Coおよびそれらの混合物が含まれる。これらの金属または金属混合物は、典型的には、耐火性金属酸化物担体上に酸化物または硫化物として存在する。金属混合物は同様に、バルク金属触媒としても存在してよく、ここで金属の量は、触媒に基づいて30重量%以上である。
【0023】
適切な金属酸化物担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアなどの酸化物、好ましくはアルミナが含まれる。好ましいアルミナは、ガンマまたはエータなどの多孔質アルミナである。金属酸化物担体の酸性度は、促進剤および/またはドーパントを添加することによって、または金属酸化物担体の性質を制御することによって、例えば、シリカ−アルミナ担体内に取込まれるシリカの量を制御することによって、制御可能である。促進剤および/またはドーパントの例としては、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、希土類酸化物およびマグネシアが含まれる。ハロゲンなどの促進剤は一般に、金属酸化物担体の酸性度を増大させ、一方イットリアまたはマグネシアなどの弱塩基性のドーパントは、このような担体の酸性度を減少させる傾向をもつ。
【0024】
バルク触媒が典型的に担体材料を含まない点、および金属が酸化物または硫化物として存在するのではなく金属そのものとして存在するという点を指摘しておくべきである。これらの触媒は典型的には、バルク触媒との関係において上述の範囲内に入る金属および少なくとも1つの押出し剤を含む。水素処理用担持触媒のための金属の量は、個別にまたは混合物の形で、触媒に基づいて0.5〜35重量%の範囲内である。第6族および第8族〜10族金属の好ましい混合物の場合、第8族〜10族金属は、触媒に基づいて0.5〜5重量%の量で存在し、第6族金属は、5〜30重量%の量で存在する。金属の量は、原子吸光分光法、誘導結合プラズマ原子発光分析または個々の金属についてASTMにより規定されたその他の方法によって測定されてよい。適当な市販の水素処理触媒の非限定的例としては、RT−721、KF−840、KF−848およびSentinel(商標)が含まれる。好ましい水素処理用触媒は、KF−848およびRT−721を含めた低酸性度で高い金属含有量の触媒である。
【0025】
好ましい実施形態において、熱分解塔底残油留分は、約280℃〜約400℃(536〜752°F)、より好ましくは約300℃〜約380℃(572〜716°F)の温度そして約1,480〜約20,786kPa(200〜3,000psig)、より好ましくは約2,859〜約13,891kPa(400〜2,000psig)の圧力での水素処理条件に付される。その他のより好ましい実施形態においては、水素処理ゾーン内の空間速度は、約0.1〜約10液空間速度(「LHSV」、無次元)、より好ましくは約0.1〜約5LHSVである。水素処理ゾーン内では、約89〜約1,780m/m(500〜10,000scf/B)、より好ましくは178〜890m/m(1,000〜5,000scf/B)の水素処理ガス速度を使用してよい。水素処理の後、水素処理された留分は、本発明のこの実施形態に係るさらなる処理のためFCC反応装置に送られる。
【0026】
従来のFCCプロセスには、ライザー反応器および再生器が含まれ、ここでは、流動化クラッキング触媒粒子床を有するライザー内の反応ゾーンの中に石油フィードが注入されている。触媒粒子は典型的にゼオライトを含み、新鮮な触媒粒子、触媒再生器からの触媒粒子、またはその何らかの組合せであってよい。不活性ガス、炭化水素蒸気、スチームまたはその何らかの組合せであってよい気体が、通常はリフトガスとして用いられ、高温触媒粒子の流動化を助ける。
【0027】
フィードと接触した触媒粒子は生成物蒸気およびストリッピング可能な炭化水素ならびにコークスを含有する触媒粒子を生成する。触媒は、使用済み触媒粒子として反応ゾーンを退出し、分離ゾーン内で反応装置廃液から分離される。使用済み触媒粒子を反応装置廃液から分離するための分離ゾーンは、サイクロンなどの分離デバイスを利用してよい。スチームなどのストリッピング剤を用いてストリッピング可能な炭化水素から使用済み触媒粒子をストリッピングする。ストリッピングされた触媒粒子はその後再生ゾーンに送られ、このゾーンの中で、残留するあらゆる炭化水素をストリッピングし、コークスを除去する。再生ゾーン内では、コーキングされた触媒粒子を、通常は空気である酸化媒体と接触させ、コークスを650〜760℃(1202〜1400°F)などの高温で酸化(燃焼)させる。再生された触媒粒子は次に反応器ライザーに戻される。
【0028】
