説明

分析用カートリッジ及び吸光度測定装置

【課題】LC法を採用したPOCTに適した分析用カートリッジ、すなわち、LC法を採用しグリコヘモグロビンの検出に好適で簡易且つ小型の分析用カートリッジを提供する。
【解決手段】圧力損失の少ない分離カラム40を使用することで、グリコヘモグロビンの検出性能を維持したまま、小型の分析用カートリッジ10を提供することができる。また、この分析用カートリッジ10は、未使用時には、試料保持孔36が外部に露出する初期位置に位置決め可能であり、使用時には、試料保持孔36が流入通路23の一部を形成する導入位置に位置決め可能な操作プレート31を備えている。更に、この操作プレート31は、スライド操作という簡単な操作により初期位置から導入位置に位置決めすることができる。これにより、小型且つ簡易な操作でグリコヘモグロビンの検出に好適な分析用カートリッジ10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料の分析に利用される分析用カートリッジ及びそれに適した吸光度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院の検査施設や検査センタなどでは、血液を測定試料としその中に含まれる特定成分を液体クロマトグラフィ(以下「LC」という)装置を用いて測定している。例えば、特許文献1では、糖尿病の長期コントロールの指標となるグリコヘモグロビンを分析するLC装置が開示されている。このLC装置は、2つのボトルに貯蔵された溶離液A,溶離液Bが送液ポンプによって吸引され、脱気装置や溶離液切替バルブ、溶離液混合用のマニホルドを介して送液ポンプに吸引される。送液ポンプを通過した溶離液A,溶離液Bの混合液は、試料導入部から導入された血液試料と共に分離カラムへ導入される。そして、カラムの下流側に配置された分光光度計によりグリコヘモグロビンの検出を行う。
【特許文献1】特開2001−74721
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既存のカラムを用いたLC測定は、カラム内の背圧が高くなるため、大型な装置が必要となる。このことは、診療や看護の現場で医療スタッフが実施するポイント・オブ・ケア・テスト(Point−of−Care Testing,POCT)への使用の妨げとなっている。一方、POCTを考慮したグリコヘモグロビンの検出装置としては、例えばバイエル社のDCA2000が知られているが、この装置はラテックス免疫凝集法を採用したものであるため、LC法を採用したものであって、POCTに適した小型の分析用カートリッジの開発が望まれている。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、LC法を用いたPOCTに適した小型の分析用カートリッジを提供することを目的の一つとする。また、そのような分析用カートリッジを用いたLC分析を実施可能な吸光度測定装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の分析用カートリッジは、
平均細孔径が0.5〜5μmで陽イオン交換性の第1多孔性シリカ部と平均細孔径が1〜5μmで疎水性の第2多孔性シリカ部とを有し、第1多孔性シリカ部の平均細孔径と第2多孔性シリカ部の平均細孔径とが異なる分離カラムと、
該分離カラムへ供給する液体を貯蔵する1又は2以上のシリンダと、
前記1又は2以上のシリンダの供給口から供給される液体を前記分離カラムの入り口へ案内する流入経路と、
前記分離カラムの出口から流出した液体を廃液口へと案内する流出経路と、
前記流出経路の一部をなすように設けられ液体中の成分検出を外部検出装置により検出可能な検出通路と、
を備えたものである。
【0007】
本発明の分析用カートリッジでは、流入通路に測定試料を導入すると、1又は2以上のシリンダに貯蔵された液体が測定試料とともに分離カラムの入り口に供給され、測定試料
に含まれる成分が分離カラムで分離され、分離カラムの出口から流出通路へと流出し、流出通路に設けられた検出通路で外部検出装置により成分検出が行われる。この分析用カートリッジでは、平均細孔径が0.5〜5μmで陽イオン交換性の第1多孔性シリカ部と平均細孔径が1〜5μmで疎水性の第2多孔性シリカ部とを有し、第1多孔性シリカ部の平均細孔径と第2多孔性シリカ部の平均細孔径とが異なる分離カラムを用いてLC分析を行うものであるため、分離カラムの背圧を十分低くすることができることから、LC法を採用しているにもかかわらず全体を小さくすることができる。このため、LC法を採用したPOCTに適した分析用カートリッジ、すなわち、LC法を採用しグリコヘモグロビンの検出に好適で簡易且つ小型の分析用カートリッジを提供することができる。
【0008】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記第1多孔性シリカ部は、平均細孔径が1〜2.3μmであり、前記第2多孔性シリカ部は、平均細孔径が2〜4.2μmとしてもよい。こうすれば、より精度よく分析を行うことができる。
【0009】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記第1多孔性シリカ部は、スルホン酸塩による表面処理が施され、前記第2多孔性シリカ部は、炭素数4以上23以下のアルキル鎖を有するシラン化合物による表面処理が施されていてもよい。こうすれば、血中の安定型グリコヘモグロビン、不安定型グリコヘモグロビン、ヘモグロビンの3種類をより精度よく分離することができる。ここで、スルホン酸塩としては、例えば、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウムが挙げられ、シラン化合物としては、例えば、オクタデシルジメチルクロロシランが挙げられる。
【0010】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記流入経路は、少なくとも1以上のU字状の曲線部を有していてもよい。こうすれば、各シリンダの供給口から流出した液体を、流入経路が直線である場合に比べて短い距離で混合することができるため、分析用カートリッジ全体をより小型化することができる。
【0011】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記シリンダは、1つだけ備えられ、液密に摺動可能な複数の可動隔壁により複数の部屋に分けられ、該複数の部屋にはそれぞれ組成の異なる液体が貯蔵され、使用時に最末端の可動隔壁が該シリンダの先端に向かって押圧されると前記複数の可動隔壁のうち先端側の可動隔壁が該シリンダの先端面に順次到達しそのたびに前記供給口に面する部屋が変わるように構成されていてもよい。こうすれば、複数のシリンダに別々の組成の液体を貯蔵し各液体を所望の比率で混ぜ合わせる必要がないため、分析用カートリッジ全体をより小型化することができる。
【0012】
本発明の分析用カートリッジは、前記シリンダの各供給口を開閉可能に封止する供給口封止手段を備え、前記シリンダには液体が前記供給口封止手段によって封入されているものであってもよい。こうすれば、測定時に液体を準備する手間を省くことができるため、オペレータの手間を軽減することができる。このとき、前記供給口封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口を一斉に開閉可能な一枚の封止プレートであってもよい。こうすれば、各供給口を一斉に開放することができるため、オペレータの手間をより軽減することができる。
【0013】
本発明の分析用カートリッジは、前記流出通路の前記検出通路以外の部分を開閉可能に封止する流出通路封止手段を備え、前記分離カラムには液体が前記供給口封止手段と前記流出通路封止手段とによって封入されているものとしてもよい。こうすれば、分離カラムを溶液であらかじめ満たすことで分離カラムの劣化を防ぐことができるため、精度の高い分析用カートリッジを提供することができる。なお、供給口封止手段と流出通路封止手段とによって封入される液体は、各シリンダにあらかじめ貯蔵されている液体の1種類と同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。このとき、前記供給口封止手段及
