説明

分散剤とその製造方法、及びそれを用いた顔料組成物

【課題】 本発明の課題は、分散性に優れ、同時に展色物の耐薬品性に優れ、さらには展色物を熱硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現させる分散剤を提供することである。
【解決手段】ビニル系重合体主鎖(A)内に、下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)を、ビニル系重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下の量で含み、かつ、一般式(51)〜(55)の少なくとも1つで表される架橋性官能基含有単位(I)を含むことを特徴とするビニル系分散剤。

一般式(1):
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、流動性、及び保存安定性に優れ、同時に展色物の耐薬品性に優れ、さらには展色物を熱硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現される分散体を製造することのできる分散剤とその製造方法、及びそれを用いた顔料組成物に関する。
【0002】
一般に、インキ等を製造する場合、顔料を安定に高濃度で分散することが難しく、製造工程や製品そのものに対して種々の問題を引き起こすことが知られている。
【0003】
例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、悪い場合は保存中にゲル化を起こし、使用困難となることさえある。更に展色物の表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じる。また、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0004】
そこで一般的には分散状態を良好に保つために分散剤が利用されている。分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は被分散物である顔料の表面状態に合わせ種々のものが使用されているが、塩基性に偏った表面を有する顔料には酸性の分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、酸性官能基が顔料の吸着部位となる。
【0005】
酸性の官能基としてリン酸基やスルホン酸基を有する分散剤が知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2)。これらは高い分散能力を持ち合わせ、ある程度少ない使用量で低粘度の顔料分散体をつくることができる。しかしながら、保存安定性が悪い場合や、リン酸基やスルホン酸基由来の欠点、例えば相溶性の悪さ(製造時にも問題)、耐熱性の低さ、又は耐薬品性の低さなどで利用上問題を生じる場合があり、このようなリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤は、応用するインキや塗料などへの展開性に乏しかった。
【0006】
酸性の官能基としてカルボン酸基を有する分散剤は、リン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤が抱える問題はないが、分散能力において劣る傾向があり、使用量を多くしてもリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤を用いたときのような低粘度化は難しかった。
【0007】
近年、カルボン酸基を用い、分散剤としての能力を向上させた分散剤が提案されている。カルボン酸基を有するアクリル樹脂をブロック共重合させた例や、カルボン酸基を有するアクリル樹脂にポリエステル、ポリエーテル、若しくはポリウレタンなどをグラフトさせた例である(例えば、特許文献3又は特許文献4)。
【0008】
これらは、従来のカルボン酸基を有する分散剤に比べれば高い分散能力を有してはいるものの、リン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤に比べると分散能力としては低く、低粘度で安定な分散体をつくるためには、ある程度の量で使用することが必要であった。
【0009】
一方で、顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有するシナジストを顔料組成物に混合する方法が、特許文献5、特許文献6及び特許文献7等に提案されている。しかし、これだけでは必ずしも満足な効果が得られず、上記のような酸性基や塩基性基を置換基として有するシナジストに対して、更にその対イオンを有する分散剤を使用することが提案されている(例えば、特許文献8又は特許文献9)。ここで、シナジストとは顔料を形成する色素の化学構造に似た構造を有し、顔料に対してπ―π相互作用で強固に吸着し、シナジストが含有するイオン性官能基によって顔料の表面を酸性若しくは塩基性にして、対イオンを有する分散剤若しくは顔料担体の効果を大きくするものである。
【0010】
特許文献8には、塩基性基を置換基として有するシナジストと、リン酸基を有する分散剤とを含む顔料組成物の例示がある。リン酸基を有する分散剤は塩基性基を置換基として有するシナジストとの併用である程度の顔料分散能力を有するが、保存安定性が悪い場合や、リン酸由来の欠点、例えば耐熱性の低さ、耐薬品性の低さ、相溶性の悪さなどで問題を生じる場合があった。これは、スルホン酸を有する分散剤も同様である。このようなリン酸基や、スルホン酸基を有する分散剤を用いた顔料組成物は、応用するインキや塗料などへの展開性に乏しく、一方、従来のカルボン酸を用いた分散剤と塩基性基を置換基として有するシナジストとの組合せた顔料組成物では、耐熱性、耐薬品性、相溶性の点については問題がないが、粘度が高い、安定性が悪い、顔料微分散化不良など、問題があるものであった。
【特許文献1】特許第2633075号公報
【特許文献2】特許第2747769号公報
【特許文献3】特開2005−194487号公報
【特許文献4】特許第3049407号公報
【特許文献5】特開昭63−305173号公報
【特許文献6】特開平1−247468号公報
【特許文献7】特開平3−26767号公報
【特許文献8】特開昭63−248864号公報
【特許文献9】特開平9−176511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、分散性に優れ、同時に展色物の耐薬品性に優れ、さらには展色物を熱硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現させる分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、高い分散能力を有するカルボン酸基含有分散剤の開発を鋭意研究していたところ、特定の構造を有するカルボキシル基含有単位と架橋性官能基をビニル系重合体主鎖内(例えば、アクリル系重合体主鎖内)に導入することによって、分散性に優れ、同時に展色物の耐薬品性に優れ、さらには展色物を熱硬化した後に優れた耐薬品性、耐溶剤性を発現させる分散剤を得ることができることを見出した。さらに、また、本発明者は、前記のビニル系重合体分散剤を包含する広範な構造を有する分散剤を製造する有利な方法も新たに見出した。
【0013】
本発明の好ましい形態は、ビニル系分散剤〔以下、ビニル系分散剤(a)と称することがある〕は、ビニル系重合体主鎖(A)内に、下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)を、ビニル系重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下の量で含み、かつ、一般式(51)〜(55)の少なくとも1つで表される架橋性官能基含有単位(I)を含むことを特徴とする、ビニル系分散剤である。
【0014】

一般式(1):
【化1】

【0015】
{一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、
は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
は、一般式: −(−Ra1−O−)m1− で表される基であり、
(式中、Ra1は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm1は1〜50の整数である。)
は、一般式: −(−C(=O)−Rb1−O−)m2− で表される基であり、
(式中、Rb1は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm2は0〜20の整数である。)
は、下記一般式(2)で表される基であるか、あるいは下記一般式(3)で表される基である。}

【0016】
一般式(2)
【化2】

【0017】
〔一般式(2)中、
(i)A〜Aのうちの1つが水素原子であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(ii)A〜Aのうちの1つが−C(=O)OR(但し、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(iii)A〜Aのうちの1つが下記一般式(2a)で表される基であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、あるいは、
(iv)A〜Aの3つが−C(=O)OHであり、kは1又は2である。〕
【0018】
一般式(2a)
【化3】

【0019】
〔一般式(2a)中、
21は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
22は、一般式: −(−Ra21−O−)m21− で表される基であり、
(式中、Ra21は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm21は1〜50の整数である。)
23は、一般式: −(−C(=O)−Rb21−O−)m22− で表される基であり、
(式中、Rb21は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm22は0〜20の整数である。)
21は、一般式(21)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(B)である。
前記ビニル系重合体主鎖(A)と前記ビニル系重合体主鎖(B)とは同一の主鎖であるか、あるいは、それぞれ別の主鎖であることができる。〕
【0020】
一般式(21)
【化4】

【0021】
〔一般式(21)中、R21は水素原子又はメチル基である。〕

【0022】
一般式(3)
【化5】

【0023】
〔一般式(3)中、
(v)A〜Aのうち1つは水素原子であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(vi)A〜Aのうち1つは−C(=O)OR(但し、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(vii)A〜Aのうちの1つが下記一般式(3a)で表される基であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、あるいは、
(viii)A〜Aの3つが−C(=O)OHであり、
は、直接結合、−CH−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)OCHCHOC(=O)−、−C(=O)OCH(OC(=O)CH)CHOC(=O)−、−SO−、−C(CF−、式(70)で表される基、又は式(71)で表される基である。〕
【0024】
一般式(3a)
【化6】

【0025】
〔一般式(3a)中、
31は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
32は、一般式: −(−Ra31−O−)m31− で表される基であり、
(式中、Ra31は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm31は1〜50の整数である。)
33は、一般式: −(−C(=O)−Rb31−O−)m32− で表される基であり、
(式中、Rb31は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm32は0〜20の整数である。)
31は、下記一般式(31)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(C)である。
前記ビニル系重合体主鎖(A)と前記ビニル系重合体主鎖(C)とは同一の主鎖であるか、あるいは、それぞれ別の主鎖であることができる。〕
【0026】
一般式(31)
【化7】

【0027】
〔一般式(31)中、R31は水素原子又はメチル基である。〕

【0028】
式(70)
【化8】



【0029】
式(71)
【化9】




【0030】
一般式(51)
【化10】

【0031】
〔式中、R51は水素原子又はメチル基であり、
は、−C(=O)− 若しくは −C(=O)−ORa51 若しくは−Ph51−Rb51− で表される基であり、
(式中、Ra51及びRb51は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
Ph51は、フェニレン基である。)
は、−O−N=CRc51d51 若しくは、式(72)若しくは、式(73)で表される基である。〕
(Rc51及びRd51は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であるか、又は、Rc51とRd51とが一体となって炭素数3〜8の環状構造を表す。)、
【0032】
式(72)
【化11】

【0033】
(Re51、Rf51、及びRg51は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基である。)、
【0034】
式(73)
【化12】

【0035】
(n51は、1〜8の整数である。)

【0036】
一般式(52)
【化13】

【0037】
〔式中、R52は水素原子又はメチル基であり、
a52は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
b52は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。〕、
【0038】
一般式(53)
【化14】

【0039】
〔式中、R53は水素原子又はメチル基である。〕、
【0040】
一般式(54)
【化15】

【0041】
〔式中、R54及びRc54は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
a54及びRb54は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基である。〕