FCC触媒は、シリカ−アルミナのように非晶質であるか、ゼオライトを含めた分子ふるいのように結晶質であるか、またはそれらの混合物であってよい。好ましい触媒粒子は(a)非晶質、多孔性固体酸性マトリックス例えばアルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ−希土類など、および(b)ゼオライト例えばフォージャサイトを含む。マトリックスは、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三元組成物を含むことができる。マトリックスは同様に、コゲルの形をしていてもよい。シリカ−アルミナは、マトリックスとして特に好ましく、約10〜40重量%のアルミナを含むことができる。促進剤も添加可能である。
【0029】
触媒ゼオライト構成成分は、ゼオライトYとイソ構造のゼオライトを含む。これらには、希土類水素および超安定(USY)形態などのイオン交換形態が含まれる。ゼオライトは、約0.1〜10ミクロン、好ましくは約0.3〜3ミクロンの微結晶サイズ範囲内にあってよい。触媒粒子内のゼオライト構成成分の量は一般に触媒の合計重量に基づいて、約1〜約60重量%、好ましくは約5〜約60重量%、そしてより好ましくは約10〜約50重量%の範囲内にある。論述した通り、触媒は典型的には、複合材料中に含まれた触媒粒子の形をしている。粒子の形をしている場合、触媒粒子のサイズは典型的には直径約10〜300ミクロンの範囲内にあり、平均粒径は約60ミクロンである。スチーム中での人工的失活後のマトリックス材料の表面積は、典型的には350m/g以下、より典型的には約50〜200m/g、そして最も典型的には約50〜100m/gである。触媒の表面積は、使用されるゼオライトおよびマトリックス構成成分のタイプおよび量などによって左右されるものの、通常は約500m/g未満、より典型的には約50〜300m/g、そして最も典型的には約100〜250m/gである。
【0030】
クラッキング触媒は同様に、約1〜約12の制約指数(これは特許文献6で定義づけされている)を有する中細孔ゼオライトの形をした添加触媒を含んでいてよい。適切な中細孔ゼオライトとしては、単独かまたは組合せた形のZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、SH−3およびMCM−22が含まれる。好ましくは、中細孔ゼオライトはZSM−5である。
【0031】
反応ゾーン内のFCCプロセス条件には、約482℃〜約740℃(900〜1364°F)の温度;約10〜約40psia(69〜276kPa)、好ましくは約20〜約35psia(138〜241kPa)の炭化水素分圧;そして触媒重量が触媒複合材料の合計重量である場合約3〜約10の触媒対フィード(wt/wt)比、が含まれる。反応ゾーン内の合計圧力は、好ましくはおよそ大気圧から約50psig(446kPa)である。必要というわけではないが、スチームを反応ゾーン内に原料と同時に導入することが好ましく、スチームは一次フィードの約50重量%以下、好ましくは約0.5〜約5重量%を構成する。同様に、反応ゾーン内の蒸気滞留時間は約20秒未満、好ましくは約0.1〜約20秒、そしてより好ましくは約1〜約5秒であることが好ましい。好ましい条件は、482〜621℃(900〜1150°F)のライザー出口温度、約0〜約50psig(101〜446kPa)の圧力そして約1秒〜約5秒の反応装置ライザー滞留時間を含めた短い接触時間条件である。
【0032】
異なるフィードが異なる分解条件を必要とし得るということは周知である。本発明の方法においては、炭化水素フィードから最大限の量の留出物を作ることが望まれる場合には、熱変換ゾーンは、過剰なコークスまたはコークス前駆物質の生産量を回避することと矛盾しない最高の温度で作動させられる。一実施形態において、熱分解生成物から分離された熱分解塔底残油留分の少なくとも一部分は、FCC反応装置に送られる。留出物の生産を最大限にすることが望まれる場合には、FCC触媒調合物はこのために最適化される。FCCユニット内のインジェクタの場所、具体的にはFCC反応装置ライザー内の場所も同様に生成物スレートに影響を及ぼすことも公知である。さらなる要因は、FCCライザー反応装置に対する異なるタイプのフィードの配合が存在するか否かである。
【0033】
プロセススキーム
