説明

分析装置及び測定方法

【課題】試験紙の呈色状態のランク判定を人間による判定との乖離を低減させつつ自動的に実施する。
【解決手段】本発明に係る分析装置は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色と、特定測定対象の所定数の基準濃度のそれぞれについて試験紙に現れる所定数の基準色との、所定の表色系における色差を取得する色差取得手段と、所定数の色差のうち最も色差の値が小さい基準色に対応する特定測定対象の基準濃度を色差最小基準濃度として特定して出力する手段とを有する。このように色座標空間における距離に相当する色差を基に、距離の遠近に相当する基準色との類似/非類似を判定することによって、人間による判定との乖離を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験紙の分析装置及び測定又は分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば尿などの試料中における測定対象物質の濃度を測定するために、試験紙が用いられていた。試験紙には、測定対象物質と反応して呈色する試薬が含浸されており、測定時に試験紙に試料を供給、より具体的には例えば試験紙を試料中に浸漬するか、試験紙上に試料を滴下すること等によって、試験紙内の試薬と測定対象物質とによる呈色反応を所定時間進行させる。試料中の測定対象物質の濃度に応じて呈色(度)が異なるため、基準濃度に対応する色が列挙された色調表を参照し、試験紙の呈色度合いに最も近い色に対応する基準濃度を特定する。一般的には、基準濃度は離散的でありランク分けされているので、このような色の比較を以下ランク判定と呼ぶ。
【0003】
試験紙は、被測定物質の濃度に応じた色の変化が、人間の目で検出されやすいように構成されている。但し、個人差(人間の目の感度、視力等)や目視による分析条件[例えば光源の違い、背景色(対比効果)、分析(観察)方向、光の当たる方向(光源の位置)、試験紙(呈色試験片)の面積(面積効果)等]の影響などを除去し、さらに検査効率の向上を図るため分析装置が導入されてきている。しかし、従来の装置では、人間の目で検出される色の比較という思想がなかったため、反射率を測定したり、RGB値を測定して、所定の閾値との比較でランク判定を行っており、本来色で表される多くの情報のうち一部の情報でしか判定を行っていない。そのため、試験紙本来の精度でランク判定できない場合や目視判定と結果に違いが生じる場合があった。
【0004】
このため一時的に分析装置専用の試験紙を導入する動きもあったが、これは検査現場の要求に合致するものではなかった。なぜなら、分析装置専用の試験紙では人間の目で分析装置の判定結果を検証することが難しいからである。そのため、検査現場では従来の試験紙の方が、容易に検証できるので好ましいとされている。
【0005】
なお、特開平10−73534号公報には、正確な定量結果を得るための呈色物定量装置が開示されている。具体的には、定量対象である呈色物と共存呈色物が含まれる試験紙に対して所定の分光分布を有する光を照射する光源と、試験紙載置台上に配置される試験紙からの反射光像を電気信号に変換する撮像部とから測光装置を構成し、撮像部からの電気信号と、予め測定された呈色物の色度座標及び共存呈色物の色度座標及び光源が出力する光の色度座標に基づき、試験紙からの反射光に含まれる呈色物からの反射光成分の光量を算出し、算出した光量に基づき、呈色物の含量を求めるようにデータ処理装置を構成する。しかし、測定対象である試験紙全体からの反射光には、呈色物からの反射光以外に、試験紙への照射光と全く同じ分光分布を有する反射光である鏡面反射光や、呈色物を除く部分からの反射光が含まれており、呈色物からの反射光以外の反射光の影響を除去するために、色の加法則を用いている。そして、この影響除去処理の後に得られる値と、呈色物濃度が既知の試料に関する実験結果から定められた比例係数を含む2次式とから測定対象の濃度を算出する。すなわち、色座標空間における距離によって基準濃度に対応する色と比較するという観点は示されていない。
【0006】
さらに、特開平7−35744号公報には、尿の着色状態を目視法と対応性のある三刺激値測定法により、客観性のある結果を機械的に求める技術が開示されている。具体的には、着色尿測定片(尿の着色を測定するためだけの試験片)および尿成分測定用試験片の色彩および色差を測定することにより、着色尿および呈色反応の度合いを読み取る。三刺激値測定器を校正後、着色尿測定片と尿成分測定用試験片に尿試料を供給し、試料が供給された着色尿測定片の色彩を三刺激値測定器で読み取ることにより、尿の着色度を測定すると共に、着色尿測定片の色彩を基準にして試験紙片の色彩、即ち呈色度を分析する。この公報では、色差を算出するのは、尿の着色の影響を補正するためであって、算出された色差を直接ランク判定に用いることはできない。また、この色差を用いてどのように補正するかは本公報中明らかではなく、実際このような色差では正しい呈色度合いを得ることは不可能であるため、本公報記載の技術は実施できない。
【特許文献1】特開平10−73534号公報
【特許文献2】特開平7−35744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来技術では、従来から用いられている試験紙の呈色状態について、人間が行ってきたような基準色との類似/非類似の判定を行っておらず、人間による判定結果と乖離が生じやすいという問題がある。また、上記公報記載の技術では、検査現場の人間が行ってきたような基準色との類似/非類似の判定が、物体の色を表す表色系においてどのような演算又はデータに相当するのかという観点が欠けており、従来から用いられている試験紙の、人間によるランク判定とは異なる原理を用いて判定しており、人間による判定結果と乖離が生じやすくなる。
【0008】
従って、本発明の目的は、試験紙の呈色状態のランク判定を人間による判定との乖離を低減させつつ自動的に実施し得る分析装置及び測定又は分析方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、試験紙に異常な呈色が生じているか否かを自動的に判断することができる分析装置及び測定又は分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る分析装置は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色と、特定測定対象の所定数の基準状態のそれぞれについて試験紙に現れる所定数の基準色との、所定の表色系における色差を取得する色差取得手段と、所定数の色差のうち最も色差の値が小さい基準色に対応する基準濃度を色差最小基準濃度として特定する特定手段とを有する。
【0011】
このように色座標空間における距離に相当する色差を基に、距離の遠近に相当する基準色との類似/非類似を判定することによって、人間による判定との乖離を低減させることができる。
【0012】
また、上で述べた色差取得手段は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を、所定の表色系における座標値として測定する手段と、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と測定された上記座標値との色差を算出する手段とを有するようにしてもよい。例えば、L*a*b*表色系における色度座標値をそのまま測定できる装置を用いる場合には、このような構成となる。
【0013】
さらに、上で述べた色差取得手段は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色をRGB値として測定する手段と、測定されたRGB値を、所定の表色系における座標値に変換する手段と、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と変換された上記座標値との色差を算出する手段とを有するようにしてもよい。例えば、イメージセンサを用いる場合には、このような構成となる。
【0014】
また、上で述べた色差取得手段は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を三刺激値として測定する手段と、測定された上記三刺激値を、所定の表色系における座標値に変換する手段と、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と変換された座標値との色差を算出する手段とを有するようにしてもよい。例えば、三刺激値測定装置を用いる場合には、このような構成となる。
【0015】
また、色差取得手段によって取得された色差を用いて、異常呈色状態の有無を判定する異常呈色状態判定手段をさらに含むようにしてもよい。このようにすれば、試験紙に異常な呈色が生じている可能性についてユーザに警告することができるようになる。
【0016】
このような異常呈色状態判定手段が、例えば上記最も色差の値が小さい基準色と試験紙に現れる色との色差が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する手段を含むようにしてもよい。
【0017】
さらに、上で述べた異常呈色状態判定手段は、所定数の基準色のうち色差最小基準濃度に隣接する特定測定対象の基準濃度に対応する基準色であって且つ試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定する手段と、(1)最も色差の値が小さい基準色と(2)試験紙に現れる色と(3)第2基準色とを用いて所定の判定値を算出し、当該所定の判定値が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する手段とを含むようにしてもよい。このように、第2基準色を併せて考慮して異常呈色状態が発生していないかを判断することによって、妥当性の高い判定ができるようになる。
【0018】
なお、上で述べた異常呈色状態の有無の判定の2つの手法については、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用しても良い。
【0019】
