説明

分散剤

本発明は、式(1):T−V−(A)−U−Z−Wの分散剤を提供する。式(1)において、Tは、重合停止基であり;Vは、直接結合もしくは2価の連結基であり;Aは、1つ以上の異なるヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンの残基であり;Uは、直接結合もしくは2価の連結基であり;Zは、ポリアミンもしくはポリイミンの残基であり;Wは、酸化物もしくは尿素の残基であり;mは、2〜2000であり;Xは、1から、基T−V−(A)−U−を有しない、Zにおいて使用可能なアミノ基および/もしくはイミノ基の最大数までである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年12月23日に出願された仮出願番号60/638,634にしたがって、出願される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、有機媒質内で粒子状固体を分散させるための分散剤、ならびにミルベース、塗料およびインク(ジェットプリント用のインクを含む)に関連している。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特許文献の中には、ポリエステル鎖が結合したポリ(C2−4−アルキレンイミン)(本明細書の以下ではPAI)(例えば、ポリエチレンイミン(本明細書の以下ではPEI))から誘導されたポリエステルアミン分散剤を開示した非常に多くの刊行物がある。このポリエステル鎖は、特許文献1に開示されているように、12−ヒドロキシステアリン酸から誘導され得るか、または特許文献2および特許文献3に開示されているように、2つ以上の異なるヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンから誘導され得る。ポリアルキレンイミン中の任意のアミノ基および/もしくはイミノ基が酸素もしくは尿素のいずれかと反応されることによって、なおさらなる改良がなされ得ることが現在見出されている。改良としては、顔料分散剤の優れた流動性;酸触媒コーティング、エポキシコーティングおよびイソシアネートコーティングのプロセスにおける使用;ならびにUV光にさらされた場合の変色に対する耐性のうちの少なくとも一つが挙げられる。
【特許文献1】米国特許第4,224,212号明細書
【特許文献2】米国特許第5,700,395号明細書
【特許文献3】米国特許第6,197,877号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
ゆえに、本発明によれば、式(1)の分散剤が提供される:
【0005】
【化5】

