説明

分取クロマトグラフィーによるヒドロコドンの分離および精製方法

逆相分取クロマトグラフィー法を利用する、ヒドロコドンを含有する純粋でない調製物の精製方法が提供される。ある例示的実施態様では、固定相を、典型的には有機リガンドが結合したシリカ粒子を、クロマトグラフィーカラムに負荷する。純粋でない調製物を酸性化し、約10ないし約1000の負荷比でカラムに通す。典型的にはアセトニトリルの水性溶液でカラムを溶出し、精製したヒドロコドンを特定の分画中に得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、逆相分取クロマトグラフィーを利用するヒドロコドンの分離および精製方法に関する。より詳細には、本発明の方法は、工業的な量の純度の高いヒドロコドンを経済的に提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ジヒドロコデイノン(dihydrocodeinone)またはジコダイド(dicodide)としても知られるヒドロコドンは、化学的には、4,5−エポキシ−3−メトキシ−17−メチル−モルフィナン−6−オン、CAS RN 125−29−1である。ヒドロコドンおよびその医薬的に許容し得る酸付加塩の合成は、Pfister らに与えられた米国特許第2,715,629号および the Merck Index, 11th Edition, page 757, entry 4708 (1989) に記載されている。ヒドロコドンは、麻薬性の鎮咳剤および鎮痛剤である。鎮咳剤の用量で、ヒドロコドンは鎮痛効果も発揮する。ヒドロコドンは、O−脱メチル化、N−脱メチル化および対応する6−β−ヒドロキシ代謝物への6−ケト還元を含む、複雑な代謝パターンを示す。
【0003】
現行の方法は、α,β不飽和ケトン類を含むある濃度の不純物をもたらし、それは商業的適用に最適ではないことがある。従って、特に工業的な量で製造する場合に、純度の高いヒドロコドンを単離するためのより効率的かつ直接的な方法への要望がある。
【0004】
医薬の分離または精製を達成する手段には、炭の使用などの吸着方法が含まれる。残念なことに、炭は、色素および他の望まざる物質の除去に加えて、関心のある医薬を不可逆的に吸着する。このことは、有意な収量の減損を招く。いくつかの場合では、所望の純度を達成するために、複数回の精製が必要とされる。このことは、上清流を回収のために再利用しなければならないので、この方法の複雑さを大幅に高める。これらの追加的沈殿は、この方法において、より大量のヒドロコドンをより長いサイクル時間で使用することも必要とする。さらに、沈殿方法は、必要とされるときもある加熱および冷却の時間も加えて、長々しいことがある。また、沈殿法のいくつかは、最終的に製造される生成物の粒子サイズの故に、長い濾過時間を必要とする。
【0005】
現行のヒドロコドンの精製方法の他の欠点には、アルカロイドまたは重酒石酸塩(bitartrate salt)を回収するための、度重なる手動による間断のない取扱い操作が含まれる。これらの操作は、操作者がより多くヒドロコドンに曝されることを導き、それは生産管理および従業者保護装備への依存が避けられない。この操作は、単調かつ冗長であり得る。
【0006】
ヒドロコドンを精製するための他のアプローチは、イオン交換を介する吸着の使用である。これはコデインおよびモルヒネなどのアルカロイドで行われてきたが、低い供給濃度を必要とするという制限を有する。これは、沈殿を引き起こし得る高pHのフラッシュの使用を必要とするためである。いかなる沈殿も、イオン交換樹脂を含有するカラム全体を損う可能性がある。この方法の他の欠点は、かなりの塩が必要とされることであって、さらなる透析または逆浸透の段階がイオンの除去に必要とされることである。
【0007】
吸着を達成するまた他のやり方は、極性相互作用または順相吸着を介する。この方法は好結果であるが、大量の有機溶媒の使用を必要とする。さらに、ヒドロコドンはこのやり方で精製され得るが、より多くの蒸発が必要とされる。
【0008】
ヒドロコドンなどの麻薬に対する分析クロマトグラフィーのいかなる使用も、工業的スケールの方法への分取クロマトグラフィーの使用から当業者を遠ざけるように導くであろう。分取クロマトグラフィーと異なり、分析クロマトグラフィーは、一般的に各ピークの完全な分離を要する。各成分のピークの溶出は、しばしば紫外(UV)線の吸光により測定される。分析クロマトグラフィーでは、ピークの分離は、極少量の供給試料をカラムに負荷し(load)、小さい粒子サイズ直径(固定相では、しばしば5マイクロメートルより小さい)を使用することにより達成される。小さい粒子サイズは、分取クロマトグラフィーで見られるものよりも大幅に高い圧力を生じさせる。これらの高圧は、非常に大きく、強く、高価なクロマトグラフィー装置の使用を要求し、それは、この分析方法の商業的適用可能性を否定するであろう。極少量の供給試料が実施の都度負荷されることを考えに入れると、その装置は非常に大きくなる。分取クロマトグラフィーでは、目的は所望の供給成分を必要な純度で回収することである。不純物が規格限界内にある限り、所望の成分は不純物と共に回収されてもよい。固定相の粒子サイズは、分離を達成するために十分に小さいが、しばしば10ミクロンより大きい。このことは、生じる圧力の低下を少なくする。また、分取クロマトグラフィーでは、生成物の所望の品質を確保できる限り、最大の供給量を負荷する。このことは、生成物が最高の濃度でカラムから出ることを可能にし、かくして下流の装置、特に蒸発または濃縮ユニットのサイズを最小にする。
