分子オブジェクトを検出する装置及びシステム
【課題】光を発することが可能なオブジェクトを検出する装置および方法を提供する。
【解決手段】光の強度を決定可能な少なくとも2つの光学センサを有する光検出器と、当該光学センサにより生成された出力信号を処理し、処理結果を既知のタイプに対応する既知の結果と比較し、そのオブジェクトが当該既知のタイプか否かを決定するコンピュータとを有する。
【解決手段】光の強度を決定可能な少なくとも2つの光学センサを有する光検出器と、当該光学センサにより生成された出力信号を処理し、処理結果を既知のタイプに対応する既知の結果と比較し、そのオブジェクトが当該既知のタイプか否かを決定するコンピュータとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトを検出及び/又は識別する装置及びシステムに関するものである。更に、低強度の光を発光するオブジェクトを検出及び/又は識別することができる検出装置及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクト(Human Genome Project、HGP)はシークエンシングスループットの大量増加に拍車をかけ、且つ、シークエンシングコストを下げる。13年、30億ドル近くのコストと対照的に、各ゲノムのシークエンシングコストは著しく減少しており、実に2個の独立したゲノムが、最近、完成された(McGuire et al., Science 317:1687 (2007))。個人ゲノムは、患者とヘルスケア提供者両者の治療におけるパラダイム変化を示す。病気の遺伝的危険因子を管理することにより、ヘルスケア提供者は、すぐに予防医学を実践し、カスタマイズされた治療を提供することができる。完成したゲノムの大バンクにより、薬物設計と投薬は更に効果的になり、薬理ゲノム学の新生領域を推し進めることができる。
【0003】
多くの公知のDNAシークエンシング技術は、オブジェクトから発光される光を検出することによりオブジェクトを検出及び/又は識別する手段として、光電子工学技術を実行する。これらの技術に用いられる検出装置は高価で、且つ、効果も高くない。
【0004】
公知の方法は、通常、検出されるオブジェクトから発光される光が最高強度を有する特定の波長域内での測定に基づく。測定された強度は、その後、オブジェクトの濃度、又は、量を計算するのに用いられる。近年、単一オブジェクトから発光される光の検出が一般的になっている。例えば分子を識別するためには、例えば単一の色素分子から発光される蛍光を検出することが必要である。このような蛍光の強度は非常に弱く、よって、公知の検出装置と方法は、このような弱い光を検出するのに適さない。また、例えば、フローサイトメトリー(flow-cytometry)とフローサイトメトリー式マイクロ流体ラボチップ装置等の解析工程の感度は、光検出器の感度により制限される。このような工程の感度の増加は、材料の検出を可能にし、現在は比較的低いレベルであるが、それでも、例えば、診断又は研究用途において興味がもたれている。
【0005】
更に、多くの公知の装置において、放射光のある波長域内の部分を通過させ、放射光のその他の部分をブロックするために、カラーフィルターがよく用いられてる。従って、装置は複雑で、更に多くの空間が必要である。さらに、放射光の一部がカラーフィルターによりブロックされるので、光検出器に到達する光子数が減少する。これは、このような公知の装置と方法が、弱い発光のオブジェクトを検出及び/又は識別するのに適さなくする。
【0006】
よって、特に、低強度の光を発光するオブジェクト、例えば、単一色素分子等のオブジェクトを検出及び/又は識別する装置及びシステムが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明によると、光を発光することができるオブジェクトを検出する装置を提供する。装置は、光の強度を検出することができスタックされた少なくとも第一光学センサーと第二光学センサーを有する光検出器と、光学センサーから生成される出力信号を処理し、処理の結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較して、オブジェクトが既知のタイプに属するか判断するコンピュータとを有する。
【0008】
また本発明によると、上記の装置のアレイを有することを特徴とする複数のオブジェクトを検出するシステムを提供する。
【0009】
上述の概要の記載及び以下の詳細な説明は単なる典型例、代表例及び説明のための記載であって、特許請求の範囲に記載の本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
明細書に組み込まれ、この明細書の一部を構成する図式は、本発明の実施形態を説明し、説明と共に、本発明の原理を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、シリコンの吸収係数を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明による検出装置を示す図である。
【図3】図3は、本発明による光検出器を示す図である。
【図4】図4は、本発明による光検出器を示す図である。
【図5】図5は、本発明による検出装置に用いられる回折格子を示す図である。
【図6】図6は、2量子ドットの発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、本発明による2個のフォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、2量子ドットのスペクトルと2フォトダイオードの応答率曲線を一図に示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図16】図16は、本発明に係る検出装置の実施例を示す図である。
【図17】図17は、本発明に係る光検出器の実施例となるマルチ接合フォトダイオードを示す図である。
【図18】図18は、図11のマルチ接合フォトダイオード中の一フォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図19】図19は、図11のマルチ接合フォトダイオード中の別のフォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の一例でテストされる3オブジェクトの吸収スペクトルのグラフである。
【図21】図21は、本発明の一例でテストされる3オブジェクトの発光スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、オブジェクトを検出及び/又は識別する検出装置を含む。その検出放置は、オブジェクトから発せられる弱い光を検出することが可能である。
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図面を通して可能な限り、同じあるいは類似の構成を示すためには同じ参照符号は用いる。
1.本発明の装置
【0014】
本発明による検出装置は、光を発光することができるオブジェクトを検出、及び/又は、識別するのに用いられる。オブジェクトは、発光源、例えば、蛍光の色素分子、リン光性色素分子、量子ドット、又は、生物発光、又は、化学発光システムの発光性製品(一重項酸素、又は、励起されたケレンテラミド等の励起状態反応製品)である。本発明の装置は、少なくとも1つのレーザー等の少なくとも1つの興奮性光源(source of excitatory light)を含んでいても含んでいなくても良い。例えば、生物発光、又は、化学発光分析(chemiluminsescence)により生成されるオブジェクトの検出にとって、光吸収に依存して、発射光を生成する必要がないので、興奮性光源が不要である。オブジェクトも、発光能力がない標的分子となるが、発光することができるラベリングオブジェクト(例えば、蛍光の色素分子、リン光性色素分子、又は、量子ドット)に付着できる。特定のラベリングオブジェクトは、特定の標的分子に付着できる。よって、標的分子は、ラベリングオブジェクトにより識別される。1つ以上のラベリングオブジェクトが一標的分子に付着される。装置は、大量のオブジェクトを監視するのにも用いられる。
【0015】
本発明の検出装置は、オブジェクトから発光される光を検出する光検出器を含む。光検出器は、入射光を少なくとも部分的に吸収することができ、光に応じて、出力信号を生成する。光検出器は、光検出器の操作を制御する制御回路を有する。制御回路は、信号増幅器の回路、A/Dコンバータ、積分器、比較器、ロジック回路、読み出し回路、メモリ、マイクロプロセッサ、クロック、及び/又は、アドレスを有する。
【0016】
検出装置は、光検出器からの出力信号を処理し、判定結果を生成するコンピュータを有する。検出装置は、更に、ピンホールを有するブラインドシートを含む。検出装置は、オブジェクトが付着されるリンカーサイトも含む。リンカーサイトが、ピンホール中、又は、ピンホールに近接する外部に形成される。装置は、更に、励起光源を含む。オブジェクトは、励起光源から発光される光を吸収し、その後、検出装置により検出される別の光を発光する。オブジェクトから発光される光は、励起光源から発光される光と異なる波長を有する。
1.1 光学センサー
【0017】
本発明による光検出器は、複数の光学センサーを含む。本発明による光学センサーは、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)、フォトトランジスタ、フォトゲート、量子井戸型赤外線センサー(QWIP)、ASIC上薄膜(TFA)、金属−半導体−金属(MSM)光検知器、又は、それらの組み合わせである。本発明の一例中、光学センサーはフォトダイオードである。
【0018】
フォトダイオードは、光を電流、又は、電圧に転換する固体素子である。フォトダイオードは、通常、半導体材料、例えば、シリコンからなる。フォトダイオードの基本構造は、p型半導体とn型半導体を連結することにより形成されるp−n接合を含む。フォトダイオードは一p−n接合だけを有し、一出力信号だけを提供し、これにより、一光学センサーとみなされる。マルチ接合フォトダイオードは1つ以上のp−n接合を有し、且つ、1つ以上の出力信号を提供し、各p−n接合は一光学センサーとみなされる。
【0019】
また、フォトダイオードは、p−i−nフォトダイオードである。p−i−nフォトダイオードは、n型層とp型層間に挟まれた真性層、又は、低濃度ドープのn型層、又は、低濃度ドープのp型層を有する特別なタイプのp−n接合フォトダイオードである。p−i−nフォトダイオード中、ほぼ全体が真性層である空乏領域の厚さは調整されて、量子効率と周波数応答を最適化する(S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, pp.674-675, Wiley, 2007)。
【0020】
p型半導体とn型半導体は、それぞれ、p型不純物とn型不純物を半導体基板にドープすることにより形成される。例えば、シリコン中、リン、又は、ヒ素はn型不純物として作用し、ボロンとインジウムはp型不純物として作用する。一般に、拡散とイオン注入の2方法が用いられ、不純物を半導体基板に導入する。p型不純物をn型半導体基板に拡散、又は、注入することにより、n型半導体基板の一部がp型半導体に転換される。従って、p−n接合が形成される。また、n型不純物をp型半導体基板に拡散、又は、注入することにより、p型半導体基板の一部がn型半導体に転換され、よって、p−n接合が形成される。拡散とイオン注入以外に、エピタキシャル成長が用いられ、n型半導体、又は、p型半導体を製造することもでき、エピタキシャル成長は、一プロセスで、薄い、単結晶層が単結晶基板表面で成長する(D. A. Neamen, Semiconductor Physics & Devices, pp. 17-18, McGrawHill, 1997)。光がフォトダイオードに入射する時、電子正孔対がフォトダイオード中に形成される。電子正孔対がフォトダイオードの空乏領域中に形成される場合、空乏領域中のビルトインポテンシャルは、電子とホールを分離し、よって、光電流、又は、電圧を生成する。
【0021】
異なるフォトダイオードは、入射光を吸収する異なる能力を有する。この能力は、フォトダイオードを構成する材料の吸収係数αで示される。図1は、異なる波長でのシリコンの吸収係数を示す。入射光の光子束Φは、光がフォトダイオードを貫通する深さに伴って減少する。フォトダイオード内の深さxでの光子束は以下のように示される:
【0022】
【数1】
【0023】
λは入射光の波長で、Φ0フォトダイオード表面での光子束である。よって、空乏領域で吸収される光子束は以下により与えられる:
【0024】
【数2】
【0025】
xuとxlは、それぞれ、空乏領域の上下辺縁の深さである。
【0026】
空乏領域で吸収される光子束は、フォトダイオードの出力信号として、光電流に転換される。光電流は以下のように示される:
【0027】
【数3】
【0028】
Aは光学ウィンドウの面積で、R(λ)はフォトダイオードの応答率で、入射光のユニット電量により生成される光電流の量として定義される。
1.2 信号処理に用いられるコンピュータ
【0029】
本発明によると、光検出器により生成された出力信号を処理し、出力信号上で、数学的、又は、論理演算を実行することにより、オブジェクトの存在とタイプを決定することができるコンピュータが提供される。光学センサーからの出力信号を処理するのに用いられるコンピュータは、例えば、パソコン、マイクロプロセッサ−塩基、又は、プログラム可能な家庭用電化製品、ロジック回路等である。
【0030】
コンピュータは、データを一時的、又は、恒久的に保存する1つ、又は、それ以上のストレージデバイスと、アルゴリズムを示すソフトウェアコードを含むコンピュータプログラムを含む。コンピュータは、アルゴリズムに基づいて、処理を実行する。ストレージデバイスは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、又は、他のアクセスオプションを有するメモリである。ストレージデバイスは、コンピュータ−可読媒体、例えば、(a)ハードディスク、フレキシブルディスク、又は、他の磁気ディスク、テープ、カセットテープ等の磁気メディア、(b)光ディスク(CD−ROM、デジタル多用途ディスク−DVD)等の光媒体、(c)DRAM、SRAM、EPROM、EEPROM、メモリスティック、又は、新聞等の他の媒体等の半導体媒質により、物理的に実行される。
【0031】
コンピュータは、光検出器からの出力信号を受信する1つ、又は、それ以上の界面を有する。コンピュータは、これらの信号を処理する1つ、又は、それ以上のプロセッサを含む。
【0032】
更に、コンピュータは、ユーザーからの指示を受信する1つ、又は、それ以上の入力装置、及び、処理結果を出力する1つ、又は、それ以上の出力装置を有する。入力装置は、例えば、マウス、キーボード、又は、複数のボタンを有するコントロールパネルである。出力装置は、例えば、ディスプレイ、又は、プリンターである。
1.3 検出装置の例
【0033】
図2を参照すると、本発明の検出装置1が説明される。検出装置1は、光検出器11とコンピュータ12を有する。
【0034】
光検出器11は、第一光学センサー111と第二光学センサー112を有する。ある実施形態中、光検出器11は、2個以上の光学センサーを有する。例えば、ある実施形態中、光検出器11は、3個の光学センサー、又は、4個の光学センサーを有する。第一光学センサー111と第二光学センサー112がスタックされる。スタック配置において、オブジェクトから発光される光は第一光学センサー111を通過し、その後、第二光学センサー112を通過する。ある実施形態中、光学センサーは、垂直、又は、実質上垂直にスタックされる。別の実施形態中、光学センサーは、垂直方向に対して、特定角度(例えば、10°、30°、45°、60°等)で傾斜してスタックされる。ある実施形態中、光検出器11は、複数のp−n接合からなるマルチ接合フォトダイオードである。マルチ接合フォトダイオード中、各p−n接合は、一個別の光学センサーの基本構造を形成する。第一光学センサー111と第二光学センサー112は、図3で示されるように、それぞれ、例えば、マルチ接合フォトダイオード中の一p−n接合を有する。
【0035】
ある実施形態中、光検出器11中の異なる光学センサーは、同じ半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、AlGaAs、InGaAs、InGaAsN、InGaP、CdTe、又は、CdSからなる。ある実施形態中、光検出器11中の異なる光学センサーは、異なる半導体材料からなる。例えば、図4は、2個の垂直にスタックされた光学センサーPD−1とPD−2からなる光検出器を示す。光学センサーPD−1は、材料−1と材料−2からなり、PD−2は材料−2と材料−3からなる。材料−1、材料−2、及び、材料−3は、上述の半導体材料の組み合わせである。この他、これらの光学センサーの厚さは異なってもよい。
【0036】
図2で示されるように、オブジェクトから発光される光、例えば、光検出器11上に入射する量子ドット(QD)は、部分的に第一光学センサー111により吸収され、第一信号J1を生成する。未吸収の光は第一光学センサー111を通過し、その後、部分的に、第二光学センサー112により吸収され、第二信号J2を生成する。これらの信号はコンピュータ12に伝送されて処理される。
【0037】
ある実施形態中、別の光学素子、例えば、光学フィルタ、プリズム、又は、レンズを通過することなく(つまり、光検出器に直接入射する)、オブジェクトから発光される光は光検出器11に入射する。ある実施形態中、装置は、更に、集光光学構造を有し、オブジェクトから発光される光を集光する。
【0038】
ある実施形態中、光検出器11は、水平に配置された2つ、又は、それ以上の光学センサーを有する(図示しない)。これらの実施形態中、検出装置1は、更に、オブジェクトと光検出器11間に位置する光学構造を有する。オブジェクトから発光される光は、光学構造により、1つ、又は、それ以上の光学センサーに導かれ、部分的に、1つ、又は、それ以上の光学センサーにより吸収される。異なる波長の光に対し、光学構造を通過後の光の方向は異なる。よって、光検出器中の水平に配置された異なる光学センサーは異なる波長の光を検出する。
【0039】
ある実施形態中、光学構造はプリズムを含む。ある実施形態中、光学構造はレンズを含む。ある実施形態中、光学構造は、プリズムとレンズを含む。プリズムは、三角プリズム、Abbeプリズム、Pellin-Brocaプリズム、Amiciプリズム、又は、それらの組み合わせである。レンズは、凸レンズ、発散レンズ、又は、それらの組み合わせである。光学構造は、ガラス、プラスチック、又は、関心のある波長を透過する他の材料から形成される。光学構造の透明度は、十分高く、大部分の光線が光学構造を通過できる。
【0040】
また、ある実施形態中、光学構造は回折格子を含む。回折格子は、バイナリー回折格子、ブレ−ズ回折格子、正弦曲線回折格子、マルチレベル回折格子、ボリューム回折格子、又は、それらの組み合わせである。図5は、本発明の一実施形態による検出装置の例を示す図である。この検出装置で、光検出器は、異なる位置で、水平に配置された複数の光学センサーからなる。回折格子は、オブジェクトからの異なる波長の光を、光検出器の異なる位置に導き、異なる光学センサーにより吸収される。
【0041】
本発明によると、本発明の検出装置のアレイからなる検出システムが提供される。本発明によると、本発明による光検出器のアレイと、光検出器のアレイからの出力信号を処理し、処理結果に基づいて、検出及び/又は識別を実行するコンピュータとを有する検出システムが提供される。このような検出システムは、一度に、複数のオブジェクトを検出及び/又は識別し、よって、例えば、核酸の大規模並列シークエンシングに適する。
【0042】
コンピュータ12は、処理ユニット121と出力ユニット122を有する。処理ユニット121は、光検出器11からの出力信号を処理し、オブジェクトの存在とタイプを決定する。出力ユニット122は判定結果を出力する。ある実施形態中、コンピュータ12はストレージデバイス(図示しない)も含み、コンピュータプログラムを保存する。コンピュータプログラムはソフトウェアコードを含み、コンピュータに信号を処理するように指示する。
【0043】
光検出器11とコンピュータ12は単体半導体チップに整合される。分離した半導体チップ上に、光検出器11とコンピュータ12が形成される。
2.検出方法
【0044】
異なるオブジェクトから発光される光は異なるスペクトルを有する。例えば、図6は、2オブジェクトの2量子ドット(“QDs”)(QD−1とQD−2)の発光スペクトルである。この例で、これらの2つの発光スペクトルのピークは異なる波長にある。別の例で、異なるオブジェクトの発光スペクトルは、異なる形状を有してもよい。
【0045】
第一光学センサー111と第二光学センサー112は、異なる応答特性を有する。図7は、例となる第一光学センサー111と第二光学センサー112の応答率曲線を示す。第一光学センサー111と第二光学センサー112の応答率は、互いに異なってもよく、異なる形状を有する、及び/又は、異なる波長でピークに到達する。
【0046】
説明を分かりやすくするため、図8は、2つの光学センサーの応答率曲線と2つのQDの発光スペクトルを一図中に示す。この例で、QD−1から発光される光は、2つの光学センサーで、同じ強度の信号を生成する。一方、QD−2から発光される光は、第一光学センサー111よりも強い第二光学センサー112で、信号を生成する。
【0047】
ある実施形態中、図2で示されるように、オブジェクトから発光される光は、光検出器11に入射し、部分的に、第一光学センサー111と第二光学センサー112により吸収され、それぞれ、順に、信号J1とJ2を生成する。コンピュータ12は、信号J1とJ2を処理し、オブジェクトを識別する。
【0048】
図9は、本発明の一実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。ステップ201で、オブジェクトから発光される光は、光検出器11に入射する。ステップ202で、2つの出力信号J1とJ2が、それぞれ、第一光学センサーと第二光学センサーにより生成され、信号J1とJ2がコンピュータ12に送られる。ステップ203で、コンピュータ12は信号J1とJ2を処理する。ステップ204で、コンピュータ12は、オブジェクトの処理結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較する。ステップ205で、コンピュータ12はオブジェクトが既知のタイプに属するか判断する。
【0049】
一実施形態中、信号J1とJ2の処理は、J1とJ2の比率計算を含む。計算比率が、オブジェクトの既知のタイプに対応する一定幅内にある場合、検出されるオブジェクトが既知のタイプに属すると判断する。例えば、量子ドットQD−1の既知のタイプは、対応幅が0.7<J2/J1<1.2である。検出されるオブジェクトの計算比率が0.9の場合、オブジェクトがQD−1型のオブジェクトであると判断する。
【0050】
図10は、本発明の別の実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトが、オブジェクトの3つの既知のタイプ、Type 1、Type 2、及び、Type 3の1つに属するかを判断する。この実施形態の最初の2ステップは上述と同じである。ステップ303で、コンピュータ12はこれらの2信号J1とJ2間の関係を判断する。ステップ3304で、コンピュータ12は、関係とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の結果を比較する。ステップ305で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0051】
この実施形態中、例えば、J1>J2の場合、その後、オブジェクトがType 1オブジェクトであると判断される。J1=J2の場合、オブジェクトはType 2オブジェクトであると判断される。J1<J2の場合、オブジェクトはType 3オブジェクトであると判断される。
【0052】
図11は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトは、オブジェクトの複数の既知のタイプ、つまり、Type 1からType nの1つに属すると判断される。この実施形態の最初の2ステップは前述の実施形態と同じである。ステップ403で、コンピュータはJ1とJ2の比率を計算する。ステップ404で、コンピュータ12は、計算比率とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の比率を比較する。ステップ405で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0053】
この実施形態中、例えば、全ての既知のタイプの既知の比率中、Type i(1≦i≦n)の既知の比率が計算比率に選ばれた場合、オブジェクトはType iオブジェクトであると判断される。
【0054】
図12は、本発明の更なる実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトが、オブジェクトの複数の既知のタイプ、つまり、Type 1からType nの1つに属するか判断される。この実施形態の最初の3ステップは上述の実施形態と同じである。ステップ504で、コンピュータ12は、計算比率とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の比率幅を比較する。ステップ505で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0055】
この実施形態中、例えば、計算比率がType i(1≦i≦n)に対応する比率幅内に落ちる場合、オブジェクトはType iオブジェクトであると判断される。計算比率がどの幅にも落ちない場合、信頼水準が低く、検出されるオブジェクトのタイプが決定されないことを報告する。例えば、Type 1オブジェクトが対応する比率幅0.7<J2/J1<1.2を有し、Type 2オブジェクトが対応する比率幅J2/J1>2を有すると仮定し、検出されるオブジェクトの計算比率が1の場合、オブジェクトがType 1オブジェクトであると判断する。一方、検出されるオブジェクトの計算比率が1.5の場合、信頼水準が低く、オブジェクトのタイプが判断されないことを報告する。
【0056】
一実施形態中、J1とJ2の比率はJ2/J1である。一実施形態中、J1とJ2の比率はJ1/J2である。ある実施形態中、J1とJ2の比率はJ2/(c×J1)またはJ1/(c×J2)で、“c”は係数である。
【0057】
ある実施形態中、信号がコンピュータ12に送られた後、コンピュータ12は、オブジェクトがサンプルに存在するかを判断するステップを追加的に実行する。ある実施形態中、その決定は、スレショルド値を有する信号の全部、又は、一部を比較することにより実行される。ある実施形態中、例えば、合計がスレショルドに等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在すると判断される。一方、合計がスレショルドより小さい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。別の実施形態中、合計がスレショルド値より小さい場合、オブジェクトが存在すると判断される。合計がスレショルド値に等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。ある実施形態中、その決定は、信号とスレショルドを直接比較し、オブジェクトの存在を判断することにより実行される。例えば、ある信号が、又は、特定数の信号が、スレショルドに等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在すると判断される。一方、全信号がスレショルドより小さい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。
【0058】
ある実施形態中、光検出器11は、3つ、又は、それ以上の光学センサーを含み、それぞれ、光検出器11に入射するオブジェクトから発光される光に基づいて、出力信号を生成する。ある実施形態中、生成された2つの出力信号は、コンピュータ12により処理されて、オブジェクトを識別する。別の実施形態中、更に多くの、又は、全ての生成された出力信号がコンピュータ12により処理されて、オブジェクトを識別する。
【0059】
図13は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。この実施形態中、光検出器11は、3つの光学センサーPD1、PD2、及び、PD3を有する。サンプル中のオブジェクトが検出され、例えば、4タイプの染料1、染料2、染料3、及び、染料4のどれに属するか判断される。これらの光学センサーにより生成される出力信号は、それぞれ、IPD1、IPD2、及び、IPD3で示され、コンピュータ12に送られ処理される、本方法は以下で説明する。
【0060】
