説明

分岐装置

【課題】払出し後の搬送物の姿勢の乱れを抑制し、且つ、所定の分岐能率を有する分岐装置を提供する。
【解決手段】トレーTが搬送される搬送経路と、搬送経路から分岐して設けられたフローラックと、搬送経路にあるトレーTを、フローラックへ選択的に押し出す押出装置20とを備える分岐システムであって、押出装置20は、互いに逆方向に転走する直線部40及び、直線部40のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部41を備えると共に、フローラックに向かう押出方向に無端回走自在なチェーン31と、チェーン31から突出して設けられ、トレーTと当接すると共に、当接したトレーTを押出方向に押し出すフック32とを有して、押出方向側の巻回部41aにフック32が位置する前に、フック32を、トレーTから離間する位置に退避させる支持フレーム20aを備えるという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫や工場等に設けられて、第1搬送経路を搬送される搬送物を、搬送経路から分岐して設けられた第2搬送経路に分岐させる分岐装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫や工場等に設置されるコンベヤ式等の搬送経路上を搬送されるダンボール箱やプラスチックケース等の搬送物を、上記搬送経路から分岐する第2搬送経路に分岐させて仕分ける分岐装置として、例えば、特許文献1に記載の物品仕分け装置が知られている。
特許文献1に記載の物品仕分け装置は、無端回走するダイバータと称されるものにパドルを設けて、該パドルと搬送物とを接触させて、コンベヤ側方に設けられたシュートに搬送物を払出す構成となっている。ダイバータは、上記パドルが直線移動する直線部と、回転移動する巻回部とを有する構成となっており、パドルは、上記直線部において直線移動しつつ搬送物をシュートに向かって押し出すと共に、上記巻回部において回転移動して搬送物をシュートに払出すこととなる。
【特許文献1】特開平5−178451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、パドルが直線部から巻回部へ移動すると、その運動が直線運動から回転運動に変換されることで、パドルによる搬送物を押し出す力が、搬送物を持ち上げる方向にも加わり、払い出しの際に搬送物の後端を跳ね上げて、払出し後の搬送物の姿勢を乱してしまうという問題があった。このように、搬送物の姿勢が乱れると、払出し先で荷詰まりを引き起こし易くなり分岐システム全体に影響を与える虞がある。
また、パドルの運動が直線運動から回転運動に変換されることで、パドルの先端の速度が加速され、加速された先端で勢いよく搬送物を払い出してしまい、搬送物の払い出しの際に、搬送物がシュート外に跳び出してしまう虞もある。
上記問題を解決するため、単にダイバータの回走速度を低下させるという方法も考えられるが、当該方法を採用すると搬送物を押し出す動作に時間がかかり、分岐システムの分岐能率が低下しまう。したがって、所定の分岐能率が求められる自動倉庫や工場等には、適用できなくなるといった問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、払出し後の搬送物の姿勢の乱れを抑制し、且つ、所定の分岐能率を有する分岐装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、搬送物が搬送される第1搬送経路と、上記第1搬送経路から分岐して設けられた第2搬送経路と、上記第1搬送経路にある上記搬送物を、上記第2搬送経路へ選択的に押し出す押出装置とを備える分岐装置であって、上記押出装置は、互いに逆方向に転走する直線部及び、上記直線部のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部を備えると共に、上記第2搬送経路に向かう押出方向に無端回走自在な無端回走体と、上記無端回走体から突出して設けられ、上記搬送物と当接すると共に、当接した上記搬送物を上記押出方向に押し出す押出部とを有して、上記押出方向側の上記巻回部に上記押出部が位置する前に、上記押出部を、上記搬送物から離間する位置に退避させる退避機構を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、押出部が巻回部に位置する前に、押出部を搬送物から離間させることが可能となり、巻回部における搬送物の跳ね上げ等が抑制される。
【0006】
また、本発明では、上記退避機構は、上記第2搬送経路に対して手前側の上記巻回部が、奥側の上記巻回部より高くなるように上記無端回走体を、水平面に対して傾けるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、押出部の直線部における移動経路を傾斜した移動経路とさせることで、第2搬送経路に対して手前側の巻回部に位置する前に、押出部を搬送物から離間させることができる。
【0007】
