説明

分化万能性状態への細胞の再プログラミング

本発明は、再プログラムされた細胞を調製する方法、特に分化万能性及び分化多能性幹細胞を調製する方法、並びに該方法によって調製される分化万能性及び分化多能性幹細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再プログラムされた細胞の調製方法、特に分化万能性(pluripotent)及び分化多能性(multipotent)幹細胞の調製方法、並びに該方法によって調製された分化万能性及び分化多能性幹細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
老化(一生の間in vivoで又は増殖(scale up)中in vitroで)は、細胞、特に幹細胞に影響を及ぼす。例えば、老化した細胞は、アポトーシス速度の上昇、分化及び増殖能の低下、並びに治療有効性の低下を示す。老化の間、幹細胞は、より柔軟性がなく、より増殖性がない形態へと分化することが多い。細胞の老化は、特に、高齢の患者/ドナー由来の細胞を細胞培養のための開始材料として使用する場合、in vitroで細胞を増殖させる場合、並びに治療又は研究のために限られた分化能を有する細胞を使用する場合に問題を呈する。
【0003】
老化した細胞を脱分化させる1つのアプローチは、いわゆる誘導多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell、IPS)を作製することである。現在の最先端技術は、転写因子のウイルス導入を用いて、細胞における分化能の上昇を誘導し、それらを活性化させることを想定する。しかし、これは、ウイルス導入が細胞のゲノムを永久的に変化させ、細胞ゲノム中に残ったウイルスの一部のために合併症をもたらす可能性もあることから、潜在的に危険である。さらに、ウイルスのゲノムへの組込みは、細胞のガンのリスクを上昇させることが知られている。基本的に、同じことが細胞を再プログラミングするためのプラスミドの使用に当てはまる(Okitaら, 2008, Science. 2008 Nov 7;322(5903):949-53. Generation of mouse induced pluripotent stem cells without viral vectors)。
【0004】
別のアプローチは、再プログラムされる細胞を、細胞を再プログラムするためのヒト胚性幹細胞の抽出物と接触させることを利用する。しかし、このアプローチは、倫理的かつ実用的に問題がある。
【0005】
一部の他のアプローチは、細胞を脱分化させる化学的因子を使用するが(例えばUS 2007/0254884 A1、US 2007/0020759 A1)、これらの因子は、それら自体では細胞を分化万能性状態へと完全に再プログラムするのに有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 2007/0254884 A1
【特許文献2】US 2007/0020759 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Okitaら, 2008, Science. 2008 Nov 7;322(5903):949-53.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の根底にある技術的課題は、細胞を再プログラムする、特に細胞を脱分化させるための改良法を提供することであり、それにより上述の欠点を克服し、特に容易で高効率かつ安全な方法で、好ましくは分化多能性、もっとも好ましくは分化万能性の幹細胞特性を示す、再プログラムされた、特に脱分化した細胞の提供を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の方法のステップ、a)再プログラムされる細胞を提供するステップ;b)ステップa)で提供された細胞へ細胞を再プログラムすることができるmRNA分子を導入、好ましくはトランスフェクトするステップであって、再プログラミングmRNA分子は、Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をコードする、前記ステップ;並びに、c)ステップb)で得られた細胞を、細胞培養培地中でかつ導入された、好ましくはトランスフェクトされた再プログラミングmRNA分子の翻訳を可能にするのに適した条件下で培養し、再プログラムされた細胞を得るステップ、を好ましくは所定の順番で含む、再プログラムされた細胞をin vitroで調製する方法を提供することによって技術的課題を解決する。好ましい実施形態において、本発明の再プログラミングmRNA分子は、Ronin、Oct4、Kef4、Sox2及びTERTからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質をコードしている。
【0010】
従って、本発明は、細胞のゲノムを永久的に変化させる必要なく、かつ細胞に転写因子などを導入させるウイルスを使用する必要なく、再プログラムされた細胞を調製することができる方法を想定する。本発明はまた、細胞を再プログラミングすることに関して、これまでのところ、ヒト胚性幹細胞の抽出物又は費用のかかり潜在的に危険な化学的因子を必要としない点で有利である。従って、倫理的な問題、遺伝的安定性の問題及びガンのリスクは、低減されているか又は回避されてさえいる。一方、本発明は、以降「再プログラミングmRNA分子」と称される特異的mRNA分子を細胞に導入する、好ましくはトランスフェクトするための有利な教示を提供し、ここで、これらの再プログラミングmRNA分子は、mRNA受容細胞、好ましくはそれでトランスフェクトされた細胞を脱分化状態へ再プログラムすることができる。有利には、本発明において導入された、好ましくはトランスフェクトされたmRNA分子は、受容側のゲノムに組み込まれず、従ってガン又は遺伝的不安定性のリスクをもたらさない。従って、本発明は、クローニング増幅又はmRNA受容細胞の増殖を含まない、1つ以上の再プログラムされた細胞をin vitroで調製する方法を想定する。本発明はまた、生きている器官、生きている生物又は動物、特に哺乳動物中で、1つ以上の再プログラムされた細胞をin vivoで調製する方法を想定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】再プログラミング前後のヒト線維芽細胞におけるrex1、nanog及びoct4のプロモーターメチル化(図1A:Rex;図1AB:Nanog;図1C:Oct4)。CpGアイランドを四角で表す。黒い四角はメチル化CpGアイランドを表し、白い四角は非メチル化CpGアイランドを表す。全ての試料は若い男性ドナーの初代線維芽細胞である。
【図2】amaxaエレクトロポレーション(klf4、sox2、oct4)後の蛍光及び形態:ヒト初代線維芽細胞に、1因子あたり0.6μg/μlのmRNA、及びトランスフェクション効率を可視化するための0.2μg/μlのGFP mRNAをトランスフェクトした。上の図は蛍光写真であり、下の図は2日後の細胞の形態を示す。
【図3】Fugeneトランスフェクション(klf4、sox2、oct4)後の蛍光及び形態:ヒト初代線維芽細胞に、1因子あたり0.6μg/μlのmRNA、及びトランスフェクション効率を可視化するための0.2μg/μlのGFP mRNAをトランスフェクトした。上の図は蛍光写真であり、下の図は7日後の細胞の形態を示す。
【図4】Oct4についてのRT-PCR: L: 20bpラダー(Fermentas); 1: hOct4 低酸素圧 因子1xトランスフェクト; 2: hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト; 3: hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル; 4: hOct4 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル; 7: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル + MG-132; 1a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 2a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 3a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 4a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 5a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 6a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 7a: DNAse消化後のhOct4 RNA; 8: Oct4陰性対照。
【図5】Oct4についてのRT-PCR: L: 20bpラダー(Fermentas); 1: hOct4 低酸素圧 因子1xトランスフェクト(ヒト線維芽細胞); 2: hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞); 3: hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞及び化学的再プログラミングカクテル); 4: hOct4 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル; 7: hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル + MG-132; 8: hOct4陽性対照(hKlf4を有するプラスミド); 9: hOct4陰性対照(水)。