まず、サンプルは、励起光源を用いて励起される。光学センサーPD1、PD2、及び、PD3は、その後、出力信号IPD1、IPD2、IPD3を生成する。出力信号受信に基づき、コンピュータ12はこれらの信号の合計を計算する。合計がスレショルド値Vthより小さい場合、コンピュータ12は蛍光性が発生しないことの報告を生成する。そうでない場合、コンピュータは次のステップに進む。
【0061】
蛍光性が発生し、オブジェクトが存在すると判断する時、コンピュータ12は、まず、元の識別ステップを実行する。このステップで、コンピュータ12は、IPD3と全信号の合計間の第一比率を計算し、この比率と第一組スレショルド値、Vth1、Vth2、Vth3、及び、Vth4を比較し、計算された第一比率が、0とVth1の間、Vth1とVth2の間、Vth2とVth3の間、又は、Vth3とVth4の間の幅に落ちるか判断する。しかし、計算された第一比率が上述のどの幅にも落ちない場合、コンピュータ12は、発光失敗が生じたことの報告を生成する。
【0062】
この後、確認ステップが実行される。確認ステップで、IPD2とIPD3間の第二比率が計算され、第二組スレショルド値、Vth1’、Vth2’、Vth3’、及び、Vth4’と比較されて、計算された第二比率が0とVth1’の間、Vth1’とVth2’の間、Vth2’とVth3’の間、又は、Vth3’とVth4’の間の幅に落ちるか判断する。
【0063】
例えば、最初の識別ステップで、計算された第一比率がVth1とVth2の間の幅に落ちる場合、オブジェクトが恐らくタイプ染料2に属すると判断する。コンピュータ12は、その後、確認ステップを実行し、計算された第二比率がVth1’とVth2’の間の幅に落ちるか判断する。その場合、オブジェクトがタイプ染料2に属すると判断する。そうでない場合、コンピュータ12は、発光失敗が発生したことの報告を生成する。
【0064】
注意すべきことは、上述の元の識別ステップと確認ステップのいづれか1つは個別に実行されて、オブジェクトを識別することである。しかし、一識別工程中で、2ステップを実行すると、精度を改善することができる。
【0065】
図14は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。この実施形態中、光検出器11は、複数の光学センサーPD1、PD2、・・・、PDnを有し、nは1より大きく、且つ、6に等しいかそれより小さい。更に、nは3に等しい。この実施形態の装置と方法により、q個の異なるオブジェクト、例えば、D1、D2、・・・、Dqで示されるq個の異なる染料を検出及び識別する。
【0066】
この実施形態に用いられる励起光源は、k個の異なる励起明帯L1、L2、・・・、Lkを有し、kは、1に等しいかそれ以上で、3に等しいか又はそれより小さい。一組の指令に基づき、励起光源はオンとオフにでき、一組のm個の異なる励起条件Cjを生成し、1≦j≦mである。各励起条件は、異なる励起明帯の組み合わせである。同じ励起条件下で、異なる染料に対し、特定の光学センサーにより生成される出力信号は異なる。
【0067】
特定染料Dsのj−th励起条件Cj下(1≦s≦q)で、i−th光学センサーPDi(1≦i≦n)で生成される出力信号はDs{J{PDi:Cj}}として表示される。PDiとCjの異なる組み合わせは、異なるDs{J{PDi:Cj}}を生成する。これにより、未知の染料を検出、及び、識別するためにこの装置が用いられる前に、染料Dsの標準環境下で、PdiとCjの異なる組み合わせを用いて、キャリブレーション読み取りを実行し、出力信号のマトリクスを得る。このマトリクスは染料に特有で、且つ、染料Dsの標準読み取りマトリクスと称され、M{Dye Ds}、以下で示される:
【0068】
【数4】
【0069】
各染料にとって、このキャリブレーション読み取りは繰り返され、q個の標準読み取りマトリクスM{Dye D1}、M{Dye D2}, . . . M{Dye Dq}を生成する。
【0070】
背景の影響を最小化するため、染料が存在しない時、背景読み取りは、光学センサーからの出力信号を記録することにより得られ、背景読み取りマトリクスM{background}を生成する:
【0071】
【数5】
【0072】
未知のサンプルが検出装置に提供される時、異なる励起条件で、光学センサーにより生成された出力信号が測定され、サンプル読み取りマトリクスM{サンプル}が得られる:
【0073】
【数6】
【0074】
このサンプル読み取りマトリクスは、標準の読み取りマトリクスと比較されて、サンプルにどのタイプの染料が含まれるか判断する。結果に対する背景の影響を最小化するため、比較前に、標準の読み取りマトリクスとサンプル読み取りマトリクスから、背景読み取りマトリクスが差し引かれる。
【0075】
比較は、染料Dsの各タイプのランクRsを計算することにより実行される。Rs計算時、重み因子と統計方法が適用される。例えば、最小平方方法、又は、最尤度方法が用いられて、最適合を見つける。重み因子は各光学センサー、又は、励起発光モードに応用されて、分析の精度を増加する。
【0076】
Rsが計算された後、コンピュータ12は、ランクRsに従って、最も可能性の高い染料、2番目に可能性の高い染料等を報告する。
【0077】
合成方法によるシークエンシング中、DNAシーケンスは、新しく加えられたヌクレオチドを合成中のストランド(strand)に識別することにより決定される。ヌクレオチド追加工程は、ヌクレオチドに付着されたフルオロフォアから発光する蛍光により検出される。ヌクレオチド合併反応は幾つかのステップに分けられる:ヌクレオチドは、ポリメラーゼとテンプレートにより形成される活性点に結合され、リン酸塩結合を破壊し、砂糖に新しい結合を形成する。あるヌクレオチドは、単に、活性点で拡散し、出たり入ったりし、実際の合併が発生しない。即時に合併反応を監視するため、検出装置は、フルオロフォア到着、反応時間、及び、フルオロフォアタイプを検出することができる必要がある。測定保留時間の理由は、それらの合併されるヌクレオチドと比較すると、拡散するヌクレオチドが留まる時間が短いからである。保留時間スレショルドを設定することにより、実際の合併情況が検出される。情況検出に用いられる本発明の更なる実施形態に係る方法のフローチャートは図15で示される。この方法は、基本的には、前述と同様で、もう一ステップが追加されて、一状態が主張されるか判断する。よって、この方法の詳細は省略する。図16は、この実施形態に用いられる検出装置の一例を示す図である。
【0078】
ある実施形態中、光検出器11は、水平に配置された2つ、又は、それ以上の光学センサーを有する。水平に配置された光学センサーにより生成された信号がコンピュータ12に入力され、上述の一方法と類似方式で処理され、オブジェクトの存在を判断、及び/又は、オブジェクトのタイプを識別する。
3.応用
【0079】
本発明による検出装置とシステム、それを用いた方法は、核酸検出、DNAシークエンシング、バイオマーカー同定、又は、フローサイトメトリーに適用される。検出装置は、低強度光信号を検出、及び、処理し、単一分子オブジェクト識別を可能にする。
【0080】
本発明のある実施形態中、標識が検体(即ち、検出される物質)、探針、例えば、プライマー、抗体、又は、他の試薬と相互に作用する検体、又は、別の試薬、例えば、ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログを含む)に付着される。あらゆる標識が検体、又は、探針に用いられ、信号と検体の量、又は、存在の関係において有用である。
【0081】
例えば、本発明に用いられる多種の蛍光分子は、小分子、蛍光蛋白質、及び、量子ドットを含む。有用な蛍光分子(フルオロフォア)は、これに限定されないが:1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン(4-Methylumbelliferone);5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン(5-carboxy-2,7-dichlorofluorescein);5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(5-Carboxynapthofluorescein);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-HAT(ヒドロキシトリプタミン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン(Acriflavin);アクリフラビンフォイルゲンSITSA;AFP-自発蛍光蛋白質-(量子生物技術);テキサスレッド;テキサスレッド-X 共役;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッド R;チアゾールオレンジ;チオフラビン 5;チオフラビン S;チオフラビン TCN;チオライト;チアゾールオレンジ;チノポール CBS(カルコフロールホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;TriColor(PE-Cy5);TRITC (Tetramethyl Rodaminelso Thio Cyanate);True Blue;TruRed;Ultralite;ウラニンB;Uvitex SFC;WW 781;x−ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;キレート間染料、例えば、YOYO-3、サイバーグリーン、チアゾールオレンジ;広域スペクトルを被覆し、一般の励起源、例えば、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405, 430, 488, 500, 514, 532, 546, 555, 568, 594, 610, 633, 635, 647, 660, 680, 700と750の主出力波長に適合するAlexa Fluor染料シリーズのメンバー(Molecular Probes/Invitrogenより);広域スペクトルを被覆するCy染料フルオロフォア(GE Healthcare)シリーズのメンバー、例えば、Cy3, Cy3B, Cy3.5, Cy5, Cy5.5, Cy7;Oyster染料フルオロフォア(Denovo Biolabels)のメンバー、例えば、Oyster-500, -550, -556, 645, 650, 656;418nm(DY-415)から844nm(DY-831)の最大吸収範囲を有するDY-標識シリーズのメンバー(Dyomics)、例えば、DY-415,-495,-505,-547,-548,-549, -550,-554,-555,-556,-560,-590,-610,-615,-630,-631,-632,-633,-634,-635,-636,-647,-648,-649,-650,-651,-652,-675,-676,-677,-680,-681,-682,-700,-701,-730,-731,-732,-734,-750,-751,-752,-776,-780,-781,-782,-831,-480XL,-481XL,-485XL,-510XL,-520XL,-521XL;ATTOシリーズの蛍光標識(ATTO-TEC GmbH)のメンバー、ATTO 390, 425, 465, 488, 495, 520, 532, 550, 565, 590, 594, 610, 611X, 620, 633, 635, 637, 647, 647N, 655, 680,700,725,740;CAL Fluorシリーズ、又は、Quasarシリーズの染料(Biosearch技術)のメンバー、例えば、CAL Fluor Gold 540,CAL Fluor Orange 560,Quasar 570,CAL Fluor Red 590,CAL Fluor Red 610,CAL Fluor Red 635,Quasar 670;量子ドット、例えば、EviTagsシリーズの量子ドット(Evident 技術)、又は、Qdotシリーズ(Invitrogen)の量子ドット、例えば、Qdot 525,Qdot565,Qdot585,Qdot605,Qdot655,Qdot705,Qdot 800;フルオレセイン;ローダミン;及び/又は、フィコエリトリン;又は、それらの組み合わせで、米国出願公告2008/0081769を参照する。
【0082】
ある実施形態中、少なくとも1つの生物発光、又は、化学発光システムが提供され、検体、試薬、又は、反応製品等の実体の存在下で、光を生成する。例えば、生物発光、又は、化学発光システムが用いられて、合成反応によるシークエンシングで生成されるピロリン酸塩を検出する(以下で詳細に討論する);それらの光生成反応の触媒作用により、鉄や銅等の金属の存在を検出する;又は、検体に結合される試薬の量を測定し、試薬は、少なくとも1つの生物−化学発光システムの組成を含む。
【0083】
当技術分野で周知の生物発光システムの例で、システムは、少なくとも1つのルシフェラーゼ、例えば、Photinus pyralis ルシフェラーゼを含む蛍ルシフェラーゼを含む。生物発光システムを用いて、例えば、ルシフェラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェリン、及び、アデノシン5’ホスホ硫酸と合成反応するシークエンシングの組成(dATPは、類似物、例えば、dATPαSにより代替されて、ルシフェラーゼによるdATPの消耗による非特異性光を回避する)を提供することにより、ピロリン酸塩を検出する。ピロリン酸塩がヌクレオチド合併状況により生成される時、ATPスルフリラーゼは、アデノシン5’ホスホ硫酸依存方式で、ATPを生成する。ルシフェラーゼにより、ATPは、ルシフェリンをオキシルシフェリンに転換し、光を加える。別の生物発光システムは、発光たんぱく質、例えば、エクオリンに基づくシステムを含み、セレンテラジンを酸化して、セレンテラミドを励起し、光を発光する。
【0084】
化学発光システムの例は、ルミノールと過酸化水素を加え、金属触媒、又は、補助酸化剤の存在下で、発光反応を経験する;ジフェニルシュウ酸塩は、過酸化水素と適当な染料を加え、二酸化炭素を生成する複数の反応中で、励起と放射を経験し(適当な染料の例は、フェニル化アントラセン派生物、例えば、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-Bis(フェニルエチニル)アントラセン、及び、1-クロロ-9,10-bis(フェニルエチニル)アントラセン、及び、ローダミン、例えば、ローダミン 6Gとローダミン B)である;一重項酸素生成システム、例えば、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムを加える;及び、システムは、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼを含み、ルミノール、又は、他の市販の入手できる基板上で作用する。
【0085】
ある実施形態中、本発明に係る方法は、例えば、試薬、又は、検体、及び、表面、又は、標識間に、共有結合を形成するステップを含む。例えば、単一分子シークエンシング工程中、核酸分子、又は、ポリメラーゼ等の酵素が、スライドガラス等の表面に付着される。このような付着は複数のシークエンシング周期でのデータ収集を可能にする。ある実施形態中、例えば、試薬を表面、又は、標識に形成する共有結合の多くの方法は、当技術分野で周知のようである。非共有結合方法も用いられる。多くの異なる化学修飾剤が用いられて、付着を促進する。化学修飾剤の例は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基、アミン、アルデヒド、エポキシド、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジド、疎水基、膜、マレイミド、ビオチン、ストレプトアビジン、チオール基、ニッケルキレート、光反応基、ボロン基、チオエステル、システィン、ジスルフィド基、アルキル、ハロゲン化アシル基、グルタチオン、マルトース、アジド、リン酸塩、及び、ホスフィンを含む。化学改質表面を有するスライドガラス等の表面は、市販で入手できるものである。その他の改質表面は、標準の方法を用いて準備される(Microarray Biochip technologies, Mark Schena, Editor, March 2000, Biotechniques Books)。ある実施形態中、適当な修飾剤の組み合わせ(親電子修飾剤と求核修飾剤)を用いることにより、2実体間に付着を形成し、各実体は少なくとも1つの修飾剤を含む。
【0086】
ある実施形態中、実体とその他の実体の自然発生する部分の1つ上に存在する化学修飾剤を用いることにより、2実体間に付着を形成し、例えば、アミン、又は、スルフヒドリル基である。ある実施形態中、アミンと反応する修飾剤が用いられる。この反応の長所は、快速、且つ、有害な副産物の生成を回避することができることである。このような修飾剤の例は、NHS−エステル、アルデヒド、エポキシド、ハロゲン化アシル、及び、チオエステルを含む。多くのたんぱく質、ペプチド、グリコペプチド等は遊離アミン基を有し、このような修飾剤と反応して、それらをこれらの修飾剤に共有結合する。内部、又は、末端アミン基を有する核酸探針も合成され、且つ、市販で入手できるものである(IDT又はOperonによる)。よって、同じ化学成分を用いて、生体分子が(共有、又は、非共有で)、標識、表面、又は、別の試薬に結合される。
【0087】
他の官能基架橋剤が用いられて、一種の修飾剤の化学反応をもう一種に転換する。これらの基は、二官能基、三官能基、四官能基等である。それらは、同種官能性、又は、異種二官能性である。二官能基架橋剤の例X−Y−Zで、XとZは二反応基で、Yは接続リンカーである。更に、XとZが同一基、例えば、NHS−エステルである場合、生成される架橋剤、NHS−Y−NHSはホモ二官能基架橋剤で、それぞれアミンを含む2実体を接続する。XがNHS−エステルで、Zがマレイミド基の場合、得られる架橋剤、NHS−Y−マレイミドは、ヘテロ−二官能基架橋剤で、アミンを含む実体とチオ基を含み実体を連結する。異なる官能基を有する架橋剤はいろいろなところで入手可能である。このような官能基の例は、NYS−エステル、チオエステル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル(ヨードアセトアミド)、チオール、アミン、システィン、ヒスチジン、ジスルフィド、マレイミド、シスジオール、ボロン酸、ヒドロキサム酸、アジド、ヒドラジン、ホスフィン、光反応基(アントラキノン、ベンゾフェノン)、アクリルアミド(アクリダイト)、親和基(ビオチン、ストレプトアビジン、マルトース、マルトース結合たんぱく質、グルタチオン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、アルデヒド、ケトン、カルボキシル酸、リン酸塩、疎水基(フェニル、コレステロール)等を含む。
【0088】
別の修飾剤の選択(例えば、フォト架橋と熱架橋)は当業者にはよく知られている。商用技術は、例えば、Mosiac技術(Waltham, MA),EXIQONTM(Vedbaek, Denmark),Schleicher and Schuell(Keene, N.H.),SurmodicsTM(St. Paul, MN),XENOPORETM(Hawthorne, N.J.),Pamgene(Netherlands),Eppendorf(Germany),Prolinx(Bothell, WA),Spectralゲノム(Houston, TX),and COMBIMATRIXTM(Bothell, WA)によるものを含む。
【0089】
ある実施形態中、ガラス以外の表面が提供される。例えば、金属表面、例えば、金、シリコン、銅、チタニウム、及び、アルミニウム、金属酸化物、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、及び、プラスチック、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ゼオライト、及び、その他の材料も用いることができる。ある実施形態中、光の透過を可能にするため、これらの材料の層は薄く、例えば、約100nmより小さい。
3.1 核酸検出
【0090】
本発明の検出装置は、分子検出、例えば、核酸シークエンシングの方法、又は、プロセスに対し、又は、それにおいて、システムの一部として用いられる。この装置とそれを利用した方法、又は、プロセスは、例えば、分析と診断応用に有用である。これらの応用は、個人、公共、商業、又は、工業用である。
【0091】
幅広い変化のシークエンシングモダリティにより、本発明による検出装置が使用されて、且つ、シークエンシング単一分子に適合する。現有の生体素子装置と比較すると、本発明による検出装置は、簡単な設計、アセンブリ、及び、製造である。例えば、順序付けされる核酸が、システムのアレイ上のランダムなリンカーサイトに付着されて、所定位置で核酸を蒸着、又は、合成する時間の消耗と高価なロボットの使用を回避する。
【0092】
本発明による検出装置は、生体分子検出の方法と処理に対し、又は、それにおいて、システムの一部として用いられ、核酸ハイブリダイゼーション、又は、シークエンシング、例えば、全ゲノムシークエンシング、転写プロファイリング、競争転写プロファイリング、又は、遺伝子同定を含む。生体分子検出は、結合相互作用、例えば、たんぱく質/たんぱく質、抗体/抗原、レセプター/リガンド、及び、核酸/たんぱく質の検出及び/又は測定も含む。これらの応用は、分析、又は、診断処理、及び、方法に有用である。
【0093】
ある実施形態中、本発明による提供される装置上での検出に適する核酸は、結合分子の一部で、結合相互作用を分析するのに適する分子、例えば、たんぱく質、別の核酸、炭水化物成分、又は、小分子を、本発明により提供される装置上のリンカーサイトに付着する。ある実施形態中、結合分子は、更に、捕捉分子を含み、結合相互作用のために分析される分子に結合される。例えば、直接シークエンシング、又は、ハイブリダイゼーションにより、結合分子中の核酸は結合分子の捕捉分子の識別タグとして作用する。
【0094】
本発明に係り提供される方法は、検出される分子を、本発明により提供される検出システムのアドレスアレイに付着するステップを含む。ある実施形態中、アドレスアレイは、複数のピンホールを有するブラインドシートを含み、ピンホール中か、周辺に、リンカーサイトが形成される。よって、本発明による検出システムは、同時に、何百万の核酸セグメントを読み取る。各セグメントが、例えば、1000基長さの場合、単一装置は、数十億ビットのシーケンス順序を得て、全ゲノムシークエンシングと再シークエンシングを可能にする。
3.1.1 検出される分子
【0095】
本発明に係り提供される方法により検出するのに適する核酸は、あらゆる核酸、例えば、DNA、RNA、又は、PNA(ペプチド核酸)を含み、且つ、既知と未知両方のあらゆるシーケンスを含み、自然発生、又は、人工シーケンスを含む。核酸は、自然に派生、組み換え製造、又は、化学的に合成される。核酸は、自然発生のヌクレオチド、自然に存在しないヌクレオチドアナログ、又は、改質されたヌクレオチドを含む。検出される核酸の長さは、実際の応用によって変化する。ある実施形態中、核酸は、少なくとも10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000塩基、又は、それ以上を含む。ある実施形態中、核酸は、10から20、10から50、10から100、50から100、50から500、50から1000、50から5000、500から2000、500から5000、又は、1000から5000塩基を含む。
【0096】
検出に用いる核酸は一本鎖である。例えば、加熱、又は、アルカリ、又は、他の化学処理等の公知技術により、一本鎖核酸テンプレートが二本鎖分子から派生する。一本鎖核酸テンプレートは、化学、又は、ビトロ合成により生成することもできる。
【0097】
ある実施形態中、検出される核酸は、その5’、又は、3’端で、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、核酸は、更に、核酸の5’端、3’端、又は、5’端と3’端の両方に結合される1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマーを含む。特定の実施形態中、エンドリンクプライマーは、核酸の3’端に付着される。エンドリンクプライマーが用いられ、検出される核酸を装置上のリンカーサイトに付着すると共に、1つ、又は、それ以上の検出するプライマー、例えば、シークエンシングプライマーに相補配列を提供する。
3.1.1.1.エンドリンクプライマー
【0098】
エンドリンクプライマーは、通常、100ヌクレオチド以下から構成される小核酸分子である。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、長さが、少なくとも5、10、15、20、25、30、50、75、90ヌクレオチド、又は、それ以上である。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、長さが、8から25、10から20、10から30、又は、10から50ヌクレオチドである。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは分岐していないが、別の実施形態中、それらは分岐している。
【0099】
エンドリンクプライマーは、検出される核酸をアドレスアレイ上のリンカーサイトに付着するのに用いられる。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、共有結合(エステル、又は、チオール結合)により直接、又は、非共有結合、例えば、抗原/抗体、又は、ビオチン/アビジン結合により、核酸をアレイ表面に結合する。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、核酸をアレイ表面に、例えば、ポリメラーゼ等の中間分子を結合することにより、間接的に連結する。従って、エンドリンクプライマーは、改質されたヌクレオチドを含む、又は、その他の方式で修飾して、当技術分野で周知の方法、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合により、リンカーサイトへの付着を促進する;又は、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合により、例えば、エンドリンクプライマーは、抗原部分、又は、ビオチン化ヌクレオチドを含むヌクレオチドを含む。特定の実施形態中、改質されたヌクレオチドは、エンドリンクプライマーの3’端上にある。ある実施形態中、エンドリンクプライマーの5’端は、改質されたヌクレオチドを含む。
【0100】
エンドリンクプライマーは、核酸を検出するのに用いられる1つ、又は、それ以上のプライマー、例えば、シークエンシングプライマーの相補体となる。ある実施形態中、プライマーは、ハイブリダイゼーションにより、核酸を検出し例えば、プライマーは検出可能標識、例えば、蛍光標識を含む。ある実施形態中、エンドリンクプライマーの5’端は、シークエンシングプライマーに相補する配列を含む。ある実施形態中、シークエンシングプライマーに相補するエンドリンクプライマーが配置されて、シークエンシングプライマーの3’端は、順序付けされる核酸で、第一ヌクレオチドに直接隣接する。
【0101】
ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、リガーゼ、例えば、DNAリガーゼにより、検出される核酸の末端に加えられる。ある実施形態中、ライゲーションの前、エンドリンクプライマーと検出される核酸は一本鎖である。別の実施形態中、二本鎖である。更に別の実施形態中、1つは一本鎖で、もう1つは二本鎖である。ライゲーションは、当技術分野で周知のようである。例えば、ポロニーシークエンシング方法中、Shendure et al.(Science, 309:1728-1732 (2005))は、ニュー・イングランド・バイオラボ(NEB)のクイックライゲーションキットにより、T30エンドリンクプライマー(32bp)をサンプルDNAセグメントに連結する。ライゲーション反応液は、0.26 pMoleのDNA、0.8 pMoleのT30エンドリンクプライマー、4.0μl T4 DNAリガーゼを、1Xクイックライゲーションバッファ中に含む。混合後、反応溶液は、室温で、約10分間培養され、その後、氷の上に置かれる。サンプルを65℃になるまで、10分間加熱して、連結反応を停止する。
【0102】
別の実施形態中、エンドリンクプライマーは、検出される核酸上で合成される。例えば、エンドリンクプライマーは、例えば、ターミナルトランスフェラーゼにより加えられるホモポリマーである。例えば、Harris等(Science 320:106-109(2008))は、poly A tailをDNAテンプレートに加え、ウィルスゲノムの単一分子シークエンシング中で、poly T シークエンシングプライマーの相補体となる。