【0042】
一般式(55):
【化16】

【0043】
〔式中、R55及びRd55は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
a55は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
b55は、式: −(−Rb55−O−)m55− で表される基であり、
(式中、Rb55は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm55は1〜50の整数である。)
c55は、式: −(−C(=O)−Rc55−O−)n55− で表される基であり、
(式中、Rc55は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、そしてn55は0〜20の整数である。)
は、−C(=O)− 若しくは −Re51O−C(=O)− 若しくは−Rf51−Ph51− で表される基である。
(式中、Re55、Rf55は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
Ph51は、フェニレン基である。)〕
【0044】
本発明のビニル系分散剤(a)の好ましい態様においては、一般式(2)におけるA〜Aが前記組合せ(i)であるか、あるいは、一般式(3)におけるA〜Aが前記組合せ(v)である。
【0045】
本発明のビニル系分散剤(a)の別の好ましい態様においては、一般式(2)におけるA〜Aが前記組合せ(iii)であるか、あるいは、一般式(3)におけるA〜Aが前記組合せ(vii)である。
【0046】
本発明のビニル系分散剤(a)の更に別の好ましい態様においては、一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)のYが、一般式(2)で表される基である。
【0047】
本発明のビニル系分散剤(a)の更に別の好ましい態様においては、ビニル系分散剤が、下記一般式(4)で示される。
【0048】
一般式(4)
【化17】

【0049】
〔一般式(4)中、
Gは、請求項1に記載の一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)を示し、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、芳香族基、又は−C(=O)−X−R(但し、Xは、−O−若しくは−NH−であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記Rは、置換基として芳香族基を有していることができる)であり、
は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
は、式: −(−Ra2−O−)m3− で表される基であり、
(式中、Ra2は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm3は1〜50の整数である)
は、式: −(−C(=O)−Rb4−O−)m4− で表される基である。
(式中、Rb2は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、そしてm4は0〜20の整数である)
Iは、請求項1に記載の一般式(51)〜(55)の少なくとも1つで表される架橋性官能基含有単位(I)を示す。
一般式(4)中の前記カルボキシル基含有単位(G)、−X−X−X−Hを含む水酸基含有単位(J)、−C(R)(R)−を含む主鎖構成単位(K)、及び架橋性官能基含有単位(I)の配置は、ランダム型又はブロック型で含まれていることができ、
一般式(4)中に含まれている前記カルボキシル基含有単位(G)、前記水酸基含有単位(J)、前記主鎖構成単位(K)、及び前記架橋性官能基含有単位(I)は、一般式(4)で表されるビニル系重合体主鎖において、任意の順序で含まれていることを示し、更に、それらが複数個で存在する場合は、相互に同一又は異なっていることができる。
p1、p2、p3、及びp4はビニル系分散剤一分子あたりの各構成単位の平均個数を示し、p1は0.3以上3.0以下であり、p2は0以上180以下であり、p3は6以上250以下であり、p4は0.1以上180以下である。〕
【0050】
本発明のビニル系分散剤(a)の更に別の好ましい態様においては、数平均分子量が500以上40000以下である。
【0051】
また、本発明の別の形態は、顔料と、前記ビニル系分散剤(a)とを含む、顔料組成物である。
【0052】
本発明の顔料組成物の好ましい態様においては、更に、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる塩基性シナジスト少なくとも一種を含む。
【0053】
また、本発明の別の形態は、前記ビニル系分散剤(a)の製造方法である。
【0054】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第1の形態において、
(A)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させてエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(B)前記工程(A)で得られるエチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体とを共重合させる工程
を含む。
【0055】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第2の形態において、
(C)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と他のエチレン性不飽和単量体と共重合する工程、及び
(D)前記工程(C)で得られる共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む。
【0056】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第3の形態において、
(E)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む。
【0057】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第4の形態において、
(F)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合する工程、
(G)前記工程(F)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
を含む。
【0058】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第5の形態において、
(H)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合する工程、
(I)前記工程(H)で得られる共重合物のエポキシ基に、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程、
(J)前記工程(I)で得られる共重合物の水酸基に、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む。
【0059】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第6の形態において、
(K)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を共重合する工程、
(L)前記工程(K)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
を含む。
【0060】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第7の形態において、
(M)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(N)前記工程(M)で得られるエチレン性不飽和単量体(但し、未反応の水酸基が残っているものとする)を共重合させる工程、
(O)前記工程(N)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
を含む。
【0061】
本発明のビニル系分散剤の製造方法の第8の形態において、
(P)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(Q)前記工程(P)で得られるエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させる工程、
(R)前記工程(Q)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
を含む。
【0062】
前記各製造方法の好ましい態様においては、反応させる酸無水物がトリメリット酸無水物又は芳香族テトラカルボン酸二無水物である。
【発明の効果】
【0063】
本発明の前記ビニル系分散剤(a)を顔料組成物に使用することにより、低使用量で、分散性、流動性、及び保存安定性を得ることができ、同時に展色物の耐熱性、及び耐薬品性が得ることができ、さらには展色物を熱硬化した後に優れた耐溶剤性、耐アルカリ性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明は、ビニル系重合体主鎖内(例えば、アクリル系重合体主鎖内)に、前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)〔特には、一般式(1)における基Y〕を、ビニル系重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下含むことを特徴とし、一般式(51)〜(55)で表される架橋性官能基含有単位(I)を含むことを特徴とするビニル系分散剤(a)に関する。
【0065】
一般に、顔料分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まるということは先に説明した。つまり、分散性を発現させるためには、分散剤の顔料に吸着する性能と分散媒である溶剤への親和性がともに非常に重要である。前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)において、前記一般式(2)又は前記一般式(3)で表されるYは、芳香族環の環構成炭素原子に直接に結合するカルボキシル基2個又は3個を有しており、この芳香族環の環構成炭素原子に直接に結合する複数のカルボキシル基が顔料の吸着部位となる。しかしながら、Yがカルボキシル基1個をのみ有する場合(本発明の範囲外)では、高い分散性、流動性、及び保存安定性を発現せず好ましくない。
【0066】
本発明による前記ビニル系分散剤(a)は、1分子中に一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)〔特には、一般式(1)における基Y〕を平均0.3個以上3.0個以下含むことが重要である。更に好ましくは0.35個以上2.0個以下、最も好ましくは0.4個以上1.5個以下である。0.3個より少ない場合、顔料に吸着する部位が少なく、結果として分散能力が低下する。また、3.0個より多い場合、顔料に吸着する部位が多くなりすぎて、逆に分散性の低下を招く場合がある。
【0067】
一般式(1)において、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から、一般式(1)は、Xが−C(=O)O−である下記一般式(1’)であることが好ましく、更に、Ra1は炭素原子数1〜4の炭化水素基(例えば、メチレン基、エチレン基、直鎖状若しくは分岐状プロピレン基、又は直鎖状若しくは分岐状ブチレン基)であることが好ましく、m1は1〜10であることが好ましく(更に好ましくは1〜3)、Rb1は、ペンタメチレン基であることが好ましく、m2は0〜5であることが好ましい(更に好ましくは0〜3)。
【0068】
一般式(1’)
【化11】

【0069】
特に、Yは、一般式(2)中のA〜Aのうちの1つが水素原子であって、他の2つが−C(=O)OH基である組合せであるか、あるいは、一般式(3)中のA〜Aのうちの1つが水素原子であって、他の2つが−C(=O)OH基である組合せであることが好ましい。
【0070】
また、別の態様としては、一般式(2)中のA〜Aのうちの1つが一般式(2a)で表される基であって、他の2つが−C(=O)OHである組合せであるか、あるいは、一般式(3)中のA〜Aのうちの1つが一般式(3a)で表される基であって、他の2つが−C(=O)OHである組合せであることが好ましい。このような組合せを含む、本発明のビニル系分散剤の一態様は、例えば、下記一般式(4A)で表すことができる。
【0071】
一般式(4A):
【化12】

【0072】
〔一般式(4A)中、曲線部分はビニル系重合体主鎖を描写したものであり、
及びX〜Xは、前記一般式(1)における各基と同じ意味であり、
11及びX11〜X13は、それぞれ、前記一般式(1)におけるR及びX〜Xと同じ意味であり(但し、R11とR、X11とX、X12とX、X13とXは、それぞれ、互いに独立しているものとする)、
は、下記一般式(2’)又は、下記一般式(3’)で表される4価の有機残基であり、
〜Eは、ビニル系重合体主鎖の末端を示す。ここで、E末端若しくはE末端は、E末端又はE末端と結合していてもよい。ただし、E末端とE末端とが同時に同じ末端に結合することはない。〕

【0073】
一般式(2’)
【化13】

【0074】
〔一般式(2’)中、k’は1又は2である〕
【0075】
一般式(3’)
【化14】

【0076】
〔一般式(3’)中、R2’は、前記一般式(3)における基Rと同じ意味である〕

【0077】
前記一般式(4A)において、E末端若しくはE末端が、E末端又はE末端と結合している場合、例えば、前記一般式(2a)において、ビニル系重合体主鎖(B)がビニル系重合体主鎖(A)と同一主鎖であるか、あるいは、前記一般式(3a)において、ビニル系重合体主鎖(C)がビニル系重合体主鎖(A)と同一主鎖である場合、
そのビニル系重合体主鎖内に、下記一般式(4B)で表される主鎖構成単位を含む。
【0078】
一般式(4B)
【化15】

【0079】
〔式中、R及びX〜X、R11及びX11〜X13、並びにYは、前記一般式(4A)における各基と同じ意味であり、
m41は、0以上430以下である。
41及びR42は、下記一般式(4b)で表される主鎖構成単位(B)として、ビニル系重合体主鎖を構成可能な構成単位、例えば、一般式(51)〜(55)で表される架橋性官能基含有単位(I)、後述の一般式(4j)で表される水酸基含有単位(J)若しくは一般式(4k)で表される主鎖構成単位(K)、又は一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)を構成する。但し、一般式(1)において、一般式(2)中のA〜Aがいずれも一般式(2A)で表される基ではなく、一般式(3)中のA〜Aがいずれも一般式(3A)で表される基でないものとする。〕