【図6】hOct4及びGAPDHについてのRT-PCR: 1 hOct4 低酸素圧 因子1xトランスフェクト; 2 hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト; 3 hOct4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル; 4 hOct4 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5 hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6 hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル; 7 hOct4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル + MG-132; 1a DNase消化後のhOct4 RNA; 2a DNase消化後のhOct4 RNA; 3a DNase消化後のhOct4 RNA; 4a DNase消化後のhOct4 RNA; 5a DNase消化後のhOct4 RNA; 6a DNase消化後のhOct4 RNA; 7a DNase消化後のhOct4 RNA; 8a Oct4陰性対照; 1b GAPDH 低酸素圧 因子1xトランスフェクト; 2b GAPDH 低酸素圧 因子6xトランスフェクト; 3b GAPDH 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル; 4b GAPDH 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5b GAPDH 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6b GAPDH 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル; 7b GAPDH 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + 化学的カクテル + MG-132; 8b GAPDH陰性対照。
【図7】hKlf4及びhNanogについてのRT-PCR: L: 20bpラダー(Fermentas); 1a: hKlf4 低酸素圧 因子1xトランスフェクト(ヒト線維芽細胞); 2a: hKlf4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞); 3a: hKlf4 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞 + 化学的再プログラミングカクテル); 4a: hKlf4 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5a: hKlf4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6a: hKlf4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル; 7a: hKlf4 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル + MG-132; 8a: hKlf4陽性対照(hKlf4を有するプラスミド); 9a: hKlf4陰性対照(水); 1b: hNanog 低酸素圧 因子1xトランスフェクト(ヒト線維芽細胞); 2b: hNanog 低酸素圧 因子6xトランスフェクト(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞); 3b: hNanog 低酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル(mRNAをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞 + 化学的再プログラミングカクテル); 4b: hNanog 正常酸素圧 因子1xトランスフェクト; 5b: hNanog 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト; 6b: hNanog 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル; 7b: hNanog 正常酸素圧 因子6xトランスフェクト + カクテル + MG-132; 8b: hNanog陽性対照(hNanogを有するプラスミド); 10: hNanog陰性対照(水)。
【図8】oct4、sox2及びklf4についてRNA BioAnalyzer Analysis(Agilentナノチップ; Agilent Technologies)による結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「再プログラミング」という用語は、好ましくは、再構築すること、特にDNAメチル化、ヒストンメチル化などの細胞のエピジェネティックマーカーを削除及び/又は再構築すること、あるいはoct4に関する転写因子シグナル系を誘導すること、によって遺伝子を活性化することを意味する。特に、本発明の再プログラミングは、少なくとも1つの脱分化した及び/又は活性化した(rejuvenated)細胞を提供し、特に、分化多能性、特に分化万能性幹細胞の特徴を有する細胞を提供する。従って、再プログラムされる細胞が分化多能性又は分化万能性特性を既に有する細胞である場合、本発明は、本発明の再プログラミングによってこれらの細胞を長期間にわたって分化多能性又は分化万能性状態に維持することができる。再プログラムされる細胞が老化又は分化状態にある場合、本発明は、分化多能性又は分化万能性幹細胞への脱分化を可能にする。特に好ましい実施形態において、分化多能性細胞は、分化万能性細胞になるように再プログラムされてよい。
【0013】
特に、「再プログラムされた細胞」という用語は、より高度な分化及び/又は増殖能を有するように改変されている細胞を指す。また、好ましい実施形態において、分化した体細胞の分化多能性幹細胞又は「若い」分化した細胞への再プログラミングは、再プログラミングと称され、生成物は再プログラムされた細胞と称される。
【0014】
特に、本方法は、好ましくは高いテロメラーゼ活性、複数の分化多能性、好ましくは分化万能性マーカー及び増殖因子の分泌の増加を示す、未成熟幹細胞を富化することを可能にする。本発明は、老化した幹細胞をより長期間にわたりかつより高い幹細胞収率で増殖させることができるという利点を提供する。さらに、本方法によって再プログラムされた細胞から作製又は由来した幹細胞株及び組織工学によって作製されたコンストラクトドラフト(construct draft)は、特に患者自らの細胞を再プログラミングのための供給源として使用する場合に、最小免疫学的リスクの低下を示す。従って、本発明は、特に分化万能性幹細胞を調製する手段及び方法、分化多能性幹細胞を提供する手段及び方法、in vitroでの細胞又は幹細胞の増殖の増加のための手段及び方法、並びに組織工学又は細胞治療のための老化した細胞又は老化した幹細胞の活性化のための手段及び方法を提供する。
【0015】
特に、本発明は、好ましくは第一のステップにおいて、再プログラムされる細胞を提供することを想定する。好ましくは、再プログラムされる細胞は、成体、新生児又は胚の分化した細胞であってよいが、それらに限定されない。好ましくは、再プログラムされる細胞は、成体又は新生児の未分化細胞である。これらの細胞全ては、好ましい実施形態において、細胞株、不死化細胞、細胞培養中に保持される細胞、単離された細胞集団、好ましくはドナー(生きている若しくは死んだドナー)から単離された細胞、又は環境から単離された細胞であってよい。本発明において再プログラムすることができる細胞種は、潜在的には全細胞種であり、好ましい例では、線維芽細胞、肝細胞、心臓細胞、心筋細胞、神経細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、筋芽細胞、肝芽細胞(hepatoblast)、肝幹細胞、インスリン産生細胞、神経幹細胞、心筋原細胞(cardiomyogenic cell)、皮膚細胞(dermatocyte)、角化細胞、膵臓細胞、単球、上皮細胞又は間葉系幹細胞(MSC)である。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞であってよく、特にヒト細胞又は動物細胞、好ましくはヒツジ、ウマ、サル又は特にげっ歯類細胞、好ましくはハムスター細胞、マウス細胞若しくはラット細胞であってよい。細胞は魚類、爬虫類、鳥類、両生類又は昆虫細胞であってもよい。好ましくは、再プログラムされる細胞は、系譜確定細胞(lineage-committed cell)である。さらに好ましい実施形態において、細胞、特に上述の起源の細胞は、幹細胞、特に生後(post-natal)幹細胞又は非胚性幹細胞である。
【0016】
間葉系幹細胞などの適切で好ましい幹細胞源は、場合により他の細胞種とともに、本発明において使用するための幹細胞を含むヒト又は動物体内の組織である。好ましくは、好適な幹細胞源は、骨髄(成体及び胎児の両方)、サイトカイン又は化学療法によって動員された(mobilized)末梢血、胎児肝臓、臍帯血、胚の卵黄嚢及び脾臓(成体及び胎児の両方)であり、より好ましくは、幹細胞源は成体骨髄又は臍帯血であり、最も好ましくは、幹細胞源は骨髄である。骨髄細胞は、腸骨、胸骨、脛骨、大腿骨、背骨又は他の骨空洞を含むがそれらに限定されない、あらゆる既知の供給源から得てもよい。好ましくは、幹細胞は哺乳動物体、例えばヒト、マウス又はラットから単離され、並びにより好ましくは、幹細胞は人体から単離される。
【0017】
「単離された細胞集団」という用語は、細胞が、哺乳動物の体内又は哺乳動物から直接、すなわち精製又は富化ステップなしに得られる組織試料中で通常は接触している他の細胞と接触していないことを意味することを意図する。本発明における「細胞集団」は、例えば表面マーカーの特異的組み合わせの発現によって定義されるように線維芽細胞又は間葉系幹細胞などの1つの細胞種の細胞だけではなく、表面マーカーの様々な組み合わせを示す様々な細胞種の混合物をも含んでよい。
【0018】
前記供給源から採取した細胞は、トランスフェクションに直接使用してよく、又は約−196℃〜約−130℃の温度で凍結することによって凍結保存してもよい。
【0019】
再プログラムされる細胞は、本発明では、第二のステップにおいて、RoninをコードするmRNA分子、Oct4をコードするmRNA分子、Klf4をコードするmRNA分子、Sox2をコードするmRNA分子、NanogをコードするmRNA分子及びTERTをコードするmRNA分子の群から選択される少なくとも1種の再プログラミングmRNA分子、特に直鎖かつ単離されたmRNA分子を受容する。Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTは、細胞を再プログラムする能力を有するタンパク質である。本発明において、これらのタンパク質は、「再プログラミングタンパク質」と称され、標的細胞を再プログラムする能力を特徴とし、従って、細胞運命の決定、特に、好ましくは転写因子であることによって、標的細胞を脱分化させる及び/又は細胞を脱分化状態に維持する能力に関する制御機能を特徴とする。
【0020】
細胞の分化様式及び分化状態は以下に記載される方法に従って検出することができる。しかし、当業者に知られている細胞の分化状態又は分化能を決定するいずれの方法も同様に利用できる。
【0021】