3.1.1.2 シークエンシングプライマー
【0103】
シークエンシングプライマーは、検出される核酸のセグメント、又は、関連するエンドリンクプライマーに相補される一本鎖のオリゴヌクレオチドである。ある実施形態中、シークエンシングプライマーは、長さが、少なくとも8、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド、又は、それ以上である。特定の実施形態中、シークエンシングプライマーは、長さが、8から25、10から20、10から30、又は、10から50ヌクレオチドである。シークエンシングプライマーは、自然発生のヌクレオチド、自然界に存在しないヌクレオチドアナログ、又は、改質されたヌクレオチドを含むあらゆるタイプのヌクレオチドで構成されている。ある実施形態中、シークエンシングプライマーの5’端は改質されて、1つ、又は、それ以上のエンドリンク分子を含むシークエンシングプライマーが順序付けされる核酸と混成された後、アドレスアレイへのリンカーサイトの結合を促進する。
【0104】
ある実施形態中、シークエンシングプライマーは、改質されたヌクレオチド、例えば、ロック核酸(LNAs;改質されたリボヌクレオチド、ポリ核酸中で、増強した塩基スタック相互作用を提供する)を含む。LNAの有用性の解説は、Levin et al.(核酸 Research 34(20):142 (2006))が、LNA−含有プライマーは改善された選択性、対応するロックされていないプライマーに関連する強い結合を有することを示す。プライマー中の異なる位置で、3 LNA ヌクレオチド(蓋中)を含むMCP1 プライマー(5’-cttaaattttcttgaat-3’)の3つの変異体が製造される:MCP1-LNA-3’(5’-cttaaattttCtTgaAt-3’);MCP1-LNA-5’(5’-CtTaAattttcttgaat-3’);及び、MCP1-LNA-even(5’-ctTaaatTttctTgaat-3’)。全LNA-置換プライマーは高いTmを有し、MCP1-LNA-5’プライマーは特に高いシークエンシング精度を示す(Phred Q30 counts)。従って、特定の実施形態中、シークエンシングプライマーは、その5’領域、つまり、シークエンシングプライマーの5’端の半分、三分の一、又は、四分の一で、少なくとも1つのロックヌクレオチドを含む。
【0105】
本発明の検出装置に適用される前に、シークエンシングプライマーと一本鎖サンプル核酸(少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含む検出される核酸)が混成される。シークエンシングプライマーとサンプル核酸は、例えば、5X SSC(又は、5X SSPE)、0.1% Tween 20(又は、0.1% SDS)、及び、0.1% BSAバッファ等の塩分含有溶液中で、サンプル核酸とシークエンシングプライマーのモル過剰を混合することにより合成される。混合物は、65℃まで少なくとも5分加熱され、ゆっくりと室温まで冷却され、プライマー/テンプレートアニーリングを可能にする。余剰プライマーは、分子篩を含む適当な手段により消去される。
【0106】
エンドリンクとシークエンシングプライマー両方を含むプライマーは、シーケンスの外観検査、又は、コンピュータ補助プライマー設計を含む適当な手段により設計される。多くのソフトウェアパッケージが用いられて、プライマー設計を補助し、DNAStarTM(DNAStar, Inc., Madison, WI)、OLIGO 4.0(National Biosciences, Inc.)、Vector NTI(Invitrogen)、Primer Premier 5(Premierbiosoft)、及び、プライマー3(Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA)を含む。プライマー設計は、例えば、順序付けされる分子、選択性、長さ、所望の融解温度、二次構造、プライマー二量体、GC含量、バッファ溶液のpHとイオン強度、及び、使用する酵素(ポリメラーゼ、又は、リガーゼ)を考慮する。例えば、Joseph Sambrook and David Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press;3rd edition(2001)を参照する。
3.1.1.3 アレイ表面への接着
【0107】
シークエンシングプライマーと1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマーを含む順序付けされる核酸がアニーリングされた後、この複合体が適当なバッファで用意され、アドレスアレイの表面に応用され、結合することが許される。ある実施形態中、サンプル核酸(検出される核酸と1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマー)がリンカーサイトに付着され、その後、シークエンシング、又は、検出中のプライマーが提供される。別の実施形態中、装置に提供される前に、複合体が混成される。一サンプル核酸だけが結合されるリンカーサイトは実効アドレスとして知られる。ある実施形態中、複合体が検出システムに提供され、且つ、サンプル核酸が、アドレスアレイ上のランダムなリンカーサイトに付着される。別の実施形態中、サンプル核酸が、ロボット、又は、液体処理システムを含む適当な手段により、アドレスアレイ上の所定のリンカーサイトに提供される。
【0108】
核酸を固定支持物に付着する適当な手段は当技術分野で周知のようである。ある実施形態中、サンプル核酸は、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合等の共有結合により、直接リンカーサイトに付着される、又は、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合等の非共有結合により、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、サンプル核酸は、介在分子により、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、介在分子は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼである。
【0109】
直接、核酸の共有結合の説明を例とすると、Adeesi et al.(Nucleic Research, 28:87 (2000))は、プライマーの5’端を修飾し、SH官能基を含む。Adeesi等の方法によると、核酸は、50μMリン酸塩緩衝食塩水(“PBS”)(NaPi: 0.1 MNaH2PO4 pH 6.5, 0.1 M NaCl)中で準備される。その後、約1−5μlのプライマー溶液がシラン処理したスライドガラスの表面に提供され、湿度制御ボックスで、室温で、約5時間培養され、プライマーをチップ表面に結合する。結合反応完了後、PBS溶液は、5分間、室温で2回、振動洗浄されて、非接着DNAを除去する。洗浄後、10mMβ−メルカプトエタノールがPBS溶液に加えられて、室温下で、アドレスアレイ表面を洗い流すのに用いられ、非接着DNAのチオール基を非活性化する。次に、アレイ表面が、例えば、一回5X SSC 0.1% Tween と一回5X SSC バッファ溶液で洗浄される。従って、ある実施形態中、Adeesi 等に用いられる方法が本発明に係り提供される方法に用いられて、サンプル核酸複合体を、例えば、シークエンシングプライマーの5’端、又は、サンプル核酸により、リンカーサイトに付着する。
【0110】
別の実施形態中、サンプル核酸は、例えば、ビオチン化ヌクレオチドで、且つ、リンカーサイト表面上のアビジンを結合する。別の実施形態中、サンプル核酸は抗原部分を含み、BrdU、又は、ジゴキシゲニンを含み、リンカーサイト上の抗体(又は、その断片)により結合される。理解できることは、“抗体”は、例えば、1つ、又は、それ以上のCDRドメインを含む免疫グロブリン分子の断片を含む;又は、可変重鎖、又は、可変光フラグメントであることである。抗体が自然発生、組み換え、又は、合成される。抗体は、例えば、多クローン性、及び、単クローン性変異体も含む。ある実施形態中、抗体は、少なくとも106、107、108、109M又はそれ以上の結合定数により、それらの抗原を結合する。抗体の構造、機能、及び、生成は、当技術分野で周知のとおりである。例えば、Gary Howard and Matthew Kasser, Making and Using 抗体: A Practical Handbook CRC Press; 1st edition(2006)を参照する。
【0111】
更に別の実施形態中、サンプル核酸は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼにより、リンカーサイトに付着される。熟練した職人なら理解できるように、酵素機能を保留するため、入手可能情報、例えば、酵素の一次、二次、及び、三次構造が考慮されなければならない。例えば、Taq とPhi29ポリメラーゼの構造は当技術分野で周知のとおりである:それぞれ、Kim et al., Nature, 376:612-616 (1995)とKamtekar et al., Mol. Cell, 16:609-618(2004)を参照する。ポリメラーゼを表面に固定し、活性を保持する方法は、当技術分野で周知のとおりで、米国特許出願公告No.2008/0199932(2008年8月21日公開)とKorlach et al. PNAS 105:1176-1181(2008)を参照する。
【0112】
ある実施形態中、リンカーサイトのアルデヒド−改質表面は、アルデヒド含有シラン試薬で処理される。アルデヒドは、迅速に、たんぱく質上の1級アミンを反応し、Schiff’の塩基連鎖を形成する。一般に、NH2−端で更に反応するα-アミン以外に、多くのたんぱく質はそれらの表面上でリジンを露呈するので、各種方向でスライドに付着され、たんぱく質の異なる側が、溶液中の他のたんぱく質、又は、小分子と反応するのを許可する。別の実施形態中、UV光活性化により、光子HS(N-ヒドロキシ琥珀酸(succimido)カルボン酸塩分子は、炭素鎖リンカーによりアジドニトロベンゼン分子に連結される)は、装置上のアミン−改質表面に付着される。これらの実施形態中、窒素を消去することにより、UV光がアジドニトロベンゼン部分を励起して、反応性に極めて富むナイトレンを生成する。ナイトレンは、迅速に、装置表面上のNH2と反応し、ヒドラジン結合を形成する。リンカーのもう一端はNHSカルボン酸塩で、ポリメラーゼの表面上のリジンと反応し、アミド共有結合を生成する。別の実施形態中、緩衝状況下で、NHSカルボン酸塩部分は、装置の表面上の1級アミンと反応する。UV光が、アジドニトロベンゼン部分の活性化に用いられ、極めて反応性に富むナイトレンを電子不足群として形成し、迅速に、ポリメラーゼ上のリジン残基の1級アミンと反応する。
3.1.2 シークエンシングモダリティ
【0113】
本発明により提供される検出装置及びシステムは、既知の手段により、核酸の検出と順序付けに用いられ、例えば、米国特許No.6,946,249とShendure et al., Nat. Rev. Genet.5:335-44(2004)で再検討される。シーケンスモダリティは、既知の単一分子シークエンシング方法から選択される。ある実施形態中、シークエンシング方法は、DNAポリメラーゼ、又は、DNAリガーゼの選択性に依存し、且つ、例えば、塩基拡張シークエンシング(単一塩基段階的拡張)を含み、合成によるマルチ塩基シークエンシング(例えば、末端的標識ヌクレオチドにより、シークエンシングする)と揺動シークエンシングはライゲーション塩基である。この方法は、通常、少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含むサンプル核酸を提供するステップを有する。核酸が、例えば、リンカーサイトで、(直接的、又は、間接的に)基板に取り付けられる。核酸は、一本鎖形式で提供されるか、又は、例えば、化学、又は、熱変性により一本鎖にされる。その後、シークエンシングが、シークエンシングプライマーで開始される(リガーゼ塩基のシークエンシングは、一般に、アンカープライマーのことで、類似用途をシークエンシングプライマーに提供する)。
【0114】
単一分子シークエンシングモダリティにとって、本発明は、単一分子を並べなおすことができる長所を提供することができる。例えば、シークエンシング読み取り完了後、シークエンシングプライマーと拡張ヌクレオチドがサンプル核酸から削除され、装置が洗浄され、シークエンシングが繰り返される。各種実施形態中、再シークエンシングは、同じ、又は、異なる方法により実行される。同一分子を再シークエンシングすることにより、シークエンシングエラーは、シークエンシング読み取りの回数の累乗に落ちることが予期される。例えば、単一読み取りの各塩基のエラー比率が10−3の場合、その後、2度の読み取り後、(10−3)2、即ち、10−6に落ちる。この単一分子シークエンシングの特別な長所は、シークエンシングに用いられる改質されたヌクレオチドが、それらの標識、又は、保護基の生成、例えば、ニセの検出を失うからである。
【0115】
一般に、単一分子シークエンシング中、順序付けされる少なくとも1つの核酸分子が基板に付着され、プライマーと接触する。プライマーは、例えば、少なくとも1つの酵素触媒による重合、又は、連結反応を実行することにより改質される。少なくとも1つの反応が光の発射を生じ、光の発射と核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性が相関する。“生じる”光の発射は、少なくとも1つの反応が少なくとも1つの状態を生じることを指し、この状況下で、核酸で構成される少なくとも1つの塩基の特性と相関する光の発射が発生する;この発生は、興奮性光線、化学、又は、生物発光システム等と相互作用する。少なくとも1つの状態は、例えば、フルオロフォアと少なくとも1つの反応の製品の合併、又は、ピロリン酸塩の釈放である。よって、光線は外部の励起の有無にかかわらず生成される。例えば、単一分子シークエンシングは、共有結合した検出可能標識、例えば、蛍光標識、及び、保護基を含む可逆終止物塩基類似体により実行され、二次拡張を回避し、類似物がプライマーに加えられた後、励起され、別の循環の拡張を許可した後、標識と保護基が除去される。また、拡張ステップの産物、例えば、ピロリン酸塩は、化学、又は、生物発光検出システムを提供することにより、外部の励起なしで検出され、生物発光検出システムは、ピロリン酸塩−依存方式で、光を発射する。これら、及び、別のモダリティは、以下で詳細に討論する。
【0116】
発射する光は、核酸により構成される少なくとも1つの塩基の特性と相関する。ある実施形態中、相互関係は一時的である;例えば、光の発射時間は少なくとも1つの塩基の特性を示し、例えば、異なる塩基類似体が、異なる回の重合反応中での使用に提供される時の例である。ある実施形態中、相互関係はスペクトルである;例えば、放射光のスペクトルは、少なくとも1つの塩基の特性を示し、例えば、異なるフルオロフォアを含む異なる塩基類似体が重合反応の使用に提供される時の例である。
【0117】
ある実施形態中、単一分子核酸シークエンシングは、複数のシークエンシング周期からなる。理解できることは、シークエンシング周期は、第一塩基が識別された後、核酸から構成される少なくとも1つの第二塩基を識別するため、少なくとも1つの塩基の特性に相関する光の発射と重複を発生することである。よって、単一分子核酸シークエンシングを含む本発明に係る方法中、単一分子核酸シークエンシングは、少なくとも1つの一定数のシークエンシング周期を含み、少なくとも一定数の光の発射が、核酸で構成される少なくとも一定数の塩基の特性に共同で相関するように導き、且つ、方法は、核酸で構成される少なくとも一定数の塩基の識別を含む。ある実施形態中、一定数は、例えば、2、3、4、5、10、20、50、100、200又は500である。
【0118】
シークエンシング方法は、核酸から構成される1つ、又は、それ以上の塩基の特性を決定するステップを含む。ある実施形態中、本発明に係る方法において、単一分子核酸シークエンシングを実行して生じる光の発射が、少なくともの第一光学センサーと第二光学センサーを有する少なくとも1つの検出器により検出され、少なくとも2つの光学センサーからの出力信号が処理され、核酸から構成される少なくとも1つの塩基の特性が、処理の少なくとも1つの結果と少なくとも1つの既知のタイプに対応する少なくとも1つの既知の結果を比較することにより決定される。
【0119】
例えば、処理の結果は、反応が発生する時間を示す;発射する光は一時的に、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性に相関し、この時間は、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基を識別するのに用いられる。
【0120】
別の実施形態中、処理の結果は、フルオロフォアと反応の産物の合併の決定である;発射する光が、スペクトル的に核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性と相関する時、その決定は、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基を識別するのに用いられる。
3.1.2.1 塩基拡張シークエンシング:段階的拡張
【0121】
ある実施形態中、本発明により提供される検出装置は、塩基拡張シークエンシング期間で生成される光を検出するのに用いられる。ある実施形態中、塩基拡張シークエンシングは、順序付けされる一本鎖核酸、順序付けされる核酸の3’端に関連するエンドリンクプライマー、及び、アニーリングされるシークエンシングプライマーを含む一部の二重サンプル核酸を、リンカーサイトに付着させることにより開始される。ある実施形態中、ポリメラーゼと改質されたヌクレオチドは、適当なバッファ中で、光検出装置に適用される。ある実施形態中、リンカーサイトで、ポリメラーゼにより、サンプル核酸複合体がリンカーサイトに付着される。ある実施形態中、ヌクレオチドは共有結合した検出可能標識、例えば、蛍光標識、及び、保護基を有し、二次拡張を回避する。従って、単一ヌクレオチドをシークエンシングプライマーの3’端に加えた後、シークエンシングが中断する。
【0122】
塩基拡張シークエンシング反応の一実施形態の第一ステップで、蛍光保護基を有するヌクレオチドは、DNAポリメラーゼをシークエンシングプライマーの3’端に加える。ある実施形態中、蛍光標識は保護基として機能する。別の実施形態中、それらは分離部分である。単一ヌクレオチドは、シークエンシングプライマーの3’端で合併され、且つ、対応する光検出器により、その標識により識別される。蛍光標識と保護基は、その後、化学、又は、酵素溶解により除去され、塩基拡張の追加周期を許可する。ある実施形態中、標識と保護基は、同時、又は、連続して、順序中から除去される。塩基の加入順序をコンパイルすることにより、3’から5’方向で、一回につき一塩基、サンプル核酸のシーケンスが推定される。
【0123】
一般に、段階的拡張期間に加えられるヌクレオチドを認識する2方法がある。第一状況で、4個のヌクレオチドは全て、同じ検出可能標識を有するが、所定順序で、一回に1個加えられる。拡張ヌクレオチドの識別は、拡張反応で、ヌクレオチドが加えられる順序により確認される。拡張期間中に整合された塩基を認識する第二モード中、4個の異なるヌクレオチドは同時に加えられ、それぞれ、区別できる検出可能標識と結合される。異なる実施形態中、標識の励起、又は、発光スペクトル、及び/又は、強度は異なる。拡張で加えられるヌクレオチドの識別は、検出された標識の強度、及び/又は、波長(例えば、励起、又は、発光スペクトル)により判断される。
3.1.2.2 合成によるシークエンシング:複数ステップの拡張
【0124】
ある実施形態中、合成によるシークエンシングは、複数の連続した拡張、例えば、保護基の使用なしで実行される。これらの実施形態中、重合反応は、ヌクレオシド三リン酸の加水分解後のピロリン酸塩の釈放、つまり、βとγリン酸塩複合体の釈放を検出することにより監視される。上述のように、この複合体は、例えば、複合体上の蛍光部分により直接、又は、間接的に、例えば、ピロリン酸塩を化学、又は、生物発光検出システムに結合することにより検出される。
【0125】
ある実施形態中、サンプル核酸は、末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドを用いることにより、実質的に連続して順序付けされる。末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドとそれらを用いた方法の実施形態が示され、例えば、米国特許第7,361,466号と米国特許公告番号2007/0141598、公開日2007年6月21日である。簡単には、ヌクレオチドを本発明により提供されるシステムに提供し、重合中に加水分解され、標識ピロリン酸塩は対応する光検出器により検出される。ある実施形態中、全部で4個のヌクレオチドは、区別できる標識を有し、且つ、同時に加えられる。ある実施形態中、ヌクレオチドは、例えば、区別がつかない、即ち、相同の標識を有し、且つ、所定順序で順に加えられる。区別がつかない標識を有するヌクレオチドの順次敵、循環的追加は、依然として、多重、連続した重合ステップを、例えば、ホモポリマーシーケンス中で許す。
3.1.2.3 リガーゼ塩基のシークエンシング
【0126】
別の実施形態中、サンプル核酸は、リガーゼ塩基のシークエンシングにより、本発明により提供される装置上で順序付けされる。リガーゼ塩基のシークエンシング方法が開示され、例えば、米国特許第5,750,341、PCT公告WO 06/073504、及び、Shendure et al. Science, 309:1728-1732 (2005)である。Shendure等の方法中、例えば、未知の一本鎖DNAサンプルは、二エンドリンクプライマーの側面に位置し、且つ、固定支持物上で固定される。未知配列中の特定の位置(即ち、特定のエンドリンクプライマーに近接するnth塩基)は、アンカープライマー(シークエンシングプライマーの類似物)をエンドリンクプライマーの1つにアニーリングし、且つ、その後、4個の退化した九量体のたまりを混合物に提供することにより調査される。4個の九量体は全て、区別できる蛍光標識を有し、質問位置(query position)を除く全部の位置では退化し、各九量体は、区別できる塩基−A、C、G、又は、Tにより問い合わせる。サンプルが洗浄され、蛍光スキャンされ、質問する塩基が識別される。その後、サンプル核酸から、アンカープライマーと結合された九量体が除去され、装置が洗浄され、処理が繰り返され、異なる位置を質問する。有利なのは、この方法は、非進行性で、即ち、塩基は順序で質問されない。よって、エラーは蓄積されない。この他、この方法は、5’、又は、3’方向から、ヌクレオチドに質問し、即ち、標準の5’→3’DNA合成を必要としない。この方法により、通常、合計約13個の塩基のサンプル核酸が順序付けされる。
3.1.2.4 第三世代のシークエンシング
【0127】
ある実施形態中、サンプル核酸は、第三世代のシークエンシングを用いて、本発明による提供される装置上で順序付けされる。第三世代のシークエンシング中、多くの小さい(~50nm)孔を有するアルミニウムコーティングのスライドがゼロモードの導波路として用いられる(例えば、Levene et al.,Science 299, 682-686 (2003)を参照する)。アルミニウム表面は、ポリホスホン酸塩化学性質、例えば、ポリビニルホスホン酸塩化学性質(例えば、Korlach et al.,Proc Natl Acad Sci USA 105, 1176-1181 (2008)を参照する)により、DNAポリメラーゼの付着から保護される。これは、DNAポリメラーゼ分子をアルミニウムコーティングのホール中の露出シリカに優先吸着する。この設置は、エバネセント波現象により、蛍光性背景の減少を許し、高濃度の蛍光標識されたdNTPの使用を許す。フルオロフォアは、dNTPの末端リン酸塩に付着されて、蛍光性が、dNTPの合併で釈放されるが、フルオロフォアは、新しく合併されるヌクレオチドへの付着を維持せず、複合体が直ちに、別の循環の合併を準備することを意味する。この方法により、dNTPのアルミニウムコーティングのホールに存在する独立したプライマー−テンプレート複合体への合併が検出される。例えば、Eid et al., Science 323, 133-138 (2009)を参照する。本発明による検出システムの使用で、高感度を提供し、合併された dNTPの更なる効率的検出を可能にし、比較的低エラー比率、及び/又は、長い説明可能なシーケンスデータの読み取りが達成される。
3.1.3 追加応用
【0128】
本発明による検出システムは、同時に、何百万の核酸セグメントを検出する。各セグメントが、例えば、1000塩基長さの場合、単一装置は、一回で、数十億個を超える塩基シーケンスを得る。ここでされ提供される装置の追加応用と方法は以下で討論する。
3.1.3.1 全体のゲノムシークエンシング
【0129】
本発明による検出システムは、例えば、ウィルス、バクテリア、菌類、真核生物、又は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、人類のの全部、又は、一部のゲノムシークエンシングを実行するのに用いられる。
【0130】
シークエンシングのために、ゲノムDNAは、少なくとも20、50、100、200、300、500、800、1200、1500ヌクレオチド、又は、それ以上の断片に分けられる。ある実施形態中、分けられたゲノムDNAは、20〜50、20〜100、20〜500、20〜1000、500〜1200又は500〜1500のヌクレオチド長さである。ある実施形態中、上述のシークエンシングのために、関連するエンドリンクプライマーに沿った順序付けされる核酸が一本鎖にされ、シークエンシングプライマーにアニーリングされ、本発明により提供されるシステムに提供される。
3.1.3.2.遺伝子発現プロファイル
【0131】
別の実施形態中、遺伝子発現プロファイルのために、本発明による検出システムが、cDNAの順序付けに用いられる。例えば、装置上で検出される特定序列の相関する周波数を測定することにより、mRNA程度が定量化される。数百万のcDNA分子は、本発明により提供される装置上で平行に順序付けされる。細胞は、平均、350,000m個のRNA分子を含み、百万のシークエンシング反応中、各細胞の複製でも存在する転写産物は、3回順序付けされることが期待される。従って、本発明により提供される装置は、単一の複製数の感度を有する単一分子シークエンシングに適する。
【0132】
cDNA合成は当技術分野で周知であり、一般に、総RNA抽出と任意的なmRNA濃縮を含む。例えば:第一ストランド合成のための逆転写;RNAse処理で、残余RNAを除去する;第一ストランドのランダム六量体プリミング、及び、DNAポリメラーゼによる第二ストランド合成を含むステップにより、cDNAがmRNAから生成される。合成cDNAは、本発明により提供される装置上でのシークエンシングに適する。DNAとRNA両方の分離と準備の方法は、当技術分野で周知のようである。例えば、Joseph Sambrook and David Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd edition (2001)を参照する。
【0133】
ある実施形態中、cDNAはアダプターポリ核酸と結合し、アダプターは、専門の制限酵素により処理、最後に、処理された核酸が、本発明による提供される装置のリンカーサイトに付着した相補オリゴヌクレオチドと結合する。特定の実施形態中、アダプター分子はエンドリンクプライマーである。
【0134】
ある実施形態中、本発明によると、mRNAのポリA尾部は適当なエンドリンクプライマーとなり、ポリTシークエンシングプライマーと相補する。
3.1.3.3 結合相互作用の検出及び/又は測定
【0135】
別の実施形態中、検出装置は、例えば、DNA/DNA、RNA/RNA、又は、DNA/RNA塩基対合、核酸/たんぱく質相互作用、抗原/抗体、レセプター/リガンド結合、及び、酵素/基板結合を含む様々な結合相互作用を検出するのに用いられる。一般に、サンプル分子は、識別核酸タグ(ID)を含む結合分子に付着される。ある実施形態中、結合分子は、更に、サンプル分子を結合する捕捉分子を有する。結合分子は、更に、リンカーサイトに結合する手段を含む;例えば、共有結合性化学結合、例えば、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合を促進する部分;又は、非共有結合、例えば、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合による。ある実施形態中、結合分子は、IDタグにより、アレイに付着される。
【0136】