【0080】
一般式(4b)
【化16】

【0081】
前記一般式(4A)において、E末端若しくはE末端が、いずれも、E末端又はE末端と結合していない場合、例えば、前記一般式(2a)において、ビニル系重合体主鎖(B)がビニル系重合体主鎖(A)と異なる主鎖であるか、あるいは、前記一般式(3a)において、ビニル系重合体主鎖(C)がビニル系重合体主鎖(A)と異なる主鎖である場合、
ビニル系重合体主鎖(A)に関する本明細書の記載は、Z21:すなわち、一般式(21)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(B)、又はZ31:すなわち、一般式(31)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(C)、についても、当業者の技術常識に従って、そのまま適用することができる。
【0082】
更に、一般式(1)においては、Yは一般式(2)で表される基であることが好ましく、更に好ましくはkが1である場合である。また、Yが一般式(3)で表される場合、Rは、直接結合、−C(=O)OCHCHOC(=O)−、又は下記式(70)で表される基であることが好ましい。
【0083】
式(70)
【化17】



【0084】
本発明による前記ビニル系分散剤(a)としては、前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)と、下記一般式(4j)で表される水酸基含有単位(J)と、下記一般式(4k)で表される主鎖構成単位(K)と一般式(51)〜(55)のいずれかで表される架橋性官能基含有単位(I)との各構成単位からなるブロック共重合体又はランダム共重合体を挙げることができる。
【0085】
一般式(4j)
【化18】

【0086】
〔一般式(4j)中、R、X、X、及びXは、前記と同じ意味である〕

【0087】
一般式(4k)
【化19】

【0088】
〔一般式(4k)中、R及びRは、前記と同じ意味である〕

【0089】
従って、本発明による好ましい前記ビニル系分散剤(a)は、前記一般式(4)又は一般式(4a): −〔G〕p1−〔J〕p2−〔K〕p3−〔I〕p4− (4a)
で表される共重合体である。
【0090】
ここで、Gは、前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位であり、Jは、前記一般式(4j)で表される水酸基含有単位であり、Kは、前記一般式(4k)で表される主鎖構成単位であり、Hは前記一般式(51)〜(55)のいずれかで表される架橋性官能基含有単位であり、p1は0.3以上3.0以下(好ましくは0.35以上2.0以下、更に好ましくは0.4以上1.5以下)、p2は0以上180以下(好ましくは0.05以上50以下)、p3は6以上250以下(好ましくは10以上100以下)、p4は0.1以上180以下(好ましくは0.5以上100以下、更に好ましくは2以上50以下)である。
【0091】
また、前記一般式(4a)において、カルボキシル基含有単位(G)と水酸基含有単位(J)と主鎖構成単位(K)と架橋性官能基含有単位(I)とは、それぞれ、ブロック共重合形式又はランダム共重合形式で存在することができる。更に、前記カルボキシル基含有単位(G)、前記水酸基含有単位(J)、及び主鎖構成単位(K)、架橋性官能基含有単位(I)は、前記一般式(4a)中に、それぞれ複数個で存在することができる。この場合は、それぞれの単位が相互に同一又は異なっていることができる。例えば、主鎖構成単位(K)が2種又はそれ以上の構造の構成単位を含んでいることができる。
【0092】
なお、一般式(4a)におけるカルボキシル基含有単位(G)、水酸基含有単位(J)、主鎖構成単位(K)、及び架橋性官能基含有単位(I)の配置は、〔G〕p1、〔J〕p2、及び〔K〕p3、〔H〕p4をこの順序で含むことを意味するものではなく、各単位G、J、及びK、Hを、それぞれ、任意の順序で含むことができることを意味するものである。
【0093】

前記一般式(4)又は一般式(4a)で表される本発明による前記ビニル系分散剤(a)に含まれる水酸基含有単位(J)において、
は−C(=O)O−であることが好ましく、
a2は炭素原子数1〜4の炭化水素基(例えば、メチレン基、エチレン基、直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基又は直鎖状若しくは分岐状のブチレン基)であることが好ましく、
m3は1〜10であることが好ましく、更に好ましくは0〜3であり、
b4は、ペンタメチレン基であることが好ましく、
m4は0〜5であることが好ましく、更に好ましくは0〜3である。
【0094】
前記ビニル系分散剤(a)は、前記主鎖構成単位(K)として、Rがメチル基であり、Rが−C(=O)−O−CH−Ar(但し、Arは芳香族基、特にはフェニル基である)である主鎖構成単位(K1)を含むことが好ましい。この主鎖構成単位(K1)は、ビニル重合体一分子あたり平均で1個以上100個以下の量で有していることが好ましく、この態様の前記ビニル系分散剤(a)は、分散能力に優れる。
【0095】
更に、ビニル系分散剤(a)は、前記主鎖構成単位(K)として、Rが水素原子又はメチル基であり、Rが−C(=O)−O−R(但し、Rは炭素原子数2〜12の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である)である主鎖構成単位(K2)を含むことが好ましい。この主鎖構成単位(K2)は、前記ビニル系分散剤(a)内において、前記主鎖構成単位(K1)と共存するのが、より好ましい。
【0096】
前記ビニル系分散剤(a)は、前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)に加え、一般式(51)〜(55)のいずれかで表される架橋性官能基含有単位(I)を含むことが必須である。
【0097】
これにより、本発明による前記ビニル系分散剤(a)は、その展色物を熱硬化した後に優れた耐溶剤性、耐アルカリ性を得ることができる。これは、架橋性官能基含有単位(I)が焼きつけにより架橋するため、耐溶剤性、耐アルカリ性が格段に向上するためである。
【0098】
一般式(51)〜(55)で表される架橋性官能基含有単位(I)は、ビニル重合体一分子あたり平均で0.5個以上100個以下の量で有していることが好ましく、2個以上50個以下の量で有していることが更に好ましい。0.5個以下であれば、架橋の効果が少なく、100個以上であれば、ビニル重合体の親水性が高くなりすぎて分散性が悪くなる。
【0099】
また、一般式(51)〜(53)で表される架橋性官能基含有単位(I)は、水酸基もしくはカルボキシル基と組み合わせることによりいっそう効果が得られる場合がある。
【0100】
一般式(51)で表される架橋性官能基含有単位は、水酸基と併用するとより好ましい。一般式(51)で表される架橋性官能基はブロックイソシアネートであり、高温でブロックが外れ、イソシアネートが水酸基と架橋反応する。
【0101】
ビニル重合体一分子あたり平均で、一般式(51)で表される架橋性官能基含有単位がa個、水酸基含有単位がb個とすると、
a×bが2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0102】
一般式(52)で表される架橋性官能基含有単位は、単独でも架橋の効果は得られるが、カルボキシル基と併用するとより好ましい。一般式(52)で表される架橋性官能基はオキセタンであり、高温では、自己重合し、またカルボキシル基と架橋反応する。
【0103】
ビニル重合体一分子あたり平均で、一般式(52)で表される架橋性官能基含有単位がc個、カルボキシル基含有単位がd個とすると、
c×dが2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0104】
一般式(53)で表される架橋性官能基含有単位は、水酸基と併用すると好ましく、一般式(52)で表される架橋性官能基含有単位と併用しても好ましい。一般式(53)で表される架橋性官能基は、高温でターシャリーブチル基が外れ、カルボキシル基になる。このカルボキシル基が、高温で水酸基と架橋反応し、オキセタンとも架橋反応する。
【0105】
ビニル重合体一分子あたり平均で、一般式(53)で表される架橋性官能基含有単位がe個、水酸基含有単位がb個とすると、e×bが2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
ビニル重合体一分子あたり平均で、一般式(53)で表される架橋性官能基含有単位がe個、カルボキシル基含有単位がd個とすると、
e×dが2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0106】
ビニル系分散剤(a)の主鎖の末端は、公知のエチレン性不飽和単量体の重合方法、又は重合過程で考えられる構造、例えば、重合開始剤由来、連鎖移動剤由来、溶剤由来、又はエチレン性不飽和単量体由来の化学構造などを有してよい。
【0107】
本発明によるビニル系分散剤(a)の数平均分子量は、500以上40000以下であることが好ましく、更に好ましくは1000以上20000以下、最も好ましくは1500以上16000以下である。数平均分子量が500未満であっても、40000を超えても分散性、又は流動性の低下を招く場合がある。
【0108】
本発明による前記ビニル系分散剤(a)は、例えば、下の製造方法1〜8で製造することができる。
【0109】
製造方法1:
(A)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させてエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(B)該エチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体〔一般式(51)〜(53)中に示されるいずれかの架橋性官能基(すなわち、一般式(51)〜(53)で表される架橋性官能基含有単位から主鎖構成部分を除いた部分)を有するエチレン性不飽和単量体を含む。〕とを共重合させる工程
からなる。
【0110】
製造方法2:
(C)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体〔一般式(51)〜(53)中に示されるいずれかの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む。〕と共重合する工程、
(D)該共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
からなる。
【0111】
製造方法3:
(E)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体〔一般式(51)〜(53)中に示されるいずれかの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む。〕と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を同時に反応させる工程
からなる。
【0112】

更に、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(54)又は(55)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基のいずれかを含む場合には以下の製造方法4〜8を例示することができる。
【0113】

製造方法4:
(F)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを(好ましくは他のエチレン性不飽和単量体と共に)共重合する工程、
(G)前記工程(F)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
からなる。
【0114】
前記工程(G)において、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、前記工程(F)で得られる共重合物のカルボキシル基と反応し、一般式(54)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基を生じさせる。一方、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)は、共重合物の水酸基と反応する。
【0115】
また、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(51)〜(53)に示されるいずれかの架橋性官能基をも含む場合は、工程(F)でこれらの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合する。
【0116】
製造方法5:
(H)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを(好ましくは他のエチレン性不飽和単量体と共に)共重合する工程、
(I)前記工程(H)で得られる共重合物のエポキシ基に、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程、
(J)前記工程(I)で得られる共重合物の水酸基に、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
からなる。
【0117】
前記工程(I)において、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、前記工程(H)で得られる共重合物のエポキシ基と反応し、一般式(54)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基を生じさせる。
【0118】
また、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(51)〜(53)に示されるいずれかの架橋性官能基をも含む場合は、工程(H)でこれらの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合する。
【0119】
製造方法6:
(K)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を(好ましくは他のエチレン性不飽和単量体と共に)共重合する工程、
(L)前記工程(K)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
からなる。
【0120】
前記工程(L)において、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物は、前記工程(K)で得られる共重合物の水酸基と反応し、一般式(55)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基を生じさせる。一方、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)も、共重合物の水酸基と反応する。
【0121】
また、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(51)〜(53)に示されるいずれかの架橋性官能基をも含む場合は、工程(K)でこれらの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合する。
【0122】
製造方法7:
(M)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(N)前記工程(M)で得られるエチレン性不飽和単量体(但し、未反応の水酸基が残っているものとする)を(好ましくは他のエチレン性不飽和単量体と共に)共重合させる工程、
(O)前記工程(N)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
からなる。
【0123】
製造方法7では、前記工程(O)において、一般式(55)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基が形成される。また、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(51)〜(53)に示されるいずれかの架橋性官能基をも含む場合は、工程(N)でこれらの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合する。
【0124】
製造方法8:
(P)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(Q)前記工程(P)で得られるエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを(好ましくは他のエチレン性不飽和単量体と共に)共重合させる工程、
(R)前記工程(Q)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
からなる。
【0125】
製造方法8では、前記工程(R)において、一般式(54)に示される、不飽和結合を有する架橋性官能基が形成される。また、本発明のビニル系分散剤(a)が架橋性官能基として、一般式(51)〜(53)に示されるいずれかの架橋性官能基をも含む場合は、工程(Q)でこれらの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合する。
【0126】
前記の製造方法で使用される水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)としては、水酸基を有し、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体であればどのようなものでも構わないが、具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−(または3−または4−)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−(または3−または4−)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテルが挙げられる。
【0127】
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルあるいはヒドロキシアルキルアリルエーテルにアルキレンオキサイド及び/又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明で用いる製造方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の併用系が用いられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0128】
トリカルボン酸無水物(M3)としては、まず、脂肪族トリカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸無水物、又は多環式トリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0129】
脂肪族トリカルボン酸無水物としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸−1,2−無水物、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0130】
芳香族トリカルボン酸としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物)など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0131】
また、本発明で用いる製造方法では、後述するテトラカルボン酸二無水物(M4)において1分子のうちの1個の酸無水物を水、炭素原子数1〜18のアルコールあるいは炭素原子数5〜18のシクロアルコール(例えばメタノール、エタノール、直鎖状若しくは分岐状のプロパノール、直鎖状若しくは分岐状のブタノール、直鎖状若しくは分岐状のペンタノール若しくはシクロペンタノール、直鎖状若しくは分岐状のヘキサノール若しくはシクロヘキサノール、直鎖状若しくは分岐状のヘプタノール若しくはシクロヘプタノール、直鎖状若しくは分岐状のオクタノール若しくはシクロオクタノール、直鎖状若しくは分岐状のノナノール若しくはシクロノナノール、直鎖状若しくは分岐状のデカノール若しくはシクロデカノール、直鎖状若しくは分岐状のドデカノール若しくはシクロドデカノール、直鎖状若しくは分岐状のミリスチルアルコール若しくはシクロミリスチルアルコール、直鎖状若しくは分岐状のセチルアルコール若しくはシクロセチルアルコール、直鎖状若しくは分岐状のステアリルアルコール若しくはシクロステアリルアルコールなどが挙げられる)で開環したテトラカルボン酸モノ無水物、及びテトラカルボン酸モノエステルモノ無水物も、本発明で用いる製造方法において、トリカルボン酸無水物(M3)として用いることができる。本明細書では、脂肪族テトラカルボン酸モノエステルモノ無水物は、脂肪族トリカルボン酸無水物、芳香族テトラカルボン酸モノエステルモノ無水物は、芳香族トリカルボン酸無水物、多環式テトラカルボン酸無水物モノエステルモノ無水物は、多環式トリカルボン酸無水物として説明する。これらテトラカルボン酸無水物モノエステルモノ無水物の具体例は、後述するテトラカルボン酸二無水物から当業者には自明である。
【0132】
テトラカルボン酸二無水物(M4)としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は多環式テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0133】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0134】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物などを挙げることができる。
【0135】
多環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物などを挙げることができる。
【0136】
本発明で用いる製造方法1について更に詳細に説明する。
【0137】
本発明で用いる製造方法1では、まず水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを反応させる工程(A)を行う。この工程(A)は、単量体が熱重合してしまわないように、乾燥空気を反応装置内に流しながら、重合禁止剤を添加して、80℃〜150℃で行うのが好ましい。より好ましくは90℃〜130℃である。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0138】
工程(A)で水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)とを反応させる場合、反応比率は「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)のモル数/トリカルボン酸無水物(M3)のモル数」が0.8以上10以下であることが好ましい。より好ましくは0.9以上5以下、更に好ましくは0.95以上2以下である。0.8未満であると、トリカルボン酸無水物(M3)が残存するため好ましくない。10を超えると、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)が大量に残り、後の工程(B)で共重合できる他のエチレン性不飽和単量体の量が減り好ましくない。
【0139】
工程(A)で水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とテトラカルボン酸二無水物(M4)とを反応させる場合、反応比率は「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)のモル数/テトラカルボン酸二無水物(M4)のモル数」が0.5以上10.0以下であることが好ましい。より好ましくは1.0以上5.0以下である。0.5未満であると、テトラカルボン酸二無水物(M4)が多く残存するため好ましくない。10を超えると、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)が大量に残り、後の工程(B)で共重合できる他のエチレン性不飽和単量体の量が減り好ましくない。
【0140】
工程(A)では触媒を用いてもかまわない。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0141】
更に、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とテトラカルボン酸二無水物(M4)を「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)のモル数/テトラカルボン酸二無水物(M4)のモル数」が2.0未満で反応させた場合、この時点で残存する酸無水物基を水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させ〔工程(Aa)〕、不要な酸無水物基の除去を容易にすることができる。
【0142】
続いて、製造方法1では、工程(A)で合成したエチレン性不飽和単量体と、他のエチレン性不飽和単量体〔一般式(51)〜(53)のいずれかの架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含んでもよい〕とを共重合させる工程(B)を行う。
【0143】
工程(A)で用いる他のエチレン性不飽和単量体としては、芳香族基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、炭素原子数1〜18のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)(工程(A)で残存したものを含む)、及び一般式(51)〜(53)で表される架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体から選択されるエチレン性不飽和単量体が共重合されるのが好ましい。
【0144】
非置換のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のプロピル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のブチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のオクチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のノニル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のデシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のドデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のミリスチル(メタ)アクリレート、シクロミリスチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のセチル(メタ)アクリレート、シクロセチル(メタ)アクリレート、及び直鎖状若しくは分岐状のステアリル(メタ)アクリレート、又はシクロステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族環で置換されたアルキル(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0145】
非置換のN−アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−プロピル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ブチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ペンチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロペンチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘプチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロオクチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ノニル(メタ)アクリルアミド、N−シクロオクチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−デシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロデシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロドデシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロミリスチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−セチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロセチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ステアリル(メタ)アクリルアミド、又はN−シクロステアリル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。芳香族環で置換されたアルキル(メタ)アクリレートとしては、N−ベンジル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを示し、(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミド又はアクリルアミドを示す。
【0146】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸二量体、アクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)、及びメタクリル酸のカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)などが挙げられる。
【0147】
また、一般式(51)で表される架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、カレンズMOI−BM、カレンズMOI−BP(昭和電工製)などが挙げられる。
【0148】
一般式(52)で表される架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ETERNACOLL OXMA(宇部興産製)などが挙げられる。
【0149】
一般式(53)で表される架橋性官能基を有するエチレン性不飽和単量体としては、t−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0150】
工程(B)では、反応容器を窒素置換しながら重合開始剤を用い、50℃〜150℃で重合するのが好ましい。重合開始剤としては、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。これらのうちアゾ化合物が使用されるのが好ましい。重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部使用される。
【0151】
工程(B)では連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、α−メチルスチレン二量体が挙げられる。
【0152】
工程(B)では、溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、キシレン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類などを用いることができる。
【0153】
工程(A)の後で、工程(Aa)を行っていない場合、工程(B)の後に残存する酸無水物を水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる〔工程(Bb)〕。工程(Aa)、若しくは工程(Bb)では、残存する酸無水物のモル数に対し、反応させる水又は炭素原子数1〜18のアルコールのモル数は、0.9倍以上5倍以下(好ましくは1倍以上2倍以下)であることが好ましい。0.9倍未満では反応性の高い酸無水物基が多く残り、5倍を超えると水又は炭素原子数1〜18のアルコールが多く残存し、どちらにしても、インキや塗料へ用途展開した場合、問題となる場合がある。但し、残存する酸無水物のモル数に対し、反応させる水又は炭素原子数1〜18のアルコールを1倍を超えて反応させた場合は、反応後残存する水又は炭素原子数1〜18のアルコールを加熱、又は減圧して取り除くことができる。反応工程(Aa)、若しくは工程(Bb)は80〜150℃で行うことが好ましい。
【0154】
次に、本発明で用いる製造方法2について詳細に説明する。
【0155】
本発明で用いる製造方法2では、まず、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合する工程(C)を行う。他のエチレン性不飽和単量体としては、製造方法1の工程(B)で例示した芳香族環で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、芳香族環で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体から選択されるエチレン性不飽和単量体が共重合されるのが好ましい。
【0156】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と他のエチレン性不飽和単量体との共重合比は、重合後の一分子に平均で少なくとも0.3個以上177個以下の水酸基が入るように決められる。
【0157】
工程(C)での、重合開始剤の種類、連鎖移動剤の種類、溶剤の種類、量、反応温度などの重合条件は、製造方法1の工程(B)と同様であることが好ましい。
【0158】
続いて、製造方法2では、工程(C)で得られた共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程(D)を行う。工程(D)では、窒素又は乾燥空気を反応容器に流しながら、80℃〜150℃で行うことが好ましい。ここで、製造方法1の工程(A)で例示した触媒を用いることもできる。
【0159】
製造方法2の工程(D)でテトラカルボン酸二無水物(M4)を使用した場合で、酸無水物基が残存する場合は製造方法1の工程(Bb)と同じ方法により、水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる〔工程(Dd)〕。
【0160】
次に、本発明で用いる製造方法3について詳細に説明する。
【0161】
本発明で用いる製造方法3では、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を同時に反応させる。反応は、窒素を反応容器に流しながら、80℃〜150℃で行うことが好ましく、水酸基と酸無水物の反応の触媒としては製造方法1の工程(A)に示したもの、重合開始剤の種類、連鎖移動剤の種類、溶剤の種類、量、反応温度などの重合条件は、製造方法1の工程(B)で示したものが好ましい。
【0162】
製造方法3で用いる他のエチレン性不飽和単量体とは、製造方法2の工程(C)で用いる化合物と同じものを示す。製造方法3でも、酸無水物基が残存する場合は製造方法1の工程(Bb)と同じ方法により、水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる〔工程(Ee)〕。
【0163】
これら製造方法1〜3により、本発明で用いるビニル系分散剤(a)を製造することができる。このうち、製造方法2が分散剤一分子中のカルボキシル基含有単位(G)の個数を制御するのが容易である点で好ましい。製造方法2の工程(C)で得られた共重合物の数平均分子量を予め測ることができ、その値に合わせてトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる量を決定できるからである。例えば、製造方法2でビニル系分散剤(a)を製造するには、工程(C)で得られた共重合物の数平均分子量を測定し、その測定値が[X]であった場合、トリカルボン酸無水物(M3)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.3モル以上3.0モル以下のトリカルボン酸無水物(M3)を反応させれば良い。一方、テトラカルボン酸二無水物(M4)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.15モル以上1.5モル以下のテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させれば良い。これは、テトラカルボン酸二無水物(M4)は酸無水物基を2つ有するため、工程(C)で得られた共重合物二分子を橋掛けするためトリカルボン酸無水物(M3)を使用する場合の半分の量で良いためである。
【0164】
また、工程(D)でテトラカルボン酸二無水物(M4)を使用する場合で、工程(C)で得られた共重合物一分子に含まれる水酸基の個数が1.1個以上の場合、共重合体に含まれる水酸基の全量〈OH〉と、テトラカルボン酸二無水物(M4)に含まれる酸無水物基の全量〈AH〉との比:〈OH〉/〈AH〉の値が0.9未満であるか、又は1.1以上であることが好ましい。〈OH〉/〈AH〉の値が0.9以上1.1未満の範囲であると、ビニル系分散剤(a)が本発明の好適な数平均分子量の上限40000を超える場合がある。
【0165】
製造方法1又は3により、本発明で用いるビニル系分散剤(a)を製造する場合は、最終的に得られるビニル系分散剤(a)の数平均分子量[Y]と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)の仕込みモル数とから逆算して、結果としてビニル系分散剤(a)が[Y]gに対して0.3モル以上3.0モル以下のトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)が反応させられていればよい。
【0166】
本発明の製造方法でビニル系分散剤(a)を製造する場合、トリカルボン酸無水物(M3)を使用する場合は、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、更にはトリメリット酸無水物が好ましい。また、上記のうちテトラカルボン酸二無水物(M4)を使用する場合は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いるのが好ましく、更に好ましくはピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0167】
製造方法1〜3のどの方法においてもビニル系分散剤(a)を製造する場合、他のエチレン性不飽和単量体として、分岐を有してもよい非置換の炭素原子数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートと、ベンジル(メタ)アクリレートと、必要に応じ水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)、必要に応じスチレンと、必要に応じカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とが共重合されるのが好ましい。更に、ビニル系分散剤(a)の一分子中に分岐を有してもよい非置換の炭素原子数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが1〜50個、ベンジル(メタ)アクリレートが1〜50個共重合されるのが好ましい。
【0168】
また、本発明で用いるビニル系分散剤(a)には、これまで例示した以外の種々のエチレン性不飽和単量体も分散性を妨げない範囲で共重合させることが可能であり、例えば、イソシアナト基、ブロックイソシアナト基、アルコキシシリル基、3〜5員環の環状エーテル基などの熱架橋性基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させることができる。
【0169】
列挙した前記出発材料から適宜選択した出発材料を用いることによって、本発明で用いる前記製造方法により、前記ビニル系分散剤(a)を調製することができる。
【0170】
前記ビニル系分散剤(a)と顔料(P)を用いて、本発明の顔料組成物が得られる。ここで、ビニル系分散剤(a)を使用することにより分散性、流動性、及び保存安定性に優れた顔料組成物となる。
【0171】
本発明に使用する顔料(P)は、インキ等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料としては溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー6,15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,ピグメントオレンジ13,36,37、38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。但し、例示には限定されない。
【0172】
また、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。
【0173】
本発明のビニル系分散剤は上記顔料に限らず、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、及び/又はこれらの合金などの金属微粒子を含む固体微粒子の分散に使用することができる。
【0174】
本発明の顔料組成物には、更に塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体及び塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれる少なくとも一種の塩基性シナジスト(Y)を含むことが好ましい。
【0175】
ここで、顔料誘導体とは、前記のカラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、特定の置換基を導入したものであり、本発明では塩基性基を有するものを使用する。
【0176】
塩基性シナジスト(Y)を含むことにより、塩基性シナジスト(Y)なしでは分散の難しい顔料(特に、有機顔料の場合)も、分散性、流動性、保存安定性に優れた顔料組成物とすることができ好ましい。ビニル系分散剤(a)と塩基性シナジスト(Y)との相乗効果で顔料(P)を効果的に分散性、流動性、保存安定性に優れた顔料組成物とすることができる。
【0177】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性シナジスト(Y)は、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体及び塩基性基を有するトリアジン誘導体の群から選ばれるものである。
【0178】
本発明の顔料組成物において用いることのできる塩基性シナジスト(Y)の塩基性基は、下記一般式(61)、一般式(62)、一般式(63)、及び一般式(64)で示される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。
【0179】
一般式(61)
【化20】

