説明

分散補償電子ビーム装置および方法

【課題】所望の信号対ノイズ比で高いスループットを達成するために、高い電子ビーム強度をもった電子ビーム装置を得ることが求められる。
【解決手段】一次電子ビーム101を放出するビームエミッター102と、試料130上に一次電子ビーム101の焦点を合わせる対物電子レンズ125であって、該レンズは光軸126を定める、対物電子レンズと、一次電子ビーム101から信号電子ビーム135を分離するための一次分散を備えたビームセパレータ115と、二次分散を備えた分散補償素子104であって、該分散補償素子は、前記二次分散が前記一次分散を十分に補うように、前記分散補償素子104の下流の一次ビーム101の傾斜角とは独立して、前記二次分散を調節するのに適しており、前記分散補償素子104は、前記一次電子ビーム101に沿って、前記ビームセパレータ115の上流に配置される、分散補償素子(104,204)と、を含む電子ビーム装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特徴は、例えば、画像化処理(imaging)や、試料を操作するための電子ビーム装置および方法に関する。さらに具体的には、本発明の特徴は、ビームエミッター、対物電子レンズ、一次電子ビーム(primary electron beam)から信号電子ビーム(signal electron beam)を分離するためのビームセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム(charged particle beam)装置は、製造業界での半導体装置の検査、リソグラフィーのための露光装置、検知装置、試験装置を含むがこれに限定されるものではなく、複数の産業分野において、多くの役割を持っている。それゆえに、マイクロメートルやナノメートルスケール内で、構造化(structuring)や試料の検査(inspecting)に対して、高い需要がある。
【0003】
特に、半導体テクノロジーは、ナノメートルスケール内で、構造化や試料のプロービング(probing)に対して、高い需要を生み出している。マイクロメートルやナノメートルスケールのプロセス制御(検査または構造化)は、電子ビームを使用してよく行われている。プロービングまたは構造化は、電子ビーム装置で発生させ、焦点を合わせた電子ビームを利用して、しばしば実施される。電子ビーム装置の例としては、電子顕微鏡、特に、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)または電子ビームパターン発生器がある。電子ビームは、同程度の粒子エネルギーで短波長であることによって、光子ビームに比べて優れた空間分解能(spatial resolution)を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0151711(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許7335894号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体製造のために、スループットは、形状をそっくりそのまま走査する(scanning)ツールの重大な制限となり得る。1nmのSEM分解能と仮定すれば、10mm2に10E14ピクセルが含まれる。したがって、全体のレイアウトをカバーするために、高速の検査アーキテクチャが求められる。所望の信号対ノイズ比(Signal to Noise Ratio, SNR)で高いスループットを達成するために、高い電子ビーム強度をもった電子ビーム装置を得ることが求められる。
【0006】
しかしながら、高い電子ビーム強度で、電子ビームの電子間の相互作用は、該ビームにますます影響を与える。電子電子相互作用(electron-electron interaction)が原因で、該ビームのエネルギーと分解能は低下する。したがって、一次電子ビームの広がり(broadening)といったような、該ビームの電子電子相互作用を軽減するために、測定器が考案されているが、さらにもっと、電子電子相互作用の影響を軽減する必要がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したことを踏まえて、本発明は、改良された荷電粒子ビーム装置、改良された荷電粒子ビーム装置の動作方法、改良された荷電粒子ビーム装置の製造方法を提供することを目的とする。
当該目的は、独立請求項1の荷電粒子ビーム装置、独立請求項15の方法によって、解決される。本発明の更なる利点、特徴、外観、詳細は、従属請求項、詳細な説明、図面から明らかになる。
【0008】
1つの実施形態によれば、電子ビーム装置は、一次電子ビームを放射するためのビームエミッターと、試料上に一次電子ビームの焦点を合わせるための対物電子レンズであって、該対物レンズは、光軸を定める、対物電子レンズと、一次電子ビームから信号電子ビームを分離するための一次分散を備えたビームセパレータと、二次分散を備えた分散補償素子(dispersion compensation element)とを含む。ビームセパレータは、偏向器(deflector)、特に磁界偏向器(magnetic deflector)であってもよい。分散補償素子は、二次分散が一次分散を十分に補うように、該分散補償素子の下流の一次ビームの傾斜角とは独立して、二次分散を調節することに適している。分散補償素子は、一次電子ビームに沿って、ビームセパレータの上流に配置される。
【0009】
別の実施形態によれば、電子ビーム装置の動作方法は、一次電子ビームを発生させることと、対物電子レンズ手段によって、試料上に前記一次電子ビームの焦点を合わせることと、前記一次電子ビームと前記試料との相互作用によって信号電子ビームを発生させることと、ビームセパレータによって、一次分散に従って前記一次電子ビームと前記信号電子ビームとの反応を引き起こし、それによって前記一次電子ビームから前記信号電子ビームを分離することと、分散補償素子が、例えば、前記一次分散を十分に補うように、二次分散に従って前記一次電子ビームに作用するように、前記分散補償素子の下流の前記一次電子ビームの傾斜角とは独立して、前記分散補償素子の二次分散を調節することと、を含む。
【0010】
また、実施形態は、上記装置が動作する方法も対象とする。該方法は、該装置のすべての機能を実行するための方法ステップを含む。さらに、実施形態は、ここで述べられる、任意の方法ステップを実行するために適したコントローラを備えるビーム装置も対象とすることができる。
【0011】
本発明の一部上述したものと、その他のより詳細な特徴は、以下の記載において説明され、部分的に図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、最初の実施形態に従った、電子ビーム装置の概略的な側面図を示す。
【図2】図2aと図2bは、さらなる実施形態に従った、電子ビーム装置の概略的な側面図を示す。
【図3−1】図3aから図3dは、さらなる実施形態に従った、電子ビーム装置のそれぞれの分散補償素子の概略的な側面図を示す。
【図3−2】図3eから図3hは、さらなる実施形態に従った、電子ビーム装置のそれぞれの分散補償素子の概略的な側面図を示す。
【図4】図4は、対物レンズ本体とその中に埋め込まれたビーム分離素子の概略的な側面図を示す。
【図5】図5は、比較例の電子ビーム装置の概略的な側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の様々な特徴を、さらに詳細に説明する。本願の範囲を限定することなく、本電子ビーム装置は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)または同種のものなど、検査(inspection)ないしリソグラフィー(lithography)に適している可能性がある。
【0014】
本実施形態の有利な点は、まず、説例が記載された図5を参照することで、より理解することができる。図5は、米国特許出願公開第2006/0151711(A1)号明細書(特許文献1)に記載された光学系に類似した光学系500を示す。光学系500において、エミッター(図示しない)からの一次電子ビーム501は、磁気ビーム偏向コイル(magnetic beam deflection coil)505を通り抜ける際に、曲げられ(方向を変えられ)、さらなる磁気ビーム偏向コイル515を通り抜ける際に、再度方向が変えられる。その後、一次電子ビーム501は、光軸526を定める対物レンズ525(例えば、静電かつ/または磁界(electrostatic and/or magnetic)集束レンズ)によって試料530上に焦点を合わせる。そして、一次ビーム501と試料530との相互作用から結果として生じる、信号電子ビーム530は、反対方向に沿って進む。信号電子ビーム535は、さらなる磁気ビームセパレータ偏向コイル515を通り抜ける際に曲げられ、それによって、一次ビーム501から分離される。その結果、信号ビーム535は検出器(図示しない)に導かれる。
【0015】
図5の光学系において、コイル505による一次ビーム501の偏向は、コイル515による偏向と同じ大きさであり、符号が逆である。この配置の目的は、垂直に一列に並べた配列を可能にすることであり、それゆえ、偏向コイル515がビーム501を偏向するということにもかかわらず、上流の偏向コイル505と下流の偏向コイル515の範囲における光学素子を垂直に整列することを許容する。さらに、二重の偏向は、図5に示すようにビーム501を変位させるという効果がある。従って、対物レンズ525に入るときに、ビーム501は、実光源502に対して変位した、仮想光源502'から現れるように見える。仮想光源502'が対物レンズ525により定められる光軸526上に置かれるように、当該対物レンズ525は配置される。
【0016】
しかしながら、図5の配置によって、像(image)は、偏向が原因で不鮮明になる。図5では、ビーム501のメインエネルギー光線部分で代表される一次ビーム501に加えて、平均エネルギーよりも低いエネルギーのビーム部分501aと平均エネルギーよりも高いエネルギーのビーム部分501bが示されている。また、ビーム部分501aとビーム部分501bに関して、コイル505による偏向は、コイル515による偏向と同じ大きさであり、符号が逆である。しかしながら、低エネルギービーム部分501aは、両コイル505、515によって偏向され、その結果、最終的に、メインエネルギービーム部分501よりも大きく変位する。それゆえに、低エネルギービーム部分501aの仮想光源502'は、メインビーム部分の仮想光源502'に対して変位する。同様に、高エネルギービーム部分501bは、より低い程度で、両コイル505、515によって偏向され、その結果、メインエネルギービーム部分501よりも小さく変位する。それゆえに、高エネルギービーム部分501bの仮想光源502b'は、メインビーム部分の仮想光源502'に対して変位する。結果として、ビーム部分501aと501bを含むビームは、点状の仮想光源の代わりに、幅dの線のような仮想光源から発しているように見え、試料に命中するビームは、それに応じて、偏向方向(すなわち、図5の平面において、光軸526に対して直交方向)に広がる。この広がりは、偏向方向の有効な分解能を制限する。それゆえに、色収差(chromatic aberration)、すなわち、ビームエネルギーに関して、一次ビームが試料に命中した位置の変化が生じる。ここで、電子ビーム装置の一次色収差は、メインビームエネルギーで、一次ビームが試料に命中した位置の、ビームエネルギーに関する、一次導出関数(first derivative)と定義される。
【0017】
要約すれば、図5の装置で、試料に命中するビームの位置は、エネルギー(運動量)依存であり、ビームを光軸と垂直の偏向方向に広げさせる。
【0018】
以下では、本発明の実施形態が、図5の上述の説例で述べた、欠点を軽減することについて説明する。図の表現の中で、下2桁が同じ参照番号は、同一または類似の構成を参照している。概して、実施形態の記載はどれでも、特に明記しない限り、別の実施形態に適用できるので、個々の実施形態に関して異なる部分のみを言及する。特に、望ましいまたは有利なものとして示された任意の特徴は、必須ではない。また、そのような望ましいまたは有利なものとして示された特徴は、望ましいまたは有利なものとして示された他の任意の特徴または複数の特徴と組み合わされることもあり得る。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に従う電子ビーム装置を示す。電子ビーム装置100は、一次電子ビーム101を放出するためのビームエミッター102、光軸126を定めて試料130上に一次電子ビームの焦点を合わせるための対物電子レンズ125を含む。ここで述べられる試料とは、半導体ウエハー、半導体の製造工程にある加工品(workpiece)、オプティカルブランク(optical blank)、メモリディスク(memory disk)および同類のもののような他の加工品を含むが、これらに限ったものではない。本発明の実施形態は、原料を堆積させる、または、原料を構造化する任意の加工品に適用され得る。試料は、構造化される平面またはそこに堆積される層、反対面、エッジ、典型的に斜面を含む。対物レンズ125は、最終集束レンズ(final focusing lens)である。以下において、レンズ(すなわち、試料と集束フィールド(focusing field)それ自体にビームの焦点を合わせるために、集束フィールドを発生させる光学素子)と、レンズ本体部(lens body)(これらの光学素子と、電子ビーム向けのレンズ口径(lens bore)を有する本体においてさらに関連する可能性のある光学素子と、を含む本体部)との明確な区別はつけられない。以下では、用語“レンズ”とは、レンズ本体部にも言及し得るものである。該レンズは、一般的なレンズ筐体(lens housing)に供給される、静電磁界結合レンズ(combined electrostatic-magnetic lens)などのような、多素子レンズ(multiple-element lens)としてもよい。図1では、静電磁界結合レンズの磁界部分のみが示される。もう1つの選択肢として、レンズは、例えば、静電レンズとしてもよい。示された実施形態に左右されない一般的な特徴として、対物レンズは、試料(試料プレート)から100mmより小さい、または、50mmよりもさらに小さい間隔で配置してもよく、かつ/または、全体の一次ビーム長(total primary beam length)の1/4よりも小さい間隔で配置してもよい。
【0020】
電子ビーム装置100は、さらに、ビームセパレータ115を含む。ビームセパレータ115は、磁気ビームセパレータ(magnetic beam separator)であり、とりわけ、純粋な磁気ビームセパレータとしてもよい。ビームセパレータ115は、対物レンズ125の本体部に組み込まれてもよく、例えば、それは、対物レンズ125の本体部の内部または下流に基本的に(“基本的に”とは、光軸に沿ったビームセパレータの長さの半分よりも大きい位置を指す。)位置し、特に、少なくとも部分的に対物レンズ125の本体部の内部または下流の口径に位置する(図4参照)。また、とりわけ、静電レンズの場合では、ビームセパレータ115は、対物レンズ125の上流に置かれてもよい。ビームセパレータ115は、対物レンズ125の上流に直接的に置かれてもよく、すなわち、それは、基本的に、電子ビームパス101に沿って、ビームセパレータ115と対物レンズ125との間に、他の電子光学素子(electron-optical element)が置かれないことである。もう1つの選択肢として、例えば、磁界かつ/または静電(magnetic and/or electrostatic)スキャナのようなビームスキャナを、ビームパスに沿って、ビームセパレータ115と対物レンズ125との間に配置してもよい。
【0021】
磁気ビームセパレータ115は、一次分散を備える。ここで、分散(または、分散関係(dispersion relation))を備える素子は、該素子が、該分散(分散関係)に従って電子ビームに作用することに適したものであることを意味する。すなわち、それは、電子エネルギーまたは運動量に依存する偏向角(deflection angle)で、電子ビームの電子を偏向するのに適している。一次分散は異方的(anisotropic)であり、一次分散方向(図1の平面内で、光軸126に対して直交する方向)を定める。
【0022】
一次分散によって、磁気ビームセパレータ115は、一次電子ビーム101から信号電子ビーム135を(それらの異なる運動量と方向に従って)分離することができる。ここで、信号電子は、一次ビーム電子からほぼ反対方向に進む電子として定義され、特に、信号電子は、二次電子、オージェ電子、かつ/または、後方散乱電子(backscattered electron)を含むことがある。
【0023】
さらに詳細に、ここでは、ビームセパレータ115は、一次電子ビーム101を偏向するための偏向コイルを有する。該偏向コイルは、一次電子ビーム101から信号電子ビーム135を分類するための直交磁界(transverse magnetic field)を発生させる。該直交磁界は図1の平面と直交する。ビーム101とビーム135の電子が該磁界を横切る際に、それらは、電子速度(ローレンツ力の法則)に依存する力を受ける。一次電子(ビーム101)と信号電子(ビーム135)は、ほぼ反対方向に進むので、2つのビームに作用する力は、直交磁界を通って進む際の方向と反対である。それゆえに、一次ビーム101と二次ビーム135はいずれも、反対符号(opposite sign)の角度で、偏向される。
【0024】
特に、磁気ビームセパレータは、純粋な磁気ビームセパレータとしてもよい。すなわち、それは、他のもの(例えば、静電、偏向コンポーネント)ではない、唯一の偏向素子として、磁気素子(例えば、磁気コイルまたはダイポール素子)を含む。それゆえに、電子ビーム装置100は、静電偏向磁界が、ビームセパレータ115の位置で(例えば、ウィーンフィルタ(Wien filter)の場合のように)、一次ビーム101に少しも作用しないように設定される。
【0025】
ビームセパレータ115として純粋な磁界偏向器を使用することは、対物レンズ125の内側領域は、集中的な保守点検を必要とする部分ないように保つことができるという利点がある。例えば、静電偏向器は、汚れる傾向があり、それゆえに、頻繁な保守点検を必要とする。以下に記載されているように、分散補償素子104を上流のビームセパレータ115に有することで、後者のビームセパレータ115は、保守の可能性がある部品を必要としない簡単な構造にすることができる。これは、保守のためにアクセスしづらい、対物レンズ115の本体部の中にビームセパレータ115を埋め込むことを可能にする。
【0026】
さらに、一般的な特徴として、ビームセパレータ115は、偏向角をもたらす偏向器であり、該偏向角は、一次電子ビーム101のビームエネルギーになめらかに依存する。それ故に、当該偏向器は、しきい値エネルギーを越えた電子のみを通過させることを許可するエネルギーフィルタとは異なる。さらに、一般的な特徴としては、ビームセパレータ115は、対物レンズで定められた光軸にほぼ沿う方向に一次電子を偏向する。
【0027】
電子ビーム装置100は、さらに、分散補償素子104を含む。分散補償素子104は、一次電子ビーム101に沿って、ビームセパレータ115の上流に配置される。示された実施形態とは無関係に、本発明の特徴として、二次電子は、分散補償素子104には達しない。すなわち、分散補償素子104は、一次電子ビームのみに影響を与えるが、信号電子ビーム135には影響を与えないように、電子ビーム装置100の信号電子ビーム135経路の外側に配置される。分散補償素子104のいくつかの可能な実現例は、図2、図3aからhを参照して、以下に、さらに詳細に記述される。図1の分散補償素子104は、これらの図のうちの任意の1つに従って実現される。例えば、さらに以下で説明される図3aに従って実現される。
【0028】
図1の説明を続けると、分散補償素子104は、二次分散を備えている。すなわち、該分散補償素子が、該二次分散に従って一次ビームに作用するのに適している。二次分散は、異方的であり、ビームセパレータ115によって定められる、第一偏向方向(first deflection direction)に平行に(逆平行の場合を含む)、第二偏向方向(second deflection direction)を定めている。ここで、標識“第一(first)”、“第二(second)”は、ビーム経路に沿った任意の経路を意味するものではない。
【0029】
さらに、分散補償素子104は、二次分散を調節することを可能にする。より具体的には、二次分散は、一次分散を十分に補うように調整される。一次分散のこの補償は、次のように理解される。分散補償素子104の二次分散を調節することで、一次ビーム101が試料130に命中するビーム位置の、ビームエネルギーに関する、一次導関数を調節することができる(それは、一次色収差と定義される)。一次分散は、この一次導関数がゼロ(または、実際には、ゼロに近い値である。すなわち、ビームの広がりが、少なくとも、二次分散が調節されない場合に比べてかなり軽減されること)に至るときに補償される。上に述べたように、分散補償素子104は、ビーム位置の上述一次導関数がゼロに至るもしくはゼロに近づくように、二次分散を調節することを可能にする。結果として、平均ビーム幅は大幅に縮小する。
【0030】
二次分散の調節は、ゼロにすること、すなわち、色収差を実質的に軽減するように、一次分散を補正することを可能にするものであり、その上、試料に命中する電子ビームの、所定のエネルギー依存性(pre-determined energy-dependence)が、現実に望まれているような応用もあり得る。この場合、分散補償素子はまた、この所定のエネルギー依存性が達成されるように制御されてもよい。
【0031】
二次分散の調節は、分散補償コントローラ(例えば、図2bに示すようなもの)よって自動的に、または、手動調節によって行うことができる。当該調節は、例えば、装置の設定の際に行うこともでき、そして、調節された分散は、分散補償素子104の制御に組み込まれる。
【0032】
さらに、分散補償素子104は、該分散補償素子104の下流の一次ビーム101の傾斜角(inclination angle)とは独立して、二次分散を調節するのに適している。言い換えると、分散補償素子104は、該分散補償素子104の下流の一次ビーム101の経路の傾斜角に、大幅に影響を及ぼすことなく、二次分散を調節することに適している。傾斜角は、光軸126に対して定められる。
【0033】
分散補償素子104は、エミッターから試料130への一次ビーム101の全経路とは独立して、二次分散関係を調節するのに適しているであろう。すなわち、該分散補償素子は、一次ビーム101の全経路(ここでは、図1、2、3a、3bにおける場合)に大きく影響を及ぼすことのない、分散的な方法(dispersive manner)で動作する。
【0034】
本記載の範囲内で、本装置は、ここで説明された機能に適合することができる。例えば、プログラム化されたコントローラ、ハードウェアに組み込まれたコントローラ、または、当該機能を達成するために適した他の任意の方法によって、本装置を当該機能に適合するようにできる。該コントローラは、電子コントローラ、とりわけ、デジタルコントローラとして提供され得るが、例えば、所望の機能を達成するために、電子回路として、または、機械的結合素子(mechanical coupling element)としても提供され得る。
【0035】
明らかに、経路に独立した調節は、メインビームエネルギー、または、ほぼメインビームエネルギーでの、特定のエネルギーの一次ビーム電子に対してのみ、可能である。二次分散のために、分散補償素子の下流の一次ビーム経路の傾斜角は、ビームエネルギーに依存するものである。それゆえに、“傾斜角に大幅に影響することなし”とは、ビーム101のメインビームエネルギーの、あるいは、ほぼメインビームエネルギー(例えば、ビームエネルギー幅の5倍未満、または、さらに2倍未満で、平均ビームエネルギーから離れたエネルギー)のエネルギーがあり、そのエネルギーでの傾斜角は、二次分散のわずかな(例えば、線形オーダー)の調節を行う際に、著しい影響を及ぼさないことを意味する。
【0036】
このように、図1の電子ビーム装置において、エミッター102からの一次電子ビーム101は、分散補償素子104を通過して、二次分散をうける。同時に、一次ビーム101は、(図1に示されるように)偏向され得る。一次ビーム101は、光軸126に対する傾斜角で、分散補償素子104から出発して、該傾斜角でビームセパレータ115に受け取られる。ビームセパレータ115のすぐ上流の一次電子ビーム101の傾斜角は、一般にゼロではないが、10度未満である。
【0037】
その後、一次電子ビーム101は、磁気ビームセパレータ115を通過し、該一次ビーム101が、ビームセパレータ115の下流の光軸と、ほぼ平行となるか、または一致するように、そこで偏向される。同時に、該一次ビーム101は、一次分散をうける。その後、一次電子ビーム101は、半導体ウエハーのような試料130にぶつけるために、対物レンズ125によって、焦点が合わせられる。一次分散は、二次分散によって補われているので、ビーム101は、高分解能で試料130に命中する。
【0038】
一次ビーム101と試料130との相互作用から生じた二次電子ビーム135は、もう一度、反対向きではあるが、対物レンズ125を通過し、磁気ビームセパレータ115を通過するときに偏向され、それによって、二次電子ビーム135は、(上述のように)一次ビームから分離される。二次電子ビーム135は、一次ビーム101から分離した後、(図1に示されていない素子によって)電子検出器(electron detector)に導かれる。
【0039】
図1の装置は、高強度のビームを可能にするというさらなる利点を有し、その結果、良好な信号対ノイズ比で高いスループットの高速な検査を可能にする。すなわち、ビームセパレータ115は、対物レンズ125の本体部に埋め込まれているので、一次ビーム101と二次ビーム135に対する共通の経路は、非常に短い。そのために、ビーム間の電子電子相互作用(すなわち、一次ビーム101の電子と二次ビーム135の電子との相互作用)は、軽減される。そのようなビーム間の相互作用の影響は、あらかじめ、よく考慮されていない。しかし、本発明者らは、ビーム間の相互作用が像品質(image quality)に重大な負の影響を及ぼすようなことを示した説得力のある証拠を間接的ではあるが見つけた。すなわち、図1に示されたような装置において、大きなビーム強度とエネルギーで、一次ビーム101のぼやけに対して更なる寄与(contribution)が見つかった。この更なる寄与は、ビーム間の相互作用が、電子間の正面衝突(head-on electron-electron collision)に作用するという事実によって説明できる。これらの衝突は、望まれていないビームの広がりを生じ、達成できる分解能に不利益なものとなる。そのため、当該正面衝突は、高いビームエネルギーと強度において、特に有害なものと予想される。
【0040】
当該更なる寄与は、共通のビーム経路がより短くされるとぼやけが軽減するというものである。言い換えれば、正面衝突が起こり得るような経路(すなわち、一次ビーム101と信号電子ビーム135の間の共通のビーム経路)を短くすることによって、許容される正面衝突の既定のレベルに対して、ビーム強度を大きくすることができる。短い共通ビーム経路は、ビームセパレータ115が対物レンズ125の本体部に埋め込まれること、あるいは、対物レンズの上流または下流にじかに配置されることによって成し遂げられる。それによって、試料平面131(電子ビームが試料130に命中する平面)からビームセパレータ115の距離は、100mm未満にすることができ、ある実施形態においては、70mm未満、あるいは、さらに50mm未満にすることができる。例えば、一次電子と信号電子の共通経路は、100mm未満、70mm未満または50mm未満とするようにできる。また、一次電子と信号電子の共通経路は、一次ビームの全長(すなわち、電子源(electron source)から試料への一次ビームの長さ)の25%の長さよりも短くすることもできる。それにより得られる高強度のビームは、高いスループットで、かつ良好な信号対ノイズ比で、高速な検査を可能とする。
【0041】
要約すれば、図1の装置は、一次ビームと二次ビームの衝突の長さの最小化を可能とし、高い空間分解能で高強度の動作を可能にする。
【0042】
図1の装置は、集束レンズ(例えば、上流の対物レンズ)と、特に上流の分散補償素子のように、付加的な素子を備えることもできる。
【0043】
図2と図3aからdを参照し、更なる実施形態をここで説明する。図1のより一般的な記載は、これら更なる実施形態にも適用する。
【0044】
図2の電子ビーム装置(例えば,SEM)200において、分散補償素子204は、磁気コイル(磁界偏向器)205と、電界(静電)偏向器206、偏向器205と206のいずれも同じ偏向平面内でビーム201を偏向するのに適している(ここで、偏向平面(すなわち、ビームが偏向される範囲の平面)は、図2aの平面である)。さらに、偏向器205と206は、後でより詳細に説明される制御装置270に接続される。図2では、分散補償素子204の総偏向(total deflection)Dは、ビームセパレータ215の偏向のように、同等の大きさと反対符号を有するように選択される。これは、垂直な縦の列を可能にし、それゆえに、偏向器205の上流と偏向器215の下流の領域で、光学素子を垂直的に配列することが可能となる。
【0045】
図1、図2aの説明に加えて、電子ビーム装置200のいくつかの付加的な素子を含む(これらの素子は必要であるかもしれないが、図1の実施形態において述べられる必要はない)。言い換えれば、図2aの装置200は、一次ビームと信号ビームのための開口部(openings)を有するプレート210と、収集装置(信号ビーム235のビーム経路に沿って配列された素子)を含む。さらに、装置200は、試料230が電子ビーム201と相互に作用する試料平面(specimen plane)231を定める試料受け皿(specimen receiver)232を有する。
【0046】
図2aの電子ビーム装置200において、一次電子ビーム201は、図1について説明したように進み、さらに、プレート210における開口部を通過する。
【0047】
ビームセパレータ215によって一次ビーム201から分離された後、結果として生じる信号電子ビーム235は、さらにプレートにおける開口部を通過して、その後、例えば、米国特許7335894号明細書(特許文献2)(図5、第9欄第57行目から第10欄第56行目まで参照)に記載されているような、電子検出器(electron detector)265に導かれる。あるいは、信号電子ビーム235は、任意の別の方法で該検出器に導かれることもできる。
【0048】
さらに、電子ビーム装置200は、試料230を受けるための試料受け皿232を含む。試料受け皿232は、電子ビーム装置200の動作中に試料230が電子ビーム201と相互に作用する試料平面231を定める。
【0049】
図2aの電子ビーム装置200は、さらに、図2aに示されていない素子を含むこともあり得る。例えば、電子ビーム装置200は、一次電子ビーム201に対するエネルギーフィルタ、電子ビーム201を加速するためのビーム増幅電極(beam boost electrode)、かつ/または、ビーム201で試料上を走査する走査システム(scan system)を含むことができる。走査システムは、例えば、静電偏向板または磁気偏向コイルまたはそれの組み合わせを含むことができる。例えば、走査システムは、4から16の静電偏向板(例えば、8つの静電偏向板)を含むことができる。また、走査システムは、少なくとも2つの偏向コイル(試料平面における各走査方向に対して少なくとも1つのコイル)を含むことができる。該偏向システムは、一般的に、ビームセパレータ215の下流、すなわち、対物レンズ225の内側または下流に置かれる。
【0050】
図2bは、図2aの装置(いくつかの省略可能な素子は省略)とさらに制御装置270を示す。該制御装置は、分散補償素子204の下流の一次ビーム201の傾斜角とは独立して、二次分散を調節することに適しており、例えば、分散補償素子204は、一次分散を十分に補うように、二次分散に従って一次電子ビームに作用する。
【0051】
このために、制御装置270は、分散補償素子204に接続される分散補償コントローラ271、ビーム分離素子215に接続されるビーム分離コントローラ272、電子検出器265に接続される必須ではないビーム分析器273、コントローラ271、272、273に接続されるメインコントローラユニット274を有する。
【0052】
示された実施形態から独立した一般的な特徴として、分散補償コントローラ271は、分散補償素子204に接続されて、プログラム化され、または、ハードウェアに組み込まれ、または、分散補償素子204の下流の一次ビーム201の傾斜角とは独立して二次分散を調節することに適した任意の他の方法で、実現される。つまり、図2bに示される例では、分散補償コントローラ271は、総偏向D=d1+d2が、所定の偏向で一定を保てるように、偏向器205と206の偏向d1とd2を調節することに適している。
【0053】
動作の1つのモードに従って、制御装置270は、次のような、ビーム分離素子(beam separation element)215の所定のビーム分離偏向に従う動作に適している。メインコントローラユニット274は、所定のビーム分離偏向をビーム分離コントローラ272に供給し、該ビーム分離コントローラ272は、ビーム201と235を所定のビーム分離偏向によって偏向させて、それによってビーム201の一次分散を生じるように、ビーム分離素子215を制御する。その後、メインコントローラユニット274は、一次分散を補う適切な二次分散を決定し、該二次分散を分散補償コントローラ271に送信する。さらに、該分散補償コントローラは、分散補償素子204に該二次分散を実行させる。
【0054】
メインコントローラユニット274は、様々な方式によって適切な二次分散を決めることができる。例えば、フィードバック制御ループ(feedback control loop)に従って、ビーム分析器273は、電子検出器265から像情報を受け取り、そこから、像品質信号(image quality signal)(例えば、スポットサイズ指示信号(spot size indicative signal))を生成する。その後、メインコントローラユニット274は、様々な二次分散に対して、ビーム分析器273から像品質信号を受け取り、さらに、該像品質信号に従って適切な二次分散を選択する。もう一つの選択肢として、メインコントローラユニット274は、図1に図示されたモデルのような、ビームモデルに基づいて適切な二次分散を計算することもできる。その基準は、試料に命中する電子ビーム201の一次色収差が、ゼロとなることである。また、メインコントローラユニット274は、様々なパラメータに対する適切な値を有する格納されたテーブルから適切な二次分散を取得することもできる。
【0055】
図2bのコントローラ270は、図2aと図2bの実施形態に対して適している。しかし、いくつかのバリエーションを含むことで、コントローラ270が、ここで示された、あるいは、ここで主張された任意の他の実施形態(例えば、図3aからhの実施形態)にも適合させることができる。
【0056】
さらに、図1、図2aまたはbの実施形態の分散補償素子は、総分散(total dispersion)(一次色収差)が、ゼロとなるように分散を調節することに適しているとはいえ、本装置は、必ずしもこのように動作する必要がない。その代わりに、分散補償素子のおおよその近似した制御を実行することで十分ということもあり得る。例えば、総分散は、所望の分解能を得るために、ゼロに十分に近ければよい。あるいはまた、特定の総分散を有するビームが、いくつかの応用分野に望まれているかもしれない。この場合において、分散補償素子104の分散を、所望の総分散(それは、ゼロまたはゼロでないかもしれない)を与えるために、調節することができる。
【0057】
図3aからhにおいて、分散補償素子104の可能な実現例は図示されている。これらの素子のいずれもが、図1または図2の分散補償素子104/204の代わりに使うことができる。
【0058】
一般に、分散補償素子104は、2つの偏向器、例えば、電界偏向器(electric deflector)または磁界偏向器を備えている。その個々の偏向(メインビームエネルギーで、または、ほぼメインビームエネルギーでの、ビーム101の総偏向に対する個々の寄与、それぞれ、d1、d2として示される)は、総偏向D=d1+d2が一定になるように制御される。それゆえに、一方の偏向器の寄与d1は。変化させることができる。さらに、他方の偏向器は、残りの偏向d2=D-d1を提供するように制御される。偏向d1とd2は、同符号を有すること、または、反対符号を有することができる。このように、分散は、d1の値を変えることで、変化させることができ、一方、総偏向Dは一定に保たれる。総偏向Dは、ゼロとなる値を有する、または、ゼロではない値を有することもあり得る。
【0059】
さらに、分散補償素子104の2つの偏向器は、異なる方法で、それらの偏向によって決まる、それぞれの分散を有するように選択される。例えば、偏向器の1つは電界偏向器でもよく、他方は磁界偏向器でもよい。この場合において、それらの分散の合計は、総偏向Dに対する個々の寄与d1とd2によって決まる。総偏向Dは、一定を保つ。同様に、分散補償素子104はまた、3つまたはそれ以上の偏向器を含むこともできる。
【0060】
それゆえに、分散偏向素子104は、二次分散が一次分散を十分に補うように、該二次分散を調節することを可能とする。それは、分散補償素子104の更に下流のビーム傾斜の変化について心配する必要がない。いくつかの実施形態において、二次分散はまた、分散補償素子104の下流の一次ビーム101の全ビーム経路とは独立して(例えば、その変位量とも独立して)調節可能でもある。
【0061】
図3aの分散補償素子104は、図2のそれに相当し、図2の対応する説明も図3aに適用する。図3aにおいて、分散補償素子104は、分散補償素子104は磁界偏向器105と静電偏向器106を含む。偏向器105、106は、ゼロではない総偏向Dを与えるように制御される。総偏向Dは、ビーム分離素子115の偏向とは正反対である。
【0062】
図3bの分散補償素子104は、図3aのそれと類似する素子を有し、図3の説明も、別段の定めがない限り、図3bに適用する。しかし、図3aとは違って、偏向器105、106は、ゼロの総偏向Dを与えるように制御される。それゆえに、分散補償素子104はウィーンフィルタである。ウィーンフィルタの分散は、常に、D=d1+d2=0であるように、個々の偏向d1とd2を同時にチューニングすることで、調節することができる。
【0063】
従って、図3bにおけるビームセパレータ115の上流のビーム101は、光軸に対して傾きがある。同様に、ビーム源102とビームセパレータ135の上流の任意の他の電子光学素子(electron-optical element)は、傾いたビーム101に適応する。
【0064】
図3cは、分散補償素子104とビームセパレータ115の配置を示す。それは、図3aのそれと類似しているが、分散補償素子104は、光軸に対して傾いている。より正確には、分散補償素子104は、その軸104aが入ってくるビーム101に対してゼロではない角度を有するように傾いている。この角度は、偏向角(すなわち、分散補償素子104に入ってくるビームと、分散補償素子104から出て行くビームとの間の角度)よりも小さい。特に、この角度は、偏向角の半分にすることもできる。例えば、軸104aは、該分散補償素子の、主要な磁界ばかりでなく、主要な電界にも直交に交わるものとして定めることができる。
【0065】
図3dは、図3bのそれと同様である、分散補償素子104とビームセパレータ115の配置を示すが、分散補償素子(ウィーンフィルタ)104は、光軸に対して傾いている。より正確には、分散補償素子104は、その軸104aが、入ってくるビームと平行となるように傾いている。対照的に、ビームセパレータ115(図1参照)は、光軸に対して平行である。
【0066】
図3eの分散補償素子104において、磁界偏向器105と静電偏向器106は、一次ビーム101に沿って、お互いから空間的に離される。偏向器105と106は、ビーム分離素子115の偏向とは反対になるが大きさは同じである(図3aと同様)総偏向D=d1+d2を生じるように制御される。
【0067】
偏向器105、106の空間的な分離により、該ビームは、図5を参照して述べたような、類似した効果によって変位させられる。結果として、この変位は、分散補償素子104の(ビームエネルギーに関して、試料に命中するビーム101の位置に依存して)二次分散への更なる寄与とみなせることができる。この更なる寄与は、最終に総分散がゼロとなるように、偏向d1とd2が調節される場合に、考慮に入れられるかもしれない。偏向器105、106は、わずかな間隔のみによって、変位されるときには、二次分散への当該追加の寄与は、無視されることもあり得る。
【0068】
図3eでは、静電偏向器106は、一次ビーム101の経路に沿って、磁界偏向器105の上流に配置される。代替の変形例では、静電偏向器106は、磁界偏向器105の下流に配置することもできる。さらに、図3eでは、偏向器105、106は、同方向への偏向を提供するように制御される。あるいはまた、偏向器105、106の偏向が、お互いを完全にあるいは部分的に打ち消すように、偏向器105、106は、反対方向に偏向を提供することもできる。
【0069】
図3fの分散補償素子104では、分散補償素子104は、磁界偏向器105とビームティルター(beam-tilter)107を含む。代わりに、磁界偏向器105は、静電偏向器または別のタイプの偏向器に置き換えることも可能である。
【0070】
ビームティルター107は、磁界偏向器105に、入ってくる電子ビーム101を傾ける効果があり、また、換言すれば、磁界偏向器105のビーム源102の虚像(virtual image)の偏向角を傾ける効果がある。
【0071】
原則としては、ビームティルター107は、中心に対してビーム源を回転させるための機械的なビームティルターとして実現できる。該中心は、望ましくは偏向器105の中心に位置する。機械的なビームティルター107の場合では、ビームティルターは分散を備えていない。従って、分散補償エレメント104の総分散は、磁界偏向器105の分散に等しい。
【0072】
もう1つの選択肢として、ビームティルター107は、例えば、図3a、図3cに示されたような偏向器106によって、または、一連の偏向器(静電、磁界、その他任意の偏向器、または、それらの組み合わせ)によって実現できる。この場合において、ビーム源102の物理的な位置は、変わらないままにすることができ、仮想光源位置のみが変えられる。ビームティルター107の偏向器は、偏向器105よりも異なるタイプがより好ましい、さもなければ、ビームティルター107と偏向器105の網状分散(net dispersion)は、簡単には調節できないので、大きく打ち消されてしまうからである。
【0073】
また、ビームティルター107は、機械的なビームティルターの組み合わせと、1またはそれ以上の偏向器(電界、または、磁界、または、それらの組み合わせ)の組み合わせを含むことができる。さらに、ビームディルター107の角度と偏向器105による偏向は、偏向器105の下流の一次ビーム101の傾斜角を変えないように、一緒に調節できる。これによって、二次分散は調節される。特に、二次分散は、一次分散を十分に補うように調節できる。
【0074】
図3gは、図3aのそれと類似した配置であるが、分散補償素子104のすぐ上流のビーム101が、光軸に対して傾斜している。該傾斜は、図3fのように調節可能であるかもしれないが、分散が調節可能である限り、調節可能である必要はない。以下では、分散は調節可能であるが、傾斜は調節可能ではない装置について説明する。
【0075】
図3gでは、分散補償素子104の上流のビームとビームセパレータ115の下流のビームは、お互いに平行にならない。すなわち、図3gの分散補償素子104の偏向角とビームセパレータ115の偏向角とは、異なる絶対値を有する。
【0076】
ビーム装置は、特定の定格ビームエネルギー(particular rated beam energy)に対して、適しているかもしれない。この場合では、静電偏向器106のゼロ電界(zero electric field)のため、かつ、該定格ビームエネルギーのために、ビーム101の全体の色収差がゼロとなるように、分散補償素子104のすぐ上流のビーム101の傾斜角が選択され得る。この傾斜は、ビーム101のビーム経路の数値シミュレーションによって見つけることもできる。また、当該傾斜は、色収差が消えるまで(図3fの装置のような)傾斜角の調節ができる装置をチューニングすることによって、見つけることもできる。
【0077】
この傾斜した状態で、分散補償素子104の分散は、総偏向D=d1+d2が一定を保つように、偏向器105と106の同時調節によって、図3aのように調節できる。ここで、該定格エネルギーに近いエネルギーに対して、ほんの小さな電界が必要とされる。それゆえに、電極は、ビーム101から比較的遠く離れて配置されることがあり得る。ただし、電極は、悪影響を及ぼす傾向が少ない。
【0078】
図3hは、図3gの装置の更なる変形を示し、図3gの上記記述は、図3hにも適用する。しかし、図3gにおいて、分散補償素子104の電界偏向器105と磁界偏向器106とは、(図3aでも示したように)お互いに重なり合っているのに対して、図3hでは、それらは、(図3bでも示したように)電子ビーム101のビーム経路に沿って、異なる位置に置かれている。
【0079】
以下、図4を参照すると、対物レンズ125と該対物レンズ125の内部のビーム分離素子115の配置が記載されている。一般に、対物レンズは、試料130上に一次ビーム101の焦点を合わせるためのビーム集束レンズであり、すなわち、最終的な集束レンズである。対物レンズ125は、電子ビーム101のクロスオーバを縮小するのにも適しているかもしれない。
【0080】
図4に示される対物レンズ125(より正確には、レンズ本体部)は、磁気レンズ素子125cを有する複合レンズ(compound lens)である。加えて、上部(上流)電極125aと下部(下流)電極125bは、対物レンズ本体部の一部として備えられる。上部電極125aは、上流から下流方向に、開口部を有する電極板125a1、第一円筒部(first cylindrical portion)125a2、先細部(tapered portion)125a3、第二円筒部(second cylindrical portion)125a4を有する。上部電極部125aは、光軸126に対して同心円状に配置される。第一円筒部125a2の内径は、第二円筒部125a4の内径よりも大きく、先細部125a3は、これら2つの部分125a2と125a4につながっている。
【0081】
電極125a、125bは、該下部電極が減速させ、それによってビームの焦点を合わせるというような方法で、バイアスをかけることができる。磁気レンズ素子125cは、該レンズの集束効果(focusing effect)を調節するのに役に立つ。純粋な静電レンズでは、磁気レンズ素子125cは、第三の静電電極(electrostatic electrode)に置き換えることもできる。
【0082】
ビーム分離素子115は、対物レンズ125の内側に、少なくとも部分的に置かれる。すなわち、光軸126に対して垂直な横断面となる。それは、レンズ125(磁気レンズ素子125c)の部分とビーム分離素子115の部分のいずれも含む。もう1つの選択肢として、ビーム分離素子115は、ライナーチューブ(liner tube)を取り囲んでいる磁気レンズの内側に置かれる。さらに、ビーム分離素子115は、レンズ125のレンズ本体部の出口方向(最も下流部分(most downstream portion))よりも、より入口方向(最も上流部分(most upstream portion))に置かれる。一般に、図4の実施形態に制限されるものではなく、ビーム分離素子115は、レンズの内径、かつ/または、上部電極125aの内径の内側に少なくとも部分的に置くこともできる。
【0083】
対物レンズ125は、複合電磁レンズ(compound electric-magnetic lens)として示されているが、いずれにしても、該レンズは、一次ビームの焦点を合わせるのに、1またはそれ以上の集束電極を備えることもできる。集束電極は、同時に、所定のエネルギーにビームを減速させることに役立つ。さらに、集束電極は、調節電極(adjustment electrode)によって、かつ/または、焦点の調節と微調整のための別の調節機構(adjustment arrangement)(例えば、図4に示されるような磁気機構125cなど)によって補うこともできる。試料電位(specimen potential)を得るために、さらに付け加えられた電極が制御されるかもしれない。ビームセパレータは、いずれにしても、図4に示したようにレンズ本体部、または、対物レンズのすぐ上流に(すなわち、中間に、ビーム光学素子(beam-optical element)なしに)、埋め込むことができる。また、ビームスキャナ(beam scanner)は、ビームセパレータと該ビームセパレータの下流の対物レンズとの間に備えることもできる。特に、ビームスキャナは、それらの間の唯一の素子として与えられることもあり得る。ビームスキャナは、磁気スキャナ(magnetic scanner)または静電スキャナ(electrostatic scanner)とすることもできる。また、該スキャナは、同時に、付加的な機能を備えることもできる。その機能とは、静電スキャナの場合において、該静電スキャナの静電八重極素子(electrostatic octupol element)が、非点収差補正フィールド(stigmator field)も生じるようなものである。また、ビームセパレータは、一般に、その磁気偏向フィールド(magnetic deflection field)が、対物レンズの静電集束フィールド(electrostatic focusing field)に、大幅に重なり合わないように、配列される。
【0084】
対物レンズ125は、二重集束セクターユニット(double-focusing sector unit)であるかもしれない。そのユニットは、第一の範囲(first dimension)に焦点を合わせるためのセクター(四重極ユニット(quadrupole unit)と、円筒レンズ(cylinder lens)または、側板(side plates))と、第二の方向(second direction)に焦点を合わせるためのセクターを含む。対物レンズ125は、選択的に、アインツェルレンズ(Einzel-lens)または、任意の他のタイプのレンズとすることもできる。
【0085】
一般的な特徴によると、ビームセパレータ115は、対物レンズ125の内腔に置かれるが、対物レンズ125の実質的な集束電界の領域の外側である。それによって、ビームセパレータ115の磁気偏向フィールドとレンズ125の電気集束フィールド(electric focusing field)との大幅に重なった状態は、回避される。
【0086】
さらに、走査ユニット(scanning unit)(図示しない)は、備えられることもあり得る。該走査ユニットは、レンズ125(例えば、ビームセパレータの下流)の内部か、それとも、レンズ125の更なる下流(すなわち、レンズと試料の間)に置くことができる。
【0087】
上述した実施形態は、更なるたくさんの方法に従って変更できる。例えば、信号電子ビームをビーム偏向器に導くための構造は、任意に変更可能である。一般に、該構造は、一次電子ビームに影響しない信号電子ビームを得るために、光学的諸特性(optics)を集束させること、フィルタリングすることを含む。
【0088】
さらに、電子ビーム装置は、複数の円柱(column)を含むことができる。各円柱は、それぞれ、ビーム源とここで説明されたような(図1で示されたいくつか、またはすべての素子のような)その他の素子を含む。また、電子ビーム装置は、さらに、例えば電子対物レンズの下流の走査装置(scanning arrangement)などの、電子光学素子を含むことができる。
【0089】
以下では、本発明の更なる特徴をいくつか説明する。任意のいくつかの特徴は、任意の他の特徴、または、ここで述べた実施形態と組み合わせてもよい。
【0090】
ある特徴によると、ビームセパレータは、一次電子ビームを偏向するための偏向器である。特に、該ビームセパレータは、純粋な磁界偏向器(すなわち、他のもの、例えば、静電コンポーネント、偏向コンポーネントを含まない)であり、特に、唯一の偏向素子として磁気ダイポール素子(magnetic dipole element)を含む。それゆえに、電界偏向器は含まれない(例えば、ウィーンフィルタ素子と同じでない)。
【0091】
さらに他の特徴によると、ビームセパレータは、光軸に対して傾いたビームとして一次ビームを受け取ることに適し、一次ビームが光軸に対して実質的に平行に、ビームセパレータから出るように、該一次ビームを偏向することに適している。
【0092】
さらに他の特徴によると、電子ビーム装置は、さらに、試料を受けるための試料受け皿を含み、該試料受け皿は、該電子ビーム装置の動作中に試料が電子ビームと相互作用する試料平面を定める。さらに、試料平面からビームセパレータまでの距離は、100mm未満、70mm未満、あるいは、さらに50mm未満、かつ/または、一次ビームの全ビーム長の1/4よりも小さい距離である。このように、一次および二次電子の共通経路は、この距離よりも小さくすることが可能である。さらに他の特徴によると、ビームセパレータのすぐ上流の一次電子ビームの傾斜角は10度未満である。さらに他の特徴によると、ビームセパレータはレンズの半分部分より上流に少なくとも部分的に配置される。さらに他の特徴によると、試料平面から光学レンズまでの距離は、70mm未満、または、さらに50mm未満、かつ/または、一次ビームの全ビーム長の1/4よりも小さい距離である。
【0093】
さらに他の特徴によると、分散補償素子は、20度未満、12度未満、または、さらに10度未満で、電子ビームを傾けるのに適している。また、さらに他の特徴によると、ビームセパレータは、20度未満、12度未満、または、さらに10度未満で、電子ビームを傾けるのに適している。
【0094】
さらに他の特徴によると、レンズは、より大きな内径の円筒状の上流部分の電極と、より小さな内径の円筒状の下流部分の電極部分とを備え、ビームセパレータは、該上流部分の少なくとも部分的に内側に置かれる。
【0095】
さらに他の特徴によると、ビーム分離素子かつ/または分散補償素子は、一次ビームの交差を伴わないビーム経路(cross-over free beam path)の位置に、すなわち、装置の動作中にビームの交差が生じない位置に与えられる。
【0096】
さらに他の特徴によると、分散補償素子とビームセパレータは、同じ平面の範囲内で電子ビームを偏向するのに適している。
【0097】
さらに他の特徴によると、分散補償素子は、一次ビームの経路とは独立して、二次分散関係(second dispersion relation)を調節するのに適しており、特に、エミッターから試料までの全体の経路とは独立して、二次分散関係を調節するのに適している。その上、分散補償素子は、主速度(main velocity)の電子に対して、全体の一次ビーム経路に大幅に影響することなく、分散的なやり方(dispersive manner)で動作する。さらに他の特徴によると、分散補償素子は、第一偏向器と第二偏向器を含み、第一偏向器と第二偏向器は、互いに異なる分散特性を有する。例えば、電界偏向器と磁界偏向器のような場合がある。より具体的には、第一偏向器の分散のための少なくとも1つの偏向角の大きさが、第二偏向器のそれと異なる場合に、両偏向器の分散特性は、電子ビームのメインエネルギーに対して、お互いに異なる。さらに他の特徴によると、偏向器は、互いに反対方向に電子ビームを偏向するのに適している。例えば、偏向はお互いを打ち消し合うが、分散はお互いを打ち消し合わない。
【0098】
さらに他の特徴によると、電子ビーム装置は、ほぼ正反対の偏向角を得るために、第一と第二の偏向器を制御する。それゆえに、分散補償素子の制御装置は、第一と第二の偏向器の偏向角が、お互いにほぼ正反対になるように、第一偏向パワーを第一偏向器に、第二偏向パワーを第二偏向器に供給するのに適している。“ほぼ正反対になる”とは、一次ビームのメインエネルギービーム部分に対して反対を意味する。
【0099】
さらに他の特徴によると、分散補償素子は、結果的に所定の偏向角になるような偏向角を得るために第一と第二の偏向器を制御するのに適している。該所定の偏向角とは、ビームセパレータの偏向角と大きさは等しいが、正反対になるものである。
【0100】
さらに他の特徴によると、分散補償素子は、電子ビーム装置の二次電子経路の外側、すなわち、一次電子ビームのみの領域に配置される。
【0101】
さらに他の特徴によると、一次分散は、光軸と直交する第一の偏向方向を定める異方性分散であり、二次分散もまた、第一の偏向方向に平行する第二の偏向方向を定める異方性分散である(ここで、“平行”とは逆平行の場合も含む)。
【0102】
さらに他の特徴によると、電子ビーム装置は、分散補償素子の下流の一次ビームの傾斜角とはほぼ独立して、二次分散を調節するのに適している分散補償制御装置を含む。例えば、分散補償素子は、一次分散を十分に補うように、二次分散に従って一次ビームに作用する。さらに他の特徴によると、磁気ビームセパレータは、対物レンズの実質的な電界領域の外側で作用するのに適している。
【0103】
上述したものは、本発明の実施形態に導くものであるものの、本発明のさらなる実施形態は、本発明の基本的な範囲、特許請求の範囲によって定まる本発明の範囲から逸脱することなく、考え出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電子ビーム(101,201)を放出するビームエミッター(102,202)と、
試料(130,230)上に一次電子ビーム(101,201)の焦点を合わせる対物電子レンズ(125, 225)であって、該レンズは、光軸(126,226)を定める、対物電子レンズと、
一次電子ビーム(101,201)から信号電子ビーム(135,235)を分離するための一次分散を備えたビームセパレータ(115,215)と、
二次分散を備えた分散補償素子(104,204)であって、該分散補償素子は、前記二次分散が前記一次分散を十分に補うように、前記分散補償素子(104,204)の下流の一次ビーム(101,201)の傾斜角とは独立して、前記二次分散を調節するのに適しており、前記分散補償素子(104,204)は、前記一次電子ビーム(101,201)に沿って、前記ビームセパレータ(115,215)の上流に配置される、分散補償素子(104,204)と、
を含む電子ビーム装置(100,200)。
【請求項2】
前記ビームセパレータ(115)は、前記一次電子ビーム(101)を偏向する偏向器である、請求項1に記載の電子ビーム装置。
【請求項3】
前記ビームセパレータ(115)は、唯一の偏向素子として、磁気素子を含む純粋な磁界偏向器である、請求項2に記載の電子ビーム装置。
【請求項4】
前記ビームセパレータ(115)は、前記光軸(126)に対して傾斜したビームとして、前記一次ビーム(101)を受け取り、前記ビームセパレータ(115)の下流の前記一次ビームが、前記光軸に対して実質的に平行になるように、前記一次ビームを偏向するのに適した、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項5】
試料(130)を受ける試料受け皿(132)であって、該試料受け皿(132)は、前記試料(130)が前記電子ビーム装置の動作中に前記一次ビーム(101)と相互に作用する試料平面(131)を定め、前記試料平面(131)からビームセパレータ(115)までの距離は、前記一次ビームの長さの1/4よりも小さい、試料受け皿(132)をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項6】
前記分散補償素子(104)は、前記一次ビームの経路とは独立して二次分散関係を調節するのに適した、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項7】
前記分散補償素子(104)は、第一偏向器(105)と第二偏向器(106)とを含み、該第一偏向器(105)と該第二偏向器(106)は、相互に異なる分散特性を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項8】
前記第一偏向器(105)は磁界偏向器であり、前記第二偏向器(106)は静電偏向器である、請求項7に記載の電子ビーム装置。
【請求項9】
ほぼ正反対の偏向角を得るために、前記第一および前記第二偏向器(105,106)を制御するのに適した、請求項7に記載の電子ビーム装置。
【請求項10】
合計すると所定の偏向角になるような偏向角を得るために前記第一および前記第二の偏向器(105,106)を制御するのに適した電子ビーム装置であって、該所定の偏向角は、前記ビームセパレータ(115)の偏向角と大きさは等しいが正反対になる、請求項7に記載の電子ビーム装置。
【請求項11】
前記ビームセパレータ(115)は、前記対物レンズ(125,225)の本体部に埋め込まれ、
前記レンズの本体部の上流側半分部分に少なくとも部分的に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項12】
前記分散補償素子は、前記電子ビーム装置の二次電子経路の外側に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項13】
前記一次分散は、前記光軸と直交する第一偏向方向を定める異方性の分散であり、前記二次分散は、前記第一偏向方向に平行する第二偏向方向を定める異方性の分散である、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項14】
前記分散補償素子(104)の下流の一次ビーム(101)の傾斜角とはほぼ独立して、前記二次分散を調節するのに適した分散補償制御装置(271)であって、前記分散補償素子(104)が、前記一次分散を十分に補うように前記二次分散に従って前記一次ビームに作用するように調節を行う、分散補償制御装置(271)を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子ビーム装置。
【請求項15】
一次電子ビーム(101)を発生させることと、
対物電子レンズ手段(125)によって、試料(130)上に前記一次電子ビーム(101)の焦点を合わせることと、
前記一次ビーム(101)と前記試料(130)との相互作用によって信号電子ビーム(135)を発生させることと、
ビームセパレータ(115)よって、一次分散に従って一次電子ビーム(101)と信号電子ビーム(135)との反応を引き起こし、それによって、前記一次電子ビームから前記信号電子ビームを分離することと、
分散補償素子(104)の下流の前記一次ビーム(101)の傾斜角とは独立して、前記分散補償素子(104)の二次分散を調節することであって、前記分散補償素子(104)が、前記一次分散を十分に補うように前記二次分散に従って前記一次ビームに作用するように調節を行う、前記分散補償素子(104)の二次分散を調節することとを含む、電子ビーム装置の動作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate