説明

分散染料組成物

【課題】 ポリエステル等の疎水性繊維材料を、青色分散染料や赤色分散染料と配合染色して淡色〜中濃色に染色する際の三原色用黄色分散染料組成物、及び、該三原色用黄色分散染料組成物を用いる疎水性繊維材料の染色方法を提供すること。
【解決手段】 キノリン誘導体(1)、1,3−インダンジオン誘導体(2)、及び該誘導体(2)の臭素化物を含むことを特徴とする三原色用黄色分散染料組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三原色用黄色分散染料組成物及びそれを用いる疎水性繊維材料の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下式(1)で示されるキノリン誘導体は、カラーインデックス ジェネリックネーム ディスパースイエロー79として公知の化合物である。また、下式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体は、カラーインデックス ジェネリックネーム ディスパースイエロー54として公知の化合物である。さらに、下式(3)で示される1,3−インダンジオン誘導体のモノ臭素化物は、カラーインデックス ジェネリックネーム ディスパースイエロー64として公知の化合物である。そして、下式(4)で示される1,3−インダンジオン誘導体のジ臭素化物、及び、下式(5)で示される1,3−インダンジオン誘導体のジ臭素化物は、インジゴ染料との組成物としてデニム用綿糸を染色するために使用される公知化合物である(下記特許文献1を参照)。
一方、式(1)で示されるキノリン誘導体と耐光堅牢度の良好な式(3)で示される1,3−インダンジオン誘導体のモノ臭素化物とを配合して使用することも公知である(下記特許文献2を参照)。
【0003】









【0004】
【特許文献1】特開平2−170861号公報[実施例1、実施例3を参照]
【特許文献2】特開平11−269402号公報[実施例1、実施例2を参照]
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された1,3−インダンジオン誘導体のジ臭素化物(4)、及び、1,3−インダンジオン誘導体のジ臭素化物(5)は、いずれもインジゴ染料との組成物としてデニム用綿糸を染色するために使用するものである。
【0006】
上述したキノリン誘導体(1)は、分散染料として疎水性繊維材料を染色する際の染着性が比較的良好で且つ安価に入手できることから、三原色用の黄色分散染料として使用することができれば、経済的な観点から有利である。
しかしながら、キノリン誘導体(1)を赤色分散染料及び/又は青色分散染料と併用して種々の色相の染色物を得ようとすると、併用される上記の赤色分散染料及び/又は青色分散染料の染着速度に比べて、上記キノリン誘導体(1)の染着速度が著しく遅く(すなわち、相容性が悪く)、疎水性繊維材料を均質に染色することが困難であった。
【0007】
また、特許文献2記載のようなキノリン誘導体(1)と1,3−インダンジオン誘導体のモノ臭素化物(3)とを配合して使用する疎水性繊維材料の染色方法も、該配合物の染着速度が遅くて、三原色用の黄色分散染料として汎用することが難しいという問題があった。
【0008】
さらに、近年は、ポリエステルの紡糸速度の高速化や延伸工程の省略等の合理化により、分子構造の配向性が揃っていない糸を用いた繊維を使用することが多くなり、従来のポリエステル繊維を使用したときよりも、染色斑の発生や、染着再現性の不良等の発生率が多くなっている。また、極細繊維、異形断面糸、異収縮混繊糸等の単独、複合又は組合せにより構成された新合繊の場合は、従来の疎水性繊維材料とは異なって、一般に均質に染色することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような事情に基づいて、キノリン誘導体(1)を既存の赤色分散染料/又は青色分散染料と併用して、疎水性繊維材料を経済的に且つ再現性良く染色する方法が望まれている。
本発明の目的は、疎水性繊維材料を淡色〜中濃色に染色する際の三原色用黄色分散染料組成物を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、疎水性繊維材料を淡色〜中濃色に染色する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、次の(i)〜(iii)を提供するものである。
(i)下式(1)で示されるキノリン誘導体、下式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体、及び該1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物を含むことを特徴とする三原色用黄色分散染料組成物。
【0011】