【0180】
〔式中、X61:−SO−、−CO−、−CHNHCOCH−、−CH−又は直接結合を表す。
61:1〜10の整数を表す。
a61、Rb61:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はRa61とRb61とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。〕
【0181】
一般式(62)
【化21】

【0182】
〔式中、Ra62、Rb62:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はRa62とRb62とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。〕
一般式(63)
【0183】
【化22】

【0184】
〔式中、X63:−SO−、−CO−、−CHNHCOCH−、−CH−又は直接結合を表す。
a63:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
b63、Rc63、Rd63、Re63:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。〕
【0185】
一般式(64)
【化23】

【0186】
〔式中、X64:−SO−、−CO−、−CHNHCOCH−、−CH−又は直接結合を表す。
64:−NRa64−Z64−NRb64−又は直接結合を表す。
a64、Rb64:それぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
64:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基を表す。アルキレン基及びアルケニレン基の炭素数は1〜8が好ましい。
64:下記一般式(65)で示される置換基又は下記一般式(66)で示される置換基を表す。
64:水酸基、アルコキシル基、前記一般式(62)で示される置換基又は前記一般式(63)で示される置換基を表す。〕
【0187】
一般式(65):
【化40】

【0188】
〔式中、r65:1〜10の整数を表す。
a65、Rb65:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はRa65とRb65とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。〕
【0189】
一般式(66):
【化41】

【0190】
〔式中、Ra66:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
b66、Rc66、Rd66、Re66:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。〕

前記一般式(61)で示される置換基として好ましい形態は、X61が−SO−又はC(=O)−であり、p61が1〜5(更に好ましくは2〜4)であり、Ra61及びRb61がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基であるか、Ra61とRb61と式中の窒素原子とが一緒になってモルホリンを形成している場合である。
【0191】
前記一般式(62)で示される置換基として好ましい形態は、Ra62及びRb62がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基である場合である。
【0192】
前記一般式(63)で示される置換基として好ましい形態は、X63が−CHNHC(=O)CH−であり、Ra63がメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基又はiso−ブチル基であり、Rb63、Rc63、Rd63、Re63が水素原子の場合である。
【0193】
前記一般式(64)で示される置換基として好ましい形態は、X64が直接結合又はSO−であり、Y64が直接結合又はNH−Z64−NH−であり、Z64がフェニレン基であり、Q64が水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基であり、P64が前記一般式(8)で示される置換基であり、該P64中のX65が−SO−又はC(=O)−であり、該P64中のr65が1〜5(更に好ましくは2〜4)であり、該P64中のRa65及びRb65がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基である場合である。
【0194】
式(61)〜式(66)で示される置換基を形成するために使用される窒素原子の由来としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0195】
塩基性基を有する顔料誘導体を構成する有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の色素である。また、塩基性基を有するアントラキノン誘導体及び塩基性基を有するアクリドン誘導体は、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基又は塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0196】
また、塩基性基を有するトリアジン誘導体を構成するトリアジンは、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、及びフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0197】
前記塩基性基を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体及びアクリドン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素、アントラキノン若しくはアクリドンに式(11)〜式(14)で示される置換基を導入した後、上記置換基と反応して式(61)〜式(66)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミン又は4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
【0198】
式(11):−SOCl
式(12):−C(=O)Cl
式(13):−CHNHC(=O)CHCl
式(14):−CHCl
【0199】
式(11)〜式(14)で示される置換基と上記アミン成分との反応の際に、式(11)〜式(14)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素原子が水酸基に置換したものが混在していてもよい。その場合、式(11)又は式(12)で示される置換基は、それぞれスルホン酸基又はカルボン酸基となるが、何れも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属又は上記のモノアミンとの塩であってもよい。
【0200】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、前記式(61)〜式(66)で示される置換基を予めジアゾ成分又はカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0201】
前記塩基性基を有するトリアジン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(61)〜式(66)で示される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン又はN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミン又はアルコール等を反応させることによって得られる。
【0202】
本発明の顔料組成物において、塩基性シナジスト(Y)の配合量は、顔料(P)100重量部に対し好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは5〜25重量部である。顔料(P)100重量部に対し塩基性シナジスト(Y)が1重量部未満であると分散性が悪くなる場合があり、50重量部を超えると耐熱性、耐光性が悪くなる場合がある。また、ビニル系分散剤(a)の配合量は、顔料(P)100重量部に対し好ましくは0.1〜100重量部、更に好ましくは0.5〜75重量部、最も好ましくは1.0〜50重量部である。顔料(P)100重量部に対しビニル系分散剤(a)が0.1重量部未満であると分散性が悪くなる場合があり、100重量部を超えるとこれも分散性が悪くなる場合がある。
【0203】
本発明の顔料組成物は、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、顔料組成物をワニスに分散させてなる顔料分散体を調製することができる。顔料(P)、塩基性シナジスト(Y)、ビニル系分散剤(a)、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料(P)と塩基性シナジスト(Y)とのみ、あるいは、塩基性シナジスト(Y)とビニル系分散剤(a)とのみ、あるいは、顔料(P)と塩基性シナジスト(Y)とビニル系分散剤(a)とのみを分散し、次いで、他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。
【0204】
また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機を使用した前分散、2本ロールミル等による固形分散、又は顔料(P)への塩基性シナジスト(Y)及び/又はビニル系分散剤(a)の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が、顔料分散体を製造するために利用できる。前記の顔料分散体に用いることができる各種溶剤としては、有機溶剤、水等が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化型組成物に用いる場合、活性エネルギー線硬化性の液状モノマーや液状オリゴマーを溶剤代わりの媒体として用いてもよい。
【0205】
また、前記の顔料分散体に用いることができる樹脂の例としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン変性マレイン酸、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0206】
一般に、着色塗膜として塗工する用途で顔料分散体を使用する場合、樹脂成分としては顔料分散剤以外に主成分となる樹脂を含む場合が多い。これは、一般に顔料分散剤は造膜性が低く、顔料分散剤のみを上記の顔料分散体の主成分として用いると、塗膜の外観が悪くなったり、基材への濡れが悪くはじいたりすることがある。市販分散剤であるBYK-111(ビックケミー製)などのポリカプロラクトンやポリエチレンオキサイドなどを主骨格とする顔料分散剤の場合、これに該当する。
【0207】
本発明のビニル系分散剤(a)は、非常に造膜性が高く、顔料分散体に用いられる樹脂として他の樹脂を用いずに使用することができる。
【0208】
そのため、顔料分散剤として通常の添加量より多く使用することができる。さらに、本発明のビニル系分散剤(a)は、架橋性官能基を有しているため、硬化剤を添加しなくても、耐溶剤性の高い着色塗膜を得ることができる。
【0209】
前記の顔料分散体は、非水系、水系、又は無溶剤系の塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インキジェットインキ、カラーフィルタ用インキ、ブラックマトリックス用インキ、デジタルペーパー用インキ、プラスチック着色剤等に利用できる。このうち、インキジェットインキ、カラーフィルタ用インキ及びブラックマトリックス用インキに好適である。特にカラーフィルタ用インキ及びブラックマトリックス用インキについては、例えば、フォトリソグラフィー法、平版印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、及びインキジェット印刷法などの多くの印刷法に適合するインキに好適に利用できる。
【実施例】
【0210】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。また、数平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
【0211】

《合成例1》
(1)工程(C)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート28.5部、ベンジルメタクリレート48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部、ETERNACOLL OXMA(宇部興産製)20部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数1個であるビニル系樹脂中間体(X1)を得た。
【0212】
(2)工程(D)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(X1)を固形分で100部、トリメリット酸無水物5.1部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた(実施例2の工程D)。
このようにして、数平均分子量が4000であり、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散剤(A1)を得た。
【0213】
《合成例2》
(1)工程(C)
合成例(1)と同じ方法で、あるビニル系樹脂中間体(X1)を得た。
(2)工程(D)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(X1)を固形分で100部、ピロメリット酸無水物2.9部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた。
このようにして、数平均分子量が6000であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が0.8個であるビニル系分散剤(A2)を得た。
【0214】
《合成例3》〜《合成例8》
実施例1、2と同様にして、ビニル系樹脂中間体(X3)〜ビニル系樹脂中間体(X8)を合成し、ビニル系分散剤(A3)〜ビニル系分散剤(A8)を得た。
【0215】

《合成例9》
(1)工程(A)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にピロメリット酸二無水物218部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を仕込み、乾燥空気を流しながら100℃で5時間反応させ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにピロメリット酸が付加したエチレン性不飽和単量体(a12’)を得た。
(2)工程(Aa)
前項(1)で得られたエチレン性不飽和単量体(a12’)に水36部を加え、90℃で5時間反応させることにより、前記エチレン性不飽和単量体(a12’)に残存する酸無水物基を加水分解した。続いて、残存する水を減圧して取り除き、エチレン性不飽和単量体(a12)を得た。
(3)工程(B)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にメトキシプロピルアセテート60部を仕込み、110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート23.3部、ベンジルメタクリレート48部、エチレン性不飽和単量体(a12)8.7部、ETERNACOLL OXMA(宇部興産製)20部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして数平均分子量が4000であり、一分子あたりのエチレン性不飽和単量体(a12)の平均共重合個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散樹脂(A12)を得た。
【0216】

《合成例10》〜《合成例12》
実施例12と同様にして、エチレン性不飽和単量体(a13)〜エチレン性不飽和単量体(a15)を合成し、ビニル系分散剤(A13)〜ビニル系分散剤(A15)を得た。
【0217】

《合成例13》
(1)工程(F)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート32.6部、ベンジルメタクリレート54.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.0部、メタクリル酸8.6部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数1個であるビニル系樹脂中間体(F1)を得た。
【0218】
(2)工程(G)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(F1)を固形分で100部、グリシジルメタクリレートを14.2部、及びジメチルベンジルアミン0.3部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で8時間反応させた。
【0219】
酸価が5以下になることを確認し、ビニル系樹脂中間体(G1)を得た。このとき、メタクリル酸にグリシジルメタクリレートを反応させた部位は、全体の20部となっており、n−ブチルメタクリレート28.5部、ベンジルメタクリレート48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部となっている。
【0220】
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(G1)を固形分で100部、ピロメリット酸二無水物2.9部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で6時間反応させた。
【0221】
このようにして、数平均分子量が6000であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が0.8個であるビニル系分散剤(A15)を得た。
【0222】

《合成例14》
(1)工程(H)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート30.8部、ベンジルメタクリレート51.9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.8部、グリシジルメタクリレート13.5部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数1個であるビニル系樹脂中間体(F3)を得た。
【0223】
(2)工程(I)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(F3)を固形分で100部、メタクリル酸を8.2部、及びジメチルベンジルアミン0.3部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で8時間反応させた。
酸価が5以下になることを確認し、ビニル系樹脂中間体(G3)を得た。このとき、グリシジルメタクリレートにメタクリル酸を反応させた部位は、全体の20部となっており、n−ブチルメタクリレート28.5部、ベンジルメタクリレート48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部となっている。
【0224】
(3)工程(J)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(G3)を固形分で100部、ピロメリット酸二無水物2.9部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で6時間反応させた。
このようにして、数平均分子量が6000であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が0.8個であるビニル系分散剤(A17)を得た。
【0225】

《合成例15》
(1)工程(K)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート32.0部、ベンジルメタクリレート53.9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート14.2部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数1個であるビニル系樹脂中間体(F2)を得た。
【0226】
(2)工程(L)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(F2)を固形分で100部、カレンズMOI(昭和電工製)を12.2部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で8時間反応させた。
酸価が5以下になることを確認し、ビニル系樹脂中間体(G2)を得た。このとき、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにカレンズMOI(昭和電工製)を反応させた部位は、全体の20部となっており、n−ブチルメタクリレート28.5部、ベンジルメタクリレート48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部となっている。
【0227】
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(G2)を固形分で100部、ピロメリット酸二無水物2.9部を仕込み、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で6時間反応させた。
【0228】
このようにして、数平均分子量が6000であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が0.8個であるであるビニル系分散剤(A16)を得た。
【0229】

《合成例16》
(1)工程(M)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にピロメリット酸二無水物218部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を仕込み、乾燥空気を流しながら100℃で5時間反応させ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにピロメリット酸が付加したエチレン性不飽和単量体(m18’)を得た。
(2)工程(Ma)
前項(1)で得られたエチレン性不飽和単量体(m18’)に水36部を加え、90℃で5時間反応させることにより、前記エチレン性不飽和単量体(m18’)に残存する酸無水物基を加水分解した。続いて、残存する水を減圧して取り除き、エチレン性不飽和単量体(m18)を得た。
【0230】
(3)工程(N)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にメトキシプロピルアセテート60部を仕込み、110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート33.3部、ベンジルメタクリレート48部、エチレン性不飽和単量体(m18)8.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして数平均分子量が4000であり、一分子あたりのエチレン性不飽和単量体(m18)の平均共重合個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散樹脂(N1)を得た。
【0231】
(4)工程(O)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(N1)を固形分で100部、カレンズMOIを11.9部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で8時間反応させた。
酸価が5以下になることを確認し、反応を終了した。このようにして、数平均分子量が4500であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散剤(A18)を得た。
【0232】