本発明の実施形態はさらに本明細書中の図面により示されている。図1は、熱分解塔底残油および接触分解塔底残油生成物から、混蔵された熱分解および接触分解留出物を分離するためならびに混蔵された熱分解および接触分解ナフサを分離するために分割壁が用いられている本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。図1では、約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)を有する炭化水素フィード(10)が熱変換ゾーン(14)に導かれる。熱分解生成物(16)が熱変換ゾーン(14)から取出され、精留塔(18)に導かれる。この実施形態では、精留塔(18)は、精留塔(18)の底面から精留塔(18)の全有効高さの約25%〜約50%の高さまで上昇して別個のチャンバ(22)および(24)を形成する分割壁(20)を有している。精留塔(18)は、精留塔(18)の高さの大部分にわたって、別個のチャンバ(22)および(24)を含む蒸留デバイス(図示せず)を有している。これらの蒸留デバイスは、蒸気および液体が通過できるように穴が開いており、異なる沸点をもつ液体の蒸留ひいては分離を達成するための手段である。このような蒸留デバイスは、周知であり、精留塔において一般的である。
【0034】
図1をひき続き参照すると、熱分解塔底残油流(26)の少なくとも一部分は、FCC反応装置(30)の反応装置ライザー(28)に補給され、ここで流動触媒と接触し、低沸点生成物へと分解される。FCC生成物は、サイクロン(図示せず)中で触媒から分離され、分離された分解生成物(34)は精留塔(18)に導かれる。使用済み触媒(38)は再生器(36)に送られ、そこで、再生条件下で再生される。再生された触媒は触媒戻りライン(40)を通して反応装置ライザー(28)に戻される。精留塔(18)は、FCC反応装置(30)からの生成物ならびに熱変換ゾーン(14)からの生成物を、混蔵ナフサ、混蔵留出物および別個の熱分解塔底残油および接触分解塔底残油生成物へと分離する。混蔵ナフサ生成物(42)が、精留塔(18)から取出される。この実施形態において、混蔵ナフサ生成物(42)は好ましくは精留塔の塔頂からひき出され、この場合流れにはC/Cオレフィンを含めたC−炭化水素も含まれていてよく、このC−炭化水素をナフサ範囲の炭化水素からさらに分離することができる。混蔵ナフサ生成物(42)は製品(50)として回収されてよく、また任意選択により、混蔵ナフサ生成物流(52)の一部分を反応装置ライザー(28)に再循環させてもよい。混蔵留出物生成物(46)が精留塔から取り出され、接触分解塔底残油生成物(48)が精留塔から取り出される。追加の実施形態においては、反応装置ライザー(28)へのフィード流は、追加のFCC炭化水素フィード流(54)によって補完されてよい。
【0035】
図2は、熱分解塔底残油生成物および接触分解塔底残油生成物から、混蔵熱分解および接触分解ナフサ、熱留出物および接触分解留出物を分離するために分割壁が使用されている、本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。図2では、炭化水素フィードの約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)を有する炭化水素フィード(100)が熱変換ゾーン(104)に導かれている。熱分解生成物(106)が熱変換ゾーン(100)から取り出され、精留塔(108)に導かれる。精留塔(108)は、精留塔(108)の底面から精留塔(108)の全有効高さの約33%〜約66%の高さまで上昇し、こうして別個のチャンバ(112)および(114)を形成する分割壁(110)を有している。精留塔(108)は、精留塔の高さの大部分にわたって、別個のチャンバ(112)および(114)を含む複数の蒸留デバイス(図示せず)を有している。これらの蒸留デバイスは、蒸気および液体が通過できるように穴が開いており、異なる沸点をもつ液体の蒸留ひいては分離を達成するための手段である。熱分解塔底残油流(116)は、FCC反応装置(120)の反応装置ライザー(118)まで導かれ、ここで流動触媒と接触し、低沸点生成物へと分解される。FCC分解生成物は、サイクロン(図示せず)中で触媒から分離され、分離された分解生成物(124)は精留塔(108)に導かれる。FCC分解生成物は分割壁(110)の頂部より低いところにある点で精留塔(108)内に入る。使用済み触媒(128)は再生器(126)に送られ、そこで、再生条件下で再生される。再生された触媒は触媒戻りライン(130)を通して反応装置ライザー(118)に戻される。精留塔(108)は、FCC反応装置(120)からの生成物ならびに熱変換ゾーン(104)からの生成物を、熱分解および接触分解ナフサ(分割壁より上)、別個の熱分解留出物、別個の接触分解留出物、及び別個の接触分解塔底残油及び別個の熱分解塔底残油で構成された混蔵ナフサへと分離する。
【0036】