(ii)上記(i)の三原色用黄色分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色方法。
(iii)上記(i)の三原色用黄色分散染料組成物に加えて、さらに赤色分散染料及び/又は青色分散染料を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明(i)の三原色用黄色分散染料組成物は、既存の赤色分散染料及び/又は青色分散染料と併用することができ、該三原色用黄色分散染料組成物は染着速度及び相容性に優れる。
また、本発明(ii)の染色方法によれば、染着再現性に優れるので、染色斑のない染色物が得られる。
さらに、本発明(iii)の染色方法によれば、疎水性繊維材料を所望の色調に染色することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の上記(i)及び(ii)においては、1,3−インダンジオン誘導体(2)の臭素化物が、下記のジ臭素化物(4)及びジ臭素化物(5)のいずれかとモノ臭素化物(3)との混合物であることが好ましい。
【0014】





【0015】
また、1,3−インダンジオン誘導体(2)、モノ臭素化物(3)並びにジ臭素化物(4)及び/又はジ臭素化物(5)の合計重量とキノリン誘導体(1)の重量との比率が、(30〜80):(70〜20)の範囲であることがより好ましい。
【0016】
本発明において、1,3−インダンジオン誘導体(2)の臭素化物は、好ましくは、上記のモノ臭素化物(3)と上記のジ臭素化物(4)及びジ臭素化物(5)のいずれかとの混合物である。
本発明において、モノ臭素化物(3)、並びにジ臭素化物(4)及び/又はジ臭素化物(5)の合計と1,3−インダンジオン誘導体(2)との重量比は、(80〜20):(20〜80)の範囲が好ましい。
本発明において、ジ臭素化物(4)及び/又はジ臭素化物(5)の合計重量とモノ臭素化物(3)の重量の比率は、(30〜0.5):(70〜99.5)の範囲が特に好ましい。
【0017】
本発明(i)の組成物は、上記のキノリン誘導体(1)と、1,3−インダンジオン誘導体(2)、及び該1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物を所望の割合に混合した後、好ましくは、後述する分散剤で処理することにより得られる。
また、本発明(i)の組成物は、キノリン誘導体(1)、1,3−インダンジオン誘導体(2)、及び該1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物を、後述する分散剤でそれぞれ個別に分散化処理した後に、該分散化された分散染料を所定の割合に混合することにより得られる。
さらに、本発明(i)の組成物は、上記分散化方法で得た分散染料を染色浴中で所定の割合に混合して調製してもよい。
【0018】
上記の分散剤による処理は、より好ましくは、キノリン誘導体(1)、1,3−インダンジオン誘導体(2)、モノ臭素化物(3)、ジ臭素化物(4)やジ臭素化物(5)を、例えば、水性媒体中、分散剤[例えば、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸やクレゾール・シェーファー酸ホルマリン縮合物等のアニオン界面活性剤]の存在下に、サンドミル等を使用して行うことができる。該分散化処理においては、必要に応じて、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等のノニオン界面活性剤を併用してもよい。
分散化処理により得られた分散液は、液体のままで用いてもよいし、上記の分散液を噴霧乾燥等により乾燥し、粉体状又は顆粒状として用いてもよい。
【0019】
また、本発明(i)の三原色用黄色分散染料組成物は、キノリン誘導体(1)、1,3−インダンジオン誘導体(2)、モノ臭素化物(3)、ジ臭素化物(4)及びジ臭素化物(5)以外の分散染料、例えば、アゾベンゼン系分散染料やアントラキノン系分散染料等と混合して色相の調整を行ってもよい。
さらに、本発明(i)の三原色用黄色分散染料組成物は、色相調整用の上記分散染料以外に、上記ノニオン界面活性剤等の分散剤、増量剤、pH調整剤、分散均染剤、ビルダー、染色助剤、沸点が100℃以上である有機溶剤や樹脂バインダー等を含有することができる。