《合成例17》
(1)工程(P)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にピロメリット酸二無水物218部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部を仕込み、乾燥空気を流しながら100℃で5時間反応させ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにピロメリット酸が付加したエチレン性不飽和単量体(p19’)を得た。
(2)工程(Pa)
前項(1)で得られたエチレン性不飽和単量体(p19’)に水36部を加え、90℃で5時間反応させることにより、前記エチレン性不飽和単量体(p19’)に残存する酸無水物基を加水分解した。続いて、残存する水を減圧して取り除き、エチレン性不飽和単量体(p19)を得た。
【0233】
(3)工程(Q)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽にメトキシプロピルアセテート60部を仕込み、110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート35.3部、ベンジルメタクリレート48部、エチレン性不飽和単量体(p19)8.7部、メタクリル酸8部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして数平均分子量が4000であり、一分子あたりのエチレン性不飽和単量体(a19)の平均共重合個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散樹脂(Q1)を得た。
【0234】
(4)工程(R)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(N1)を固形分で100部、グリシジルメタクリレートを13.2部を仕込み、乾燥空気を流しながら、100℃で8時間反応させた。
酸価が5以下になることを確認し、反応を終了した。このようにして、数平均分子量が4500であり、一分子あたりのピロメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散剤(A19)を得た。
【0235】

《製造例1》
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、n−ブチルメタクリレート48.5部、ベンジルメタクリレート48部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。
このようにして、数平均分子量が3800であり、一分子中の水酸基の平均個数1個であるビニル系樹脂中間体(X11)を得た。
【0236】
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、ビニル系樹脂中間体(X11)を固形分で100部、トリメリット酸無水物5.1部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた(実施例2の工程D)。
このようにして、数平均分子量が4000であり、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個であるビニル系分散剤(B1)を得た。
【0237】
《製造例2》〜《製造例4》
《製造例1》と同様にして、ビニル系分散剤(B2)〜ビニル系分散剤(B4)を得た。
【0238】
《製造例5》
工程Dで、ビニル系樹脂中間体(X1)を固形分で100部に対し、無水トリメリット酸を5.1部反応させる代わりに、無水コハク酸を2.6部反応させた以外は、《合成例1》と同様に合成を行い、ビニル系分散剤(B5)を得た。
【0239】

《製造例6》
工程Dで、ビニル系樹脂中間体(X1)を固形分で100部に対し、無水トリメリット酸を5.1部反応させる代わりに、無水フタル酸を3.8部反応させた以外は、《合成例1》と同様に合成を行い、ビニル系分散剤(B6)を得た。
【0240】

《実施例1〜17及び比較例1〜8》
実施例1〜17で得られたビニル系分散剤(a)と、顔料として酸化チタン(和光純薬製)と、溶剤と、ガラスビーズ(0.8mm)とを表1及び表2に示す重量(g)比(全て固形分基準)で140mLのガラス瓶に仕込み、シェイカー(F&FM社製スキャンデックスSO400)(以下スキャンデックスと呼ぶ)に設置して3時間分散した。24時間25℃で放置後、下記の試験を行った。
更に、製造例1〜6で得られたアクリル系樹脂、又は市販の分散剤(比較例7)と、溶剤と、ガラスビーズ(0.8mm)とを表3に示す重量(g)比(全て固形分基準)で140mLのガラス瓶に仕込み、スキャンデックスにて3時間分散した。24時間25℃で放置後、下記の試験を行った。
【0241】
(1)粘度測定
得られた分散体について、直径60mm、角度0度59分のコーンプレートを用いた、コーンプレート型粘度計で、10rad/秒の回転速度で25℃での粘度を測定した。結果を表1〜表4に示す。
(2)経時保存安定性
得られた分散体について、50℃の恒温機に1週間保存して経時促進させた後、経時後の顔料分散体の粘度を前項(1)「粘度測定」と同じ方法で測定し、50℃で1週間保存した前後の粘度の変化率を計算し、以下の基準により2段階で評価した。
○:粘度変化率が±10%以内で、沈降物を生じなかった場合。
×:粘度変化率が±10%を超える場合、又は粘度変化率が±10%以内であっても沈降物を生じていた場合。
(3)耐溶剤性
得られた分散体をアルミ板の上に、バーコーター#3で塗装し、230℃オーブンで5分間焼き付けた。これを
これをMEKに15分間浸漬し、外観を目視で判定した。
○:外観に、特に変化が見られない場合。
△:外観に、若干の変化が見られる場合。
×:表面の光沢がなくなるなど、外観に大きく変化が見られる場合。
【0242】
【表1】

【0243】
【表2】

【0244】
【表3】

【0245】

【0246】
【表4】

【0247】

以上のように、本発明のビニル系分散剤(a)を用いて無機顔料である酸化チタンを分散した分散体は、低粘度で経時保存安定性も良好であった。一方、比較用のカルボキシル基含有ビニル系樹脂を用いた場合は、耐溶剤性が悪いか、粘度が高く、一部は経時保存安定性が悪かった(比較例1〜6)。また特許文献1の請求項の定義に含まれる市販のリン酸エステル含有分散剤(ビックケミー社製;Disperbyk−111)を用いた場合(比較例7)は、比較的低粘度の分散体を得ることができるが、経時保存安定性が悪く、耐溶剤性も悪かった。
【0248】

[塩基性シナジスト(Y)の製造例1]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロスルホン化した後、アミン成分であるN,N−ジエチルアミノプロピルアミン15部と反応させて塩基性シナジスト(Y1)62部を得た。塩基性シナジスト(Y1)は以下の構造式で表される。
【0249】
【化24】


CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
【0250】
[塩基性シナジスト(Y)の製造例2]
色素成分である銅フタロシアニン50部をクロロメチル化した後、アミン成分であるジブチルアミン40部と反応させて塩基性シナジスト(Y2)95部を得た。塩基性シナジスト(Y2)は以下の構造式で表される。
【0251】
【化25】


CuPcは、銅フタロシアニン残基を表す。
【0252】
[塩基性シナジスト(Y)の製造例3]
色素成分であるキナクリドン50部をクロロアセトアミドメチル化した後、アミン成分であるN−メチルピペラジン40部と反応させて塩基性シナジスト(Y3)103部を得た。塩基性シナジスト(Y3)は以下の構造式で表される。
【0253】
【化26】

【0254】
[塩基性シナジスト(Y)の製造例4]
色素成分としてジフェニルジケトピロロピロールを、アミン成分としてN−アミノプロピルモルホリンを使用し、製造例1と同様の方法により、塩基性シナジスト(Y4)を得た。塩基性シナジスト(Y4)は以下の構造式で表される。
【0255】
【化27】

【0256】
[塩基性シナジスト(Y)の製造例5〜6]
上記塩基性シナジスト(Y1)〜塩基性シナジスト(Y4)の製造例1〜4と同様の方法により、下記に示す塩基性シナジスト(Y5)〜塩基性シナジスト(Y6)、すなわち、顔料誘導体、アントラキノン誘導体及びアクリドン誘導体を得た。
【0257】
塩基性シナジスト(Y5):
【化28】

【0258】
塩基性シナジスト(Y6):
【化29】



【0259】
上記の塩基性シナジスト(Y1)〜(Y6)の製造例1〜6と同様の方法で、顔料成分、アントラキノン、アクリドン又はトリアジンと、アミン成分を反応することにより、又はアミン成分を有する化合物をカップリング反応して色素を合成することにより、種々の塩基性シナジスト(Y)を製造することができる。
【0260】
《実施例18》
顔料(P)としてPigment Blue 15:3を9部、塩基性シナジスト(Y1)を1部、ビニル系分散剤(A1)を5部、メトキシプロピルアセテート45部を、ガラス瓶に仕込んだ(仕込み量は全て固形分基準で行った)。ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ60部を分散メディアとして仕込み、スキャンデックスにて本分散を行い、顔料分散体を得た。
【0261】
得られた顔料分散体の粘度をB型粘度計で測定し、粘度で分散体の性能を評価した。6rpmでの粘度は15.0mPa・sであった。また、得られた顔料分散体を50℃の恒温機に1週間保存して、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定し、保存安定性を判断した。6rpmでの粘度は15.5mPa・sで変化率は3%であった。
【0262】
また、得られた分散体をアルミ板の上に、#5のバーコーターで塗工し、200℃で1時間焼き付け、着色塗膜を得た。これをテトラヒドロフランに1時間浸漬し、外観を目視で判定した。着色塗膜の外観に変化はなく、耐溶剤性は良好であった。
【0263】
さらに、この着色膜を濃度5%の食塩水に24時間浸漬し、耐薬品性を評価した。食塩水浸漬前後で着色塗膜の外観に変化はなく、耐薬品性は良好であった。
【0264】

《実施例19〜33及び比較例8〜26》
以下の表4〜表7に記載の成分(仕込み量は全て固形分基準で行った)を用い、実施例11と同様の操作で、それぞれ顔料分散体を得て、前記と同様の方法で評価した。なお、粘度は低いほど良好である。
【0265】
また、50℃の恒温機に1週間保存して経時促進させた後の粘度の変化率の評価基準は以下の通りである。
○:粘度変化率が±10%以内で、沈降物を生じなかった場合。
×:粘度変化率が±10%を超える場合、又は粘度変化率が±10%以内であっても沈降物を生じていた場合。
【0266】
得られた分散体をアルミ板の上に、#5のバーコーターで塗工し、200℃で1時間焼き付け、着色塗膜を得た。これをテトラヒドロフランに1時間浸漬し、外観を目視で判定した。
○:外観に、特に変化が見られない場合。
×:表面の光沢がなくなるなど、外観に変化が見られる場合。
【0267】
さらに、この着色膜を濃度5%の食塩水に24時間浸漬し、耐薬品性を評価した。
○:外観に、特に変化が見られない場合。
×:表面の光沢がなくなるなど、外観に変化が見られる場合。
【0268】
また、DB111は、市販分散剤(ビックケミー社製:Disperbyk−111)である。また、アルキド樹脂としては、日立化成社製「フタルキッド133−60」を用いた。
【0269】
【表5】

