説明

分析サンプルを収容する容器に取り付けできる一体型分析装置

【課題】分析サンプルを収容する容器に取り付けできる一体型分析装置の提供。
【解決手段】本発明は概して、生物分析等の分析分野に関する。具体的に、本発明は、本質的に以下:
・第一の不浸透性膜;
・第一の膜に重ねた第二の不浸透性膜;
・第一及び第二の膜がこれらの表面の一部が重なった状態で固着されていて辺縁部が形成され、これにより、流体と分析装置の外部とをつなげる手段を有さない反応用の内部空洞を形成する隙間の空間ができている;
・反応用の内部空洞の中に配置されていて、サンプルと接するように作られた分析手段;
・サンプルが反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段:
を含む、分析サンプルを入れた容器に取り付ける分析装置に関する。
また、本発明は、上記分析装置を含む容器にも関する。
さらに、本発明は、本発明の分析装置を使用する、容器に入ったサンプルの分析方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、例えば生物学分析等の分野に関する。具体的には、本発明は、分析サンプルを収容する容器に取り付けできる一体型分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析の分野において、特に生物学分析の分野において、サンプルの取り扱い技術者の安全性についての問題は、特に分析用に一部を抜きとる際の汚染の危険性から、定期的に提起される。
【0003】
このように、サンプルの無害性の確認用に輸血用血液バッグから一部を抜きとる際に、技術者が危険にさらされることが知られている。血液バッグは、外側が可撓性であるために、取り扱いが非常に困難な容器である。このため、血液バッグの取り扱い者は、サンプルと接触する可能性が非常に高く、かつ、血液が病原性物質を含む場合には汚染される危険性が非常に高い。
【0004】
また、汚染は逆の方向に生じる可能性もある。具体的には、汚染が疑われる尿等の生体液を抜きとる際に、抜きとりを実施する者自身がこのサンプルを汚染すると、このサンプルについて信頼性の高い診断を実施することは不可能である。
【0005】
食品サンプルの品質管理を実施する場合に非常に重要なのは、分析担当技術者は寄生性の汚染を引き起こしてはならないということである。また、食品サンプルは、調製済みの培地の中に入れることも多い。培地の中に入れるというのは、通常、微生物(特に細菌)が増殖できる培養培地の入ったプラスチックバッグにサンプルを入れるということである。微生物の増殖に要する時間インキュベートした後、培養培地を一回以上抜きとって、微生物検査を実施する。一部を抜きとる際には、通常、食品サンプル及び培養培地を挿入するためのバッグ開口部を開く。この操作を行う際、技術者は、バッグを開いたままで維持し、同時に、バッグを閉じる道具と培養培地を吸い出すピペットとを持たなければならないため、この操作は危険である場合が多い。更に、この操作条件では、分析時間が事実上長くかかる。サンプル数が多い場合には、生産性が大いに損なわれる。
【0006】
生体サンプル容器に連結させる分析装置が既に報告されている。これは、例えば特許文献1の分析装置の場合である。この用途で報告されている分析装置は、分析反応物を入れたバッグからなり、これには分析装置と生体サンプル容器を接続する接続チューブがついている。
【0007】
また、特許文献2は、分析反応物を入れたバッグの形状であって、接続チューブを有する分析装置について記載している;この装置は尿バッグに接続するためのものである。
【0008】
この種の装置によれば上述の問題は一部解決されるが、この装置にもやはりいくつかの欠点がある。主な欠点は、上記装置を取り付けできる接続チューブを併せ持つ容器とでないと使用できないという点である。この種の容器は、医学の分野においては広く使用されているが、非常に単純な容器を使用するアグロビジネスにおける品質管理の分野では事実上使用されていないといえる。
【0009】
従って、特に医学の分野においては、この種の装置に取り付けできる容器は限られている。
【0010】
この種の装置の欠点は、上記以外に、流体とバッグの外部とをつなげるチューブを有しているということである。最初はこのチューブに栓がされていても、このチューブを閉じる装置が壊れて、バッグと周りの空気とが接する危険性がやはり残る;これは、主な汚染源であろう、又は、この分析装置の欠陥であろう。
【0011】
最後に、この装置の最後の欠点は、この装置を生体サンプル容器に接続する際における技術者の汚染の危険性を完全に取り除くことができないという点である。
【特許文献1】国際特許WO−A−03/030739
【特許文献2】ドイツ特許DE−A−3504527
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記で考慮した従来技術が掲げる技術的問題の点において、本発明の本質的な目的の1つは、生物サンプル又は品質管理用サンプルを入れた任意の種の容器に容易に取り付けできる、低コストの分析装置の提供である;この容器は例えば可撓性プラスチック製のバッグ又は袋である。
【0013】
本発明の別の目的は、上記容器に取り付けた際に、上記容器に入れたサンプルの取り扱いを制限して、これによりサンプルを扱う者及びサンプル自体の汚染の危険性を制限する分析装置の提供である。