び前記流出通路封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口及び前記流出通路を一斉に開閉可能な一枚の共用プレートであってもよい。こうすれば、全ての封止手段を一斉に開放することができるため、オペレータの手間を軽減することができる。
【0014】
本発明の分析用カートリッジは、前記流出通路の前記検出通路以外の部分を開閉可能に封止する流出通路封止手段を備え、前記シリンダを1つ備えている場合には該シリンダの供給口を常時開放し、前記シリンダを2以上備えている場合には1つのシリンダの供給口を常時開放し、残りのシリンダの供給口を開閉可能に封止する供給口封止手段を有し、前記常時開放されたシリンダと前記分離カラムには液体が前記流出通路封止手段によって封入され、前記残りのシリンダには液体が前記供給口封止手段によって封入されているものであってもよい。こうすれば、シリンダにあらかじめ貯蔵された液体で分離カラムを満たすことができるため、分離カラムの劣化を防ぐことができ、複数のシリンダを備えている場合であっても、各シリンダの液体が混合されることを防ぐことができる。このとき、前記供給口封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口を一斉に開放可能な一枚の封止プレートであってもよい。こうすれば、複数の供給口を一斉に開放することができるため、オペレータの手間を軽減することができる。あるいは、前記供給口封止手段及び前記流出通路封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口及び前記流出通路を一斉に開放可能な一枚の共用プレートであってもよい。こうすれば、全ての封止手段を一斉に開放することができるため、オペレータの手間をより軽減することができる。
【0015】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記供給口封止手段は、液体の圧力が所定の圧力になると作動して前記シリンダの各供給口を開放する圧力弁であってもよい。こうすれば、オペレータの手を煩わせることなく供給口を開放することができる。
【0016】
本発明の分析用カートリッジにおいて、前記流出通路封止手段は、液体の圧力が所定の圧力になると作動して前記流出通路を開放する圧力弁であってもよい。こうすれば、オペレータの手を煩わせることなく流出通路を開放することができる。
【0017】
本発明の分析用カートリッジは、測定試料を保持する試料保持孔が穿設された操作プレートを備え、該操作プレートは、未使用時には前記試料保持孔を外部に配置する初期位置に位置決めされ、使用時には前記試料保持孔から測定試料を分離カラムへ導入可能な導入位置に位置決めされることで前記流入経路の一部を形成するものとしてもよい。このとき、前記操作プレートは、スライド操作によって前記初期位置から前記導入位置に位置決めされるものであってもよい。こうすれば、操作プレートを初期位置から導入位置にスライドさせるという簡単な操作で測定試料を分離カラムに供給することができる。
【0018】
本発明の分析用カートリッジは、前記試料保持孔に近設され、試料未添加時には外部に露出し、試料添加時には添加された試料によって覆われる試料保持位置確認手段を備えていてもよい。こうすれば、試料保持位置確認手段によって、試料保持孔に試料が適切に保持されているか否かを確認することができる。
【0019】
本発明の分析用カートリッジは、前記操作プレートが前記試料保持孔に試料を保持している状態で前記初期位置から前記導入位置へ移動する際に余剰試料を除去する導入量調節部を備えていてもよい。こうすれば、操作プレートを初期位置から導入位置に切り替えるという簡易な操作により、分離カラムに供給される測定試料の量を一定にすることができる。このとき、前記導入量調節部は、前記試料保持孔に保持されている試料のうち前記操作プレートが前記初期位置から前記導入位置へ移動する際に、試料保持孔外に存在する試料を削ぎ落とすものであるものとしてもよい。
【0020】
本発明の分析用カートリッジは、前記測定試料を希釈する液体を貯蔵する希釈タンクを備え、前記操作プレートは、前記初期位置と前記導入位置との間の中間位置に位置決め可能であり、前記希釈タンクは、前記操作プレートが前記中間位置に位置決めされたときに前記試料保持孔が該希釈タンクの内部に位置するように設けられていてもよい。こうすれば、測定試料を測定に適した濃度に希釈して分離カラムに供給することができるため、あらかじめ試料の濃度調整をする手間を省くことができる。また、希釈の具体的な手法としては、試料保持孔が希釈タンクの内部に配置された状態で手動による振動撹拌を行ってもよいし、超音波振動子による振動撹拌を行ってもよい。
【0021】
本発明の分析用カートリッジは、前記操作プレートが脱落するのを防止する脱落防止機構を備えていてもよい。こうすれば、操作プレートの脱落を防ぎ、カートリッジ内の液体が外部に漏れることを防ぐことができる。
【0022】
本発明の分析用カートリッジは、前記分離カラムの出口から流出した液体を前記廃液口を介して受け入れる廃液タンクを備えていてもよい。こうすれば、分析用カートリッジとは別に廃液タンクを用意する必要がない。このとき、前記廃液タンクは、該廃液タンク内の空気を排気する疎水性膜付きの排気穴を備えた廃液タンクであってもよい。こうすれば、気体のみが排出され廃液タンク内の液体が外部に排出されることを防止することができる。また、前記1又は2以上のシリンダは、前記廃液タンクの内部に収容されていてもよい。こうすれば、廃液タンクと1又は2以上のシリンダとを別々に設ける場合に比べて、分析用カートリッジ全体を小型化することができる。
【0023】
本発明の分析用カートリッジにおけるシリンダや分離カラムのレイアウトは、上述した形態に限定されるものではなく、本発明の分析用カートリッジは、測定試料の分析に1回使用したあと廃棄するようにしてもよい。
【0024】
本発明の吸光度測定装置は、
上述したいずれかの分析用カートリッジを設置可能な設置部と、
前記設置部に設置された前記分析用カートリッジの前記1又は2以上のシリンダの液体を独立して押圧可能な押圧機構と、
前記検出通路の一方に配置された発光素子と該検出通路の他方に配置された受光素子とを含んで構成され、前記発光素子から発射した光を前記検出通路に入射させ該検出通路を通過したあとの光を前記受光素子で受ける検出器と、
を備えたものである。
【0025】
この吸光度測定装置では、まず、設置部に分析用カートリッジを設置する。この分析用カートリッジが吸光度測定装置の設置部に設置されると、押圧機構により1又は2以上のシリンダへの押圧が可能となる。この時、シリンダへの押圧を個別に調節することにより、分離カラムに供給する液組成を所望の組成にすることができる。シリンダが押圧されると、シリンダに貯蔵された液体が測定試料とともに分離カラムに供給され、測定試料に含まれる成分が分離カラムで分離されつつ流出通路へと流出し、流出通路に設けられた検出通路を通過する液体を検出器により検出して吸光度を測定することができる。このように、本発明の吸光度測定装置によれば、上述したいずれかの分析用カートリッジを用いたLC分析を容易に実施することができる。
【0026】
押圧機構は、例えば、シリンダに挿入されるピストンロッドと、このピストンロッドをシリンダの軸方向に移動させるアクチュエータ(例えばモータやエア圧シリンダ、油圧シリンダなど)とで構成されていてもよい。また、検出器は、発光素子としてのLEDと、受光素子としてのフォトトランジスタとで構成されていてもよい。
【0027】
