説明

分析機器等における温度調整機構

【課題】 かなりの真空度に減圧されている条件下にあっても、被温度調整物を所定の温度に効率よく迅速かつ的確にしかも実際の分析作業等とリアルタイムで温度調整することが出来ると共に、温度調整中に被温度調整物が揮発分散するような恐れがない分析機器等における温度調整機構を提供すること。
【解決手段】 被温度調整物を流通させる1本又は複数本の被温調用チューブ1と温度調整用物を流通させる1本又は複数本の温調用チューブ2とを一緒に束ねて接触させることにより、前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種理化学・分析機器等で使用されるサンプル液や送液溶媒,緩衝液など、或いは製薬や半導体,液晶等の各種生産プロセスなどで使用される液体や気体等を、所定の温度に調整するための温度調整機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、液体クロマトグラフ装置等の分析機器で分析を行なう場合、測定データの信頼性を向上させる上で、サンプル液や送液溶媒,緩衝液等を所定の温度に調整し維持することが好ましい。そこで従来では、恒温槽を用いてサンプル液や送液溶媒等を事前に所定の温度に調整し、それを液体クロマトグラフ装置等の分析機器に供給していた。しかし乍らこの従来方法では、恒温槽という大掛かりな設備を必要とするだけでなく、恒温槽で所定の温度に調整したサンプル液や送液溶媒等を分析機器にオンラインで供給できないので実際の分析作業との間にタイムラグが生じて温度変化を来たす不具合があり、且つ所定の温度に調整すべきサンプル液や送液溶媒等の沸点が低い場合には、温度調整中に揮発分散してしまうだけでなく揮発分散したガスが室内の環境を汚染することがある等の不具合があった。
【0003】他方、分析機器による測定データの信頼性を向上させるために、サンプル液や送液溶媒等から溶存気体を脱気するが、その際に、真空容器の内部に気体のみを通し液体の透過を阻止する透過膜を設け、真空容器内を減圧することにより透過膜を通して被脱気液体から溶存気体を脱気するようにした脱気装置を用いた場合に、その真空容器内に加熱用ヒーターや冷却用ペルチェ素子等の温度調整手段を設置してサンプル液や送液溶媒等を所定の温度に調整することも考えられる。しかしこの方法では、真空容器内はかなりの真空度に減圧されているので、熱の対流や伝導がおきにくく、従って迅速かつ的確な温度調整を行なうことができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、かなりの真空度に減圧されている条件下にあっても、サンプル液や送液溶媒等の被温度調整物を所定の温度に効率よく迅速かつ的確にしかも実際の分析作業等とリアルタイムで温度調整することが出来ると共に、温度調整中に被温度調整物が揮発分散するような恐れがない分析機器等における温度調整機構を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成する本発明の請求項1記載の分析機器等における温度調整機構は、被温調用チューブ内に被温度調整物を流通させると共に温調用チューブ内に温度調整用物を流通させ、上記被温調用チューブを温調用チューブに接触させることにより前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴としたものである。また、本発明の請求項2記載の分析機器等における温度調整機構は、被温度調整物を流通させる1本又は複数本の被温調用チューブと温度調整用物を流通させる1本又は複数本の温調用チューブとを一緒に束ねて接触させることにより、前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴としたものである。更に、本発明の請求項3記載の分析機器等における温度調整機構は、被温度調整物を流通させる被温調用チューブ内に温度調整用物を流通させる温調用チューブを二重パイプ状に配設せしめ、前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴としたものである。この際、前記被温度調整物を流通させるための被温調用チューブとして、気体のみを通し液体の透過を阻止するチューブを用いても良い。そうすれば、被温度調整物を流通させる過程で被温度調整物からの脱気も同時に行なうことが可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図中、符号1は被温度調整物を流通させるための被温調用チューブを示し、符号2は温度調整用物を流通させるための温調用チューブを示す。
【0007】ここで被温度調整物とは、温度調節されるもの、具体的には、液体クロマトグラフ装置等の分析機器においてはサンプル液や送液溶媒,緩衝液等であり、その他には所定の温度に調整して使用すると好ましい製薬や半導体,液晶等の各種生産プロセスで使用される液体或いは気体等であって被温調用チューブ1内を流通可能な流動性を有する物質をさす。
【0008】また、温度調整用物とは、上記被温度調整物を所定の温度に調節・維持するためのもの、具体的には、予め所定の温度に調整された温水等の液体或いはエアー等の気体などであって温調用チューブ2内を流通可能な流動性を有する物質をさす。
【0009】被温調用チューブ1並びに温調用チューブ2は、上記被温度調整物及び温度調整用物を流通させることが可能な中空管状に形成されていれば、合成樹脂製でも金属製でも或いは可撓性があってもなくともその材質,性状に格別に何等の制約もないが、真空脱気装置に使用する場合には、被温調用チューブ1として気体のみを通し液体の透過を阻止するチューブを用いる。
【0010】そうして、被温調用チューブ1内に被温度調整物を流通させると共に、温調用チューブ2内に温度調整用物を流通させ、被温調用チューブ1に温調用チューブ2を接触させることにより、温調用チューブ2内を流通する温度調整用物の温度を被温調用チューブ1内を流通する被温度調整物に伝達させて、被温度調整物が被温調用チューブ1内を流通している間に当該被温度調整物を所定の温度、すなわち温調用チューブ2を流通している温度調整用物と同じ温度に調整するものである。