【0014】
本発明の別の目的は、汚染又は損傷の危険性の低い分析装置の提供である。
【0015】
本発明の別の目的は、必要であればピペット状又はシリンジ状のサンプル採取器を使用して払出しすることができる分析装置の提供である。
【0016】
本発明の別の目的は、サンプルの分析に要する時間を短縮できる分析装置の提供である。
【0017】
本発明の別の目的は、異なる種類の分析を実施できる分析装置の提供である。
【0018】
本発明の別の目的は、分析サンプルの容器に取り付けて、分析結果をより良好に追跡できる分析装置の提供である。
【0019】
本発明の別の目的は、後の分析のためにサンプルを回収できる又はサンプルの一部を抜きとりできる分析装置の提供である。
【0020】
本発明の別の目的は、上記容器が密閉されている場合に、容器の可撓性壁を通してサンプルを採取できる分析装置の提供である。
【0021】
また、本発明の最後の目的は、生体サンプルを入れるための容器であって、分析装置を常設的に組み込んで、これによりサンプルの取り扱いを制限して分析を容易にすることを特徴とする容器の提供である。
【0022】
これらの目的は、とりわけ、分析サンプルを入れた容器に取り付けるための分析装置であって、本質的に以下:
・第一の不浸透性膜;
・上記第一の膜に重ねた第二の不浸透性膜;
・上記第一及び第二の膜がこれらの表面の少なくとも一部が重なった状態で固着されていて辺縁部が形成され、これにより、流体と上記分析装置の外部とをつなげる手段を有さない反応用の内部空洞を形成する隙間の空間ができている;
・上記反応用の内部空洞の中に配置されていて、サンプルと接するように作られた少なくとも1つの分析手段;
・サンプルが上記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための少なくとも1つの手段:
を含むことを特徴とする装置にそもそも関する本発明によって達成される。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、上記のサンプルが上記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段は、上記第一又は第二の膜の一方に配置されていて上記第一及び第二の膜を互いから少なくとも部分的に離し得る少なくとも1つの好ましいグリップゾーンからなり、これによって上記反応用の内部空洞と上記容器内のサンプルとが接し得る。
【0024】
別の一実施形態によれば、上記のサンプルが上記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段は、上記第一又は第二の膜の一方に作用するように作られた少なくとも1つの手段からなる。
【0025】
上記手段は、穿孔手段であることが好ましい。
【0026】
上記穿孔手段は、上記空洞の中に配置されていることが更に好ましい。
【0027】
他の一実施形態によれば、上記のサンプルが上記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段は、第一の膜を形成する材料よりも破壊強度値の小さい材料から形成される第二の膜からなる。
【0028】
より具体的には、上記材料は、アルミニウム、銅、又は、積層可能な任意の細長い切片からなる群に含まれる。
【0029】
有利な一変形形態によれば、上記分析装置は、上記第一の膜に固着されていてこれを少なくとも部分的に覆う隔壁を含む。
【0030】
好ましくは、上記分析手段は、pH測定用の小片、イムノクロマトグラフィー用の小片、生化学的基質の小片又は任意の同等の分析手段等の多孔質反応媒体からなる群に含まれる。
【0031】
本発明の別の目的は、上記に定義される分析装置を少なくとも1つ含む容器に関する。
【0032】
好ましい一実施形態によれば、上記分析装置は、上記容器の壁に固着されている。
【0033】
本実施形態の第一の変形形態によれば、上記分析装置の第二の膜は、上記容器の壁に固着されている。
【0034】
本実施形態の第二の変形形態によれば、上記第二の膜は分析サンプルと直接接している。
【0035】
本発明の別の目的は、穿孔可能な材料で少なくとも部分的に作られた少なくとも1つの壁を有する容器に入ったサンプルの分析方法であって、本質的に次の段階:
a)任意の適切な手段によって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置を、穿孔可能な材料で作られた上記容器の壁の一部に取り付ける段階;
b)上記分析装置の第二の膜と上記第二の膜の向かい側に位置する上記容器の壁の一部とに穴をあけることによって、上記分析サンプルを上記分析装置の上記分析手段に接触させ、これにより、上記サンプルを上記反応用の内部空洞の中に移し得る段階;
c)上記分析手段により供給される結果を分析する段階:
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0036】
第一の変形形態によれば、段階a)は、上記反応用の内部空洞の中に配置された上記穿孔手段を使用して実施される。
【0037】
第二の変形形態によれば、段階a)は、上記分析装置から独立した穿孔手段を使用して実施される。
【0038】
この第二の変形形態の好ましい一実施形態によれば、段階a)は、上記装置の2つの膜と上記容器の壁とに上記穿孔手段を使用して穴をあける段階であり、ここで、上記第一の膜に固着された隔壁が上記第一の膜の穿孔ゾーンを囲んでいて、これにより、上記穿孔手段を引っ込めた際に分析サンプルが上記分析装置から漏れるのが妨げられる。
【0039】
本発明の別の目的は、容器に入ったサンプルの分析方法であって、本質的に次の段階:
a’)請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置を上記容器の中に配置する段階;
b’)分析サンプルを上記反応用の内部空洞の中に移すことによって、上記サンプルを上記分析装置の上記分析手段に接触させる段階;
c’)上記分析手段により供給される結果を分析する段階:
を含むことを特徴とする方法である。
【0040】
第一の実施形態によれば、段階b’)は、上記分析装置の上記第一又は第二の膜に穴をあける段階である。
【0041】
第二の実施形態によれば、段階b’)は、上記第一及び第二の膜に配置された好ましいグリップゾーンによって、上記第一及び第二の膜を少なくとも部分的に離す段階である。
【0042】
本発明の別の主題は、容器に入ったサンプルを分析するための分析装置の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の目的及び利点は、下記図面についての以下の詳細な記載に照らしてより明瞭に理解されるであろう。
【0044】
図1Aは、本発明による分析装置の第一の実施形態の上面図を表す。
【0045】
図1Bは、図1A中に表される分析装置の軸I−Iに沿った縦方向の断面図を表す。
【0046】
図2は、図1A及び2B中に表される分析装置を支持する容器を表す。
【0047】
図3Aは、図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【0048】
図3Bは、分析装置に穴をあける段階における、図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【0049】
図3Cは、サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【0050】
図4Aは、本発明による装置の第二の実施形態を支持する容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【0051】
図4Bは、サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図4A中に表される容器を表す。
【0052】
図5Aは、本発明による装置の第三の実施形態を支持する容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【0053】
図5Bは、サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図5A中に表される容器を表す。
【0054】
図6Aは、本発明による装置の第四の実施形態が入っている容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【0055】
図6Bは、サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図6A中に表される容器を表す。
【0056】
図1A及び1B中に示される分析装置は、第一の実施形態によれば、パッチ10の形状である。これは、図1B中において、上膜を形成する第一の膜12、及び、もう一方の底膜を形成する第二の膜14を含む。これらの2つの膜は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック材料、又は、任意の同等の材料で作られていることが有利である。このような材料により、可撓性で透明かつ不浸透性の膜を得ることができる。とはいえ、この材料は穿孔が可能でなければならない。上記2つの膜は、接着又は他の任意の適切な同等の手段(熱融着等)によってその内側表面の一部が固着されていて、反応用の内部空洞である隙間ゾーン16が作られている。本明細書中において、この空洞は、制限された幅の長方形部分として示され、その一端が丸いゾーンとなって広がっている。反応用の内部空洞16の長方形部分の中に分析手段18が配置されている。
【0057】
「分析手段」は、サンプルの生物学的及び/又は物理化学的パラメータの1つ以上を測定して、上記サンプル中の汚染物質又は特定のマーカーの存在を示すことのできる、任意の反応試験を意味する。
【0058】
従って、上記分析手段は、水の物理化学的分析、pH測定等の環境基準制御、微生物検査、アレルギー担体やバイオテロリズムの検出等のアグロビジネス検査、又は、言うまでもなく、尿や血液の化学的検査若しくは微生物検査、妊娠検査等の臨床分析において有利に使用される反応小片であってもよいが、これらは単に一例であって何ら制限を加えるものではない。この種の道具は当業者に公知であり、分析研究所においても工業的にも広く使用されている。
【0059】
第一の膜12の外面上、かつ、反応用の内部空洞の丸いゾーンに水平に、弾性を有する材料の堆積物が、表面積の小さな層20の形状で配置されている。この層20は、隔壁の役割をする。この層の機能については、以下の図3A〜3C中でより詳細に説明される。隔壁20を形成する弾性材料は、例えば、アルコキシ基を有する硬化性シリコーン等の適切なシリコーンであってもよい、又は、天然ゴムで作られていてもよい。
【0060】
図2は、分析サンプルを収容する容器の正面図を表す。具体的には、この例において、この容器22は血液採取用バッグである。この容器22は2つの(必要であれば透明な)可撓性の壁、すなわち前方壁24及び(この図中には示されない)後方壁を含み、これらの2つの壁はその周囲で固着されている。また、この容器は、底部に、サンプル28を容器の中に入れるための末端部26を含む。この末端部は、打抜手段(図示せず)によって打ち抜かれたものである。図1A及び1B中に示されるように、分析装置10が前方壁24上に配置されている。この分析装置10は、サンプル28に接する壁24の一部に接して配置されている。
【0061】
図2の軸III−IIIに沿った部分断面図が図3A中に示される。分析装置10の第二の膜14が容器22の壁24に固着されていることに着目する。この分析装置は、膜14の外面に配置された接着フィルムで、分析装置10の製造中に取り付けられていてもよい。一変形形態によれば、分析装置を容器に配置する際に、接着剤の堆積物又は両面テープ片を使用することができる。これによって、分析装置が容器22に固着され、使用できる状態になる。
【0062】
分析担当者は、分析の実施を決定すると、図3B中に一般的な形状である針32として表される穿孔手段を使用する。この針32は隔壁20の上方に位置している。その後、技術者は、両方向矢印Aで表される動作によって分析装置の隔壁20に穴をあけて、隔壁20、分析装置の膜12及び14並びに前方壁24に穿孔手段32で連続して穴をあけるが、容器22の後方壁30には穴をあけない。その後、穿孔手段32を矢印Aの方向に引っ込める。
【0063】
こうして、図3C中に示されるように、分析装置10の反応用の内部空洞16が容器22の内部とつながり、従ってサンプル28と接する。実際には、サンプルは、前方壁24及び膜14に形成された開口部の中に毛管現象によって吸い込まれ、反応用の内部空洞16に達した後、分析手段18と接する。穿孔手段32を引っ込めた後、隔壁20の開口部は、隔壁を形成する材料の弾性により自発的に閉じ、あとには小さな傷34だけが上記隔壁に残る。これによって、その後で分析装置の不浸透性が回復し、サンプルが分析装置の外に広がらず、周囲又はサンプルを扱う技術者の汚染が妨げられる。
【0064】
その後、分析手段18がサンプル28と接することにより分析が実施され得、その結果、反応に要する時間が経過した後、技術者は、分析手段上の分析結果を、(透明材料で作られている)膜12を通して読み取ることができる。
【0065】
これらの図3A及び3B中において、穿孔手段は針として表されているが、分析中に生じる化学反応又は生体反応に対して不活性であれば任意の好適な穿孔手段を使用することができる。
【0066】
本発明による分析装置の第二の実施形態が図4A及び4B中に表される。図3A〜3Cによれば、分析装置40は容器22に固着されている。図1B中に記載される第一の実施形態に類似する方法で、装置40は、図4A中において、上膜を形成する第一の膜42、及び、もう一方の底膜を形成する第二の膜44を含む。上記2つの膜は、接着又は他の任意の適切な同等の手段によってその内側表面の一部が固着されていて、反応用の内部空洞である隙間ゾーン46が作られる。反応用の内部空洞46の中に分析手段47が配置されている。分析装置40は、反応用の内部空洞46の中に配置された穿孔手段48をさらに含む。この穿孔手段48は、針先とは逆の端481が分析装置に固着された針からなる。この針は、金属又はさび止め合金、プラスチック等の任意の剛性材で作られていてよい。しかし、この材料は、分析中に生じる化学反応又は生体反応に対して不活性であることが重要である。
【0067】
図4A及び4B中には図示されていないが、分析装置40が容器から有利に独立していることに着目するべきである。
【0068】
分析実施中、取り扱い技術者は、容器の分析装置付近を手で持ち、分析装置、その後容器22を矢印Bの方向に回転させることによって、穿孔手段48の針で、後方壁30には穴をあけずに、分析装置の膜44及び容器22の前方壁24に穴をあける。有利には、穿孔手段は、自身の動きを制限できるガードを含んでいてもよい。穴があいた後、取り扱い者が力を緩めると、分析装置40及び容器22の形が元に戻る。そして、穿孔手段48が膜44と本質的に平行な位置に戻る。その後、恐らくは回転ゾーンによって引っ込んでいるであろうサンプル28の位置が元に戻り、分析装置の膜44及び前方壁24に形成された穴49の中に吸い込まれて、図4B中に示されるように反応用の内部空洞に達する。その後、分析手段とサンプルとが接し、これにより、検出すべき検体が存在する場合に、反応用の内部空洞46の中で反応が生じる。続いて、透明な膜42を通して分析結果を直接読み取ることができる。
【0069】
本発明による分析装置の第三の実施形態は、図5A及び5B中に表される。
【0070】
上記に記載された最初の2つの実施形態とは異なり、本明細書の図5A及び5B中に表される分析装置501は、容器50と一体になっている。分析装置501は2つの膜、すなわち、図5A及び5B中において、上膜を形成する第一の膜52、並びに、もう一方の底膜を形成する第二の膜54を含む。上記2つの膜は、接着又は他の任意の適切な同等の手段によってその内側表面の一部が固着されていて、反応用の内部空洞である隙間ゾーン56が作られる。反応用の内部空洞56の中に分析手段57が配置されている。図5A及び5B中に見られるように、容器50の前方壁58において、分析装置501と水平なゾーンが切り抜かれていて、分析装置の膜54の外面が容器50中のサンプル28に直接接する。この容器は後方壁59をさらに含む。
【0071】
底膜54について、後者は、破壊強度値が適度に低い材料で作られていることが有利である。この材料とは異なり、上膜52の形成に使用される材料は、破壊強度値が膜54より大きくなくてはならない。膜54を形成する材料は、例えば、厚さが100分の数マイクロメートル〜数マイクロメートル、有利には10分の数マイクロメートルのアルミニウムシートであってもよい。あるいは、この材料は、銅、又は、積層可能な任意の細長い切片であってもよい。一方、膜52を形成する材料は、上述の実施形態に使用される材料と同一である。
【0072】
分析装置をサンプルに接触させるためには、穿孔手段(図5A及び5B中には図示されない)の使用が有利である。例えば、こうした穿孔手段はペンチ型のものであってもよい。このペンチは、端が突き出したゾーン(雄部と呼ばれる)になっているアームを一本と、端が、上記の突き出したゾーンに適合するカップ状のゾーン(雌部と呼ばれる)になっているアーム一本とを含むことが有利であろう。その後、取り扱い技術者は、容器50の分析装置501を矢印Cの方向にはさみ、これによって、分析装置の膜と容器の後方壁59とを雄部と雌部の間で捕捉する。そして十分な力がかかると膜54は壊れるが、より強度の大きい膜52及び後方壁59はこれに耐える。膜54に穴541があいている図5B中に示されるように、容器に入ったサンプル28が反応用の内部空洞56の中に入り込んで、分析手段57と接する。その後、透明な膜42を通して分析結果を直接読み取ることができる。
【0073】
この実施形態の一変形形態によれば、膜54を形成する材料は脆い材料であってよい。こうすることによって、本発明の実施を要する技術者は、膜54に穴をあけるためにペンチ型の物体を使用しなくてもよい。技術者は、爪で装置に穴をあけるだけでよい、又は、装置を回転させて膜を破壊するだけでよい。
【0074】
この実施形態によれば、本明細書中において上述する実施形態とは異なり、容器は分析装置と一体になった状態で製造されることに着目すべきである。具体的には、分析装置が容器の壁のうち一方に取り付けられることはないであろう。
【0075】
一方、この実施形態の別の変形形態は、容器とは別に製造されていて、容器の中にスライドさせてサンプルと直接接触させることができる分析装置である。分析を実施する際、分析装置は容器底の一方の隅に捕捉されているのがよく、これによって、取り扱い技術者が上述のペンチで装置に穴をあけて、容器に直接穴をあけることができる。この変形形態が正確に実施されるためには、当然、容器の壁は、穿孔に耐えるだけでなく、分析装置に穴をあけることができるくらいに十分に可撓性であることが適切である。また、分析結果を読み取ることができるよう、容器の壁は透明であることが適切である。
【0076】
最後の実施形態が図6A及び6B中に示される。本明細書中に記載の、前述の実施形態の変形形態に類似して、上述の分析装置60は、サンプル28が入った空間を囲む2つの壁72及び74を有する容器70の中への配置に適切である。この分析装置60は、図6A中において、上膜を形成する第一の膜62、及び、もう一方の底膜を形成する第二の膜64からなる。これらの2つの膜は、その内側表面の一部が固着されていて、反応用の内部空洞である隙間ゾーン66が作られる。反応用の内部空洞66の中に分析手段67が配置されている。また分析装置60は、2つの好ましいグリップゾーンをさらに有する。第一の好ましいグリップゾーン621は、膜62の広がった部分に配置されている。第二の好ましいグリップゾーン641は、膜64の広がった部分に配置されている。第一のグリップゾーンとは異なり、この第二のグリップゾーン641は、膜64の上に事実上重なった折り返し部を有することが好ましい。従って、グリップゾーン621及び641の自由端が互いに逆方向を向く。これらのグリップゾーンは、膜62及び64を形成するものと同じプラスチックで作られていてもよい。有利には、これらのグリップゾーンは、膜62及び64と一体になっている。より有利には、これらのグリップゾーンは、より容易に掴めるようにするための手段を有していてもよい。この手段は、例えば輪であってもよい。
【0077】
取り扱い技術者が分析を実施しようとする際、技術者は一方の手で容器の上から分析装置のグリップゾーン621を掴み、もう一方の手でグリップゾーン641を持つ。こうして、技術者は、それぞれの手に容器の壁の1つとグリップゾーンとを持つ。グリップゾーンをそれぞれ逆方向に引っ張ることによって、図6B中に示されるように、膜62及び64の一部が離れて、反応用の内部空洞66がサンプル28と接する。膜62及び64を固着する手段、言いかえれば、接着剤の使用による接着は、それほど強くはないことが有利であり、こうすることによって、グリップゾーン621及び641を引っ張って2つの膜を容易に離すことができる。この要素は非常に重要である、というのは、分析装置が容器の中で取り扱われるからである。結果的に、分析装置が取り扱われる空間は制限される。また、この実施形態について、分析装置を容易に掴むためには、容器の壁の可撓性は非常に高くなければならない。
【0078】
分析を実施した後に分析手段と分析装置とを分けることができるような分析装置の変形形態が考慮されてもよい。具体的には、この分析手段には濃縮状の分析サンプルが入っているため、これを使用して他の分析を実施すると認識されてよい。こうした分析は、例えば微生物検査であってよい。その後、分析装置を使用してペトリ皿上の微生物培養培地を播種してもよい。
【0079】
本発明による分析装置は、血液バッグ、工業的微生物検査用の袋等の様々な種類の容器、より一般的には、穴をあけることのできる又は容易に掴むことのできる可撓性壁を有する任意の容器に適合する。結果的に、非常に多様なサンプルについて様々な分析を実施するための好ましい装置が構成される。
【0080】
本発明による分析装置の別の利点は、サンプルが危険である場合に、サンプルに直接接触する機会を必要に応じて完全に回避できるという点である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1A】本発明による分析装置の第一の実施形態の上面図を表す。
【図1B】図1A中に表される分析装置の軸I−Iに沿った縦方向の断面図を表す。
【図2】図1A及び2B中に表される分析装置を支持する容器を表す。
【図3A】図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【図3B】分析装置に穴をあける段階における、図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【図3C】サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図2中に表される容器の軸III−IIIに沿った縦方向の断面図の一部を表す。
【図4A】本発明による装置の第二の実施形態を支持する容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【図4B】サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図4A中に表される容器を表す。
【図5A】本発明による装置の第三の実施形態を支持する容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【図5B】サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図5A中に表される容器を表す。
【図6A】本発明による装置の第四の実施形態が入っている容器の縦方向の断面図の一部を表す。
【図6B】サンプルが反応用の内部空洞に入った後の、図6A中に表される容器を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析サンプル(28)を入れた容器(22、50、70)に取り付けるための分析装置(10、40、501、60)であって、
本質的に以下:
・第一の不浸透性膜(12、42、52、62);
・前記第一の膜(12、42、52、62)に重ねた第二の不浸透性膜(14、44、54、64);
・前記第一及び第二の膜がこれらの表面の少なくとも一部が重なった状態で固着されていて辺縁部が形成され、これにより、流体と前記分析装置(10、40、501、60)の外部とをつなげる手段を有さない反応用の内部空洞(16、46、56、66)を形成する隙間の空間ができている;
・前記反応用の内部空洞(16、46、56、66)の中に配置されていて、サンプル(28)と接するように作られた少なくとも1つの分析手段(18、47、57、67);
・サンプルが前記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための少なくとも1つの手段:
を含む
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記の、サンプルが前記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段が、前記第一又は第二の膜(62、64)の少なくとも一方に配置されていて前記第一及び第二の膜(62、64)を互いから少なくとも部分的に離し得る少なくとも1つの好ましいグリップゾーン(621、641)からなり、これによって前記反応用の内部空洞(66)と前記容器(70)内のサンプル(28)とが接し得る
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記の、サンプルが前記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段が、前記第一又は第二の膜の一方に作用するように作られた少なくとも1つの手段からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記の、前記第一又は第二の膜の一方に作用するように作られた手段が、穿孔手段である
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記穿孔手段(48)が前記空洞の中に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記の、サンプルが前記反応用の内部空洞の中に入る通路を作るための手段が、第一の膜を形成する材料よりも破壊強度値の小さい材料から形成される第二の膜からなる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記材料が、アルミニウム、銅、又は、積層可能な任意の細長い切片からなる群に含まれる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第一の膜(12)に固着されていてこれを少なくとも部分的に覆う隔壁(20)をさらに含む
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記分析手段(18、47、57、67)が、pH測定用の小片、イムノクロマトグラフィー用の小片、生化学的小片又は任意の同等の分析システム等の多孔質反応媒体からなる群に含まれる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置(10、40、501、60)を少なくとも1つ含む容器(22、50、70)。
【請求項11】
前記分析装置(10、40、501)が、前記容器の壁(24、58)に固着されている
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の容器(22、50)。
【請求項12】
前記分析装置の第二の膜(14、44、54)が、前記容器の壁(24、58)に固着されている
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の容器(22、50)。
【請求項13】
前記第二の膜(54)が分析サンプル(28)と直接接している
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の容器(50)。
【請求項14】
穿孔可能な材料で少なくとも部分的に作られた少なくとも1つの壁を有する容器に入ったサンプルの分析方法であって、
本質的に次の段階:
a)任意の適切な手段によって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置を、穿孔可能な材料で作られた前記容器の壁の一部に取り付ける段階;
b)前記分析装置の第二の膜と前記第二の膜の向かい側に位置する前記容器の壁の一部とに穴をあけることによって、前記分析サンプルを前記分析装置の前記分析手段に接触させ、これにより、前記サンプルを前記反応用の内部空洞の中に移し得る段階;
c)前記分析手段により供給される結果を分析する段階:
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
段階a)が、前記反応用の内部空洞の中に配置された前記穿孔手段(48)を使用して実施される
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
段階a)が、前記分析装置から独立した穿孔手段(32)を使用して実施される
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
段階a)が、前記装置の2つの膜と前記容器の壁とに前記穿孔手段を使用して穴をあける段階であり、ここで、前記第一の膜(12)に固着された隔壁(20)が前記第一の膜の穿孔ゾーンを囲んでいて、これにより、前記穿孔手段(32)を引っ込めた際に分析サンプルが前記分析装置から漏れるのが妨げられる
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
容器に入ったサンプルの分析方法であって、
本質的に次の段階:
a’)請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置を前記容器の中に配置する段階;
b’)分析サンプルを前記反応用の内部空洞の中に移すことによって、前記サンプルを前記分析装置の前記分析手段に接触させる段階;
c’)前記分析手段により供給される結果を分析する段階:
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
段階b’)が、前記分析装置の前記第一又は第二の膜に穴をあける段階である
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
段階b’)が、前記第一及び第二の膜に配置された好ましいグリップゾーン(621、641)によって、前記第一及び第二の膜を少なくとも部分的に離す段階である
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
容器に入ったサンプルを分析するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2008−504547(P2008−504547A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518661(P2007−518661)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050491
【国際公開番号】WO2006/008407
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】