本発明の吸光度測定装置において、前記検出器は、前記発光素子と前記検出通路との間に該発光素子の光を拡散する拡散板又は反射光の影響を抑制する偏光板の少なくとも一方を含んで構成されていてもよい。拡散板を用いた場合には、例えば発光LEDのように輝度斑があるものを採用したとしても、照度分布を均一にすることができる。また、偏光板を用いた場合には、反射光などの影響を抑制することができる。こうすることにより、いずれの場合にも吸光度測定を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である分析用カートリッジ10の正面図であり、図2は分析用カートリッジ10の平面図であり、図3は分析用カートリッジを図1のA−A面で切断した断面図の一部であり、図4は試料保持孔36の外部に保持された血液除去を示した説明図であり、図5は第1閉鎖弁26aの動きを説明するための説明図である。本実施形態の分析用カートリッジ10は、略直方形状のボディ20と、ボディ20の内部に略平行に並べられた第1シリンダ21及び第2シリンダ22と、適量な試料を分離カラム40に供給するための操作プレート31と、測定試料の分離を行う分離カラム40と、分離カラム40を通過した液体を貯蔵する廃液タンク50とを備えている。この分析用カートリッジ10は、糖尿病の診断を行うことを目的とするものであり、測定試料である血液から安定型グリコヘモグロビンと不安定型グリコヘモグロビンとヘモグロビンとを分離してそれぞれの吸光度を測定する際に用いられるものである。また、分析用カートリッジ10はいわゆる使い捨てタイプであり、測定試料の分析に1回使用した後に廃棄される。更に、分析用カートリッジ10の全体の大きさは、幅(W)約20mm、奥行き(D)約55mm、高さ(H)約10mmである。
【0029】
ボディ20は、透明アクリル樹脂製であり、図2に示すように、第1シリンダ21及び第2シリンダ22と分離カラム40の入り口とを接続する流入通路23と、分離カラム40の出口と廃液タンク50とを接続する流出通路25と、分離カラム40に導入する測定試料の量を調整する試料調整用凹部33と、測定試料を希釈する希釈タンク34と、第1シリンダ21の第1供給口21bを開閉可能に封止する第1閉鎖弁26aと、第2シリンダ22の第2供給口22bを開閉可能に封止する第2閉鎖弁26bと、流出通路25の検出通路以外の部分(ここでは、廃液口51の近傍)を開閉可能に封止する第3閉鎖弁26cとを備えている。流入通路23は、第1シリンダ21内の溶離液A及び第2シリンダ22内の溶離液Bを第1供給口21b及び第2供給口22bを介して分離カラム40の入り口に供給する。この流入通路23は、溶離液A及び溶離液Bが合流した位置よりも分離カラム40に近い位置に溶液混合部27を有している。U字型の曲線部である溶液混合部27で溶離液Aと溶離液Bは混合され、分離カラム40の入り口に混合液が供給される。流出通路25は、分離カラム40を通過した液体を廃液口51を介して廃液タンク50に排出する。この流出通路25の一部が検出通路24となっており、後述する外部検出装置である吸光度測定装置60により液体中の成分検出を行うことができる。試料調整用凹部33はボディ20の側面に備えられており、試料調整用凹部33の底面にスリット状の操作プレート挿入口32を備えている。操作プレート31は操作プレート挿入口32に密接した状態で挿入されている(図4(a)参照)。希釈タンク34は、希釈溶液を貯蔵しており、後述する操作プレート31の操作に伴って、操作プレート31の試料保持孔36に保持された試料が希釈される。第1閉鎖弁26aは、図5に示すように、第1供給口21bに内部がくり抜かれた円柱状部材110が直交する形で取り付けられており、円柱状部材110の内側には、回転可能な回転部材112が密接している。回転部材112の上面には直線状の切り込み116が、側面には貫通口114が備えられている。第1閉鎖弁26aは、貫通口114が円柱状部材110に備えられた連通口118と接続されない封止状態(図5(a)参照)と、連通口118と接続される開放状態(図5(b)参照)とを選択することができる。また、第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cも同様に封止状態と開放状態を選択可能である。未使用時には、全ての閉鎖弁が封止状態にあり、流入通路2
3,分離カラム40及び流出通路25には溶離液Aが第1閉鎖弁26a,第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cによって液密に封止されている。なお、このとき満たされる液体は、他の液体であってもよい。
【0030】
第1シリンダ21及び第2シリンダ22は、図2に示すように、ボディ20の内部に略平行に並べられている。この第1シリンダ21は、第1供給口21bを介して分離カラム40の入り口につながる流入通路23に接続され、第2シリンダ22は、第2供給口22bを介して分離カラム40につながる流入通路23に接続されている。未使用時には、第1閉鎖弁26a及び第2閉鎖弁26bは封止状態にあるため、溶離液Aは第1閉鎖弁26aと第1ゴムパッキン21aによって第1シリンダ21に液密に封止され、溶離液Bは第2閉鎖弁26bと第2ゴムパッキン22aによって第2シリンダ22に液密に封止される。なお、溶離液A及び溶離液Bは塩濃度の異なる液体である。
【0031】
操作プレート31は、図2に示すように、試料保持孔36を備え、操作プレート挿入口32に密接した状態で挿入されている。この操作プレート31は表面が疎水性の材質からなっており、試料保持孔36は親水性の素材によるコーティングなどにより、測定試料を保持しやすいように親水性の性質を有している。また、試料保持孔36の周りには、目安線37が備えられており(図1参照)、試料保持孔36に試料が保持されているか否かを確認することができる。更に、操作プレート31は、試料保持孔36がボディ20の外部に配置される初期位置(図3(a)参照)と試料保持孔36が流入通路23の一部を形成する導入位置(図3(d)参照)と、初期位置と導入位置との間の位置であって試料保持孔36が希釈タンク34内に位置する中間位置(図3(c)参照)とに位置決めされている。この位置決めに従って操作プレート31を操作すると、操作プレート31をボディ20に押入するという簡単な操作で、測定に適した濃度の試料を分離カラム40に供給することができる。
【0032】
分離カラム40は多孔性シリカ連続体担体の表面に重合反応による化学修飾を施してなるポリマー結合型カラムであり、多孔性シリカ連続体担体の表面をゾル−ゲル転移させた後、焼成してメソポアを減少させてなる多孔性シリカ連続体担体カラムである。この分離カラム40はカチオン交換性シリカモノリスディスク(以下「ディスクM」という)と疎水性シリカモノリスディスク(以下「ディスクO」という)とからなり、ディスクMの平均細孔径は0.5〜5μm、好ましくは1〜2.3μmであり、ディスクOの平均細孔径は1〜5μm、好ましくは2〜4.2μmであるが、それぞれのディスクの平均細孔径は異なるものである。このとき、ディスクMはシリカモノリスディスク表面をスルホン酸塩により表面処理したものであり、スルホン酸塩としては、例えば、4−ビニルフェニルスルホン酸やメタクリル酸3−スルホプロピルカリウムなどが挙げられ、このうちメタクリル酸3−スルホプロピルカリウムが好ましい。また、ディスクOは炭素数4以上23以下のアルキル鎖を有するシラン化合物によって表面処理が施されているのが好ましく、シラン化合物としては、例えば、オクチルトリクロロシラン,オクタデシルトリクロロシラン,オクチルジメチルクロロシラン,オクタデシルジメチルクロロシランなどが挙げられ、このうちオクタデシルジメチルクロロシランが好ましい。また、分離カラム40は上述した方法で作製したディスクO及びディスクMを複数枚積層させたものであり、ディスクM及びディスクOの組み合わせとしては、ディスクMが液送方向の上流部に配置され、ディスクOが液送方向の下流部に配置されることが好ましい。更に、分離カラム40は、牛血清アルブミンによるエージングが施されてもよい。こうすれば、例えば、血液成分を分析するときに、分析したい成分がカラムに吸着されるのを防ぐことができる。また、牛血清アルブミンであればグリコヘモグロビンやヘモグロビンとは吸光度が異なるため、精製後の試料中に牛血清アルブミンが混入したとしても、血液中のグリコヘモグロビンやヘモグロビンを分析する際にさほど支障がない。
【0033】
廃液タンク50は、図2に示すように、ボディ20の内部をくり抜いた略直方体の空間で、廃液タンク50の端部に設けられた廃液口51を介して分離カラム40の出口につながる流出通路25に接続され、分離カラム40を通過してきた廃液を受け入れるものであり、未使用時には空気で満たされている。この廃液タンク50の上面には、排気穴52が設けられている。この排気穴52は、疎水性の多孔質膜である疎水性膜53で覆われているため、気体は通過できるが液体は通過できない。この廃液タンク50の側面には操作プレート31が押入される操作プレート排出口54が設けられており、操作プレート31が初期位置(図3(a)参照)から導入位置(図3(d)参照)に押入されるに従って、廃液タンク50の内部に操作プレート31の末端部が押入される。また、操作プレート31の端部に備えられた脱落防止部38は、操作プレート排出口54よりも大きいため、操作プレート31が操作プレート挿入口32から脱落することを防止し、カートリッジ内の液体が漏れることを防ぐことができる。さらに、操作プレート31は廃液タンク50の内壁に接触したときに導入位置に位置決めされる長さであるため、操作プレート31を最奥までスライド操作するという簡易な方法で、測定試料を分離カラム40に供給することができる。
【0034】
次に、このように構成された本実施形態の分析用カートリッジ10の動作について説明する。図3(a)は未使用時の分析用カートリッジ10を図1のA−A面で切断した断面図の一部であり、図3(d)は使用時の分析用カートリッジ10を図1のA−A面で切断した断面図の一部である。はじめに、図3(a)に基づいて分析用カートリッジ10が未使用状態のときの説明をする。分析用カートリッジ10が未使用のときには、操作プレート31は初期位置(図3(a)参照)に位置決めされている。糖尿病の簡易検査を受ける患者は細い針を指先に軽く刺してわずかに出血させた後、その出血した指を試料保持孔36の入り口に押し当てて、血液を試料保持孔36に導入する。このとき、オペレータは目安線37が血液で隠れているか否かを目視することにより、試料保持孔36に血液が充填されたことを確認することができる。また、試料保持孔36は親水性材料でコーティングされているため、隙間無く血液を保持することができる。
【0035】
続いて、試料保持孔36に充填した血液を流入通路23に導入するときの動作について説明する。試料保持孔36に血液が充填したことを目視で確認した後、オペレータは、図3(a)中の矢印で示す方向に操作プレート31をスライド操作により押入する。ここで、試料保持孔36に余剰血液37aが保持されていた場合には、オペレータの押入により、操作プレート31が図3(b)に示す位置に移動するとき、操作プレート挿入口32により所定量に調整される。
【0036】
ここで、過剰試料が除去される仕組みについて、図4を用いて、詳しく説明する。図4は、試料保持孔36の外部に保持された血液の除去を示した説明図である。図4(a)に示すように、試料保持孔36の外部に余剰血液37aが保持される場合がある。試料保持孔36の外部に余剰血液37aが保持されていると、導入量が多すぎることが原因で測定誤差が生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、操作プレート31を押入すると、操作プレート31は操作プレート挿入口32に密接する大きさになっているため、図4(b)に示すように、表面張力等によって試料保持孔36の外部に保持されていた余剰血液37aは、操作プレート挿入口32の外壁によって削ぎ落とされる。これにより、試料保持孔36に保持される血液の量を一定にすることができる。また、このとき削ぎ落とされた余剰血液37aは、試料調整用凹部33に残るため、除去された血液による周囲の汚染を防ぐことができる。
【0037】
続いて、オペレータがさらに操作プレート31をボディ20に押入し、図3(c)に示すように、中間位置に位置決めされたとき、試料保持孔36は希釈タンク34の内部に位置する。希釈タンク34にはあらかじめ希釈溶液が貯蔵されているため、試料保持孔36
に導入した血液を測定に適した濃度に希釈することができる。具体的には、試料保持孔36が希釈タンク34の内部に配置されている状態で手動による振幅撹拌を行う。こうすれば、より短時間で血液と希釈溶液とを均一に混合することができる。また、希釈タンク34は希釈溶液をいっぱいに満たしていてもよいが、試料保持孔36内の血液を効率よく希釈することを考慮すると、空気と希釈溶液とを混在させておくことが好ましい。このとき、試料保持孔36は親水性材料でコーティングされているため、試料保持孔36に空気が混入するおそれはない。また、分析用カートリッジ10は透明アクリル樹脂製であるため、オペレータは希釈タンク34内の液体の色により、希釈具合を目視により確認することができる。
【0038】
続いて、オペレータがさらに操作プレート31をボディ20に押入し、図3(d)に示すように、導入位置に位置決めされると、試料保持孔36は流入通路23の一部を形成する。このとき、操作プレート31の末端部である脱落防止部38は廃液タンク50の内壁に接する。このため、オペレータは操作プレート31を最奥まで挿入することで、試料保持孔36を流入通路23の一部となる位置に簡単に位置決めすることができ、試料保持孔36に保持された測定試料を分離カラム40に供給することができる。
【0039】
続いて、オペレータが第1閉鎖弁26a、第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cをそれぞれ封止状態(図5(a)参照)から開放状態(図5(b)参照)とすることで、測定に適した濃度の血液を分離カラム40に供給することが可能な状態となる。なお、この状態を分析用カートリッジ10の使用状態と呼ぶ。ここで、封止状態と開放状態の選択について、第1閉鎖弁26aを例に、図5を用いて詳しく説明する。図5は、第1閉鎖弁26aの動作を説明するための説明図である。第1閉鎖弁26aが封止状態のときは、図5(a)に示すように、貫通口114が流入通路23と接続されない位置にあるため、回転部材112によって流入通路23は遮断され、液体が流れることができない。一方、開放状態のときは、図5(b)に示すように、貫通口114が連通口118を介して流入通路23と接続され、流入通路23の一部を形成するため、液体が流れることができる。封止状態と開放状態の選択は、回転部材112の上部に取り付けられた直線状の切り込み116にマイナスドライバ等を差し込み、回転部材112を回動させることによって行う。なお、第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cの開放操作についても、同様である。
【0040】
分析用カートリッジ10を使用状態に切り替えた後、分析用カートリッジ10を吸光度測定装置60のカートリッジ設置部60aにセットする。図6は分析用カートリッジ10をセットした吸光度測定装置60の概略構成図である。吸光度測定装置60は、第1ステッピングモータ61で第1ピストンロッド61aを動かすことにより、第1シリンダ21中の溶離液Aを第1ゴムパッキン21aを介して押圧し、これとは独立して第2ステッピングモータ62で第2ピストンロッド62aを動かすことにより、第2シリンダ22中の溶離液Bを第2ゴムパッキン22aを介して押圧する。そして、周知のマイクロコンピュータを内蔵するコントローラ63が第1ステッピングモータ61及び第2ステッピングモータ62を駆動制御して溶離液Aの押圧力と溶離液Bの押圧力を調整することにより、分離カラム40へ供給される液組成を所望の組成にすることができる。第1シリンダ21及び第2シリンダ22より押圧された溶離液A及び溶離液Bは、流入通路23の溶液混合部27を経て混合され、分離カラム40に供給される。分離カラム40を通過した液体は流出通路25中に設けられた検出通路24を通過し、廃液口51を介して廃液タンク50に排出されることになる。
【0041】
発光素子であるLED光源64からの光のうち、ダイクロミックミラー76を通過した光は、第1レンズ65、拡散板66及び偏光板67を経て検出通路24に入り、検出通路24を通過した後、第2レンズ68を介して受光素子としての測定用フォトトランジスタ69に入る。一方、ダイクロミックミラー76で反射された光は、輝度調整用フォトトラ
ンジスタ78に入る。測定用フォトトランジスタ69や輝度調整用フォトトランジスタ78に入った光は検波回路70で検波され、検波後のアナログ信号がA/D変換回路72でディジタル信号に変換されてコントローラ63へ入力される。コントローラ63は、輝度調整用フォトトランジスタ78から検波回路70及びA/D変換回路72を介して得られたデジタル信号に基づいて輝度を求め、LED光源64の輝度が均一になるようLED光源64の電流をフィードバック制御する。また、コントローラ63は、LED光源64の点灯、消灯を繰り返すように点灯回路74を制御すると共に、測定用フォトトランジスタ29から検波回路70及びA/D変換回路72を介して得られたディジタル信号に基づいてLED光源64の点灯時と消灯時の差分を求め、その差分に基づいてLCの保持時間と吸光度との関係を表すグラフを図示しないディスプレイ又はプリンタに出力する。このような同期検波を行うことにより、吸光度測定を暗箱の中でなく蛍光灯の下でも実施可能となる。
【0042】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の対応関係を明らかにする。本実施形態の分析用カートリッジ10が本発明の分析用カートリッジに相当し、分離カラム40が分離カラムに相当し、第1シリンダ21及び第2シリンダ22が1又は2以上のシリンダに相当し、第1供給口21b及び第2供給口22bが供給口に相当し、流入通路23が流入通路に相当し、廃液口51が廃液口に相当し、流出通路25が流出通路に相当し、検出通路24が検出通路に相当し、溶液混合部27がU字状の曲線部に相当し、第1閉鎖弁26a及び第2閉鎖弁26bが供給口封止手段に相当し、第3閉鎖弁26cが流出通路封止手段に相当し、操作プレート31が操作プレートに相当し、試料保持孔36が試料保持孔に相当し、目安線37が試料保持位置確認手段に相当し、操作プレート挿入口32が導入量調節部に相当し、希釈タンク34が希釈タンクに相当し、脱落防止部38及び操作プレート排出口54が脱落防止機構に相当し、廃液タンク50が廃液タンクに相当し、排気穴52が排気穴に相当し、疎水性膜53が疎水性膜に相当し、吸光度測定装置60が吸光度測定装置に相当し、カートリッジ設置部60aが設置部の相当し、第1ステッピングモータ61及び第2ステッピングモータ62が押圧機構に相当し、LED光源64が発光素子に相当し、測定用フォトトランジスタ69が受光素子に相当し、拡散板66が拡散板に相当し、偏光板67が偏光板に相当する。
【0043】
以上詳述した本実施形態の分析用カートリッジ10によれば、流入通路23に血液を導入すると、第1シリンダ21及び第2シリンダ22に貯蔵された溶離液A及びBが血液と共に分離カラム40の入り口に供給され、血液中に含まれる成分が分離カラム40で分離され、分離カラム40の出口から流出通路25へと流出し、流出通路25に設けられた検出通路24で吸光度測定装置60により成分検出が行われる。この分析用カートリッジ10では、分離カラム40を用いてLC分析を行うものであるため、分離カラム40の背圧を十分低くすることができることから、LC法を採用しているにもかかわらず全体を小さくすることができる。このため、LC法を採用したPOCTに適した分析用カートリッジ、すなわち、LC法を採用しグリコヘモグロビンの検出に好適で簡易且つ小型の分析用カートリッジを提供することができる。
【0044】
また、分離カラム40のディスクMは、スルホン酸塩であるメタクリル酸3−スルホプロピルカリウムによる表面処理が施され、ディスクOは、炭素数4以上23以下のアルキル鎖を有するシラン化合物であるオクタデシルジメチルクロロシランによる表面処理が施されているため、血中の安定型グリコヘモグロビン、不安定型グリコヘモグロビン、ヘモグロビンの3種類をより精度よく分離することができる。ここで、スルホン酸塩としては、例えば、メタクリル酸3−スルホプロピルカリウムが挙げられ、シラン化合物としては、例えば、オクタデシルジメチルクロロシランが挙げられる。
【0045】
更に、分析用カートリッジ10の流入通路23に溶液混合部27を設けることで、第1
シリンダ21及び第2シリンダ22の供給口から流出した溶離液A及び溶離液Bを、流入通路23が直線である場合に比べて短い距離で混合することができるため、分析用カートリッジ10全体をより小型化することができる。
【0046】
更にまた、分析用カートリッジ10の第1シリンダ21及び第2シリンダ22の各供給口を開閉可能に封止する第1閉鎖弁26a及び第2閉鎖弁26bを備え、第1シリンダ21及び第2シリンダ22には溶離液A及び溶離液Bが第1閉鎖弁26a及び第2閉鎖弁26bによって封入されているものであるため、測定時に液体を準備する手間を省くことができるため、オペレータの手間を軽減することができる。
【0047】
そしてまた、分析用カートリッジ10の流出通路25の検出通路24以外の部分を開閉可能に封止する第3閉鎖弁26cを備え、分離カラム40には溶離液Aが第1閉鎖弁26aと第3閉鎖弁26cとによって封入されているものであるから、分離カラム40を溶離液Aであらかじめ満たすことで、分離カラム40の劣化を防ぐことができるため、精度の高い分析用カートリッジを提供することができる。
【0048】
そして更に、分析用カートリッジ10は、血液を保持する試料保持孔36を備えた操作プレート31を備え、この操作プレート31は、未使用時には試料保持孔36を外部に配置する初期位置に位置決めされ、使用時には試料保持孔36から測定試料を分離カラム40へ導入可能な導入位置に位置決めされることで試料保持孔36が流入通路23の一部を形成するものである。このとき、操作プレート31は、スライド機構によって初期位置から導入位置に位置決めされるものであるため、操作プレート31をスライドさせるという簡単な操作で、操作プレート31を初期位置から導入位置に位置決めすることができる。
【0049】
そして更にまた、試料保持孔36に近設され、血液未添加時には外部に露出し、血液添加時には添加された血液によって覆われる目安線37を備えているため、目安線37が露出しているか否かによって、試料保持孔36に血液が適切に保持されることができ、より正確な測定結果を得ることができる。
【0050】
加えて、分析用カートリッジ10は、操作プレート31が試料保持孔36に血液を保持している状態で初期位置から導入位置へ移動する際に余剰血液37aを除去する操作プレート挿入口32を備えており、この操作プレート挿入口32は、試料保持孔36の外に存在する余剰血液37aを削ぎ落とすものであるから、操作プレート31を初期位置から導入位置に切り替えるという簡単な操作により、分離カラム40に供給される血液の量を一定にすることができる。
【0051】
一方、分析用カートリッジ10は、血液を希釈する希釈溶液を貯蔵する希釈タンク34を備え、操作プレート31は初期位置と導入位置との間の中間位置に位置決め可能であり、希釈タンク34は、操作プレート31が中間位置に位置決めされたときに試料保持孔36が希釈タンク34の内部に位置するように設けられているため、血液を測定に適した濃度に希釈して分離カラム40に供給することができ、あらかじめ血液の濃度調整をする手間を省くことができる。また、希釈の具体的な手法としては、試料保持孔36が希釈タンク34の内部に配置された状態で手動による振動撹拌を行うものとしたが、超音波振動子による振動撹拌等を行ってもよい。
【0052】
一方、分析用カートリッジ10は、操作プレート31が脱落するのを防止する脱落防止部38を備えているため、操作プレート31の脱落を防ぎ、分析用カートリッジ10内の液体が外部に漏れることを防ぐことができる。
【0053】
一方、分析用カートリッジ10は、分離カラム40の出口から流出した液体を廃液口5
1を介して受け入れる廃液タンク50を備えているため、分析用カートリッジ10とは別に廃液タンクを用意する必要がない。このとき、廃液タンク50は、廃液タンク50内の空気を排気する疎水性膜53付きの排気穴52を備えているため、気体のみが排出され廃液タンク50内の液体が外部に排出されることを防止することができる。
【0054】
一方、吸光度測定装置60のコントローラ63で第1ステッピングモータ61及び第2ステッピングモータ62が第1ピストンロッド61a及び第2ピストンロッド62aを押圧する押圧力を個別に制御することで、分離カラム40に供給する液組成を所望の組成にすることができることから、分析用カートリッジ10を用いたLC分析を容易に実施することができる。また、LED光源64を検出通路24との間に拡散板66や偏光板67を設けているため、検出通路24への入射率や出射率の変化が小さくなり、安定した測定が可能となる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0056】
上述した実施形態では、第1閉鎖弁26a,第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cを備えることとしたが、第1閉鎖弁26aは無くてもよい。この場合、第1シリンダ21内の液体が第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cによって第1シリンダ21,流入通路2
3,分離カラム40及び流出通路25に封入される。第1閉鎖弁26aが無くても、分離カラム40を溶離液Aであらかじめ満たすことができるため、分離カラム40の劣化を防ぐことができ、精度の高い分析用カートリッジを提供することができる。また、第2シリンダ22は第2閉鎖弁26bで封止されているため、溶離液Aと溶離液Bが混ざるおそれはない。
【0057】
上述した実施形態では、第1閉鎖弁26aを回動することにより流入通路23を開閉することとしたが、図7に示すように、圧力弁100を備えるものとしてもよい。こうすれば、オペレータの手を煩わせることなく流出通路を開放することができる。この圧力弁100の外周は、変形可能な圧力弁支持部102と、圧力によって破壊される圧力弁破壊部104とを備えている。ここで、圧力弁100が開放される動きについて、図7を用いて詳しく説明する。図7は、圧力弁100の動きを説明するための説明図である。封止時の圧力弁100は、図7(a)に示すように、圧力弁支持部102及び圧力弁破壊部104が流入通路23と密接しているため、圧力弁100によって流入通路23は遮断され、液体が流れることができない。一方、圧力弁100の解放時には、図7(b)に示すように、圧力弁破壊部104が圧力によって破壊され、圧力弁支持部102が液体の進行方向に変形して、液体が流れることができる状態となる。このとき、圧力弁破壊部104は圧力弁の他の部分よりも薄い構造となっているため、圧力弁100に横から圧力を加えられたとき、圧力弁破壊部104が破壊されることになる。また、圧力弁支持部102は変形可能であるため、圧力弁100が流入通路23から外れることを防ぐことができる。なお、ここでは第1閉鎖弁26aを圧力弁100に置き換えることとしたが、第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cと置き換えても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0058】
上述した実施形態では、第1シリンダ21及び第2シリンダ22をボディ20に備えることとしたが、図8に示すように、廃液タンク50の中に備えるものとしてもよい。こうすれば、廃液タンク50と第1シリンダ21及び第2シリンダ22を別々に備える場合に比べて、分析用カートリッジ10全体を小型化することができる。
【0059】
上述した実施形態では、オペレータが第1閉鎖弁26a,第2閉鎖弁26b及び第3閉鎖弁26cをそれぞれ開放することで、測定に適した濃度の血液を分離カラム40に供給することとしたが、図9に示すように、プレートホルダ132に保持された封止プレート
130をスライド操作することにより、血液を分離カラム40に供給するようにしてもよい。プレートホルダ132は、シリコーンゴムなどの軟質ゴム製であり、2枚の壁部材を隙間ができるように接着したものであり、この隙間が封止プレート130を保持するスリットとなっている。図10に示すようにこのプレートホルダ132を構成する2枚の壁部材には、第1シリンダ21の第1供給口21bと流入通路23とを連通する第1シリンダ連通穴134、第2シリンダ22の第2供給口22bと流入通路23とを連通する第2シリンダ連通穴136、廃液タンク50の廃液口51と流出通路25とを連通する廃液口連通穴138がこの順に並んで設けられている。封止プレート130は、ポリエステルやポリエチレンなどの合成樹脂製であり、オペレータの操作によって第1シリンダ連通穴134と連通する第1貫通穴135、第2シリンダ連通穴136と連通する第2貫通穴137、廃液口連通穴138と連通する第3貫通穴139が設けられている。また、プレートホルダ132は疎水性の硬質ゴム製のため、各穴の接続部分は液密が維持される。ここで、プレートホルダ132の各穴の内面は親水性であることが好ましいが、疎水性でもかまわない。こうすれば、オペレータが封止プレート130をスライド操作することで、一斉に開放状態にできるため、より簡便に分析用カートリッジ10を使用可能な状態にすることができる。また、封止プレート130は流入通路23の開閉のみを行うものであってもよい。こうすれば、第3閉鎖弁26cを有しない分析用カートリッジ10であっても、封止プレート130をスライド操作することで分析用カートリッジ10を使用可能な状態にすることができる。
【0060】
上述した実施形態では、第1シリンダ21及び第2シリンダ22に別々の溶離液A及び溶離液Bを封入することとしたが、図11に示すように、第1可動隔壁121,第2可動隔壁122及びゴムパッキン123により複数の部屋120x,120y,120zに分けられた1本のシリンダ120を用意し、各部屋120x,120y,120zに別々の溶離液X,溶離液Y,溶離液Zを貯蔵するようにしてもよい。そして、オペレータが第4閉鎖弁127及び第3閉鎖弁26cをそれぞれ開放し、この分析用カートリッジを吸光度測定装置60にセットしたあと、シリンダ120のゴムパッキン123をピストンロッドによってシリンダ120の先端に向かって押圧する。すると、図11に示すように、1番目の部屋120xに貯蔵された溶離液Xが供給口120aから分離カラム40の入り口へ供給され、その後、図12(a)に示すように、最先端の第1可動隔壁121がシリンダ120の先端面に到達すると、今度は2番目の部屋120yに貯蔵された溶離液Yが供給口120aから分離カラム40の入り口へ供給され、その後、図12(b)に示すように、第2可動隔壁122がシリンダ120の先端面に達すると、今度は3番目の部屋120zに貯蔵された溶離液Zが供給口120aから分離カラム40の入り口へ供給され、図12(c)に示すように、ゴムパッキン123がシリンダ120の先端面に到達すると、シリンダ120が空になる。このように、先端側の可動隔壁から順にシリンダ120の先端面に到達しそのたびに供給口120aに接続される部屋が切り替わり、異なる溶離液が分離カラム40の入り口へ供給されるので、複数のシリンダに別々の組成の液体を貯蔵し各液体を所望の比率で混ぜ合わせる必要がない。また、シリンダ120内部から供給口120aに至る通路の入り口124とシリンダ120の先端面との間には逃がし溝125が形成され、第1可動隔壁121が入り口124を越えたあとは溶離液Xはこの逃がし溝125を通って入り口124に案内されるようになっている。この点は溶離液Yについても同じである。なお、第4閉鎖弁127及び第3閉鎖弁26cの代わりに、流入通路23及び流出通路25を一斉に開放状態にすることが可能な封止プレートを備え、封止プレートをスライド操作することで分析用カートリッジ10を使用可能な状態にするものとしてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、ボディ20に希釈タンク34を備えるものとしたが、希釈タンク34は省略してもよい。こうすれば、分析用カートリッジ10全体をより小型化することができる。
【0062】
上述した実施形態の分析用カートリッジにおいて、流入通路23中に溶液混合部27を設けて、2種類の溶離液を均一に混合するものとしたが、2種類の溶離液の混合を促す多孔質フィルタを流入通路23の途中や分離カラム40の入り口の直前に配置してもよい。こうすれば、流入通路23を更に短くすることができ、より分析用カートリッジ10を小型化することができる。
【0063】
上述した実施形態では、廃液タンク50を分析用カートリッジ10に内蔵するものとしたが、廃液タンク50を分析用カートリッジ10に外付けにしてもよい。こうすれば、分析用カートリッジ10をさらに小型化することができる
【0064】
上述した実施形態では、分析用カートリッジ50の大きさを幅(W)約20mm、奥行き(D)約55mm、高さ(H)約10mmという非常にコンパクトなサイズとしたが、特にこのサイズに限定されるものではなく、例えばこれの2倍や3倍の大きさとしてもよいし、更に大きなサイズとしてもよい。また、使用する分離カラム40の種類やサイズ、溶離液は測定試料に応じて適宜決定すればよい。
【0065】
上述した実施形態では、試料保持孔36の回りを目安線37で囲むこととしたが、試料保持孔36に近設し、血液によって隠れる位置を記したものであればよく、また、血液と反応して色の変わる部材を用いてもよい。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。分離カラムとしては、多孔性シリカ連続体担体の表面に重合反応による化学修飾を施してなるポリマー結合型カラムであり、多孔性シリカ連続体担体の表面をゾル−ゲル転移させた後、焼成してメソポアを減少させてなる多孔性シリカ連続体担体カラムを使った。この分離カラムは平均細孔径が2.0μmのカチオン交換性シリカモノリスディスク(以下「ディスクM」という)と平均細孔径が3.0μmの疎水性シリカモノリスディスク(以下「ディスクO」という)とからなるディスクを用い、それぞれのディスクの平均細孔径は分析装置として、島津オートポア 9520形を用い、試料約0.1gを大片用標準セルに採取して、初期圧約2kpaの条件で、水銀圧入法を用いて測定した。また、それぞれのディスクの厚さは2mmであり、ディスクの内径は3.2mmである。更に、ディスクMはシリカモノリスディスク表面にスペーサーである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MOP)を導入することで表面処理を行った後、過酸化ベンゾイルを開始剤にしてメタクリル酸−3−スルホプロピルカリウム(MASK)をディスク表面に存在するシラノール基の10当量分加え、24時間メタノール還流下で反応させた後、水、メタノールで洗浄し、修飾して作製した。更にまた、ディスクOはシリカモノリスディスクから水を除去し、オクタデシルジメチルクロロシラン(ODS)、ピリジンをディスク表面に存在するシラノール基の5当量分加え、24時間トルエン還流下で反応させることで表面処理を行った後、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、エタノールで洗浄し、減圧乾燥してODS化した。ODS化したシリカモノディスクにヘキサメチルジシラザン(HMDS)を17時間トルエン還流下で反応させ、トルエン、THF、エタノールで洗浄し、修飾して作製した。上述した方法で作製したディスクO及びディスクMを「MMMOOO(M:ディスクM、O:ディスクO)」の順で積層し、熱収縮チューブに充填した後、約220度で収縮させて分離カラムを作製した。
【0067】
上述した方法で作成した分離カラムを用いて、それぞれの圧力損失で10回測定し、漏洩頻度が何回であるかを測定した結果を以下の表1に示す。圧力損失はデジタル圧力センサー AP−V80(KEYENCE製)を用い、カラムの前後の圧力損失を0〜100kgf/cm2に設定して測定した。この結果、以下の表1に示すように、圧力損失が4
(kgf/cm2)以下のものでは漏洩が生じておらず、一般的にPOCTで用いられる
カラムは5(kgf/cm2)で使用されるため、この分離カラムはPOCTで使用する
に十分な性能を有していると言える。
【0068】
【表1】

【0069】
この測定は、上述した方法で作成した分離カラムをHPLC装置に接続し、溶離液A(20mM MES,20mM HEPES,0.01wt%アジ化ナトリウム(pH5.2))と溶離液B(20mM MES,20mM HEPES,0.01wt%アジ化ナトリウム,400mM NaCl(pH7.0))とをA:B=82:18で混合した混合液を通液した後、1%(w/v)牛血清アルブミン水溶液をディスクO1枚あたり2μl/回を連続10回注入し、以下の表2に示す条件で一度送液することで、エージング処理された後、分析用カートリッジに固定して行った。
【0070】
【表2】

【0071】
この測定では、HPLC装置(資生堂製、NANOSPACE)、ポンプ(NANOSPACESI−2 3101)、UV−VIS検出器(NANOSPACESI−2 3002)、デガッサ(NANOSPACESI−2 3010)、カラムオーブン(NANOSPACESI−2 3014)、マニュアルインジェクター(NANOSPACESI−2 3006)、データ処理装置(Shiseido S−MicroChrom)を用いた。
【0072】
ここで、この分離カラムを用いてグリコヘモグロビンの分離測定を行った結果を示す。測定は、HbA1c測定用実試料標準物質(レベル2:HbA1cが5.38%(w/w)) JDS HbA1c Lot.2(有限責任中間法人 HECTEFスタンダードレファレンスセンター製)を超純水にて101倍希釈したもの、D−(+)グルコース(シグマアルドリッチジャパン製、特級)を10mg/ml及び100mg/mlに超純水にて調製し、このグルコース溶液にてHbA1c測定用実試料標準物質を101倍に希釈して、37℃で2時間インキュベートしたものをそれぞれ2μl添加し、上記表2に示す条件で行った。この結果、図13に示すように、安定型HbA1c(流出時間10分前後)を不安定型HbA1c(流出時間8分前後)やヘモグロビンHbA(流出時間14分前後)から分離して検出することができた。このため、上述した方法で作成した分離カラムは、安定型HbA1cを検出するに十分な性能を有していると言える。
【0073】
また、上述した方法で作成したディスクM及びディスクOを以下の表3に示した組み合わせで積層し、同様の実験を行ったところ、図14〜17に示すように、これらの組み合わせでも安定型HbA1cを検出することができた。このため、以下の表3に示した組み合わせのディスクを用いても、安定型HbA1cを検出するに十分な性能を有していると言える。
【0074】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】分析用カートリッジ10の正面図。
【図2】分析用カートリッジ10の平面図。
【図3】分析用カートリッジを図1のA−A面で切断した断面図の一部。
【図4】試料保持孔36の外部に保持された血液の除去を示した説明図。
【図5】第1閉鎖弁26aの動作を説明するための説明図。
【図6】分析用カートリッジ10をセットした吸光度測定装置60の概略構成図。
【図7】圧力弁100の動きを説明するための説明図。
【図8】他の実施形態(その1)の分析用カートリッジ10の平面図。
【図9】他の実施形態(その2)の分析用カートリッジ10の平面図。
【図10】封止プレート130の開閉を説明するための説明図。
【図11】他の実施形態(その3)の分析用カートリッジ10の平面図。
【図12】他の実施形態(その3)の分析用カートリッジ10の動きを説明するための説明図。
【図13】「MMMOOO」の組み合わせで測定したクロマトグラム。
【図14】「MOOMOOMOO」の組み合わせで測定したクロマトグラム。
【図15】「MMMMOOOO」の組み合わせで測定したクロマトグラム。
【図16】「MOMOMOMO」の組み合わせで測定したクロマトグラム。
【図17】「MMOOMMOO」の組み合わせで測定したクロマトグラム。
【符号の説明】
【0076】
10 分析用カートリッジ、20 ボディ、21 第1シリンダ、21a 第1ゴムパッキン、21b 第1供給口、22 第2シリンダ、22a 第2ゴムパッキン、22b 第2供給口、23 流入通路、24 検出通路、25 流出通路、26a 第1閉鎖弁、26b 第2閉鎖弁、26c 第3閉鎖弁、27 溶液混合部、31 操作プレート、32 操作プレート挿入口、33 試料調整用凹部、34 希釈タンク、36 試料保持孔、37 目安線、37a 余剰血液、38 脱落防止部、40 分離カラム、50 廃液タンク、51 廃液口、52 排気穴、53 疎水性膜、54 操作プレート排出口、60 吸光度測定装置、60a カートリッジ設置部、61 第1ステッピングモータ、61a 第1ピストンロッド、62 第2ステッピングモータ、62a 第2ピストンロッド、63 コントローラ、64 LED光源、65 第1レンズ、66 拡散板、67 偏光板、68 第2レンズ、69 測定用フォトトランジスタ、70 検波回路、72 A/D変換回路、74 点灯回路、76 ダイクロミックミラー、78 輝度調整用フォトトランジスタ、100 圧力弁、102 圧力弁支持部、104 圧力弁破壊部、110 円柱状部材、112 回転部材、114 貫通口、116 切り込み、118 連通口、120 シリンダ、120a 供給口、120x,120y,120z 複数の部屋、121 第1可動隔壁、122 第2可動隔壁、123 ゴムパッキン、124 入り口、125 逃がし溝、127 第4閉鎖弁、130 封止プレート、132 プレートホルダ、134 第1シリンダ連通穴、135 第1貫通穴、136 第2シリンダ連通穴、137 第2貫通穴、138 廃液口連通穴、139 第3貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均細孔径が0.5〜5μmで陽イオン交換性の第1多孔性シリカ部と平均細孔径が1〜5μmで疎水性の第2多孔性シリカ部とを有し、第1多孔性シリカ部の平均細孔径と第2多孔性シリカ部の平均細孔径とが異なる分離カラムと、
該分離カラムへ供給する液体を貯蔵する1又は2以上のシリンダと、
前記1又は2以上のシリンダの供給口から供給される液体を前記分離カラムの入り口へ案内する流入経路と、
前記分離カラムの出口から流出した液体を廃液口へと案内する流出経路と、
前記流出経路の一部をなすように設けられ液体中の成分検出を外部検出装置により検出可能な検出通路と、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項2】
前記第1多孔性シリカ部は、平均細孔径が1〜2.3μmであり、前記第2多孔性シリカ部は、平均細孔径が2〜4.2μmである、
請求項1に記載の分析用カートリッジ。
【請求項3】
前記第1多孔性シリカ部は、スルホン酸塩による表面処理が施され、前記第2多孔性シリカ部は、炭素数4以上23以下のアルキル鎖を有するシラン化合物による表面処理が施されている、
請求項1又は2に記載の分析用カートリッジ。
【請求項4】
前記流入経路は、少なくとも1以上のU字状の曲線部を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析用カートリッジ。
【請求項5】
前記シリンダは、1つだけ備えられ、液密に摺動可能な複数の可動隔壁により複数の部屋に分けられ、該複数の部屋にはそれぞれ組成の異なる液体が貯蔵され、使用時に最末端の可動隔壁が該シリンダの先端に向かって押圧されると前記複数の可動隔壁のうち先端側の可動隔壁が該シリンダの先端面に順次到達しそのたびに前記供給口に面する部屋が変わるように構成されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析用カートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記シリンダの各供給口を開閉可能に封止する供給口封止手段、
を備え、
前記シリンダには液体が前記供給口封止手段によって封入されている、
分析用カートリッジ。
【請求項7】
前記供給口封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口を一斉に開閉可能な一枚の封止プレートである、
請求項6に記載の分析用カートリッジ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の分析用カートリッジであって、
前記流出通路の前記検出通路以外の部分を開閉可能に封止する流出通路封止手段、
を備え、
前記分離カラムには液体が前記供給口封止手段と前記流出通路封止手段とによって封入されている、
分析用カートリッジ。
【請求項9】
前記供給口封止手段及び前記流出通路封止手段は、スライド操作によって前記シリンダ
の各供給口及び前記流出通路を一斉に開閉可能な一枚の共用プレートである、
請求項8に記載の分析用カートリッジ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記流出通路の前記検出通路以外の部分を開閉可能に封止する流出通路封止手段、
を備え、
前記シリンダを1つ備えている場合には該シリンダの供給口を常時開放し、前記シリンダを2以上備えている場合には1つのシリンダの供給口を常時開放し、残りのシリンダの供給口を開閉可能に封止する供給口封止手段を有し、
前記常時開放されたシリンダと前記分離カラムには液体が前記流出通路封止手段によって封入され、前記残りのシリンダには液体が前記供給口封止手段によって封入されている、
分析用カートリッジ。
【請求項11】
前記供給口封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口を一斉に開放可能な一枚の封止プレートである、
請求項10に記載の分析用カートリッジ。
【請求項12】
前記供給口封止手段及び前記流出通路封止手段は、スライド操作によって前記シリンダの各供給口及び前記流出通路を一斉に開放可能な一枚の共用プレートである、
請求項10に記載の分析用カートリッジ。
【請求項13】
前記供給口封止手段は、液体の圧力が所定の圧力になると作動して前記シリンダの各供給口を開放する圧力弁である、
請求項6、8又は10に記載の分析用カートリッジ。
【請求項14】
前記流出通路封止手段は、液体の圧力が所定の圧力になると作動して前記流出通路を開放する圧力弁である、
請求項8、10又は13に記載の分析用カートリッジ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
測定試料を保持する試料保持孔が穿設された操作プレート、
を備え、
前記操作プレートは、未使用時には前記試料保持孔を外部に配置する初期位置に位置決めされ、使用時には前記試料保持孔を分離カラムへ導入可能な導入位置に位置決めされることで前記流入経路の一部を形成する、
分析用カートリッジ。
【請求項16】
前記操作プレートは、スライド操作によって前記初期位置から前記導入位置に位置決めされる、
請求項15に記載の分析用カートリッジ。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の分析用カートリッジであって、
前記試料保持孔に近設され、試料未添加時には外部に露出し、試料添加時には添加された試料によって覆われる試料保持位置確認手段、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記操作プレートが前記試料保持孔に試料を保持している状態で前記初期位置から前記導入位置へ移動する際に余剰試料を除去する導入量調節部、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項19】
前記導入量調節部は、前記試料保持孔に保持されている試料のうち前記操作プレートが前記初期位置から前記導入位置へ移動する際に、試料保持孔の外に存在する試料を削ぎ落とすものである、
請求項18に記載の分析用カートリッジ。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記測定試料を希釈する液体を貯蔵する希釈タンク、
を備え、
前記操作プレートは、初期位置と導入位置との間の中間位置に位置決め可能であり、
前記希釈タンクは、前記操作プレートが前記中間位置に位置決めされたときに前記試料保持孔が該希釈タンクの内部に位置するように設けられている、
分析用カートリッジ。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記操作プレートが脱落するのを防止する脱落防止機構、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の分析用カートリッジであって、
前記分離カラムの出口から流出した液体を前記廃液口を介して受け入れる廃液タンク、
を備えた分析用カートリッジ。
【請求項23】
請求項22に記載の分析用カートリッジであって、
前記廃液タンクは、該廃液タンク内の空気を排気する疎水性膜付きの排気穴を備えた廃液タンクである、
分析用カートリッジ。
【請求項24】
前記1又は2以上のシリンダは、前記廃液タンクの内部に収容されている、
請求項22又は23に記載の分析用カートリッジ。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の分析用カートリッジを設置可能な設置部と、
前記設置部に設置された前記分析用カートリッジの前記1又は2以上のシリンダの液体を独立して押圧可能な押圧機構と、
前記検出通路の一方に配置された発光素子と該検出通路の他方に配置された受光素子とを含んで構成され、前記発光素子から発射した光を前記検出通路に入射させ該検出通路を通過したあとの光を前記受光素子で受ける検出器と、
を備えた吸光度測定装置。
【請求項26】
前記検出器は、前記発光素子と前記検出通路との間に該発光素子の光を拡散する拡散板又は反射光の影響を抑制する偏光板の少なくとも一方を含んで構成されている、
請求項25に記載の吸光度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate