説明

分析装置

【課題】 被検査溶液を展開させて吸光度測定を行なう際に、展開速度の相違により測定値に誤差が含まれ、展開完了後においては、吸光度値が安定しないことによる誤差が含まれる。
【解決手段】 被検査溶液を点着された試験片7に展開された被検査溶液を固定する試薬固定化部11を設け、この試薬固定化部11に分析光を照射し被検査溶液と分析光との反応を光学的に分析する装置において、第1のフォトダイオード4と第2のフォトダイオード5とで受光した反射光から、被検査溶液が試験片7に展開される展開速度を検出後、この展開速度に基づいて被検査溶液と分析光との反応を光学的に分析する分析光の照射開始時間を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の被検査溶液を適用してクロマト展開を行なう試験片を用い、被検査溶液中に含まれる成分を光学的に分析する分析装置に関するものであり、特に被検査溶液が試験片を展開する速度に応じて分析のタイミングを変更する事で、測定精度を向上させる分析装置に属するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、在宅医療および医院や診療所などの地域医療の充実、さらには早期診断および緊急性の高い臨床検査の増加などに伴い、臨床検査の専門家でなくとも、簡易かつ迅速に高精度の測定が実施可能な分析装置が要望されるようになり、煩雑な操作を伴わず、短時間で信頼性の高い測定ができる、POCT(Point of Care Testing)向けの分析装置が脚光をあびている。
POCTとは、一般的に開業医、専門医の診察室、病棟および外来患者向け診療所などの「患者の近いところ」で行われる検査の総称であり、検査結果を即座に医師が判断し、迅速な処置を施し、治療の過程や予後のモニタリングまでを行なうという診療の質の向上に大きく役立つとして注目されている方法である。中央検査室での検査に比べて、検体の運搬や設備にかかるコストや、不要な検査にかかる費用を抑えることができ、トータルな検査費用の削減が可能になるといわれており、POCT市場は、病院経営合理化の進む米国では急速に拡大してきており、日本をはじめ世界的にみても成長市場となっていくことが予想されている。
免疫センサとして、クロマトセンサに代表されるような乾式分析素子は、試薬の調整を必要とせず、測定対象となる血液や尿などの液体試料を分析素子上に滴下するなどの簡単な操作のみにより、被検査溶液の分析対象物を分析することが可能であり、簡便かつ迅速に分析するのに非常に有用なため、POCTの代表として今日多数実用化されている。また、市場からは、いつでもどこでも誰でも測定できることに加え、より素早い測定時間で、より高い精度が要求されており、上記の分析素子を光学的に読み取る専用の分析装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6において、従来の試験片7aの構成を説明する。被検査溶液を点着する点着部8aと、被検査溶液を展開するための流路9zと、流路9zの一部に被検査溶液中の測定対象物に対する試薬を固定化することにより形成された試薬固定化部11aと、流路9zの他の一部に、被検査溶液の展開により溶出可能な標識試薬を保持することにより形成された標識試薬保持部10aと、流路9zから試薬固定化部13a、及び標識試薬保持部10aを除いた部分である生地から構成されている。
図6において、従来の装置構成を説明する。光源の半導体レーザから出射された光は、並行ビームへ変換されビームとして、試験片7aへ照射される。6zはビームの照射位置を示す。この時、参照光2aとして第1のフォトダイオード4aで受光する。一方、試験片7の表面からは散乱光3aが発生し、第2のフォトダイオード5aで受光する。第1のフォトダイオード4aと第2のフォトダイオード5aで受光した出力を、それぞれLog変換し、第1のフォトダイオード4のLog変換値から第2のフォトダイオード5のLog変換値を減算して、光学的な信号レベルの吸光度値として出力する。
図7において、具体的な操作方法を説明する。図7(a)は、試験片と被検査溶液の展開の関係図を示し、図7(b)は、被検査溶液のクロマト展開する際に変化する試薬固定化部における吸光度値(試薬固定化部の標識試薬の固定化量)の変化を示した図である。
図7(a)において、試験片7aの点着部8aに被検査溶液12eを点着すると、被検査溶液12eはクロマト展開を開始する。クロマト展開の過程において、被検査溶液12eの分析対象物と結合する標識薬を保持する標識試薬保持部10aを通過する事で、標識試薬も被検査溶液12eと共に試験片7aを展開する。この時、分析対象物と標識試薬は結合する。分析対象物と結合された標識試薬は試験片7aの途中にある試薬固定化部11aに固定される。分析対象物と結合されなかった標識試薬は試薬固定化部11aに固定されずに下流へと展開する。
そして全ての被検査溶液12eが試験片7aの最下流へ展開完了する時間は、すなわち図7(b)に示す吸光度値が安定するのに必要な時間であるとして、被検査溶液12eが流路9z内の所定位置24に到達後、予め定めた所定時間21a(照射開始時間)待機する。所定時間21aの待機後、試薬固定化部11aにビームを照射し、呈色した吸光度値を測定し、分析対象物濃度を表示する。
【特許文献1】特開2003−4743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の分析装置においては、被検査溶液12eが所定位置24に到達した後に、被検査溶液12eが最下流まで到達するまで待機する所定時間は、すべて一定の時間(所定時間21a)に調整されていた。
【0005】
しかしながら現実に、被検査溶液に血液を用いた場合では、血中成分の影響により個人によって血液の粘性が異なる。それによって試験片に同一量の血液を点着した場合に、血液の展開速度は異なる。展開速度は、粘性の低い方が粘性の高い方に比べて速くなる。そのため、試験片を展開する待ち時間が一定の場合では、下記のような課題が発生することが判明した。
【0006】
その課題について、図8を用いて説明する。
【0007】
図8は、予め等しい濃度の分析対象物を有し、粘性の異なる3種類の血液をクロマト展開させた場合において、図7(a)の所定位置24を血液が通過してからの展開待ち時間の経過にしたがって得られえる試薬固定化部での吸光度値の変化を示した図である。
【0008】
3種類の粘性は主に血液中の赤血球(ヘマトクリット値)やタンパクの違いによるものであり、粘性の低い順に粘性A、粘性B、粘性Cである。
【0009】
従来の分析装置は、粘性Bに合わせた待ち時間21aが設定されている。ここで粘性の低い粘性Aは、待ち時間22aにおいて既に血液の展開が完了し呈色反応が安定している。しかしながら粘性Bの血液の待ち時間21aまで待つと、必要以上に無駄な待ち時間25が生じ、分析時間が長くなる課題を有する。具体的に、25℃の温度においてヘマトクリット値40%の血液の待ち時間21aが240秒とした時に、早く展開する血液においは約60秒の待ち時間が発生すると想定される。
【0010】
次に粘性の高い粘性Cは、血液の展開速度は遅いため、待ち時間21aにおいて展開が完了していない。実際に展開が完了するのは待ち時間23aである。したがって、待ち時間21aで測定すると吸光度値に約5%の誤差26が発生し、分析精度が低下する課題を有する。
【0011】
また上記の課題は、被検査溶液の粘性が同一の場合であっても、試験片に点着する被検査溶液の量が測定の規定量に満たさない場合には発生する。これは、流路内を展開する被検査溶液の量が少ないため、展開の前線に供給される被検査の検体量が少なくなり規定量に比べて展開速度は遅くなる。そのため粘性の高い時(粘性C)と同様に、展開が完了していない時点で測定をする課題を有する。
【0012】
以上の課題に加えて、本発明者らの鋭意研究の結果、従来、吸光度値の安定化領域とみていた待ち時間21a以降の値であるが、吸光度値をより詳しく測定すると、ある一定時間内でしか安定しない事が分かった。
【0013】
その課題について、図9を用いて説明する。
【0014】
図9は、図8から粘性Cの変化を除いた図で、図9(b)は更にその一部を拡大した図である。粘性Aにおいて、時間22が経過後、被検査溶液の展開は完了して安定した吸光度値20aの値になる。しかしながら、図9(a)の部分27を拡大した図9(b)に示すように、吸光度値の単位の精度を上げた場合に吸光度値20aが変化する。そのため、共通の待ち時間21a経過した後に測定したのでは、差28が高い精度を求める際に約5〜10%の測定誤差になる課題を有する。
【0015】
このように、従来の分析装置においては吸光度測定を行なう際に、展開速度の相違により測定値に大きな誤差が含まれ、展開完了後においては吸光度値が安定しないことによる誤差が含まれるという課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従来課題を解決するために、本発明の分析装置は、被検査溶液が点着された試験片に展開された該被検査溶液を固定する試薬固定化部を設け該試薬固定化部に分析光を照射し前記被検査溶液と該分析光との反応を光学的に分析する分析装置において、
前記被検査溶液が試験片に展開される展開速度を検出する検出手段と、
該検出手段が検出した展開速度に基づいて前記分析光の照射開始時間を設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
さらに、前記設定手段によって設定する照射開始時間は、試験片上の所定位置を前記被検査溶液が通過後から計時する時間である、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、前記検出手段によって検出する前記展開速度は、被検査溶液が展開することで到着した異なる2点における前記被検査溶液の到着時間の差に基づいている、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、前記検出手段によって検出する前記展開速度は、被検査溶液が一定時間内に展開した距離に基づいている、ことを特徴とする。
【0020】
さらに、前記試験片は短冊状の多孔質担体からなり、血液をクロマトグラフィーにより展開させることを特徴とする。
【0021】
さらに、前記試薬固定化部は標識試薬を備え、該標識試薬の呈色を光学的に分析することを特徴とする。
【0022】
さらに、前記試験片における被検査溶液の展開方向に分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出する走査手段と、
該被検査溶液が点着された試験片装着後または前記展開速度の検出前に前記走査手段が分析光を照射し所定位置に被検査溶液が到達しているとき前記展開速度の検出または前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第1禁止手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
さらに、前記試験片における被検査溶液の展開方向に分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出する走査手段と、
該被検査溶液が点着された試験片装着後または前記展開速度の検出前に前記走査手段が分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出できないとき前記展開速度の検出または前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第2禁止手段と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
さらに、被検査溶液の到達位置を検出する走査手段でもちいる分析光の照射方向が、前記試験片を展開する被検査溶液の下流から上流方向とする、ことを特徴とする。
【0025】
さらに、前記検出手段が検出する展開速度が所定速度を満たさない場合、前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第3禁止手段を備えたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明における分析装置の実施例を図面とともに詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明における分析装置の概略構成を示した図である。
【0027】
図1において、試験片7の被検査溶液の点着部8に被検査溶液を点着すると、試験片7の矢印9aで示される幅の流路9を被検査溶液は展開する。展開方向は、試験片7の点着部8側を上流側として、反対側の下流側に向かって展開する。被検査溶液が展開する中で、最初に標識試薬保持部10を通過することで標識試薬も被検査溶液と共に展開する。展開された標識試薬は流路9にある試薬固定化部11に、被検査溶液の分析対象物の濃度に応じて固定される。また、試験片7は装置から取り外し可能で、且つ試験片7を取り外した状態で被検査溶液を点着し、試験片7が装置に取り付けられたことを装置内で検知することによって、測定開始の合図とする。
【0028】
また、図1において、光源の半導体レーザから出射された光は、並行ビームへ変換されビームとして、試験片7へ照射される。照射位置6はビームの照射位置を示す。この時、参照光2として第1のフォトダイオード4で受光する。一方、試験片7の表面からは散乱光3(反射光)が発生し、第2のフォトダイオード5で受光する。或いは、試験片7の表面からの散乱光3を受光するのではなく、試験片7を透過した透過光をフォトダイオードで受光したのでも良い。第1のフォトダイオード4と第2のフォトダイオード5で受光した出力を、それぞれLog変換し、第1のフォトダイオード4のLog変換値から第2のフォトダイオード5のLog変換値を減算して、光学的な信号レベルの吸光度値として出力する。標識試薬や被検査溶液によって光は吸光されるため、標識試薬や被検査溶液が展開している部分の吸光度値は、標識試薬や被検査溶液が展開していない部分に比べて高くなる。また、被検査溶液中の分析対象物の吸光度値として試薬固定化部の吸光度値を用いる。
【0029】
次に、図2は、被検査溶液の到達位置と測定終了条件の関係を示した図である。
【0030】
検査溶液12の展開速度を検出する範囲である所定位置14は下流側の試験片エッジから8mm上流に設定し、更に所定位置13は所定位置14から4mm上流に設定する。
【0031】
また、所定位置14と展開待ち開始(レーザ照射開始時間までのカウント開始)のための予め定めた所定位置を同じ位置とすることで、所定位置14から移動する処理が必要なくなるので処理効率が良くなる。また所定位置14は、展開速度の違いが大きくなる下流側に設定するのが望ましい。下流側において展開速度の違いが大きくなる理由は、粘性や点着された検体量の違いによって、展開中の被検査溶液12の先頭まで供給される量が異なることが要因に挙げられる。
【0032】
測定開始の合図を検知後、所定位置14から上流側に向かってビーム6aを移動しながら吸光度値の取得を行ない、現在の被検査溶液12の到達位置を走査する。移動にはステッピングモータを使用する。
【0033】
被検査溶液12の到達の判定は、被検査溶液12が展開していない部分における吸光度値に所定の閾値を加えた値を取得した吸光度値が越えた時とする。
【0034】
例えば、図2(a)の所定位置14から所定位置13まで走査する間に、位置15に被検査溶液12が到達したことが検知されると、既に被検査溶液12が所定位置13より下流側へ展開しているため、展開速度を求めることが出来ないので測定を終了する。これは、ユーザが試験片に被検査溶液を点着してから、装置へ試験片を取り付けるまでに時間を要した事を示す。
【0035】
したがって、所定位置13を更に上流側に設定して、所定位置14との間の距離を長くすれば、展開速度の測定する距離が長くなるため精度は向上するが、被検査溶液を点着してから装置に試験片を取り付けるまでのゆとり時間が短くなり、ユーザの操作性が悪くなる。そのため、展開速度の精度とユーザの操作性を考慮して、所定位置13の設定位置は所定位置14から上流に4〜6mm以内にするのが望ましい。
【0036】
また、図2(b)に示す流路9の最上流位置16まで走査しても被検査溶液12の到達を検知しない場合には、被検査溶液12が点着されていないとして測定を終了する。所定位置13から最上流位置16までの間に被検査溶液12の到達を検知した場合には、ビーム照射位置を所定位置13へ移動して次の動作に備える。
【0037】
次に、図3は、被検査溶液の展開と展開速度の測定範囲との関係を示した図である。
【0038】
被検査溶液12aの展開速度を検出する範囲17で上流に位置する所定位置13aに、ビーム6bを照射して被検査溶液12aの到達を検出する(図3(a))。到達を検出すると、ビーム6cで示す所定位置14aへビーム照射位置を移動する。また移動開始と同時に、装置内に設けられたCPUにおいて時間カウンタAのカウントアップを0から開始する。次に、所定位置14aにおいて被検査溶液12bの到達を検出すると(図3(b))、時間カウンタAのカウントアップを停止する。
【0039】
また、所定位置13a、あるいは所定位置14aまで被検査溶液が到達しない場合を考慮して、到達検知を実行する制限時間を設ける。制限時間は、所定位置13aへビーム6bを移動した際に、時間カウンタAと別の時間カウンタBを0からカウントアップ開始し、所定のカウンタ値に達するまでとする。制限時間内に被検査溶液の到達を検出しない場合には、展開に必要な被検査溶液の量が不足しているとして測定を終了する。次に、算出したカウンタ値Aと範囲17の距離から被検査溶液の展開速度を算出する。算出方法は、範囲17÷カウンタ値A=展開速度(mm/s)とする。
【0040】
あるいは、展開速度を求める別の方法として、図4は、図3と同様に被検査溶液の展開と展開速度の測定範囲との関係を示した図である。
【0041】
所定位置18は、下流側の試験片エッジから12mm上流に設定する。上流に設定すると、被検査溶液を点着してから装置に試験片を取り付けるまでの時間が短くなり、ユーザが取り扱うときに不便になるため、8〜14mm以内に設定するのが望ましい。
【0042】
最初に所定位置18へビーム6dを照射して被検査溶液12cの到達を検出する(図4(a))。到達を検出すると、次にビーム6dの照射位置をビームが移動出来る最小移動距離(0.0125mm)だけ下流側へ移動する。最小移動距離はステッピングモータの制御1STEPとなり、リードースクリュのピッチ幅に比例する。
【0043】
この時、被検査溶液の展開速度よりビームの移動が速くなければならない。ビームが移動した位置において、被検査溶液の到達を検知すると再度ビームを移動する。以上の動作を所定位置18へ被検査溶液12cが到達してから一定時間経過するまで繰り返す。一定時間経過後、所定位置18からビーム6eの現在位置までの展開距離19を算出し、一定時間と展開距離19から被検査溶液12dの展開速度を算出する。算出方法は、展開距離19÷一定時間=展開速度(mm/s)とする。
【0044】
上記方法で算出した展開速度が、予め検討で求めた所定速度内に収まっていない場合には、被検査溶液に異常があるとして測定を終了する。被検査溶液の異常内容としては、展開速度が所定速度より遅い場合には、分析装置の想定外である高い粘性をもった被検査溶液、あるいは展開に必要な被検査溶液の量が不足している場合がある。また、展開速度が所定速度より速い場合には、分析装置の想定外である低い粘性をもった被検査溶液である。
【0045】
次に、算出した展開速度を用いて、基準となる待ち時間Bを補正する事で、展開に必要な待ち時間Aを求める。この時の待ち時間が、レーザを照射開始時間となる。
【0046】
待ち時間Bは、被検査溶液の平均の粘性を用いて、実験により求めた展開完了に必要な待ち時間とする。被検査溶液が血液の場合には、ヘマトクリット40%で実験する。
【0047】
補正式は、
待ち時間A=待ち時間B÷{1+PalaA×Log(展開速度)+PalaB}
=待ち時間B+調整時間
とし、PalaA、及びPalaBは試験片の性能に応じて変更可能とする。PalaAで展開速度に対する試験片の性能における待ち時間を調整し、PalaBで調整値をオフセットさせ微調整する。
【0048】
或いは、算出した展開速度から予め容易しておいたテーブル表を用いて、展開速度に対応した待ち時間を決定したのでも良い。この場合においても、試験片の性能に応じてテーブル表を変更可能とする。
【0049】
次に、算出した待ち時間A待機した後、試験片の試薬固定化部に呈色した吸光度値を求め、被検査溶液中の分析対象物の濃度を求める。
【0050】
以上の発明による効果を、図5を用いて説明する。
【0051】
図5は、被検査溶液の分析対象物の濃度が等しい3種類の異なる粘性における吸光度値の変化図である。
【0052】
被検査溶液の粘性の低い順に粘性A、粘性B、粘性Cであり、粘性Bの展開速度と補正式から求めた待ち時間Aを待ち時間21とする。待ち時間21は基準となる待ち時間Bと等しく、更に従来発明の一定の待ち時間と等しいとする。また、粘性A、及び粘性Cの展開速度と補正式から求めた待ち時間をそれぞれ待ち時間22、及び待ち時間23とする。
【0053】
粘性に応じた待ち時間に補正した事で、粘性が低い粘性Aにおいて、従来発明より短い待ち時間22になり測定時間を早くする事ができる。また、それぞれの粘性において安定した吸光度値20の値(標識試薬と試薬固定化部の結合が完了した時の値)が取得できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかる分析装置は、被検査溶液の粘性による測定への影響を除去する機能を有し、高い精度の測定結果が求められる技術分野に有用である。
【0055】
本発明にかかる分析装置は、被検査溶液の粘性に対応した測定時間へ補正する機能を有し、分析対象物の測定に素早い測定時間が求められる技術分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明における、分析装置の概略構成図
【図2】本発明における、被検査溶液の到達位置と測定終了の関係図
【図3】本発明における、被検査溶液の展開と展開速度の測定範囲の関係図
【図4】本発明における、被検査溶液の展開と展開速度の測定範囲の関係図
【図5】本発明における、異なる粘性における吸光度値の変化図
【図6】従来発明における、分析装置の概略構成図
【図7】従来発明における、被検査溶液の展開と展開待ち時間における吸光度値の変化図
【図8】従来発明における、異なる粘性における課題図
【図9】従来発明における、異なる粘性における課題図
【符号の説明】
【0057】
1、1a 半導体レーザ(光源)
2、2a 参照光
3、3a 散乱光
4、4a 第1のフォトダイオード
5、5a 第2のフォトダイオード
6、6a、6b、6c、6d、6e ビーム照射位置
7、7a 試験片
8、8a 点着部
9、9z 流路
9a 流路の幅
10、10a 標識薬保持部
11、11a 試薬固定化部
12、12a、12b、12c、12d 被検査溶液
13、13a、18 展開速度の測定範囲の上流側所定位置
14、14a 展開速度の測定範囲の下流側所定位置
16 流路の最上流位置
17、19 展開速度の測定範囲
20、20a 展開後の安定した吸光度値
21、21a、22、22a、23、23a 展開の待ち時間
24 展開待ち開始位置
25 余分な待ち時間
26、28 誤差
27 拡大部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査溶液が点着された試験片に展開された該被検査溶液を固定する試薬固定化部を設け該試薬固定化部に分析光を照射し前記被検査溶液と該分析光との反応を光学的に分析する分析装置において、
前記被検査溶液が試験片に展開される展開速度を検出する検出手段と、
該検出手段が検出した展開速度に基づいて前記分析光の照射開始時間を設定する設定手段と、を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記設定手段によって設定する照射開始時間は、試験片上の所定位置を前記被検査溶液が通過後から計時する時間である、ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記検出手段によって検出する前記展開速度は、被検査溶液が展開することで到着した異なる2点における前記被検査溶液の到着時間の差に基づいている、ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
前記検出手段によって検出する前記展開速度は、被検査溶液が一定時間内に展開した距離に基づいている、ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項5】
前記試験片は短冊状の多孔質担体からなり、血液をクロマトグラフィーにより展開させることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記試薬固定化部は標識試薬を備え、該標識試薬の呈色を光学的に分析することを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項7】
前記試験片における被検査溶液の展開方向に分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出する走査手段と、
該被検査溶液が点着された試験片装着後または前記展開速度の検出前に前記走査手段が分析光を照射し所定位置に被検査溶液が到達しているとき前記展開速度の検出または前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第1禁止手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項8】
前記試験片における被検査溶液の展開方向に分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出する走査手段と、
該被検査溶液が点着された試験片装着後または前記展開速度の検出前に前記走査手段が分析光を照射し被検査溶液の到達位置を検出できないとき前記展開速度の検出または前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第2禁止手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項9】
被検査溶液の到達位置を検出する走査手段でもちいる分析光の照射方向が、前記試験片を展開する被検査溶液の下流から上流方向とする、ことを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載の分析装置。
【請求項10】
前記検出手段が検出する展開速度が所定速度を満たさない場合、前記試薬固定化部への分析光の照射を禁止する第3禁止手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−162496(P2006−162496A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356368(P2004−356368)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】