また、上で述べた異常呈色状態判定手段は、所定数の基準色のうち色差最小基準濃度に隣接する特定測定対象の基準濃度に対応する基準色であって且つ試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定する手段と、所定の表色系において、試験紙に現れる色の座標から、最も色差の値が小さい基準色の座標と第2基準色の座標とを通る直線への最短距離を算出し、当該最短距離が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する判定手段とを含むようにしてもよい。
【0020】
さらに、上で述べた判定手段は、最も色差の値が小さい基準色と試験紙に現れる色との色差、最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差と、第2基準色と試験紙に現れる色との色差から、上記最短距離を算出する手段を有するようにしてもよい。
【0021】
上記最短距離は、試験紙に現れる色が基準色とあまり類似していない場合には、大きな値となる。従って、このような処理を実施することによって、不適切な呈色状態が生じていないか判断することができる。
【0022】
さらに、異常呈色状態の有無及び色差最小基準濃度を出力する手段をさらに含むようにしてもよい。これによってユーザは分析装置の出力を適切に利用できるようになる。
【0023】
また、本発明の測定方法は、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色と、特定測定対象の所定数の基準濃度のそれぞれについて試験紙に現れる所定数の基準色との、所定の表色系における色差を取得する色差取得ステップと、所定数の色差のうち最も色差の値が小さい基準色に対応する、特定測定対象の基準濃度を色差最小基準濃度として特定する特定ステップとを含む。
【0024】
上で述べた色差取得ステップが、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を、所定の表色系における座標値として測定するステップと、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と測定された上記座標値との色差を算出するステップとを含むようにしても良い。
【0025】
また、上で述べた色差取得ステップが、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色をRGB値として測定するステップと、測定された上記RGB値を、所定の表色系における座標値に変換するステップと、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と変換された上記座標値との色差を算出するステップとを含むようにしてもよい。
【0026】
さらに、上で述べた色差取得ステップが、特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を三刺激値として測定するステップと、測定された上記三刺激値を、所定の表色系における座標値に変換するステップと、所定の表色系における、所定数の基準色の座標値と変換された上記座標値との色差を算出するステップとを含むようにしても良い。
【0027】
また、上で述べた色差取得ステップにおいて取得された色差を用いて、異常呈色状態の有無を判定する異常呈色状態判定ステップをさらに含むようにしてもよい。
【0028】
さらに、上で述べた異常呈色状態判定ステップが、最も色差の値が小さい基準色と試験紙に現れる色との色差が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定するステップを含むようにしてもよい。
【0029】
また、上で述べた異常呈色状態判定ステップが、所定数の基準色のうち色差最小基準濃度に隣接する特定測定対象の基準濃度に対応する基準色であって且つ試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定するステップと、最も色差の値が小さい基準色と試験紙に現れる色と第2基準色とを用いて所定の判定値を算出し、当該所定の判定値が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定するステップとを含むようにしてもよい。
【0030】
さらに、上で述べた異常呈色状態判定手段が、所定数の基準色のうち色差最小基準濃度に隣接する特定測定対象の基準濃度に対応する基準色であって且つ試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定するステップと、所定の表色系において、試験紙に現れる色の座標から、最も色差の値が小さい基準色の座標と第2基準色の座標とを通る直線への最短距離を算出し、当該最短距離が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する判定ステップとを含むようにしてもよい。
【0031】
また、上で述べた判定ステップが、最も色差の値が小さい基準色と試験紙に現れる色との色差、最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差と、第2基準色と試験紙に現れる色との色差から、最短距離を算出するステップを含むようにしてもよい。
【0032】
さらに、異常呈色状態の有無及び色差最小基準濃度を出力するステップをさらに含むようにしてもよい。
【0033】
物理的な測定の部分を除き本発明にかかる方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブル・ディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体又は記憶装置に格納される。また、ネットワークを介してディジタル信号にて頒布される場合もある。なお、処理途中のデータについては、コンピュータのメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、試験紙の呈色状態のランク判定を人間による判定との乖離を低減させつつ自動的に実施することができるようになる。
【0035】
また本発明の他の側面によれば、試験紙に異常な呈色が生じているか否かを自動的に判断することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明において、試験紙とは、例えば尿検査、イムノクロマト検査、生化学検査、微生物検査、ドライケミストリー等の分野で用いられるものであり、目的とする特定測定対象の分析(測定)を行うための呈色し得る試験片(呈色試験片)そのものと、このような試験片を1片以上有するものである。このような試験紙としては、吸収性担体(例えば、濾紙、不織布、織物生地、編物生地、ガラス繊維濾紙、酢酸セルロース等からなるメンブランフィルター、無機物又は有機物粒子からなる連続空隙含有粒状構造物層等)の一部又は全部に特定測定対象の分析(測定)を行うのに必要な試薬等を含浸させたもの、支持体(例えばプラスチック、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリスチレン等)に上記の如き試薬を含浸させた吸収性担体を貼着したもの等が挙げられる。また、試験紙は、測定(分析)に必要な全ての試薬を含んでいるのが好ましい。このような試薬は公知のものが使用可能である。分析に必要な全ての試薬とは、必要不可欠な試薬であり、その他の試薬は目的に応じて適宜用いればよい。試薬は原則として全てを含浸、塗布、乾燥させることにより吸収性担体に含有させる。尚、上記試験紙の材質、形状等はなんら制限はなく、上記の如き分野で使用されるものであればよい。
【0037】
本発明は、上記の如き試験紙のなかでも尿検査に用いられる試験紙に特に有効である。
【0038】
本発明において、測定対象としては、尿中の各成分(例えば、蛋白質、潜血(ヘモグロビン)、pH、ウロビリノーゲン、ビリルビン、ケトン体、ブドウ糖、比重、亜硝酸塩、白血球、アスコルビン酸、フェニルピルビン酸、バニルマンデル酸、電解質(Na、K、Cl)、酵素(アミラーゼ、エステラーゼ等)等が挙げられる。また、これら以外に、尿検査、イムノクロマト検査、生化学検査、微生物検査、ドライケミストリー等の分野で測定(分析)される、酵素、脂質、無機イオン、代謝産物、タンパク質、例えば各種グロブリン、抗原、抗体等の生体由来成分、薬物、ホルモン、腫瘍マーカー、DNA、RNA等、分析方法が確立されている測定対象が挙げられる。
【0039】
尚、本発明は、上記の如き測定対象のなかでも尿中の各成分の検査に用いられる試験紙に特に有効である。
【0040】
本発明における試料としては、尿、糞便、喀たん等の排泄物、血液、血漿、血清、髄液、胃液、胆汁等の体液、膿、皮膚由来物、各種細胞・組織由来物等の生体由来試料、水道水、工場廃液、半導体用洗浄水、食品、飲料、医療器具等の洗浄前後の洗浄液等が挙げられる。なかでも、本発明は尿を試料とした場合に特に有効である。
【0041】
本発明において、基準濃度とは、測定対象濃度に関連付けられたもの(測定対象の濃度に対応するもの)であって、当該関連に基づいて、試験紙に供給された試料中の測定対象の濃度を算出するための基準となるものである。通常、基準濃度は、測定対象毎に適宜設定され、2以上の複数の基準濃度が設定される。
【0042】
基準濃度は、上記の如き測定対象の濃度、測定対象の特定の濃度範囲、及びこれら濃度又は濃度範囲から設定されたランク(程度)が包含される。一般的には、基準濃度は特定の濃度範囲に分割されたランクとして設定される。尚、本発明の濃度には、測定対象の濃度自体の他に、比重値、pH値、酵素活性値も含まれる。
【0043】
従って、一般的に、測定対象は、試料中の測定対象自体の濃度として、試料中の測定対象が含まれる特定の濃度範囲として、或いは試料中に含まれる測定対象のランク(程度)として測定(分析)される。
【0044】
また、基準色とは、測定対象の上記の如き基準濃度を示す色を意味し、測定される試料中の測定対象自体の濃度、試料中の測定対象が含まれる特定の濃度範囲、或いは試料中に含まれる測定対象のランク(程度)等を決定するための標準として使用される。
【0045】
尚、基準色は、基準濃度に対応して測定対象毎に適宜設定され、その数も設定された基準濃度に対応したものであり、通常は2以上の複数の基準色が設定される。
【0046】
このような基準色の色は、上記の如き所定数の基準濃度のそれぞれにおいて試験紙に現れる基準となる色であり、例えば、既知濃度の測定対象を含有する標準液や試料等を用いて実施された試験紙の呈色試験片の色、これを複数種の標準液や試料等に対して実施した結果に基づいて設定された色等である。
【0047】
