説明

分析装置

【課題】排水管からの廃液の逆流を防止する分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置1は、反応容器30内の検体と試薬との反応液に対して測定処理を行なう測定機構を複数備えた分析装置であって、各測定機構3a〜3cにそれぞれ設けられ、接続する吸引ノズルによって吸引された反応容器30内の液体を吸い込み排水管31に送出する廃液ポンプ40a〜40cと、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cのすべてを稼動させる制御部41と、を備え、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cのすべてを常に稼動させることによって排水管31からの廃液の逆流を確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体容器内の検体を反応容器に分注して測定処理を行なう測定機構を備え、測定機構による測定結果をもとに検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置は、血液や体液などである多数の検体に対する分析処理を同時に行ない、さらに、多成分を迅速に、かつ、高精度で分析できるため、免疫検査、生化学検査、輸血検査などさまざまな分野での検査に用いられている。従来、検体に対する分析処理能力を高めるため、複数の測定機構を直列に配置した分析装置が提案されていた。
【0003】
このような分析装置においては、処理する検体数が分析装置全体を稼動させた場合の処理可能数よりも少ない場合に、一部の測定機構を停止していた。また、従来の分析装置においては、一部の測定機構が故障した場合であって故障した測定機構を停止させる場合であっても、故障が生じていない他の測定機構の処理動作を継続させて検体測定継続を実現していた(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−28933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分析装置においては、測定が終了した反応容器内の反応液および反応容器内の洗浄に使用された洗浄液などの廃液をそれぞれ所定の排水管に送出することによって廃棄している。この排水管は、排水口を一箇所にまとめるため装置内において1本にまとめることが一般的であり、複数の測定機構を有する分析装置においては、各測定機構ごとに、この1本の排水管に各測定機構内で生じた廃液を排出する廃液ポンプが設けられている。この廃液ポンプには、排水管に対する一定の廃液送出方向に廃液を送出するための弁が設けられている。
【0006】
従来の測定装置においては、複数の測定装置のうち一部の測定機構が停止している場合、この停止した測定機構における廃液ポンプも稼動を停止する。この場合、廃液ポンプの稼動を停止させた場合、他の測定機構の廃液ポンプの稼動によって、この停止している廃液ポンプに廃液送出方向と逆方向に圧力がかかる。ここで、廃液ポンプ内の弁のシール機能が劣化しているときに停止している廃液ポンプに廃液送出方向の圧力がかかると弁の隙間を通して、排水管からの液体や気体が廃液ポンプ内に流れ込む場合がある。この結果、従来の分析装置においては、他の測定機構の廃液ポンプによって排出された廃液が、停止している廃液ポンプを介して停止中の測定機構内に逆流してしまい、逆流した廃液が装置内にあふれてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、排水管からの廃液の逆流を防止する分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、反応容器内の検体と試薬との反応液に対して測定処理を行なう測定機構を複数備えた分析装置において、各測定機構にそれぞれ設けられ、接続する吸引ノズルによって吸引された前記反応容器内の液体を吸い込み排水管に送出するポンプと、前記複数の測定機構のうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、前記ポンプのすべてを稼動させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記ポンプは、前記液体を吸い込む吸込口において弾性による変形によって前記液体を流入可能とする吸引弁を有し、前記液体を送り出す送出口において弾性による変形によって前記液体を流出可能とする送出弁を有することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記排水管は、第1の排水管と第2の排水管であり、前記ポンプは、前記第1の排水管に対応して設けられた第1のポンプと、前記第2の排水管に対応して設けられた第2のポンプとを前記測定機構ごとに有し、前記制御手段は、各測定機構のうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、前記第1のポンプのすべて、および、前記第2のポンプのすべてを稼動させることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記ポンプが前記排水管に送出する液体は、前記反応容器内を洗浄した洗浄液または前記反応液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の測定機構のうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、前記ポンプのすべてを常に稼動させることによって、排水管からの廃液の逆流を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、血液、尿、液体等の検体に対して分析を行なう分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体を収容した検体容器を順次移送する検体移送機構2と、検体および試薬を反応容器30にそれぞれ分注し反応容器30内で生じる反応を光学的に測定する複数の測定機構3a〜3cと、検体移送機構2および測定機構3を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構3a〜3cにおける測定結果の分析を行なう制御機構4とを備える。