【0009】
クロマトグラフィー法を利用する有機物質の分離または精製は、当分野で周知である。しかしながら、クロマトグラフィー法を利用して分離される物質は、本発明の目的、即ち、工業的スケールでのヒドロコドンの分離および精製とはかけ離れている。ヒドロコドンへの分析クロマトグラフィーの適用には多数の参照文献があるが、何らかの条件下で工業的方法を用いることができるという示唆はない。
【0010】
本発明は、上記の1つまたはそれ以上の欠陥を克服することを対象とする。これらの欠陥には、生成物収量の減損、遠心機またはフィルターの取り付けおよび取り外しなどの冗長で間断のない手動による取扱い操作、操作者による保護装備への依存、必要な純度の要件を達成するための多数の処理段階および生じ得る多数の沈殿操作が含まれるがこれらに限定されない。
【発明の開示】
【0011】
発明の要旨
本発明のある態様では、純度の高いヒドロコロンを純粋でないヒドロコロン調製物から回収する方法が提供される。その方法は、純粋でないヒドロコドン調製物を、逆相液体クロマトグラフィーに付すことを含み、そこでは、固定相のヒドロコドンに対する負荷比(loading ratio)は最高でも約1000であり、回収される純度の高いヒドロコドンは、少なくとも約95%の純度である。
【0012】
本発明の他の態様では、純度の高いヒドロコドンを純粋でない調製物から回収する方法が提供される。この方法は、純粋でない調製物を、逆相高速分取液体クロマトグラフィーに付し、純度の高いヒドロコドンを回収することを含む。
【0013】
本発明のまた他の態様では、α,β不飽和ケトンを含有する純粋でないヒドロコドン調製物を精製する方法が提供される。本方法は、クロマトグラフィーのカラムをクロマトグラフィー充填物質で充填し;水性の酸性化されたヒドロコドン調製物の溶液を、負荷比約10ないし約1000でカラムに通し;そして、有機溶媒の水性溶液でカラムを抽出し、10ppmより少ないα,β不飽和ケトンを有するヒドロコドンを含有する溶出液を産生する、各段階を含む。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は、粗製ヒドロコドン供給物100gを利用する、本発明の方法の非限定的例示的実施態様のフローチャートである。
図2は、本発明による逆相分取HPLC操作の非限定的例示的実施態様の結果を示すグラフであり、ここでは、生成物のUV分析が、カラム出た各溶出液分画の内容物の指標を提供する。この図はまた、時間;4つの分画各々の分画カットラインおよびこの方法で用いた移動相のアセトニトリル含有量も示す。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、図1に図解されている。この開示のために、以下の用語を定義する:
面積%:分析クロマトグラフィーから算出される純度の単位。それは、検出される総面積で除した、所望の成分の面積である。
負荷比:精製ランにおいて負荷されるアルカロイドの質量で除した、固定相の質量。
移動相:供給物が負荷された後に、カラムに送られる液体。この液体は、成分を溶出する。
二次産物:2回目のクロマトグラフィーカラムの通過を必要とする分画中で回収されるアルカロイドの混合物。これらの分画は、濃縮され、次いで別個に精製される。
固定相:供給物の成分をカラムに吸着させる媒体。
収量:カラムに供給された成分の量で除した、精製された分画中で回収される所望の成分の質量。
パーセント:断りの無い限り、本明細書および特許請求の範囲で述べる全てのパーセントの量は、重量パーセントである。
【0016】
本発明のある態様では、ヒドロコドンアルカロイドを水および酒石酸で溶解し、クロマトグラフィー供給物を形成させる。次いで、クロマトグラフィーカラムを通してヒドロコドンを精製する。精製された分画を蒸発させ、結晶化に供給する濃度(crystallization feed concentration)を達成する。3Aエタノール(85%エタノール、10%水、5%メタノール)を添加し、冷却してヒドロコドン重酒石酸塩を結晶化させる。次いで、その固体を乾燥し、粉砕する(milled)。
【0017】
結晶化の母液を、クロマトグラフィーの純粋でない分画と合わせる。次いで、この第2回収混合物を、蒸発によりヒドロコドンに濃縮する。次いで、濃縮物を、クロマトグラフィーカラムを通して精製し、粗製のヒドロコドン塩基から分ける。不純物が蓄積できないように、この精製では純粋でない分画は再利用しない。次いで、二次産物から精製したヒドロコドンを、一次産物由来の精製物質と蒸発段階で合わせる。
【0018】
この提唱される方法は、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約97%の精製回収率を有する。クロマトグラフィーの使用は、α,β不飽和ケトンレベルを10ppmより低く減少させることを可能にする。
【0019】
固定相は、アルキルシラン類、アリールシラン類、ハロアルキルシラン類、アルキルエステル類、アリールエステル類、アルキルアミン類、アルキルシアノ化合物、アルキルジオール類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、ハロアルキルエーテル類、アルキルカルボン酸類、アリールカルボン酸類、アルキルスルホン酸類、アリールスルホン酸類、ポリスチレンジビニルベンゼン、アミノポリカプロラクタムおよびグリシドキシエチルメトキシシランを含むがこれらに限定されない群の様々な物質のものであり得る。
【0020】
例示的実施態様で利用した固定相の媒体は、オクタデシル−(C18)リガンドを有するシリカであるが、オクチル−(C8)、ブチル−(C4)、トリコサン−(C23)リガンドなどの他のリガンド、シアノまたはフェニル基も用い得る。これらのリガンドは、ポリマー、酸化ジルコニウムまたはチタンなどの他の粒子に取り付けることができる。固定相は、約1ないし約200ミクロンであり、約15ないし約50ミクロンが好ましく、約20ミクロンが最も好ましい。この例示的実施例では、約50ないし約300Åの孔を有する球形の粒子を利用し、約90ないし約150Åが好ましく、約120Åが最も好ましい。
【0021】
高速分取液体クロマトグラフィーカラムを一般的に用いる。分取クロマトグラフィーカラムは、例示的な、非限定的なシステムでは、約0.1ないし約200cmの直径を含み、少なくとも約5cmが好ましい。分取クロマトグラフィーカラムの長さは、本方法に決定的ではない。好ましい長さは、約10センチメートルないし約100センチメートルの範囲にあり、より好ましい長さは、約20センチメートルないし約30センチメートルの範囲にある。さらにより好ましいのは、長さ約25センチメートルのカラムである。72 Cherry Hill Drive, Beverly, Massachusetts 01915 に営業所を有する Amicon, Inc. を含む、この形態の分取クロマトグラフィーカラムを構築できる多くの供給業者がある。Amicon, Inc. は、PROCHROM(登録商標)クロマトグラフィーカラムの製造業者である。他の製造業者には、なかんずく、1801 Maple Avenue, Evanston, Illinois 60201 に営業所を有する TechniKrom, Incorporated が含まれる。本発明は、幅広く様々な高速液体分取クロマトグラフィーカラムに適用可能であり、この特許出願で詳述する特定の実施態様に限定されない。
【0022】
ヒドロコドンおよびその不純物は、固定相に吸着され、そして薄い酸および有機極性溶媒を含有する移動相により脱離または溶出される。適する酸には、酢酸、蟻酸、蓚酸、乳酸、リンゴ酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜リン酸および硝酸が含まれるがこれらに限定されず、酒石酸が好ましい。有機極性溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノールなどの水溶性、非妨害性の溶媒のいくつからでも選択され、好ましくはアセトニトリルである。水性移動相は、水を酸性化して1ないし7のpH、より好ましくは2ないし3のpH範囲を達成することにより調製される。典型的には、水性有機溶媒溶液中の溶媒の量は、約2パーセントないし約100パーセントの範囲にある。典型的には、移動相中の有機溶媒の量は溶出処理の間に増大し、移動相の最初の数回のカラム通過では少量を使用し、次いで、増加した量を用いてカラムから一掃する。
【0023】
本発明の決定的な特徴は、負荷比である。本発明の方法で用いる負荷比は、典型的には、移動相を用いる前にカラムに負荷するヒドロコドン1グラムにつき約10ないし約1000グラムの媒体の範囲にあると見出された。好ましい例示的実施態様では、負荷比は、約10ないし約40の範囲にある。周知の通り、HPLCの分析的使用では、負荷比は10,000を超え、供給成分は分離したピークで溶出されるであろう。分取クロマトグラフィーでは、かかる負荷比は、1個のカラムでの実施回数を100倍以上に増やすか、または、カラムを10倍以上大きい直径にするであろう。分析用の負荷条件の使用は、如何なる新らたなクロマトグラフィー精製技法も、特に工業的な量では、非実用的にするであろう。実行可能な分取適用は、ヒドロコドンが所望の純度で回収されるような溶出前線(elution front)を有している。
【0024】
本発明の方法で得られる所望の純度は、当然、不純物の量およびクロマトグラフィー法の操作条件により、ある程度は左右される。不純物が多い場合、上記の好ましい範囲のうち、高いレベルの負荷比が必要とされよう。また、移動相中の有機溶媒の量は、不純物を早まって溶出しないように制御されなければならない。下記の操作実施例に見られる通り、溶出の総量が多い実施ほど、より多い不純物が産生される。