また、本発明では、上記第1搬送経路は、上記搬送物を搬送する搬送機構を備えており、上記押出装置は、上記搬送機構によって搬送される上記搬送物を、上記搬送機構による搬送方向において、上記押出部と摺動させながら上記搬送物を押し出すという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、搬送機構による搬送物の搬送を本流コンベヤの速度成分が殆ど減少させることなしに搬送物を効率よく分岐させることができる。
【0008】
また、本発明では、上記第2搬送経路の上記第1搬送経路に臨む入り口は、上記搬送方向手前側が、上記第1搬送経路に向かうに従って漸次拡径して設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、摺動しながら押し出される搬送物を第2搬送経路に導入させやすくすることができる。
【0009】
また、本発明では、上記押出部には、上記搬送方向の奥側において、上記押出方向に張り出すように形成された規制部材が設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、搬送物を搬送方向と押出方向の2辺で規制し、押出中の搬送物の姿勢を一定にすることができる。
【0010】
また、本発明では、上記押出部は、上記搬送物と当接する当接面が含油型の樹脂材で形成されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、当接面を含油型の樹脂材で形成することにより、搬送方向における押出部と搬送物との摺動を円滑に行わせることができる。
【0011】
また、本発明では、上記押出部の先端部には、上記押出方向と略直交する軸周りに回転自在なローラが設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、押出部の先端部が周面を有すると共に、先端部での摩擦が低減される。
【0012】
また、本発明では、上記ローラの周面が、含油型の樹脂材で形成されていることを特徴とするという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、摩擦をより低減させると共に、搬送方向における押出部と搬送物との摺動を円滑に行わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送物が搬送される第1搬送経路と、上記第1搬送経路から分岐して設けられた第2搬送経路と、上記第1搬送経路にある上記搬送物を、上記第2搬送経路へ選択的に押し出す押出装置とを備える分岐装置であって、上記押出装置は、互いに逆方向に転走する直線部及び、上記直線部のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部を備えると共に、上記第2搬送経路に向かう押出方向に無端回走自在な無端回走体と、上記無端回走体から突出して設けられ、上記搬送物と当接すると共に、当接した上記搬送物を上記押出方向に押し出す押出部とを有して、上記押出方向側の上記巻回部に上記押出部が位置する前に、上記押出部を、上記搬送物から離間する位置に退避させる退避機構を備えるという構成を採用することによって、押出部が巻回部に位置する前に搬送物から離間させることが可能となり、巻回部における搬送物の跳ね上げ等が抑制される。
したがって、本発明は、払出し後の搬送物の姿勢の乱れを抑制し、且つ、所定の分岐能率を有する分岐装置を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、自動倉庫や工場等に設けられた分岐システム(分岐装置)1の平面図である。また、図2は、図1における分岐システム1の正面図である。
分岐システム1は、図1に示すように、物品を収容した箱形状のトレー(搬送物)Tが搬送される搬送経路(第1搬送経路)2と、搬送経路2から分岐して設けられたフローラック(第2搬送経路)11と、搬送経路2を搬送されるトレーTをフローラック11へ選択的に分岐させる押出装置20と、当該システム全体を制御する不図示の制御装置とを備える。
【0016】
搬送経路2は、図1において、紙面下方に直線的に延びる搬送路であり、底面がトレーTを搬送するコンベヤ(搬送機構)3によって構成されている。
コンベヤ3は、搬送経路2の幅方向両側に設けられた一対の無端状のチェーン4と、チェーン4間に横架されて、長さ方向に複数平行に配列された板形状のスラット5とから構成された、いわゆるスラットコンベヤである。コンベヤ3は、不図示の駆動機構によって長さ方向(図1において、紙面下方向(搬送方向))に無端回走して、スラット5上に載置されたトレーTを搬送する構成となっている。
なお、搬送されるトレーTにはバーコードやICタグ等の識別情報が付されており、搬送経路2上の所定の位置で、当該識別情報を読み取る不図示のセンサが設けられており、当該センサの読み取り情報が不図示の制御装置へ伝送される構成となっている。
【0017】
フローラック11は、搬送方向と略直交する方向においてコンベヤ3と連接されており、当該直交する方向に延びる単位棚として搬送方向に複数列且つ高さ方向に複数段、配置される構成となっている(図1及び図2参照)。フローラック11は、図1に示すように、搬送経路2に臨む入り口15では、搬送方向手前側が、搬送経路2に向かうに従って漸次拡径して設けられている。また、フローラック11は、図2に示すように、入り口15から搬入されるトレーTの搬入方向に所定の角度で傾斜している。
なお、コンベヤ3及び後述する押出装置20についても、図2に示すように、フローラック11の各段に対応するように配設される。
【0018】
また、フローラック11は、図1に示すように、入り口15においてコンベヤトレーTを下方から支持する鉄板15aと、入り口15の後方においてコンベヤトレーTを下方から支持する一対のレール12a及びレール12bとを有する構成となっている。
鉄板15aは、入り口15の床面を形成する金属性の板部材であり、拡径した側の一端がコンベヤ3の搬送面と略同一の高さで連接される構成となっている。
レール12a及びレール12bは、鉄板15aの他端と接続され、幅方向に所定の間隔で平行に設けられる。また、レール12a及びレール12bには、トレーTの自重による傾斜方向への摺動を補助するローラ14が、幅方向に延びる回転軸周りに回転自在に、長さ方向に所定の間隔で複数設けられる構成となっている。
【0019】
押出装置20は、図1に示すように、各フローラック11の入り口15に対応するように複数設けられ、入り口15の幅と略同一の幅を有し、且つ、コンベヤ3の幅と略同一の長さを有している。また、押出装置20は、図2に示すように、支持フレーム(退避機構)20a(後述)によって、コンベヤ3上の所定の高さに支持される。
【0020】
次に、図3〜図5を参照して、押出装置20の構成について詳しく説明する。
図3は、押出装置20の平面図を示す。
図4は、図3における押出装置20の線視A−A断面図を示す。
図5は、押出装置20に設けられたフック(押出部)32の斜視図を示す。
押出装置20は、押出装置20の外装を形成する外装フレーム21と、外装フレーム21内に設けられトレーTをフローラック11へ押し出す押出機構30とから構成される。
なお、以下の説明において、押出装置20の長さ方向をX方向、幅方向をY方向、高さ方向をZ方向として説明することがある。
【0021】
外装フレーム21は、図3に示す平面視で矩形状を有しており、また、図4に示すように、下面が開口する方形の筐体形状を有している。また、外装フレーム21の−X方向側の外側面は、支持フレーム20aと接続される構成となっている。
【0022】
押出機構30は、図3に示すように、外装フレーム21のY方向両側に平行に設けられ、フローラック11に向かう押出方向(X方向)に無端回走自在な一対の無端状のチェーン(無端転走体)31と、チェーン31間に横架されたフック(押出部)32とを有し、チェーン31を回走させることにより、フック32でトレーTの側面を押し出す構成となっている。
【0023】
一対のチェーン31は、外装フレーム21の幅方向両側の内側面に各々設けられており、詳しくは、外装フレーム21の+X方向側において回転軸33に、−X方向側において回転軸34に架設される。
【0024】
回転軸33は、図3(a)に示すように、外装フレーム21の+X方向側端部において幅方向に挿通しており、幅方向に延びる軸線周りに回転自在に支持される構成となっている。また、回転軸33には、+Y方向側のチェーン31と歯合するスプロケット33a及び−Y方向側のチェーン31と歯合するスプロケット33bが一体となって設けられている。
【0025】
回転軸34は、回転軸33と同一の構成となっており、外装フレーム21の−X方向側端部において幅方向に挿通して設けられ、+Y方向側のチェーン31と歯合するスプロケット34a及び−Y方向側のチェーン31と歯合するスプロケット34bを有する。また、回転軸34は、−Y方向側端部が、モータ35と接続されており、モータ35の回転駆動によってY方向に延びる軸線周りに回転して、並設されたチェーン31を同期して回走させる構成となっている。
なお、回転軸33及び回転軸34は、互いに平行に配置される。また、一対のチェーン31は各々、回転軸33及び回転軸34の間において、チェーンガイド36によってガイドされており、撓みが抑制される構成となっている。
【0026】
以上の様に、構成されたチェーン31は、図4に示すように、モータ35の回転駆動により互いに逆方向に転走する直線部40と、直線部40のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部41とを備えることとなる。
【0027】
フック32は、チェーン31の内側面に設けられたアタッチメントと接続されて、チェーン31の回走方向と直交するように横架される。また、フック32は、図4に示すように、チェーン31の回走時にトレーTの側面上部と当接する位置まで、チェーン31上の回走面に対して垂直方向に突出している。また、フック32は、チェーン31上に2箇所設けられており、互いに所定の間隔で離間している。
【0028】
フック32には、図5に示すように、規制部材32bと、ローラ32cとが設けられている。規制部材32bは、トレーTの姿勢を規制するものであり、搬送方向(Y方向)の奥側であってフック32の端部から、X方向に張り出すように取り付けられる。したがって、規制部材32bが取り付けられたフック32は、平面視で略L字形状を有することとなる。
ローラ32cは、フック32の幅と略同一の幅を有しており、フック32の先端部に押出方向(X方向)と略直交する軸周りに回転自在に設けられる。また、ローラ32cの周面は、含油型のナイロンやテフロン(登録商標)等の樹脂材で形成されている。