ここで、
Tは、重合停止基であり;
Vは、直接結合もしくは2価の連結基であり;
Aは、1つ以上の異なるヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンの残基であり;
Uは、直接結合もしくは2価の連結基であり;
Zは、ポリアミンもしくはポリイミンの残基であり;
Wは、酸化物もしくは尿素の残基であり;
mは、2〜2000であり;
Xは、1から、基T−V−(A)−U−を有しない、Zにおいて使用可能なアミノ基および/もしくはイミノ基の最大数(Zの置換されていない原子価)までである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記で述べたような組成物を提供する。
【0007】
一つの実施形態において、Zに結合した少なくとも2つの基T−V−(A)−があり、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0008】
Vが2価の連結基である場合、一つの実施形態においては−CO−である。
【0009】
Tが重合停止基である場合、重合停止基としては、カルボン酸R−COOHの残基もしくはアルコールR−OHの残基が挙げられ、ここで、RはC1−50−ヒドロカルビルであり、これは必要に応じて置換される。
【0010】
一つの実施形態において、Rは40以下、あるいは30以下もしくは20以下の炭素原子を含む。
【0011】
Rは、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキルもしくはアルク(エン)イルであり得、これは直鎖状であっても分枝状であってもよい。一つの実施形態において、Rはアルキルである。
【0012】
Rがアリールである場合、アリールとしては、フェニルもしくはナフチルが挙げられ、これはC1−20−アルキル、C1−20−アルコキシ、ハロゲン、ニトリルもしくはフェノキシによって必要に応じて置換される。R−COOHの特定の例は、安息香酸もしくはナフタレン−2−カルボン酸である。R−OHの特定の例は、フェノール、2−ナフトール、4−オクチルフェノールおよび4−ノニルフェノールである。
【0013】
Rがアラルキルである場合、アラルキルとしては、フェニル酢酸、ナフトキシ酢酸、ベンジルアルコールもしくは2−ヒドロキシエチルフェニルが挙げられる。
【0014】
Rがヘテロ−アリールである場合、これはチエニルであり得る。
【0015】
Rがシクロアルキルである場合、シクロアルキルとしては、C3−8−シクロアルキルが挙げられ、その適切な例は、1つ以上のC1−6−アルキル基によって必要に応じて置換されたシクロプロピルもしくはシクロヘキシルである。
【0016】
本明細書の上記で述べたように、Rは必要に応じて置換されたアルキル(例えば、1つ以上のエーテル基を含むアルキル)である。R−COOHの適切な例は、メトキシ酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ラウリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−オクチルドデカン酸、および2−デシルテトラデカン酸である。このタイプの分枝したアルキルカルボン酸は、Isocarbという商標で入手可能(例えばCondea GmbH)であり、特定の例は、Isocarb 12、16、20、28、32、34Tおよび36である。このカルボン酸の多くが、混合物として市販されている。
【0017】
Rが置換された場合、この置換基は1つ以上のエーテル基をR−COOH内に、もしくは少なくとも2つのエーテル基を含み得る。このエーテル基は、プロポキシ基、エトキシ基もしくはブトキシ基(これらの混合物を含む)を含むポリC1−4−アルキレンオキシド鎖を構成し得る。一つの実施形態において、混合物はプロポキシ/エトキシポリエーテル鎖を含む。このポリエーテル鎖が1つより多くの異なるアルキレンオキシド単位を含む場合、エチレンオキシドの量はポリエーテル鎖の50重量%以上、70重量%以上もしくは90重量%以上であることが一般的である。一つの実施形態において、このポリエーテル鎖は専らエチレンオキシド単位から構成されている。
【0018】
R−COOHがポリエーテル鎖を含む場合、このポリエーテル鎖としては、ポリアルキレンオキシモノC1−24−アルキルエーテルが挙げられる。ポリエチレンオキシモノアルキルエーテルの重量平均分子量は、一つの実施形態においては、2000以下、1000以下もしくは600以下である。式R−O−(CHCHO)CHCOOHのモノアルキルエーテルカルボン酸は、Kao Chemicals GmbHのAkypoという商用名で入手可能である。特定の例は、Akypo LF1(RがC、q=5)、Akypo LF2(RがC、q=8)、Akypo RLM 25(RがC12/C14、q=2.5)、 Akypo RLM 45 CA(RがC12/C14、q=4.5)、Akypo RO 20 VG(RがC16/C18、q=2)およびAkypo RO 50 VG(RがC16/C18、q=5)である。
【0019】
R−OHの例は、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、オレイルアルコール、イソプロパノール、イソブタノール、tertブタノール、2−エチルブタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、3,7−ジメチルオクタノールおよびいわゆるGuerbetアルコール(例えば、Isofolという商用名で市販されている(例えばCondea GmbH)アルコール)(それらの混合物を含む)である。Guerbetアルコールの特定の例は、Isofol 12、14T、16、18T、18E、20、24、28、32、32Tおよび36である。
【0020】
一つの実施形態において、R−OH内のRは置換アルキル基であり、この置換アルキル基は1つ以上のエーテル基を含み、別の実施形態においては、2つ以上のエーテル基を含む。このエーテル基は、プロポキシ、エチレンオキシもしくはブチレンオキシの反復単位(これらの混合物を含む)を含むポリC1−4−アルキレンオキシ鎖を構成し得る。このポリエーテル鎖が1つより多くの異なるアルキレンオキシ反復単位を含む場合、エチレンオキシ単位は、一つの実施形態においてはポリエーテル鎖の50重量%以上、別の実施形態においてはポリエーテル鎖の70重量%以上、別の実施形態においてはポリエーテル鎖の90重量%以上で存在し得る。一つの実施形態において、このポリエーテル鎖はエチレンオキシ単位を単独で含む。一つの実施形態において、このタイプのアルコールは、ポリエチレンオキシモノC1−24−アルキルエーテル(例えば、C1−12−モノアルキルエーテルもしくはC1−6−モノアルキルエーテル)である。典型的に、モノメチルエーテルが、その入手可能性がゆえに使用される。ポリアルキレンオキシモノアルキルエーテルの重量平均分子量は、一つの実施形態においては2000以下であり、別の実施形態においては1000以下である。ポリエチレンオキシモノメチルエーテルの特定の例は、350、550および750の重量平均分子量を有する。ポリエーテルモノアルキルエーテルの他の例は、エチレンオキシドと反応されるGuerbetアルコールであり、このアルコールとしては、250〜750の重量平均分子量を有するものが挙げられる。
【0021】
Aが誘導されるヒドロキシカルボン酸は、一般的にヒドロキシ−C2−20−アルケニレンカルボン酸もしくはヒドロキシ−C1−20−アルキレンカルボン酸である。このアルク(エン)イレン基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。ヒドロキシカルボン酸の例は、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸、4−ヒドロキシデカン酸、10−ヒドロキシウンデカン酸(10−hydroxy undedanoic acid)、乳酸およびグリコール酸である。
【0022】
本明細書の上記で述べたように、Aはラクトンから誘導され得る。適切なラクトンの例は、β−プロピオラクトン、必要に応じてアルキル置換されたε−カプロラクトン、および必要に応じてアルキル置換されたδ−バレロラクトンである。ε−カプロラクトンおよびδ−バレロラクトン内のアルキル置換基としては、一つの実施形態において、C1−6アルキルもしくはC1−4アルキルが挙げられ、これらは直鎖状であっても分枝状であってもよい。適切なラクトンの例は、ε−カプロラクトン、ならびにその7−メチル−類似体、3−メチル−類似体、5−メチル−類似体、6−メチル−類似体、4−メチル−類似体、5−tertブチル−類似体、4,4,6−トリメチル−類似体および4,6,6−トリメチル−類似体である。
【0023】
ヒドロキシカルボン酸および/もしくはラクトンの混合物が使用され得る。
【0024】
必要に応じて置換されたε−カプロラクトンおよび1つ以上の他のラクトンからAが誘導された場合、このε−カプロラクトンは、一つの実施形態において、ラクトンの全量の50重量%以上、ラクトンの全量の70重量%以上もしくは90重量%以上で存在する。一つの実施形態において、Aはε−カプロラクトン自体から誘導される。
【0025】
R−COOHおよびヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの選択は、広い範囲にわたって多様であり得、粒子状固体および粒子状有機媒質の性質に依存する。この有機媒質が非極性である場合、しばしばこのヒドロキシカルボン酸は、カルボン酸基以外に8個以上の炭素原子を含む。非極性有機媒質用の有用な分散剤は、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸、4−ヒドロキシデカン酸から獲得され得る。一つの実施形態において、非極性有機媒質用の分散剤は、12−ヒドロキシステアリン酸もしくはリシノール酸から獲得され得る。非極性有機媒質の場合、8個以上の炭素原子を含むこれらのヒドロキシカルボン酸は、カルボン酸基以外に6個までの炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸もしくはそのラクトンとも混合され得る。一つの実施形態において、このような混合物中の6個までの炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸の量は、ヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの総量を基準として、50%以下もしくは30%以下である。ヒドロキシカルボン酸の混合物を含む非極性媒質用の有用な分散剤は、12−ヒドロキシステアリン酸とε−カプロラクトンとの混合物からAが誘導され得る分散剤、およびリシノール酸とε−カプロラクトンとの混合物から誘導され得る分散剤である。
【0026】
この有機媒質が極性もしくは樹脂複合材料である場合、Aは、一つの実施形態において、カルボン酸基以外に6個までの炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンから誘導され得る。ゆえに、極性有機媒質および樹脂複合材料用の分散剤の一つの重要なクラスは、Aがε−カプロラクトンから誘導され得る分散剤であり、このε−カプロラクトンはC1−6−アルキル置換されたε−カプロラクトン、C1−6−アルキル置換されたδ−バレロラクトンもしくはδ−バレロラクトン自体と混合され得る。一つの実施形態において、ε−カプロラクトンの量は、ヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの全量を基準として、50%以上もしくは70%以上である。
【0027】
分散剤のクラスの別の実施形態において、T−V−(A)−U−で表される異なるポリエステル鎖がZに結合され得、ここで、一つのポリエステル鎖は、カルボン酸基以外に8個以上の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸から誘導され得、第二のポリエステル鎖は、カルボン酸基以外に6個までの炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンから誘導され得る。このような分散剤は、極性および非極性の両方の有機媒質中でより高い有用性を提供するが、個々の有機媒質に対して特に設計されたものよりは有用性は低い。
【0028】
Uが二価の結合である場合、この結合は、Zが塩基性基もしくは塩基性基を含む部分である場合にはエチレン性(ethylenically)不飽和基の残基を含む。一つの実施形態において、エチレン性不飽和基を含む残基はヒドロキシ基を含み、この残基は、(メタ)アクリル酸(出願人は(xxxx)を使用して、置換基が必要に応じて存在することを示す(この場合、アクリルのベータ炭素上のメチル))から誘導される。エチレン性不飽和基およびヒドロキシ基を含む化合物の例は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社からのBlemmer PE、Blemmer PP)である。一つの実施形態において、このエチレン性不飽和基はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから誘導され得る。
【0029】
当業者は、アルコールROHから出発して、これを二塩基酸もしくは無水物との反応によってカルボン酸末端ポリマー(これは、アミン、ポリアミンもしくはポリイミンとその後反応され得る)に変換されて、この分散剤を式3のTPOAC酸から作製することも可能であることを理解する。このような分散剤は、VもしくはUが二塩基酸もしくは無水物の残基である式1の分散剤である。
【0030】
Zで表されるポリアミンの例は、ポリビニルアミンおよびポリアリルアミンである。
【0031】
このポリイミンは、一つの実施形態においては、ポリ(C2−6−アルキレンイミン)および、もしくはポリエチレンイミン(本明細書の以下ではPEI)である。このポリイミンは直鎖状であっても分枝状であってもよい。直鎖状ポリエチレンイミンは、ポリ(N−アシル)アルキレンイミンの加水分解によって調製され得る(例えば、Takeo SaegusaらによってMacromolecules、1972、Vol:5、4470ページに述べられている通り)。様々な分子量の分枝状ポリエチレンイミンは、BASFおよび日本触媒より市販されている。様々な分子量のポリアリルアミンおよびポリ−(N−アルキル)アリルアミンは、日東紡績より市販されている。様々な分子量のポリビニルアミンは、三菱化成(Mitsubishi Kasai)より入手可能である。ポリ(プロピレンイミン)デンドリマーはDSM Fine Chemicalsから市販されており、ポリ(アミドアミン)デンドリマーは、「Starburst」デンドリマーとしてAldrich Chemical Co.から入手可能である。
【0032】
ポリアミンもしくはポリイミンの数平均分子量は、一つの実施形態において、500〜600,000の範囲、あるいは1,000〜200,000の範囲、もしくは1,000〜100,000の範囲、あるいは1200〜約20,000もしくは100,000の範囲である。
【0033】
一つの実施形態において、mは1000以下もしくは100以下である(例えば、50以下もしくは20以下)。
【0034】
Qが尿素の残基である場合、尿素と反応する際のZにおける遊離のイミノ基もしくはアミノ基の数は、基T−V−(A)−Uを有しない、使用可能な窒素原子の最大数までの広い範囲にわたって多様であり得る。
【0035】
Qが酸化物の残基である場合、基T−V−(A)−Uを有しない、Zにおけるアミノ基またはイミノ基のうちのいずれかは、酸素(空気を含む)もしくは過酸化物(例えば、過酸化水素もしくは過硫酸アンモニウム)との反応により、N−酸化物に変換され得る。
【0036】
Tが酸R−COOHの残基であり、Vが直接結合である場合、この分散剤は、一つの実施形態において、式2の酸から誘導され得る:
【0037】
【化6】


【0038】
本明細書の以下では、これをTPOAC酸と呼ぶ。
【0039】
本発明による分散剤は典型的に、ポリアミンもしくはポリイミンに結合した式(3)の鎖を2つ以上有する:
【0040】
【化7】

ここで、T、V、A、Uおよびmは本明細書の上記で定義した通りである。
【0041】
式(3)で表されるそれぞれの鎖は、共有アミド結合−CON<(TPOAC酸の末端カルボニル基とポリアミンもしくはポリイミン中の一級窒素原子もしくは二級窒素原子との間に形成される)、もしくはイオン結合−COONH=(TPOAC酸の末端−COOH基とポリアミンもしくはポリイミン中の置換アンモニウム基の正に荷電した窒素原子との間に形成される)のいずれかを通して、ポリアミンもしくはポリイミンに結合され得る。この分散剤は2つ以上の鎖T−V−(A)−Uを含むので、これは、その調製において使用される反応条件に依存して、アミド結合と塩結合との混合物を含み得る。
【0042】
本発明の第一の局面の分散剤は、式(4)によって都合よく表され得る:
【0043】
【化8】

ここで、
X−−Xは、ポリアミンもしくはポリイミンを表し;
Yは、鎖T−V−(A)−Uを表し、これは同じであっても異なっていてもよく、これはアミドおよび/もしくは塩結合を通して結合され;
rは、2〜2000であり;そして
T、A、Bおよびmは本明細書中の上記で定義した通りである。
【0044】
一つの実施形態において、rは10以上である。別の実施形態において、rは1000以下もしくは500以下である。
【0045】
一つの実施形態において、YとX−−Xとの重量比は、30:1〜1:1もしくは20:1〜2:1である。
【0046】
一つの実施形態において、X−−Xはポリ(C2−4−アルキレンイミン)(PAI)もしくはポリエチレンイミン(PEI)を表す。
【0047】
このPAIは、一つの実施形態において、500〜600,000あるいは1,000〜200,000もしくは1,000〜100,000の数平均分子量を有し、例えば、1,200〜70,000である。
【0048】
本発明の第一の局面の分散剤は、典型的に、事前に形成されたTPOAC酸とポリアリルアミン、ポリビニルアミンもしくはPAIを、100〜150℃の温度でしばしば不活性雰囲気下で、反応させることにより作製される。
【0049】
このTPOAC酸は、一つの実施形態において、(a)ヒドロキシカルボン酸、(b)ラクトン、(c)アミノカルボン酸もしくは(d)これらの混合物のうち1つ以上を反応させることにより調製される。一つの実施形態において、TPOAC酸は、(a)〜(c)のうちの2つ以上の混合物である。
【0050】
Yで表される鎖は同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
このTPOAC酸は、一つの実施形態において、50〜250℃の温度で、必要に応じてカルボン酸R−COOHの存在下、および必要に応じてエステル化触媒の存在下で、調製される。一つの実施形態において、温度は100℃以上もしくは150℃以上である。最終生成物のあらゆる焦げを最小限にするために、温度は通常200℃以下である。不活性雰囲気は、周期表の任意の不活性ガスによって提供され得るが、通常は窒素である。
【0052】
エステル化触媒は、当該分野では以前から公知の任意のものであり得、テトラ−アルキルチタネート(例えば、テトラブチルチタネート)、有機酸の亜鉛塩(例えば、酢酸亜鉛)、脂肪族アルコールのジルコニウム塩(例えば、ジルコニウムイソプロポキシド)、トルエンスルホン酸もしくは強有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸)が挙げられる。
【0053】
本発明の別の実施形態において、式(4)の分散剤が提供され、ここで、Uは式(5)の鎖残基を表している:
【0054】
【化9】

ここで、
A、Rおよびmは本明細書中の上記で定義した通りであり;
は、水素もしくはC1−4−アルキルであり;そして
は、10個までの炭素原子を含む、脂肪族もしくは芳香族の残基であり、これはプロピレンオキシドおよび/もしくはエチレンオキシドから誘導され得るポリエーテル残基を必要に応じて含む。
【0055】
がC1−4−アルキルである場合;一つの実施形態においてはメチルである。
【0056】
はC2−6−アルキレンであり;一つの実施形態においてはC2−4−アルキレンである。
【0057】
式(6)の鎖残基を含む分散剤は、ポリアミンもしくはポリイミンの式(6)の化合物へのMichael付加反応によって都合よく調製され得る:
【0058】
【化10】

