説明

分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品

【課題】 分岐鎖アミノ酸の苦味がなく、長期保存安定性、取扱性に優れ、分岐鎖アミノ酸と共に他の栄養成分を含有する、継続して摂取可能な分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の提供。
【解決手段】 イソロイシン、ロイシン及びバリンからなる分岐鎖アミノ酸、糖質および脂質を含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって、分岐鎖アミノ酸の含有量が分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gで、グリセリンの重合度が4〜10のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及びレシチンから選ばれる乳化剤を分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.05質量部の量で含有し、バター風味素材、紅茶風味素材及びシトラス風味素材から選ばれる風味素材を更に含有する、焼菓子形態の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質および脂質を含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に関する。より詳細には、本発明は、分岐鎖アミノ酸に起因する苦みがなく、しかも焼菓子の形態をなしていることにより、従来の分岐鎖アミノ酸含有製剤に比べて、摂取性が大幅に向上していて且つ長期保存安定性に優れる分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に関する。
【背景技術】
【0002】
イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸は、いずれも体内でつくることができないために外部から補給しなければならない必須アミノ酸であって、蛋白合成促進作用と筋蛋白崩壊抑制作用を有している。これら3種類の分岐鎖アミノ酸は、筋でまずケト酸にアミノ基転移され、肝やその他の組織でインスリン依存性に代謝され、エネルギー基質となる。これら3種類の分岐鎖アミノ酸は、侵襲時や感染時には効率の良いエネルギー源となることから、術後早期や肝障害、腎障害などの場合には、これら3種類の分岐鎖アミノ酸を含む製剤がよく使用される(非特許文献1、2)。
【0003】
例えば、肝硬変患者は、(i)エネルギー需要の亢進に伴う分岐鎖アミノ酸酸化の亢進、(ii)高インスリン血症による筋肉組織への分岐鎖アミノ酸の取り込みの増加、(iii)高アンモニア血症による筋肉組織での分岐鎖アミノ酸代謝の亢進などが原因となり、血中の分岐鎖アミノ酸濃度が低下する。分岐鎖アミノ酸は、蛋白代謝におけるanticatabolic作用を有することが報告されており、分岐鎖アミノ酸の供給は、肝硬変患者の筋肉における蛋白質代謝を改善する。
【0004】
従来、肝硬変患者に対しては、食事の一部分を、アミノ酸、糖質および脂質などを配合した市販の製剤で置き換えることによって栄養状態の改善が行われてきた。しかしながら、市販の製剤の多くは、固体状の製剤を水で溶解して液剤にして患者に給与するため、液剤の調製に手間がかかり、しかも摂取形態が液状であることから、摂取後に腹部膨満感または胃もたれがあり、所定量を摂取できない場合がある。しかも、市販の製剤に含まれるアミノ酸が分岐鎖アミノ酸である場合には、分岐鎖アミノ酸の苦味が強くて服用しにくいという問題があった(非特許文献3)。
【0005】
イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる分岐鎖アミノ酸を含有する経口投与剤において、分岐鎖アミノ酸に起因する苦みをマスキングするための技術が従来から提案されている。そのような従来技術としては、〈1〉分岐鎖アミノ酸を有効成分とする経口投与薬中に、分岐鎖アミノ酸の苦味をマスキグンするためにD−トリプトファンを添加したもの(特許文献1)、〈2〉分岐鎖アミノ酸を有効成分とする経口投与薬中に、分岐鎖アミノ酸の苦味をマスキグンするために、D−トリプトファンと共にアラニンおよび/またはグリシンを添加したもの(特許文献2)、〈3〉分岐鎖アミノ酸を有効成分とする医薬用顆粒製剤中に有機酸からなる酸味剤を場合により甘味料などの矯味剤と共に含有させたもの(特許文献3)、〈4〉分岐鎖アミノ酸を有効成分とする医薬用懸濁剤中に有機酸からなる酸味剤を場合により甘味料などの矯味剤と共に含有させたもの(特許文献4)、〈5〉分岐鎖アミノ酸と共に塩酸リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよび塩酸ヒスチジンを含有するアミノ酸顆粒と共に、甘味料として白糖およびステビア抽出精製物を、香料としてメントールおよび柑橘系香料を含有させた経口用アミノ酸製剤(特許文献5)を挙げることができる。
【0006】
しかしながら、上記した〈1〉〜〈5〉の従来の分岐鎖アミノ酸含有製剤は、いずれも、分岐鎖アミノ酸の苦味のマスキングが未だ十分でないため、患者が継続して摂取しにくい。そして、上記した〈1〉〜〈5〉の分岐鎖アミノ酸含有製剤のうち、上記〈1〉および〈2〉の分岐鎖アミノ酸含有製剤は主に液剤を意図しており、また上記〈4〉の分岐鎖アミノ酸含有製剤も液剤であるため、固体状の製剤に比べて、長期間の保存安定性が十分ではなく、しかも保存時や流通時の取り扱い性に劣る。さらに、上記した〈1〉〜〈5〉の分岐鎖アミノ酸含有製剤は、人体に必要な脂質などの他の栄養成分を含有していないために、そのままでは総合栄養剤として用いることができず、脂質などの他の栄養成分を患者に別途投与する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−69877号公報
【特許文献2】特開平7−118150号公報
【特許文献3】特開2002−173423号公報
【特許文献4】特開2007−77173号公報
【特許文献5】特開2010−59120号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「タンパク質・アミノ酸の新栄養学」、第1刷、株式会社講談社、2007年3月20日、p.172−175
【非特許文献2】「全科に必要な栄養管理Q&A」、株式会社総合医学社、2008年2月20日、p.14−15、68−69および184−185
【非特許文献3】沖田極、「栄養−評価と治療」、株式会社メディカルレビュー社、2007年6月15日、第24巻、第3号、p.64−73
【非特許文献4】「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」、平成12年1月14日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来の分岐鎖アミノ酸含有製剤に比べて、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味が十分にマスキングされていて苦味がなく、患者が継続して円滑に摂取することのできる分岐鎖アミノ酸含有製品を提供することである。
さらに本発明の目的は、保存安定性に優れていて、長期間にわたって変質などを生ずることなく、安全に且つ安定して保存することのできる分岐鎖アミノ酸含有製品を提供することである。
さらに、本発明の目的は、分岐鎖アミノ酸と共に、糖質、脂質などの他の栄養成分を患者に同時に給与することのできる、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明者らは種々研究を行なってきた。そして、分岐鎖アミノ酸の苦味をマスキングするために、分岐鎖アミノ酸と共に甘味料、香料および/または調味料を添加し、更に脂質などの他の栄養成分も加えて、水分含量の少ない焼菓子状にすれば、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のない、患者が継続して摂取でき、しかも保存安定性にも優れる分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品が得られるであろうということに想い至って、そのような焼菓子を色々試作した。しかしながら、それにより得られた試作品では、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキングが未だ不十分で、患者が継続して摂取しにくいものであった。そこで、本発明者らは、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキングに有効な成分を求めて試行錯誤を重ねた。その結果、分岐鎖アミノ酸と共に、糖質および脂質を添加して、焼菓子状の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を製造するに当って、所定のグリセリン重合度を有するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤を焼菓子中に所定の量で含有させると共に、多数の風味素材のうちから、バター風味素材、紅茶風味素材および/またはシトラス風味素材という特定の風味素材を選択して含有させると、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味が十分にマスキングされていて苦味がなく、患者が通常の菓子類を食するのと同じ感覚で、楽しみながら継続して摂取できる分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品が得られることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質および脂質を含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって;