【0029】
支持フレーム20aは、図4に示すように、コンベヤ3のサイドフレーム3aの側部に一端部が接続され、他端部に押出装置20が接続される構成となっている。支持フレーム20aは、+X方向側(押出方向側)の巻回部41aにフック32が位置する前に、フック32をトレーTから離間させる位置に退避させるように、チェーン31を傾ける構成となっている。より詳しくは、支持フレーム20aは、押出装置20を水平面に対して傾けることで、フローラック11に対して手前側の巻回部41aが奥側の巻回部41bより高くなるようにチェーン31を、水平面に対して傾ける構成となっている。なお、チェーン31の傾斜の調整は、接続用ナット部材20a1の締結位置の調整により行うことができる。
【0030】
続いて、トレーTを搬送経路2からフローラック11へ分岐させる分岐システム1の動作について図6及び図7を参照して説明する。
図6は、分岐システム1の一部を示す平面図であって、押出装置20の動作を説明する図である。
図7は、分岐システム1の一部を示す正面図であって、押出装置20の動作を説明する図である。
【0031】
先ず、不図示の制御装置は、コンベヤ3を駆動させ、コンベヤ3上のトレーTを搬送方向に搬送する。トレーTは、搬送経路2を搬送される過程で、付されているバーコードやICタグの情報をセンサによって読み取られる。当該センサは読み取った情報を制御装置に伝送し、制御装置は読み取った情報を基に、複数設けられたフローラック11のいずれか一つにトレーTを収容するかを選択・決定する。そして、制御装置は、決定されたフローラック11に対応する押出装置20を駆動させる。
【0032】
押出装置20は、制御装置の制御の下、トレーTの情報をセンサによって読み取った位置とコンベヤ3のトレーTを搬送する搬送速度とから、フック32を動作させるタイミングを計る。そして、押出装置20は、図6(a)に示すように、トレーTがフローラック11の入り口15の拡径した部位に達したタイミングで、モータ35を駆動させる。
モータ35の駆動によりチェーン31は、押出方向に回走され、チェーン31に設けられたフック32が、図7(a)に示すように、トレーTの側面に当接される。より詳しくは、支持フレーム20aの作用によりフック32自身も傾いているため、先端部に設けられたローラ32cがトレーTと当接されることとなる。
そして、トレーTに当接したフック32は、チェーン31の回走により、トレーTをフローラック11へ向けて押し出すこととなる。
【0033】
このとき、フック32は、支持フレーム20aの作用により傾斜している直線部40を移動しながらトレーTを押し出す(図7(a)中、一点鎖線で示す)。ここで、直線部40が傾斜しているため、フック32が押出方向に移動するにつれてトレーTとの当接位置は、徐々に上方に移動する。当接位置が徐々に上方に移動すると、その移動に伴い当接しているローラ32cは、軸周りに自在に回転し、当該当接位置の移動が円滑に行われる。すなわち、フック32の直線部40における移動経路が斜めになることで、トレーTに押出方向だけでなく上向きに加わる力を、ローラ32cの作用により回転運動に変換して吸収することができる。したがって、押出中に、トレーTの後端が持ち上がることは抑止される。
【0034】
また、トレーTは、図6(b)に示すように、コンベヤ3上を搬送方向に搬送されながら押し出されることとなる。したがって、トレーTは、フック32(より詳しくは、ローラ32c)と搬送方向において摺動しながら押し出されることとなるが、搬送方向に延びる一辺がフック32に当接しているためにその姿勢が規制され、自身が押出中に斜め方向に向くことは無い。さらに、トレーTは、フック32に設けられた規制部材32bにより、押出方向に延びる一辺が規制され、計二辺の規制によりその姿勢が押出中一定に維持されることとなる。また、トレーTの姿勢が一定に維持されるため、順次搬送される他のトレーTとの搬送ピッチ間隔が小さい場合であっても押出中にトレーT同士の干渉を避けることができる。
なお、フック32の押出方向の速度は、コンベヤ3による搬送方向の速度より大きいため、トレーTが規制部材32bを基点に回転してしまうことは無い。さらに、押出装置20は、トレーTをローラ32cと搬送方向において摺動させながら押し出す分岐動作を行うが、ローラ32cの周面が含油型の樹脂材で形成され低摩擦であるため、搬送方向における摺動を容易にさせて円滑に押し出しを行うことができる。
【0035】
フック32は、以上のようにトレーTの姿勢を一定に規制しつつ図7(b)に示す位置までトレーTを押し出す。そして、フック32は、図7(c)に示すように、直線部40の傾きによって巻回部41aに位置する前に、トレーTから離間する位置に退避することとなる。すなわち、巻回部41aにて、フック32の運動が直線運動から回転運動に変換されることにより引き起こされるトレーTの後端の跳ね上げ等が抑止される。
なお、フック32は、トレーTから離間する際、ローラ32cが回転しつつトレーTから離間することとなるため、トレーTの縁部に引っ掛かることなく円滑に払い抜けが行われることとなる。
【0036】
以上の押出動作によりトレーTは、図6(c)に示すように、一定の姿勢でフローラック11上に払出され、自重によりフローラック11の傾斜方向に搬送されることとなる。