本発明において、所定の表色系とは、色差を算出することができる表色系を意味する。このような表色系としては、例えばL*u*v*表色系(CIE1976)、L*a*b*表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系等が挙げられる。従って、色差を算出するために測定或いは変換される座標値としては、上記の如き表色系における座標値を意味する。
【0048】
以下に、本発明の実施の形態を、尿試験紙を用いる場合を例に取り説明する。
【0049】
本発明の一実施の形態に係る分析装置100の機能ブロック図を図1に示す。分析装置100は、例えば尿試験紙102の呈色状態のランク判定を自動的に行う装置であって、表示装置やプリンタなどの出力装置及びタッチパネルやキーボードなどの入力装置を含む入出力部1と、所定の制御、演算及び記録/記憶を行う情報処理部3と、光源5と検出部7と試験紙載置部11と白色校正用白色板13と基準色色調表15とレンズ等の光学系17とを含む測光系と、尿試験紙102の廃棄部21と、搭載部分に配置されている尿試験紙102を測定時に試験紙載置部11に移動させ測定後に試験紙載置部11から廃棄部21に移動させる搬送機構9と、試験紙に付着して装置内に持ち込まれる余剰試料を除去したり、測光系や搬送機構9の洗浄を行う洗浄機構19とを有する。
【0050】
情報処理部3は、プロセッサ及びメモリなどの記憶装置を含むコンピュータハードウエアとプログラムの組み合わせによって実施され、入出力部1、光源5、検出部7、洗浄機構19、搬送機構9などの制御を行う。また、以下でも述べるが、白色校正用白色板13と基準色色調表15とについても、搬送機構9又は他の移動機構によって、情報処理部3の指示に従って、試験紙載置部11に移動される場合もある。
【0051】
測光系の光源5には、例えばハロゲンランプ、発光素子[例えばLED(Light-Emitting Diode)、マルチタイプLED等]、蛍光灯、白熱灯(例えばハロゲンランプ、タングステンランプ等)、メタルハライドランプ、キセノンランプ(キセノンフラシュランプ、キセノンストロボランプ等)、ナトリウム灯、熱陰極放電管、冷陰極放電管などを用いることができる。
【0052】
また、測光系の検出部7には、例えばイメージセンサ、三刺激値測定装置、色彩・色差計などを用いることができる。イメージセンサは、例えば各画素に対応する受光部が二次元的に配置されており、各受光部が物体の反射光の強度をRGB成分のいずれかの電気信号として出力するものである。三刺激値測定器は、人間の分光感度に相当する等色関数の感度を持つセンサにより被測定物の色の三刺激値(X,Y,Z)を測定する装置である。色彩・色差計は、以下で説明するL*a*b*表色系、L*C*H表色系などの各種表色系で被測定物の反射光の色度座標を測定するか、又は基準色との色差を算出して出力する装置である。
【0053】
上で述べたイメージセンサとしては、特に限定されないが、例えばカラーイメージセンサやカラーフィルタと組み合わせたモノクロイメージセンサ等のイメージセンサ、例えばCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、VMIS(Threshold Voltage Modulation Image Sensor)イメージセンサ等が挙げられる。またイメージセンサには、リニアイメージセンサとエリアイメージセンサがあり、本発明にはいずれも使用可能である。
【0054】
さらに、測光系の試験紙載置部11は、測定対象の尿試験紙102を測定する場所であり、その位置は、尿試験紙102の測定が最適条件(照度、照明の均一性などの条件が最適)で行われるように、光源5、検出部7、さらに光学系17の位置と共に相対的に決められる。尿試験紙102は、載置場所に載置された後、搬送機構9によってこの試験紙載置部11に搬送されるか、又は他の移動機構(ユーザによる設置を含む)によって試験紙載置部11に直接載置される。
【0055】
尚、試験紙載置部11は、分析装置100とは別体として、また一体として具備させてもよい。即ち、分析装置100から独立していても分析装置100と一体となっていても別体となっていてもよい。分析装置100から独立している場合としては、例えば机や適当な紙、板等の上面等、任意のものを試験紙載置部11とする場合が挙げられる。
【0056】
なお、検出部7がイメージセンサの場合、情報処理部3で位置に関する画像処理を行うことにより、尿試験紙102、さらに尿試験紙102上の反応部である呈色試験片を検出可能であることから、尿試験紙102の載置姿勢の制限は低くなる。一方、検出部7が三刺激値測定装置や色彩・色差計の場合、呈色試験片の検出ができないことから、試験紙載置部11上における尿試験紙102の載置場所及び尿試験紙102の載置姿勢を、厳密に制御する必要がある。
【0057】
また、白色校正用白色板13は、例えば光源5や検出部7の経時的劣化、ロット間差、温度等の環境条件による状態変化によるデータの変動、装置間差、機種間差等の照射光の変化や装置間差等を補正するため、照射光に対する白色校正に用いられる。このような変化に対応するため、白色校正用白色板13は、尿試験紙102の呈色試験片と同等の測定条件(照度、照明の均一性などの条件)の場所に、白色校正実施時に設置する必要がある。例えば、白色校正用白色板13を分析装置100の特定の場所に内蔵させて白色校正を行うか、或いは搬送機構9や他の移動機構(ユーザによる設置を含む)によって白色校正用白色板13を、試験紙載置部11に載置して白色校正を行うようにする。尚、このような補正は、測定毎や測定開始時或いは所定時間毎に実施してもよいが、光源5や検出部7等の光学特性が安定であれば、補正値の変動が殆ど無いので、装置の電源投入時に補正を行い、測定毎の補正を行わなくてもよい。また、白色校正用白色板13は、基準色色調表15に組み込んで1つのものとしてもよい。
【0058】
さらに、基準色色調表15は、測定対象物質の各基準濃度に対応する基準色が列挙されたものであり、測定対象の濃度を決定するため(例えばランク判定を行うため)の標準として使用される。また、基準色色調表15を用いることにより、例えば光源5や検出部7の経時的劣化、ロット間差、温度等の環境条件による状態変化によるデータの変動、装置間差、機種間差等の照射光の変化や装置間差等を補正することもできる。基準色色調表15は、白色校正用白色板13と同様に、基準濃度データ取得時には、尿試験紙102の呈色試験片と同等の測定条件(照度、照明の均一性などの条件)の場所に設置する必要がある。この基準色の測定については、必ずしも尿試験紙102の測定毎に行う必要はなく、測定開始時又は所定時間間隔で実施しても、或いは装置の電源投入時に実施しても良い。また、例えば、基準色色調表15を分析装置100の特定の場所に内蔵させて測定を行うか、或いは搬送機構9や他の移動機構(ユーザによる設置を含む)によって基準色色調表15を、試験紙載置部11に載置して測定を行うようにする。
【0059】
尚、測定対象の濃度を決定する(例えばランク判定を行う)にあたっては、基準色色調表15を用いなくてもよく、後に述べるような公知の種々の方法により実施することもできる。しかしながら、上記の如き理由から、より正確な色彩を測定するためには基準色色調表15を用いる方が好ましい。
【0060】
搬送機構9には、ベルト方式、トレイ方式、プッシュ・バー方式などの方式を使用することができる。また、連続搬送、間欠搬送のいずれであっても良い。
【0061】
尚、搬送機構9は、必ずしも必要ではなく、このような搬送機構9がない場合には、他の移動機構(ユーザによる移動・設置を含む)によって試験紙を順次移動させればよい。
【0062】
尿試験紙102は、例えば図2(a)(上面図)及び図2(b)(側面図)に示すように、プラスチック薄板等からなる支持体102lと、当該支持体102lに貼付され且つウロビリノーゲン、潜血、ビリルビン、ケトン体、ブドウ糖、蛋白質、アスコルビン酸等の尿成分と反応して呈色する試薬、pHや比重に対応して呈色する試薬等を含浸或いは塗布した呈色試験片102a乃至102kとを有する。呈色試験片102a乃至102kの素材は濾紙、繊維、セラミックス、プラスチック等、尿試料を適量保持出来るものであれば材質、形状等なんら制限はないが、本実施の形態では従来用いられている物と同じである。
【0063】
次に、図3A乃至図13を用いて、図1に示した分析装置100の動作を説明する。まず、ユーザは、尿試験紙102に試料(尿)を供給(浸漬又は滴下)しておく。分析装置100の情報処理部3は、白色校正処理を実施する場合には(ステップS1:Yesルート)、検出部7に対して分析装置100の特定の場所に内蔵された白色校正用白色板13を用いた白色校正処理を実施させるか(ステップS3)、或いは搬送機構9又は他の移動機構によって(場合によってはユーザによって)、白色校正用白色板13を試験紙載置部11にセットさせ、検出部7に対して白色校正処理を実施させる(ステップS3)。この白色校正処理については、光源5その他の変動に対する校正処理であって、周知の処理なのでこれ以上述べない。また、光源5及び検出部7が光学的に十分安定であれば、尿試験紙102毎に実施する必要はなく、例えば測定日における最初の尿試験紙102の測定前又は所定時間間隔で実施すればよい。このように今回は白色校正処理を実施しない場合には(ステップS1:Noルート)、ステップS5に移行する。
【0064】
次に、情報処理部3は、基準色色調表15における各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)の色度座標を今回取得する場合には(ステップS5:Yesルート)、検出部7に基準色色調表15における各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)を示す色を測定させ、検出部7から測定結果を受け取り、メインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS7)か、或いは搬送機構9又は他の移動機構によって(場合によってはユーザによって)、基準色色調表15を試験紙載置部11にセットさせ、検出部7に基準色色調表15における各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)を示す色を測定させ、検出部7から測定結果を受け取り、メインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS7)。測定結果は、検出部7の機能によって異なるため、具体的には、尿試験紙102の各呈色試験片の測定と共に説明する。