【0020】
本発明(i)の三原色用黄色分散染料組成物は、ポリエステル、トリアセテート、ジアセテートやポリアミド等の疎水性繊維材料を染色(又は捺染)することができる。
上記の疎水性繊維材料を染色するにあたっては、本発明(i)の組成物を水性媒体中に分散させた染浴中に、必要に応じて、pH調整剤や分散均染剤等を加えた後、疎水性繊維材料をこの染浴中に浸漬して、例えばポリエステル繊維の場合は、加圧下で通常100℃以上(好ましくは105〜140℃)で15〜60分間染色する。この染色時間は染着の状態により短縮又は延長することができる。
【0021】
また、本発明(i)の組成物を用いて前記の疎水性繊維材料を染色するにあたっては、o−フェニルフェノールやメチルナフタレン等のキャリアーの存在下で、例えば、水を沸騰させた状態で染色することもできる。さらに、本発明(i)の組成物を用いて疎水性繊維材料をパディング染色する場合は、上述した方法で調製した染料分散液を布にパディングした後、100℃以上の温度でスチーミングや乾熱処理をすることができる。
【0022】
捺染の場合は、染料分散液を適当な糊剤と共に練り合わせ、これを布に印捺乾燥した後、スチーミング又は乾熱処理を行う。また、インクジェット方式によって捺染することもできる。
本発明(ii)の染色方法に適用される疎水性繊維材料としては、典型的には、エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合により得られるポリエステル繊維が挙げられる。また、本発明(ii)の染色方法に適用されるポリエステル繊維としては、エチレングリコール以外のポリオールとテレフタル酸の重縮合により得られるポリエステル繊維も挙げられる。さらに、本発明(ii)の染色方法に適用される疎水性繊維材料としては、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維やポリアミド繊維等が挙げられる。
本発明(ii)の染色方法に適用される疎水性繊維材料としては、上記例示の繊維の混紡品又は交織品も挙げられる。この混紡品又は交織品としては、上記例示の繊維同士の混紡品や交織品、前記例示以外のセルロース繊維、羊毛又は絹との混紡品や交織品等が挙げられる。本発明(ii)の染色方法(捺染方法も含む)に適用される疎水性繊維材料としては、特にポリエステル繊維材料が好ましい。
また、本発明(ii)の染色方法に適用される疎水性繊維材料としては、新合繊材料も挙げられる。上記新合繊材料の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はテレフタル酸と1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの重縮合物等のポリエステル繊維類;ナイロン等のポリアミド系繊維と上記ポリエステル繊維類との混紡品や混織品;木綿、絹、羊毛等の天然繊維と上記ポリエステル繊維類との混紡品や混織品が挙げられる。
以上例示した素材の形態としては、糸、織物や編み物等が挙げられる。
【0023】
上記の新合繊は、例えば糸の形態である場合、0.3デニールよりも大きく、且つ1デニール以下のファインデニールファイバー糸、0.3デニール以下のウルトラマイクロファイバー糸、異型断面糸、又は異収縮混紡糸等が挙げられる。これらの糸はフィラメント状であってもよく、二酸化チタン等を含む艶消し加工糸等のように各種の加工や改質が施された糸であってもよい。
【0024】
本発明(ii)の染色方法において併用される赤色及び/又は青色分散染料としては、例えば、モノアゾ分散染料、ジスアゾ分散染料、ナフタレンアゾを含むベンゼンアゾ系、チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾやチオフェンアゾ等の複素環アゾ系、アントラキノン系等の染料群から選択することができる。
上記(i)の黄色分散染料組成物を用いる本発明において、併用される好ましい赤色分散染料や青色分散染料としては、例えば、下式(6)〜下式(14)で示される染料が挙げられる。
【0025】