そして、押出装置20は、上記分岐動作を行うと、チェーン31が略半周分回走するので、次に搬送されてくるトレーTを押し出すために、もう一方のフック32を押出開始位置に位置するようにチェーン31を僅かな距離だけ回走させて次回の分岐動作に備えることとなる。
【0037】
したがって、上述した本実施形態によれば、トレーTが搬送される搬送経路2と、搬送経路2から分岐して設けられたフローラック11と、搬送経路2にあるトレーTを、フローラック11へ選択的に押し出す押出装置20とを備える分岐システム1であって、押出装置20は、互いに逆方向に転走する直線部40及び、直線部40のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部41を備えると共に、フローラック11に向かう押出方向に無端回走自在なチェーン31と、チェーン31から突出して設けられ、トレーTと当接すると共に、当接したトレーTを押出方向に押し出すフック32とを有して、押出方向側の巻回部41aにフック32が位置する前に、フック32を、トレーTから離間する位置に退避させる支持フレーム20aを備えるという構成を採用することによって、フック32が巻回部41aに位置する前に、フック32をトレーTから離間させることが可能となり、巻回部41aにおけるトレーTの跳ね上げ等が抑制される。
したがって、本実施形態では、払出し後のトレーTの姿勢の乱れを抑制することができるためフローラック11での荷詰まりを抑制することができる、また、チェーン31を低速で回走させる必要もなくなるため所定の分岐能率を分岐システム1に備えさせることができる効果がある。
【0038】
また、本実施形態では、支持フレーム20aは、フローラック11に対して手前側の巻回部41aが、奥側の巻回部41bより高くなるように押出装置20ひいてはチェーン31を、水平面に対して傾けるという構成を採用することによって、フック32の直線部40における移動経路を傾斜した移動経路とさせて、トレーTを押し出しつつ、巻回部41aに位置する前にフック32をトレーTから離間させることができる。また、本実施形態では、支持フレーム20aによる傾斜角度を調整することにより押出装置20の構成を変更することなく、フック32をトレーTから離間させる位置を任意に調整することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、搬送経路2は、トレーTを搬送するコンベヤ3を備えており、押出装置20は、コンベヤ3によって搬送されるトレーTを、コンベヤ3による搬送方向において、フック32と摺動させながらトレーTを押し出すという構成を採用することによって、コンベヤ3によるトレーTの搬送を停止させずにトレーTを分岐させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、フローラック11の搬送経路2に臨む入り口は、搬送方向手前側が、搬送経路2に向かうに従って漸次拡径して設けられているという構成を採用することによって、摺動しながら押し出されるトレーTをフローラック11に導入させやすくすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、フック32には、搬送方向の奥側において、フック32から押出方向に張り出すように形成された規制部材32bが設けられているという構成を採用することによって、搬送方向と押出方向との2辺でトレーTの姿勢を規制することが可能となり、フック32による押出中のトレーTの姿勢を一定にすることができるため、払出し後のトレーTの姿勢の乱れを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、フック32の先端部には、押出方向と略直交する軸周りに回転自在なローラ32cが設けられているという構成を採用することによって、フック32の先端部が周面を有すると共に、先端部での摩擦が低減されるため、フック32がトレーTから離間する際に先端部がトレーTの縁部に引っ掛かることが抑制される。また、傾斜による当接位置の移動を円滑にさせ、押出中にトレーTの後端が持ち上がることを抑止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ローラ32cの周面が、含油型の樹脂材で形成されていることを特徴とするという構成を採用することによって、摩擦をより低減させると共に、搬送方向におけるフック32とトレーTとの摺動を円滑に行わせることができる。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、本実施形態では、退避機構は、支持フレーム20aであり、チェーン31全体を傾けることでフック32をトレーTから離間する位置に退避させると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものでは無い。例えば、巻回部41a近傍の直線部40を部分的に傾斜させて、フック32をトレーTから離間する位置に退避させる構成であっても良い。また、フック32を折り畳み可能な駆動機構を設けて、巻回部41aに位置するまえに当該駆動機構を動作させフック32を折り畳み、トレーTから離間する位置に退避させる構成であっても良い.
【0046】
例えば、本実施形態では、フック32の先端部にローラ32cを設けると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではない。例えば、ローラ32cを設けずに、フック32がトレーTと当接する当接面を含油型の樹脂材で形成することで、搬送方向の摺動を円滑にするとともに、トレーTからの離間を円滑に行わせる構成であっても良い。
【0047】
また、例えば、本実施形態では、無端回走体はチェーン31であると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、例えば、ベルトやワイヤー等であっても良い。また、押出部もフック32である構成に限定されず、例えば、パドルであっても良い。
【0048】
また、本実施形態では、第2搬送経路は、フローラック11であると説明したが、本発明は、当該構成に限定されるものではなく、フローラック11の代わりにローラーコンベヤやベルトコンベヤ等を配設する構成であっても良い。このような構成を採用することによって、勾配のない水平の搬送経路や、より勾配のある搬送経路を設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態における分岐システムの平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における分岐システムの正面図である。
【図3】本発明の実施の形態における押出装置の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における図3における線視A−A断面である。
【図5】本発明の実施の形態における、押出装置に設けられたフックを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における押出装置の動作を説明する平面図である。
【図7】本発明の実施の形態における押出装置の動作を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…分岐システム(分岐装置)、2…搬送経路、3…コンベヤ(搬送機構)、11…フローラック(第2搬送経路)、15…入り口、20…押出装置、20a…支持フレーム(退避機構)、31…チェーン(無端回走体)、32…フック(押出部)、32b…規制部材、32c…ローラ、40…直線部、41…巻回部、T…トレー(搬送物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が搬送される第1搬送経路と、前記第1搬送経路から分岐して設けられた第2搬送経路と、前記第1搬送経路にある前記搬送物を、前記第2搬送経路へ選択的に押し出す押出装置とを備える分岐装置であって、
前記押出装置は、
互いに逆方向に転走する直線部及び、前記直線部のそれぞれの両端を繋ぐ巻回部を備えると共に、前記第2搬送経路に向かう押出方向に無端回走自在な無端回走体と、
前記無端回走体から突出して設けられ、前記搬送物と当接すると共に、当接した前記搬送物を前記押出方向に押し出す押出部とを有して、
前記押出方向側の前記巻回部に前記押出部が位置する前に、前記押出部を、前記搬送物から離間する位置に退避させる退避機構を備えることを特徴とする分岐装置。
【請求項2】
前記退避機構は、前記第2搬送経路に対して手前側の前記巻回部が、奥側の前記巻回部より高くなるように前記無端回走体を、水平面に対して傾けることを特徴とする請求項1に記載の分岐装置。
【請求項3】
前記第1搬送経路は、前記搬送物を搬送する搬送機構を備えており、
前記押出装置は、前記搬送機構によって搬送される前記搬送物を、前記搬送機構による搬送方向において、前記押出部と摺動させながら前記搬送物を押し出すことを特徴とする請求項1または2に記載の分岐装置。
【請求項4】
前記第2搬送経路の前記第1搬送経路に臨む入り口は、前記搬送方向手前側が、前記第1搬送経路に向かうに従って漸次拡径して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の分岐装置。
【請求項5】
前記押出部には、前記搬送方向の奥側において、前記押出方向に張り出すように形成された規制部材が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の分岐装置。
【請求項6】
前記押出部は、前記搬送物と当接する当接面が含油型の樹脂材で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の分岐装置。
【請求項7】
前記押出部の先端部には、前記押出方向と略直交する軸周りに回転自在なローラが設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の分岐装置。
【請求項8】
前記ローラの周面が、含油型の樹脂材で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の分岐装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−149978(P2010−149978A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328907(P2008−328907)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】