ここで、A、R、R、Rおよびmは、本明細書中の上記で定義した通りである。
【0059】
式(6)の化合物は、ヒドロキシ基を含む(アルク)アクリル酸誘導体と事前に形成された式(2)のTPOAC酸とを、50℃〜150℃の温度、もしくは80℃〜120℃の温度で、空気もしくは酸素の存在下で、反応させることにより都合よく調製され得る。一つの実施形態において、この反応は、エステル化触媒(例えば、テトラ−アルキルチタネート(例えば、テトラブチルチタネート))、金属アルコキシド(例えば、テトライソプロピルチタネート)、スズ触媒(例えば、塩化スズ、オクチル酸スズ(stannous octylate)もしくはモノブチル酸化スズ)もしくは酸触媒(例えば、トルエンスルホン酸もしくはトリフルオロ酢酸)の存在下で行なわれる。この反応は、一つの実施形態においては、式8の化合物もしくは(アルク)アクリル酸誘導体の自己重合を阻害するための重合阻害剤の存在下で、行なわれる。重合阻害剤の例は、(メチル)ヒドロキノンおよびフェノチアジンである。酸素もまた重合阻害剤として働く。
【0060】
ポリアミンもしくはポリイミンと式7の化合物との間の反応は、10℃と130℃との間、もしくは20℃と100℃との間に熱することで行なわれ得る。
【0061】
式(5)の化合物とポリアミンもしくはポリイミンとの間の反応は、反応物に対して不活性である溶媒の存在下で必要に応じて行われ得る。適切な溶媒の例は、炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびソルベッソ(solvesso))、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン)、アルカノール(例えば、n−ブタノールおよびイソプロパノール)およびエステル(例えば、酢酸ブチル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチルおよびグルタル酸ジメチル)である。
【0062】
本明細書の上記で開示したように、分散剤中の遊離のアミノ基および/もしくはイミノ基は、その後、酸化剤もしくは尿素と反応される。
【0063】
本明細書中の上記で述べたように、この分散剤は、有機媒質中もしくは極性有機媒質中で粒子状固体を分散させるのに特に有用である。
【0064】
本発明のさらなる局面によれば、粒子状固体および式1の分散剤を含む組成物が提供される。
【0065】
本発明のなおさらなる局面によれば、式1の分散剤、粒子状固体および有機媒質を含む分散物が提供される。
【0066】
この分散物中に存在する固体は、関連する温度で有機媒質中に充分に不溶性であって、かつ、その中で細かく分割された形態で安定化されることが望まれる、無機もしくは有機の任意の固体物質であり得る。
【0067】
適切な固体の例は、溶剤インク用の顔料;塗料およびプラスチックの材料用の顔料、エキステンダーおよび充填剤;染料(例えば、分散染料);溶剤染浴、インクおよび他の溶剤応用系用の蛍光発光剤および繊維助剤;オイルベースおよび逆のエマルジョンの掘削泥水用の固体;ドライクリーニングの液体中のごみおよび固体粒子;粒子状の陶器材料;磁性材料および磁性記録媒体、防火剤(例えば、プラスチック材料中で使用されるもの)、ならびに有機媒質中の分散物として適用される、殺生物剤、農薬および医薬である。
【0068】
一つの実施形態において、この固体は、例えば、Third Edition of the Colour Index(1971)、ならびにその後のその改訂版およびその付録内で、「Pigments」の表題のチャプターのもとに記載されている認知されたクラスの顔料のうちのいずれかからの顔料である。無機顔料の例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、バーミリオン、ウルトラマリンおよびクロム顔料(クロメートが挙げられる)、モリブデートおよび混合クロメート、ならびに鉛、亜鉛、バリウム、カルシウムのスルフェート、ならびにそれらの混合物および改変物であり、これらは、プリムローズクロム、レモンクロム、ミドルクロム、オレンジクロム、スカーレットクロムおよびレッドクロムという名で緑色がかった黄色〜赤色の顔料として市販されている。有機顔料の例は、アゾ、ジスアゾ、縮合アゾ、チオインジゴ、インダントロン、イソインダントロン、アンタントロン(anthanthrone)、アントラキノン、イソジベンゾアントロン(isodibenzanthrone)、トリフェンジオキサジン(triphendioxazine)、キナクリドンならびにフタロシアニンのシリーズ、例えば銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化された誘導体、またならびに酸性染料、塩基性染料および媒染染料のレーキからの顔料である。カーボンブラックは、厳密には無機物であるが、その分散特性においては、むしろ有機顔料のように挙動する。一つの実施形態において、有機顔料は、フタロシアニン、例えば銅フタロシアニン、モノアゾ、ジスアゾ、インダントロン、アントラントロン(anthranthrones)、キナクリドン、およびカーボンブラックである。
【0069】
他の適切な固体としては、エキステンダーおよび充填剤(例えば、タルク、カオリン、シリカ、バリタおよびチョーク);粒子状の陶器材料(例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合ケイ素−アルミニウム窒化物およびチタン酸金属);粒子状の磁性材料(例えば、遷移金属(例えば、鉄およびクロム)の磁性酸化物(例えば、ガンマ−Fe、Fe、およびコバルトドーピングした酸化鉄)、酸化カルシウム、フェライト(例えば、バリウムフェライト));ならびに金属粒子(例えば、金属鉄、金属ニッケル、金属コバルトおよびそれらの合金);農薬(例えば、殺真菌剤フルトリアフェン(Flutriafen)、カルベンダジム、クロロタロニルおよびマンコゼブ)および防火剤(例えば、アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウム)が挙げられる。
【0070】
本発明の分散物中に存在する有機媒質は、一つの実施形態においては、極性有機媒質あるいは実質的に非極性の芳香族炭化水素もしくはハロゲン化炭化水素である。有機媒質に関して、用語「極性」によって、Journal of Paint Technology、Vol.38、1996、269ページ内のCrowleyらによる表題「A Three Dimensional Approach to Solubility」の論文に記載されている通りの、中程度〜強い結合を形成可能である有機液体もしくは樹脂が意味される。このような有機媒質は、上記に述べた論文で定義されたように一般的に5以上の水素結合数を有する。
【0071】
適切な極性有機液体の例は、アミン、エーテル(例えば、低級アルキルエーテル)、有機酸、エステル、ケトン、グリコール、アルコールおよびアミドである。このような中程度に、強く水素結合する液体の非常に多くの特定の例は、Ibert Mellanによる表題「Compatibility and Solubility」(1968年にNoyes Development Corporationより刊行)の本の39〜40ページのTable2.14中に挙げられており、これらの液体は全て、本明細書中で使用される極性有機液体という用語の範囲内に入る。
【0072】
一つの実施形態において、この極性有機液体は、ジアルキルケトン、アルカンカルボン酸のアルキルエステルおよびアルカノール(例えば、合計6個までおよび6個を含む炭素原子を含むような液体)である。有機液体の適切な例としては、ジアルキルケトンおよびシクロアルキルケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジ−イソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−イソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn−アミルケトンおよびシクロヘキサノン);アルキルエステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、メトキシプロピルアセテートおよび酪酸エチル);グリコールならびにグリコールエステルおよびグリコールエーテル(例えば、エチレングリコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロピルプロパノール、3−エトキシプロピルプロパノール、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、3−エトキシプロピルアセテートおよび2−エトキシエチルアセテート);アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノール)、ならびにジアルキルおよび環状のエーテル(例えばジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン)が挙げられる。