【0025】
操作に当たり、ヒドロコドン供給溶液を充填カラムに負荷した後、約2ないし約10重量パーセントの有機溶媒を含有する移動相を用いて最初の成分を溶出する。上記の通り、好ましい溶媒はアセトニトリルである。不純物の大部分が、廃棄される最初の分画中に収集される。最初の少量のヒドロコドンおよび残りの不純物を含有する第2分画を収集する。二次産物は、負荷したヒドロコドンの約10パーセントを含有するであろう。次いで、精製されたヒドロコドンを第3分画で収集する。そこでは、移動相を約8−10パーセントの範囲で溶媒を増量したものに変えるが、いくつかの例では、第3分画における有機溶媒の量は15パーセント程度に高くてもよい。第3分画は、カラムに負荷したヒドロコドンの約90パーセントを含有する。この第3分画を蒸発させて溶媒を除去し、標準的操作に準じる析出により、精製ヒドロコドンを溶液から回収する。次いで、第4分画を得て、負荷したヒドロコドンの残りをカラムから押し流す。第4分画では、用いる水性移動相は、約50パーセントの有機溶媒、典型的にはアセトニトリルを含有する。この第4分画を、次いで第2分画と合わせ、蒸発に付し有機溶媒を除去する。合わせた分画を、上記の通りに逆相分取クロマトグラフィーに付すが、不純物を排斥するために、再利用分画を収集しない。次いで、精製された、合わせた二次産物を、第3分画について上記した通りの沈殿操作に付する。
【0026】
本発明の逆相分取クロマトグラフィー法は、典型的には、約10℃ないし50℃の温度で操作し、約20℃ないし約30℃が好ましい。しかしながら、この方法において温度は決定的ではない。有意な結果の変化を伴うことなく、より高いまたはより低い温度を用い得る。
【0027】
操作に当たり、カラムから溶出された物質のUV分析を用いるのが典型的である。本発明の方法に従い溶出した物質の典型的なUVプロフィールを、図2に示す。図2のUV曲線をもたらす方法は、pH2.5のヒドロコドン重酒石酸塩の供給溶液を、1x25−cmの寸法を有し、C18リガンドを付加した20ミクロンのシリコン粒子を含むクロマトグラフィーカラムに用いた。負荷比は50であり、流速は3ml/分であった。図中、横軸は溶出時間を分で示し、左の縦軸は310nmでのUV吸光を示す。右の縦軸は、供給溶液中のアセトニトリルのパーセントを体積パーセントで示す。収集した様々な分画を、F1−F4と表示する。不純物AおよびBは、一貫して生じるピークであり、特性未詳の不純物を示す。
【実施例】
【0028】
実施例
実施例1
以下の条件を用いて2種類のクロマトグラフィーランを実施した:
目的:α,β不飽和ケトンが10ppmより少なく、不純物A、BおよびCが各々0.20面積%より少ないヒドロコドンを回収する。
供給組成:ヒドロコドン96.58面積%、不純物A0.23面積%、不純物C0.35面積%、不純物B0.20面積%、α,β不飽和ケトン31ppm。
供給pH:酒石酸で3.00
供給濃度:ヒドロコドン28−g/l
固定相:C18リガンドを有するシリカ、120オングストロームの孔を有する20ミクロンの球状粒子
カラム:直径1.0−cm、長さ25−cmおよび固定相10.2g
流速:3ml/分
流動方向:上から下
温度:25℃
検出:310nm
移動相:pH2.81の希酒石酸水溶液、および5ないし75体積パーセントの段階的グラジエントで添加するアセトニトリル(ACN)
【0029】
第1および第2試行の結果を下記表Iに示す。
表I
【表1】

【0030】
試行1では、不純物Bは0.20面積%より少なく減らされ、これは試行2では起こらなかった。他の全ての不純物は、十分に減らされた。試行1は24g媒体/gヒドロコドンの負荷比を使用し、一方、試行2は16の比でより多い供給物を負荷した。両試行は、精製分画F2においてほぼ同じヒドロコドン回収量であり、残りのヒドロコドンはF1およびF3分画に回収された。これらの分画を二次産物と称し、カラムを通して2回目の精製に付すべきものである。試行2は、供給負荷がより多いので、ヒドロコドンを回収するためにより大量のF2を必要とした。
【0031】
実施例2
目的:α,β不飽和ケトンが10ppmより少なく、不純物A、BおよびCが各々0.20面積%より少ないヒドロコドンを回収する。
供給組成:ヒドロコドン96.58面積%、不純物A0.23面積%、不純物C0.35面積%、不純物B0.20面積%、α,β不飽和ケトン31ppm。
供給濃度:水溶液中、ヒドロコドン28g/l
供給pH:酒石酸で3.00
固定相:C18リガンドを有するシリカ、120Åの孔を有する20μmの球状粒子
カラム:直径1.0cm、長さ25cmおよび固定相10.2g
流速:3ml/分
流動方向:上から下
温度:25℃
検出:310nm
移動相:水およびアセトニトリル中の希酒石酸溶液。アセトニトリルは、5ないし100体積パーセントの段階的グラジエントで添加する
【0032】
もう1対の試行は、所望の移動相pHを獲得する必要性を立証するために行った。ランの結果は、下表IIに含まれる。
表II
【表2】

【0033】
表II中、試行3は、正しい移動相pH2.54を有した。この試行は、十分に全ての不純物を減らし、ヒドロコドン87%が精製分画F2で回収された。試行4はより高い移動相pH3.19を使用した。これは、ヒドロコドンのより遅い溶出を引き起こした。より低い収率70%がF2で収集され、それは10%ACN40.0mlのフラッシュも使用した。F2の体積は、試行3の46.6mlと比較して、試行4で101.4mlであった。試行4の回収量が低いことは、不純物Cおよびα,β不飽和ケトンのより高い不純物レベル(その両者が規格より高い)とも符合した。
【0034】
実施例3
下表IIIに示す試行5および6は、分離用媒体の選択を比較する。
目的:α,β不飽和ケトンが10ppmより少なく、不純物A、BおよびCが各々0.20面積%より少ないヒドロコドンを回収する。
供給組成:ヒドロコドン96.58面積%、不純物A0.23面積%、不純物C0.35面積%、不純物B0.20面積%、α,β不飽和ケトン31ppm。
供給濃度:水溶液中、ヒドロコドン28g/l
供給pH:酒石酸で3.00
固定相:120Åの孔を有する20μmの球状粒子
カラム:直径1.0cm、長さ25cm、固定相10.2g
流速:3ml/分
流動方向:上から下
温度:25℃
検出:310nm
移動相:pH=2.78の希酒石酸水溶液およびアセトニトリル。アセトニトリルは、5ないし75体積パーセントの段階的グラジエントで添加する
【0035】
表III
【表3】

【0036】
試行5は、C18シリカを使用した。それは、不純物Cと共に、不純物AおよびBのレベルを下げることができた。試行6はC8シリカを使用した。それは、不純物Cを0.20面積%より少なく減らすことができなかった。両試行は、同じ負荷比および移動相pHで実施した。C8シリカはより速いヒドロコドンの到達およびより大きいF2分画における回収を可能にした。残念なことに、C8シリカは不純物Cを十分に分離することができなかった。
【0037】
逆相分取クロマトグラフィーを利用するヒドロコドン精製のための新規方法を記載した。特定の化合物および実施例を参照して本発明の方法を説明したが、明示的に述べない限り、かかる参照により本発明の範囲を限定することを意図しない。物質および方法の段階の順序、並びに方法の組合せについて、様々な改変を行うことができ、それは、本発明から逸脱せずに様々な方法の段階に合うように適合させる。改変は当業者に明らかであるので、上述の記載は理解の明快化のためにのみ与えられ、そこから不必要な限定を理解すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、粗製ヒドロコドン供給物100gを利用する、本発明の方法の非限定的例示的実施態様のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明による逆相分取HPLC操作の非限定的例示的実施態様の結果を示すグラフであり、ここでは、生成物のUV分析が、カラム出た各溶出液分画の内容物の指標を提供する。この図はまた、時間;4つの分画各々の分画カットラインおよびこの方法で用いた移動相のアセトニトリル含有量も示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度のヒドロコドンを純粋でないヒドロコドン調製物から回収する方法であって、純粋でないヒドロコドン調製物を逆相液体クロマトグラフィーに付すことを含み、ここで、固定相のヒドロコドンに対する負荷比は最高でも約1000であり、高純度のヒドロコドンが少なくとも約95%の純度で回収される、方法。
【請求項2】
高純度のヒドロコドンを純粋でないヒドロコドン調製物から回収する方法であって、純粋でない調製物を逆相高速分取液体クロマトグラフィーに付し、高純度のヒドロコドンを回収することを含む、方法。
【請求項3】
負荷比が約10ないし約1000の範囲にある、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
負荷比が約20ないし約40の範囲にある、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
固定相が、アルキルシラン、アリールシラン、ハロアルキルシラン、アルキルエステル、アリールエステル、アルキルアミン、アルキルシアノ化合物、アルキルジオール、アルキルエーテル、アリールエーテル、ハロアルキルエーテル、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、ポリスチレンジビニルベンゼン、アミノポリカプロラクタムおよびグリシドキシエチルメトキシシランからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
固定相が、ブチル−、オクチル−、オクタデシル−、トリコサン−、シアノ−およびフェニル−部分からなる群から選択されるリガンドを含有する結合相のシリカである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
リガンドがオクタデシル−シランである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