【0065】
尚、上記ステップS3において、基準色色調表15における各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)を示す色の測定は、基準色色調表15を用いる代わりに、例えば既知濃度の測定対象を含有する標準液等を用いて、以下で述べる尿試験紙102の各呈色試験片の測定と同様に実施された呈色試験片(対照)の色を測定してもよい。ここで、標準液としては、通常、異なる濃度を含有する複数の標準液が使用される。
【0066】
また、基準色色調表15や標準液の測定自体も必ずしも測定毎に必要というわけではなく、例えば基準色色調表15おける各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)を示す色や標準液等を用いて実施された呈色試験片(対照)の色に相当する測定値(例えばL*a*b*表色系の色度座標等)を、予めメインメモリ等の記憶装置に格納しておいてもよい。尚、このように予め記憶装置に格納させておき、そのデータを用いる場合、すなわち基準濃度の色度座標を今回取得しない場合には(ステップS5:Noルート)、ステップS13に移行する。なお、予めメインメモリ等の記憶装置に格納しておく測定値は、RGB値、三刺激値(X,Y,Z)であることもあるが、その場合にはステップS11を実施する必要がある。
【0067】
さらに、情報処理部3は、ステップS7でL*a*b*表色系における色度座標が測定されていない場合には(ステップS9:Noルート)、測定結果から、基準色色調表15における各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)に対応する色度座標[又は、異なる濃度を含有する複数の標準液を用いて実施された呈色試験片(対照)から得られた各基準濃度(例えばランク等)に対応する色度座標]を算出し、例えばメインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS11)。本実施の形態では、これに限定されるものではないが、L*a*b*表色系における色度座標を算出する。但し、この処理自体、検出部7の機能によって異なるため、具体的には尿試験紙102の各呈色試験片についての色度座標の算出と共に説明する。尚、ステップS7でL*a*b*表色系の色度座標が測定されている場合には(ステップS9:Yesルート)、ステップS13に移行する。
【0068】
但し、この処理を実施すると、例えば図4に示すようなデータが、情報処理部3のメインメモリ等の記憶装置に格納される。これが色差を算出する基準となる。図4(a)においては、蛋白質の基準値(基準濃度)が6段階(ランク)で規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。図4(b)においては、潜血(ヘモグロビン)の基準値(基準濃度)が4段階(ランク)で規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。さらに、図4(c)においては、pHの基準値(基準濃度)が5段階(ランク)で規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。図示していないが、ウノビリノーゲンについては、5段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。ビリルビンについては、4段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。ケトン体については、4段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。ブドウ糖については、5段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。比重については、9段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。亜硝酸塩については、3段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。白血球については、4段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。アスコルビン酸については、3段階(ランク)で基準値(基準濃度)が規定されており、それぞれに色度座標が登録されている。尚、上記のような各測定対象における基準値(基準濃度)の段階(ランク)数は特に決まったものではなく、自由に設定することができる。
【0069】
なお、この段階までに、入出力部1を介して、測定対象の試験紙102のIDなどを入力しておき、以下の処理で特定される判定結果(ランク)と対応付けられるようにしておく。
【0070】
また、情報処理部3は、搬送機構9に、試料が供給され且つ所定時間経過した尿試験紙102を試験紙載置部11に搬送させる(ステップS13)。そして、情報処理部3は、検出部7に、尿試験紙102の測定を実施させ、検出部7から測定結果を受け取り、メインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS15)。尿試験紙102の呈色試験片毎に測定を実施する。
【0071】
検出部7がイメージセンサの場合には、測定対象についてRGBの値を測定する。ステップS7では、基準色色調表15において各測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)に対応する色のRGB値が測定され、ステップS15では、尿試験紙102の各呈色試験片の色のRGB値が測定される。
【0072】
検出部7が三刺激値測定装置の場合には、測定対象について三刺激値(X,Y,Z)を測定する。ステップS7では、基準色色調表15において各測定対象物質の各基準濃度(ランク等)に対応する色の三刺激値(X,Y,Z)が測定され、ステップS15では、尿試験紙102の各呈色試験片の色の三刺激値(X,Y,Z)が測定される。
【0073】
検出部7が色彩・色差計の場合には、測定対象について例えばL*a*b*表色系の色度座標が直接測定される。すなわち、ステップS7を実施すればステップS11を実施することなくステップS13に移行し、ステップS15を実施すれば、ステップS17でL*a*b*色度座標を測定したということで(ステップS17:Yesルート)、端子Aを介して図3BのステップS21に移行する。さらに、色彩・色差計が、色差を出力できる場合には、図3AのステップS19及び図3BのステップS21をもスキップされてステップS23に移行する。具体的には以下で詳細に説明するが、基準色色調表15において、測定対象物質毎に、各基準濃度(例えばランク等)に対応する色の色度座標と、当該測定対象物質の呈色試験片の色の色度座標との色差が出力される。なお、必要に応じて各基準濃度に対応する色度座標を出力する場合もある。
【0074】
一方、ステップS15でL*a*b*色度座標を測定されたわけではない場合には(ステップS17:Noルート)、情報処理部3は、ステップS9で測定された尿試験紙102の各呈色試験片の測定結果から、所定の表色系における色度座標を算出し、例えばメインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS19)。
【0075】
RGB値が測定された場合には、RGB値から例えば三刺激値(X,Y,Z)を算出し、三刺激値(X,Y,Z)を所定の表色系の色度座標に変換する。三刺激値(X,Y,Z)が測定された場合には、当該三刺激値(X,Y,Z)から所定の表色系の色度座標に変換する。
【0076】
RGB値から三刺激値(X,Y,Z)へ変換するには、公知の変換式を用いればよく、測定時の条件等を考慮して公知の変換式から適当なものを選択すればよい。このような変換式としては、例えば以下の式等が挙げられる。
X=(ax(R/255)γ+bx(G/255)γ+cx(B/255)γ)×100
Y=(ay(R/255)γ+by(G/255)γ+cy(B/255)γ)×100
Z=(az(R/255)γ+bz(G/255)γ+cz(B/255)γ)×100
上の式は、RGB値が256階調で測定される場合の式である。また、γはγ補正のための係数であり、2.2乃至2.4が用いられる。a,b,cについては係数である。
【0077】
三刺激値(X,Y,Z)が測定又は算出された場合であって、L*a*b*表色系の色度座標を算出する場合には以下のようにする。なお、L*a*b*表色系は、現在最もよく用いられている表色系であり、1976年国際照明委員会(CIE)で規格化されて、JIS(JISZ8728)においても採用されている。このL*a*b*表色系では、明度をL*で表し、色相及び彩度を示す色度をa*及びb*で表す。図5に示すように、+a*は赤方向を表し、−a*は緑方向を表し、+b*は黄色方向を表し、−b*は青方向を表す。数値が大きくなるに従って色鮮やかになり、中心になるにつれてくすんだ色となる。なお、縦方向の+L*は白、−L*は黒となる。L*の原点における平面を図6に示す。L*a*b*表色系では、角度は取り扱わないが、図6に示すように、原点を中心とした角度で色相が表されるようになっている。
【0078】
三刺激値(X,Y,Z)が得られている場合には、L*,a*,b*の値は以下の式に従って算出される。
L*=116×(Y/Yn)1/3−16)
a*=500×((X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3
b*=200×((Y/Yn)1/3−(Z/Zn)1/3
ここで、Xn、Yn、Znは、光源によって異なる定数である。
例えば、C光源であれば、Xn=98.072、Yn=100.000、Zn=118.225となる。また、D65光源の場合には、Xn=95.045、Yn=100.000、Zn=108.892となる。
【0079】
以下では、このL*a*b*表色系に変換することを前提として説明するが、例えばL*C*H表色系を用いる場合もある。L*C*H表色系は、図5及び図6に示したL*a*b*表色系と同じような空間であるが、L*で明度を、C*で彩度を、H*で色相を表している。図7で示すように、中心からの距離で彩度が表され、a*軸からの反時計回りの角度で色相が表される。なお、彩度は、中心に近づくほどくすんだ色になり、中心に近づくほど鮮やかになる。