サンプル分子が本発明によるシステムに提供され、そのリンカー分子により、例えば、結合分子上の捕捉分子を結合することにより、ランダムリンカーサイトに付着される。ある実施形態中、サンプル分子とリンカー分子が混合され、結合を許され、その後、本発明により提供される装置に適用される。ある実施形態中、リンカー分子がまず装置に提供され、リンカーサイトへの付着が許され、その後、サンプル分子が提供される。次に、IDが、本発明に係る方法(例えば、ハイブリダイゼーション、又は、シークエンシングにより)により検出され、関連するサンプル分子を識別する。複数のサンプル分子の種類は同じアレイに付着され、それらの標識により分化され、それと結合する捕捉分子の独特のIDを用いて、それらの結合相互作用が特徴づけされる。よって、ある実施形態中、標識サンプル分子を検出する方法は、核酸タグ(ID)からなるリンカー分子により、サンプル分子を本発明によるシステムのリンカーサイトに結合し、IDの核酸シークエンシングを実行し、標識サンプル分子を検出するステップを含む。特定の実施形態中、核酸シークエンシングは塩基拡張シークエンシングである。ある実施形態中、核酸シークエンシングは、リガーゼ塩基のシークエンシング、又は、末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドシークエンシングから選択される。
【0137】
ヌクレオチド“bits,”を使用することにより、4n 個までの区別できる捕捉分子はが、本発明による検出システムに付着、及び、識別され、nは、順序付けされるIDの長さを表す自然数である。例えば、5個のヌクレオチドは、一千個を超える独特なIDを提供し、12個のヌクレオチドは1600万を超える組み合わせを提供する。例えば、リンカー分子は本発明によるシステムに付着され、それらの位置は、それらの対応するIDタグを検出することにより決定される。リンカー分子は、その後、探針となり、例えば、1つ又はそれ以上の標識サンプル分子を有する結合相互作用を調べる。つまり、1つ又はそれ以上のリンカー分子を有するシステムがそれに付着されて、探針アレイとなる。
【0138】
ある実施形態中、標識サンプル分子は蛍光標識である。リンカー分子の捕捉分子に結合される時、標識サンプル分子は、リンカー分子が付着されるリンカーサイトに対応する光検出器により検出される。従って、ある実施形態中、本発明に係る方法は、更に、標識サンプル分子を本発明によるシステムに提供し、標識サンプル分子を検出するステップを含む。特定の実施形態中、システムは、そのリンカーサイトに付着される核酸タグ(ID)を含むリンカー分子を有する。複数の標識サンプル分子が、同時に、探針アレイに提供され、且つ、それらの標識、例えば、それらの蛍光標識の強度、及び/又は、波長により分化される。標識質問分子の与えられた濃度下で、動力学(例えば、ドッキング/未ドッキングの比率)と統計学(与えられた時間で結合、又は、未結合状態のサンプル分子の部分)両方に基づいて、サンプル分子と標識質問分子間の結合相互作用の解離定数が推定される。
【0139】
ある実施形態中、結合分子のIDは、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、90、100、150、200個、又は、それ以上のヌクレオチド長さである。ある実施形態中、IDは、5〜10、20、40、80、又は、160;又は、10〜20、又は、50;又は、20〜35個のヌクレオチド長さである。IDは、独特の核酸シーケンス、つまり検出される核酸を含む。特定の実施形態中、独特の核酸シーケンスは、少なくとも1、2、4、6、8、10、12、14、16、20、24、30個、又は、それ以上のヌクレオチド長さを有する。ある実施形態中、独特の核酸シーケンスは、4〜10、12、15、又は、20;又は、10〜20個のヌクレオチド長さである。IDは、少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含み、即ち、IDは、シークエンシングプライマーに相補されるシーケンスを含み、ある実施形態中、これは改質され、例えば、ビオチン化ヌクレオチドを含むことにより、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、IDのエンドリンクプライマー部分は、3’端から独特の核酸シーケンスである。ある実施形態中、5’端から独特の核酸シーケンスである。更に別の実施形態中、エンドリンクプライマーは、独特の核酸シーケンスの3’と5’端で出現する。
【0140】
ある実施形態中、サンプル分子と捕捉分子は、炭水化物、脂質、たんぱく質、ペプチド、抗原、核酸、ホルモン、有機小分子(例えば、薬剤学上)、又は、ビタミン部分;または、それらの組み合わせから選択される部分を含む。これらの部分は、自然発生(例えば、生物化学的に精製された)、又は、合成(例えば、化学的に合成される、又は、組み換え技術で製造された)である。この他、これらの基板は、非天然成分を含まない、一部の、又は、全ての非天然成分(例えば、非天然のアミノ酸、保護基等)を含む。特定の実施形態中、サンプル分子、又は、捕捉分子は、たんぱく質、例えば、成長因子、ペプチド抗原、抗体、又は、レセプターである。
【0141】
核酸をリンカー分子、又は、リンカーサイトに結合する様々な手段は当技術分野で周知で、例えば、米国特許公告番号2004/0038331を参照する。‘331公告は、固体支持物上に、たんぱく質オリゴヌクレオチド結合物を形成する方法を開示する。米国特許番号4,748,111は、たんぱく質を核酸の3’端に結合する一例を提供する。まず、ターミナルトランスフェラーゼが用いられて、リボース残基を分子の3’部分に加える。その後、過ヨウ素酸塩酸化反応が、3’アルデヒド基を核酸上で形成し、その後、たんぱく質のアミノ基と共有結合を形成する。たんぱく質がIDの3’端に結合される時、IDの5’端により、リンカーサイトに付着される。
【0142】
ある実施形態中、捕捉分子、例えば、たんぱく質は、IDの5’端に連結される。これらの実施形態中、IDの3’端、又は、シークエンシングプライマーの5’端が用いられて、捕捉分子をリンカーサイトに付着する。米国特許第6,013,434は、例えば、オリゴヌクレオチド−ポリアミド結合物を開示し、接続は、オリゴヌクレオチドの5’端による。米国特許第6,197,513は、PNAとDNA両方が、核酸の5’端により、カルボキシル酸部分、例えば、たんぱく質を有する分子に結合される。PNAとDNA分子はアリール、又は、アミノオキシアセチル部分を含む。米国特許第6,153,737は、少なくとも1つの2’官能性ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを開示し、多くの分子との結合に適する。
3.1.3.4 追加的検出方法
(a)FRET
【0143】
ある実施形態中、分子は、時に、蛍光性共鳴エネルギー転移として知られるフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)により、検出本発明による提供される装置上で検出される。当技術分野で周知のように、励起したドナー分子非放射移転エネルギーがアクセプタ分子に達する時、エネルギーが発散されて、一般の光である時、FRETが発生する。例えば、検出される分子に対し、大きい効果的な励起と放射波長間のスペクトル間隔を提供することにより、FRETは、背景光を減少するのを助ける。ドナーとアクセプタ分子間の距離の第六電力に伴うので、FRETはしばしば、接近する分子間相互作用を検出するに用いられる。例えば、Zhang et al. (Nature materials 4:826-31 (2005))は、FRETにより、核酸ハイブリダイゼーションを検出する。ビオチン化核酸標的は、アビジンコートの量子ドットドナーと結合し、その後、Cy5−結合DNA探針を励起する。ある実施形態中、標識捕捉分子と標識サンプル分子は、FRETにより検出されるドナー/アクセプタ(逆もまた同様)ペアを形成する。
【0144】
本発明で提供される核酸シークエンシングある実施形態中、ポリメラーゼ、又は、リガーゼに付着されるドナー発色団に対し、蛍光標識されたクレオチドはアクセプタ発色団として作用する。従って、これらの実施形態中、ポリメラーゼ、又は、リガーゼ上に位置するドナー発色団は、サンプル核酸上で重合される、又は、連結されるヌクレオチド上のアクセプタ発色団を励起する。FRET効果中の快速下降のために、ポリメラーゼに接近しないヌクレオチドは励起されない。ある実施形態中、ドナー分子は、例えば、別のフルオロフォア、例えば、量子ドットである。量子ドット、例えば、半導体量子ドットは当技術分野で周知であり、且つ、国際公告番号WO 03/003015で記述されている。量子ドットを、例えば、生体分子に結合する手段は当技術分野で周知で、Mednitz et al., Nature materials 4:235-46 (2005)と米国特許公告番号2006/0068506と2008/0087843を参照し、それぞれ、2006年3月20日と2008年4月17日に公開されている。ある実施形態中、量子ドットはDNAポリメラーゼ分子に結合される。上述の討論のように、酵素をリンカーサイトに結合するために、熟練した職人なら分かるように、フルオロフォアを、例えば、DNAポリメラーゼ、又は、リガーゼに結合する時注意が必要で、酵素の一次、二次、及び、三次構造上のフルオロフォアを結合する効果を軽減することにより、酵素機能を保持する。
(b)マルチ光子励起
【0145】
ある実施形態中、発色団は、2つ、又は、それ以上の光子により励起される。例えば、ある実施形態中、FRET中、ドナー、又は、アクセプタ発色団は、2つ、又は、それ以上の光子により励起される。2光子とマルチ光子励起は、更に、例えば、米国特許第6,344,653と5,034,613で記述されている。
(c)時間分解検出
【0146】
ある実施形態中、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器が変調されて、特徴的な位相シフトを有する。当技術分野で周知の方法を用いて、例えば、米国特許公告第.2008/0037008,2008年2月14日公開で、本発明による提供される装置で検出される分子から発光される光は、対応する光検出器により測定され、励起光源の干渉がないことが開示されている。
(d)フローサイトメトリー
【0147】
ある実施形態中、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器はフローサイトメトリーデータを得るのに用いられる。フローサイトメトリーは、一般に、液体懸濁液中のオブジェクトの集団の光学的分析を含む。懸濁液は検出器を流れ、これにより、集団中の多くのオブジェクトからの光の連続検出を可能にする。オブジェクトは、例えば、細胞、マイクロビーズ、又は、同サイズのその他の分子から選択され、例えば、粒子は、少なくとも1つの尺寸(長さ、高さ、幅、直径等、粒子形状に適合して)中、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、又は、5μmより大きい、及び/又は、少なくとも1つの尺寸、又は、全尺寸中、5mm、2mm、1mm、500μm、200μm、100μm、50μm、20μm、又は、10μmより小さい。オブジェクトは、1つ、又は、それ以上の励起光源と検出器間の単一ファイルを通過し、蛍光性、及び/又は、光散乱データが獲得される。ある実施形態中、オブジェクトは、 少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、又は、少なくとも4種類のフルオロフォアを含む。ある実施形態中、オブジェクトの少なくとも1つのサブ集団により発光される光が検出される。
【0148】
フルオロフォアは、例えば、細胞によりフルオロフォア内因性発現した、例えば、蛍光蛋白質(GFP、BFP、CFP、YFP、RFP等)から選択され、上述のフルオロフォアに加え、生体分子の類、又は、細胞構造(例えば、DNAに特有のDAPI、又は、細胞膜を染色するEvans Blue)に対し、特定の結合活性を有するフルオロフォア、ヌクレオチドアナログ、例えば、シアニン染料結合dUTPに結合されるフルオロフォア、及び、特定の結合パートナー、例えば、抗体、アビジン、又は、核酸探針に結合する合成フルオロフォアを含む。粒子中に存在する、及び/又は、粒子に結合されるフルオロフォアの量、及び、適当な波長の光により励起されるときに生成されるフルオロフォアの発射の量は、生体分子、例えば、DNA、細胞膜、又は、特定の核酸、たんぱく質、又は、別の生体分子、又は、粒子中、又は、粒子上の代謝体の存在、及び/又は、量に相関性がある。
【0149】
フローサイトメトリーは、粒子の集団を分析して、蛍光性強度の周波数分布、例えば、ヒストグラムを生成するステップを含む。1つ以上のフルオロフォアが用いられる、及び/又は、光散乱データも獲得される、又は、データ収集が時間分解の時、周波数分布は多次元である。例えば、高感度、及び/又は、高信号対雑音比のデータ収集を許すことにより、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器の使用は、高品質データを生成する。
【0150】
ある実施形態中、フローサイトメトリーを実行するステップを含む本発明に係る方法は、更に、蛍光活性化分類を含む。このような実施形態中、粒子は、フローサイトメトリーにより即時に分析され、ユーザーにより定義されたパラメータに従って分類される。例えば、特定のフルオロフォアからの検出可能な蛍光性、又は、特定範囲中のこのような蛍光性を示す粒子は、この基準に符合しない粒子から分離される。更なる分析のために、これらの粒子が収集される。ある実施形態中、この方法で分類された粒子は生細胞である。本発明による検出装置の感度は、例えば、酵素活性、又は、プロモーター活性等、低レベル活性の細胞分類を可能にし、検出できない活性の細胞及び高活性の細胞から分離する。よって、本発明の装置及びシステムは、従来はアクセスできなかった低プロモーター活性、又は、低酵素活性の細胞の濃縮された集団へのアクセスを可能とする。
(e)他の蛍光検出装置と方法
【0151】
ある実施形態中、本発明に係る方法は、生体細胞からなる少なくとも1つのオブジェクトにより発光される光の検出に関し、生体細胞は、生、又は、固体細胞である。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、少なくとも1つの量子ドットからなる少なくとも1つのオブジェクト、少なくとも1つの蛍光蛋白質少なくとも1つのオブジェクト、少なくとも1つの蛍光の小化学官能基からなる少なくとも1つのオブジェクトから選択される。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは蛍光標識され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、多糖、又は、脂質からなる。
【0152】
ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、固定で、制限数目のフルオロフォア、例えば、最多で、20、10、5、又は、2個のフルオロフォアを含み、量子ドット、蛍光蛋白質、及び、蛍光の小化学官能基から選択される。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、量子ドット、蛍光蛋白質、及び、蛍光性の小さい化学官能基から選択される単一フルオロフォアだけを含む。蛍光性の小さい化学官能基の多くの例は上述されている。ある実施形態中、蛍光性の小さい化学官能基は、300から800nm間の発光ピーク、及び/又は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9の量子収量(光子数と吸収波長は、ピーク吸収波長の光子数の比率である)を有する。
3.2 生体分子分析サービス
【0153】
本発明は、本発明の実施形態による検出装置を用いて、生体分子分析サービスを提供する方法も提供される。ある実施形態中、方法は、サービスリクエスタから分析される生体分子を含むサンプルを、サービス提供者とサービス提供者からの分析結果を受信するサービスリクエスタに提供するステップを含み、結果は、本発明により提供される装置を用いて生成される。ある実施形態中、報酬を考慮するために、方法、例えば、出来高払い、又は、契約サービス協定を実行する。この他、サンプルは、直接、サービスリクエスタとサービス提供者間で運送されるか、又は、ベンダーを介する。ある実施形態中、サービス提供者、又は、ベンダーは、地理的に、アメリカ外の領土、例えば、別の国に位置する。
4.実施例
実施例1
【0154】
この例で、図1で示される装置により、オブジェクトの3種類が検出、及び、識別される。この例で用いられる光検出器は、図17で示されるP−N−P−N−P構造を有するマルチ接合フォトダイオードである。p型層601とn型層602は、第一光学センサーを構成する。p型層603とn型層604は、第二光学センサーを構成する。全3種のp型層は、接地に接続される。n型層602と604は、電極に接続されて、それぞれ、信号J1とJ2を出力する。
【0155】
中心波長が407nmの6.5mWレーザーダイオードは励起源として用いられ、検出されるオブジェクトを励起する。オブジェクトから発光される光は光検出器に入射し、一部が、連続して、第一光学センサーと第二光学センサーに吸収される。図18と図19は、それぞれ、第一光学センサーと第二光学センサーの応答率曲線を示す図である。
【0156】
マルチ接合フォトダイオードがブラックボックスに封入されて、環境光による影響を最小化する。小孔がフォトダイオード上のボックス表面で開く。検出されるオブジェクトは、孔により検出領域に挿入されて、オブジェクトは、励起源から発光する励起光に露出する。ロングパス界面薄膜光学フィルタが、検出領域とフォトダイオード間に設置されて、散乱する励起光を部分的にブロックする。
【0157】
3オブジェクトが検出装置のテストに用いられる。オブジェクト1は、濃度が5.0×10−5Mの脱イオン化されたH2O中に溶解されるピラニンを含む第一染料溶液で、オブジェクト2は、濃度が5.0×10−5Mの脱イオン化されたH2Oに溶解されるローダミン6G(R6G)からなる第二染料溶液で、オブジェクト3は、濃度が6.25×10−4Mのトルエンに溶解されるCdxZn1−xSeの組成物を有する量子ドットを含む量子ドット溶液である。図20と図21は、それぞれ、3オブジェクトの吸収スペクトルと発光スペクトルを示す。
【0158】
この例で、染料、又は、量子ドットが含まれない水からなる参考サンプル持テストされる。毎回、1個のオブジェクトと参考サンプルがテストされる。第一光学センサーからの出力信号J1と第二光学センサーからの出力信号J2は、5.12ミリセカンド毎に記録される。各オブジェクトから、及び、参考サンプルからの10個の読み取り結果の記録が表1で示される。
【0159】
【表1】
【0160】
この例で、0.2値がスレショルド値として選択され、オブジェクトが存在するか判断する。出力信号J1とJ2のいづれか1つが0.2より高い場合、オブジェクトが存在すると判断される。
【0161】
オブジェクトの存在が判断された後、比率R=J2/(2×J1)が計算される。0.5<R<1.5の場合、検出されるオブジェクトがオブジェクト1であると判断される。2.0<R<3.0の場合、検出されるオブジェクトがオブジェクト2であると判断される。3.5<R<4.5である場合、検出されるオブジェクトはオブジェクト3であると判断される。表2は検出結果のある例を示す。
【0162】
【表2】
実施例2
【0163】
最近の研究で、サイトカイン活性化中の欠陥が、HCV/HIV共感染者で発生し、肝臓からHCVの効果的な洗浄を制限することが示される(J. Med. Virol. 78:202−207, 2006)。HCV単一感染とHCV/HIV共感染者のHCVとHIVウィルスRNAは、実施例1の分子指標アプローチと検出器を用いて定量化される。
RNA抽出
【0164】
高純度RNA Tissue kit(Roche Diagnostics; Meylan, France)を用いて、HCV単一感染とHCV/HIV共感染者の肝生検から、総RNAを抽出し、100ulのRNAse−遊離水中で溶出する。
cDNA合成
【0165】
HCVのRC21プライマー(5’-CTC CCG GGG CAC TCG CAA GC-3’(SEQ ID NO:1))とHIVのgagRプライマー(5′-TTTGGTCCTTGTCTTATGTCCAGAATG-3′(SEQ ID NO:2))をそれぞれ用いることにより、Thermoscript Reverse Transcriptase kitで、肝生検の抽出されたRNAが逆転写される。サンプル中のあらゆるHCV、又は/及び、HIV RNAの存在は、逆転写を受けて、相補一本鎖cDNAを生成する。RNAは、その後、サンプルから除去される。
分子指標探針
【0166】
HCV、又は、HIVの検出のために、分子指標の異なる色が合成される。
HCV:(5’-FAM-GCTAGCATTTGGGCGTGCCCCCGCIAGAGCTAGC-DABCYL-3’(SEQ ID NO:3)).HIV:(5’-HEX-GCTAGCATTTGGGCGTGCCCCCGCIAGAGCTAGC-DABCYL-3’(SEQ ID NO:4)).溶液中のcDNA検出は、分子指標(MBs)探針により実行され、分子指標探針は、95℃で、10分間の変性ステップ、続いて、55℃で、4時間のアニーリングにより、それらの相補配列と混成される。
オブジェクトの検出
【0167】
混成されたcDNAサンプルは、埋め込み電極マイクロ流体リアクター(Wang, TH et al., 2005)に運送され、単一分子トレーシングのレーザー-フォーカス検出領域が実行される。サンプル溶液がマイクロチャネルの入り口に導入され、その後、流体力学のポンピングにより駆動する。分子が電極領域に進入する時、それらの運送は、電極制御の動電気的な力により制御され、それらを最小エネルギーの領域に導き、中間電極中央に位置する。共焦点蛍光分光器の集光レーザービームはエネルギー最小領域のダウンストリーム端に位置し、実施例1の検出器により、独立分子から発光する蛍光突発が検出される。例1の方法を用いて、サンプル中のHCVとHIVの存在が検出されて、ビーコン探針上で、染料標識から識別される。サンプル中のHCVとHIVウィルスRNAの量は検出装置により報告された検出数に従って、定量化される。
【0168】
ここで提示される全特許、申請案、又は、参考文献にとって、理解できることは、全目的と列挙される主張のために、参照により、その全文が組み込まれることである。参照することにより組み込まれる文献と本申請案間に不一致が存在する時、本申請案が優位である。
【0169】
明細書中で提示された参考文献の教示により、明細書を完全に理解することができる。明細書中の実施例は、本発明の実施例の説明を提供し、且つ、本発明の精神を制限すると解釈されるべきではない。当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明はその他の多くの実施例を含むことが理解できる。提供される全ての出版品と特許は、参照することにより全文に組み込まれる。組み込まれて参照される資料範囲と本明細書が、対立する、又は、符合しない時、本明細書がこれらの資料を代替する。ここで、あらゆる参考文献の引用は、これらの参考文献が本発明の公知技術であることを承認するものではない。
【0170】
その他の方式で示されない限り、明細書に使用する特許請求の範囲中の成分、反応条件等の全数字表現量は、全ての状況下で、“約”により修飾されることが理解できる。よって、その他の方式で反対が示されない限り、数字のパラメータは近似値で、且つ、本発明により得られる所望の特性に基づいて、変更することができる。最小、且つ、特許請求の範囲に同等の原則の申請を制限しない試みにおいて、顕著な数字と一般の円形方式に基づいて、各数字パラメータを構築する。
【0171】
その他の方式で示されない限り、一系列要素の前の“少なくとも”は、系列中の各要素のことを意味することが理解できる。当該技術を熟知する者なら、日常の実験を使用するだけで、ここで示される本発明の特定の実施例の多くの同等物を認定、又は、確認することができる。これらの同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトを検出及び/又は識別する装置及びシステムに関するものである。更に、低強度の光を発光するオブジェクトを検出及び/又は識別することができる検出装置及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクト(Human Genome Project、HGP)はシークエンシングスループットの大量増加に拍車をかけ、且つ、シークエンシングコストを下げる。13年、30億ドル近くのコストと対照的に、各ゲノムのシークエンシングコストは著しく減少しており、実に2個の独立したゲノムが、最近、完成された(McGuire et al., Science 317:1687 (2007))。個人ゲノムは、患者とヘルスケア提供者両者の治療におけるパラダイム変化を示す。病気の遺伝的危険因子を管理することにより、ヘルスケア提供者は、すぐに予防医学を実践し、カスタマイズされた治療を提供することができる。完成したゲノムの大バンクにより、薬物設計と投薬は更に効果的になり、薬理ゲノム学の新生領域を推し進めることができる。
【0003】
多くの公知のDNAシークエンシング技術は、オブジェクトから発光される光を検出することによりオブジェクトを検出及び/又は識別する手段として、光電子工学技術を実行する。これらの技術に用いられる検出装置は高価で、且つ、効果も高くない。
【0004】
公知の方法は、通常、検出されるオブジェクトから発光される光が最高強度を有する特定の波長域内での測定に基づく。測定された強度は、その後、オブジェクトの濃度、又は、量を計算するのに用いられる。近年、単一オブジェクトから発光される光の検出が一般的になっている。例えば分子を識別するためには、例えば単一の色素分子から発光される蛍光を検出することが必要である。このような蛍光の強度は非常に弱く、よって、公知の検出装置と方法は、このような弱い光を検出するのに適さない。また、例えば、フローサイトメトリー(flow-cytometry)とフローサイトメトリー式マイクロ流体ラボチップ装置等の解析工程の感度は、光検出器の感度により制限される。このような工程の感度の増加は、材料の検出を可能にし、現在は比較的低いレベルであるが、それでも、例えば、診断又は研究用途において興味がもたれている。
【0005】
更に、多くの公知の装置において、放射光のある波長域内の部分を通過させ、放射光のその他の部分をブロックするために、カラーフィルターがよく用いられてる。従って、装置は複雑で、更に多くの空間が必要である。さらに、放射光の一部がカラーフィルターによりブロックされるので、光検出器に到達する光子数が減少する。これは、このような公知の装置と方法が、弱い発光のオブジェクトを検出及び/又は識別するのに適さなくする。
【0006】
よって、特に、低強度の光を発光するオブジェクト、例えば、単一色素分子等のオブジェクトを検出及び/又は識別する装置及びシステムが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明によると、光を発光することができるオブジェクトを検出する装置を提供する。装置は、光の強度を検出することができスタックされた少なくとも第一光学センサーと第二光学センサーを有する光検出器と、光学センサーから生成される出力信号を処理し、処理の結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較して、オブジェクトが既知のタイプに属するか判断するコンピュータとを有する。
【0008】
また本発明によると、上記の装置のアレイを有することを特徴とする複数のオブジェクトを検出するシステムを提供する。
【0009】
上述の概要の記載及び以下の詳細な説明は単なる典型例、代表例及び説明のための記載であって、特許請求の範囲に記載の本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
明細書に組み込まれ、この明細書の一部を構成する図式は、本発明の実施形態を説明し、説明と共に、本発明の原理を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、シリコンの吸収係数を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明による検出装置を示す図である。
【図3】図3は、本発明による光検出器を示す図である。
【図4】図4は、本発明による光検出器を示す図である。
【図5】図5は、本発明による検出装置に用いられる回折格子を示す図である。
【図6】図6は、2量子ドットの発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、本発明による2個のフォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、2量子ドットのスペクトルと2フォトダイオードの応答率曲線を一図に示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の更に別の実施形態に係る検出方法のフローチャートである。
【図16】図16は、本発明に係る検出装置の実施例を示す図である。