【0011】被温調用チューブ1に温調用チューブ2を接触させる場合、1本又は複数本の被温調用チューブ1と1本又は複数本の温調用チューブ2とを出来るだけまぜこぜに一緒に束ねてしまえば良い。具体的には、図1に示すごとく被温調用チューブ1と温調用チューブ2を別々に形成してそれぞれの流入口1a,2a部分と流出口1b,2b部分を残してまぜこぜに一緒に束ねるようにするか、或いは図2に示すごとく被温調用チューブ1の一部に温調用チューブ2をまぜこぜに一体的に形成して一緒に束ね、被温調用チューブ1の流入口1a及び流出口1bから温調用チューブ2の流入口2bと流出口2bをそれぞれ少し突出させて形成することなどが考えられる。
【0012】更に、格別に図示しなかったが、被温度調整物を流通させる被温調用チューブ1の内部に温度調整用物を流通させる温調用チューブ2を二重パイプ状に挿入配設させることにより、温調用チューブ2内を流通する温度調整用物の温度を被温調用チューブ1内を流通する被温度調整物に伝達させて、被温度調整物が被温調用チューブ1内を流通している間に当該被温度調整物を所定の温度、すなわち温調用チューブ2を流通している温度調整用物と同じ温度に調整することも考えられる。
【0013】ここで、被温調用チューブ1と温調用チューブ2とをまぜこぜに一緒に束ねるとは、束ねた状態を横断面した際に被温調用チューブ1と温調用チューブ2との配置関係に偏りがない状態を言うものである。
【0014】次に図3に、本発明に係る温度調整機構の好適使用例を示す。この実施例では、気体のみを通し液体の透過を阻止するチューブ状透過膜3を真空容器4内に設け、この真空容器4内を真空ポンプ5で減圧することにより上記チューブ状透過膜3を通して被脱気液体aから溶存気体を脱気する真空脱気装置に組み込んだものである。即ち、この実施例において、気体のみを通し液体の透過を阻止するチューブ状透過膜3が本発明における被温調用チューブ1に相当し、その中を流通する被脱気液体aが被温度調整物に相当するので、チューブ状透過膜3に、温度調整用物bを流通させるための温調用チューブ2を出来るだけまぜこぜに一緒に束ね、これを真空容器4内に設置して真空容器4内を真空ポンプ5で減圧し、真空容器4内が所定の真空度になったら、チューブ状透過膜3(=被温調用チューブ1)の流入口3a(1a)から被脱気液体(=被温度調整物)aを流通させると共に、温調用チューブ2の流入口2aから予め所定の温度に設定した温水等の温度調整用物bを流通させるようにしたものである。
【0015】すると、まぜこぜに一緒に束ねられたチューブ状透過膜3(被温調用チューブ1)と温調用チューブ2を介して、温度調整用物bの温度が被脱気液体(被温度調整物)aに伝達されて、被脱気液体(被温度調整物)aがチューブ状透過膜3(被温調用チューブ1)内を流通している間に温調用チューブ2を流通している温度調整用物bと同じ温度に調整されて、チューブ状透過膜3(被温調用チューブ1)の流出口3b(1b)から出てくるようになる。尚、図中の符号6は圧力センサーを示し、符号7は一定圧力で動作する逆止弁を示すが、これらは必ずしもなくとも良い。
【0016】
【発明の効果】本発明の分析機器等における温度調整機構は斯様に構成したので、温調用チューブ内を流通している温度調整用物の温度が被温調用チューブ内を流通しているサンプル液や送液溶媒等の被温度調整物に確実に伝達され、その被温度調整物が被温調用チューブ内を流通している間に温調用チューブを流通している温度調整用物と同じ温度に調整されるようになる。従って、かなりの真空度に減圧されている条件下にあっても、被温度調整物を所定の温度に効率よく迅速かつ的確に温度調整することが出来ると共に、実際の分析作業等とリアルタイムで温度調整することが可能となる。
【0017】しかも、チューブという閉じられた中で温度調整されるので、温度調整中に被温度調整物が揮発分散するような恐れがないだけでなく、被温度調整物が揮発性であったり沸点が低い場合であっても、安全に且つ安心して温度調整することが出来ると共に、揮発分散による環境汚染の心配がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る被温調用チューブと温調用チューブとを一緒に束ねた状態の実施の一例を示す斜視図。
【図2】 本発明に係る被温調用チューブと温調用チューブとを一緒に束ねた状態の他の実施例を示す斜視図。
【図3】 本発明の好適使用例を示す模式図。
【符号の説明】
1:被温調用チューブ 2:温調用チューブ
1a,2a:流入口 1b,2b:流出口
3:チューブ状透過膜 4:真空容器
5:真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被温調用チューブ内に被温度調整物を流通させると共に温調用チューブ内に温度調整用物を流通させ、上記被温調用チューブを温調用チューブに接触させることにより前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴とする分析機器等における温度調整機構。
【請求項2】 被温度調整物を流通させる1本又は複数本の被温調用チューブと温度調整用物を流通させる1本又は複数本の温調用チューブとを一緒に束ねて接触させることにより、前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴とする分析機器等における温度調整機構。
【請求項3】 被温度調整物を流通させる被温調用チューブ内に温度調整用物を流通させる温調用チューブを二重パイプ状に配設せしめ、前記被温度調整物を上記被温調用チューブ内を流通している間に所定の温度に調整するようにした事を特徴とする分析機器等における温度調整機構。
【請求項4】 前記被温度調整物を流通させる被温調用チューブが、気体のみを通し液体の透過を阻止するチューブである請求項1又は2又は3記載の分析機器等における温度調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−99162(P2000−99162A)
【公開日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−273310
【出願日】平成10年9月28日(1998.9.28)
【出願人】(390015314)株式会社イーアールシー (5)
【Fターム(参考)】