【0080】
L*a*b*表色系におけるL*とL*C*H表色系におけるL*は同じである。一方、彩度C*は、以下の式で表される。
C*=((a*)2+(b*)21/2
【0081】
また、色相Hは、以下のように算出される。
a*>0,b*>0の場合、H=60×atan(b*/a*)
a*>0,b*<0の場合、H=360+60×atan(b*/a*)
a*<0の場合、H=180+60×atan(b*/a*)
a*=0,b*=0の場合、H=0
a*=0,b*>0の場合、H=90
a*=0,b*<0の場合、H=270
【0082】
端子Aから続く図3Bの説明に移行して、次に情報処理部3は、尿試験紙102の各呈色試験片の色度座標と、基準色色調表15において対応する測定対象物質の各基準濃度(例えばランク等)の色度座標との色差を算出し、例えばメインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS21)。
【0083】
図8に示すように、L*a*b*表色系において色Aと色Bの色差ΔE*abについては、L*方向の座標値の差ΔL*、a*方向の座標値の差Δa*、b*方向の座標値の差Δb*を用いて、以下のように算出される。
ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
このように色差は、L*a*b*表色系における距離として表されている。
【0084】
ステップS21では、上の例では尿試験紙102に設けられている11の呈色試験片の各々について、全ての基準濃度(例えばランク等)との色差が算出される。例えば、5ランク規定されている場合には、5つの色差が算出される。
【0085】
そして、情報処理部3は、算出した色差に基づき、各呈色試験片について、最小の色差となった基準濃度(例えばランク等)を暫定基準濃度(ランク)として特定する(ステップS23)。その後、呈色共存物質の存在又は異常発色による異常状態の発生の有無を確認するための異常検出処理を実施する場合には(ステップS25:Yesルート)、情報処理部3は、異常検出処理を実施する(ステップS27)。この異常検出処理については、図9A乃至図9Dを用いて説明する。一方、ユーザの指示又は分析装置100の設定として、異常検出処理を実施しない場合には(ステップS25:Noルート)、ステップS23で特定された暫定基準濃度(ランク)を測定結果として入出力部1に出力し、入出力部1は、測定結果を表示装置やプリンタなどによってユーザに対して出力する(ステップS31)。
【0086】
異常検出処理は図9Aに示すような流れで実施される。すなわち、ユーザの指示又は分析装置100の設定として第1次異常検出処理を実施する場合には(ステップS41:Yesルート)、以下で説明する第1次異常検出処理を実施する(ステップS43)。そして、第1次異常検出処理の処理結果が異常を表している場合には(ステップS45:Yesルート)、以下で説明する第2次異常検出処理を実施する(ステップS47)。一方、第1次異常検出処理の処理結果が正常であれば(ステップS45:Noルート)、元の処理に戻る。また、第1次異常検出処理を実施しない場合には(ステップS41:Noルート)、ステップS47に移行して第2次異常検出処理を実施する。ステップS47で第2次異常検出処理を実施すると、元の処理に戻る。
【0087】
第1次異常検出処理(図9B)では、例えばステップS21で取得された色差を用いて判定を行う。このようにすれば、試験紙に異常な呈色が生じている可能性についてユーザに警告することができるようになる。例えば、情報処理部3は、ステップS23で特定された暫定基準濃度(ランク)に対応する色(最も色差の値が小さい基準色)と呈色試験片の色(試験紙に現れる色)との色差(ステップS21で算出された色差)が、閾値以下であるか否かを判断し(ステップS51)、閾値を超える場合には異常と特定して(ステップS53)、元の処理に戻る。一方、閾値未満であれば第1次異常検出処理では正常と判断して元の処理に戻る。このように、色差に応じた異常呈色状態の有無を判定することができる。
【0088】
なお、上記閾値は、例えば試料(尿)の色や試験紙(呈色試験片)、装置のロット間差、試料の固体間差等を考慮して、実際の試料の測定(分析)値や基準(例えば色調表)等の再現性データ等を基に適宜設定される。具体的には、例えば以下のようにして閾値を決定すればよい。
【0089】
(再現性の検討)
例えば以下により再現性データを検討して暫定閾値を決定する。
・尿試験紙で、各基準濃度(ランク)の試料を複数回測定する。
・色調表の各基準濃度(ランク)の色を複数回測定する。
・得られた試験紙の色と基準色との色差を算出し、これを例えば標準偏差(SD、2SD、3SD等)やレンジ(平均値、最小値、最大値等)を用いて統計処理して閾値の暫定閾値を決定する。
【0090】
(試料の色の影響確認)
試料(尿)の色に基づいて、必要であれば上記の暫定閾値を修正する。
・正常尿として出現する尿の尿色を測定して、上記暫定閾値への影響を検討する。
・検討結果により、必要であれば、暫定閾値を補正する。
尚、試験紙(呈色試験片)、装置のロット間差、試料の固体間差等を考慮して、必要であれば更に閾値を補正する。
【0091】
また、第2次異常検出処理(図9C)では、情報処理部3は、チェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)を、ステップS21で算出された色差から特定する(ステップS61)。チェック基準濃度(ランク)の基準色は、暫定基準濃度(ランク)に隣接する基準濃度の基準色であって試験紙に現れる色との色差が小さい方の基準色である。例えば基準濃度が、離散的に、1,3,5,7と並ぶ場合に、暫定基準濃度が5であれば、基準濃度3又は7のうち試験紙に現れる色との色差が小さい方の基準色が採用される。また、暫定基準濃度が1であれば基準濃度3が、暫定基準濃度が7であれば基準濃度が5が、それぞれ第2基準濃度として採用される。
【0092】
そして、情報処理部3は、例えば、ステップS15又はS19で取得された呈色試験片の色(試験紙に現れた色)と、ステップ23で特定された、暫定基準濃度(ランク)の基準色(最も色差の値が小さい基準色)と、ステップS61で特定されたチェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)とを用いて、所定の判定値を算出し(ステップS63)、所定の判定値が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS65)。所定の判定値が閾値を超える場合には、異常と特定して(ステップS67)、元の処理に戻る。一方、所定の判定値が閾値以下であれば、正常と判断して元の処理に戻る。このように、所定の判定値が閾値以下か否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する。このように、チェック基準濃度(ランク)(第2基準色)を併せて考慮して異常呈色状態が発生していないか判断することによって、妥当性の高い判定ができるようになる。
【0093】
尚、暫定基準濃度(ランク)と呈色試験片の色との色差を用いる第1次異常検出処理と、呈色試験片の色と暫定基準濃度(ランク)とチェック基準濃度(ランク)とを用いる第2次異常検出処理とを組み合わせて実施しても、またどちらか一方のみ実施してもよいが、少なくとも呈色試験片の色と暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色とを用いる第2次異常検出処理を実施する方が好ましい。
【0094】
上で述べた所定の判定値としては、呈色試験片の色と暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色の3つの色(の所定の表色系における座標)を基に算出されるものである。
【0095】
このような判定値としては、より具体的には、(1)所定の表色系において、呈色試験片の色(試験紙に現れる色)(の座標)から、暫定基準濃度(ランク)の基準色(最も色差の値が小さい基準色)(の座標)とチェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)(の座標)を通る直線への最短距離、(2)チェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)と呈色試験片の色(試験紙に現れる色)との色差、(3)所定の表色系において、呈色試験片の色(試験紙に現れる色)(の座標)と暫定基準濃度(ランク)の基準色(最も色差の値が小さい基準色)(の座標)とを結ぶ直線と、呈色試験片の色(試験紙の色)(の座標)とチェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)(の座標)とを結ぶ直線の2つの直線で形成される角度、等が挙げられる。これらのなかでも(1)が好ましい。
【0096】
なお、上記閾値は、例えば試料(尿)の色や試験紙(呈色試験片)、装置のロット間差、試料の固体間差等を考慮して、実際の試料の測定(分析)値や基準(例えば色調表)等の再現性再現性データ等を基に適宜設定される。具体的には、例えば以下のようにして閾値を決定すればよい。
【0097】
(再現性の検討)
例えば以下により再現性データを検討して暫定閾値を決定する。
・尿試験紙で、各基準濃度(ランク)、各基準濃度(ランク)間の濃度(ランク)の試料を複数回測定する。
・色調表の各基準濃度(ランク)の色を複数回測定する。
・得られた試験紙の色と基準色との色差、及び上記異常判定の判定に使用する判定値(前記距離、色差、角度等)を算出し、これらを例えば標準偏差(SD、2SD、3SD等)やレンジ(平均値、最小値、最大値等)を用いて統計処理して閾値の暫定閾値を決定する。
【0098】
(試料の色の影響確認)
試料(尿)の色に基づいて、必要であれば上記の暫定閾値を修正する。
・正常尿として出現する尿の尿色を測定して、上記暫定閾値への影響を検討する。
・検討結果により、必要であれば、暫定閾値を補正する。
尚、試験紙(呈色試験片)、装置のロット間差、試料の固体間差等を考慮して、必要であれば更に閾値を補正する。
【0099】