クロマトグラフィーカラムを、有機溶媒を含有する水性酸性溶液を含む移動相で溶出する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項9】
水性酸性溶液を酸性化するために用いる酸が、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、乳酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜リン酸および硝酸からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水性移動相のpHが、約1ないし約7の範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
pHが約2ないし約3の範囲にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機溶媒がアルコールである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
アルコールが、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびt−ブタノールからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
有機溶媒がアセトニトリルである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ヒドロコドン塩を製造するために、純粋でないヒドロコドン調製物を酸性化する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項16】
ヒドロコドン調製物を酸性化するために用いる酸が無機酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
有機酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜リン酸および硝酸からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒドロコドン調製物を酸性化するために用いる酸が有機酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
有機酸が、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、蟻酸、蓚酸および乳酸からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヒドロコドン調製物のpHが、約1ないし約7の範囲にある、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
ヒドロコドン調製物のpHが、約2ないし約3の範囲にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
有機酸が酒石酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
アセトニトリルが、約5ないし約100体積パーセントの範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
精製されたヒドロコドンを収集する間に、アセトニトリルが約2ないし約20体積パーセントの範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
α,β不飽和ケトンを含有する純粋でないヒドロコドン調製物を精製する方法であって、
(a)クロマトグラフィーカラムをクロマトグラフィー充填物質で充填すること;
(b)該カラムに、水性の酸性化されたヒドロコドン調製物の溶液を、約10ないし約1000の負荷比で通すこと、および、
(c)該カラムを、有機溶媒の水性溶液で溶出し、約10ppmより少ないα,β不飽和ケトンを有するヒドロコドンを含有する溶出液を産生すること、
の各段階を含む方法。
【請求項26】
溶出液を4個の分画に分け、これらのうち、
(i.)第1分画を廃棄し、
(ii.)第2分画を第4分画と合わせ、水および有機溶媒を実質的に減らし、次いで、カラムを通して再利用し、そして、
(iii.)第3分画は、約10ppmより少ないα,β不飽和ケトンを含有する、
請求項47に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−518237(P2008−518237A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539074(P2007−539074)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/038603
【国際公開番号】WO2006/052456
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】