分岐鎖アミノ酸の含有量が、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gであり;
グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる乳化剤の少なくとも1種を、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、0.01〜0.05質量部の割合で含有し;
バター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材を更に含有し;且つ、
焼菓子の形態をなしている;
ことを特徴とする分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品である。
【0012】
そして、本発明は、
(2) バター風味素材が、バター風味の呈味材および/またはバター風味の香料である、前記(1)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;
(3) 風味素材としてバター風味の呈味材およびバター風味の香料を含有し、バター風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.03〜0.14質量部であり、バター風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.04質量部である前記(1)または(2)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;
(4) 紅茶風味素材が紅茶風味の呈味材および/または紅茶風味の香料である前記(1)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;
(5) 風味素材として紅茶風味の呈味材および紅茶風味の香料を含有し、紅茶風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.02〜0.10質量部であり、紅茶風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.004〜0.020質量部である、前記(1)または(4)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;
(6) シトラス風味素材が、シトラス風味の呈味材および/またはシトラス風味の香料である、前記(1)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;および、
(7) 風味素材として、シトラス風味の呈味材およびシトラス風味の香料を含有し、シトラス風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.03〜0.14質量部であり、シトラス風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.001〜0.010質量部である、前記(1)または(6)の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品;
である。
さらに、本発明は、
(8) イソロイシン、ロイシンおよびバリンの含有比率が、イソロイシン:ロイシン:バリン=1:1.6〜2.4:0.8〜1.2の質量比である前記(1)〜(7)のいずれかの分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品である。
【発明の効果】
【0013】
イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸を含有する本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含有し且つバター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材を含有していることにより、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキング効果に優れていて、苦味がなく、患者が継続して摂取することができ、それによって分岐鎖アミノ酸の欠乏に伴う種々の症状を緩和および治療することができる。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、分岐鎖アミノ酸と共に、糖質および脂質を含有しているため、患者に分岐鎖アミノ酸と同時に、糖質および脂質を同時に給与することができる。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、苦味のない焼菓子の形態になっているため、患者は菓子類を食べる感覚で、楽しみながら、簡単に円滑に継続して摂取することができる。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、水分含量の少ない焼菓子の形態になっているため、長期保存安定性に優れていて、しかも保存時や流通時の取り扱い性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、イソロイシン、ロイシンおよびバリンという3種類の分岐鎖アミノ酸を含有している。本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に含有されているイソロイシン、ロイシンおよびバリンは、いずれもL−アミノ酸であり、天然物から得られたものであってもよいし、合成により得られたものであってもよいし、または天然物から得られたものと合成により得られたものを併用してもよい。
【0015】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸を、当該3種類の分岐鎖アミノ酸の合計で、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り、2.0〜4.5gの割合で含有しており、2.5〜4.3gの割合で含有していることが好ましく、3.5〜4.2gの割合で含有していることがより好ましい。分岐鎖アミノ酸の含有量が前記範囲であることによって、患者に必要な量の分岐鎖アミノ酸を供給することができる。分岐鎖アミノ酸の含有量が前記範囲よりも少ないと、患者に必要な量の分岐鎖アミノ酸を供給できにくくなり、一方分岐鎖アミノ酸の含有量が前記範囲よりも多いと、本発明によっても分岐鎖アミノ酸に起因する苦味をマスキングすることが困難になり、患者が継続して摂取しにくくなる。
ここで、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品のカロリー量は、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中に含まれる成分の種類および量に基づいて、五訂増補日本食品標準成分表に対応したエクセル栄養君Ver.4.5(株式会社建帛社)にしたがって算出したカロリー量をいう。
【0016】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品における、イソロイシンとロイシンとバリンの含有比率は、一般的には、イソロイシン:ロイシン:バリン=1:1.6〜2.4:0.8〜1.2の質量比であることが好ましく、1:1.8〜2.2:0.9〜1.1であることがより好ましい。
イソロイシン:ロイシン:バリンの含有比率を前記範囲にすることによって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中でのそれら3種類の分岐鎖アミノ酸の含有比率が、人体を構成しているタンパク質におけるイソロイシンとロイシンとバリンの比率に近い値となり、人体にとって必要なそれぞれの分岐鎖アミノ酸を過度に多くなったり、過度に少なくなったりせずに、適切な量で供給することができる。