以下、図9Dを用いて、第2次異常検出処理において、呈色試験片の色(試験紙に現れる色)(の座標)から、暫定基準濃度(ランク)の基準色(最も色差の値が小さい基準色)(の座標)とチェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)(の座標)を通る直線への最短距離を判定値とする場合であって、さらに、暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差を用いる方法について説明する。
【0100】
情報処理部3は、ステップS61と同様に、チェック基準濃度(ランク)の基準色(第2基準色)を、ステップS21で算出された色差から特定する(ステップS71)。そして、基準色間の色差が算出済みである場合(従前の処理において暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差が算出され、当該色差の値を保持している場合と、基準色間の色差の変動は大きくないので計算し直すことがなく予め保持している色差の値を用いる場合とを含む)には(ステップS73:Yesルート)、ステップS77に移行し、そうでない場合には(ステップS73:Noルート)、暫定基準濃度(ランク)の基準色の色度座標及びチェック基準濃度(ランク)の基準色の色度座標とを用いて、暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差を算出し、例えばメインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS75)。ステップS21と同様の処理を実施する。
【0101】
尚、後に述べるように、最短距離を判定値とする場合であって、暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差に加え、暫定基準濃度(ランク)と呈色試験片の色(試験紙に現れる色)との色差及びチェック基準濃度(ランク)の基準値と呈色試験片の色(試験紙に現れる色)との色差を用いることなく、他の情報(例えば、角度、外接円の半径、内接円の半径等)から判定値たる最短距離を算出させる場合には、ステップS71において、代わりに当該他の情報を算出すればよい。
【0102】
また、上記の最短距離を算出するにあたって、暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差以外に、暫定基準濃度(ランク)と呈色試験片の色との色差及びチェック基準濃度(ランク)の基準値と呈色試験片の色との色差を除く、他の情報(例えば、角度、外接円の半径、内接円の半径等)が必要な場合には、ステップS71において、暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との色差の算出と同時に、または当該色差の算出の前又は後に、必要な情報を算出すればよい。
【0103】
さらに、所定の表色系における、呈色試験片の色(試験紙に現れる色)と暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色の3つの色(の座標)から、上記の最短距離を算出する場合には、ステップS71を実施する必要はない。
【0104】
その後、情報処理部3は、L*a*b*表色系の空間において、尿試験紙102の呈色試験片の色(の座標)から、暫定基準濃度(ランク)の基準色(の座標)とチェック基準濃度(ランク)の基準色(の座標)とを通る直線への最短距離hを算出し、例えばメインメモリ等の記憶装置に格納する(ステップS77)。最短距離hは、言い換えれば、所定の表色系において、(1)最も色差の値が小さい基準色と(2)試験紙に現れる色と(3)第2基準色とを頂点として構成される三角形の、試験紙に現れる色から対辺又はその延長線に引いた垂線の長さである。
【0105】
上記のような最短距離を算出する方法としては、呈色試験片の色と暫定基準濃度(ランク)の基準色とチェック基準濃度(ランク)の基準色との3つの色(の座標)を基に算出することができるものであればよい。このような算出方法としては、例えば以下の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0106】
(a)(i)試験紙に現れる色(例えば図10の頂点A)と最も色差の値が小さい基準色(例えば図10の頂点C)との色差、(ii)試験紙に現れる色と第2基準色(例えば図10の頂点B)との色差、及び(iii)最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差、即ち、所定の表色系において3つの色を頂点(図10の頂点A,B,C)とする三角形(図10の三角形ABC)の三辺(図10の辺AB,辺BC,辺CA)の長さ(長さl、n、m)から、例えばヘロンの公式等を用いて上記の最短距離(垂線の長さ)を算出する。これについては後に詳述する。
【0107】
(b)試験紙に現れる色(例えば図10の頂点A)の対辺(最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差。例えば図10の辺BC)を底辺とする三角形(図10の三角形ABC)において、底辺以外の何れか一辺の長さ(例えば図10の辺ABの長さl又は辺ACの長さm)と当該辺と底辺とで形成される角度(角ABC又は角ACB)とから、三角関数を用いて上記の最短距離(垂線の長さ)を算出する。例えば、下記式により算出できる。
・[試験紙に現れる色と第2基準色との色差(例えば図10の辺ABの長さl)]×sin(試験紙に現れる色と第2基準色とを通る直線(例えば図10の辺AB)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺BC)とで形成される角度(例えば図10の角ABC))
・[試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色との色差(例えば図10の辺ACの長さm)]×sin(試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺AC)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺CB)とで形成される角度(例えば図10の角ACB))
【0108】
(c)試験紙に現れる色の対辺(最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差。例えば図10の辺BC。)を底辺とする三角形(例えば図10の三角形ABC)において、当該底辺とその両端の角度(例えば図10の角ABC及び角ACB)とから、三角関数を用いて上記の最短距離(垂線の長さ)を算出する。例えば、下記式により算出できる。
・tan(試験紙に現れる色と第2基準色とを通る直線(例えば図10の辺AB)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺BC)とで形成される角度(例えば図10の角ABC)×tan(試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺AC)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺BC)とで形成される角度(例えば図10の角ACB))/[tan(試験紙に現れる色と第2基準色とを通る直線(例えば図10の辺AB)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺BC)とで形成される角度(例えば図10の角ABC))+tan(試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺AC)と第2基準色と最も色差の値が小さい基準色とを通る直線(例えば図10の辺CB)とで形成される角度(例えば図10の角ACB))]×(最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差(例えば図10の辺BCの長さn))
【0109】
(d)試験紙に現れる色の対辺(最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差。例えば図10の辺BC。)を底辺とする三角形において、当該三角形の外接円の半径(R)と底辺以外の2つの辺の長さ(例えば図10のl及びm)とから、上記の最短距離(垂線の長さ)を算出する。例えば、下記式により算出できる。
・[(試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色との色差(例えば図10の辺ACの長さm))×(試験紙に現れる色と第2基準色との色差(例えば図10の辺ABの長さl))]/2R
【0110】
(e)3つの色、即ち、所定の表色系において、(1)最も色差の値が小さい基準色と(2)試験紙に現れる色と(3)第2基準色のそれぞれの座標から、上で述べた最短距離(垂線の長さ)を算出する。例えば、下記式により算出できる。
|{(x1−x3)×(y2−y3)−(x2−x3)×(y1−y3)}|/{(x1−x3)+(y1−y3)}1/2
なお、最も色差の値が小さい基準色の座標(x1,y1)、試験紙に現れる色の座標(x2,y2)、第2基準色の座標(x3,y3)とする。
【0111】
(f)試験紙に現れる色の対辺(最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差。例えば図10の辺BC)を底辺とする三角形(例えば図10の三角形ABC)において、当該三角形の内接円の半径(r)と3つの辺の長さとから、上で述べた最短距離(垂線の長さ)を算出する。例えば、下記式により算出できる。
・[r×(試験紙に現れる色と最も色差の値が小さい基準色との色差(例えば図10の辺ACの長さm)+試験紙に現れる色と第2基準色との色差(例えば図10の辺ABの長さl)+最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差(例えば図10の辺BCの長さn))]/最も色差の値が小さい基準色と第2基準色との色差(例えば図10の辺BCの長さn)
尚、上記以外にも、ベクトルを用いる方法、行列式を用いる方法等があるが、これらも使用可能である。
【0112】
上で述べた最短距離(垂線の長さ)を算出方法のうち、(1)三角形の三辺の長さから、最短距離(垂線の長さ)hを算出する方法について、更に詳細に説明する。
【0113】
既に上でも参照しているように、Aを呈色試験片の色、Cを暫定基準濃度(ランク)の色、Bをチェック基準濃度(ランク)の色とすると、図10のような三角形ABCを描くことができる。この三角形の辺ABの長さlと、辺ACの長さmは、ステップS21で算出された色差に等しい。また、辺BCの長さnは、ステップS75で算出された色差に等しい。
【0114】
そしてヘロンの公式に従えば、この三角形の面積Sは、以下のとおりである。
【数1】

【0115】
そして、点Aから辺BCに下ろした垂線の長さ(高さ又は最短距離)hとすると、三角形の面積Sは、以下の式でも算出できる。
S=1/2×n×h
この式と(1)色とから、以下のように長さ(高さ又は最短距離)hを求めることができる。
【数2】

【0116】
そして、情報処理部3は、このように算出された長さh(高さ又は最短距離)と予め定められている閾値とを比較して、hが閾値以下であるか判断する(ステップS79)。hが閾値以下である場合には、暫定基準濃度(ランク)が妥当であると判断して元の処理に戻る。
【0117】
一方、hが閾値を超える場合には、呈色共存物質の影響を受けているか、異常発色が発生していると判断して、異常と特定し(ステップS81)、元の処理に戻る。
【0118】
図9A乃至図9Dの処理は、全ての測定対象物質について実施する。
【0119】
このような長さ(高さ又は最短距離)hは、三角形の辺l及びmが長くなってしまっている、すなわち呈色試験片の色が、正常に発色した場合に出現する色、言い換えれば、暫定基準濃度(ランク)の色及びチェック基準濃度(ランク)の色の間に存在する色から乖離した場合には、大きな値となる。従って、このような不適切な状態を検出することによって、異常を特定するものである。
【0120】
図3Bの説明に戻って、情報処理部3は、ステップS27で異常が特定されたか判断する(ステップS29)。もし、異常が特定されていない場合には(ステップS29:Noルート)、情報処理部3は、メモリに試験紙102のIDに対応して基準濃度(ランク)を測定結果として格納すると共に、暫定基準濃度(ランク)を測定結果として入出力部1に出力し、入出力部1は測定結果を表示装置やプリンタによってユーザに対して出力する(ステップS31)。一方、異常が特定された場合には(ステップS29:Yesルート)、情報処理部3は、メモリに試験紙102のIDに対応して参考基準濃度(ランク)として暫定基準濃度(ランク)を格納すると共に、異常を検出した旨のデータ及び参考基準濃度(ランク)として暫定基準濃度(ランク)を入出力部1に出力し、入出力部1は異常を検出した旨のデータ及び参考基準濃度(ランク)として暫定基準濃度(ランク)を表示装置やプリンタによってユーザに対して出力する(ステップS33)。ステップS17乃至S33については、各呈色試験片について実施する。なお、この後に例えば情報処理部3の指示に応じて搬送機構9が試験紙102を廃棄部21に移動させるような動作も行われる。但し、本動作も必須ではない。
【0121】
このような処理を実施すれば、人間が各呈色試験片について色調表と比較してランク判定を行うのと同様の比較を、L*a*b*表色系等の所定の表色系において実施するため、人間のランク判定結果との乖離を低減することができる。また、分析装置100によって行うため、人間によるばらつき、照明光などの環境のばらつきをも抑えることができるようになる。
【0122】
さらに、呈色共存物質又は異常発色共存物質による影響があっても、上で述べた異常検出処理によってユーザに対して適切に警告を出すこともできるようになる。さらに、ユーザによって尿試験紙102自体については変更することを前提としていないので、ユーザが分析装置100の判定結果を容易に検証することができる。
【0123】
また、従来と同じ尿試験紙102を用いるので、システム全体の開発負担も低減されている。特に現在使用されている尿試験紙102については、長年の使用によって信頼性が高くなっており、それを使用し続けて自動化が図られ、安定且つ信頼性の高い判定が行われれば非常に有用である。
【0124】
以上本発明の一実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3A及び3Bの処理フローは、一例であって、ステップS5及びS11については、ステップS15の後ろで実施しても良い。上でも述べたが、必ずしも毎回ステップS1乃至ステップS11を実施せずとも良い。
【0125】
また、上の例ではRGB値から三刺激値を介してL*a*b*の値を算出するような例を示したが、RGB値から直接L*a*b*の値を算出するようにしても良い。
【0126】
言うなれば、本発明において、測定される呈色試験片の色や基準濃度の基準色における色度座標は、最終的に色差を算出することができる表色系における座標値に変換し得るものであればよい。すなわち、当該色度座標は、色差を算出することができる表色系における座標値そのものであっても、色差を算出することができる表色系における座標値に直接変換し得るものであっても、或いは2回以上の変換を行うことにより色差を算出することができる表色系における座標値に変換し得るものであってもよい。このような色度座標としては、例えば例えばXYZ表色系(CIE1931表色系)、X10Y10Z10表色系(CIE1964表色系)、L*u*v*表色系(CIE1976)、L*a*b*表色系(CIE1976)、L*C*H、ハンターLab表色系(CIE1994)等の混色系における色度座標が挙げられる。尚、これらの色度座標から色差を算出することができる表色系における座標値への変換は、自体公知の変換方法により実施すればよい。
【0127】
また、より細かい基準濃度及び対応する色を設定することによって、半定量、定量測定が可能となる。
【0128】
尚、本発明の測定(分析)方法は、試験紙の呈色状態のランク判定を人間による判定、人間による判定との乖離を低減させつつ自動的に実施し得るもの、及び試験紙に異常な呈色が生じているか否かを自動的に判断することができるものであり、その構成要件、具体例、好ましい態様等は上で述べたとおりである。また、測定(分析)方法の物理的な測定部分、即ち情報処理部3が実行する処理の部分については、コンピュータプログラム及びコンピュータハードウエアの組み合わせで実施される場合もあれば、専用の半導体チップなどによって実装される場合もある。
【0129】
[実施例1]
健常者から採取した正常プール尿に図11(a)の試料番号1乃至6に示すような濃度となるように蛋白質を添加して試料を調製し、尿試験紙102にこれらの試料を供給して呈色させた後、色彩・色差計でL*a*b*表色系の色度座標を測定すると、同じく図11(a)に示すような値が得られる。なお、試料番号1については「−」というランクに該当し、試料番号2については「±」というランクに該当し、試料番号3については「+」というランクに該当し、試料番号4については「2+」に該当し、試料番号5については「3+」に該当し、試料番号6については「4+」に該当する。
【0130】
ここで図4(a)に示すように、基準色色調表15における各基準濃度(ランク等)の色座標値が用意されているとすると、色差は、図11(b)に示すようになる。試料番号1については、「−」というランクが最小色差となっている。試料番号2については、「±」というランクが最小色差となっている。試料番号3については、「+」というランクが最小色差となっている。試料番号4については、「2+」というランクが最小色差となっている。試料番号5については、「3+」というランクが最小色差となっている。試料番号6については、「4+」というランクが最小色差となっている。従って、それぞれ最小色差のランクが暫定基準濃度(ランク)となる。
【0131】
一方、試料番号1については、「±」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号2については、「−」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号3については、「±」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号4については、「3+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号5については、「4+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号6については、「3+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。
【0132】
なお、図11(b)においては、ステップS75で算出される暫定基準濃度(ランク)の色とチェック基準濃度(ランク)の色の色差も示されている。
【0133】
そして異常検出処理で特定される三角形の辺の長さm,nのそれぞれが算出され、高さhが最終的に算出され、図11(c)に示すようになる。例えば10を閾値とすると、全て閾値以下となっていることが分かる。従って、元々の試料の調製の通りに図11(d)に示す判定がなされる。なお、図11(a)乃至(d)に格納されたデータは、情報処理部3内のメモリに格納される。
【0134】
[実施例2]
健常者から採取した正常プール尿に図12(a)の試料番号1乃至4に示すような濃度となるようにヘモグロビンを添加して試料を調製し、尿試験紙102にこれらの試料を供給して呈色させた後、イメージセンサで撮像してRGB値を取得し、L*a*b*表色系の色度座標を算出すると、同じく図12(a)に示すような値が得られる。なお、試料番号1については「−」というランクに該当し、試料番号2については「+」というランクに該当し、試料番号3については「2+」というランクに該当し、試料番号4については「3+」に該当する。
【0135】
ここで図4(b)に示すように、基準色色調表15における各基準濃度(ランク等)の色座標値が用意されているとすると、色差は、図12(b)に示すようになる。試料番号1については、「−」というランクが最小色差となっている。試料番号2については、「+」というランクが最小色差となっている。試料番号3については、「2+」というランクが最小色差となっている。試料番号4については、「3+」というランクが最小色差となっている。
【0136】
一方、試料番号1については、「+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号2については、「2+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号3については、「+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号4については、「2+」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。
【0137】
なお、図12(b)においては、ステップS75で算出される暫定基準濃度(ランク)の色とチェック基準濃度(ランク)の色の色差も示されている。
【0138】
そして異常検出処理で特定される三角形の辺の長さm,nのそれぞれが算出され、高さhが最終的に算出され、図12(c)に示すようになる。例えば10を閾値とすると、全て閾値以下となっていることが分かる。従って、元々の試料の調製の通りに図12(d)に示す判定がなされる。なお、図12(a)乃至(d)に格納されたデータは、情報処理部3内のメモリに格納される。
【0139】
[実施例3]
健常者から採取した正常プール尿に図13(a)の試料番号1乃至5に示すようなpH値となるように,0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH5乃至8について)又は0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9について)で試料を調製し、尿試験紙102にこれらの試料を供給して呈色させた後、色彩・色差計でL*a*b*表色系の色度座標を測定すると、同じく図13(a)に示すような値が得られる。なお、試料番号1については「5」というランクに該当し、試料番号2については「6」というランクに該当し、試料番号3については「7」というランクに該当し、試料番号4については「8」に該当し、試料番号5については「9」に該当する。
【0140】
ここで図4(c)に示すように、基準色色調表15における対応する基準pH値の色座標値が用意されているとすると、色差は、図13(b)に示すようになる。試料番号1については、「5」というランクが最小色差となっている。試料番号2については、「6」というランクが最小色差となっている。試料番号3については、「7」というランクが最小色差となっている。試料番号4については、「8」というランクが最小色差となっている。試料番号5については、「9」というランクが最小色差となっている。従って、それぞれ最小色差のランクが暫定基準濃度(ランク)となる。
【0141】
一方、試料番号1については、「6」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号2については、「5」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号3については、「8」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号4については、「9」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。試料番号5については、「8」というランクがチェック基準濃度(ランク)として特定される。
【0142】
なお、図13(b)においては、ステップS75で算出される暫定基準濃度(ランク)の色とチェック基準濃度(ランク)の色の色差も示されている。
【0143】
そして異常検出処理で特定される三角形の辺の長さm,nのそれぞれが算出され、高さhが最終的に算出され、図13(c)に示すようになる。例えば10を閾値とすると、全て閾値以下となっていることが分かる。従って、元々の試料の調製の通りに図13(d)に示す判定がなされる。なお、図13(a)乃至(d)に格納されたデータは、情報処理部3内のメモリに格納される。
【0144】
以上の例を見ても、本実施の形態を実施すれば、実態に則したランク判定を行うことができる。よって、人間の目によるランク判定との乖離も最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施の形態に係る分析装置の機能ブロック図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係る尿試験紙の上面図であり、(b)はその側面図である。
【図3A】本発明の実施の形態に係るメインの処理フロー(第1の部分)を示す図である。
【図3B】本発明の実施の形態に係るメインの処理フロー(第2の部分)を示す図である。
【図4】(a)は蛋白質についての色調表の各ランクの色度座標を表し、(b)は潜血についての色調表の各ランクの色度座標を表し、(c)はpHについての色調表の各ランクの色度座標を表す図である。
【図5】L*a*b*表色系を説明するための図である。
【図6】L*a*b*表色系を説明するための図である。
【図7】L*C*H*表色系を説明するための図である。
【図8】色差を説明するための図である。
【図9A】異常検出処理の処理フローを示す図である。
【図9B】異常検出処理の処理フローを示す図である。
【図9C】異常検出処理の処理フローを示す図である。
【図9D】異常検出処理の処理フローを示す図である。
【図10】異常検出処理を説明するための図である。
【図11】(a)乃至(d)は、第1の実施例を説明するための図である。
【図12】(a)乃至(d)は、第2の実施例を説明するための図である。
【図13】(a)乃至(d)は、第3の実施例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0146】
1 入出力部 3 情報処理部
5 光源 7 検出部
9 搬送機構 11 試験紙載置部
13 白色校正用白色板 15 基準色色調表
17 光学系 19 洗浄機構 21 廃棄部
100 分析装置 102 試験紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色と、前記特定測定対象の所定数の基準濃度のそれぞれについて試験紙に現れる前記所定数の基準色との、所定の表色系における色差を取得する色差取得手段と、
前記所定数の色差のうち最も色差の値が小さい基準色に対応する、前記特定測定対象の前記基準濃度を色差最小基準濃度として特定する特定手段と、
を有する分析装置。
【請求項2】
前記色差取得手段が、
前記特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を、所定の表色系における座標値として測定する手段と、
前記所定の表色系における、前記所定数の基準色の座標値と測定された前記座標値との色差を算出する手段と、
を有する請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記色差取得手段が、
前記特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色をRGB値として測定する手段と、
測定された前記RGB値を、所定の表色系における座標値に変換する手段と、
前記所定の表色系における、前記所定数の基準色の座標値と変換された前記座標値との色差を算出する手段と、
を有する請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
前記色差取得手段が、
前記特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色を三刺激値として測定する手段と、
測定された前記三刺激値を、所定の表色系における座標値に変換する手段と、
前記所定の表色系における、前記所定数の基準色の座標値と変換された前記座標値との色差を算出する手段と、
を有する請求項1記載の分析装置。
【請求項5】
前記色差取得手段によって取得された色差を用いて、異常呈色状態の有無を判定する異常呈色状態判定手段
をさらに含む請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記異常呈色状態判定手段が、
前記最も色差の値が小さい基準色と前記試験紙に現れる色との色差が閾値以下であるか否かに応じて、前記異常呈色状態の有無を判定する手段、
を含む請求項5記載の分析装置。
【請求項7】
前記異常呈色状態判定手段が、
前記所定数の基準色のうち前記色差最小基準濃度に隣接する前記特定測定対象の前記基準濃度に対応する基準色であって且つ前記試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定する手段と、
前記最も色差の値が小さい基準色と前記試験紙に現れる色と前記第2基準色とを用いて所定の判定値を算出し、当該所定の判定値が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する手段と、
を含む請求項5記載の分析装置。
【請求項8】
前記異常呈色状態判定手段が、
前記所定数の基準色のうち前記色差最小基準濃度に隣接する前記特定測定対象の前記基準濃度に対応する基準色であって且つ前記試験紙に現れる色との色差がより小さい基準色を第2基準色として特定する手段と、
前記所定の表色系において、前記試験紙に現れる色の座標から、前記最も色差の値が小さい基準色の座標と前記第2基準色の座標とを通る直線への最短距離を算出し、当該最短距離が閾値以下であるか否かに応じて、異常呈色状態の有無を判定する判定手段と、
を含む請求項5記載の分析装置。
【請求項9】
前記判定手段が、
前記最も色差の値が小さい基準色と前記試験紙に現れる色との色差、前記最も色差の値が小さい基準色と前記第2基準色との色差と、前記第2基準色と前記試験紙に現れる色との色差から、前記最短距離を算出する手段
を有する
請求項8記載の分析装置。
【請求項10】
前記異常呈色状態の有無及び前記色差最小基準濃度を出力する手段
をさらに含む請求項5記載の分析装置。
【請求項11】
特定測定対象のための試験紙に試料を供給することによって現れる色と、前記特定測定対象の所定数の基準濃度のそれぞれについて試験紙に現れる前記所定数の基準色との、所定の表色系における色差を求め、
前記所定数の色差のうち最も色差の値が小さい基準色に対応する、前記特定測定対象の前記基準濃度を前記試料の濃度として特定する
ことを特徴とする試料中の濃度測定方法。
【請求項12】
求められた前記色差を用いて、異常呈色状態の有無をさらに判定する
請求項11記載の試料中の濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−285988(P2007−285988A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116341(P2006−116341)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】