分析装置1は、これらの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行なう。
【0015】
検体移送機構2は、血液検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック21bを備える。検体移送機構2においては、検体移送機構2上の各検体分注位置に移送された検体容器21a内の検体は、各測定機構3a〜3cにおける検体分注部32によって、反応テーブル33上に配列して搬送される反応容器30に分注される。
【0016】
そして、分析装置1は、検体に対する分析処理能力を高めるため、複数の測定機構3a〜3cを直列に配置している。各測定機構3a〜3cは、たとえば、それぞれ同様の構成を有する。これらの各測定機構3a〜3cは、大別して検体分注部32、反応テーブル33、第1試薬庫34、第1試薬分注部35、第2試薬庫36、第2試薬分注部37、図示しない攪拌部、測光部38および洗浄部39a〜39cをそれぞれ備える。
【0017】
各検体分注部32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。このアームの先端部には、検体の吸引および吐出を行なう検体ノズルが取り付けられている。検体分注部32は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注部32は、上述した検体移送機構2上の検体分注位置に移送された検体容器21aの中から検体ノズルによって検体を吸引し、アームを図中反時計回りに旋回させ、各反応容器30に検体を吐出して分注を行なう。
【0018】
各反応テーブル33は、反応容器30への検体や試薬の分注、反応容器30の攪拌、洗浄または測光を行なうために反応容器30を所定の位置まで移送する。この反応テーブル33は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル33の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル33の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0019】
第1試薬庫34は、反応容器30内に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器34aを複数収納できる。第1試薬庫34には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には第1試薬容器34aが着脱自在に収納される。第1試薬庫34は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫34の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第1試薬容器34aを第1試薬分注部35による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫34の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、第1試薬庫34の下方には、恒温槽が設けられている。
【0020】
第1試薬分注部35は、検体分注部32と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。第1試薬分注部35は、第1試薬庫34上の試薬吸引位置に移動された第1試薬容器34a内の試薬を試薬ノズルによって吸引し、アームを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル33上の所定位置に搬送された反応容器30に分注する。
【0021】
第2試薬庫36は、第1試薬庫34と同様に、反応容器30内に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器36aを複数収納できるとともに、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第2試薬庫36の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の第2試薬容器36aを第2試薬分注部37による試薬吸引位置まで移送する。
【0022】
第2試薬分注部37は、第1試薬分注部35と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアームを備え、第2試薬庫36上の試薬吸引位置に移動された第2試薬容器36a内の試薬を試薬ノズルによって吸引し、アームを図中反時計回りに旋回させ、反応テーブル33上の所定位置に搬送された反応容器30に分注する。
【0023】
測光部38は、所定の測光位置に搬送された反応容器30内の反応液の光学的特性を測定する。この測光部38による測定結果は、制御部41に出力され、分析部43において分析される。
【0024】
また、各測定機構3a〜3cは、それぞれ洗浄部39a〜39cを備える。各洗浄部39a〜39cは、吸引ノズル391a,391b,391cおよび吸引ノズル392a,392b,392cによって、測光部38による測定が終了した反応容器30内の検体と試薬との反応液を吸引して排出するとともに、洗剤、洗浄水、純水等の洗浄液を反応容器30内へ注入し、そして反応容器30から洗浄液を吸引することで洗浄を行なう。そして、分析装置1は、各測定機構3a〜3cにそれぞれ設けられ、接続する吸引ノズル391a,391b,391cおよび吸引ノズル392a,392b,392cによって吸引された反応容器30内の液体を吸い込み、装置内において1本にまとめられた排水管31に送出するそれぞれ送出する廃液ポンプ40a〜40cを有する。廃液ポンプ40a〜40cを介して排水管31に送出された廃液は、排水管31を通って図示しない排水口に廃棄される。なお、洗浄した反応容器30は再利用されるが、検査内容によっては1回の測定終了後に反応容器30を廃棄してもよい。
【0025】
つぎに、制御機構4について説明する。制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44および出力部45を備える。検体移送機構2、測定機構3および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0026】
制御部41は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。また、制御部41は、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cのすべてを稼動させる。
【0027】
入力部42は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、測光部38から出力された検体の光学的特性の測定結果に基づいて検体の成分分析等を行なう。記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部44は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部45は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。出力部45は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報を外部装置に出力してもよい。
【0028】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器30に対して、各検体分注部32が検体移送機構2によって所定位置に移送された各検体容器21a中の検体を分注し、各第1試薬分注部35が第1試薬容器34a中の試薬を分注し、各第2試薬分注部37が第2試薬容器36a中の試薬を分注し、図示しない攪拌部が反応容器30内を攪拌した後に、測光部38が検体と試薬との反応液に対して光学的測定を行ない、この測定結果を分析部43が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部39a〜39cが測光部38による測定が終了した後に搬送される反応容器30を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0029】
つぎに、図2および図3を参照して、図1に示す廃液ポンプ40a〜40cについて説明する。なお、図1における廃液ポンプ40a〜40cは、ほぼ同様の構成を有しており、図2および図3においては、たとえば廃液ポンプ40aについて説明する。図2に示すように、廃液ポンプ40aは、管31aによって吸引ノズル391a,392aと接続するとともに、管31bによって廃液ポンプ40aの下方位置に設けられた排水管31と接続する。なお、各廃液ポンプ40a〜40cは、排水管31よりも上方位置になるように分析装置1内に設置されている。
【0030】
図3に示すように、廃液ポンプ40aは、液体を吸い込む吸込口M1に吸引弁401aを有する。この吸引弁401aは、変形しない場合には吸込口M1を密閉し、変形によって液体を流入可能とする。この吸引弁401aは、廃液ポンプ40aの稼動によって吸込圧力Piが加えられた場合に、矢印Y1に示すように弾性による下方向への変形が発生する。この結果、吸込口M1に隙間が生じ、矢印Y2に示すように、管31a内に流れる液体が廃液ポンプ40a内に吸い込まれる。
【0031】
そして、廃液ポンプ40aは、液体を送り出す送出口M2に送出弁401bを有する。この送出弁401bは、変形しない場合には送出口M2を密閉し、変形によって液体を送出可能とする。この送出弁401bは、廃液ポンプ40aの稼動によって送出圧力Poが加えられた場合に、矢印Y3に示すように弾性による上方向への変形が発生する。この結果、送出口M2に隙間が生じ、矢印Y4に示すように、廃液ポンプ40a内の廃液は、管31bに向かって押し出され、矢印Y5に示すように管31b内を通過し、矢印Y6に示すように排水管31に送出される。
【0032】
さらに、実施の形態にかかる分析装置1においては、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、制御部41の制御のもと、廃液ポンプ40a〜40cのすべてを稼動している。すなわち、分析装置1においては、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cは、常に稼動し、吸込圧力Pi、吸出し圧力Poが吸込弁401a、送出弁401bに加えられた状態となり、常に管31aから液体または気体を吸い込み、常に吸い込んだ液体または気体を管31bを介して排水管31に送出している状態となっている。
【0033】
これに対し、従来の分析装置においては、図4に示すように、一部の測定機構が停止している場合、この停止した測定機構における廃液ポンプ140aも稼動を停止している。この場合、他の測定機構の廃液ポンプの稼動は稼動している。このため、他の測定機構の廃液ポンプによる廃液の送出圧力によって、矢印Y10に示すように、廃液ポンプ140aには、廃液ポンプ140aと接続する排水管131からの方向、すなわち廃液送出方向と逆方向の圧力がかかる。停止している廃液ポンプ140aに廃液送出方向と逆方向の圧力がかかった場合、本来であれば、停止している廃液ポンプ140a内の送出弁1401bが、管131bとの間の送出口M21を密閉しており、さらに廃液送出方向と逆方向の圧力がかかるので廃液ポンプ140a内が開放されることはない。
【0034】
しかしながら、分析装置においては、試薬や洗浄液などの薬液が廃液として送出されており、この薬液と接触することによって、廃液ポンプ内の弁は、水等と接触する場合と比して劣化しやすい。特に、これらの吸込弁1401aおよび送出弁1401bは、ゴム製であることが多いため、薬液との接触によって影響をうけ、弁の形状は、反って開く方向に変形することが多い。この廃液ポンプ内の送出弁1401bが劣化しシール機能が十分機能していないときに停止している廃液ポンプ140aに矢印Y10に示すように廃液送出方向と逆方向の圧力がかかり、かつ、その圧力が開く方向に変形した送出弁1401bを閉じるのに十分でない場合は、送出口M21に隙間が生じたままになってしまう。この結果、図4の矢印Y11に示すように排水管131内の廃液および空気が管131b内を這い登ってきた場合、矢印Y12に示すように、この送出口M21の隙間から排水管131から這い上がってきた廃液や空気が廃液ポンプ140a内に流れ込んでしまっていた。
【0035】
さらに、廃液ポンプ内の吸込弁1401aが劣化しシール機能が十分機能していないときに停止している廃液ポンプ140aに矢印Y10に示すように廃液送出方向と逆方向の圧力がかかり、かつ、その圧力が開く方向に変形した吸込弁1401aを閉じるのに十分でない場合は、吸込口M11に隙間が生じたままになってしまう。この結果、矢印Y15に示すようにこの吸込口M11の隙間から、廃液ポンプ140a内の廃液が管131a内に逆流し、この逆流した廃液がたとえば開放口M13を介して、停止中の測定機構内にあふれてしまうという問題があった。
【0036】
特に、分析装置における廃液は、反応容器の洗浄などのために、洗剤が混じったものである。この洗剤が混じった廃液が空気とともに逆流した場合、管131b内のトラップに廃液Cが捕らえられた場合であっても、逆流して流れ込む空気によって泡となって充満してしまう。さらに、洗剤が混じった廃液は少量であっても、逆流した空気によって大量の泡となりやすい。そして、この泡Bは重さが軽いため、逆流した空気の流れにしたがって移動しやすい。この結果、泡Bは逆流した空気に押されて廃液ポンプ140aを介して、開放口M13からあふれ出してしまっていた。
【0037】
これに対し、本実施の形態にかかる分析装置1においては、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cは、常に稼動し、常に管31aから液体、気体を吸い込み、常に管31bを介して液体、気体を排水管31に送出している。このため、廃液ポンプ40a〜40cにおいては、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、常に廃液送出方向にしたがって液体、気体が排水管31に送出されている状態となっており、廃液ポンプ40a内への排水管13からの廃液および気体の流れ込み自体が発生しない。したがって、分析装置1においては、廃液ポンプ40a〜40cへの廃液および空気の逆流自体が発生しないため、逆流した廃液が分析装置1内にあふれてしまうこともない。
【0038】
このように、実施の形態にかかる分析装置1は、複数の測定機構3a〜3cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ40a〜40cのすべてを常に稼動させることによって、逆流防止のために装置構成を変えずとも制御処理の変更のみで廃液の逆流を確実に防止することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態にかかる分析装置として、排水管31が一本にまとめられた分析装置1について説明したが、これに限らず、図5に示すように、複数の排水管を備えた分析装置にも適用することができる。
【0040】