−炭化水素を含む精留塔塔頂生成物(132)が、精留塔(108)から取出される。混蔵ナフサ生成物(132)は、精留塔(108)から取出される。この実施形態において、混蔵ナフサ生成物(132)は、好ましくは精留塔の塔頂から引き出され、この場合流れにはC/Cオレフィンを含めたC−炭化水素も含まれていてよく、このC−炭化水素をナフサ範囲の炭化水素からさらに分離することができる。混蔵ナフサ生成物(132)は製品(142)として回収されてよく、また任意選択により、混蔵ナフサ生成物流(144)の一部分を反応装置ライザー(118)に再循環させてもよい。熱分解留出物生成物(136)および接触分解留出物生成物(138)が精留塔(108)から取り出される。FCC反応装置内の触媒がZSM−5を含む場合、混蔵ナフサ生成物(144)の少なくとも一部分を再循環させることによってC/Cオレフィンの生産を増強させてもよい。追加の実施形態においては、反応装置ライザー(118)へのフィード流を、追加のFCC炭化水素フィード流(146)によって補完してもよい。
【0037】
図3は、接触分解ナフサ、接触分解留出物および接触分解塔底残油生成物から、熱分解ナフサ、熱分解留出物、および熱分解塔底残油生成物を分離するために分割壁が使用されている、本発明の方法の一実施形態を示す流れ図である。図3では、炭化水素フィードの約0〜約6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)を有する炭化水素フィード(200)が熱変換ゾーン(204)に導かれる。熱分解生成物(206)が熱変換ゾーン(200)から取出され、精留塔(208)に導かれる。精留塔(208)は、精留塔(208)の底面から精留塔(208)の高さの約75%〜約95%の高さまで上昇し、こうして別個のチャンバ(212)および(214)を形成する分割壁(210)を有している。精留塔(208)は、精留塔の高さの大部分にわたって、別個のチャンバ(212)および(214)を含む複数の蒸留デバイス(図示せず)を有している。これらの蒸留デバイスは、蒸気および液体が通過できるように穴が開いており、異なる沸点をもつ液体の蒸留ひいては分離を達成するための手段である。熱分解塔底残油流(216)は、FCC反応装置(220)の反応装置ライザー(218)に補給され、ここで流動触媒と接触し、低沸点生成物に分解される。FCC分解生成物は、サイクロン(図示せず)中で触媒から分離され、分離された分解生成物(224)は精留塔(208)に導かれる。FCC分解生成物は、分割壁(210)の頂部より低いところにある点で精留塔(208)内に入る。使用済み触媒(228)は再生器(226)に送られ、そこで、再生条件下で再生される。再生された触媒は触媒戻りライン(230)を通して反応装置ライザー(218)に戻される。精留塔(208)は、FCC反応装置(220)からの生成物ならびに熱変換ゾーン(204)からの生成物を、別個の熱分解ナフサ、別個の接触分解ナフサ、別個の熱分解留出物、別個の接触分解留出物および別個の接触分解塔底残油および熱分解塔底残油で構成される混蔵ナフサへと分離する。
【0038】
好ましくは軽質接触ナフサ範囲の炭化水素ならびにC−炭化水素を含む精留塔塔頂生成物(232)が、精留塔(208)から取り出される。ここで「軽質接触ナフサ」という用語は、約15〜約95℃(59°F〜203°F)の範囲内の沸点を有する炭化水素流を意味する。熱分解ナフサ(234)が精留塔(208)から取り出される。熱分解ナフサ(234)は、熱分解ナフサ製品(250)として回収されてもよいし、あるいは任意選択により熱分解ナフサ(252)の一部分が反応装置ライザー(218)に再循環されてもよい。接触分解ナフサ(236)が精留塔(208)から取り出される。接触分解ナフサ(236)は、接触分解ナフサ製品(254)として回収されてもよいし、あるいは任意選択により接触分解ナフサ(256)の一部分が反応装置ライザー(218)に再循環されてもよい。ひき続き図3を参照すると、熱分解留出物生成物(238)および接触分解留出物生成物(240)が精留塔(208)から取り出される。FCC反応装置内の触媒がZSM−5を含む場合、ナフサ生成物(252)および/または(256)の少なくとも一部分を再循環させることによりC/Cオレフィンの生産を増強させてよい。追加の実施形態においては、反応装置ライザー(218)へのフィード流を、追加のFCC炭化水素フィード流(258)で補完してもよい。
【0039】
以下の実施例は、フィード流をまず熱分解しその後FCC内で熱分解生成物の少なくとも一部分を触媒により変換することによって、約0〜6重量%のCCRを有する炭化水素フィードを処理するための、本発明に係る改良型方法を例示しているが、本発明をいかなる形であれ限定するように意図されたものではない。
【実施例】
【0040】