【図17】図17は、本発明に係る光検出器の実施例となるマルチ接合フォトダイオードを示す図である。
【図18】図18は、図11のマルチ接合フォトダイオード中の一フォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図19】図19は、図11のマルチ接合フォトダイオード中の別のフォトダイオードの応答率曲線を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の一例でテストされる3オブジェクトの吸収スペクトルのグラフである。
【図21】図21は、本発明の一例でテストされる3オブジェクトの発光スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、オブジェクトを検出及び/又は識別する検出装置を含む。その検出放置は、オブジェクトから発せられる弱い光を検出することが可能である。
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図面を通して可能な限り、同じあるいは類似の構成を示すためには同じ参照符号は用いる。
1.本発明の装置
【0014】
本発明による検出装置は、光を発光することができるオブジェクトを検出、及び/又は、識別するのに用いられる。オブジェクトは、発光源、例えば、蛍光の色素分子、リン光性色素分子、量子ドット、又は、生物発光、又は、化学発光システムの発光性製品(一重項酸素、又は、励起されたケレンテラミド等の励起状態反応製品)である。本発明の装置は、少なくとも1つのレーザー等の少なくとも1つの興奮性光源(source of excitatory light)を含んでいても含んでいなくても良い。例えば、生物発光、又は、化学発光分析(chemiluminsescence)により生成されるオブジェクトの検出にとって、光吸収に依存して、発射光を生成する必要がないので、興奮性光源が不要である。オブジェクトも、発光能力がない標的分子となるが、発光することができるラベリングオブジェクト(例えば、蛍光の色素分子、リン光性色素分子、又は、量子ドット)に付着できる。特定のラベリングオブジェクトは、特定の標的分子に付着できる。よって、標的分子は、ラベリングオブジェクトにより識別される。1つ以上のラベリングオブジェクトが一標的分子に付着される。装置は、大量のオブジェクトを監視するのにも用いられる。
【0015】
本発明の検出装置は、オブジェクトから発光される光を検出する光検出器を含む。光検出器は、入射光を少なくとも部分的に吸収することができ、光に応じて、出力信号を生成する。光検出器は、光検出器の操作を制御する制御回路を有する。制御回路は、信号増幅器の回路、A/Dコンバータ、積分器、比較器、ロジック回路、読み出し回路、メモリ、マイクロプロセッサ、クロック、及び/又は、アドレスを有する。
【0016】
検出装置は、光検出器からの出力信号を処理し、判定結果を生成するコンピュータを有する。検出装置は、更に、ピンホールを有するブラインドシートを含む。検出装置は、オブジェクトが付着されるリンカーサイトも含む。リンカーサイトが、ピンホール中、又は、ピンホールに近接する外部に形成される。装置は、更に、励起光源を含む。オブジェクトは、励起光源から発光される光を吸収し、その後、検出装置により検出される別の光を発光する。オブジェクトから発光される光は、励起光源から発光される光と異なる波長を有する。
1.1 光学センサー
【0017】
本発明による光検出器は、複数の光学センサーを含む。本発明による光学センサーは、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)、フォトトランジスタ、フォトゲート、量子井戸型赤外線センサー(QWIP)、ASIC上薄膜(TFA)、金属−半導体−金属(MSM)光検知器、又は、それらの組み合わせである。本発明の一例中、光学センサーはフォトダイオードである。
【0018】
フォトダイオードは、光を電流、又は、電圧に転換する固体素子である。フォトダイオードは、通常、半導体材料、例えば、シリコンからなる。フォトダイオードの基本構造は、p型半導体とn型半導体を連結することにより形成されるp−n接合を含む。フォトダイオードは一p−n接合だけを有し、一出力信号だけを提供し、これにより、一光学センサーとみなされる。マルチ接合フォトダイオードは1つ以上のp−n接合を有し、且つ、1つ以上の出力信号を提供し、各p−n接合は一光学センサーとみなされる。
【0019】
また、フォトダイオードは、p−i−nフォトダイオードである。p−i−nフォトダイオードは、n型層とp型層間に挟まれた真性層、又は、低濃度ドープのn型層、又は、低濃度ドープのp型層を有する特別なタイプのp−n接合フォトダイオードである。p−i−nフォトダイオード中、ほぼ全体が真性層である空乏領域の厚さは調整されて、量子効率と周波数応答を最適化する(S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, pp.674-675, Wiley, 2007)。
【0020】
p型半導体とn型半導体は、それぞれ、p型不純物とn型不純物を半導体基板にドープすることにより形成される。例えば、シリコン中、リン、又は、ヒ素はn型不純物として作用し、ボロンとインジウムはp型不純物として作用する。一般に、拡散とイオン注入の2方法が用いられ、不純物を半導体基板に導入する。p型不純物をn型半導体基板に拡散、又は、注入することにより、n型半導体基板の一部がp型半導体に転換される。従って、p−n接合が形成される。また、n型不純物をp型半導体基板に拡散、又は、注入することにより、p型半導体基板の一部がn型半導体に転換され、よって、p−n接合が形成される。拡散とイオン注入以外に、エピタキシャル成長が用いられ、n型半導体、又は、p型半導体を製造することもでき、エピタキシャル成長は、一プロセスで、薄い、単結晶層が単結晶基板表面で成長する(D. A. Neamen, Semiconductor Physics & Devices, pp. 17-18, McGrawHill, 1997)。光がフォトダイオードに入射する時、電子正孔対がフォトダイオード中に形成される。電子正孔対がフォトダイオードの空乏領域中に形成される場合、空乏領域中のビルトインポテンシャルは、電子とホールを分離し、よって、光電流、又は、電圧を生成する。
【0021】
異なるフォトダイオードは、入射光を吸収する異なる能力を有する。この能力は、フォトダイオードを構成する材料の吸収係数αで示される。図1は、異なる波長でのシリコンの吸収係数を示す。入射光の光子束Φは、光がフォトダイオードを貫通する深さに伴って減少する。フォトダイオード内の深さxでの光子束は以下のように示される:
【0022】
【数1】
【0023】
λは入射光の波長で、Φ0フォトダイオード表面での光子束である。よって、空乏領域で吸収される光子束は以下により与えられる:
【0024】
【数2】
【0025】
xuとxlは、それぞれ、空乏領域の上下辺縁の深さである。
【0026】
空乏領域で吸収される光子束は、フォトダイオードの出力信号として、光電流に転換される。光電流は以下のように示される:
【0027】
【数3】
【0028】
Aは光学ウィンドウの面積で、R(λ)はフォトダイオードの応答率で、入射光のユニット電量により生成される光電流の量として定義される。
1.2 信号処理に用いられるコンピュータ
【0029】
本発明によると、光検出器により生成された出力信号を処理し、出力信号上で、数学的、又は、論理演算を実行することにより、オブジェクトの存在とタイプを決定することができるコンピュータが提供される。光学センサーからの出力信号を処理するのに用いられるコンピュータは、例えば、パソコン、マイクロプロセッサ−塩基、又は、プログラム可能な家庭用電化製品、ロジック回路等である。
【0030】
コンピュータは、データを一時的、又は、恒久的に保存する1つ、又は、それ以上のストレージデバイスと、アルゴリズムを示すソフトウェアコードを含むコンピュータプログラムを含む。コンピュータは、アルゴリズムに基づいて、処理を実行する。ストレージデバイスは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、又は、他のアクセスオプションを有するメモリである。ストレージデバイスは、コンピュータ−可読媒体、例えば、(a)ハードディスク、フレキシブルディスク、又は、他の磁気ディスク、テープ、カセットテープ等の磁気メディア、(b)光ディスク(CD−ROM、デジタル多用途ディスク−DVD)等の光媒体、(c)DRAM、SRAM、EPROM、EEPROM、メモリスティック、又は、新聞等の他の媒体等の半導体媒質により、物理的に実行される。
【0031】
コンピュータは、光検出器からの出力信号を受信する1つ、又は、それ以上の界面を有する。コンピュータは、これらの信号を処理する1つ、又は、それ以上のプロセッサを含む。
【0032】
更に、コンピュータは、ユーザーからの指示を受信する1つ、又は、それ以上の入力装置、及び、処理結果を出力する1つ、又は、それ以上の出力装置を有する。入力装置は、例えば、マウス、キーボード、又は、複数のボタンを有するコントロールパネルである。出力装置は、例えば、ディスプレイ、又は、プリンターである。
1.3 検出装置の例
【0033】
図2を参照すると、本発明の検出装置1が説明される。検出装置1は、光検出器11とコンピュータ12を有する。
【0034】
光検出器11は、第一光学センサー111と第二光学センサー112を有する。ある実施形態中、光検出器11は、2個以上の光学センサーを有する。例えば、ある実施形態中、光検出器11は、3個の光学センサー、又は、4個の光学センサーを有する。第一光学センサー111と第二光学センサー112がスタックされる。スタック配置において、オブジェクトから発光される光は第一光学センサー111を通過し、その後、第二光学センサー112を通過する。ある実施形態中、光学センサーは、垂直、又は、実質上垂直にスタックされる。別の実施形態中、光学センサーは、垂直方向に対して、特定角度(例えば、10°、30°、45°、60°等)で傾斜してスタックされる。ある実施形態中、光検出器11は、複数のp−n接合からなるマルチ接合フォトダイオードである。マルチ接合フォトダイオード中、各p−n接合は、一個別の光学センサーの基本構造を形成する。第一光学センサー111と第二光学センサー112は、図3で示されるように、それぞれ、例えば、マルチ接合フォトダイオード中の一p−n接合を有する。
【0035】
ある実施形態中、光検出器11中の異なる光学センサーは、同じ半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウム、GaAs、AlGaAs、InGaAs、InGaAsN、InGaP、CdTe、又は、CdSからなる。ある実施形態中、光検出器11中の異なる光学センサーは、異なる半導体材料からなる。例えば、図4は、2個の垂直にスタックされた光学センサーPD−1とPD−2からなる光検出器を示す。光学センサーPD−1は、材料−1と材料−2からなり、PD−2は材料−2と材料−3からなる。材料−1、材料−2、及び、材料−3は、上述の半導体材料の組み合わせである。この他、これらの光学センサーの厚さは異なってもよい。
【0036】
図2で示されるように、オブジェクトから発光される光、例えば、光検出器11上に入射する量子ドット(QD)は、部分的に第一光学センサー111により吸収され、第一信号J1を生成する。未吸収の光は第一光学センサー111を通過し、その後、部分的に、第二光学センサー112により吸収され、第二信号J2を生成する。これらの信号はコンピュータ12に伝送されて処理される。
【0037】
ある実施形態中、別の光学素子、例えば、光学フィルタ、プリズム、又は、レンズを通過することなく(つまり、光検出器に直接入射する)、オブジェクトから発光される光は光検出器11に入射する。ある実施形態中、装置は、更に、集光光学構造を有し、オブジェクトから発光される光を集光する。
【0038】
ある実施形態中、光検出器11は、水平に配置された2つ、又は、それ以上の光学センサーを有する(図示しない)。これらの実施形態中、検出装置1は、更に、オブジェクトと光検出器11間に位置する光学構造を有する。オブジェクトから発光される光は、光学構造により、1つ、又は、それ以上の光学センサーに導かれ、部分的に、1つ、又は、それ以上の光学センサーにより吸収される。異なる波長の光に対し、光学構造を通過後の光の方向は異なる。よって、光検出器中の水平に配置された異なる光学センサーは異なる波長の光を検出する。
【0039】
ある実施形態中、光学構造はプリズムを含む。ある実施形態中、光学構造はレンズを含む。ある実施形態中、光学構造は、プリズムとレンズを含む。プリズムは、三角プリズム、Abbeプリズム、Pellin-Brocaプリズム、Amiciプリズム、又は、それらの組み合わせである。レンズは、凸レンズ、発散レンズ、又は、それらの組み合わせである。光学構造は、ガラス、プラスチック、又は、関心のある波長を透過する他の材料から形成される。光学構造の透明度は、十分高く、大部分の光線が光学構造を通過できる。
【0040】
また、ある実施形態中、光学構造は回折格子を含む。回折格子は、バイナリー回折格子、ブレ−ズ回折格子、正弦曲線回折格子、マルチレベル回折格子、ボリューム回折格子、又は、それらの組み合わせである。図5は、本発明の一実施形態による検出装置の例を示す図である。この検出装置で、光検出器は、異なる位置で、水平に配置された複数の光学センサーからなる。回折格子は、オブジェクトからの異なる波長の光を、光検出器の異なる位置に導き、異なる光学センサーにより吸収される。
【0041】
本発明によると、本発明の検出装置のアレイからなる検出システムが提供される。本発明によると、本発明による光検出器のアレイと、光検出器のアレイからの出力信号を処理し、処理結果に基づいて、検出及び/又は識別を実行するコンピュータとを有する検出システムが提供される。このような検出システムは、一度に、複数のオブジェクトを検出及び/又は識別し、よって、例えば、核酸の大規模並列シークエンシングに適する。
【0042】
コンピュータ12は、処理ユニット121と出力ユニット122を有する。処理ユニット121は、光検出器11からの出力信号を処理し、オブジェクトの存在とタイプを決定する。出力ユニット122は判定結果を出力する。ある実施形態中、コンピュータ12はストレージデバイス(図示しない)も含み、コンピュータプログラムを保存する。コンピュータプログラムはソフトウェアコードを含み、コンピュータに信号を処理するように指示する。
【0043】
光検出器11とコンピュータ12は単体半導体チップに整合される。分離した半導体チップ上に、光検出器11とコンピュータ12が形成される。
2.検出方法
【0044】
異なるオブジェクトから発光される光は異なるスペクトルを有する。例えば、図6は、2オブジェクトの2量子ドット(“QDs”)(QD−1とQD−2)の発光スペクトルである。この例で、これらの2つの発光スペクトルのピークは異なる波長にある。別の例で、異なるオブジェクトの発光スペクトルは、異なる形状を有してもよい。
【0045】
第一光学センサー111と第二光学センサー112は、異なる応答特性を有する。図7は、例となる第一光学センサー111と第二光学センサー112の応答率曲線を示す。第一光学センサー111と第二光学センサー112の応答率は、互いに異なってもよく、異なる形状を有する、及び/又は、異なる波長でピークに到達する。
【0046】
説明を分かりやすくするため、図8は、2つの光学センサーの応答率曲線と2つのQDの発光スペクトルを一図中に示す。この例で、QD−1から発光される光は、2つの光学センサーで、同じ強度の信号を生成する。一方、QD−2から発光される光は、第一光学センサー111よりも強い第二光学センサー112で、信号を生成する。
【0047】
ある実施形態中、図2で示されるように、オブジェクトから発光される光は、光検出器11に入射し、部分的に、第一光学センサー111と第二光学センサー112により吸収され、それぞれ、順に、信号J1とJ2を生成する。コンピュータ12は、信号J1とJ2を処理し、オブジェクトを識別する。
【0048】
図9は、本発明の一実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。ステップ201で、オブジェクトから発光される光は、光検出器11に入射する。ステップ202で、2つの出力信号J1とJ2が、それぞれ、第一光学センサーと第二光学センサーにより生成され、信号J1とJ2がコンピュータ12に送られる。ステップ203で、コンピュータ12は信号J1とJ2を処理する。ステップ204で、コンピュータ12は、オブジェクトの処理結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較する。ステップ205で、コンピュータ12はオブジェクトが既知のタイプに属するか判断する。
【0049】
一実施形態中、信号J1とJ2の処理は、J1とJ2の比率計算を含む。計算比率が、オブジェクトの既知のタイプに対応する一定幅内にある場合、検出されるオブジェクトが既知のタイプに属すると判断する。例えば、量子ドットQD−1の既知のタイプは、対応幅が0.7<J2/J1<1.2である。検出されるオブジェクトの計算比率が0.9の場合、オブジェクトがQD−1型のオブジェクトであると判断する。
【0050】
図10は、本発明の別の実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトが、オブジェクトの3つの既知のタイプ、Type 1、Type 2、及び、Type 3の1つに属するかを判断する。この実施形態の最初の2ステップは上述と同じである。ステップ303で、コンピュータ12はこれらの2信号J1とJ2間の関係を判断する。ステップ3304で、コンピュータ12は、関係とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の結果を比較する。ステップ305で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0051】
この実施形態中、例えば、J1>J2の場合、その後、オブジェクトがType 1オブジェクトであると判断される。J1=J2の場合、オブジェクトはType 2オブジェクトであると判断される。J1<J2の場合、オブジェクトはType 3オブジェクトであると判断される。
【0052】
図11は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトは、オブジェクトの複数の既知のタイプ、つまり、Type 1からType nの1つに属すると判断される。この実施形態の最初の2ステップは前述の実施形態と同じである。ステップ403で、コンピュータはJ1とJ2の比率を計算する。ステップ404で、コンピュータ12は、計算比率とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の比率を比較する。ステップ405で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0053】
この実施形態中、例えば、全ての既知のタイプの既知の比率中、Type i(1≦i≦n)の既知の比率が計算比率に選ばれた場合、オブジェクトはType iオブジェクトであると判断される。
【0054】
図12は、本発明の更なる実施形態に係るオブジェクトの識別方法のフローチャートである。この実施形態中、オブジェクトが、オブジェクトの複数の既知のタイプ、つまり、Type 1からType nの1つに属するか判断される。この実施形態の最初の3ステップは上述の実施形態と同じである。ステップ504で、コンピュータ12は、計算比率とオブジェクトの既知のタイプに対応する既知の比率幅を比較する。ステップ505で、コンピュータ12は、比較結果に基づいて、オブジェクトがどのタイプに属するか判断する。
【0055】
この実施形態中、例えば、計算比率がType i(1≦i≦n)に対応する比率幅内に落ちる場合、オブジェクトはType iオブジェクトであると判断される。計算比率がどの幅にも落ちない場合、信頼水準が低く、検出されるオブジェクトのタイプが決定されないことを報告する。例えば、Type 1オブジェクトが対応する比率幅0.7<J2/J1<1.2を有し、Type 2オブジェクトが対応する比率幅J2/J1>2を有すると仮定し、検出されるオブジェクトの計算比率が1の場合、オブジェクトがType 1オブジェクトであると判断する。一方、検出されるオブジェクトの計算比率が1.5の場合、信頼水準が低く、オブジェクトのタイプが判断されないことを報告する。
【0056】
一実施形態中、J1とJ2の比率はJ2/J1である。一実施形態中、J1とJ2の比率はJ1/J2である。ある実施形態中、J1とJ2の比率はJ2/(c×J1)またはJ1/(c×J2)で、“c”は係数である。
【0057】
ある実施形態中、信号がコンピュータ12に送られた後、コンピュータ12は、オブジェクトがサンプルに存在するかを判断するステップを追加的に実行する。ある実施形態中、その決定は、スレショルド値を有する信号の全部、又は、一部を比較することにより実行される。ある実施形態中、例えば、合計がスレショルドに等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在すると判断される。一方、合計がスレショルドより小さい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。別の実施形態中、合計がスレショルド値より小さい場合、オブジェクトが存在すると判断される。合計がスレショルド値に等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。ある実施形態中、その決定は、信号とスレショルドを直接比較し、オブジェクトの存在を判断することにより実行される。例えば、ある信号が、又は、特定数の信号が、スレショルドに等しい、又は、大きい場合、オブジェクトが存在すると判断される。一方、全信号がスレショルドより小さい場合、オブジェクトが存在しないと判断される。
【0058】
ある実施形態中、光検出器11は、3つ、又は、それ以上の光学センサーを含み、それぞれ、光検出器11に入射するオブジェクトから発光される光に基づいて、出力信号を生成する。ある実施形態中、生成された2つの出力信号は、コンピュータ12により処理されて、オブジェクトを識別する。別の実施形態中、更に多くの、又は、全ての生成された出力信号がコンピュータ12により処理されて、オブジェクトを識別する。
【0059】
図13は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。この実施形態中、光検出器11は、3つの光学センサーPD1、PD2、及び、PD3を有する。サンプル中のオブジェクトが検出され、例えば、4タイプの染料1、染料2、染料3、及び、染料4のどれに属するか判断される。これらの光学センサーにより生成される出力信号は、それぞれ、IPD1、IPD2、及び、IPD3で示され、コンピュータ12に送られ処理される、本方法は以下で説明する。
【0060】
まず、サンプルは、励起光源を用いて励起される。光学センサーPD1、PD2、及び、PD3は、その後、出力信号IPD1、IPD2、IPD3を生成する。出力信号受信に基づき、コンピュータ12はこれらの信号の合計を計算する。合計がスレショルド値Vthより小さい場合、コンピュータ12は蛍光性が発生しないことの報告を生成する。そうでない場合、コンピュータは次のステップに進む。
【0061】
蛍光性が発生し、オブジェクトが存在すると判断する時、コンピュータ12は、まず、元の識別ステップを実行する。このステップで、コンピュータ12は、IPD3と全信号の合計間の第一比率を計算し、この比率と第一組スレショルド値、Vth1、Vth2、Vth3、及び、Vth4を比較し、計算された第一比率が、0とVth1の間、Vth1とVth2の間、Vth2とVth3の間、又は、Vth3とVth4の間の幅に落ちるか判断する。しかし、計算された第一比率が上述のどの幅にも落ちない場合、コンピュータ12は、発光失敗が生じたことの報告を生成する。
【0062】
この後、確認ステップが実行される。確認ステップで、IPD2とIPD3間の第二比率が計算され、第二組スレショルド値、Vth1’、Vth2’、Vth3’、及び、Vth4’と比較されて、計算された第二比率が0とVth1’の間、Vth1’とVth2’の間、Vth2’とVth3’の間、又は、Vth3’とVth4’の間の幅に落ちるか判断する。
【0063】
例えば、最初の識別ステップで、計算された第一比率がVth1とVth2の間の幅に落ちる場合、オブジェクトが恐らくタイプ染料2に属すると判断する。コンピュータ12は、その後、確認ステップを実行し、計算された第二比率がVth1’とVth2’の間の幅に落ちるか判断する。その場合、オブジェクトがタイプ染料2に属すると判断する。そうでない場合、コンピュータ12は、発光失敗が発生したことの報告を生成する。
【0064】
注意すべきことは、上述の元の識別ステップと確認ステップのいづれか1つは個別に実行されて、オブジェクトを識別することである。しかし、一識別工程中で、2ステップを実行すると、精度を改善することができる。
【0065】
図14は、本発明の更に別の実施形態に係るオブジェクトを識別する方法のフローチャートである。この実施形態中、光検出器11は、複数の光学センサーPD1、PD2、・・・、PDnを有し、nは1より大きく、且つ、6に等しいかそれより小さい。更に、nは3に等しい。この実施形態の装置と方法により、q個の異なるオブジェクト、例えば、D1、D2、・・・、Dqで示されるq個の異なる染料を検出及び識別する。
【0066】
この実施形態に用いられる励起光源は、k個の異なる励起明帯L1、L2、・・・、Lkを有し、kは、1に等しいかそれ以上で、3に等しいか又はそれより小さい。一組の指令に基づき、励起光源はオンとオフにでき、一組のm個の異なる励起条件Cjを生成し、1≦j≦mである。各励起条件は、異なる励起明帯の組み合わせである。同じ励起条件下で、異なる染料に対し、特定の光学センサーにより生成される出力信号は異なる。
【0067】
特定染料Dsのj−th励起条件Cj下(1≦s≦q)で、i−th光学センサーPDi(1≦i≦n)で生成される出力信号はDs{J{PDi:Cj}}として表示される。PDiとCjの異なる組み合わせは、異なるDs{J{PDi:Cj}}を生成する。これにより、未知の染料を検出、及び、識別するためにこの装置が用いられる前に、染料Dsの標準環境下で、PdiとCjの異なる組み合わせを用いて、キャリブレーション読み取りを実行し、出力信号のマトリクスを得る。このマトリクスは染料に特有で、且つ、染料Dsの標準読み取りマトリクスと称され、M{Dye Ds}、以下で示される:
【0068】
【数4】
【0069】
各染料にとって、このキャリブレーション読み取りは繰り返され、q個の標準読み取りマトリクスM{Dye D1}、M{Dye D2}, . . . M{Dye Dq}を生成する。
【0070】
背景の影響を最小化するため、染料が存在しない時、背景読み取りは、光学センサーからの出力信号を記録することにより得られ、背景読み取りマトリクスM{background}を生成する:
【0071】
【数5】
【0072】
未知のサンプルが検出装置に提供される時、異なる励起条件で、光学センサーにより生成された出力信号が測定され、サンプル読み取りマトリクスM{サンプル}が得られる:
【0073】
【数6】
【0074】
このサンプル読み取りマトリクスは、標準の読み取りマトリクスと比較されて、サンプルにどのタイプの染料が含まれるか判断する。結果に対する背景の影響を最小化するため、比較前に、標準の読み取りマトリクスとサンプル読み取りマトリクスから、背景読み取りマトリクスが差し引かれる。
【0075】
比較は、染料Dsの各タイプのランクRsを計算することにより実行される。Rs計算時、重み因子と統計方法が適用される。例えば、最小平方方法、又は、最尤度方法が用いられて、最適合を見つける。重み因子は各光学センサー、又は、励起発光モードに応用されて、分析の精度を増加する。
【0076】
Rsが計算された後、コンピュータ12は、ランクRsに従って、最も可能性の高い染料、2番目に可能性の高い染料等を報告する。
【0077】
合成方法によるシークエンシング中、DNAシーケンスは、新しく加えられたヌクレオチドを合成中のストランド(strand)に識別することにより決定される。ヌクレオチド追加工程は、ヌクレオチドに付着されたフルオロフォアから発光する蛍光により検出される。ヌクレオチド合併反応は幾つかのステップに分けられる:ヌクレオチドは、ポリメラーゼとテンプレートにより形成される活性点に結合され、リン酸塩結合を破壊し、砂糖に新しい結合を形成する。あるヌクレオチドは、単に、活性点で拡散し、出たり入ったりし、実際の合併が発生しない。即時に合併反応を監視するため、検出装置は、フルオロフォア到着、反応時間、及び、フルオロフォアタイプを検出することができる必要がある。測定保留時間の理由は、それらの合併されるヌクレオチドと比較すると、拡散するヌクレオチドが留まる時間が短いからである。保留時間スレショルドを設定することにより、実際の合併情況が検出される。情況検出に用いられる本発明の更なる実施形態に係る方法のフローチャートは図15で示される。この方法は、基本的には、前述と同様で、もう一ステップが追加されて、一状態が主張されるか判断する。よって、この方法の詳細は省略する。図16は、この実施形態に用いられる検出装置の一例を示す図である。