[式中、Rはニトロ基を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキルスルホニル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルアミド基又はベンズアミド基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数2〜4のアルコキシアルコキシ基を表す。
及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数3〜8のアルキルカルボニルオキシアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数4〜8のアルコキシアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数2〜8のシアノアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルオキシアルキル基、炭素数8〜12のフェニルカルボニルオキシアルキル基、フェニル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基又は炭素数7〜9のフェノキシアルキル基等を表す。]
【0026】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素数1〜3のアルキルスルホニル基を表す。R、R10及びR11は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。R12は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルカルボニルアミノ基又はフェニルカルボニルアミノ基を表し、該フェニルカルボニルアミノ基におけるフェニルの水素原子は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。R13は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
14及びR15は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数3〜7のアルキルカルボニルオキシアルキル基、炭素数4〜8のアルコキシアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数2〜8のシアノアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルオキシアルキル基、フェニル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基又は炭素数7〜9のフェノキシアルキル基を表す。]
【0027】

【0028】
[式中、R16及びR17はシアノ基を表す。R18は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2〜5のシアノアルキル基、炭素数7〜10のアルキルフェニル基又は炭素数7〜10のアルコキシフェニル基を表す。R19は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜5のアルキルカルボニルアミノ基を表す。R20は水素原子を表す。R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数3〜6のアルキルカルボニルオキシアルキル基、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルオキシアルキル基、炭素数4〜8のアルコキシアルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシアルコキシ(炭素数2〜5)アルキル(炭素数2〜4)基、炭素数2〜5のシアノアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、フェニル基又は炭素数7〜9のフェノキシアルキル基を表す。]
【0029】

[式中、R23は水素原子又は炭素数2〜5のアルキルカルボニルアミノ基を表す。R24は水素原子を表す。R25及びR26は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数3〜7のアルキルカルボニルオキシアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数3〜8のアルコキシカルボニルオキシアルキル基、炭素数2〜5のシアノアルキル基又は炭素数9〜12のフェニルアルコキシカルボニルアルキル基を表す。]
【0030】

[式中、Y及びYの一方は水酸基を表し、他方は−NH(R27)を表す。R27はハロゲン原子、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜3のアルキルスルホニル基、炭素数2〜4のアルキルカルボニルオキシ基、フェニル基又はフェニルカルボニルオキシフェニル基を表す。]
【0031】

[式中、Y及びYの一方は水酸基を表し、他方はアミノ基を表す。nは0、1又は2を表す。R28は水素原子、炭素数1〜3のアルコキシ基又はフェニル基を表す。該フェニル基における水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニルオキシ基及びフェニルカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。]
【0032】

[式中、R29は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基又は炭素数2〜8のアルコキシアルコキシアルキル基を表す。]
【0033】

[式中、R30は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基又は炭素数7〜9のアルキルフェニルスルフォニル基を表す。]
【0034】

[式中、R31は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す。該アルキル基における水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜7のヒドロキシアルキル基、炭素数8〜12のフェノキシカルボニルオキシアルキル基及び炭素数7〜9のフェノキシアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルオキシアルキル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。
また、上記フェニル基における水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数2〜4のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルコキシ基及び炭素数2〜6のアルコキシアルキルアミノスルホニル基、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数3〜6のアルキルカルボニルアルコキシ基、炭素数7〜9のフェニルアルコキシ基、炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルコキシ基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキルチオエーテル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。]
上式(6)〜(14)で示される分散染料は、いずれも公知の化合物である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、例中の部及び%は、それぞれ重量部及び重量%である。
【0036】
1)黄色分散染料組成物の調製
キノリン誘導体(1)、1,3−インダンジオン誘導体(2)、該1,3−インダンジオン誘導体のモノ臭素化物(3)、ジ臭素化物(4)及びジ臭素化物(5)の各1部を、それぞれ個別に、ナフタレンスルホン酸ソーダとホルマリンとの縮合物3部と共に6部の水中で微粒子化して、水性組成物を各々得た。これらの水性組成物を用いて、表1に記載の配合割合に調整した後、水で10倍に希釈して組成物の母液を調製した。この組成物の母液を適宜希釈して、疎水性繊維材料の染色に供した。
【0037】
2)染着速度試験
i)上述した組成物の母液20部及びイオネットRAP−1170[三洋化成(株)製]3部を、水に均一に分散させた。次いで、この分散液に酢酸1.2部及び酢酸ソーダ4.8部を添加して、総量3000部の染浴とした。
ii)上記の染浴にテトロントロピカル[東レ(株)製のポリエステル繊維織物]100部を投入して、60℃から130℃まで毎分1℃の速度で昇温後、130℃で45分間保温して、染色を行った。染色終了後、90℃以下に冷却して染浴中のテトロントロピカルを取出し、水洗、還元洗浄及び乾燥の順に処理して、染色布Aを得た。
iii)染浴にテトロントロピカル100部を投入して、60℃から毎分1℃の速度で昇温して、染浴の温度が100℃になった時点で染浴中のテトロントロピカルを取出し、水洗、還元洗浄及び乾燥の順に処理して、染色布Bを得た。
【0038】
3)染着速度の評価
130℃で30分間染色した染色布Aの色濃度、及び100℃で取出した染色布Bの色濃度を、各々、住化分析センター(株)製のシコマック20(分光光度計等を備えた測色装置)で測定し、得られた測定値と下式(15)により染着速度指数を算出した。
【0039】
染着速度指数=(染色布Bの測定値)/(染色布Aの測定値) (15)
【0040】
上記の染着速度指数は、その数値が(イ)0.25〜0.55の範囲は良好な染色物が得られること、上記の数値が(ロ)0.20以上且つ0.25未満である範囲、及び0.55以上且つ0.60未満である範囲は不均一な染色物を生じるリスクがあること、並びに、前記の数値が(ハ)0.20未満、及び0.60以上では不均一な染色物が得られることが、本発明者によって経験的に知られている。
したがって、染着速度については、上記(イ)のときを○、上記(ロ)のときを△、上記(ハ)のときを×として、評価した。
【0041】
4)配合染色試験(三原色適性の確認)
i)式(16)で示される化合物を含む市販の赤色分散染料(スミカロン ルビン SE−GL、住友化学工業(株)製)の3.0部、及び式(17)で示される化合物を含む市販の赤色分散染料(スミカロン ブリリアントレッド S―B、住友化学工業(株)製)の3.0部に水94部を加えて、赤色の混合母液を調製した。
【0042】

【0043】

【0044】
また、下式(18)で示される化合物を含む市販の青色分散染料[フォロン ネービー S−2GL、サンド(株)製]の2.0部、及び下式(19)で示される化合物を含む市販の青色分散染料[スミカロン ブルー S−BG、住友化学工業(株)製]の4.0部に水94部を加えて、青色の混合母液を調製した。
【0045】

【0046】

【0047】
上記で作製した赤色分散染料の混合母液50部と青色分散染料の混合母液50部とを混合して得た母液を、以下の試験に供した。
【0048】
ii)上記の1)項で得た分散染料組成物の母液20部と上述の赤色分散染料と青色分散染料とを混合して得た母液20部、及びイオネットRAP−1170[三洋化成(株)製]2部を水に均一に分散させた後、該分散液に酢酸0.8部と酢酸ソーダ3.2部を添加して総量2000部の染浴を作製した。この操作を繰り返して、合計7つの同じ染浴を調製した。
【0049】
iii)上記の各染浴にテトロントロピカル[東レ(株)製ポリエステル繊維織物]の100部を投入後、60℃から130℃まで毎分1℃の速度で昇温後、130℃で30分間保温して染色を行った。上記の昇温工程において、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃及び130℃の各温度に到達した時に、上記7つの同じ染浴の6つの染浴からテトロントロピカルを抜き取り水洗した。残り1つの染浴においては、130℃に到達後、更に同温度で30分保温して得たテトロントロピカルを抜き取り、水洗した。これらの7枚のテトロントロピカルを、それぞれ還元洗浄後、更に乾燥して、番号1〜7の染色布を得た。
【0050】
5)相容性の評価
上述した番号1〜7の染色布を順に並べて、染色布表面の色相の変化を目視し(黄色染料、赤色染料及び青色染料の混合割合の変化を観察するものであり、色濃度の変化を観察するものではない)、使用した黄色染料、赤色染料及び青色染料の染着速度の一致状態(相容性)を評価した。
○・・番号7の染色布とほぼ同色相で、濃度のみが変化している
△・・番号7の染色布と色相が多少異なるが、ほぼ同系統の色相で変化している
×・・番号7の染色布と全く異なる色相の抜き取り布が存在する
【0051】
上記の染着速度及び相容性の試験結果を、表1にまとめた。
表に示されるように実施例1〜8の本発明組成物では、いずれの場合でも実用的な染着速度及び相容性が得られた。一方、比較例1〜3では、実用上問題が生じることが予見される結果を得た。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明(i)の三原色用黄色分散染料組成物は、ポリエステル等の疎水性繊維材料を染色又は捺染する際に有用である。
また、本発明(ii)の染色方法によれば、相容性が良好な染色物が得られる。
さらに、本発明(iii)の染色方法によれば、疎水性繊維材料を所望の色調に染色することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で示されるキノリン誘導体、下式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体、及び該1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物を含むことを特徴とする三原色用黄色分散染料組成物。



【請求項2】
式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物が、下式(4)で示されるジ臭素化物及び下式(5)で示されるジ臭素化物のいずれかと下式(3)で示されるモノ臭素化物との混合物である請求項1に記載の三原色用黄色分散染料組成物。





【請求項3】
式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物が、式(3)で示されるモノ臭素化物と式(4)で示されるジ臭素化物の混合物である請求項2に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項4】
式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体の臭素化物が、式(3)で示されるモノ臭素化物と式(5)で示されるジ臭素化物の混合物である請求項2に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項5】
式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体、式(3)で示されるモノ臭素化物及び式(4)で示されるジ臭素化物の合計重量と、式(1)で示されるキノリン誘導体の重量との比率が、(30〜80):(70〜20)の範囲である請求項3に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項6】
式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体、式(3)で示されるモノ臭素化物及び式(5)で示されるジ臭素化物の合計重量と、式(1)で示されるキノリン誘導体の重量との比率が、(30〜80):(70〜20)の範囲である請求項4に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項7】
式(3)で示されるモノ臭素化物及び式(4)で示されるジ臭素化物の合計重量と、式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体の重量との比率が、(80〜20):(20〜80)の範囲である請求項3に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項8】
式(3)で示されるモノ臭素化物及び式(5)で示されるジ臭素化物の合計重量と、式(2)で示される1,3−インダンジオン誘導体の重量との比率が、(80〜20):(20〜80)の範囲である請求項4に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項9】
式(3)で示されるモノ臭素化物と式(4)で示されるジ臭素化物との重量比率が、(70〜99.5):(30〜0.5)の範囲である請求項5に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項10】
式(3)で示されるモノ臭素化物と式(5)で示されるジ臭素化物との重量比率が、(70〜99.5):(30〜0.5)の範囲である請求項6に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項11】
さらに、分散剤を含む請求項1〜10のいずれかに記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項12】
分散剤が、アニオン系界面活性剤である請求項11に記載の三原色用黄色分散染料組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の三原色用黄色分散染料組成物を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の三原色用黄色分散染料組成物に加えて、さらに赤色分散染料及び/又は青色分散染料を用いることを特徴とする疎水性繊維材料の染色方法。

【公開番号】特開2006−57004(P2006−57004A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240582(P2004−240582)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】