熱分解収量を取上げそれらをFCC収量と組合せることによって、FCCのみおよび熱分解プラスFCCに対する比較を行った。これは、熱分解由来の重質留分収量を乗じて、熱塔底残油のFCC収量を正規化することによって行なわれる。正規化された塔底残油留出物、ガソリンおよびガスを次に、熱分解からの収量に加算して、組合せ熱およびFCC収量を得た。これらの組合せ収量と熱分解収量の関係は、同じ塔底残油変換で図4〜6に提示されている。試験されたVGOフィードは、標準バージンパラフィン系VGO、ナフテン系VGOおよび水素処理されたナフテン系VGOであった。実施例中の全てのデータは、本発明の方法を用いたナフサから留出物への明らかなシフトを示している。質量分光学的相関関係は、接触分解からよりも熱分解からの方がさらに高品質の留出物製品が得られるということを示している。熱分解留出物を接触分解ステップに先立って隔離し取出した場合、それを高品質のディーゼル燃料に配合することができる。しかしながら、本発明の熱分解および熱分解/接触分解留出物製品を組合せた場合、結果として得られるディーゼル生成物はなお、同じ塔底残油変換での典型的なFCC軽質サイクルオイルよりも高い品質を有する。
【0041】
実施例1(熱分解実験のための一般的手順)
この実施例では、熱分解の一般的方法が記されている。300ml入りオートクレーブにVGOフィードを投入し、窒素でフラッシングし、100℃(212°F)まで加熱する。容器を窒素で約670psig(4,619kPa)まで加圧し、mitey−mite圧力調節器を用いて圧力を維持する。この構成では、オートクレーブを通る気体流は全く存在しないが、圧力が設定圧力を上回った場合、一部の蒸気がオートクレーブから流出して、下流側の冷却されたノックアウト容器内に収集される。温度を目標レベルまで上昇させ、目標時間中撹拌しながらフィードをその温度に保つ。容器を冷却し、圧力を低下させ、その後窒素で30分間パージして、形成した343℃−(650°F)生成物を全て除去する。これらの軽質液体を、オートクレーブの下流側にある0℃(32°F)まで冷却したノックアウト容器内に収集する。オートクレーブ内に残ったオイルを約150℃(302°F)まで冷却し、#42の紙を通してろ過して、形成しているかもしれない固体を全て収集し定量する。フィルタ上で収集したあらゆる固体を、ろ過物が無色となるまでトルエンで洗浄した。
【0042】
実施例2
VGOの熱処理のため、実施例1で概略的に説明した手順に従った。300ml入りのオートクレーブにVGOフィード130.0gを加え、オートクレーブを密閉し、窒素でフラッシングし、100℃(212°F)まで加熱した。窒素を加えて670psig(4,619kPa)の圧力を保持した。オートクレーブを410℃(770°F)まで加熱し、95分間この温度に維持した。これは468℃(875°F)で250等価秒の過酷度である。これは427℃(800°F)で2190等価秒の過酷度に相当する。
【0043】
実施例1の手順に従い、33.5gの軽質343℃−(650°F)液体をノックアウト容器内に収集し、ろ過の後90.0gの343℃+(650°F)液体を収集し、6.5gの気体を(差異によって)測定した。およそ61wppmのトルエン不溶性物質を収集した。液体は、表1に示されている特性を有していた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例3(流動式接触分解実験の一般的手順)
この例では、FCC試験の一般的方法が記されている。規範事例のFCCシミュレーションを、固定床反応装置を備えたKayser Associates社製のP−ACE反応装置の中で実施した。ACE試験開始に先立ち、ACEフィードシステムをトルエンでフラッシングして、システムの汚染を最小限にした。2オンス入りボトル内にフィードを注ぎ、ACEフィード予熱器内に入れてフィードを指定の予熱温度にする。ひとたび指定温度になった時点で、フィードポンプを較正して、計画したフィード注入速度に応じて適量のフィードが反応装置内に確実に注入されるようにする。確立した手順にしたがって、選択されたFCC触媒をユニット内に投入する。ひとたび触媒が投入されたならば、ACEユニットの作動を開始させる。各々の触媒を投入した結果、一日の流れの中で6回の別個の実験が順次実施される。1回の実施の間、選択された触媒/油比およびフィード速度に応じて、指定の反応時間中、流動床内にフィードを注入する。液体生成物の各々を、−5°F(20.5℃)に維持した6本のノックアウトフラスコの1本に収集する。気体(C6−)生成物をガスクロマトグラフィによって直接分析し、液体生成物を別々に秤量し、シミュレートした蒸留により分析する。触媒上のコークスを現場で燃焼させ、オンラインCO分析器で定量する。液体および気体の分析結果を次にまとめ、分析して最終報告書を作製する。
【0046】
実施例4