好ましい実施形態において、再プログラムされる細胞は、本発明における1種以上の再プログラミングmRNA分子をトランスフェクトされる。別の好ましい実施形態において、再プログラムされる細胞は、本発明における1種以上の再プログラミングmRNA分子を補充される。別の好ましい実施形態において、再プログラムされる細胞は、本発明における1種以上の再プログラミングmRNA分子を注入される。
【0022】
従って、本発明は、Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog又はTERTをコードする1種以上のmRNA分子の使用を想定する。これらのmRNA分子は、好ましい実施形態において、野生型哺乳動物、特にヒト、動物、好ましくはげっ歯類、より好ましくはマウス、ハムスター又はラットあるいはいずれかの他の動物のヌクレオチド配列を有する分子とすることができる。本発明の好ましい実施形態において、再プログラミングmRNA分子は、配列番号1〜16に示されるDNA配列の1つによってコードされるmRNAヌクレオチド配列からなる群より選択される。
【0023】
もちろん、本発明は、上記ポリヌクレオチド配列に対する機能的等価体である配列を有するmRNA分子の使用も想定する。本発明において、機能的等価体は、配列番号1〜16のいずれか1つによってコードされるmRNA配列と全く同じタンパク質を異なるヌクレオチド配列でコードするヌクレオチド配列分子であるか、あるいは異なるアミノ酸配列であるが同じ若しくは類似の機能を有するタンパク質をコードする、特に本発明に従って細胞を再プログラムすることができるmRNA配列であるヌクレオチド配列分子である。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態において、mRNA分子の機能的等価体は、配列番号1〜16のいずれか1つのDNA配列によってコードされる野生型mRNAポリヌクレオチドと相同な配列を有するポリヌクレオチドである。本発明の好ましい実施形態において、相同性の程度又はパーセンテージは、少なくとも50、60、70、80、90、95、99又は100%である。さらに好ましい実施形態において、配列番号1〜16のいずれか1つに示されるmRNA分子の機能的等価体は、配列番号1〜16のいずれか1つの配列に対して、又はその相補的な配列、好ましくは実質的に相補的な配列に対して実質的に相補的なDNA配列によってコードされるmRNA配列である。さらに好ましい実施形態において、配列番号1〜16のDNA配列のいずれか1つによってコードされるmRNA分子の機能的等価体は、配列番号1〜16に示されるポリヌクレオチドのいずれか1つと、又はその相補的な配列、好ましくは実質的に相補的な配列と、ストリンジェントな又は低ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNA配列によってコードされるmRNA分子である。
【0025】
本発明において、「mRNA分子」という用語は、一本鎖であり、かつタンパク質合成の鋳型として機能するリボヌクレオチド分子の直鎖ポリマーを指すことを意図するものである。
【0026】
ポリヌクレオチドは、2つの配列におけるヌクレオチドの配列が、本明細書に記載されるように、最大一致のために整列したときに同じである場合に、「相同な」配列を有する。2つ以上のポリヌクレオチド間の配列比較は、一般に、配列類似性の局所領域を同定し比較するための比較ウィンドウにわたって2つの配列の部分を比較することによって行う。比較ウィンドウは、一般に、約20〜200個の連続するヌクレオチドである。
【0027】
ポリヌクレオチドについての「配列相同性のパーセンテージ」は、本明細書に50、60、70、80、90、95、98、99又は100%の配列相同性であると記載されているが、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定してよく、ここで比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわちギャップ)を含んでよい。パーセンテージは、(a)両配列において同一の核酸塩基が生じる位置数を決定し、一致した位置数を得て、(b)一致した位置数を比較ウィンドウ中の総位置数で割り、(c)結果に100を掛けて配列相同性のパーセンテージを得ることによって、計算する。
【0028】
比較のための配列の最適な整列は、既知のアルゴリズムのコンピューターによる実施によって、又は目視(inspection)によって行い得る。容易に利用できる配列比較及び複数配列整列のアルゴリズムは、それぞれ、ともにインターネット上で利用できる、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)プログラム(Altschul, S.F.ら 1990. J. Mol. Biol. 215:403; Altschul, S.F.ら 1997. Nucleic Acid Res. 25:3389-3402)及びClustalWプログラムである。他の好適なプログラムとしては、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group (GCG), Madison, WI, USA)の中のGAP、BESTFIT及びFASTAが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「実質的に相補的」とは、対象の2つの核酸配列が、互いに少なくとも約 65%、好ましくは約70%、より好ましくは約80%、さらにより好ましくは90%、、最も好ましくは約98%の配列相補性を有することを意味する。このことは、機能的等価体をコードするDNA配列及び配列番号1〜16のいずれかに与えられるポリヌクレオチド又はその相補体が、好ましい実施形態において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするのに十分な相補性を示さなければならないことを意味する。実質的に相補的な配列は、好ましくは、結合をもたらすのに十分な、対象のヌクレオチド配列に対する配列相補性を有する配列である。
【0030】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわちヌクレオチド及び重合のための物質、例えばDNAポリメラーゼの存在下並びに適切な温度及びpHにおいて、増幅標的にアニーリングし、DNAポリメラーゼの結合を可能にし、それによってDNA合成の開始点として機能する能力を有するオリゴヌクレオチドを指す。(増幅)プライマーは、好ましくは、増幅における最大効率のため一本鎖である。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合のための物質の存在下、伸長産物の合成を開始するのに十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは温度及びプライマーの供給源をはじめとする多くの要因に依存する。
【0031】
本明細書で使用される「二方向性プライマー対」は、PCR増幅などのDNA増幅の技術において一般に使用される1つのフォワードプライマー及び1つのリバースプライマーを指す。
【0032】
「ストリンジェンシー」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、ハイブリッドの安定性に影響を及ぼすハイブリダイゼーション条件、例えば温度、塩濃度、pH、ホルムアミド濃度などを指す。これらの条件は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの標的核酸配列への特異的結合を最大化し、非特異的結合を最小化するように経験的に最適化される。使用されるこれらの用語には、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが標的配列に、他の配列より検出可能なほどより強く(例えば少なくともバックグラウンドに対して2倍)ハイブリダイズする条件への言及が含まれる。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況において異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。
【0033】
一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHにおける特定の配列に対する熱融点(thermal melting point)(Tm)よりも約5℃(摂氏度)低く選択される。Tmは、50%の相補的標的配列が、完全に一致したオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度(規定のイオン強度及びpH下での)である。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0M Na<+>イオン未満、典型的には約0.01〜1.0M Na<+>イオン濃度(又は他の塩)であり、温度が短いプローブ又はプライマー(例えば10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、長いプローブ又はプライマー(例えば50ヌクレオチド超)について少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、不安定化剤、例えばホルムアミドの添加によって達成してもよい。
【0034】
例となる低ストリンジェント条件又は「ストリンジェンシーが低い条件」としては、37℃における30%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液でのハイブリダイゼーション、及び40℃における2x SSC中の洗浄がある。例となる高ストリンジェンシー条件としては、37℃における50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、及び60℃における0.1x SSC中の洗浄がある。ハイブリダイゼーション法は、当技術分野で周知であり、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc., 1994に記載されている。
【0035】
従って、本発明は、細胞に特異的再プログラミングmRNA分子を導入する、好ましくはトランスフェクトすることを想定し、一度細胞に導入された、好ましくはトランスフェクトされたmRNA分子はいわゆる再プログラミングタンパク質に翻訳されることができ、このタンパク質は、細胞中で特異的遺伝子を、特に細胞中で分化多能性及び/又は分化万能性遺伝子を刺激することができる。本発明において使用されるmRNA分子は、好ましくはポリA尾部を有する直鎖状分子であり、最も好ましくはin vitro転写によって作製される。従って、好ましい実施形態において、mRNA分子は、特に細菌の系を用いたin vitro転写によって作製される。特に好ましい実施形態において、再プログラミングタンパク質のDNA配列は、プラスミドにクローン化され、細菌、例えば大腸菌(E. coli)中で増幅される。さらに好ましい実施形態において、次いで、プラスミドは、細菌から単離され、線状化され、制限酵素消化を受ける。さらに好ましい実施形態において、前記方法によって調製したcDNAはmRNAへ転写され、次に、cDNA残基を破壊し、細胞に導入されるmRNA分子を得るためにインキュベートされる。
【0036】
導入される再プログラミングmRNA分子及びそれから翻訳されるタンパク質は、時間とともに、細胞内で分解されるため、細胞のゲノム内に永久的に組み込まれることはできず、本発明の有利な特徴の一部を提供する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、本教示は、エレクトロポレーションによって、リポフェクションによって、インジェクションによって、マグネトフェクション(magnetofection)によって、微粒子銃(particle bombardment)、すなわち遺伝子銃によって、又は標的細胞内にmRNA分子を導入するのに適した当技術分野で公知の他の方法によって、細胞内に再プログラミングmRNA分子を導入する、好ましくはトランスフェクトすることを想定する。
【0038】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ステップc)において、細胞培養培地中で、かつ再プログラムされた細胞を得るようにトランスフェクトする再プログラミングmRNA分子の翻訳を可能にするのに適した条件下で、再プログラミングmRNA分子が導入されている細胞を培養することをさらに想定する。
【0039】
従って、本発明の特に好ましい実施形態において、本方法は、上述のステップa)、b)及びc)から、好ましくはこの順番で構成される。従って、本発明は、さらなる方法ステップ、特にさらなる実質的な方法ステップ、特に介在する又は続く方法ステップを除外する。従って、本発明は、単純なかつ費用効率が高い方法で利点を提供する。
【0040】
特に好ましい実施形態において、細胞培養系は、細胞培養培地を、好ましくは培養容器中に、特に少なくとも1種のいわゆる「誘導物質」が添加された細胞培養培地を含む細胞培養系であり、この誘導物質は、非特異的又は特異的再プログラミングにおいて細胞をin vitro老化及び/又は誘導から保護するのに適し、かつそれについて決定された物質である。特に好ましい実施形態において、本発明における誘導物質は、レベルシン(reversin)、レスベラトロール、セレン、セレン含有化合物、EGCG((-)-エピガロカテキン-3-ガラート)、バルプロ酸及びバルプロ酸の塩、特にバルプロ酸ナトリウムからなる群より選択される物質である。
【0041】
特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の誘導物質が、本方法のステップc)で使用される細胞培養培地中に0.001〜100μM、好ましくは0.005〜50μMの濃度で存在する。
【0042】
特に好ましい実施形態において、本発明は、0.5〜10μM、好ましくは1μMの濃度のレベルシンを使用することを想定する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、10〜100μM、好ましくは50μMの濃度のレスベラトロールを使用することを想定する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、0.05〜0.5μM、好ましくは0.1μMの濃度のセレン又はセレン含有化合物を使用することを想定する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、0.001〜0.1μM、好ましくは0.01μMの濃度のEGCGを使用することを想定する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、1〜10μM、特に5μMの濃度のバルプロ酸又はバルプロ酸ナトリウムを使用することを想定する。
【0043】
本発明は、さらに好ましい実施形態において、細胞培養培地中で、ステップb)で得られた細胞を培養することを想定し、ここで細胞培養培地は、場合により上述の誘導物質と組み合わせて、少なくとも1種の一過的タンパク質分解阻害剤を含む。本発明の細胞培養培地中の少なくとも1種のタンパク質分解阻害剤の使用は、mRNA又は任意の内在性遺伝子に由来する再プログラミングタンパク質が細胞内に存在する時間を延長し、従って、より一層改善された方法で、トランスフェクトされたmRNAに由来する因子による再プログラミングを促進する。本発明は、特に好ましい実施形態において、一過的タンパク質分解阻害剤として、プロテアーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤及び/又はリソソーム阻害剤を使用する。特に好ましい実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、MG132、TMC-95A、TS-341及びMG262からなる群より選択される。
【0044】
さらに好ましい実施形態において、プロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、G-64及びロイペプチンヘミ硫酸塩からなる群より選択される。さらに好ましい実施形態において、リソソーム阻害剤は塩化アンモニウムである。
【0045】
さらに好ましい実施形態において、本発明はまた、少なくとも1種の一過的mRNA分解阻害剤を含む細胞培養培地を想定する。一過的mRNA分解阻害剤の使用は、再プログラミング因子の半減期を同様に延長させる。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施形態において、細胞内でトランスフェクトされた再プログラミングmRNA分子の翻訳を可能にするのに適した条件は、0.5〜21%、好ましくは1〜20%、より好ましくは5〜19%及び特に好ましくは10〜18%の細胞培養培地中の酸素含有量である。より詳細には、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酸素は、Hif1aを介してOct4を誘発することによって、さらにOct4を誘導する又は増加させるために用いられる。
【0047】
好ましい実施形態において、細胞内でmRNA分子による細胞の再プログラミングを補助するのに適した条件が選択され、より詳細には、これらの条件は、30〜38℃、好ましくは31〜37℃、最も好ましくは32〜36℃の温度を必要とする。
【0048】
培地のグルコース含有量は、本発明の好ましい実施形態において、4.6g/l未満、好ましくは4.5g/l未満、より好ましくは4g/l未満、さらにより好ましくは3g/l未満、特に好ましくは2g/l未満であり、最も好ましくは1g/lである。本発明にとって好ましい1g/lグルコースを含有するDMEM培地は、PAA、Omega Scientific、Perbio及びBioseraなどの会社から「DMEM低グルコース」として市販されている。より詳細には、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、高グルコース条件は、in vitroでの細胞の老化(メチル化、エピジェネティクス)に不利に働き、再プログラミングを困難にし得る。
【0049】
本発明のさらに好ましい実施形態において、細胞培養培地は、0.1g/l〜4.6g/l、好ましくは0.5g/l〜4.5g/l、最も好ましくは1g/l〜4g/lの濃度のグルコースを含有する。
【0050】
「細胞培養」及び「細胞の培養」という用語は、細胞及び好ましくはヒト、ヒト由来及び動物細胞のin vitroでの維持及び増殖を指す。
【0051】
「細胞培養培地」は、in vitro培養での細胞の維持のために使用される。一部の細胞種について、培地はまた、培養中の細胞の増殖を補助するのに十分であり得る。本発明における培地は、栄養素、例えばエネルギー源、アミノ酸及び無機イオン(anorganic ion)を提供する。さらに、培地は、フェノールレッドなどの色素、ピルビン酸ナトリウム、いくつかのビタミン類、遊離脂肪酸、抗生物質、抗酸化剤及び微量元素を含有し得る。
【0052】
本発明に従って幹細胞を培養するために、再プログラミング前に、任意の標準培地、例えばイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、α-MEM、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI培地及びMcCoy培地が適している。細胞は再プログラムされると、好ましい実施形態において、胚性幹細胞培地中で培養することができる。
【0053】
好ましくは、培地は、ビタミンD3(1,25-ジヒドロキシビタミンD3、カルシトリオール(cacitriol))、レスベラトロール(トランス-3, 4', 5-トリヒドロキシスチルベン)、レベルシン(2-(4-モルフォリノアニリノ)-N6-シクロヘキシルアデニン)、ビタミンE(RRR-α-トコフェロール)、バルプロ酸(デパケン(dekapene)、バルプロエート、バルリリース(valrelease))、EGCG(エピガロカテキン-3-ガラート)及びセレンからなる群より選択される1種以上の添加物をさらに含む。好ましくは上述の添加物の2つが存在し、より好ましくは上述の添加物の3つが存在し、さらにより好ましくは上述の添加物の4つが存在し、特に好ましくは上述の添加物の5つが存在し、最も好ましくは上述の添加物の全てが存在する。
【0054】
これらの培地は当業者に周知であり、Cambrex、Invitrogen、Sigma-Aldrich又はStem Cell Technologiesなどの会社から購入し得る。
【0055】
培地は、特定の実施形態において、血清成分、例えばウマ血清、ヒト血清又はウシ胎児血清(FCS)をさらに含んでよい。好ましくは、培地はFCSを含有する。存在する場合、血清は1〜20%、好ましくは3〜18%、より好ましくは5〜15%、さらにより好ましくは8〜12%、最も好ましくは10%の濃度で存在する。あるいは、血清成分は、典型的にはインスリン、アルブミン及びレシチン又はコレステロールを含むいくつかの標準的血清代替混合物のいずれかによって交換してもよい。
【0056】
「培養容器」は、特に寒天、マトリゲル及びコラーゲンから選択されるがそれらに限定されない培養培地中で、液相で又は容器の内表面に接着して、細胞を増殖させるのに適した任意の容器である。そのような特殊な容器の種類としては、ローラーボトル、スピナーフラスコ、ペトリ皿及び組織フラスコが挙げられる。培養容器は、細胞又は組織の最大限の増殖を促進するように、温度、湿度及び気体が制御された環境でインキュベートされるように設計される。一般に、細胞培養培地又は寒天の層が増殖表面を覆う。増殖表面として利用されない容器の一部には、細胞培養を取り巻く内部気体環境が入る。細胞、組織、微生物などは、典型的には、容器の開口部を介して、細胞培養容器の内部に導入される。細胞の導入後、開口部は、細胞の培養中に細胞が環境と接触しないように閉じてよい。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、培養容器は組織培養用に処理され、このことは、培養容器の表面が、通常接着状態で増殖する細胞は接着して増殖するが、懸濁液中で増殖する細胞は接着しないか又は緩くのみ接着するように処理されることを意味する。そのような処理は、容器の照射、あるいは例えば特殊なプラスチック、ポリマー若しくはナノ構造を用いた、又は細胞外マトリックスのタンパク質を用いた容器のコーティングを含み得る。そのような容器は、組織培養ディッシュ及び組織培養フラスコを含むことができ、様々な供給業者から、例えばBecton Dickinson、Greiner、Sigma及びTPPから入手できる。
【0058】
本発明は、上述の方法を実施する、分化多能性を示す、好ましくは分化多能性幹細胞特性を示す細胞の作製方法にも関する。
【0059】
本発明は、本発明の方法を実施する、in vitroにおける幹細胞の増殖を改善する方法にも関する。従って、本発明は、細胞を脱分化状態で増殖させ続けるため、幹細胞の増殖の延長という利点を提供する。
【0060】
本発明は、本発明の方法を実施する、老化した細胞の活性化方法にも関する。
【0061】
本発明は、本発明の方法を実施し、特に再プログラムされる細胞が分化した細胞、特に系譜確定細胞である、細胞の脱分化を誘導する方法にも関する。
【0062】
本発明は、再プログラミングmRNA分子を哺乳動物の受容細胞に導入することを含む、in vivoで哺乳動物の受容細胞を再プログラミングする方法であって、再プログラミングmRNA分子は、Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTからなる群より選択される少なくとも1種の再プログラミングタンパク質をコードしている、前記方法にも関する。従って、本発明は、本発明のin vitroの実施形態について上述した再プログラミングmRNA分子を利用する、哺乳動物の受容細胞を再プログラミングするin vivo法にも関する。それにより、in vivoで哺乳動物の受容細胞を再プログラムする方法に関する本発明は、受容哺乳動物の少なくとも1つの細胞に直接、つまり遺伝子銃挿入などの適切な方法によって少なくとも1つの受容細胞に、再プログラミングmRNA分子を導入することを想定する。そのような方法により、少なくとも1つの再プログラムされた細胞を有する哺乳動物、特にヒトの作製が可能となる。従って、本発明のこの実施形態は、特に再生医療及び/又は補充療法において、治療的適応の大幅な改善を提供する。従って、本発明は、哺乳動物、特にヒトを治療する方法であって、再プログラミングmRNA分子が受容哺乳動物の少なくとも1つの細胞に導入され、再プログラムされるmRNA分子がRonin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTからなる群より選択される少なくとも1種の再プログラミングタンパク質をコードすることによって少なくともコードされる、前記方法に関する。
【0063】
本発明は、本発明の方法のいずれか1つに従って調製される分化多能性、特に分化万能性幹細胞にも関する。従って、本発明に係る再プログラムされた細胞は、好ましくは分化多能性、特に分化万能性幹細胞である。好ましい実施形態において、本発明に従って得られる細胞は、1種以上のマーカーの欠如によって、本発明のステップa)において開始材料として使用される細胞から区別される。これらの細胞はまた、好ましい実施形態において、特定のメチル化パターンによって、oct4、sox2、nanog、hTERT又はklf4の発現によって、特徴付けられ得る。oct4の発現は、線維芽細胞のような体細胞では見られないが、増殖能を改善することによって、かつ分化能を高めることによって、ヒト線維芽細胞中でmRNA(klf4、sox2及びoct4)をトランスフェクトした後、発現するようになる。分化万能性について、胚葉体が形成し、in vitro及びin vivoで3つ全ての胚葉の細胞が生成する。それらの例は、添付の図及び実施例に説明されている。
【0064】
本方法によって得られる再プログラムされた細胞は、好ましくは、特定の表面マーカーの発現又は非発現を特徴とし得る。これらの表面マーカーは、通常、細胞の免疫表現型的表面特性の群を記載する分化抗原群(cluster of differentiation、CD)記号が与えられる。通常、CD分子は、同じ細胞反応性を示す一群のモノクローナル抗体によって認識される膜結合糖タンパク質である。これらの表面分子は、例えば、Becton Dickinsonなどの会社によって製造されている蛍光励起細胞分取装置(FACS)などのフローサイトメーターによって検出し得る。本発明において細胞を同定する方法は、細胞特異的タンパク質を検出する方法、細胞特異的転写因子を検出する方法又は生理学的若しくは形態学的変化を検出する方法である。これらの方法全ては、それら自体、当技術分野で周知である。特に、これらの方法は、周知のタンパク質又はDNA又はRNA検出法及び/又はレポーター遺伝子アッセイを使用する。もちろん、酵素活性の測定法を含む、免疫アッセイ又は蛍光若しくは放射標識されたタンパク質若しくは核酸を使用するアッセイを利用することができる。形態学的変化を検出する方法としては、染色法、視覚に基づく方法などを挙げることができる。
【0065】
本発明に係る再プログラムされた細胞は、治療、診断又は科学的目的のために使用してよい。特に、これらの細胞は、再生医療及び/又は補充療法において使用してよい。
【0066】
「細胞」という用語は、単一の細胞を指すだけではなく、細胞株、細胞集団又は細胞クローンも含む。
【0067】
「幹細胞」という用語は、増殖し、1つの又は様々な細胞種に分化する能力を保持している細胞を指す。本発明に従って作製された幹細胞は、好ましくは分化万能性幹細胞、すなわち異なる細胞系譜及び細胞種に分化する能力を保持している幹細胞、あるいはより限定的な分化能を保持している分化多能性幹細胞である。
【0068】
本発明における「幹細胞」という用語は、ヒトの胚を含まないと理解される。さらに、「幹細胞」という用語は、ヒトの胚に直接由来する分化万能性幹細胞を含まないと理解される。公けに利用でき、以前に確立されている幹細胞株に由来する胚性幹細胞は、本発明によって使用される「幹細胞」という用語の意味に含まれると理解される。
【0069】
「幹細胞」は、本明細書で使用される場合、1つ又は複数の細胞種に分化する能力を有する自己複製する分化万能性細胞又は分化多能性細胞又は祖先細胞又は前駆細胞を指す。従って、幹細胞は、1又は2以上の細胞種に分化することができ、好ましくは無限の増殖能を有する細胞である。幹細胞としては、骨芽細胞系譜、間葉細胞系譜(例えば骨、軟骨、脂肪、筋肉、間質、例えば造血支持間質(hematopoietic supportive stroma)、及び腱)の細胞に分化する能力を有するものが挙げられる。「分化する」又は「分化」は、本明細書で使用される場合、前駆細胞又は祖先細胞(すなわち幹細胞)が特定の細胞種、例えば骨芽細胞に分化する過程を指す。分化した細胞は、遺伝子発現及び細胞表面タンパク質発現のパターンによって同定することができる。「脱分化する」又は「脱分化」は、本明細書で使用される場合、系譜確定細胞(例えば筋芽細胞又は骨芽細胞)が系譜確定を逆転し、前駆細胞又は祖先細胞(すなわち分化多能性又は分化万能性幹細胞)になる過程を指す。脱分化した細胞は、例えば、系譜確定細胞と関連する遺伝子発現及び細胞表面タンパク質発現のパターンの欠失によって同定することができる。
【0070】
本明細書で使用される「系譜確定細胞」は、特定の細胞種又は関連の細胞種に分化している又は分化する予定の細胞を指す。系譜確定細胞としては、例えば骨芽細胞、筋芽細胞、軟骨細胞及び脂肪細胞が挙げられる。
【0071】
全能性幹細胞は、胎盤細胞をはじめとする生体の全細胞種を作製することができる。初期の胎児幹細胞は、受精卵と同様に全能性であると考えられる。それらは、能力を失うことなく、無限に複製する能力も有する。
【0072】
分化万能性幹細胞は、3つ全ての胚葉、すなわち外胚葉、内胚葉及び中胚葉の細胞を作製することができる。それらは、能力を失うことなく、無限に複製する能力も有する。
【0073】
分化多能性幹細胞は、1種以上の胚葉又は複数種の組織の細胞を作製できる。それらは、既に限られた自己複製能を有することが多い。
【0074】
従って、幹細胞は、1又は2以上の細胞種に分化することができる細胞であるが、好ましくは無限の増殖能を有する。
【0075】
祖先細胞は、1以上の細胞種に分化することができるが、限られた増殖能を有する。
【0076】
成体幹細胞は、成体の生物に由来する幹細胞であり、分化多能性又は分化万能性であり得る。
【0077】
胚性幹細胞は、胞胚の内細胞塊に由来し、分化万能性である。胚性幹細胞は、ほぼ全ての細胞種となることができるため、独特であり、この特性は分化万能性と呼ばれている。しかし、これらの細胞を利用するには、研究者は生きた胚を破壊しなければならない。本願では、胚を破壊し、又は胚性幹細胞を使用する必要なく、胚性幹細胞の特徴を有する細胞を作製する方法を記載している。
【0078】
誘導分化万能性幹細胞、すなわち「IPS」細胞は、非分化万能性細胞、例えば体細胞、成体分化多能性幹細胞又は祖先細胞から人工的に得られる分化万能性幹細胞である。原則として、核を有する全細胞は、IPS細胞の供給源として使用することができる。
【0079】
本発明のさらに好ましい実施形態は、下位クレームの内容である。
【0080】
配列表は、本発明で使用されるmRNAヌクレオチド配列分子をコードする先行技術のDNA配列を示す。
【表1】

【0081】
配列番号17及び18は、ヒトNanog遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0082】
配列番号19及び20は、ヒトKlf4遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0083】
配列番号21及び22は、ヒトSox2遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0084】
配列番号23及び24は、ヒトOct4遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0085】
配列番号25及び26は、ヒトTert遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0086】
配列番号27及び28は、GFP遺伝子をクローニングするために用いるプライマーのDNA配列を示す。
【0087】
本発明を実施例及び図によってより詳細に説明する。
【実施例】
【0088】
1. 再プログラミングmRNAの調製
1. A) mRNA発現プラスミドの調製
PCRを用いた、in vitro転写のためのT7プロモーターを有するベクター中に標的遺伝子を含むプラスミドの構築のため、遺伝子挿入(表1を参照)をpCR(登録商標)IIベクター(Invitrogen)に正しい方向で直接クローニングするため、開始コドン前及び停止コドン後の消化部位を設計した。
【0089】
用いるプライマーを表2に記載する。
【表2】

【0090】
所望の消化部位を得るためのPCRをPlatinum Taqポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて行った。
【0091】
氷上でのPCR反応の調製:
5μl 10X PCRバッファー
1μl 10mM dNTP混合物 各0.2mM
1.5μl 50mM MgCl2
1μl プライマーミックス(各10μM) 各0.2μM
1μl 鋳型DNA
0.2μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ 1.0ユニット
50μlまで DEPC-H2O

【0092】
1%TAEアガロースゲル中の電気泳動後、特異的DNAバンド(サイズについて表2を参照)を切り出し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen社)を用いてDNAを抽出し精製した。
【0093】
手順:
- メスを用いてアガロースゲルからDNA断片を切り出す
- ゲルスライスの重さを量る
- 1容量のゲルに3容量のバッファーQGを加える(例えば、各100mgのゲルに300μlのバッファーQGを加える)
- 50℃で10分間インキュベートする(又はゲルスライスが完全に溶解するまで)
- 試料に1ゲル容量のイソプロパノールを加え、混合する
- 準備されている2ml回収チューブ中にQIAquickスピンカラムを置く
- DNAを結合させるために、試料をQIAquickカラムにアプライし、13,000rpmで1分間遠心する
- 流出液を捨てる
- QIAquickカラムに0.5mlのバッファーQGを加え、13,000rpmで1分間遠心する
- 洗浄するために、QIAquickカラムに0.75mlのバッファーPEを加え、13,000rpmで1分間遠心する
- 流出液を捨てる
- QIAquickカラムを13,000rpmでさらに1分間遠心する
- QIAquickカラムを1.5mlの微小遠心チューブ中に置く
- DNAを溶出させるため、QIAquickメンブレンの中央に50μlのH2Oを加え、カラムを1分間置き、その後13,000rpmで1分間遠心する
【0094】
標的DNAのクローニングのための特異的制限酵素を用いたpCRIIベクターの消化
ベクターpCRIIの消化方法:
標的遺伝子ヒトNanogのためのXbaI及びSpeIを用いたベクターpCRIIの消化
標的遺伝子ヒトKlf4のためのXbaI及びHindIIIを用いたベクターpCRIIの消化
標的遺伝子ヒトSox2のためのXbaI及びBamHIを用いたベクターpCRIIの消化
標的遺伝子ヒトOct4のためのXbaI及びBamHIを用いたベクターpCRIIの消化
標的遺伝子ヒトTERTのためのXbaI及びHindIIIを用いたベクターpCRIIの消化
標的遺伝子GFPのためのXbaI及びHindIIIを用いたベクターpCRIIの消化。
【0095】
氷上での消化物の調製:
- 5μl 10xバッファー
- ≧2μg プラスミド
- 2μl 制限酵素
- 50μlまで DEPC水
- 37℃で1時間インキュベーション(サーモブロック; Eppendorf)
- 酵素に特異的な温度によって20分間熱不活性化
【0096】
標的遺伝子挿入DNAと線状ベクターDNAのT4-DNAリガーゼ(Fermentas)を用いたライゲーション
氷上でのライゲーションの調製:
- 50〜400ng ベクターDNA
- 50〜400ng 挿入DNA
- 2μl 10xバッファー
- 0.2μl(1u) T4-DNAリガーゼ
- 20μlまで DEPC水
- チューブをボルテックスし、3〜5秒間微小遠心でスピンダウンする
- 室温で1時間インキュベートする
- 20分間熱不活性化する
【0097】
1. B) ケミカルコンピテントDH5α細菌を用いたプラスミドの形質転換
- 10μlのケミカルコンピテントDH5α細菌に1μlのプラスミドを加える
- 氷上で30分間インキュベーション
- 42℃で45秒間熱ショック
- 細菌に250μlのSOC培地を加える
- 37℃で1時間、振とうしながらインキュベーション
- LB-ナカマイシン-アガロース-プレート上に細菌溶液をプレーティングし、37℃インキュベーター中で12時間プレートをインキュベートする
- 細菌の1つのコロニーを取り、5mlのLB培地中にコロニーを入れ、振とうしながら細菌インキュベーター中で12時間溶液をインキュベートする
【0098】
1. C) NucleoSpin(登録商標)プラスミドキット(Machery&Nagel)を用いたプラスミドDNA精製
- 5mlの飽和大腸菌LB培養から、標準的卓上微小遠心中で11,000 x gで30秒間かけて細胞をペレット化する
- 上清を捨てる
- 細胞溶解のため、250μlのバッファーA1を加える。ピペットで混和し細胞ペレットを完全に再懸濁する
- 250μlのバッファーA2を加える
- チューブを10回穏やかに転倒混和し、最大5分間室温でインキュベートする
- 300μlのバッファーA3を加える。チューブを10回転倒させ完全に混合する
- 室温で11,000 x gで5分間遠心する
- 回収チューブ(2ml)中にNucleoSpin(登録商標)プラスミドカラムを置き、750μlの上清をカラムに導入する
- 11,000 x gで1分間遠心する
- 流出液を捨て、NucleoSpin(登録商標)プラスミドカラムを回収チューブ(2ml)中に戻す
- DNAを保持するメンブレンを洗浄するため、600μlのバッファーA4(エタノールを添加している)を加える
- 11,000 x gで1分間遠心する
- 流出液を捨て、NucleoSpin(登録商標)プラスミドカラムを回収チューブ(2ml)中に戻す
- シリカメンブレンの乾燥:11,000 x gで2分間遠心し、回収チューブ(2ml)を捨てる
- DNAの溶出:NucleoSpin(登録商標)プラスミドカラムを1.5ml微小遠心チューブ中に置き、50μlのH2Oを加え、室温で1分間インキュベートする
- 11,000 x gで1分間遠心する
- ナノドロップでDNA濃度を測定する
- −20℃でDNAを保存する
【0099】
1. D) in vitro転写のためのpCRII-hoct4、pCRII-hSox2、pCRII-hKlf4プラスミドの線状化
- BamHIを用いたpCRII-hoct4の消化
- HindIIIを用いたpCRII-hSox2の消化
- HindIIIを用いたpCRII-hKlf4の消化
【0100】
氷上での消化物の調製:
- 5μl 10xバッファー
- 2μg プラスミド
- 2μl 制限酵素
- 50μlまで DEPC-H2O
- 37℃で1時間インキュベーション(サーモブロック; Eppendorf)
- 酵素に特異的な温度によって20分間熱不活性化
- 80℃で20分間両酵素を熱不活性化する
【0101】
1. E) QIAquick PCR精製キット(Qiagen社)を用いた、線状化したpCRII-hoct4、pCRII-hSox2、pCRII-hKlf4プラスミドの精製
- 1容量の消化試料に5容量のバッファーPBを加え、混合する
- 準備されている2ml回収チューブ中にQIAquickスピンカラムを置く
- DNAを結合させるために、試料をQIAquickカラムにアプライし、60秒間遠心する
- 流出液を捨てる
- QIAquickカラムを同じチューブ中に戻す
- 洗浄するために、QIAquickカラムに0.75mlのバッファーPEを加え、60秒間遠心する
- 流出液を捨て、QIAquickカラムを同じチューブ中に戻す
- メンブレンを乾燥させるため、カラムをさらに1分間遠心する
- QIAquickカラムを1.5mlの微小遠心チューブ中に置く
- DNAを溶出させるため、QIAquickメンブレンの中央に10μlのH2Oを加え、カラムを1分間置き、1分間カラムを遠心する
- ナノドロップでDNA濃度を測定する
- −20℃でDNAを保存する
【0102】
1. F) mMessage mMachine高収率キャッピングRNA転写キット(Ambion社)を用いた線状化したpCRII-hoct4、pCRII-hSox2、pCRII-hKlf4プラスミドのin vitro転写、及びRNA転写産物へのポリ(A)尾部の付加(Ambion社のポリ(A)-テイリングキット)
in vitro転写の調製(mMESSAGE mMACHINE反応):
- 20μlまで ヌクレアーゼ非含有水
- 10μl 2x NTP/CAP
- 2μl 10x 反応バッファー
- 1μg 線状鋳型プラスミド
- 2μl 酵素ミックス
- ピペットで混合物を穏やかに混和する
- 短く遠心し、反応混合物をチューブの底に集める
- 37℃で2時間インキュベーション
- mRNAに1μlのTURBO DNaseを加え、よく混合する
- 37℃で15分間インキュベートする
- DNase処理反応直後、mRNAにポリ(A)尾部を加える
【0103】
ポリ(A)尾部反応の調製:
- 20μl mMESSAGE mMACHINE反応
- 36μl ヌクレアーゼ非含有水
- 20μl 5x E-PAPバッファー
- 10μl 25mM MnCl2
- 10μl mM ATP
- 4μl E-PAP
- 穏やかに混合する
- 37℃で1時間インキュベートする
- 氷上に反応物を置く
- ポリ(A)尾部を有するmRNAの塩化リチウム沈殿:
- 30μlのLiCl沈殿溶液を加える
- 完全に混合する
- −20℃で30分間冷やす
- 最大速度で4℃で15分間遠心し、RNAをペレット化する
- 上清を除去する
- 1mlの70%エタノールでペレットを一度洗浄する
- 最大速度で4℃で15分間遠心し、RNAをペレット化する
- 70%エタノールを除去する
- ペレットを空気乾燥させる
- RNAペレットを30〜50μlのヌクレアーゼ非含有水で溶解する
- RNA濃度をナノドロップで測定する
- RNAの質をAgilentナノチップで測定する
【0104】
2. 標的細胞の調製
2. A) マウス及びラットMSCの調製
- CO2ガス処理によりラット又はマウスを屠殺する
- ラット及びマウスに70%エタノールを噴霧し、細菌及び真菌胞子を殺す
- 皮膚から毛を除去する
- 股関節で後肢を清潔に除去する
- 無菌条件下で、全ての軟組織を除去し、骨を分離する
- 大腿骨及び脛骨両方の成長板を除去する
- 骨の両末端に針で穴を開ける
- 骨をエッペンドルフチューブ(マウスについて)又はファルコンチューブ(ラットについて)に入れ、2000rpmで1分間スピンする(全ての骨髄は、スペーサ中のチューブの底に溜まる);骨及びスペーサを除去する
- 0.5ml培地(DMEM低グルコース;10%FCS;1%Pen/Strep)中に骨髄を再懸濁する
- 12mlの培地を入れた1本のT-75フラスコ中に、ラットの1本の肢の骨髄を播種する
- 12mlの培地を入れた1つの10cmペトリ皿中に、マウスの2本の肢の骨髄を播種する
【0105】
2. B) ヒトMSCの調製
- 骨髄吸入物を得る
- DMEM(低グルコース、10%FCS)中に再懸濁する
- 組織培養フラスコ中に播種する
- 5日間増殖させ、その後培地を交換する
- その後、週二回培地を交換する
- 80%コンフルエンシーまで組織培養フラスコ中で培養し、必要になるまで継代する
【0106】
2. C) マウス及びラット線維芽細胞の調製
- 尾を切断する
- メスで尾を剃る
- 尾に70%エタノールを噴霧し、細菌及び真菌胞子を殺す
- 尾から皮膚を除去する
- 10cmペトリ皿中に皮膚を置く
- 無菌条件下、皮膚を小片(5 x 5 mm)に切断する
- 37℃のCO2インキュベーター中20分間かけて、0.05%トリプシンEDTAで皮膚片を消化する
- トリプシンを皮膚ディッシュから培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen/Strep)で洗浄し、培地を除去し、3〜4回再洗浄する
- その後、37℃のCO2インキュベーター中で皮膚片をインキュベートし、毎日培地を交換し、1週間後、線維芽細胞が増殖している
【0107】
2. D) ヒト線維芽細胞の調製
- ペトリ皿中に包皮を置く
- PBSで2回洗浄する
- 脂肪を除去する
- PBSで1回洗浄する
- 皮膚を小片(2mm)に切断する
- ディスパーゼ(2U/ml)を加える
- 4℃で16〜18時間インキュベートする
- ディスパーゼ溶液を捨てる
- 5mlのPBSを加える
- 真皮及び表皮を分離する
- 真皮を新しい皿に移し、10mlコラゲナーゼ(500U/ml)を加える
- 非常に小さな片を作製する
- 小片を溶液とともに50mlファルコンチューブに移し、45分間インキュベートする(37℃;5%CO2
- 1000rpmで5分間遠心する
- 上清を捨て、ペレットをDMEM(10%FCS)中に再懸濁する
- 再び遠心する
- ペレットを2mlのDMEM(10%FCS)中に再懸濁し、T75細胞培養ファルコンに移す
- 使用まで細胞を増殖させる
【0108】
3. mRNAトランスフェクション
3. A) AMAXA、FugeneHD、リポフェクタミンTM LTX試薬及びPLUSTM試薬を用いた、ヒト線維芽細胞、ヒトMSC、ラット線維芽細胞、ラットMSC、マウス線維芽細胞及びマウスMSCのmRNAトランスフェクション
【0109】
1) ヒト真皮線維芽細胞Nucleofector(登録商標)キット(6ウェルプレート)を用いたAMAXAトランスフェクション:
認定されたAmaxaキュベット中の1つのエレクトロポレーションの調製:
- 合計2μgのoct4、sox2及びklf4のmRNA
- 4 x 105細胞
- 100μl Nucleofector(登録商標)溶液
- Amaxaエレクトロポレーション装置によるプログラムU-023を選択する
- 500μlの線維芽細胞培地又はMSC培地と共にキュベット中に細胞を再懸濁する
- 6ウェルプレートの全ウェルに、カクテルを有する又は有しない5 mlの線維芽細胞培地又はMSC培地を入れる
- 6ウェルプレートの各ウェルに、100,000細胞を播種する
【0110】
カクテル組成:
- レスベラトロール 0.05mM
- セレン 0.1μM
- EGCG((−)-エピガロカテキンガラート) 0.01μM
- TSA(トリコスタチンA) 0.015μM
- レベルシン 1μM
- VPA(2-プロピルペンタン酸遊離酸) 6μM
- 5'アザ(5-アザ-2'-デオキシシチジン) 1μM
- 1日目:カクテルに5'アザを入れるがTSAを入れない;48時間後、5'アザをTSAと置換する
- 72時間毎にFuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Roche)で新たにトランスフェクションする
【0111】
2) FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Roche)を用いたトランスフェクション
- トランスフェクション前:抗生物質非含有培地へ交換。
【0112】
トランスフェクション手順
- mRNAを血清非含有及び抗生物質含非有培地で2μg mRNA濃度まで、各ウェルについて100μlの容量で希釈する(6ウェルプレート)
- 8μlのFuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(トランスフェクション試薬:mRNAは8:2の比率)をピペットで直接培地に加え、ピペットで混和する
- トランスフェクション試薬:mRNA複合体を室温で15分間インキュベートする
- トランスフェクション複合体を細胞に滴下しながら加える
- ウェルを回転させ、確実にプレート表面全体に分配させる
- 4〜6時間後、カクテル含有又は非含有培地(10%FCS、1%Pen/Strepを含む)に交換する
- 1つのトランスフェクトした6ウェルプレートを、37℃インキュベーターで21%O2条件(正常酸素圧)でインキュベートし、2つ目のプレートを1%O2条件(低酸素圧)でインキュベートする
【0113】
3) リポフェクタミンTM LTX試薬又はPLUSTM試薬(Invitrogen)を用いた別のトランスフェクション
a) FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Roche)を用いたトランスフェクション
- 24ウェルプレートの各ウェルあたり500μlの培地中7000個の細胞を播種する
- 一晩インキュベートする
- トランスフェクションのために、抗生物質非含有培地に交換する
- 各ウェル(24ウェルプレート)について25μlの血清非含有及び抗生物質非含有培地中に0.5μgのmRNAを希釈する
- FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬2μl(トランスフェクション試薬:mRNAは8:2の比率)を培地に直接ピペットで入れる
- ピペットで混和する
- 室温で15分間トランスフェクション試薬:mRNA複合体をインキュベートする
- トランスフェクション複合体を細胞に滴下しながら加える
- ウェルを回転させ、確実にプレート表面全体に分配させる
- 4〜6時間後、カクテル含有又は非含有培地(10%FCS、1%Pen/Strepを含む)に交換する
【0114】
b) リポフェクタミンTM LTX試薬及びPLUSTM試薬(Invitrogen)
- 24ウェルプレートの各ウェルあたり500μlの培地中7000個の細胞を播種する
- 一晩インキュベートする
- トランスフェクション前に、抗生物質非含有培地に交換する
- 各ウェル(24ウェルプレート)について100μlの血清非含有及び抗生物質非含有培地中に0.5μgのmRNAを希釈する
- 穏やかに混合する
- 使用前にPLUSTM試薬を穏やかに混合する
- mRNA-培地混合物中に0.5μlのPLUSTM試薬を加え、穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートし、使用前にリポフェクタミンTM LTX試薬を穏やかに混合する
- 1.25μlを希釈したmRNAに直接加え、穏やかに混合する
- 室温で30分間インキュベートする
- 100μlのmRNA-リポフェクタミンTM LTX試薬複合体をウェルに加える
- プレートを前後に揺すり穏やかに混合する
- CO2インキュベーター中37℃で4〜6時間細胞をインキュベートする
- カクテル含有又は非含有培地に交換する
- トランスフェクション効率の最適化の間、ウェルあたり(24ウェルプレート)1μgでmRNA濃度の量を増加させる
- 72時間毎に、FuGENE HD又はリポフェクタミンTM LTX試薬及びPLUSTM試薬を用いてトランスフェクションを繰り返す
【0115】
4. トランスフェクトされたmRNAによって生成したタンパク質の半減期を延長させるためのプロテアーゼ阻害剤処理(MG132):
- トランスフェクションの48時間後、MG-132(10μM/ウェル)で各プレート中カクテル含有及び非含有の2つのウェルを6時間処理し、その後培地を交換する
【0116】
5. 結果
トランスフェクトした又は内部遺伝子(oct4、nanog、hTERT、sox2、klf4)のmRNA量の解析(PCRによる)及びプロモーター解析(nanog、sox、oct4の)
再プログラミング結果は図1〜8に示されている。
【0117】
6. 手段及び方法
6.1 TriFastTM(Peglab)を用いたRNAの単離
- 培養皿面積の10cm2あたり1mlのTrifast
- 試料は−80℃で長期間保存するか、又は直接使用することができる
- 試料は室温で5分間保持するべきである
- 0.2mlのクロロホルムを加える
- 15秒間手で激しく試料を振る
- 室温で3分間インキュベートする
- 12,000 x gで遠心する
- RNAを有する水相を新しいチューブに移す(DNA及びタンパク質の単離のため中間相及び有機相を4℃で保存する)
- 最初のホモジナイゼーションに使用したTri-FastTM 1mlあたり0.5mlのイソプロパノールでRNAを沈殿させる
- 15分間氷上でインキュベートする
- 12,000 gで4℃で10分間遠心する
- 上清を除去する
- ボルテックスにより75%エタノールでRNAペレットを2回洗浄する
- 続いて、7,500 x g(4℃)で8分間遠心する
- 空気乾燥によりRNAペレットから過剰なイソプロパノールを除去する
- RNase非含有水(DEPC-H2O)中でRNAペレットを再懸濁する(30μl〜50μl)
- ピペットチップに溶液を数回通過させることによって、RNAペレットを溶解させる
- 55℃で10分間溶液をインキュベートする
- ピペットで混和する
- 55〜60℃における試料の加熱は、ペレットの溶解に役立ち得る
- RNA濃度を測定する(ナノドロップ)
- −80℃で2〜3ヶ月間試料を保存する
【0118】
6.2 DNAの単離
- RNA除去後、残った水相を除去する
- Tri-FastTM 1mlあたり0.3mlの100%エタノールでDNAを沈殿させる
- 転倒によってよく混合する
- 室温で試料を2〜3分間置く
- 2,000 x gで4℃で5分間遠心する
- DNA上清を除去する(タンパク質単離のために4℃で保存する)
- 1mlの0.1Mクエン酸ナトリウム(10%エタノール中)でDNAペレットを2回洗浄する
- 各洗浄ステップにおいて、DNAを0.1Mクエン酸ナトリウム/10%エタノール中に室温で30分間保持する(定期的に混合しながら)
- 2,000 x gで4℃で5分間遠心する
- これらの2回の洗浄後、DNAペレットを2mlの75%エタノール中に懸濁する
- 定期的に混合しながら室温で15分間保持する
- 2,000 x gで4℃で5分間遠心する
- 真空下で5〜10分間簡潔にDNAペレットを乾燥させる
- 広口径のピペットにペレットをゆっくり通過させることによって8mM NaOH中で溶解させる
- 8 mM NaOHでDNAの最終濃度を0.2〜0.3μg/μlに調整する
【0119】
6.3 DNase I(Fermentas)を用いたRNAの処理:
- 1μg RNA
- 1μl MgCl2を有する10X 反応バッファー
- 1μl(1 u) DNase
- 9μlまで DEPC-H2O
- 37℃で30分間インキュベートする
- DNase Iの不活性化:1μlの25mM EDTAを加え、65℃で10分間インキュベートする
【0120】
6.4 SuperScriptTM III逆転写酵素(Invitrogen)を用いたRT-PCR
反応条件:
- 1μl オリゴ(dT)20プライマー
- 1μg RNA
- 1μl 10mM dNTP混合物(各10mM dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)
- 13μlまで DEPC-H2O
- 65℃で5分間混合物を加熱する
- 氷上で1分間インキュベートする
以下を加える:
- 4μl 5X First-Strand Buffer
- 1μl 0.1M DTT
- 1μl SuperScriptTM III RT(200ユニット/μl)
- ピペットで穏やかに混合する
- 50℃で60分間インキュベートする
- 70℃で15分間加熱することによって反応を不活性化する
- cDNAを−20℃で保存する
【0121】
6.5 ヒトoct4のPCR(対照ヒト線維芽細胞):
プライマー配列:hoct4_s: gaggatcaccctgggatataca
hoct4_as: agatggtcgtttggctgaatac
産物サイズ:100bp
【0122】
6.6 Patinum Taqポリメラーゼ(Invitrogen)を用いたPCR
氷上でのPCR反応の調製:
- 5μl 10X PCRバッファー
- 1μl 10mM dNTP混合物 各0.2mM
- 1.5μl 50mM MgCl2
- 1μl プライマーミックス(各10μM)各0.2μM
- 1μl 鋳型DNA
- 0.2μl Platinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ 1.0ユニット
- 50μlまで DEPC-H2O
【0123】

【0124】
電気泳動のための3%TAEアガロースゲルを用いたPCRの検査
【0125】
6.7 iPS細胞を作製するためのプロトコール
6.7.1 BDマトリゲル(Matrigel)TM hESC最適化マトリックス
- 滅菌したチップ箱及びエッペンドルフチューブを一晩−20℃の冷凍庫に入れる
- マトリゲルボトルを氷上で4℃の冷蔵庫内で一晩解凍する
- 到着後すぐhESC用のマトリゲルを分注し、−80℃で保存し、増殖因子の分解を回避するため一度だけ溶解し、再凍結しない
- コーティングのために、血清非含有培地を用いてマトリゲルを適宜希釈する(iPSのために0.3μg/μl、hESCのために1μg/μl)
- 1cm2の増殖表面あたり50μlのマトリゲル希釈液を加える
- 無菌条件下でRTで60分間又は4℃で一晩インキュベートする
- 残ったマトリゲル/培地を取り除く
- 培地:mTeSR1(Stem Cell Technology)
【0126】
コーティングの処方(0.3μg/μl)は、iPSを生成するために使用する細胞種に依存する。1μgのマトリゲル/μlを用いてhESC培養用のプラスティックをゲル化することではなく、コーティングすることが推奨される。プレートをすぐに使用するか、又は無菌条件下で(密封して)血清非含有培地で覆って、4℃で最大7日間保存する。
【0127】
コーティングされたマトリゲルプレートは、ばらつき(主に増殖因子の分解による)を回避するために、常に正確に同じ方法で処理し、保存し、使用するべきである。初期において又は確立のために、特定の細胞種に最も適するコーティングの容量及び濃度を滴定する必要がある(例えば3つの希釈、0.3、0.6、1μg/μl)。
【0128】
6.7.2 BDマトリゲルTM 基底膜マトリックス、増殖因子低減(GFR)
- マトリゲルをhESC最適化マトリゲルのように分注する
- 氷上で4℃で一晩チューブを解凍する
- 6mlの冷やした基本培地で希釈し、よく混合する
- 6ウェルプレートのウェルあたり1mlを加える
- プレートを室温で1時間又は4℃で一晩インキュベートする
- プレートはすぐに使用してよく、又は4℃で保存してもよい(プレートは少なくとも1週間良好である)
- 過剰な液体を除去し、基本培地で1回洗浄する
- 基本培地成分:D-MEM/F-12; 20%KO血清代替添加物; 1%非必須アミノ酸; 1mM L-グルタミン、0.1mM 2-メルカプトエタノール; 100ng/ml bFGF
- マウス細胞を使用し、LIF上清を基本培地に加える
【0129】
6.7.3 LIF上清の作製
- ペトリ皿(145mm)を0.1%ゼラチン(gelantine)(ウシx型?, Sigma)でコーティングする
- 全ての皿に3x10e10個のLIF産生支持細胞SNLを播種する
- 培地成分:D-MEM高グルコース、10%FCS、1%Pen/Strep、1%L-グルタミン
- 24時間後、皿から培地を回収し、0.22μmフィルターでろ過する
- LIFを含有する培地を500μlのアリコートで分注し、−20℃で保存する
- 24時間又は48時間後に培地を交換する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再プログラムされた細胞をin vitroで調製する方法であって、
a)再プログラムされる細胞を提供するステップ、
b)Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTからなる群より選択される少なくとも1つの再プログラミングタンパク質をコードする再プログラミングmRNA分子を、ステップa)で提供された細胞へ導入するステップ、
c)ステップb)で得られた細胞を、細胞培養培地中でかつトランスフェクトされた再プログラミングmRNA分子の翻訳を可能にするのに適した条件下で培養し、再プログラムされた細胞を得るステップ、
を含む、上記方法。
【請求項2】
翻訳を可能にするのに適した条件が、細胞培養培地中における0.5%〜21%の酸素含有量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
翻訳を可能にするのに適した条件が、30℃〜38℃の温度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細胞培養培地が0.1g/l〜4.6g/lのグルコース含有量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
細胞培養培地が、レベルシン(reversin)、レスベラトロール、セレン、セレン含有化合物、EGCG((-)-エピガロカテキン-3-ガラート)、バルプロ酸、バルプロ酸の塩、及びバルプロ酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの誘導物質を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
細胞培養培地が、少なくとも1種の一過的タンパク質分解阻害剤を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
一過的タンパク質分解阻害剤が、プロテアーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤及びリソソーム阻害剤からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
再プログラムされる細胞がヒト細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
再プログラムされる細胞が非胚性幹細胞である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を行う、分化万能性又は分化多能性幹細胞特性を示す細胞を生成する方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を行う、細胞の脱分化を誘導する方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を行う、in vitroにおける非胚性幹細胞の増殖を改善する方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を行う、老化した細胞を活性化する方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法によって調製される分化多能性又は分化万能性幹細胞。
【請求項15】
Ronin、Oct4、Klf4、Sox2、Nanog及びTERTからなる群より選択される少なくとも1つの再プログラミングタンパク質をコードする再プログラミングmRNA分子を哺乳動物の受容細胞に導入するステップを含む、in vivoで哺乳動物の受容細胞を再プログラミングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−509072(P2012−509072A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536768(P2011−536768)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008170
【国際公開番号】WO2010/057614
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】