この場合、図5に示す分析装置201は、吸引ノズル391a〜391cによって吸引された反応容器30内の反応液と反応容器30内に注入された洗剤を含む液体とを排水口に廃棄する濃廃液用排水管311、および、吸引ノズル392a〜392cによって吸引された反応容器30内に注入された純水を含む液体を排水口に廃棄する淡廃液用排水管312を備える。そして、分析装置201における各測定機構203a〜203cには、各吸引ノズル391a,391b,391cと濃廃液用排水管311とに接続する廃液ポンプ401a〜401c、および、吸引ノズル392a,392b,392cと淡廃液用排水管312とに接続する廃液ポンプ402a〜402cを備える。また、制御機構204は、図1に示す制御部41と同様に、複数の測定機構203a〜203cのうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、廃液ポンプ401a〜401cおよび廃液ポンプ402a〜402cのすべてを稼動させる制御部241を備える。このように、複数の排水管を備えた場合であっても、各測定機構が稼動している間、各排水管に接続する廃液ポンプ401a〜401c,402a〜402cすべてを常に稼動することによって、各排水管からの廃液、気体の逆流を防止することができる。
【0041】
また、図6に示す分析装置301のように、排水管31に接続する廃液ポンプを一つの廃液ポンプ40にまとめ、制御機構304における制御部341は廃液ポンプ40を稼動させることによって各測定機構303a〜303cから排出された廃液を一括して排水管31に送出するようにした場合も実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図7に示す分析装置401のように、排水管が濃廃液用排水管311と淡廃液用排水管312とのように複数ある場合には、各吸引ノズル391a〜391cによって吸引された廃液を濃廃液用排水管311に一括して送出する廃液ポンプ401と、各吸引ノズル392a〜392cによって吸引された廃液を淡廃液用排水管312に一括して送出する廃液ポンプ402とを設け、制御機構404における制御部441は、廃液ポンプ401および廃液ポンプ402を稼動させることによって各測定機構403a〜403cから排出された廃液を濃廃液用排水管311または淡廃液用排水管312にそれぞれ一括して送出する。
【0042】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1,201,301,401は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す廃液ポンプの斜視図である。
【図3】図2に示す廃液ポンプの内部構成を説明する図である。
【図4】従来技術にかかる廃液ポンプの内部構成を説明する図である。
【図5】実施の形態にかかる分析装置の他の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態にかかる分析装置の他の構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態にかかる分析装置の他の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1,201,301,401 分析装置
2 検体移送機構
3a〜3c,203a〜203c,303a〜303c,403a〜403c 測定機構
4,204,304,404 制御機構
21a 検体容器
21b 検体ラック
30 反応容器
31,131 排水管
311 濃廃液用排水管
312 淡廃液用排水管
31a,31b,131a,131b 管
32 検体分注部
33 反応テーブル
34 第1試薬庫
34a 第1試薬容器
35 第1試薬分注部
36 第2試薬庫
36a 第2試薬容器
37 第2試薬分注部
38 測光部
39a〜39c 洗浄部
391a〜391c,392a〜392c 吸引ノズル
40,40a〜40c,401,401a〜401c,402,402a〜402c 廃液ポンプ
401a,1401a 吸込弁
401b,1401b 送出弁
41,241,341,441 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内の検体と試薬との反応液に対して測定処理を行なう測定機構を複数備えた分析装置において、
各測定機構にそれぞれ設けられ、接続する吸引ノズルによって吸引された前記反応容器内の液体を吸い込み排水管に送出するポンプと、
前記複数の測定機構のうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、前記ポンプのすべてを稼動させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記ポンプは、前記液体を吸い込む吸込口において弾性による変形によって前記液体を流入可能とする吸引弁を有し、前記液体を送り出す送出口において弾性による変形によって前記液体を流出可能とする送出弁を有することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記排水管は、第1の排水管と第2の排水管であり、
前記ポンプは、前記第1の排水管に対応して設けられた第1のポンプと、前記第2の排水管に対応して設けられた第2のポンプとを前記測定機構ごとに有し、
前記制御手段は、各測定機構のうち少なくともいずれか一つが稼動している場合、前記第1のポンプのすべて、および、前記第2のポンプのすべてを稼動させることを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記ポンプが前記排水管に送出する液体は、前記反応容器内を洗浄した洗浄液または前記反応液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−232835(P2008−232835A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72959(P2007−72959)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】