実施例2において調製され記述された343℃(650°F)の液体をACE試験に付して、出発VGOフィードとの関係においてFCCに対するその反応度を比較した。実施条件は以下の通りであった:フィード速度=1.33g/分(@150°F/66℃)、および触媒/油比3.0、5.0および7.0。524℃(975°F)および554℃(1030°F)の2種類の温度を調査した。使用した触媒は、平衡FCC触媒を代表するe−catであった。代表的データのまとめ(合計実施4回)を下表に示す。データは、接触分解単独で得られた結果に対する熱分解および接触分解の組合せプロセスにより得られた結果の比較を強調するために対で示されている。組合せ型熱処理の実施は、熱処理中に生成された液体および気体生成物を含み入れるため、再正規化された。結果は表2に示されている。
【0047】
【表2】

【0048】
図4は、本発明の熱処理および接触分解されたパラフィン系VGOと触媒処理のみのパラフィン系VGOからの結果の比較を示す。図4では、濃い方の曲線(実線および塗りつぶしたデータ点)は、本発明の方法から結果として得られたナフサおよび留出物収量を示す。薄い方の曲線(破線および塗りつぶさないデータ点)は、接触分解処理単独から結果として得られたナフサおよび留出物を示す。図4を見ればわかるように、本発明由来のナフサ収量は著しく減少し、本発明由来の留出物収量は著しく増大し、その結果、本発明の方法に基づく留出物生産は著しく改善された。同様に、図4では示されていないものの、コークス塔底残油およびC−の収量は、2つの方法間で大きく異なっていなかった。
【0049】
実施例5
ナフテン系VGOを、実施例1〜4で記述した通りに処理した。
【0050】
図5は、本発明の熱処理および接触分解されたナフテン系VGOと触媒処理のみのナフテン系VGOからの結果の比較を示す。図5では、濃い方の曲線(実線および塗りつぶしたデータ点)は、本発明の方法から結果として得られたナフサおよび留出物収量を示す。薄い方の曲線(破線および塗りつぶさないデータ点)は、接触分解処理単独からの結果として得られたナフサおよび留出物を示す。図5を見ればわかるように、本発明からのナフサ収量は著しく減少し、本発明からの留出物収量は著しく増大し、その結果、本発明の方法由来の留出物生産は著しく改善された。同様に、図5では示されていないものの、コークス塔底残油およびC−の収量は、2つの方法間で大きく異なっていなかった。
【0051】
実施例6
この実施例では、実施例5のナフテン系VGOを標準的水素化脱硫条件下で水素処理し、水素処理由来の生成物VGOを実施例1〜4と同様に処理した。
【0052】
図6は、本発明の熱処理および接触分解された水素処理済みナフテン系VGOと接触分解のみの水素処理済みナフテン系VGOからの結果の比較を示す。図6では、濃い方の曲線(実線および塗りつぶしたデータ点)は、本発明の方法から結果として得られたナフサおよび留出物収量を示す。薄い方の曲線(破線および塗りつぶさないデータ点)は、(先行する水素処理を伴う)接触分解処理単独から結果として得られたナフサおよび留出物収量を示す。図6を見ればわかるように、本発明からのナフサ収量は著しく減少し、本発明からの留出物収量は著しく増大し、その結果、本発明の方法由来の留出物生産は著しく改善されたものであった。同様に、図6では示されていないものの、コークス塔底残油およびC−の収量は、2つの方法間で大きく異なっていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法であって、
a)熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の前記炭化水素フィードを処理するステップと;
b)分割壁を有する精留塔に前記熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c)熱分解塔底残油を分離するために前記精留塔の前記分割壁部分を用いるステップと;
d)前記熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e)接触分解生成物を生産するために有効な流動式接触分解条件下で前記熱分解塔底残油を触媒により変換するステップと;
f)前記接触分解生成物を前記分割壁の最上部分より低い点で前記精留塔に導き、前記接触分解生成物の一部分を熱分解留出物および熱分解ナフサと共に混蔵するステップと;
g)前記精留塔からの混蔵ナフサ、混蔵留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、
前記精留塔の前記分割壁部分を使用して、前記接触分解塔底残油が熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法。
【請求項2】
炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法であって、
a)熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の前記炭化水素フィードを処理するステップと;