【0078】
ある実施形態中、光検出器11は、水平に配置された2つ、又は、それ以上の光学センサーを有する。水平に配置された光学センサーにより生成された信号がコンピュータ12に入力され、上述の一方法と類似方式で処理され、オブジェクトの存在を判断、及び/又は、オブジェクトのタイプを識別する。
3.応用
【0079】
本発明による検出装置とシステム、それを用いた方法は、核酸検出、DNAシークエンシング、バイオマーカー同定、又は、フローサイトメトリーに適用される。検出装置は、低強度光信号を検出、及び、処理し、単一分子オブジェクト識別を可能にする。
【0080】
本発明のある実施形態中、標識が検体(即ち、検出される物質)、探針、例えば、プライマー、抗体、又は、他の試薬と相互に作用する検体、又は、別の試薬、例えば、ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログを含む)に付着される。あらゆる標識が検体、又は、探針に用いられ、信号と検体の量、又は、存在の関係において有用である。
【0081】
例えば、本発明に用いられる多種の蛍光分子は、小分子、蛍光蛋白質、及び、量子ドットを含む。有用な蛍光分子(フルオロフォア)は、これに限定されないが:1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン(4-Methylumbelliferone);5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン(5-carboxy-2,7-dichlorofluorescein);5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(5-Carboxynapthofluorescein);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-HAT(ヒドロキシトリプタミン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン(Acriflavin);アクリフラビンフォイルゲンSITSA;AFP-自発蛍光蛋白質-(量子生物技術);テキサスレッド;テキサスレッド-X 共役;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッド R;チアゾールオレンジ;チオフラビン 5;チオフラビン S;チオフラビン TCN;チオライト;チアゾールオレンジ;チノポール CBS(カルコフロールホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;TriColor(PE-Cy5);TRITC (Tetramethyl Rodaminelso Thio Cyanate);True Blue;TruRed;Ultralite;ウラニンB;Uvitex SFC;WW 781;x−ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;キレート間染料、例えば、YOYO-3、サイバーグリーン、チアゾールオレンジ;広域スペクトルを被覆し、一般の励起源、例えば、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405, 430, 488, 500, 514, 532, 546, 555, 568, 594, 610, 633, 635, 647, 660, 680, 700と750の主出力波長に適合するAlexa Fluor染料シリーズのメンバー(Molecular Probes/Invitrogenより);広域スペクトルを被覆するCy染料フルオロフォア(GE Healthcare)シリーズのメンバー、例えば、Cy3, Cy3B, Cy3.5, Cy5, Cy5.5, Cy7;Oyster染料フルオロフォア(Denovo Biolabels)のメンバー、例えば、Oyster-500, -550, -556, 645, 650, 656;418nm(DY-415)から844nm(DY-831)の最大吸収範囲を有するDY-標識シリーズのメンバー(Dyomics)、例えば、DY-415,-495,-505,-547,-548,-549, -550,-554,-555,-556,-560,-590,-610,-615,-630,-631,-632,-633,-634,-635,-636,-647,-648,-649,-650,-651,-652,-675,-676,-677,-680,-681,-682,-700,-701,-730,-731,-732,-734,-750,-751,-752,-776,-780,-781,-782,-831,-480XL,-481XL,-485XL,-510XL,-520XL,-521XL;ATTOシリーズの蛍光標識(ATTO-TEC GmbH)のメンバー、ATTO 390, 425, 465, 488, 495, 520, 532, 550, 565, 590, 594, 610, 611X, 620, 633, 635, 637, 647, 647N, 655, 680,700,725,740;CAL Fluorシリーズ、又は、Quasarシリーズの染料(Biosearch技術)のメンバー、例えば、CAL Fluor Gold 540,CAL Fluor Orange 560,Quasar 570,CAL Fluor Red 590,CAL Fluor Red 610,CAL Fluor Red 635,Quasar 670;量子ドット、例えば、EviTagsシリーズの量子ドット(Evident 技術)、又は、Qdotシリーズ(Invitrogen)の量子ドット、例えば、Qdot 525,Qdot565,Qdot585,Qdot605,Qdot655,Qdot705,Qdot 800;フルオレセイン;ローダミン;及び/又は、フィコエリトリン;又は、それらの組み合わせで、米国出願公告2008/0081769を参照する。
【0082】
ある実施形態中、少なくとも1つの生物発光、又は、化学発光システムが提供され、検体、試薬、又は、反応製品等の実体の存在下で、光を生成する。例えば、生物発光、又は、化学発光システムが用いられて、合成反応によるシークエンシングで生成されるピロリン酸塩を検出する(以下で詳細に討論する);それらの光生成反応の触媒作用により、鉄や銅等の金属の存在を検出する;又は、検体に結合される試薬の量を測定し、試薬は、少なくとも1つの生物−化学発光システムの組成を含む。
【0083】
当技術分野で周知の生物発光システムの例で、システムは、少なくとも1つのルシフェラーゼ、例えば、Photinus pyralis ルシフェラーゼを含む蛍ルシフェラーゼを含む。生物発光システムを用いて、例えば、ルシフェラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェリン、及び、アデノシン5’ホスホ硫酸と合成反応するシークエンシングの組成(dATPは、類似物、例えば、dATPαSにより代替されて、ルシフェラーゼによるdATPの消耗による非特異性光を回避する)を提供することにより、ピロリン酸塩を検出する。ピロリン酸塩がヌクレオチド合併状況により生成される時、ATPスルフリラーゼは、アデノシン5’ホスホ硫酸依存方式で、ATPを生成する。ルシフェラーゼにより、ATPは、ルシフェリンをオキシルシフェリンに転換し、光を加える。別の生物発光システムは、発光たんぱく質、例えば、エクオリンに基づくシステムを含み、セレンテラジンを酸化して、セレンテラミドを励起し、光を発光する。
【0084】
化学発光システムの例は、ルミノールと過酸化水素を加え、金属触媒、又は、補助酸化剤の存在下で、発光反応を経験する;ジフェニルシュウ酸塩は、過酸化水素と適当な染料を加え、二酸化炭素を生成する複数の反応中で、励起と放射を経験し(適当な染料の例は、フェニル化アントラセン派生物、例えば、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-Bis(フェニルエチニル)アントラセン、及び、1-クロロ-9,10-bis(フェニルエチニル)アントラセン、及び、ローダミン、例えば、ローダミン 6Gとローダミン B)である;一重項酸素生成システム、例えば、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムを加える;及び、システムは、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼを含み、ルミノール、又は、他の市販の入手できる基板上で作用する。
【0085】
ある実施形態中、本発明に係る方法は、例えば、試薬、又は、検体、及び、表面、又は、標識間に、共有結合を形成するステップを含む。例えば、単一分子シークエンシング工程中、核酸分子、又は、ポリメラーゼ等の酵素が、スライドガラス等の表面に付着される。このような付着は複数のシークエンシング周期でのデータ収集を可能にする。ある実施形態中、例えば、試薬を表面、又は、標識に形成する共有結合の多くの方法は、当技術分野で周知のようである。非共有結合方法も用いられる。多くの異なる化学修飾剤が用いられて、付着を促進する。化学修飾剤の例は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基、アミン、アルデヒド、エポキシド、カルボキシル基、水酸基、ヒドラジド、疎水基、膜、マレイミド、ビオチン、ストレプトアビジン、チオール基、ニッケルキレート、光反応基、ボロン基、チオエステル、システィン、ジスルフィド基、アルキル、ハロゲン化アシル基、グルタチオン、マルトース、アジド、リン酸塩、及び、ホスフィンを含む。化学改質表面を有するスライドガラス等の表面は、市販で入手できるものである。その他の改質表面は、標準の方法を用いて準備される(Microarray Biochip technologies, Mark Schena, Editor, March 2000, Biotechniques Books)。ある実施形態中、適当な修飾剤の組み合わせ(親電子修飾剤と求核修飾剤)を用いることにより、2実体間に付着を形成し、各実体は少なくとも1つの修飾剤を含む。
【0086】
ある実施形態中、実体とその他の実体の自然発生する部分の1つ上に存在する化学修飾剤を用いることにより、2実体間に付着を形成し、例えば、アミン、又は、スルフヒドリル基である。ある実施形態中、アミンと反応する修飾剤が用いられる。この反応の長所は、快速、且つ、有害な副産物の生成を回避することができることである。このような修飾剤の例は、NHS−エステル、アルデヒド、エポキシド、ハロゲン化アシル、及び、チオエステルを含む。多くのたんぱく質、ペプチド、グリコペプチド等は遊離アミン基を有し、このような修飾剤と反応して、それらをこれらの修飾剤に共有結合する。内部、又は、末端アミン基を有する核酸探針も合成され、且つ、市販で入手できるものである(IDT又はOperonによる)。よって、同じ化学成分を用いて、生体分子が(共有、又は、非共有で)、標識、表面、又は、別の試薬に結合される。
【0087】
他の官能基架橋剤が用いられて、一種の修飾剤の化学反応をもう一種に転換する。これらの基は、二官能基、三官能基、四官能基等である。それらは、同種官能性、又は、異種二官能性である。二官能基架橋剤の例X−Y−Zで、XとZは二反応基で、Yは接続リンカーである。更に、XとZが同一基、例えば、NHS−エステルである場合、生成される架橋剤、NHS−Y−NHSはホモ二官能基架橋剤で、それぞれアミンを含む2実体を接続する。XがNHS−エステルで、Zがマレイミド基の場合、得られる架橋剤、NHS−Y−マレイミドは、ヘテロ−二官能基架橋剤で、アミンを含む実体とチオ基を含み実体を連結する。異なる官能基を有する架橋剤はいろいろなところで入手可能である。このような官能基の例は、NYS−エステル、チオエステル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル(ヨードアセトアミド)、チオール、アミン、システィン、ヒスチジン、ジスルフィド、マレイミド、シスジオール、ボロン酸、ヒドロキサム酸、アジド、ヒドラジン、ホスフィン、光反応基(アントラキノン、ベンゾフェノン)、アクリルアミド(アクリダイト)、親和基(ビオチン、ストレプトアビジン、マルトース、マルトース結合たんぱく質、グルタチオン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、アルデヒド、ケトン、カルボキシル酸、リン酸塩、疎水基(フェニル、コレステロール)等を含む。
【0088】
別の修飾剤の選択(例えば、フォト架橋と熱架橋)は当業者にはよく知られている。商用技術は、例えば、Mosiac技術(Waltham, MA),EXIQONTM(Vedbaek, Denmark),Schleicher and Schuell(Keene, N.H.),SurmodicsTM(St. Paul, MN),XENOPORETM(Hawthorne, N.J.),Pamgene(Netherlands),Eppendorf(Germany),Prolinx(Bothell, WA),Spectralゲノム(Houston, TX),and COMBIMATRIXTM(Bothell, WA)によるものを含む。
【0089】
ある実施形態中、ガラス以外の表面が提供される。例えば、金属表面、例えば、金、シリコン、銅、チタニウム、及び、アルミニウム、金属酸化物、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、及び、プラスチック、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ゼオライト、及び、その他の材料も用いることができる。ある実施形態中、光の透過を可能にするため、これらの材料の層は薄く、例えば、約100nmより小さい。
3.1 核酸検出
【0090】
本発明の検出装置は、分子検出、例えば、核酸シークエンシングの方法、又は、プロセスに対し、又は、それにおいて、システムの一部として用いられる。この装置とそれを利用した方法、又は、プロセスは、例えば、分析と診断応用に有用である。これらの応用は、個人、公共、商業、又は、工業用である。
【0091】
幅広い変化のシークエンシングモダリティにより、本発明による検出装置が使用されて、且つ、シークエンシング単一分子に適合する。現有の生体素子装置と比較すると、本発明による検出装置は、簡単な設計、アセンブリ、及び、製造である。例えば、順序付けされる核酸が、システムのアレイ上のランダムなリンカーサイトに付着されて、所定位置で核酸を蒸着、又は、合成する時間の消耗と高価なロボットの使用を回避する。
【0092】
本発明による検出装置は、生体分子検出の方法と処理に対し、又は、それにおいて、システムの一部として用いられ、核酸ハイブリダイゼーション、又は、シークエンシング、例えば、全ゲノムシークエンシング、転写プロファイリング、競争転写プロファイリング、又は、遺伝子同定を含む。生体分子検出は、結合相互作用、例えば、たんぱく質/たんぱく質、抗体/抗原、レセプター/リガンド、及び、核酸/たんぱく質の検出及び/又は測定も含む。これらの応用は、分析、又は、診断処理、及び、方法に有用である。
【0093】
ある実施形態中、本発明による提供される装置上での検出に適する核酸は、結合分子の一部で、結合相互作用を分析するのに適する分子、例えば、たんぱく質、別の核酸、炭水化物成分、又は、小分子を、本発明により提供される装置上のリンカーサイトに付着する。ある実施形態中、結合分子は、更に、捕捉分子を含み、結合相互作用のために分析される分子に結合される。例えば、直接シークエンシング、又は、ハイブリダイゼーションにより、結合分子中の核酸は結合分子の捕捉分子の識別タグとして作用する。
【0094】
本発明に係り提供される方法は、検出される分子を、本発明により提供される検出システムのアドレスアレイに付着するステップを含む。ある実施形態中、アドレスアレイは、複数のピンホールを有するブラインドシートを含み、ピンホール中か、周辺に、リンカーサイトが形成される。よって、本発明による検出システムは、同時に、何百万の核酸セグメントを読み取る。各セグメントが、例えば、1000基長さの場合、単一装置は、数十億ビットのシーケンス順序を得て、全ゲノムシークエンシングと再シークエンシングを可能にする。
3.1.1 検出される分子
【0095】
本発明に係り提供される方法により検出するのに適する核酸は、あらゆる核酸、例えば、DNA、RNA、又は、PNA(ペプチド核酸)を含み、且つ、既知と未知両方のあらゆるシーケンスを含み、自然発生、又は、人工シーケンスを含む。核酸は、自然に派生、組み換え製造、又は、化学的に合成される。核酸は、自然発生のヌクレオチド、自然に存在しないヌクレオチドアナログ、又は、改質されたヌクレオチドを含む。検出される核酸の長さは、実際の応用によって変化する。ある実施形態中、核酸は、少なくとも10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000塩基、又は、それ以上を含む。ある実施形態中、核酸は、10から20、10から50、10から100、50から100、50から500、50から1000、50から5000、500から2000、500から5000、又は、1000から5000塩基を含む。
【0096】
検出に用いる核酸は一本鎖である。例えば、加熱、又は、アルカリ、又は、他の化学処理等の公知技術により、一本鎖核酸テンプレートが二本鎖分子から派生する。一本鎖核酸テンプレートは、化学、又は、ビトロ合成により生成することもできる。
【0097】
ある実施形態中、検出される核酸は、その5’、又は、3’端で、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、核酸は、更に、核酸の5’端、3’端、又は、5’端と3’端の両方に結合される1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマーを含む。特定の実施形態中、エンドリンクプライマーは、核酸の3’端に付着される。エンドリンクプライマーが用いられ、検出される核酸を装置上のリンカーサイトに付着すると共に、1つ、又は、それ以上の検出するプライマー、例えば、シークエンシングプライマーに相補配列を提供する。
3.1.1.1.エンドリンクプライマー
【0098】
エンドリンクプライマーは、通常、100ヌクレオチド以下から構成される小核酸分子である。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、長さが、少なくとも5、10、15、20、25、30、50、75、90ヌクレオチド、又は、それ以上である。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、長さが、8から25、10から20、10から30、又は、10から50ヌクレオチドである。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは分岐していないが、別の実施形態中、それらは分岐している。
【0099】
エンドリンクプライマーは、検出される核酸をアドレスアレイ上のリンカーサイトに付着するのに用いられる。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、共有結合(エステル、又は、チオール結合)により直接、又は、非共有結合、例えば、抗原/抗体、又は、ビオチン/アビジン結合により、核酸をアレイ表面に結合する。ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、核酸をアレイ表面に、例えば、ポリメラーゼ等の中間分子を結合することにより、間接的に連結する。従って、エンドリンクプライマーは、改質されたヌクレオチドを含む、又は、その他の方式で修飾して、当技術分野で周知の方法、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合により、リンカーサイトへの付着を促進する;又は、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合により、例えば、エンドリンクプライマーは、抗原部分、又は、ビオチン化ヌクレオチドを含むヌクレオチドを含む。特定の実施形態中、改質されたヌクレオチドは、エンドリンクプライマーの3’端上にある。ある実施形態中、エンドリンクプライマーの5’端は、改質されたヌクレオチドを含む。
【0100】
エンドリンクプライマーは、核酸を検出するのに用いられる1つ、又は、それ以上のプライマー、例えば、シークエンシングプライマーの相補体となる。ある実施形態中、プライマーは、ハイブリダイゼーションにより、核酸を検出し例えば、プライマーは検出可能標識、例えば、蛍光標識を含む。ある実施形態中、エンドリンクプライマーの5’端は、シークエンシングプライマーに相補する配列を含む。ある実施形態中、シークエンシングプライマーに相補するエンドリンクプライマーが配置されて、シークエンシングプライマーの3’端は、順序付けされる核酸で、第一ヌクレオチドに直接隣接する。
【0101】
ある実施形態中、エンドリンクプライマーは、リガーゼ、例えば、DNAリガーゼにより、検出される核酸の末端に加えられる。ある実施形態中、ライゲーションの前、エンドリンクプライマーと検出される核酸は一本鎖である。別の実施形態中、二本鎖である。更に別の実施形態中、1つは一本鎖で、もう1つは二本鎖である。ライゲーションは、当技術分野で周知のようである。例えば、ポロニーシークエンシング方法中、Shendure et al.(Science, 309:1728-1732 (2005))は、ニュー・イングランド・バイオラボ(NEB)のクイックライゲーションキットにより、T30エンドリンクプライマー(32bp)をサンプルDNAセグメントに連結する。ライゲーション反応液は、0.26 pMoleのDNA、0.8 pMoleのT30エンドリンクプライマー、4.0μl T4 DNAリガーゼを、1Xクイックライゲーションバッファ中に含む。混合後、反応溶液は、室温で、約10分間培養され、その後、氷の上に置かれる。サンプルを65℃になるまで、10分間加熱して、連結反応を停止する。
【0102】
別の実施形態中、エンドリンクプライマーは、検出される核酸上で合成される。例えば、エンドリンクプライマーは、例えば、ターミナルトランスフェラーゼにより加えられるホモポリマーである。例えば、Harris等(Science 320:106-109(2008))は、poly A tailをDNAテンプレートに加え、ウィルスゲノムの単一分子シークエンシング中で、poly T シークエンシングプライマーの相補体となる。
3.1.1.2 シークエンシングプライマー
【0103】
シークエンシングプライマーは、検出される核酸のセグメント、又は、関連するエンドリンクプライマーに相補される一本鎖のオリゴヌクレオチドである。ある実施形態中、シークエンシングプライマーは、長さが、少なくとも8、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド、又は、それ以上である。特定の実施形態中、シークエンシングプライマーは、長さが、8から25、10から20、10から30、又は、10から50ヌクレオチドである。シークエンシングプライマーは、自然発生のヌクレオチド、自然界に存在しないヌクレオチドアナログ、又は、改質されたヌクレオチドを含むあらゆるタイプのヌクレオチドで構成されている。ある実施形態中、シークエンシングプライマーの5’端は改質されて、1つ、又は、それ以上のエンドリンク分子を含むシークエンシングプライマーが順序付けされる核酸と混成された後、アドレスアレイへのリンカーサイトの結合を促進する。
【0104】
ある実施形態中、シークエンシングプライマーは、改質されたヌクレオチド、例えば、ロック核酸(LNAs;改質されたリボヌクレオチド、ポリ核酸中で、増強した塩基スタック相互作用を提供する)を含む。LNAの有用性の解説は、Levin et al.(核酸 Research 34(20):142 (2006))が、LNA−含有プライマーは改善された選択性、対応するロックされていないプライマーに関連する強い結合を有することを示す。プライマー中の異なる位置で、3 LNA ヌクレオチド(蓋中)を含むMCP1 プライマー(5’-cttaaattttcttgaat-3’)の3つの変異体が製造される:MCP1-LNA-3’(5’-cttaaattttCtTgaAt-3’);MCP1-LNA-5’(5’-CtTaAattttcttgaat-3’);及び、MCP1-LNA-even(5’-ctTaaatTttctTgaat-3’)。全LNA-置換プライマーは高いTmを有し、MCP1-LNA-5’プライマーは特に高いシークエンシング精度を示す(Phred Q30 counts)。従って、特定の実施形態中、シークエンシングプライマーは、その5’領域、つまり、シークエンシングプライマーの5’端の半分、三分の一、又は、四分の一で、少なくとも1つのロックヌクレオチドを含む。
【0105】
本発明の検出装置に適用される前に、シークエンシングプライマーと一本鎖サンプル核酸(少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含む検出される核酸)が混成される。シークエンシングプライマーとサンプル核酸は、例えば、5X SSC(又は、5X SSPE)、0.1% Tween 20(又は、0.1% SDS)、及び、0.1% BSAバッファ等の塩分含有溶液中で、サンプル核酸とシークエンシングプライマーのモル過剰を混合することにより合成される。混合物は、65℃まで少なくとも5分加熱され、ゆっくりと室温まで冷却され、プライマー/テンプレートアニーリングを可能にする。余剰プライマーは、分子篩を含む適当な手段により消去される。
【0106】
エンドリンクとシークエンシングプライマー両方を含むプライマーは、シーケンスの外観検査、又は、コンピュータ補助プライマー設計を含む適当な手段により設計される。多くのソフトウェアパッケージが用いられて、プライマー設計を補助し、DNAStarTM(DNAStar, Inc., Madison, WI)、OLIGO 4.0(National Biosciences, Inc.)、Vector NTI(Invitrogen)、Primer Premier 5(Premierbiosoft)、及び、プライマー3(Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA)を含む。プライマー設計は、例えば、順序付けされる分子、選択性、長さ、所望の融解温度、二次構造、プライマー二量体、GC含量、バッファ溶液のpHとイオン強度、及び、使用する酵素(ポリメラーゼ、又は、リガーゼ)を考慮する。例えば、Joseph Sambrook and David Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press;3rd edition(2001)を参照する。
3.1.1.3 アレイ表面への接着
【0107】
シークエンシングプライマーと1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマーを含む順序付けされる核酸がアニーリングされた後、この複合体が適当なバッファで用意され、アドレスアレイの表面に応用され、結合することが許される。ある実施形態中、サンプル核酸(検出される核酸と1つ、又は、それ以上のエンドリンクプライマー)がリンカーサイトに付着され、その後、シークエンシング、又は、検出中のプライマーが提供される。別の実施形態中、装置に提供される前に、複合体が混成される。一サンプル核酸だけが結合されるリンカーサイトは実効アドレスとして知られる。ある実施形態中、複合体が検出システムに提供され、且つ、サンプル核酸が、アドレスアレイ上のランダムなリンカーサイトに付着される。別の実施形態中、サンプル核酸が、ロボット、又は、液体処理システムを含む適当な手段により、アドレスアレイ上の所定のリンカーサイトに提供される。
【0108】
核酸を固定支持物に付着する適当な手段は当技術分野で周知のようである。ある実施形態中、サンプル核酸は、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合等の共有結合により、直接リンカーサイトに付着される、又は、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合等の非共有結合により、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、サンプル核酸は、介在分子により、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、介在分子は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼである。
