説明

分散スペクトル検知

本発明は、ラジオネットワークに関するスペクトルセンシングスキームに関する。提案されるアプローチは、信号スペクトルの評価を得るために、分散された形態でセンシングを適用することを含む。複数のセンシングノード(200−1乃至200−J)のネットワークは、関心のある大きい帯域幅に対処するための高速アナログデジタル変換器を必要とすることなく、このようなスペクトル評価を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ラジオネットワークのスペクトルを検知する装置、方法、コンピュータプログラム及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来のワイヤレスシステムは、コグニティブであり、ラジオスペクトルを日和見的に使用することが可能であることが広く認識されている。このようなシステムに関して技術的な要求を規定する複数の標準化組織(例えば米国電気電子学会(IEEE)802.22)及び規則組織(例えば連邦通信委員会(FCC06、FCCM06))がある。このようなシステムにおける中心的な問題は、関心のある広帯域スペクトル領域においてスペクトル占有を得ることである。例えば、FCCは、このようなコグニティブネットワークに関して54MHz乃至862MHzの領域のスペクトルを検討している。同様の関心が、2GHz乃至5GHzの領域のスペクトルにも生じている。
【0003】
スペクトル評価の分野において、「圧縮センシング(compressive sensing)」と呼ばれる技法が、最近開発された。スペクトルを評価するために、長さNの自己相関シーケンス、

が要求される。ここで、各エントリ、

は、特定の時間遅延τn=(n-1)Δtにおける受信信号x(t)の自己相関に対応する。サンプリング時間Δtは、検知されるべき周波数帯域の総帯域幅の逆数に対応する。自己相関シーケンスの長さNは、周波数分解能に対応する。すなわち、Nが大きいほど、評価されるスペクトルの周波数分解能は良くなる。スペクトルは、式(1)における自己相関シーケンスrのフーリエ変換として評価されることができる。マトリックス形式において、評価されたスペクトルベクトルは、

である。ここで、Fは、サイズN×Nの離散フーリエ変換(DFT)を示す。
【0004】
例示的な圧縮センシング(CS)フレームワークは、D. Donohoによる「Compressed sensing」(IEEE Transactions on Information Theory, pp 1289-1306, April 2006)に記述されている。x∈Rが信号であり、Ψ=[ψ...ψ]が、ベクトルスパニングRの基底であるとすると、xがΨからのK<<Nベクトルの線形の組み合わせによって良好に近似されることができる場合、xは、ΨにおいてKスパース(K-sparse)であると言うことができる。マトリックス形式において、これは、

である。ここでθは、K個の非ゼロエントリを含むスパースベクトルである。CS理論は、M<<Nのとき、M×N測定マトリックスΦを使用することが可能であり、それでもなお、測定y=Φxは、Kスパース信号xに関する重要な情報を維持すると述べている。測定マトリックスΦの例は、i.i.dガウシアンエントリを有するランダムマトリックスである。基底ベクトルのマトリックスΨと干渉しない任意のマトリックスΦを使用すると、CS測定yからKスパース信号xを回復することが可能である。CS回復問題の標準形は、l最小化問題を解くことである:

【0005】
この問題は、M=cK測定を必要とし、ここで、cは定数である。例えばJ. Tropp及びA. Gilbertによる「Signal recovery from random measurements via orthogonal matching pursuit」(IEEE Transactions on Information Theory, pp 4655-4666, Dec 2007)に記述されるような反復的な貪欲追跡アルゴリズムが、例えば直交マッチング追跡(orthogonal matching pursuit;OMP)アルゴリズムのようなCS回復のために一般に使用される。
【0006】
スペクトルセンシングのために評価されるべき信号は、式(1)の自己相関シーケンスrであり、又は同等にその周波数ドメインバージョン、式(3)のスペクトルrである。CSをスペクトル評価に適用するために、rのスパース表現が、基底マトリックスΨ上のスパースベクトルzによって使用されることができ、従って、r=Ψzであり、zは、多くのゼロ又はニアゼロのエントリを含む。
【0007】
Z. Tian及びG. B. Giannakisによる「Compressed Sensing for Wideband Cognitive Radios」(ICASSP, pp 1357-1360, 2007)は、rのスパース表現としてエッジスペクトルzを記述している。エッジスペクトルは、元の信号スペクトルの平滑化されたバージョンの微分として規定されることができる:

ここで、*は畳込みを示し、w(f)は、平滑化関数であり、w(t)は、w(f)の逆フーリエ変換である。周波数ドメインにおいて実施されるw(f)による信号スペクトルr(f)の畳込みは、自己相関シーケンスr(t)のw(t)による乗算及びその後のフーリエ変換によって、時間ドメインにおいて実現されることができる。マトリックス形式において、エッジスペクトルベクトルzは、
z=DFWr (7)
である。ここで、

は、微分演算を近似するマトリックスであり、W=diag{w(t)}は、その対角線上にw(t)をもつ対角行列であり、マトリックスD、F及びWは、サイズN×Nであり、ベクトルr及びzは、サイズN×1である。エッジスペクトルベクトルzは、スペクトルレベルが鋭い変化を有する周波数帯域のエッジに対応するほんの少数の非ゼロエントリを有するスパースベクトルである。
【0008】
図1は、信号スペクトルr(f)(上側)及び対応するエッジスペクトルz(f)(下側)を示す。エッジスペクトルは、ほんの少数のスパイクを有して周波数ドメインにおいてスパースであり、正のスパイクは、スペクトルレベルの増加を示し、負のスパイクの増加は減少を示すことが明らかに導き出せる。
【0009】
式(7)に基づいて、自己相関シーケンスベクトルrが、zに関して表現されることができる:

これは、rが、基底Ψ=(DFW)−1においてスパース表現zを有することを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
広帯域スペクトルセンシングは、各々の狭帯域周波数チャネル上で一つずつ狭帯域センシングを実施することによって達成されることができる。しかしながら、これは、同調可能な狭帯域バンドパスフィルタを有する高価な好適でないラジオ周波数(RF)フロントエンドを必要とし、更に、関心のある広帯域にわたってチャネライゼーションの知識、すなわち各狭帯域チャネルの中心周波数及び帯域幅、を必要とする。
【0011】
別のアプローチは、複数の狭帯域周波数チャネルを同時に含む広帯域を検知することに基づく。関心のある総帯域幅が数百MHzである場合、これは、例えばギガビット/秒で動作する、高速の、ゆえに電力貧困なアナログデジタル変換器(ADC)を必要とする。
【0012】
Z. Tian及びG. B. Giannakisによる「Compressed Sensing for Wideband Cognitive Radios」(ICASSP, pp 1357-1360, 2007)は、広帯域スペクトルセンシングを実施するために圧縮センシングを適用する考えを提案した。しかしながら、圧縮が、自己相関シーケンスr(t)に対して適用され、r(t)の計算は、元の広帯域信号x(t)が、ナイキスト周波数より高い周波数でサンプリングされることを要求するので、高速ADCの負荷が低減されない。
【0013】
更に、米国特許出願公開第20080129560号明細書は、分散された圧縮センシングの方法を開示しており、その中で、完全なCSマトリックス又はその部分行列が使用され、複数のセンサノードにおける測定間のジョイントスパーシティ(joint sparsity)に基づく回復アルゴリズムのアルゴリズム効率に主に焦点が合わせられている。
【0014】
本発明の目的は、センサノードにおける低減された処理要求をもつ柔軟なスペクトルセンシングアプローチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、センシング側では、請求項1に記載の装置及び請求項9に記載の方法によって達成され、測定又は処理側では、請求項2に記載の装置及び請求項10に記載の方法によって及び請求項13に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0016】
従って、スペクトル評価は、関心のある大きい帯域幅に対処するための高速アナログデジタル変換器(ADC)を必要とすることなく、分散された形態で、複数のセンサノードのネットワークによって実施されることができる。各センサノードは、アナログドメインにおいて、いくつかの特定の時間遅延における受信信号の部分的な自己相関を測定する。従って、アナログ自己相関は、ADCにおける負荷を軽減する。各センサノードは、デジタルドメインにおいて、圧縮センシングプロセッサによって部分的な自己相関を部分的な圧縮測定シーケンスに変換する。フュージョン(融合)センタは、総帯域又はスペクトルにおけるどの信号スペクトルが評価されるかに基づいて、すべてのセンサノードによって収集された部分的な圧縮測定シーケンスを取得する。フュージョンは、センサノードとは異なるノードにおいて実施されることができ、又は他のセンサノードからの測定値を収集することによって、各々のセンシングノードにおいて実施されることができる。提案される分散センシングアプローチは、エネルギー効率が重要である分散ネットワークにとって特に有利である。
【0017】
提案される装置は、ネットワークノード又は局において提供されるプロセッサ装置、モジュール、チップ、チップセット又は回路として実現されることができる。プロセッサは、コンピュータ又はプロセッサ装置上でランするとき、請求項に記載の方法のステップを実施するコード手段を含むコンピュータプログラム製品によって制御されることができる。
【0018】
第1の見地によれば、部分的な圧縮測定シーケンスは、コヒーレントな付加の送信チャネルを通じて送信されることができる。それによって、送信チャネルは、分散センサノードによって送信される個別の部分的な圧縮測定シーケンスを自動的に集める。
【0019】
上述の第1の見地と組み合わせられることができる第2の見地によれば、相関器は、受信信号に、その特定の遅延の共役バージョンを乗じる乗算器を有する少なくとも1つの分岐部と、予め決められた時間ウィンドウにおいて、得られた積を積分する積分器と、予め決められた時間ウィンドウの終わりに、得られた積分された出力をデジタル化するアナログデジタル変換器と、を有する。この分岐タイプの処理構造は、処理能力に基づいて、装置の簡素でスケーラブルな構造を可能にする。
【0020】
第2の見地と組み合わせられることができる第3の見地によれば、相関器は更に、少なくとも1つの分岐のデジタル化された積分された出力を受け取り、部分的な圧縮センシング測定をデジタル化された積分された出力に適用する圧縮センシングプロセッサを有することができる。圧縮センシング測定は、より少ない数の処理されるべき信号投影による、低減された処理要求の利点を提供する。
【0021】
第1乃至第3の見地の任意の1つと組み合わせられることができる第4の見地によれば、変換プロセッサは、部分的な圧縮測定シーケンスの集まりから総スペクトルの微分を回復する回復部と、微分を通じて積分演算を近似する積分部と、を有する。従って、総スペクトルの評価は、シンプルな積分演算によって、回復された微分から直接的に得られることができる。
【0022】
第1乃至第4の見地の任意の1つと組み合わせられることができる第5の見地によれば、回復部分は、圧縮センシング回復処理を適用するように構成されることができる。こうして、利用可能な回復アルゴリズムが、回復処理のために使用されることができる。
【0023】
第4又は第5の見地と組み合わせられることができる第6の見地によれば、積分部は、微分を通じて累積的な合計を計算するように構成されることができる。これは、簡素で分かりやすい前方アプローチが積分演算の近似を得ることを可能にする。
【0024】
第1乃至第6の見地の任意の1つと組み合わせられることができる第7の見地によれば、部分的な自己相関を測定するために請求項1に記載の装置に設けられる処理分岐の数は、個々のネットワークノードの処理能力に依存して異なり、システムの請求項1に記載のすべての装置部分に設けられるすべての処理分岐の合計は、総スペクトルの周波数分解能に対応する。それによって、総スペクトルの自己相関シーケンスを測定するための分配される負荷は、各個別のセンシングノードの処理能力に適応されることができる。
【0025】
他の有利な展開は、従属請求項に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】信号スペクトル及び対応するエッジスペクトルを示す図。
【図2】第1の実施形態によるセンサノードプロセッサの概略的なブロック図。
【図3】第2の実施形態によるスペクトルセンシングプロシージャのフロー図。
【図4】第3の実施形態による分散されたスペクトルセンシングシステムの概略的なブロック図。
【図5】第4の実施形態によるフュージョンセンタプロセッサの概略的なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、添付の図面を参照してさまざまな実施形態に基づいて記述される。
【0028】
以下、本発明の実施形態が、例示の分散された圧縮広帯域センシングシステムに基づいて記述される。
【0029】
実施形態によれば、複数の狭帯域チャネルを含む広帯域周波数チャネルの提案されるスペクトル評価は、関心のある大きい帯域幅に対処するために高速ADCを必要とすることなく、分散された形態で、複数のセンサノードのネットワークによって実施される。
【0030】
各々のセンサノードは、例えばセンサノードの処理能力に従って、アナログドメインにおいて、いくつかの特定の時間遅延における受信信号の部分的な自己相関を測定する。アナログ自己相関は、ADCに対する負荷を軽減する。各々のセンサノードは更に、デジタルドメインにおいて、部分的な自己相関を、部分的な圧縮測定シーケンスに変換する。フュージョンセンタ(FC)は、すべてのセンサノードによって収集された部分的な圧縮測定シーケンスを取得し、かかる部分的な圧縮測定シーケンスに基づいて、広帯域における信号スペクトルが、圧縮センシング(compressive sensing、CS)回復アルゴリズムを介して評価されることができる。フュージョンは、センサノードとは異なるノードにおいて実施されることができ、又はすべての他のセンサノードからの測定を収集することによって、各々のセンシングノードにおいて実施されることができる。
【0031】
従って、提案されるスペクトル評価は、ネットワーク内の各センサノードにおける特定の信号処理、各センサノードからFCへ検知された情報を通信する特定の方法、及びスペクトル評価を得るためにフュージョンセンタで行われる特定の処理、を含む。
【0032】
図2は、jによってインデックスされるセンサノードにおける、プロセッサ又は処理素子の概略的なブロック図を示す。受信信号x(t)の自己相関は、個々の乗算器20において、受信信号x(t)に、個々の遅延素子10−1乃至10−Nから得られるその遅延された共役バージョンを乗じることによって、アナログドメインの少なくとも1つの処理分岐部において測定される。乗算器20の出力における積は、個々の積分器30に供給され、それらの積は、予め決められた時間ウィンドウTにおいて積分される。各々の処理分岐の終わりに、アナログ積分の出力が、各々の時間ウィンドウTの終わりにデジタル化されるように、個々のADC40に供給される。信号が、提案されるナイキストサンプリングレートでもあるB Hzの帯域幅を占める場合、提案されるスキームのADCサンプリングレートは、(B/T)Hzになる。従って、図2のj番目のセンサノードは、特定の時間遅延において測定される自己相関を各々が生成するN並列処理分岐を含む。すべての分岐からの測定された自己相関は、長さNの列ベクトルrとして書かれることができる:

【0033】
は、式(1)において表現される完全な自己相関シーケンスrから得られる部分的な自己相関シーケンスであり、すべてのJセンサノードからの測定されたrは、長さNの完全な自己相関シーケンスを構成するように設計される:

【0034】
分岐Nの数は、各センサノードの処理能力(例えばハードウェア及び電力制限)に依存することができ、

である限り、すべてのセンサノードについて必ずしも同じではない。
【0035】
事実、提案されたるペクトルセンシングスキームは、各センサノードに長さNの部分的な自己相関を測定させることによって、Jセンサノード間の長さNの自己相関シーケンスを測定する負荷を分散する。例えば、センシングノードの数が、評価されるべき所望の自己相関シーケンスの長さに等しい場合、すなわちJ=Nの場合、各センサノードは、単一の係数、すなわち、r=r(j)、j=1,...,Nである単一の時間遅延における自己相関を測定するための1つの処理分岐を必要とするだけである。
【0036】
部分的な自己相関シーケンスrは、変換ユニット50において、部分的なCS測定マトリックスφを適用することによって、部分的な圧縮測定シーケンスyに変換される。マトリックス形式において、これは、以下のように表現されることができる:

ここで、yは、サイズM×1のベクトルであり、φは、サイズM×Nのマトリックスである。部分的なCS測定マトリックスφは、変換ユニット50において、ランダム成分(例えばガウス又は±ベルヌーイ)を含むサイズM×Nの予め規定されたCS測定マトリックス:

からNj列を採用することによって、得られることができる。
【0037】
最後に、センサノードは、ラジオネットワーク内に別個に設けられる又はセンサノードに設けられるフュージョンセンタ(FC)に、部分的な圧縮測定シーケンスyを送信する。
【0038】
図3は、第2の実施形態による、センサノードに設けられるプロセッサ又はコンピュータを制御するソフトウェアルーチンとして実現されうるスペクトルセンシングプロシージャのフロー図を示す。
【0039】
ステップS101において、受信信号は、アナログドメインにおいて、個々の特定の遅延の少なくとも1つの遅延された共役バージョンを乗じられる。次に、ステップS102において、乗算結果は、予め決められた時間ウィンドウにおいて積分され、積分出力は、ステップS103において、アナログデジタル変換され又はデジタル化される。次のステップS104において、すべてのデジタル化された積分出力から得られた部分的な自己相関シーケンスは、例えばCS測定マトリックスを使用することによって、部分的な圧縮測定シーケンスに変換される。最後に、ステップS105において、部分的な圧縮測定シーケンスは、フュージョンセンタに送られる。
【0040】
図4は、第3の実施形態による分散されたスペクトルセンシングシステムのブロック図を示している。個別の及び部分的な圧縮測定シーケンスyが、センサノード200−1乃至200−Jから、FC70に送信される。すべてのJセンサノード200−1乃至200−Jは、あるキャリア周波数f>>Wで帯域幅WHzの狭帯域ワイヤレス送信チャネル60を通じて、符号化されないアナログの同期された形態で、それらの個々の圧縮測定シーケンスyをFC70に送信することができる。従って、送信チャネル60は、例えばW. Bajwa、J. Haupt、A. Sayeed及びR. Nowakによる「Compressive Wireless Sensing」(International Conference on Information Processing in Sensor Networks, April 2006)に記述されるようなコヒーレントな付加のチャネルを構成する。送信チャネル60は、同期された送信の間、部分的な圧縮測定シーケンスyjを自動的に集め(すなわちコヒーレントに加算し)、FC70は、すべての部分的な圧縮測定シーケンスyの合計に等しいベクトルを受け取る。これは、以下のように表現されることができる:

【0041】
図5は、第4の実施形態によるFCプロセッサの概略的なブロック図を示している。プロセッサは、離散的な処理ブロックとして又はFCプロセッサを制御するソフトウェアルーチンとして実現されることができる、回復ブロック又は部分601及び積分ブロック又は部分602のFCにおいて、分散された圧縮広帯域センシングスキームの処理を実施するように構成される。
【0042】
式(8)に規定されるrのスパース表現を与えられる場合、CS回復問題は、y=Φr=ΦΨzによって表現されることができる。マトリックスΦのどのN列がセンサノードjによって使用されるかは、FCによって予め設計され、知られている。従って、FCの回復部分601は、CS回復アルゴリズム(例えばJ. Tropp及びA. Gilbertによる「Signal recovery from random measurements via orthogonal matching pursuit」(IEEE Transactions on Information Theory, pp 4655-4666, Dec 2007)に記述されるようなOMP)を使用して、受け取られた収集された測定yから、エッジスペクトルz(又は自己相関シーケンスr)を評価することができる。最終的に、全体の改良された又は完全な信号スペクトルrが評価されることができ、これは、自己相関シーケンスrのフーリエ変換を行うことによって、積分部602において得られることができる。第4の実施形態による特定の実現例において、総スペクトルrの平滑化されたバージョンの微分として、エッジスペクトルzの規定が与えられる場合、総信号スペクトルrの評価は、積分ブロック602において、積分演算を近似するzにおける累積的な合計を得ることによって、回復されたエッジスペクトルzから直接的に得られることができる。
【0043】
要するに、ラジオネットワークに関するスペクトルセンシングスキームが記述されている。提案されるアプローチは、信号スペクトルの評価を得るために、分散された形態のセンシングを適用することを含む。複数のセンシングノードのネットワークは、関心のある大きい帯域幅に対処するために高速アナログデジタル変換器を必要とすることなく、このようなスペクトル評価を得ることを含む。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、例えばワイヤレス病院設備、ボディセンサネットワーク、ポータブル装置、モバイル端末等における干渉検出のためのラジオ環境モニタリングにおいて、粗いスペクトル占有を得ることが目標であるさまざまな信号検出及び評価問題のために適用されることができる。
【0045】
更に、部分的な圧縮測定シーケンスを得るための部分的な自己相関シーケンスに対する提案される更なる処理又は圧縮が、デジタル又はアナログドメインにおいて適用されることができる。
【0046】
開示された実施形態に対する変更は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、当業者によって理解され、実現されることができる。請求項において、「含む、有する」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数の構成要素又はステップを除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載のいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項に記載の特徴を実施するようにプロセッサを制御するために使用されるコンピュータプログラムは、例えば他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/分散されることができるが、インターネット又は他のワイヤード若しくはワイヤレス通信システムを介するように、他の形態で分散されることもできる。請求項における任意の参照符号は、その範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオネットワークに関するスペクトルを検知する装置であって、
a)少なくとも1つの特定の遅延において受信信号の部分的な自己相関を測定し、前記部分的な自己相関を部分的な圧縮測定シーケンスに変換する相関器と、
b)フュージョンセンタにおける収集のために、前記部分的な圧縮測定シーケンスを送る送信器と、
を有する装置。
【請求項2】
ラジオネットワークに関するスペクトルを検知する装置であって、
a)ラジオ信号の部分的な圧縮測定シーケンスの集まりを受け取る受信器と、
b)前記受け取られた部分的な圧縮測定シーケンスの集まりから、前記ラジオ信号の総スペクトルを回復する変換プロセッサと、
を有する装置。
【請求項3】
前記部分的な圧縮測定シーケンスは、コヒーレントな付加の送信チャネルを通じて送信される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記相関器は、
前記受信信号に、前記特定の遅延の共役バージョンを乗じる乗算器を有する少なくとも1つの分岐部と、
予め決められた時間ウィンドウにおいて、得られた積を積分する積分器と、
前記予め決められた時間ウィンドウの終わりに、前記得られた積分された出力をデジタル化するアナログデジタル変換器と、
を有する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記相関器は、前記少なくとも1つの分岐部の前記デジタル化された積分された出力を受け取り、前記デジタル化された積分された出力に、部分的な圧縮センシング測定を適用する圧縮センシングプロセッサを更に有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記変換プロセッサは、前記部分的な圧縮測定シーケンスの集まりから前記総スペクトルの微分を回復する回復部と、前記微分を通じて積分処理を近似する積分部と、を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記回復部は、圧縮センシング回復処理を適用するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記積分部は、前記微分を通じて累積的な合計を計算するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
ラジオネットワークに関するスペクトルを検知する方法であって、
a)特定の遅延において受信信号の部分的な自己相関を測定し、前記部分的な自己相関を部分的な圧縮測定シーケンスに変換するステップと、
b)フュージョンセンタにおける収集のために、前記部分的な圧縮測定シーケンスを送るステップと、
を含む方法。
【請求項10】
ラジオネットワークに関するスペクトルを検知する方法であって、
a)ラジオ信号の部分的な圧縮測定シーケンスの集まりを受け取るステップと、
b)前記受け取られた部分的な圧縮測定シーケンスの集まりから、前記ラジオ信号の総スペクトルを回復するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
ラジオネットワークに関するスペクトルを検知するシステムであって、
請求項1に記載の装置を有する少なくとも2つのネットワークノードと、
請求項2に記載の装置を有する少なくとも1つのネットワークノードと、
を有し、請求項2に記載の前記装置が前記フュージョンセンタを有する、システム。
【請求項12】
前記部分的な自己相関を測定するために請求項1に記載の前記装置に設けられる処理分岐の数は、個々のネットワークノードの処理能力に依存して異なり、前記システムの請求項1に記載のすべての装置に設けられるすべての処理分岐の合計は、前記総スペクトルの周波数分解能に対応する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
コンピュータ装置上でランするとき、請求項9又は10に記載の方法の各ステップを生成するコード手段を含むコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−502269(P2012−502269A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525651(P2011−525651)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053753
【国際公開番号】WO2010/026514
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 60, NL−5656 AG Eindhoven, Netherlands
【Fターム(参考)】