【0017】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中に含有させる糖質として、医薬、栄養剤、食品で従来から利用されている糖質のいずれもが使用でき、具体例としては、ブドウ糖(グルコース)、乳糖(ラクトース)、果糖(フルクトース)などの単糖類、スクロース、トレハロース、マルトース、イソマルトースなどの二糖類、グリコーゲン、デキストリン、デンプン類(小麦デンプン、トウモロコシ澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉など)などの多糖類、小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉などの穀粉類、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、キシロオリゴ糖など)、粉飴、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトールなど)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、従来から知られている甘味成分も、糖質として使用することができ、その具体例としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末などを挙げることができる。
分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品における糖質の含有量は特に制限されず、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品をなす焼菓子の種類、糖質の種類、焼菓子を製造する際の作業性、工程性、取り扱い性などに応じて決めることができる。一般的には、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の全カロリー量の40〜65%、特に45〜60%が糖質に基づくカロリーであるような量で糖質を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中に含有させる脂質としては、食品で従来から使用されている脂質のいずれもが使用でき、具体例としては、アマニ油、エゴマ油、オリーブ油、ゴマ油、米油、米糠油、サフラワー油、シソ油、大豆油、コーン油、ナタネ油、胚芽油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、綿実油、ヤシ油、ナッツ油、落花生油、カカオ脂、サラダ油などの植物油、ラード、牛脂、魚油、乳脂などの動物性油脂、中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸、DHA、EPA、ジアシルグリセロールなどの加工油脂、それらの油脂を含有するバター、マーガリン、ショートニングなどの油脂加工品などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品における脂質の含有量は特に制限されず、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品をなす焼菓子の種類、脂質の種類、焼菓子を製造する際の作業性、工程性、取り扱い性などに応じて決めることができる。一般的には、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の全カロリー量の20〜35%、特に25〜30%が脂質に基づくカロリーであるような量で脂質を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、ビタミンおよびミネラルの一方または両方を含有してもよいし、またはビタミンおよびミネラルを含有しなくてもよく、そのうちでもビタミンおよびミネラルの少なくとも一方を含有することが好ましく、ビタミンおよびミネラルの両方を含有することがより好ましい。
【0020】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品がビタミンを含有する場合は、ビタミンとして、医薬、栄養剤、栄養食品などで従来から用いられているビタミンのいずれもが使用でき、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、ビタミンとしてビタミン誘導体を用いてもよい。本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中には、複数のビタミンを組み合わせて含有させることが、各種ビタミン類を同時に摂取できることから好ましい。
【0021】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り、各種ビタミン類を以下の割合で含有することが好ましい。

[分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当りのビタミン類の好ましい含有量]
ビタミンB1 :0.1〜40mg、特に0.1〜25mg
ビタミンB2 :0.1〜20mg、特に0.1〜12mg
ビタミンB6 :0.1〜60mg、特に0.1〜10mg
ビタミンB12:0.1〜100μg、特に0.20〜60μg
ナイアシン :1〜300mg、特に1.0〜60mg
パントテン酸 :0.1〜55mg、特に0.5〜30mg
葉酸 :10〜1000μg、特に20〜200μg
ビオチン :1〜1000μg、特に3〜500μg
ビタミンC :10〜2000mg、特に8〜1000mg
ビタミンA :0〜3000μg、特に60〜600μg
ビタミンD :0.1〜50μg、特に0.4〜5.0μg
ビタミンE :1〜800mg、特に0.7〜150mg
ビタミンK :0.5〜1000μg、特に2〜700μg
【0022】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品がミネラルを含有する場合は、ミネラルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中には、複数のミネラルを組み合わせて含有させることが、複数のミネラルを同時に摂取できることから好ましい。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中には、ミネラルを、無機電解質物質の形態で含有させてもよいし、有機電解質物質の形態で含有させてもよいし、または無機電解質物質および有機電解質物質の両方の形態で含有させてもよい。
無機電解質物質として、例えば、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩などを挙げることができる。
有機電解質物質としては、例えば、クエン酸、乳酸、アミノ酸、アルギン酸、リンゴ酸、グルコン酸などの有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩などを挙げることができる。
【0023】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中には、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り、ミネラルを以下の割合で含有させることが好ましい。

[分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当りのミネラルの好ましい含有量]
ナトリウム :5〜6000mg、特に10〜3500mg
カルシウム :10〜2300mg、特に60〜600mg
カリウム :1〜3500mg、特に15〜1800mg
マグネシウム:1〜740mg、特に25〜1800mg
リン :1〜2300mg、特に10〜1500mg
亜鉛 :0.1〜30mg、特に1〜15mg
【0024】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に起因する苦味を消す(マスキングする)ために、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤を含有する。
【0025】
本発明で用いるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、別名、「縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル」とも称され、グリセリンの4〜10個が重合してなる式:H−[O−CH2−CH(OH)−CH2]n−OH(n=4〜10)で表されるポリグリセリンの片端部の水酸基に縮合リシノレイン酸がエステル結合した親油性の油中水型(W/O型)の乳化剤であって、通常、高稠性の液体である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルにおける「縮合リシノレイン酸」部分は一般にリシノレイン酸の3〜5モルの縮合物である。そのうちでも、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび/またはヘキサグリセリン縮合リシノレインエステルが、乳化分散性,入手容易性などの点から好ましく用いられる。
【0026】
本発明で用いるレシチンは、グリセリンの一方の端部にリン酸化合物が結合し、グリコールのもう一方の端部と中央の水酸基のそれぞれに脂肪酸がエステル結合した、動植物に広く含まれているリン脂質である。
レシチンとしては、大豆、コーン、菜種などから得られる植物レシチン、卵黄から得られる卵黄レシチン、それらの高度精製物、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンなどがあり、本発明ではそれらのいずれもが使用できる。そのうちでも、本発明では、大豆レシチンおよび/または卵黄レシチンが、乳化分散性、入手容易性の点から好ましく用いられる。
【0027】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンのうちのいずれか一方のみを含有してもよいし、または両方を含有してもよい。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品におけるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる乳化剤の少なくとも1種の含有量(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとレシチンの両方を含有する場合は両者の合計含有量)は、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.04質量部であり、0.015〜0.03質量部であることが好ましく、0.018〜0.023質量部であることがより好ましい。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンの少なくとも1種の含有量が前記範囲であることによって、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を円滑に消す(マスキングする)ことができ、しかも焼菓子形態の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を製造する際の生地の取り扱い性、乳化分散性などが良好になる。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の含有量が、本発明で規定する範囲よりも少ないと、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を消す(マスキングする)ことができなくなって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を継続して摂取しにくくなり、一方ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の含有量が本発明で規定する範囲よりも多いと、焼菓子形態の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を製造する際の生地の取り扱い性が不良になったり、摂取したときに膨満感、吐き気、下痢などが生ずることがある。
【0028】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、上記したポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤と共に、バター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材を更に含有する。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤と、バター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材の両方を含有することで、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を十分にマスキングすることができる。当該乳化剤および風味素材のいずれか一方のみしか含有しない場合には、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を十分にマスキングすることはできない。
【0029】
バター風味素材としては、バター風味の呈味材およびバター風味の香料のいずれか一方を含有させてよいしまたは両方を含有させてもよく、バター風味の呈味材とバター風味の香料の両方を含有させることが、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を消す(マスキングする)効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の風味が良好になる点から好ましい。また、バターの呈味とバターの風味の両方を兼ね備えるバター風味素材を用いてもよい。
分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中にバター風味素材としてバター風味の呈味材とバター風味の香料の両方を含有させる場合は、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、バター風味の呈味材を0.03〜0.14質量部、特に0.05〜0.09質量部、およびバター風味の香料を0.01〜0.04質量部、特に0.015〜0.025質量部の割合で含有させることが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤との共働作用によって、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキング効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に良好なバター風味が付与されることから好ましい。
ここで、バター風味の呈味材の好ましい例としては、バターエキスパウダーを挙げることができる。バターエキスパウダーとしては、例えば、バターをリパーゼなどの酵素処理により風味を強化し、乳化剤、賦形剤などを加えて粉末化したものを市場から入手することができる。
また、バター風味の香料としては、例えば、非特許文献4の第276頁に記載されているバター風味の香料を用いることができ、また市販のバター風味の香料を使用してもよい。
【0030】
紅茶風味素材としては、紅茶風味の呈味材および紅茶風味の香料のいずれか一方を含有させてよいしまたは両方を含有させてもよく、紅茶風味の呈味材と紅茶風味の香料の両方を含有させることが、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキング効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の風味が良好になる点から好ましい。
また、紅茶の呈味と紅茶の風味の両方を兼ね備える紅茶風味素材を用いてもよい。
分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中に紅茶風味素材として紅茶風味の呈味材と紅茶風味の香料の両方を含有させる場合は、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、紅茶風味の呈味材を0.02〜0.10質量部、特に0.04〜0.06質量部、および紅茶風味の香料を0.004〜0.020質量部、特に0.008〜0.013質量部の割合で含有させることが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤との共働作用によって、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキング効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に良好な紅茶風味が付与されることから好ましい。
ここで、紅茶風味の呈味材の好ましい例としては、紅茶エキスパウダーを挙げることができ、紅茶エキスパウダーは市場から容易に入手することができる。
また、紅茶風味の香料としては、例えば、非特許文献4の第400頁に記載されている紅茶風味の香料を用いることができ、また市販の紅茶風味の香料を使用してもよい。
【0031】
シトラス風味素材としては、シトラス風味の呈味材およびシトラス風味の香料のいずれか一方を含有させてよいしまたは両方を含有させてもよく、シトラス風味の呈味材とシトラス風味の香料の両方を含有させることが、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味を消す(マスキングする)効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の風味が良好になる点から好ましい。
また、シトラスの呈味とシトラスの風味の両方を兼ね備えるシトラス風味素材を用いてもよい。