【0073】
使用され得る実質的に非極性の有機液体は、それ自体もしくは上記で述べた極性溶媒との混合物中のいずれかで、芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン)、石油留出物(petrolium distillates)(例えば、石油エーテル、鉱油、植物油)、ならびにハロゲン化脂肪族炭化水素およびハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トリクロロ−エチレン、ペルクロロエチレンおよびクロロベンゼン)である。
【0074】
本発明の分散物形態用の媒質として適切な極性樹脂の例は、フィルム形成樹脂(例えば、インク、塗料およびチップ(塗料およびインクのような多種の適用において使用するためのもの)の調製に適切なもの)である。このような樹脂の例としては、ポリアミド(例えば、VersamidTMおよびWolfamideTM)ならびにセルロースエーテル(例えば、エチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロース)が挙げられる。塗料樹脂の例としては、短油アルキド/メラミン−ホルムアルデヒド、ポリエステル/メラミン−ホルムアルデヒド、熱硬化性アクリル/メラミン−ホルムアルデヒド、長油アルキド、およびマルチ−メディア樹脂(例えば、アクリル系および尿素/アルデヒド)が挙げられる。
【0075】
この樹脂は、不飽和のポリエステル樹脂でもあり得、強化繊維および充填剤とともに配合され得るいわゆるシートモールディングコンパウンドおよびバルクモールディングコンパウンドが挙げられる。このようなモールディングコンパウンドは、DE 3,643,007内、およびP F Bruinsによる題目「Unsaturated Polyester Technology」、Gordon and Breach Science publishers、1976、211〜238ページのモノグラフ内で記載されている。
【0076】
望むのであれば、この分散物は他の成分(例えば、樹脂(これらはもはや有機媒質を構成しない)結合剤、流動化剤(GB−A−1508576およびGB−A−2108143内で記載されているようなもの)、沈殿防止剤、可塑剤、レベリング剤および防腐剤)を含み得る。
【0077】
この分散物は典型的に5〜95重量%の固体を含んでおり、正確な量はこの固体の性質に依存し、この量はこの固体の性質、ならびにこの固体およびこの有機媒質の相対密度に依存する。例えば、この固体が有機物質である分散物(例えば、有機顔料)は、典型的に15〜60重量%の固体を含み、一方、この固体が無機物質である分散物(例えば、無機顔料、充填剤もしくはエキステンダー)は、分散物の総重量を基準として40〜90重量%の固体を典型的に含む。
【0078】
この分散物は、分散物を調製するための公知の従来の方法のいずれかで獲得され得る。ゆえに、この固体、有機媒質および分散剤は、任意の順序で混合され得、その後この混合物は、この固体の粒子を適切なサイズにするために、分散物が形成されるまで機械的処理(例えば、ボールミル、ビーズミル、レキミルもしくはプラスチックミル)にかけられ得る。あるいは、この固体は、その粒子サイズを減じるために、独立して、または有機媒質もしくは分散剤のいずれかと混合して処理され得、その後他の成分(単数もしくは複数)が加えられ、この混合物は攪拌され、分散物が得られる。
【0079】
この組成物が、乾燥形態である必要がある場合、この液体媒質は揮発性であり得、その結果、これは単純な分離方法(例えば、蒸発)によって、粒子状固体から容易に除去され得る。一つの実施形態において、この分散物は液体媒質を含む。
【0080】
この乾燥組成物が分散剤および粒子状固体から本質的になる場合、一つの実施形態においては、これは粒子状固体の重量を基準として少なくとも0.2%、少なくとも0.5%もしくは少なくとも1.0%の分散剤を含む。一つの実施形態において、この乾燥組成物は、粒子状固体の重量を基準として100重量%以下、50重量%以下、20重量%以下もしくは10重量%以下を含む。
【0081】
本明細書中の上記で述べた通り、本発明の分散剤はミルベースを調製するのに特に適しており、ここで、液体媒質中で粒子状固体およびフィルム形成樹脂結合剤の両方の存在下で、この粒子状固体は粉砕される。
【0082】
ゆえに、本発明のなおさらなる局面によれば、粒子状固体、分散剤およびフィルム形成樹脂を含むミルベースが提供される。
【0083】
典型的に、このミルベースは、ミルベースの総重量を基準として20〜70重量%の粒子状固体を含む。一つの実施形態において、この粒子状固体は、ミルベースの30重量%以上もしくは50重量%以上である。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
ミルベース中の樹脂の量は、広い範囲にわたって多様であり得るが、一般的にはミルベースの連続相/液体相の10重量%以上、もしくは20重量%以上である。一つの実施形態において、樹脂の量は、ミルベースの連続相/液体相の50重量%以下もしくは40重量%以下である。
【0085】
ステアリン酸(9.2部、32mmol、例えばAldrich)およびε−カプロラクトン(51.1部、448mmol、例えばAldrich)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、テトラブチルチタネート(0.3部)を加え、200℃で16時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(7.5部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を、窒素下で120℃で6時間攪拌する。200℃まで冷却した後、生成物が硬いろう状の固体として得られる。これが分散剤Aである。塩基当量は1675である。
【0086】
分散剤A(56部)を80℃でトルエン(57.45部)中に溶解し、透明な溶液を得る。尿素(1.45部)を加え、反応物を、窒素下で120℃で18時間攪拌する。この溶媒をエバポレーションによって取り除き、20℃まで冷却した後、生成物がベージュ色の固体(56部)として得られる。これが分散剤1である。塩基当量は2210である。
【0087】
(実施例2)
カプロン酸(10部、86mmol、例えばAldrich)およびε−カプロラクトン(112部、981mmol、例えばAldrich)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、テトラブチルチタネート(0.5部)を加え、200℃で18時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(12部、SP050、MW5,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を、窒素下で120℃で8時間攪拌する。200℃まで冷却した後、生成物が硬いろう状の固体として得られる。これが分散剤Bである。塩基当量は1557である。
【0088】
分散剤B(50部)を、80℃でトルエン(57.45部)中に溶解し、透明な溶液を得る。尿素(1.6部)を加え、反応物を、窒素下で120℃で18時間攪拌する。この溶媒をエバポレーションによって取り除き、20℃まで冷却した後、生成物がベージュ色の固体として得られる(56部)。これが分散剤2である。塩基当量は2730である。
【0089】
(実施例3)
リシノール酸(300部、例えばFluka)およびジルコニウムブチレート(1部)を、50mg KOH/gの酸価が1120のMWに相当するに至るまで200℃で攪拌する。その後、この混合物の温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(28.5部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を、窒素下で120℃で6時間攪拌する。室温まで冷却した後、生成物が金色の液体として得られる。これが分散剤Cである。塩基当量は2136である。
【0090】
分散剤C(40部)および尿素(1.31部、例えばFisher)を、80℃で窒素雰囲気下で18時間一緒に攪拌する。茶色の粘性の液体(40部)が得られる。これが分散剤3である。塩基当量は3839である。
【0091】
(実施例4)
リシノール酸(100部、例えばFluka)、12−ヒドロキシステアリン酸(100.67部)およびジルコニウムブチレート(1部)を、35mg KOH/gの酸価が1600のMWに相当するに至るまで200℃で攪拌する。その後、この混合物の温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(13.5部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を、窒素雰囲気下で120℃で6時間攪拌する。20℃まで冷却した後、生成物が金色の液体として得られる。これが分散剤Dである。塩基当量は1376である。