【0270】
【表6】

【0271】
【表7】

【0272】

Pigment Blue 15:3を使用した実施例18〜23では、本発明によるビニル系分散剤(a)を用いているので、粘度も低く、粘度安定性も良好、耐溶剤性も良好であることがわかる。一方、本発明によるビニル系分散剤(a)を使用していない比較例13では、粘度が高くなり、比較用のビニル系樹脂(B)を用いた比較例8では耐溶剤性が悪くなった。更に、塩基性シナジスト(Y)も本発明によるビニル系分散剤(a)も使用していない比較例14ではスキャンデックスでの分散時に高粘度化してビーズとの分離が不可能であった。
【0273】
他の顔料を用いた実施例24〜33、比較例17〜26においても、本発明のビニル系分散剤(a)及び顔料組成物による優れた効果が明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明による分散剤は、例えば、顔料分散液や顔料組成物の調製に有効に用いることができる。また、本発明の製造方法により、前記分散剤を効率的に調製することができる。
【0275】
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系重合体主鎖(A)内に、下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単位(G)を、ビニル系重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下の量で含み、かつ、一般式(51)〜(55)の少なくとも1つで表される架橋性官能基含有単位(I)を含むことを特徴とするビニル系分散剤。

一般式(1):
【化1】


{一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、
は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
は、一般式: −(−Ra1−O−)m1− で表される基であり、
(式中、Ra1は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm1は1〜50の整数である。)
は、一般式: −(−C(=O)−Rb1−O−)m2− で表される基であり、
(式中、Rb1は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm2は0〜20の整数である。)
は、下記一般式(2)で表される基であるか、あるいは下記一般式(3)で表される基である。}

一般式(2)
【化2】


〔一般式(2)中、
(i)A〜Aのうちの1つが水素原子であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(ii)A〜Aのうちの1つが−C(=O)OR(但し、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(iii)A〜Aのうちの1つが下記一般式(2a)で表される基であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、あるいは、
(iv)A〜Aの3つが−C(=O)OHであり、kは1又は2である。〕
一般式(2a)
【化3】


〔一般式(2a)中、
21は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
22は、一般式: −(−Ra21−O−)m21− で表される基であり、
(式中、Ra21は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm21は1〜50の整数である。)
23は、一般式: −(−C(=O)−Rb21−O−)m22− で表される基であり、
(式中、Rb21は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm22は0〜20の整数である。)
21は、一般式(21)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(B)である。
前記ビニル系重合体主鎖(A)と前記ビニル系重合体主鎖(B)とは同一の主鎖であるか、あるいは、それぞれ別の主鎖であることができる。〕
一般式(21)
【化4】


〔一般式(21)中、R21は水素原子又はメチル基である。〕

一般式(3)
【化5】


〔一般式(3)中、
(v)A〜Aのうち1つは水素原子であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(vi)A〜Aのうち1つは−C(=O)OR(但し、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、
(vii)A〜Aのうちの1つが下記一般式(3a)で表される基であって、他の2つは−C(=O)OHである組合せであるか、あるいは、
(viii)A〜Aの3つが−C(=O)OHであり、
は、直接結合、−CH−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)OCHCHOC(=O)−、−C(=O)OCH(OC(=O)CH)CHOC(=O)−、−SO−、−C(CF−、式(70)で表される基、又は式(71)で表される基である。〕
一般式(3a)
【化6】


〔一般式(3a)中、
31は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
32は、一般式: −(−Ra31−O−)m31− で表される基であり、
(式中、Ra31は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm31は1〜50の整数である。)
33は、一般式: −(−C(=O)−Rb31−O−)m32− で表される基であり、
(式中、Rb31は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm32は0〜20の整数である。)
31は、下記一般式(31)で表される基を含むビニル系重合体主鎖(C)である。
前記ビニル系重合体主鎖(A)と前記ビニル系重合体主鎖(C)とは同一の主鎖であるか、あるいは、それぞれ別の主鎖であることができる。〕
一般式(31)
【化7】


〔一般式(31)中、R31は水素原子又はメチル基である。〕

式(70)
【化8】



式(71)
【化9】




一般式(51)
【化10】


〔式中、R51は水素原子又はメチル基であり、
は、−C(=O)− 若しくは −C(=O)−ORa51 若しくは−Ph51−Rb51− で表される基であり、
(式中、Ra51及びRb51は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
Ph51は、フェニレン基である。)
は、−O−N=CRc51d51 若しくは、式(72)若しくは、式(73)で表される基である。〕
(Rc51及びRd51は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であるか、又は、Rc51とRd51とが一体となって炭素数3〜8の環状構造を表す。)、
式(72)
【化11】


(Re51、Rf51、及びRg51は、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基である。)、
式(73)
【化12】


(n51は、1〜8の整数である。)

一般式(52)
【化13】


〔式中、R52は水素原子又はメチル基であり、
a52は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
b52は、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。〕、
一般式(53)
【化14】


〔式中、R53は水素原子又はメチル基である。〕、
一般式(54)
【化15】


〔式中、R54及びRc54は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
a54及びRb54は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基である。〕

一般式(55):
【化16】


〔式中、R55及びRd55は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
a55は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
b55は、式: −(−Rb55−O−)m55− で表される基であり、
(式中、Rb55は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm55は1〜50の整数である。)
c55は、式: −(−C(=O)−Rc55−O−)n55− で表される基であり、
(式中、Rc55は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、そしてn55は0〜20の整数である。)
は、−C(=O)− 若しくは −Re51O−C(=O)− 若しくは−Rf51−Ph51− で表される基である。
(式中、Re55、Rf55は、それぞれ、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、
Ph51は、フェニレン基である。)〕
【請求項2】
一般式(2)におけるA〜Aが前記組合せ(i)であるか、あるいは、一般式(3)におけるA〜Aが前記組合せ(v)である、請求項1記載のビニル系分散剤。
【請求項3】
一般式(2)におけるA〜Aが前記組合せ(iii)であるか、あるいは、一般式(3)におけるA〜Aが前記組合せ(vii)である、請求項1記載のビニル系分散剤。
【請求項4】
一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)のYが、一般式(2)で表される基である、請求項1〜3のいずれ一項に記載のビニル系分散剤。
【請求項5】
ビニル系分散剤が、下記一般式(4)で示される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニル系分散剤。
一般式(4)
【化17】


〔一般式(4)中、
Gは、請求項1に記載の一般式(1)で示されるカルボキシル基含有単位(G)を示し、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、芳香族基、又は−C(=O)−X−R(但し、Xは、−O−若しくは−NH−であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記Rは、置換基として芳香族基を有していることができる)であり、
は、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−O−、−OC(=O)−若しくは−CHO−であり、
は、式: −(−Ra2−O−)m3− で表される基であり、
(式中、Ra2は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm3は1〜50の整数である)
は、式: −(−C(=O)−Rb4−O−)m4− で表される基である。
(式中、Rb2は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、そしてm4は0〜20の整数である)
Iは、請求項1に記載の一般式(51)〜(55)の少なくとも1つで表される架橋性官能基含有単位(I)を示す。
一般式(4)中の前記カルボキシル基含有単位(G)、−X−X−X−Hを含む水酸基含有単位(J)、−C(R)(R)−を含む主鎖構成単位(K)、及び架橋性官能基含有単位(I)の配置は、ランダム型又はブロック型で含まれていることができ、
一般式(4)中に含まれている前記カルボキシル基含有単位(G)、前記水酸基含有単位(J)、前記主鎖構成単位(K)、及び前記架橋性官能基含有単位(I)は、一般式(4)で表されるビニル系重合体主鎖において、任意の順序で含まれていることを示し、更に、それらが複数個で存在する場合は、相互に同一又は異なっていることができる。
p1、p2、p3、及びp4はビニル系分散剤一分子あたりの各構成単位の平均個数を示し、p1は0.3以上3.0以下であり、p2は0以上180以下であり、p3は6以上250以下であり、p4は0.1以上180以下である。〕
【請求項6】
数平均分子量が500以上40000以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のビニル系分散剤。
【請求項7】
顔料と、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤とを含む、顔料組成物。
【請求項8】
更に、塩基性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる塩基性シナジスト少なくとも一種を含む、請求項7記載の顔料組成物。
【請求項9】
(A)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させてエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(B)前記工程(A)で得られるエチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体とを共重合させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項10】
(C)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と他のエチレン性不飽和単量体と共重合する工程、及び
(D)前記工程(C)で得られる共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項11】
(E)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項12】
(F)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合する工程、
(G)前記工程(F)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項13】
(H)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合する工程、
(I)前記工程(H)で得られる共重合物のエポキシ基に、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程、
(J)前記工程(I)で得られる共重合物の水酸基に、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)を反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項14】
(K)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を共重合する工程、
(L)前記工程(K)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを、同時に、あるいは、任意の順序で反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項15】
前記ビニル系分散剤として、
(M)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(N)前記工程(M)で得られるエチレン性不飽和単量体(但し、未反応の水酸基が残っているものとする)を共重合させる工程、
(O)前記工程(N)で得られる共重合物の水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項16】
(P)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸二無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(Q)前記工程(P)で得られるエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させる工程、
(R)前記工程(Q)で得られる共重合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させる工程
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。
【請求項17】
反応させる酸無水物がトリメリット酸無水物又は芳香族テトラカルボン酸二無水物である、請求項9〜16のいずれか一項に記載のビニル系分散剤の製造方法。

【公開番号】特開2008−200664(P2008−200664A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43108(P2007−43108)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】