分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品中にシトラス風味素材としてシトラス風味の呈味材とシトラス風味の香料の両方を含有させる場合は、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、シトラス風味の呈味材を0.03〜0.14質量部、特に0.05〜0.09質量部、およびシトラス風味の香料を0.001〜0.010質量部、特に0.003〜0.005質量部の割合で含有させることが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンの少なくとも1種との共働作用によって、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味のマスキング効果が高くなり、しかも分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品に良好なシトラス風味が付与されることから好ましい。
ここで、シトラス風味の呈味材の好ましい例としては、レモン、オレンジなどのシトラス(柑橘類)の粉末果汁を挙げることができ、レモンの粉末果汁が特に好ましく用いられる。レモン、オレンジなどのシトラスの粉末果汁は、市場で容易に入手することができる。
また、シトラス風味の香料としては、例えば、非特許文献4の第88頁に記載されているシトラス風味の香料を用いることができ、また市販のシトラス風味の香料を使用してもよい。
【0032】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、肝硬変患者が摂取する場合も想定されることから、鉄の配合は避けたほうが好ましい。そのため、鉄を多く含む呈味素材や副原料、例えば、抹茶粉末、ココアなどは含有させないことが好ましい。また、抹茶粉末などのような、保存中に退色したり、色の変化が激しいものも含有させないことが好ましい。さらに、油脂含量の多い呈味素材、例えばナッツ類なども、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の賞味期限が短くなるので含有させないことが好ましい。
【0033】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、焼菓子の形態をなしている。
本発明でいう「焼菓子」とは、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、澱粉類などの穀粉類の1種または2種以上からなる穀粉に、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種、並びにバター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材を添加し、更に必要に応じて他の成分を添加して生地をつくり、当該生地を切断および/または賦型した後に、加熱焼成して得られる菓子類を意味する。
【0034】
焼菓子形態をなす本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、水分含量が3〜10質量%、特に4〜8質量%であることが好ましい。水分含量が3質量%よりも少ないと、硬くなって食べにくくなり、一方水分含量が10質量%を超えると、黴びが生えたり、腐り易くなり、長期保存に適さなくなる。
限定されるものではないが、焼菓子形態をなす本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の具体例としては、クッキー、サブレ、ビスケット、ウエハース、パフパイ、ロシアケーキなどを挙げることができる。
【0035】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の形状、サイズ、重さなどは特に制限されるものでなく、喫食し易い形や形状であればいずれでもよく、一般的に分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品1個の重さが約20〜30g、特に22〜27g程度にしておくことが、喫食性、各種栄養成分の摂取量の調整容易性、携帯性などの点から好ましい。
また、本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品のカロリーとしては、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品1g当りのカロリーが3.2〜4.8kcal、特に3.6〜4.4kcalにしておくことが、カロリー摂取量の調整の容易性の点から好ましい。
【0036】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の製造方法は特に制限されず、焼菓子類の製造に当って従来から採用されている方法に準じて製造することができる。
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の製造に当っては、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品をなす焼菓子の種類などにより、必要に応じて、食塩、イースト、膨張剤、大豆タンパクやその他の大豆製品、全卵液、全卵粉末、卵白液、卵白粉末などの卵類、牛乳、乳清タンパク、チーズなどの乳製品、食物繊維、レーズン、オレンジピール、干アンズなどの乾果、その他の材料を添加することができる。その際に、前記した膨張剤としては、食品業界で汎用されている、例えば、ベーキングパウダーやその他の炭酸水素ナトリウムに酸性剤を配合した膨張剤、炭酸水素アンモニウムや炭酸アンモニウムを主体とする膨張剤などを挙げることができる。
【0037】
焼菓子の形態をなす分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の製造に当っては、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤、バター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材、小麦粉やその他の穀粉類、および必要に応じて他の材料や水を混合し、混練して生地をつくり、生地を喫食しやすい所定の形状およびサイズに賦型した後、加熱焼成する方法などを採用することができる。生地の賦型方法は特に制限されず、焼菓子の製造に従来から採用されているのと同様の方法で行なうことができ、例えば、麺棒、デポジター、圧延ローラーなどの機械を用いて生地を圧延した後に所定の形状およびサイズに型抜きする方法、生地を丸や花形などの口金を用いて絞り出し、それをワイヤーで所定の厚さに切り出す方法(ワイヤーカット法)、生地を比較的小さな丸型や偏平型の口金を用いて、移動しているベルト上に連続させて長く絞り出し、次いでナイフで所定のサイズにカットする方法(ルートプレス法)、多数の凹部を表面に形成した回転する型に生地を詰め込み、それをコンベアベルトの摩擦力によって剥がし取って成形するロータリーモルダー法、移動するステンシル型の入口側に生地を対流させ型とバンドの接触により生地漏れをシールしながら成型するステンシルモルダー法などを採用して、生地の賦型を行なうことができる。
【0038】
賦型した生地の加熱焼成は、生地の製造に使用した原料の種類、配合組成、賦型した生地のサイズ、形状、厚さ、製造しようとする焼菓子の種類などに応じて、焼菓子の製造において通常採用されているのと同様の条件を採用して行なうことができる。一般的には、約60〜250℃の範囲内の温度で約2〜60分間、好ましくは約130〜220℃の範囲内の温度で約8〜45分間加熱焼成することによって、焼菓子形態をなす本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を得ることができる。加熱焼成のための加熱装置の種類は特に限定されず、水分含量が上記した3〜10質量%、好ましくは4〜8質量%の焼菓子を製造することのできる熱源であればいずれも採用でき、例えば、熱水または蒸気循環式の加熱装置、電気ヒーター、ガスオーブン、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置、遠赤外線加熱装置、赤外線加熱装置などを使用することができる。
【0039】
上記のようにして得られる、本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、焼菓子の形態をなしていて、しかも当該食品中に配合された分岐鎖アミノ酸の苦味がグリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび/またはレシチンと、バター風味素材、紅茶風味素材および/またはシトラス風味素材との共働によって分岐鎖アミノ酸に起因する苦味が十分に消失している(マスキングされている)ため、おやつ感覚で、楽しみながら継続して喫食することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実験例、実施例などを挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、焼菓子の形態をなす分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品の苦味のマスキング効果(苦味の有無)の評価は、10名のパネラーが分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(焼菓子)を食して、「苦味を感じる」または「苦味を感じない」のいずれか一方で回答し、それらの人数に基づいて、下記の表1に示す基準にしたがって行なった。
【0041】
【表1】

【0042】
《実施例1》
(1) 下記の表2に示す原料を表2に示す配合量で用いて、以下の(2)に記載する手順で焼菓子形態の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を製造した。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
(2)(i)上記の表2に示す量のマーガリン、グラニュー糖、乳化剤およびバター香料を4.8L容のステンレスボウルに入れ、ミキサー(株式会社エフ・エム・アイ「KitchenAid KSM5」、平面ビーター)を使用して、速度目盛り2で2分間ミキシングした後、表2に示す量の凍結全卵を加えて速度目盛り2で5分間ミキシングした。
(ii) 次いで、表2に示す量のミクロカルマグS、ビタミンミックス、グルコン酸亜鉛、ロイシン、イソロイシン、バリン(L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン)、食物繊維、濃縮大豆タンパク、乳清タンパクおよびバターエキスパウダーを加えて、速度目盛り1で30秒間、速度目盛り2で30秒間ミキシングし、最後に表2に示す量の小麦粉を加えて、速度目盛り1で30秒間、速度目盛り2で1分間ミキシングして分岐鎖アミノ酸を含有する生地を調製した。
(iii) 上記(ii)で得られた生地を麺棒で7mm厚の均一な板状に延ばし、直径6cmの型により型抜きし、型抜きした生地をオーブンレンジ(松下電器産業株式会社「NE−M250」)を使用して、170℃で11分間焼成し、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
これにより得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品では、分岐鎖アミノ酸の含有量は、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り4.0gであり、イソロイシン:ロイシン:バリンの含有比率は1.0:2.0:1.0であり、分岐鎖アミノ酸1質量部に対するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は0.021質量部であり、分岐鎖アミノ酸1質量部に対するバターエキスパウダーの含有量は0.070質量部で、バター香料の含有量は0.021質量部である。
(iv) 上記(iii)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「◎」であった。
【0046】
《実施例2》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダーの配合量を3.50g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.035質量部)に変え、バター香料の配合量を1.05g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.011質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「○」であった。
【0047】
《実施例3》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダーの配合量を10.50g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.105質量部)に変え、バター香料の配合量を3.20g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.032質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「○」であった。
【0048】
《実施例4》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、レシチン(大豆由来レシチン、辻製油株式会社製「SLP−ペースト])2.10gを用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「◎」であった。
【0049】
《実施例5》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトNo.818R」)2.10gを用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「◎」であった。
【0050】
《実施例6》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトNo.818DG」)2.10gを用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「◎」であった。
【0051】
《実施例7》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの配合量を1.05g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.011質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「○」であった。
【0052】
《実施例8》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの配合量を3.15g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.032質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「○」であった。
【0053】
《比較例1》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを配合しなかった以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0054】
《比較例2》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダーおよびバター香料を配合しなかった以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0055】
《比較例3》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社「O−170」)2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0056】
《比較例4》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、モノオレイン酸デカグリセリン(太陽化学株式会社製「サンソフトQ−17S 」)2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0057】
《比較例5》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、パーム硬化油モノグリセリド(太陽化学株式会社製「サンソフトNo.8000V」)2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0058】
《比較例6》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの配合量を0.35g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.0035質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0059】
《比較例7》
(1) 実施例1において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの配合量を6.30g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.063質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表4に示すように「×」であった。
【0060】
上記の実施例1〜8および比較例1〜7を表にまとめると、下記の表4に示すとおりである。
【0061】
【表4】

【0062】
上記の表4の結果にみるように、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質、脂質、ビタミンおよびミネラルを含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって、分岐鎖アミノ酸の含有量が、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gの範囲であり、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種を分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、0.01〜0.05質量部の範囲で含有し、かつバター風味素材を含有する焼菓子形態の実施例1〜8の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、苦味のマスキング効果に優れていて分岐鎖アミノ酸に起因する苦味がなく、通常の焼菓子を喫食する感覚で、美味しさを味わいながら、継続して摂取することができる。
【0063】
それに対して、比較例1の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品はグリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンのいずれをも含有していないために、また比較例2の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品はバター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材のいずれも含有していないため、苦味のマスキング効果に劣っていて苦味があり、継続して摂取しにくい。
また、比較例3〜5の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、乳化剤を含有しているものの、乳化剤がポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンとは異なる乳化剤であるために、苦味のマスキング効果に劣っていて、苦味があり、継続して摂取しにくい。
比較例6および7の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有し、かつバター風味素材も含有しているが、比較例6はポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量が本発明で規定する範囲よりも少ないために、また比較例7はポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量が本発明で規定する範囲よりも多いために、いずれも、苦味のマスキング効果に劣っていて、苦味があり、継続して摂取しにくい。
【0064】
《実施例9》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダー6.99gの代りに紅茶エキスパウダー(佐藤食品工業株式会社「ダージリンエキスパウダーE1」)4.83g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.048質量部)を用い、バター香料2.10gの代りに紅茶香料(小川香料株式会社「EL29719」)1.02g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.010質量部)を用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「◎」であった。
【0065】
《実施例10》
(1) 実施例9において、紅茶エキスパウダーの配合量を3.45g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.035質量部)に変え、更に紅茶香料の配合量を0.73g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.007質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「○」であった。
【0066】
《実施例11》
(1) 実施例9において、紅茶エキスパウダーの配合量を6.90g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.069質量部)に変え、更に紅茶香料の配合量を1.46g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.015質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「○」であった。
【0067】
《実施例12》
(1) 実施例9において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、実施例4で使用したのと同じ大豆レシチン2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「◎」であった。
【0068】
《実施例13》
(1) 実施例9において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、実施例5で使用したのと同じペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「◎」であった。
【0069】
《実施例14》
(1) 実施例9において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gの代りに、実施例6で使用したのと同じテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.10gを配合した以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「◎」であった。
【0070】
《比較例8》
(1) 実施例9において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを配合しなかった以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表5に示すように「×」であった。
【0071】
【表5】

【0072】
上記の表5の結果にみるように、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質、脂質、ビタミンおよびミネラルを含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって、分岐鎖アミノ酸の含有量が、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gの範囲であり、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種を分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.05質量部の範囲で含有し、かつ紅茶風味素材を含有する焼菓子形態の実施例9〜14の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、苦味のマスキング効果に優れていて、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味がなく、通常の焼菓子を喫食する感覚で、美味しさを味わいながら、継続して摂取することができる。
それに対して、比較例8の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品はグリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンのいずれをも含有していないために、苦味のマスキング効果に劣っていて、苦味があり、継続して摂取しにくい。
【0073】
《実施例15》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダー6.99gの代りにレモン粉末果汁(小川香料株式会社製「DL99265」)6.99g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.070質量部)を用い、バター香料2.10gの代りにシトラスミックス香料(小川香料株式会社「EL37236」)0.36g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.0036質量部)を用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表6に示すように「◎」であった。
【0074】
《実施例16》
(1) 実施例15において、レモン粉末果汁の配合量を3.50g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.035質量部)に変え、更にシトラスミックス香料の配合量を0.18g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.0018質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表6に示すように「○」であった。
【0075】
《実施例17》
(1) 実施例15において、レモン粉末果汁の配合量を13.98g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.140質量部)に変え、更にシトラスミックス香料の配合量を0.70g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.007質量部)に変えた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表6に示すように「○」であった。
【0076】
《比較例9》
(1) 実施例15において、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを配合しなかった以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表6に示すように「×」であった。
【0077】
【表6】

【0078】
上記の表6の結果にみるように、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質、脂質、ビタミンおよびミネラルを含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって、分岐鎖アミノ酸の含有量が、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gの範囲であり、グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種を分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.05質量部の範囲で含有し、かつシトラス風味素材を含有する焼菓子形態の実施例15〜17の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、苦味のマスキング効果に優れていて、分岐鎖アミノ酸に起因する苦味がなく、通常の焼菓子を喫食する感覚で、美味しさを味わいながら、継続して摂取することができる。
それに対して、比較例9の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品はグリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンのいずれをも含有していないために、苦味のマスキング効果に劣っていて、苦味があり、継続して摂取しにくい。
【0079】
《比較例10》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダー6.99gの代りにインスタントコーヒー粉末(カフェイン不含有)(ネスレ日本株式会社製「ゴールドブレンドカフェインレス」)20.7g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.207質量部)を用い、バター香料2.10gの代りにコーヒー香料(小川香料株式会社「DL80398」)2.10g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.021質量部)を用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表7に示すように「×」であった。
【0080】
《比較例11》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダーを配合せず、バター香料2.10gの代りにショウユ香料(小川香料株式会社「EL14822」)3.50g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.035質量部)を用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表7に示すように「×」であった。
【0081】
《比較例12》
(1) 実施例1において、バターエキスパウダー6.99gの代りにベジタブルテースター(小川香料株式会社製「EL19881」)3.42g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.034質量部)を用い、バター香料2.10gの代りにピザ香料(小川香料株式会社「EL19880」)2.73g(分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.027質量部)を用いた以外は、実施例1と全く同じに行なって、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品(クッキー)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品を10名のパネラーが食して、苦味のマスキング効果を上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表7に示すように「×」であった。
【0082】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品は、イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる分岐鎖アミノ酸に起因する苦味が良好にマスキングされていて苦味がなく、しかも焼菓子の形態をなしているため、患者などが、菓子類を食べる感覚で、楽しみながら継続して喫食することができ、さらに分岐鎖アミノ酸と共に糖質、脂質、ビタミンおよびミネラルを含有しているため、患者に分岐鎖アミノ酸と同時に、糖質、脂質、ビタミンおよびミネラルを同時に給与することができ、しかも水分含量の少ない焼菓子の形態になっていて長期保存安定性、取り扱い性に優れているので、総合栄養食として極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソロイシン、ロイシンおよびバリンからなる3種類の分岐鎖アミノ酸と共に、糖質および脂質を含有する分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品であって;
分岐鎖アミノ酸の含有量が、分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品100kcal当り2.0〜4.5gであり;
グリセリンの重合度が4〜10であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびレシチンから選ばれる少なくとも1種の乳化剤を、分岐鎖アミノ酸1質量部に対して、0.01〜0.05質量部の割合で含有し;
バター風味素材、紅茶風味素材およびシトラス風味素材から選ばれる風味素材を更に含有し;且つ、
焼菓子の形態をなしている;
ことを特徴とする分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項2】
バター風味素材が、バター風味の呈味材および/またはバター風味の香料である、請求項1に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項3】
風味素材としてバター風味の呈味材およびバター風味の香料を含有し、バター風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.03〜0.14質量部であり、バター風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.01〜0.04質量部である請求項1または2に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項4】
紅茶風味素材が、紅茶風味の呈味材および/または紅茶風味の香料である、請求項1に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項5】
風味素材として紅茶風味の呈味材および紅茶風味の香料を含有し、紅茶風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.02〜0.10質量部であり、紅茶風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.004〜0.020質量部である、請求項1または4に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項6】
シトラス風味素材が、シトラス風味の呈味材および/またはシトラス風味の香料である、請求項1に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項7】
風味素材として、シトラス風味の呈味材およびシトラス風味の香料を含有し、シトラス風味の呈味材の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.03〜0.14質量部であり、シトラス風味の香料の含有量が分岐鎖アミノ酸1質量部に対して0.001〜0.010質量部である、請求項1または6に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。
【請求項8】
イソロイシン、ロイシンおよびバリンの含有比率が、イソロイシン:ロイシン:バリン=1:1.6〜2.4:0.8〜1.2の質量比である請求項1〜7のいずれか1項に記載の分岐鎖アミノ酸含有総合栄養食品。