【0092】
分散剤D(40部)および35wt%の過酸化水素水溶液(1.06部、例えばFisher)を、この過酸化物が実質的に反応するまで(デンプン−ヨウ素紙を使用したときの陰性の結果によって確認される)、80℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性液体(40部)が得られる。これが分散剤4である。塩基当量は1845である。
【0093】
(実施例5)
ラウリン酸(10部、49mmol、例えばAldrich)、ε−カプロラクトン(44.7部、392mmol、例えばAldrich)および7−メチルカプロラクトン(25部、196mmol)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、ジルコニウムイソプロポキシド(0.45部)を加えて、200℃で6時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(5.5部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を窒素雰囲気下で120℃で6時間攪拌する。20℃まで冷却した後、生成物が薄茶色の液体として得られる。これが分散剤Eである。塩基当量は1407である。
【0094】
分散剤E(40部)および35wt%の過酸化水素水溶液(1.1部、例えばFisher)を、この過酸化物が実質的に反応するまで(デンプン−ヨウ素紙を使用したときの陰性の結果によって確認される)、80℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性液体(40部)が得られる。これが分散剤5である。塩基当量は1801である。
【0095】
(実施例6)
Isocarb 16(7部、27mmol、例えばSasol)、ε−カプロラクトン(27.7部、243mmol、例えばAldrich)および7−メチルカプロラクトン(10.4部、81mmol)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、ジルコニウムブチレート(0.3部)を加え、200℃で6時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(6.4部、SP030、MW3,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を窒素雰囲気下で120℃で6時間攪拌する。20℃まで冷却した後、生成物が薄茶色の液体として得られる。これが分散剤Fである。塩基当量は833である。
【0096】
分散剤F(40部)および35wt%の過酸化水素水溶液(4.5部、例えばFisher)を、この過酸化物が実質的に反応するまで(デンプン−ヨウ素紙を使用したときの陰性の結果によって確認される)、80℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性液体(41部)が得られる。これが分散剤6である。塩基当量は1228である。
【0097】
(実施例7)
Isocarb 16(7部、27mmol、例えばSasol)、ε−カプロラクトン(27.7部、243mmol、例えばAldrich)および7−メチルカプロラクトン(10.4部、81mmol)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、ジルコニウムブチレート(0.3部)を加え、200℃で6時間攪拌することで反応を続ける。これが中間体1である。
【0098】
リシノール酸(35部、例えばFluka)、ε−カプロラクトン(18.7部、例えばAldrich)、Isocarb 12(9.4部、例えばSasol)およびジルコニウムブチレート(0.3部)を、30mg KOH/gの酸価が1820のMWに相当するに至るまで200℃で攪拌する。これが中間体2である。
【0099】
中間体1(18部)および中間体2(6部)を120℃で攪拌し、ポリエチレンイミン(2部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を窒素雰囲気下で120℃で6時間攪拌する。20℃まで冷却した後、生成物が薄茶色の液体として得られる。これが分散剤Gである。塩基当量は1312である。
【0100】
分散剤G(24部)および35wt%の過酸化水素水溶液(2.5部、例えばFisher)を、この過酸化物が実質的に反応するまで(デンプン−ヨウ素紙を使用したときの陰性の結果によって確認される)、80℃で窒素雰囲気下で一緒に攪拌する。茶色の粘性液体(41部)が得られる。これが分散剤7である。塩基当量は2217である。
【0101】
(実施例8)
ラウリン酸(5部)、δ−バレロラクトン(7.5部)およびε−カプロラクトン(34.2部)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、ジルコニウムブチレート(0.3部)を加え、200℃で8時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(3.6部、SP200、MW10,000、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を窒素下で120℃で6時間攪拌する。200℃まで冷却した後、生成物が軟らかいろう状の固体として得られる。これが分散剤Hである。塩基当量は1710である。
【0102】
分散剤H(49部)を、80℃でトルエン(50.5部)中に溶解し、透明な溶液を得る。尿素(1.5部)を加え、そして反応物を、窒素下で120℃で18時間攪拌する。この溶媒をエバポレーションによって取り除き、20℃まで冷却した後、生成物がベージュ色の固体(56部)として得られる。これが分散剤8である。塩基当量は2872である。
【0103】
(実施例9)
ラウリン酸(10部)、δ−バレロラクトン(5部)およびε−カプロラクトン(22.8部)を、窒素下で120℃で攪拌する。その後、ジルコニウムブチレート(0.3部)を加え、200℃で8時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げ、ポリエチレンイミン(5.4部、SP018、MW1,800、例えば日本触媒)を加え、そして反応物を窒素下で120℃で6時間攪拌する。200℃まで冷却した後、生成物が軟らかいろう状の固体として得られる。これが分散剤Iである。塩基当量は1128である。
【0104】
分散剤I(40部)および尿素(2部)を、窒素下で120℃で18時間、一緒に攪拌する。生成物が琥珀色の粘性の液体(40部)として得られる。これが分散剤9である。塩基当量は1503である。
【0105】
IsocarbTM16(25部、97mmol、例えばSasol)および塩化チオニル(13.9部、117mmol)を、125℃で8時間、トルエン(30ml)中で攪拌し、その後、減圧下で溶媒および過剰な塩化チオニルを取り除き、IsocarbTM16酸塩化物の茶色の液体(24.5部)を得る。IRは、酸塩化物のカルボニルのピークを1794cm−1に示す。IsocarbTM16酸塩化物(10.7部、38.8mmol)、ε−カプロラクトン(13.3部、116mmol、例えばAldrich)および12−ヒドロキシステアリン酸(35部、116mmol)を、窒素雰囲気下で150℃で攪拌する。その後、ジルコニウムブチレート(0.3部)を加え、185℃で24時間攪拌することで反応を続ける。その後、温度を120℃まで下げて、40部の混合物およびポリエチレンイミン(4部、SP075、MW7,500、例えば日本触媒)を、窒素下で120℃で6時間攪拌する。20℃まで冷却した後、生成物が茶色の粘性の液体として得られる。これが分散剤Jである。塩基当量は1133である。
【0106】
分散剤J(33部)を、80℃でトルエン(50部)中に溶解し、透明の溶液を得る。尿素(0.96部)を加え、反応物を窒素雰囲気下で120℃で18時間攪拌する。この溶媒をエバポレーションによって取り除き、20℃まで冷却した後、生成物がベージュ色の固体(56部)として得られる。これが分散剤10である。塩基当量は1599である。
【0107】
(粉砕テスト)
分散剤(0.45部)を、必要であれば温めることにより溶媒(7.55部)中に溶解する。25℃まで冷却した後、3mm直径のガラスビーズ(16部)および赤色顔料(2部、Monolite Rubine 3B、例えばAvecia)を加える。この顔料を、水平振とう機で16時間振とうして粉砕する。A〜E(良い〜悪い)の任意スケールを使用して、得られた分散物の粘度を評価する。結果を下の表1に示し、これは尿素分散剤(分散剤1)が、尿素との反応前の分散剤(分散剤A)に比べて、極性および非極性の両方の溶媒中で優れた分散物を生成することを明確に説明する。
【0108】
【表1】

(Monastral Blue BGについての粉砕調合物および方法)
顔料はMonastral Blue BG(例えばHeubach、Pigment Blue 15.1)であり、ミルベースは30%顔料および顔料重量の12.6%の薬剤であり、Solsperse 5000はNoveon Specialty Additivesから入手可能な相乗剤(流動化剤)である。このミルベースの評価は、上記で述べたものと同様である。Monastral Blue BGを使用して得られた結果を、表2に示す。
【0109】
【表2】

上記で述べたそれぞれの文書は、本明細書中に参考として援用される。実施例中を除いて、もしくはそうでないと明白に示されていない限り、物質の量、反応の条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書における全ての数値量は、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。そうでないと示されていない限り、本明細書中で述べているそれぞれの化学物質もしくは組成物は、異性体、副産物、誘導体、およびコマーシャルグレードの物質中に存在していると通常理解されているような他の物質を含み得る、コマーシャルグレードの物質であると解釈されるべきである。しかしながら、それぞれの化学成分の量は、そうでないと示されていない限り、通常市販の物質に存在し得るあらゆる溶媒もしくは希釈オイルを除いて示される。本明細書中で説明する量、範囲および比の上限および下限は、独立して組み合わされ得ると理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素に対する範囲および量は、任意の他の要素に対する範囲もしくは量と共に使用され得る。本明細書中で使用される場合、「から本質的になる」という表現は、検討中の組成物の根本的および新規の特徴に重大に影響をおよぼさない物質の含有を許容する。
【0110】
本発明は、その好ましい実施形態に関して説明されてきたが、本明細書を読むことで、これらの種々の変更が当業者には明白になることは理解されるべきである。ゆえに、本明細書中に開示した本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るような変更を包含することが意図されていることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

の分散剤であって、
ここで、
Tは、重合停止基であり;
Vは、直接結合もしくは2価の連結基であり;
Aは、1つ以上の異なるヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンの残基であり;
Yは、直接結合もしくは2価の連結基であり;
Zは、ポリアミンもしくはポリイミンの残基であり;
Wは、酸化物もしくは尿素の残基であり;
mは、2〜2000であり;そして
xは、1から、基T−V−(A)−U−を有しない、Zにおいて使用可能なアミノ基および/もしくはイミノ基の最大数までである、
分散剤。
【請求項2】
Tがカルボン酸R−COOHの残基であり、ここで、Rは必要に応じて置換されたC1−50−ヒドロカルビルである、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
Rが、必要に応じて置換された、直鎖状でも分枝状でもよいアルキルである、請求項2に記載の分散剤。
【請求項4】
Rが1つ以上のエーテル基を含む、請求項2に記載の分散剤。
【請求項5】
Aがヒドロキシ−C2−20−アルケニレンカルボン酸もしくはヒドロキシ−C1−20−アルキレンカルボン酸またはそれらのラクトンの残基である、請求項1に記載の分散剤。
【請求項6】
Aが12−ヒドロキシステアリン酸もしくはリシノール酸の残基である、請求項5に記載の分散剤。
【請求項7】
前記ラクトンがε−カプロラクトンである、請求項5に記載の分散剤。
【請求項8】
mが20以下である、請求項1に記載の分散剤。
【請求項9】
請求項1に記載の分散剤であって、該分散剤は、式(3):
【化2】

の鎖を少なくとも2つ有する、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンもしくはポリ(C2−4−アルキレンイミン)を含み、
ここで、T、V、A、Uおよびmは請求項1で定義した通りである、
分散剤。
【請求項10】
請求項9に記載の分散剤であって、ここで、該分散剤は式(4):
【化3】

で表され、
ここで、
X−−Xは、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンもしくはポリ(C2−4−アルキレンイミン)を表し;
Yは、鎖T−V−(A)−Uを表し、該鎖は同じであっても異なっていてもよく、該鎖はアミドおよび/もしくは塩結合を通して結合され;
rは、2〜2000であり;そして
T、V、A、Uおよびmは請求項1で定義した通りである、
分散剤。
【請求項11】
X−−XとYとの重量比が20:1〜2:1である、請求項10に記載の分散剤。
【請求項12】
請求項10に記載の分散剤であって、ここで、Yは式(5):
【化4】

の鎖残基を表し、
ここで、
は、水素もしくはC1−4−アルキルであり;そして
は、10個までの炭素原子を含む脂肪族もしくは芳香族の残基であり、該脂肪族もしくは芳香族の残基はプロピレンオキシドおよび/もしくはエチレンオキシドから誘導され得るポリエーテル残基を必要に応じて含む、
分散剤。
【請求項13】
Qが尿素の残基である式1の分散剤を作製するためのプロセスであって、該プロセスは、基T−V−(A)−Uを有しない、Zにおけるイミノ基もしくはアミノ基と尿素とを100℃〜150℃の温度で反応させる工程を包含する、プロセス。
【請求項14】
粒子状固体および請求項1に記載の分散剤を含む、組成物。
【請求項15】
有機液体をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
粒子状固体、有機液体、フィルム形成結合剤樹脂および請求項1に記載の分散剤を含む、ミルベース、塗料もしくはインク。

【公表番号】特表2008−525580(P2008−525580A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548251(P2007−548251)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/043923
【国際公開番号】WO2006/071460
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】