【0109】
直接、核酸の共有結合の説明を例とすると、Adeesi et al.(Nucleic Research, 28:87 (2000))は、プライマーの5’端を修飾し、SH官能基を含む。Adeesi等の方法によると、核酸は、50μMリン酸塩緩衝食塩水(“PBS”)(NaPi: 0.1 MNaH2PO4 pH 6.5, 0.1 M NaCl)中で準備される。その後、約1−5μlのプライマー溶液がシラン処理したスライドガラスの表面に提供され、湿度制御ボックスで、室温で、約5時間培養され、プライマーをチップ表面に結合する。結合反応完了後、PBS溶液は、5分間、室温で2回、振動洗浄されて、非接着DNAを除去する。洗浄後、10mMβ−メルカプトエタノールがPBS溶液に加えられて、室温下で、アドレスアレイ表面を洗い流すのに用いられ、非接着DNAのチオール基を非活性化する。次に、アレイ表面が、例えば、一回5X SSC 0.1% Tween と一回5X SSC バッファ溶液で洗浄される。従って、ある実施形態中、Adeesi 等に用いられる方法が本発明に係り提供される方法に用いられて、サンプル核酸複合体を、例えば、シークエンシングプライマーの5’端、又は、サンプル核酸により、リンカーサイトに付着する。
【0110】
別の実施形態中、サンプル核酸は、例えば、ビオチン化ヌクレオチドで、且つ、リンカーサイト表面上のアビジンを結合する。別の実施形態中、サンプル核酸は抗原部分を含み、BrdU、又は、ジゴキシゲニンを含み、リンカーサイト上の抗体(又は、その断片)により結合される。理解できることは、“抗体”は、例えば、1つ、又は、それ以上のCDRドメインを含む免疫グロブリン分子の断片を含む;又は、可変重鎖、又は、可変光フラグメントであることである。抗体が自然発生、組み換え、又は、合成される。抗体は、例えば、多クローン性、及び、単クローン性変異体も含む。ある実施形態中、抗体は、少なくとも106、107、108、109M又はそれ以上の結合定数により、それらの抗原を結合する。抗体の構造、機能、及び、生成は、当技術分野で周知のとおりである。例えば、Gary Howard and Matthew Kasser, Making and Using 抗体: A Practical Handbook CRC Press; 1st edition(2006)を参照する。
【0111】
更に別の実施形態中、サンプル核酸は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼにより、リンカーサイトに付着される。熟練した職人なら理解できるように、酵素機能を保留するため、入手可能情報、例えば、酵素の一次、二次、及び、三次構造が考慮されなければならない。例えば、Taq とPhi29ポリメラーゼの構造は当技術分野で周知のとおりである:それぞれ、Kim et al., Nature, 376:612-616 (1995)とKamtekar et al., Mol. Cell, 16:609-618(2004)を参照する。ポリメラーゼを表面に固定し、活性を保持する方法は、当技術分野で周知のとおりで、米国特許出願公告No.2008/0199932(2008年8月21日公開)とKorlach et al. PNAS 105:1176-1181(2008)を参照する。
【0112】
ある実施形態中、リンカーサイトのアルデヒド−改質表面は、アルデヒド含有シラン試薬で処理される。アルデヒドは、迅速に、たんぱく質上の1級アミンを反応し、Schiff’の塩基連鎖を形成する。一般に、NH2−端で更に反応するα-アミン以外に、多くのたんぱく質はそれらの表面上でリジンを露呈するので、各種方向でスライドに付着され、たんぱく質の異なる側が、溶液中の他のたんぱく質、又は、小分子と反応するのを許可する。別の実施形態中、UV光活性化により、光子HS(N-ヒドロキシ琥珀酸(succimido)カルボン酸塩分子は、炭素鎖リンカーによりアジドニトロベンゼン分子に連結される)は、装置上のアミン−改質表面に付着される。これらの実施形態中、窒素を消去することにより、UV光がアジドニトロベンゼン部分を励起して、反応性に極めて富むナイトレンを生成する。ナイトレンは、迅速に、装置表面上のNH2と反応し、ヒドラジン結合を形成する。リンカーのもう一端はNHSカルボン酸塩で、ポリメラーゼの表面上のリジンと反応し、アミド共有結合を生成する。別の実施形態中、緩衝状況下で、NHSカルボン酸塩部分は、装置の表面上の1級アミンと反応する。UV光が、アジドニトロベンゼン部分の活性化に用いられ、極めて反応性に富むナイトレンを電子不足群として形成し、迅速に、ポリメラーゼ上のリジン残基の1級アミンと反応する。
3.1.2 シークエンシングモダリティ
【0113】
本発明により提供される検出装置及びシステムは、既知の手段により、核酸の検出と順序付けに用いられ、例えば、米国特許No.6,946,249とShendure et al., Nat. Rev. Genet.5:335-44(2004)で再検討される。シーケンスモダリティは、既知の単一分子シークエンシング方法から選択される。ある実施形態中、シークエンシング方法は、DNAポリメラーゼ、又は、DNAリガーゼの選択性に依存し、且つ、例えば、塩基拡張シークエンシング(単一塩基段階的拡張)を含み、合成によるマルチ塩基シークエンシング(例えば、末端的標識ヌクレオチドにより、シークエンシングする)と揺動シークエンシングはライゲーション塩基である。この方法は、通常、少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含むサンプル核酸を提供するステップを有する。核酸が、例えば、リンカーサイトで、(直接的、又は、間接的に)基板に取り付けられる。核酸は、一本鎖形式で提供されるか、又は、例えば、化学、又は、熱変性により一本鎖にされる。その後、シークエンシングが、シークエンシングプライマーで開始される(リガーゼ塩基のシークエンシングは、一般に、アンカープライマーのことで、類似用途をシークエンシングプライマーに提供する)。
【0114】
単一分子シークエンシングモダリティにとって、本発明は、単一分子を並べなおすことができる長所を提供することができる。例えば、シークエンシング読み取り完了後、シークエンシングプライマーと拡張ヌクレオチドがサンプル核酸から削除され、装置が洗浄され、シークエンシングが繰り返される。各種実施形態中、再シークエンシングは、同じ、又は、異なる方法により実行される。同一分子を再シークエンシングすることにより、シークエンシングエラーは、シークエンシング読み取りの回数の累乗に落ちることが予期される。例えば、単一読み取りの各塩基のエラー比率が10−3の場合、その後、2度の読み取り後、(10−3)2、即ち、10−6に落ちる。この単一分子シークエンシングの特別な長所は、シークエンシングに用いられる改質されたヌクレオチドが、それらの標識、又は、保護基の生成、例えば、ニセの検出を失うからである。
【0115】
一般に、単一分子シークエンシング中、順序付けされる少なくとも1つの核酸分子が基板に付着され、プライマーと接触する。プライマーは、例えば、少なくとも1つの酵素触媒による重合、又は、連結反応を実行することにより改質される。少なくとも1つの反応が光の発射を生じ、光の発射と核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性が相関する。“生じる”光の発射は、少なくとも1つの反応が少なくとも1つの状態を生じることを指し、この状況下で、核酸で構成される少なくとも1つの塩基の特性と相関する光の発射が発生する;この発生は、興奮性光線、化学、又は、生物発光システム等と相互作用する。少なくとも1つの状態は、例えば、フルオロフォアと少なくとも1つの反応の製品の合併、又は、ピロリン酸塩の釈放である。よって、光線は外部の励起の有無にかかわらず生成される。例えば、単一分子シークエンシングは、共有結合した検出可能標識、例えば、蛍光標識、及び、保護基を含む可逆終止物塩基類似体により実行され、二次拡張を回避し、類似物がプライマーに加えられた後、励起され、別の循環の拡張を許可した後、標識と保護基が除去される。また、拡張ステップの産物、例えば、ピロリン酸塩は、化学、又は、生物発光検出システムを提供することにより、外部の励起なしで検出され、生物発光検出システムは、ピロリン酸塩−依存方式で、光を発射する。これら、及び、別のモダリティは、以下で詳細に討論する。
【0116】
発射する光は、核酸により構成される少なくとも1つの塩基の特性と相関する。ある実施形態中、相互関係は一時的である;例えば、光の発射時間は少なくとも1つの塩基の特性を示し、例えば、異なる塩基類似体が、異なる回の重合反応中での使用に提供される時の例である。ある実施形態中、相互関係はスペクトルである;例えば、放射光のスペクトルは、少なくとも1つの塩基の特性を示し、例えば、異なるフルオロフォアを含む異なる塩基類似体が重合反応の使用に提供される時の例である。
【0117】
ある実施形態中、単一分子核酸シークエンシングは、複数のシークエンシング周期からなる。理解できることは、シークエンシング周期は、第一塩基が識別された後、核酸から構成される少なくとも1つの第二塩基を識別するため、少なくとも1つの塩基の特性に相関する光の発射と重複を発生することである。よって、単一分子核酸シークエンシングを含む本発明に係る方法中、単一分子核酸シークエンシングは、少なくとも1つの一定数のシークエンシング周期を含み、少なくとも一定数の光の発射が、核酸で構成される少なくとも一定数の塩基の特性に共同で相関するように導き、且つ、方法は、核酸で構成される少なくとも一定数の塩基の識別を含む。ある実施形態中、一定数は、例えば、2、3、4、5、10、20、50、100、200又は500である。
【0118】
シークエンシング方法は、核酸から構成される1つ、又は、それ以上の塩基の特性を決定するステップを含む。ある実施形態中、本発明に係る方法において、単一分子核酸シークエンシングを実行して生じる光の発射が、少なくともの第一光学センサーと第二光学センサーを有する少なくとも1つの検出器により検出され、少なくとも2つの光学センサーからの出力信号が処理され、核酸から構成される少なくとも1つの塩基の特性が、処理の少なくとも1つの結果と少なくとも1つの既知のタイプに対応する少なくとも1つの既知の結果を比較することにより決定される。
【0119】
例えば、処理の結果は、反応が発生する時間を示す;発射する光は一時的に、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性に相関し、この時間は、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基を識別するのに用いられる。
【0120】
別の実施形態中、処理の結果は、フルオロフォアと反応の産物の合併の決定である;発射する光が、スペクトル的に核酸から構成される少なくとも一定数の塩基の特性と相関する時、その決定は、核酸から構成される少なくとも一定数の塩基を識別するのに用いられる。
3.1.2.1 塩基拡張シークエンシング:段階的拡張
【0121】
ある実施形態中、本発明により提供される検出装置は、塩基拡張シークエンシング期間で生成される光を検出するのに用いられる。ある実施形態中、塩基拡張シークエンシングは、順序付けされる一本鎖核酸、順序付けされる核酸の3’端に関連するエンドリンクプライマー、及び、アニーリングされるシークエンシングプライマーを含む一部の二重サンプル核酸を、リンカーサイトに付着させることにより開始される。ある実施形態中、ポリメラーゼと改質されたヌクレオチドは、適当なバッファ中で、光検出装置に適用される。ある実施形態中、リンカーサイトで、ポリメラーゼにより、サンプル核酸複合体がリンカーサイトに付着される。ある実施形態中、ヌクレオチドは共有結合した検出可能標識、例えば、蛍光標識、及び、保護基を有し、二次拡張を回避する。従って、単一ヌクレオチドをシークエンシングプライマーの3’端に加えた後、シークエンシングが中断する。
【0122】
塩基拡張シークエンシング反応の一実施形態の第一ステップで、蛍光保護基を有するヌクレオチドは、DNAポリメラーゼをシークエンシングプライマーの3’端に加える。ある実施形態中、蛍光標識は保護基として機能する。別の実施形態中、それらは分離部分である。単一ヌクレオチドは、シークエンシングプライマーの3’端で合併され、且つ、対応する光検出器により、その標識により識別される。蛍光標識と保護基は、その後、化学、又は、酵素溶解により除去され、塩基拡張の追加周期を許可する。ある実施形態中、標識と保護基は、同時、又は、連続して、順序中から除去される。塩基の加入順序をコンパイルすることにより、3’から5’方向で、一回につき一塩基、サンプル核酸のシーケンスが推定される。
【0123】
一般に、段階的拡張期間に加えられるヌクレオチドを認識する2方法がある。第一状況で、4個のヌクレオチドは全て、同じ検出可能標識を有するが、所定順序で、一回に1個加えられる。拡張ヌクレオチドの識別は、拡張反応で、ヌクレオチドが加えられる順序により確認される。拡張期間中に整合された塩基を認識する第二モード中、4個の異なるヌクレオチドは同時に加えられ、それぞれ、区別できる検出可能標識と結合される。異なる実施形態中、標識の励起、又は、発光スペクトル、及び/又は、強度は異なる。拡張で加えられるヌクレオチドの識別は、検出された標識の強度、及び/又は、波長(例えば、励起、又は、発光スペクトル)により判断される。
3.1.2.2 合成によるシークエンシング:複数ステップの拡張
【0124】
ある実施形態中、合成によるシークエンシングは、複数の連続した拡張、例えば、保護基の使用なしで実行される。これらの実施形態中、重合反応は、ヌクレオシド三リン酸の加水分解後のピロリン酸塩の釈放、つまり、βとγリン酸塩複合体の釈放を検出することにより監視される。上述のように、この複合体は、例えば、複合体上の蛍光部分により直接、又は、間接的に、例えば、ピロリン酸塩を化学、又は、生物発光検出システムに結合することにより検出される。
【0125】
ある実施形態中、サンプル核酸は、末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドを用いることにより、実質的に連続して順序付けされる。末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドとそれらを用いた方法の実施形態が示され、例えば、米国特許第7,361,466号と米国特許公告番号2007/0141598、公開日2007年6月21日である。簡単には、ヌクレオチドを本発明により提供されるシステムに提供し、重合中に加水分解され、標識ピロリン酸塩は対応する光検出器により検出される。ある実施形態中、全部で4個のヌクレオチドは、区別できる標識を有し、且つ、同時に加えられる。ある実施形態中、ヌクレオチドは、例えば、区別がつかない、即ち、相同の標識を有し、且つ、所定順序で順に加えられる。区別がつかない標識を有するヌクレオチドの順次敵、循環的追加は、依然として、多重、連続した重合ステップを、例えば、ホモポリマーシーケンス中で許す。
3.1.2.3 リガーゼ塩基のシークエンシング
【0126】
別の実施形態中、サンプル核酸は、リガーゼ塩基のシークエンシングにより、本発明により提供される装置上で順序付けされる。リガーゼ塩基のシークエンシング方法が開示され、例えば、米国特許第5,750,341、PCT公告WO 06/073504、及び、Shendure et al. Science, 309:1728-1732 (2005)である。Shendure等の方法中、例えば、未知の一本鎖DNAサンプルは、二エンドリンクプライマーの側面に位置し、且つ、固定支持物上で固定される。未知配列中の特定の位置(即ち、特定のエンドリンクプライマーに近接するnth塩基)は、アンカープライマー(シークエンシングプライマーの類似物)をエンドリンクプライマーの1つにアニーリングし、且つ、その後、4個の退化した九量体のたまりを混合物に提供することにより調査される。4個の九量体は全て、区別できる蛍光標識を有し、質問位置(query position)を除く全部の位置では退化し、各九量体は、区別できる塩基−A、C、G、又は、Tにより問い合わせる。サンプルが洗浄され、蛍光スキャンされ、質問する塩基が識別される。その後、サンプル核酸から、アンカープライマーと結合された九量体が除去され、装置が洗浄され、処理が繰り返され、異なる位置を質問する。有利なのは、この方法は、非進行性で、即ち、塩基は順序で質問されない。よって、エラーは蓄積されない。この他、この方法は、5’、又は、3’方向から、ヌクレオチドに質問し、即ち、標準の5’→3’DNA合成を必要としない。この方法により、通常、合計約13個の塩基のサンプル核酸が順序付けされる。
3.1.2.4 第三世代のシークエンシング
【0127】
ある実施形態中、サンプル核酸は、第三世代のシークエンシングを用いて、本発明による提供される装置上で順序付けされる。第三世代のシークエンシング中、多くの小さい(~50nm)孔を有するアルミニウムコーティングのスライドがゼロモードの導波路として用いられる(例えば、Levene et al.,Science 299, 682-686 (2003)を参照する)。アルミニウム表面は、ポリホスホン酸塩化学性質、例えば、ポリビニルホスホン酸塩化学性質(例えば、Korlach et al.,Proc Natl Acad Sci USA 105, 1176-1181 (2008)を参照する)により、DNAポリメラーゼの付着から保護される。これは、DNAポリメラーゼ分子をアルミニウムコーティングのホール中の露出シリカに優先吸着する。この設置は、エバネセント波現象により、蛍光性背景の減少を許し、高濃度の蛍光標識されたdNTPの使用を許す。フルオロフォアは、dNTPの末端リン酸塩に付着されて、蛍光性が、dNTPの合併で釈放されるが、フルオロフォアは、新しく合併されるヌクレオチドへの付着を維持せず、複合体が直ちに、別の循環の合併を準備することを意味する。この方法により、dNTPのアルミニウムコーティングのホールに存在する独立したプライマー−テンプレート複合体への合併が検出される。例えば、Eid et al., Science 323, 133-138 (2009)を参照する。本発明による検出システムの使用で、高感度を提供し、合併された dNTPの更なる効率的検出を可能にし、比較的低エラー比率、及び/又は、長い説明可能なシーケンスデータの読み取りが達成される。
3.1.3 追加応用
【0128】
本発明による検出システムは、同時に、何百万の核酸セグメントを検出する。各セグメントが、例えば、1000塩基長さの場合、単一装置は、一回で、数十億個を超える塩基シーケンスを得る。ここでされ提供される装置の追加応用と方法は以下で討論する。
3.1.3.1 全体のゲノムシークエンシング
【0129】
本発明による検出システムは、例えば、ウィルス、バクテリア、菌類、真核生物、又は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、人類のの全部、又は、一部のゲノムシークエンシングを実行するのに用いられる。
【0130】
シークエンシングのために、ゲノムDNAは、少なくとも20、50、100、200、300、500、800、1200、1500ヌクレオチド、又は、それ以上の断片に分けられる。ある実施形態中、分けられたゲノムDNAは、20〜50、20〜100、20〜500、20〜1000、500〜1200又は500〜1500のヌクレオチド長さである。ある実施形態中、上述のシークエンシングのために、関連するエンドリンクプライマーに沿った順序付けされる核酸が一本鎖にされ、シークエンシングプライマーにアニーリングされ、本発明により提供されるシステムに提供される。
3.1.3.2.遺伝子発現プロファイル
【0131】
別の実施形態中、遺伝子発現プロファイルのために、本発明による検出システムが、cDNAの順序付けに用いられる。例えば、装置上で検出される特定序列の相関する周波数を測定することにより、mRNA程度が定量化される。数百万のcDNA分子は、本発明により提供される装置上で平行に順序付けされる。細胞は、平均、350,000m個のRNA分子を含み、百万のシークエンシング反応中、各細胞の複製でも存在する転写産物は、3回順序付けされることが期待される。従って、本発明により提供される装置は、単一の複製数の感度を有する単一分子シークエンシングに適する。
【0132】
cDNA合成は当技術分野で周知であり、一般に、総RNA抽出と任意的なmRNA濃縮を含む。例えば:第一ストランド合成のための逆転写;RNAse処理で、残余RNAを除去する;第一ストランドのランダム六量体プリミング、及び、DNAポリメラーゼによる第二ストランド合成を含むステップにより、cDNAがmRNAから生成される。合成cDNAは、本発明により提供される装置上でのシークエンシングに適する。DNAとRNA両方の分離と準備の方法は、当技術分野で周知のようである。例えば、Joseph Sambrook and David Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd edition (2001)を参照する。
【0133】
ある実施形態中、cDNAはアダプターポリ核酸と結合し、アダプターは、専門の制限酵素により処理、最後に、処理された核酸が、本発明による提供される装置のリンカーサイトに付着した相補オリゴヌクレオチドと結合する。特定の実施形態中、アダプター分子はエンドリンクプライマーである。
【0134】
ある実施形態中、本発明によると、mRNAのポリA尾部は適当なエンドリンクプライマーとなり、ポリTシークエンシングプライマーと相補する。
3.1.3.3 結合相互作用の検出及び/又は測定
【0135】
別の実施形態中、検出装置は、例えば、DNA/DNA、RNA/RNA、又は、DNA/RNA塩基対合、核酸/たんぱく質相互作用、抗原/抗体、レセプター/リガンド結合、及び、酵素/基板結合を含む様々な結合相互作用を検出するのに用いられる。一般に、サンプル分子は、識別核酸タグ(ID)を含む結合分子に付着される。ある実施形態中、結合分子は、更に、サンプル分子を結合する捕捉分子を有する。結合分子は、更に、リンカーサイトに結合する手段を含む;例えば、共有結合性化学結合、例えば、ジスルフィド、チオエステル、アミド、ホスホジエステル、又は、エステル結合を促進する部分;又は、非共有結合、例えば、抗体/抗原、又は、ビオチン/アビジン結合による。ある実施形態中、結合分子は、IDタグにより、アレイに付着される。
【0136】
サンプル分子が本発明によるシステムに提供され、そのリンカー分子により、例えば、結合分子上の捕捉分子を結合することにより、ランダムリンカーサイトに付着される。ある実施形態中、サンプル分子とリンカー分子が混合され、結合を許され、その後、本発明により提供される装置に適用される。ある実施形態中、リンカー分子がまず装置に提供され、リンカーサイトへの付着が許され、その後、サンプル分子が提供される。次に、IDが、本発明に係る方法(例えば、ハイブリダイゼーション、又は、シークエンシングにより)により検出され、関連するサンプル分子を識別する。複数のサンプル分子の種類は同じアレイに付着され、それらの標識により分化され、それと結合する捕捉分子の独特のIDを用いて、それらの結合相互作用が特徴づけされる。よって、ある実施形態中、標識サンプル分子を検出する方法は、核酸タグ(ID)からなるリンカー分子により、サンプル分子を本発明によるシステムのリンカーサイトに結合し、IDの核酸シークエンシングを実行し、標識サンプル分子を検出するステップを含む。特定の実施形態中、核酸シークエンシングは塩基拡張シークエンシングである。ある実施形態中、核酸シークエンシングは、リガーゼ塩基のシークエンシング、又は、末端−リン酸塩−標識ヌクレオチドシークエンシングから選択される。
【0137】
ヌクレオチド“bits,”を使用することにより、4n 個までの区別できる捕捉分子はが、本発明による検出システムに付着、及び、識別され、nは、順序付けされるIDの長さを表す自然数である。例えば、5個のヌクレオチドは、一千個を超える独特なIDを提供し、12個のヌクレオチドは1600万を超える組み合わせを提供する。例えば、リンカー分子は本発明によるシステムに付着され、それらの位置は、それらの対応するIDタグを検出することにより決定される。リンカー分子は、その後、探針となり、例えば、1つ又はそれ以上の標識サンプル分子を有する結合相互作用を調べる。つまり、1つ又はそれ以上のリンカー分子を有するシステムがそれに付着されて、探針アレイとなる。
【0138】
ある実施形態中、標識サンプル分子は蛍光標識である。リンカー分子の捕捉分子に結合される時、標識サンプル分子は、リンカー分子が付着されるリンカーサイトに対応する光検出器により検出される。従って、ある実施形態中、本発明に係る方法は、更に、標識サンプル分子を本発明によるシステムに提供し、標識サンプル分子を検出するステップを含む。特定の実施形態中、システムは、そのリンカーサイトに付着される核酸タグ(ID)を含むリンカー分子を有する。複数の標識サンプル分子が、同時に、探針アレイに提供され、且つ、それらの標識、例えば、それらの蛍光標識の強度、及び/又は、波長により分化される。標識質問分子の与えられた濃度下で、動力学(例えば、ドッキング/未ドッキングの比率)と統計学(与えられた時間で結合、又は、未結合状態のサンプル分子の部分)両方に基づいて、サンプル分子と標識質問分子間の結合相互作用の解離定数が推定される。
【0139】
ある実施形態中、結合分子のIDは、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、90、100、150、200個、又は、それ以上のヌクレオチド長さである。ある実施形態中、IDは、5〜10、20、40、80、又は、160;又は、10〜20、又は、50;又は、20〜35個のヌクレオチド長さである。IDは、独特の核酸シーケンス、つまり検出される核酸を含む。特定の実施形態中、独特の核酸シーケンスは、少なくとも1、2、4、6、8、10、12、14、16、20、24、30個、又は、それ以上のヌクレオチド長さを有する。ある実施形態中、独特の核酸シーケンスは、4〜10、12、15、又は、20;又は、10〜20個のヌクレオチド長さである。IDは、少なくとも1つのエンドリンクプライマーを含み、即ち、IDは、シークエンシングプライマーに相補されるシーケンスを含み、ある実施形態中、これは改質され、例えば、ビオチン化ヌクレオチドを含むことにより、リンカーサイトに付着される。ある実施形態中、IDのエンドリンクプライマー部分は、3’端から独特の核酸シーケンスである。ある実施形態中、5’端から独特の核酸シーケンスである。更に別の実施形態中、エンドリンクプライマーは、独特の核酸シーケンスの3’と5’端で出現する。
【0140】
ある実施形態中、サンプル分子と捕捉分子は、炭水化物、脂質、たんぱく質、ペプチド、抗原、核酸、ホルモン、有機小分子(例えば、薬剤学上)、又は、ビタミン部分;または、それらの組み合わせから選択される部分を含む。これらの部分は、自然発生(例えば、生物化学的に精製された)、又は、合成(例えば、化学的に合成される、又は、組み換え技術で製造された)である。この他、これらの基板は、非天然成分を含まない、一部の、又は、全ての非天然成分(例えば、非天然のアミノ酸、保護基等)を含む。特定の実施形態中、サンプル分子、又は、捕捉分子は、たんぱく質、例えば、成長因子、ペプチド抗原、抗体、又は、レセプターである。
【0141】
核酸をリンカー分子、又は、リンカーサイトに結合する様々な手段は当技術分野で周知で、例えば、米国特許公告番号2004/0038331を参照する。‘331公告は、固体支持物上に、たんぱく質オリゴヌクレオチド結合物を形成する方法を開示する。米国特許番号4,748,111は、たんぱく質を核酸の3’端に結合する一例を提供する。まず、ターミナルトランスフェラーゼが用いられて、リボース残基を分子の3’部分に加える。その後、過ヨウ素酸塩酸化反応が、3’アルデヒド基を核酸上で形成し、その後、たんぱく質のアミノ基と共有結合を形成する。たんぱく質がIDの3’端に結合される時、IDの5’端により、リンカーサイトに付着される。
【0142】
ある実施形態中、捕捉分子、例えば、たんぱく質は、IDの5’端に連結される。これらの実施形態中、IDの3’端、又は、シークエンシングプライマーの5’端が用いられて、捕捉分子をリンカーサイトに付着する。米国特許第6,013,434は、例えば、オリゴヌクレオチド−ポリアミド結合物を開示し、接続は、オリゴヌクレオチドの5’端による。米国特許第6,197,513は、PNAとDNA両方が、核酸の5’端により、カルボキシル酸部分、例えば、たんぱく質を有する分子に結合される。PNAとDNA分子はアリール、又は、アミノオキシアセチル部分を含む。米国特許第6,153,737は、少なくとも1つの2’官能性ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを開示し、多くの分子との結合に適する。
3.1.3.4 追加的検出方法
(a)FRET
【0143】
ある実施形態中、分子は、時に、蛍光性共鳴エネルギー転移として知られるフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)により、検出本発明による提供される装置上で検出される。当技術分野で周知のように、励起したドナー分子非放射移転エネルギーがアクセプタ分子に達する時、エネルギーが発散されて、一般の光である時、FRETが発生する。例えば、検出される分子に対し、大きい効果的な励起と放射波長間のスペクトル間隔を提供することにより、FRETは、背景光を減少するのを助ける。ドナーとアクセプタ分子間の距離の第六電力に伴うので、FRETはしばしば、接近する分子間相互作用を検出するに用いられる。例えば、Zhang et al. (Nature materials 4:826-31 (2005))は、FRETにより、核酸ハイブリダイゼーションを検出する。ビオチン化核酸標的は、アビジンコートの量子ドットドナーと結合し、その後、Cy5−結合DNA探針を励起する。ある実施形態中、標識捕捉分子と標識サンプル分子は、FRETにより検出されるドナー/アクセプタ(逆もまた同様)ペアを形成する。
【0144】
本発明で提供される核酸シークエンシングある実施形態中、ポリメラーゼ、又は、リガーゼに付着されるドナー発色団に対し、蛍光標識されたクレオチドはアクセプタ発色団として作用する。従って、これらの実施形態中、ポリメラーゼ、又は、リガーゼ上に位置するドナー発色団は、サンプル核酸上で重合される、又は、連結されるヌクレオチド上のアクセプタ発色団を励起する。FRET効果中の快速下降のために、ポリメラーゼに接近しないヌクレオチドは励起されない。ある実施形態中、ドナー分子は、例えば、別のフルオロフォア、例えば、量子ドットである。量子ドット、例えば、半導体量子ドットは当技術分野で周知であり、且つ、国際公告番号WO 03/003015で記述されている。量子ドットを、例えば、生体分子に結合する手段は当技術分野で周知で、Mednitz et al., Nature materials 4:235-46 (2005)と米国特許公告番号2006/0068506と2008/0087843を参照し、それぞれ、2006年3月20日と2008年4月17日に公開されている。ある実施形態中、量子ドットはDNAポリメラーゼ分子に結合される。上述の討論のように、酵素をリンカーサイトに結合するために、熟練した職人なら分かるように、フルオロフォアを、例えば、DNAポリメラーゼ、又は、リガーゼに結合する時注意が必要で、酵素の一次、二次、及び、三次構造上のフルオロフォアを結合する効果を軽減することにより、酵素機能を保持する。
(b)マルチ光子励起
【0145】
ある実施形態中、発色団は、2つ、又は、それ以上の光子により励起される。例えば、ある実施形態中、FRET中、ドナー、又は、アクセプタ発色団は、2つ、又は、それ以上の光子により励起される。2光子とマルチ光子励起は、更に、例えば、米国特許第6,344,653と5,034,613で記述されている。
(c)時間分解検出
【0146】
ある実施形態中、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器が変調されて、特徴的な位相シフトを有する。当技術分野で周知の方法を用いて、例えば、米国特許公告第.2008/0037008,2008年2月14日公開で、本発明による提供される装置で検出される分子から発光される光は、対応する光検出器により測定され、励起光源の干渉がないことが開示されている。
(d)フローサイトメトリー
【0147】
ある実施形態中、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器はフローサイトメトリーデータを得るのに用いられる。フローサイトメトリーは、一般に、液体懸濁液中のオブジェクトの集団の光学的分析を含む。懸濁液は検出器を流れ、これにより、集団中の多くのオブジェクトからの光の連続検出を可能にする。オブジェクトは、例えば、細胞、マイクロビーズ、又は、同サイズのその他の分子から選択され、例えば、粒子は、少なくとも1つの尺寸(長さ、高さ、幅、直径等、粒子形状に適合して)中、0.1μm、0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、又は、5μmより大きい、及び/又は、少なくとも1つの尺寸、又は、全尺寸中、5mm、2mm、1mm、500μm、200μm、100μm、50μm、20μm、又は、10μmより小さい。オブジェクトは、1つ、又は、それ以上の励起光源と検出器間の単一ファイルを通過し、蛍光性、及び/又は、光散乱データが獲得される。ある実施形態中、オブジェクトは、 少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、又は、少なくとも4種類のフルオロフォアを含む。ある実施形態中、オブジェクトの少なくとも1つのサブ集団により発光される光が検出される。
【0148】
フルオロフォアは、例えば、細胞によりフルオロフォア内因性発現した、例えば、蛍光蛋白質(GFP、BFP、CFP、YFP、RFP等)から選択され、上述のフルオロフォアに加え、生体分子の類、又は、細胞構造(例えば、DNAに特有のDAPI、又は、細胞膜を染色するEvans Blue)に対し、特定の結合活性を有するフルオロフォア、ヌクレオチドアナログ、例えば、シアニン染料結合dUTPに結合されるフルオロフォア、及び、特定の結合パートナー、例えば、抗体、アビジン、又は、核酸探針に結合する合成フルオロフォアを含む。粒子中に存在する、及び/又は、粒子に結合されるフルオロフォアの量、及び、適当な波長の光により励起されるときに生成されるフルオロフォアの発射の量は、生体分子、例えば、DNA、細胞膜、又は、特定の核酸、たんぱく質、又は、別の生体分子、又は、粒子中、又は、粒子上の代謝体の存在、及び/又は、量に相関性がある。
【0149】
フローサイトメトリーは、粒子の集団を分析して、蛍光性強度の周波数分布、例えば、ヒストグラムを生成するステップを含む。1つ以上のフルオロフォアが用いられる、及び/又は、光散乱データも獲得される、又は、データ収集が時間分解の時、周波数分布は多次元である。例えば、高感度、及び/又は、高信号対雑音比のデータ収集を許すことにより、本発明による提供される装置の励起光源と光検出器の使用は、高品質データを生成する。
【0150】
ある実施形態中、フローサイトメトリーを実行するステップを含む本発明に係る方法は、更に、蛍光活性化分類を含む。このような実施形態中、粒子は、フローサイトメトリーにより即時に分析され、ユーザーにより定義されたパラメータに従って分類される。例えば、特定のフルオロフォアからの検出可能な蛍光性、又は、特定範囲中のこのような蛍光性を示す粒子は、この基準に符合しない粒子から分離される。更なる分析のために、これらの粒子が収集される。ある実施形態中、この方法で分類された粒子は生細胞である。本発明による検出装置の感度は、例えば、酵素活性、又は、プロモーター活性等、低レベル活性の細胞分類を可能にし、検出できない活性の細胞及び高活性の細胞から分離する。よって、本発明の装置及びシステムは、従来はアクセスできなかった低プロモーター活性、又は、低酵素活性の細胞の濃縮された集団へのアクセスを可能とする。
(e)他の蛍光検出装置と方法
【0151】
ある実施形態中、本発明に係る方法は、生体細胞からなる少なくとも1つのオブジェクトにより発光される光の検出に関し、生体細胞は、生、又は、固体細胞である。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、少なくとも1つの量子ドットからなる少なくとも1つのオブジェクト、少なくとも1つの蛍光蛋白質少なくとも1つのオブジェクト、少なくとも1つの蛍光の小化学官能基からなる少なくとも1つのオブジェクトから選択される。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは蛍光標識され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、多糖、又は、脂質からなる。
【0152】
ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、固定で、制限数目のフルオロフォア、例えば、最多で、20、10、5、又は、2個のフルオロフォアを含み、量子ドット、蛍光蛋白質、及び、蛍光の小化学官能基から選択される。ある実施形態中、少なくとも1つのオブジェクトは、量子ドット、蛍光蛋白質、及び、蛍光性の小さい化学官能基から選択される単一フルオロフォアだけを含む。蛍光性の小さい化学官能基の多くの例は上述されている。ある実施形態中、蛍光性の小さい化学官能基は、300から800nm間の発光ピーク、及び/又は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9の量子収量(光子数と吸収波長は、ピーク吸収波長の光子数の比率である)を有する。
3.2 生体分子分析サービス
【0153】
本発明は、本発明の実施形態による検出装置を用いて、生体分子分析サービスを提供する方法も提供される。ある実施形態中、方法は、サービスリクエスタから分析される生体分子を含むサンプルを、サービス提供者とサービス提供者からの分析結果を受信するサービスリクエスタに提供するステップを含み、結果は、本発明により提供される装置を用いて生成される。ある実施形態中、報酬を考慮するために、方法、例えば、出来高払い、又は、契約サービス協定を実行する。この他、サンプルは、直接、サービスリクエスタとサービス提供者間で運送されるか、又は、ベンダーを介する。ある実施形態中、サービス提供者、又は、ベンダーは、地理的に、アメリカ外の領土、例えば、別の国に位置する。
4.実施例
実施例1
【0154】
この例で、図1で示される装置により、オブジェクトの3種類が検出、及び、識別される。この例で用いられる光検出器は、図17で示されるP−N−P−N−P構造を有するマルチ接合フォトダイオードである。p型層601とn型層602は、第一光学センサーを構成する。p型層603とn型層604は、第二光学センサーを構成する。全3種のp型層は、接地に接続される。n型層602と604は、電極に接続されて、それぞれ、信号J1とJ2を出力する。
【0155】
中心波長が407nmの6.5mWレーザーダイオードは励起源として用いられ、検出されるオブジェクトを励起する。オブジェクトから発光される光は光検出器に入射し、一部が、連続して、第一光学センサーと第二光学センサーに吸収される。図18と図19は、それぞれ、第一光学センサーと第二光学センサーの応答率曲線を示す図である。
【0156】
マルチ接合フォトダイオードがブラックボックスに封入されて、環境光による影響を最小化する。小孔がフォトダイオード上のボックス表面で開く。検出されるオブジェクトは、孔により検出領域に挿入されて、オブジェクトは、励起源から発光する励起光に露出する。ロングパス界面薄膜光学フィルタが、検出領域とフォトダイオード間に設置されて、散乱する励起光を部分的にブロックする。
【0157】
3オブジェクトが検出装置のテストに用いられる。オブジェクト1は、濃度が5.0×10−5Mの脱イオン化されたH2O中に溶解されるピラニンを含む第一染料溶液で、オブジェクト2は、濃度が5.0×10−5Mの脱イオン化されたH2Oに溶解されるローダミン6G(R6G)からなる第二染料溶液で、オブジェクト3は、濃度が6.25×10−4Mのトルエンに溶解されるCdxZn1−xSeの組成物を有する量子ドットを含む量子ドット溶液である。図20と図21は、それぞれ、3オブジェクトの吸収スペクトルと発光スペクトルを示す。
【0158】
この例で、染料、又は、量子ドットが含まれない水からなる参考サンプル持テストされる。毎回、1個のオブジェクトと参考サンプルがテストされる。第一光学センサーからの出力信号J1と第二光学センサーからの出力信号J2は、5.12ミリセカンド毎に記録される。各オブジェクトから、及び、参考サンプルからの10個の読み取り結果の記録が表1で示される。
【0159】
【表1】
【0160】
この例で、0.2値がスレショルド値として選択され、オブジェクトが存在するか判断する。出力信号J1とJ2のいづれか1つが0.2より高い場合、オブジェクトが存在すると判断される。
【0161】
オブジェクトの存在が判断された後、比率R=J2/(2×J1)が計算される。0.5<R<1.5の場合、検出されるオブジェクトがオブジェクト1であると判断される。2.0<R<3.0の場合、検出されるオブジェクトがオブジェクト2であると判断される。3.5<R<4.5である場合、検出されるオブジェクトはオブジェクト3であると判断される。表2は検出結果のある例を示す。
【0162】
【表2】
実施例2
【0163】
最近の研究で、サイトカイン活性化中の欠陥が、HCV/HIV共感染者で発生し、肝臓からHCVの効果的な洗浄を制限することが示される(J. Med. Virol. 78:202−207, 2006)。HCV単一感染とHCV/HIV共感染者のHCVとHIVウィルスRNAは、実施例1の分子指標アプローチと検出器を用いて定量化される。
RNA抽出
【0164】
高純度RNA Tissue kit(Roche Diagnostics; Meylan, France)を用いて、HCV単一感染とHCV/HIV共感染者の肝生検から、総RNAを抽出し、100ulのRNAse−遊離水中で溶出する。
cDNA合成
【0165】
HCVのRC21プライマー(5’-CTC CCG GGG CAC TCG CAA GC-3’(SEQ ID NO:1))とHIVのgagRプライマー(5′-TTTGGTCCTTGTCTTATGTCCAGAATG-3′(SEQ ID NO:2))をそれぞれ用いることにより、Thermoscript Reverse Transcriptase kitで、肝生検の抽出されたRNAが逆転写される。サンプル中のあらゆるHCV、又は/及び、HIV RNAの存在は、逆転写を受けて、相補一本鎖cDNAを生成する。RNAは、その後、サンプルから除去される。
分子指標探針
【0166】
HCV、又は、HIVの検出のために、分子指標の異なる色が合成される。
HCV:(5’-FAM-GCTAGCATTTGGGCGTGCCCCCGCIAGAGCTAGC-DABCYL-3’(SEQ ID NO:3)).HIV:(5’-HEX-GCTAGCATTTGGGCGTGCCCCCGCIAGAGCTAGC-DABCYL-3’(SEQ ID NO:4)).溶液中のcDNA検出は、分子指標(MBs)探針により実行され、分子指標探針は、95℃で、10分間の変性ステップ、続いて、55℃で、4時間のアニーリングにより、それらの相補配列と混成される。
オブジェクトの検出
【0167】
混成されたcDNAサンプルは、埋め込み電極マイクロ流体リアクター(Wang, TH et al., 2005)に運送され、単一分子トレーシングのレーザー-フォーカス検出領域が実行される。サンプル溶液がマイクロチャネルの入り口に導入され、その後、流体力学のポンピングにより駆動する。分子が電極領域に進入する時、それらの運送は、電極制御の動電気的な力により制御され、それらを最小エネルギーの領域に導き、中間電極中央に位置する。共焦点蛍光分光器の集光レーザービームはエネルギー最小領域のダウンストリーム端に位置し、実施例1の検出器により、独立分子から発光する蛍光突発が検出される。例1の方法を用いて、サンプル中のHCVとHIVの存在が検出されて、ビーコン探針上で、染料標識から識別される。サンプル中のHCVとHIVウィルスRNAの量は検出装置により報告された検出数に従って、定量化される。
【0168】
ここで提示される全特許、申請案、又は、参考文献にとって、理解できることは、全目的と列挙される主張のために、参照により、その全文が組み込まれることである。参照することにより組み込まれる文献と本申請案間に不一致が存在する時、本申請案が優位である。
【0169】
明細書中で提示された参考文献の教示により、明細書を完全に理解することができる。明細書中の実施例は、本発明の実施例の説明を提供し、且つ、本発明の精神を制限すると解釈されるべきではない。当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明はその他の多くの実施例を含むことが理解できる。提供される全ての出版品と特許は、参照することにより全文に組み込まれる。組み込まれて参照される資料範囲と本明細書が、対立する、又は、符合しない時、本明細書がこれらの資料を代替する。ここで、あらゆる参考文献の引用は、これらの参考文献が本発明の公知技術であることを承認するものではない。
【0170】
その他の方式で示されない限り、明細書に使用する特許請求の範囲中の成分、反応条件等の全数字表現量は、全ての状況下で、“約”により修飾されることが理解できる。よって、その他の方式で反対が示されない限り、数字のパラメータは近似値で、且つ、本発明により得られる所望の特性に基づいて、変更することができる。最小、且つ、特許請求の範囲に同等の原則の申請を制限しない試みにおいて、顕著な数字と一般の円形方式に基づいて、各数字パラメータを構築する。
【0171】
その他の方式で示されない限り、一系列要素の前の“少なくとも”は、系列中の各要素のことを意味することが理解できる。当該技術を熟知する者なら、日常の実験を使用するだけで、ここで示される本発明の特定の実施例の多くの同等物を認定、又は、確認することができる。これらの同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光することができるオブジェクトを検出する装置であって、
(a)光の強度を検出することができスタックされた少なくとも第一光学センサーと第二光学センサーを有する光検出器と、
(b)前記光学センサーにより生成された出力信号を処理し、前記処理の結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較して、前記オブジェクトが前記既知のタイプに属するか決定するコンピュータと
を有することを特徴とする発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項2】
更に、(c)前記オブジェクトから発光される光を光学センサーに集光、及び、導引する光学構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項3】
前記光学構造はレンズを含むことを特徴とする請求項2に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項4】
前記光学センサーはフォトダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの光学センサーは、一装置中の少なくとも2つのスタックされるp−n接合により形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項6】
前記光検出器は、信号増幅器の回路、A/Dコンバータ、積分器、比較器、ロジック回路、読み出し回路、メモリ、マイクロプロセッサ、クロック、及び/又は、アドレスを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項7】
前記信号の処理は、
前記信号の合計を計算するステップと、
前記合計とスレショルド値を比較して、前記オブジェクトの存在を判断するステップであって、
前記合計が、前記スレショルド値以上である時、オブジェクトが存在すると判断し、
前記合計が前記スレショルド値より小さい時、オブジェクトが存在しないと判断するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項8】
前記信号の処理は、
前記信号の合計を計算するステップと、
前記合計とスレショルド値を比較して、前記オブジェクトの存在を判断するステップであって、
前記合計が前記スレショルド値より小さい時、オブジェクトが存在すると判断し、
前記合計が、前記スレショルド値以上である時、オブジェクトが存在しないと判断するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項9】
前記信号を処理するステップは、前記信号の比率を計算するステップを含み、
前記結果と前記既知の結果を比較するステップは、前記計算比率と、既知のタイプに対応する既知の比率を比較するステップを含み、
前記計算比率と前記既知の比率間の前記差異が一定範囲内にある時、前記オブジェクトが前記既知のタイプに属すると判断することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項10】
前記コンピュータは、更に、前記処理の結果と複数の既知のタイプに対応する複数の既知の結果を比較して、前記オブジェクトがどのタイプに属するか判断することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、更に、前記計算比率と複数の既知のタイプに対応する複数の既知の比率を比較して、前記オブジェクトがどのタイプに属するか判断することを特徴とする請求項9に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項12】
)
前記の複数の既知の比率間で、前記計算比率に対する前記最小差異を有する既知の比率を有する既知のタイプは、前記オブジェクトが属するタイプか判断されることを特徴とする請求項11に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項13】
前記オブジェクトは、少なくとも1つの量子ドット、少なくとも1つの蛍光蛋白質、又は、少なくとも1つの蛍光性の小さい化学官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項14】
前記オブジェクトは蛍光標識され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、多糖、又は、脂質を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項15】
前記オブジェクトは、発光能力がない対象オブジェクトと発光能力を有するラベリングオブジェクトを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項16】
前記オブジェクトは、発光能力がない対象オブジェクトと発光能力を有するラベリングオブジェクトの群を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項17】
前記光検出器は、複数のオブジェクトを検出する少なくとも1つの検出器の1つで、前記の複数のオブジェクトは液体懸濁液に含まれ、前記懸濁液は前記少なくとも1つの検出器を流れることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項18】
複数のオブジェクトを検出するシステムであって、前記システムは、請求項1の装置のアレイを有することを特徴とする複数のオブジェクトを検出するシステム。
【請求項1】
発光することができるオブジェクトを検出する装置であって、
(a)光の強度を検出することができスタックされた少なくとも第一光学センサーと第二光学センサーを有する光検出器と、
(b)前記光学センサーにより生成された出力信号を処理し、前記処理の結果と既知のタイプに対応する既知の結果を比較して、前記オブジェクトが前記既知のタイプに属するか決定するコンピュータと
を有することを特徴とする発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項2】
更に、(c)前記オブジェクトから発光される光を光学センサーに集光、及び、導引する光学構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項3】
前記光学構造はレンズを含むことを特徴とする請求項2に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項4】
前記光学センサーはフォトダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの光学センサーは、一装置中の少なくとも2つのスタックされるp−n接合により形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項6】
前記光検出器は、信号増幅器の回路、A/Dコンバータ、積分器、比較器、ロジック回路、読み出し回路、メモリ、マイクロプロセッサ、クロック、及び/又は、アドレスを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項7】
前記信号の処理は、
前記信号の合計を計算するステップと、
前記合計とスレショルド値を比較して、前記オブジェクトの存在を判断するステップであって、
前記合計が、前記スレショルド値以上である時、オブジェクトが存在すると判断し、
前記合計が前記スレショルド値より小さい時、オブジェクトが存在しないと判断するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項8】
前記信号の処理は、
前記信号の合計を計算するステップと、
前記合計とスレショルド値を比較して、前記オブジェクトの存在を判断するステップであって、
前記合計が前記スレショルド値より小さい時、オブジェクトが存在すると判断し、
前記合計が、前記スレショルド値以上である時、オブジェクトが存在しないと判断するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項9】
前記信号を処理するステップは、前記信号の比率を計算するステップを含み、
前記結果と前記既知の結果を比較するステップは、前記計算比率と、既知のタイプに対応する既知の比率を比較するステップを含み、
前記計算比率と前記既知の比率間の前記差異が一定範囲内にある時、前記オブジェクトが前記既知のタイプに属すると判断することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項10】
前記コンピュータは、更に、前記処理の結果と複数の既知のタイプに対応する複数の既知の結果を比較して、前記オブジェクトがどのタイプに属するか判断することを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、更に、前記計算比率と複数の既知のタイプに対応する複数の既知の比率を比較して、前記オブジェクトがどのタイプに属するか判断することを特徴とする請求項9に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項12】
)
前記の複数の既知の比率間で、前記計算比率に対する前記最小差異を有する既知の比率を有する既知のタイプは、前記オブジェクトが属するタイプか判断されることを特徴とする請求項11に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項13】
前記オブジェクトは、少なくとも1つの量子ドット、少なくとも1つの蛍光蛋白質、又は、少なくとも1つの蛍光性の小さい化学官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項14】
前記オブジェクトは蛍光標識され、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、多糖、又は、脂質を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項15】
前記オブジェクトは、発光能力がない対象オブジェクトと発光能力を有するラベリングオブジェクトを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項16】
前記オブジェクトは、発光能力がない対象オブジェクトと発光能力を有するラベリングオブジェクトの群を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する方法。
【請求項17】
前記光検出器は、複数のオブジェクトを検出する少なくとも1つの検出器の1つで、前記の複数のオブジェクトは液体懸濁液に含まれ、前記懸濁液は前記少なくとも1つの検出器を流れることを特徴とする請求項1に記載の発光することができるオブジェクトを検出する装置。
【請求項18】
複数のオブジェクトを検出するシステムであって、前記システムは、請求項1の装置のアレイを有することを特徴とする複数のオブジェクトを検出するシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−112967(P2012−112967A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288867(P2011−288867)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2011−553266(P2011−553266)の分割
【原出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2011−553266(P2011−553266)の分割
【原出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
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