b)分割壁を有する精留塔に前記熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c)熱分解塔底残油を分離するために前記精留塔の前記分割壁部分を用いるステップと;
d)前記熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e)接触分解生成物を生産するために有効な流動式接触分解条件下で前記熱分解塔底残油を触媒により変換するステップと;
f)前記接触分解生成物を前記分割壁の最上部分より低い点で前記精留塔に導き、前記接触分解生成物の一部分を熱分解ナフサと共に混蔵するステップと;
g)前記精留塔からの混蔵ナフサ、熱分解留出物、接触分解留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、
前記精留塔の前記分割壁部分を使用して、前記熱分解留出物が前記接触分解留出物から隔離され、かつ前記接触分解塔底残油が前記熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法。
【請求項3】
炭化水素フィードに基づいて0〜6重量%のコンラドソン残留炭素(「CCR」)含有量を有する炭化水素フィードを変換するための熱および触媒による変換方法であって、
a)熱分解生成物を生産するために有効熱変換条件下で熱変換ゾーン内の前記炭化水素フィードを処理するステップと;
b)分割壁を有する精留塔に前記熱分解生成物の少なくとも一部分を導くステップと;
c)熱分解塔底残油を分離するために前記精留塔の前記分割壁部分を用いるステップと;
d)前記熱分解塔底残油の少なくとも一部分を流動式接触分解反応装置まで導くステップと;
e)接触分解生成物を生産するために有効な流動式接触分解条件下で前記熱分解塔底残油を触媒により変換するステップと;
f)前記分割壁の最上部分より低い点で前記精留塔に前記接触分解生成物を導くステップと;
g)前記精留塔からの熱分解ナフサ、接触分解ナフサ、熱分解留出物、接触分解留出物および接触分解塔底残油を分離するステップと;
を含み、
前記精留塔の前記分割壁部分を使用して、前記熱分解ナフサが前記接触分解ナフサから隔離され、前記熱分解留出物が前記接触分解留出物から隔離され、かつ前記接触分解塔底残油が前記熱分解塔底残油から隔離されることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記炭化水素フィードが減圧ガスオイルで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記混蔵ナフサの少なくとも一部分が前記流動式接触分解反応装置まで再循環されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混蔵ナフサの少なくとも一部分が前記流動式接触分解反応装置まで再循環されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解ナフサの少なくとも一部分が前記流動式接触分解反応装置まで再循環されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記接触分解ナフサの少なくとも一部分が前記流動式接触分解反応装置まで再循環されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記流動式接触分解反応装置がZSM−5で構成された触媒を収容していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記減圧ガスオイルの少なくとも一部分が水素処理されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記熱分解塔底残油の少なくとも一部分が、前記流動式接触分解反応装置に導かれる前に水素処理されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱変換器が、468℃で25〜450等価秒の範囲内の過酷度で作動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−529114(P2011−529114A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520043(P2011−520043)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004294
【国際公開番号】WO2010/011334
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】