説明

分析装置

【課題】キュベットブランク値を厳格に管理し、さらに正確な分析結果を取得できる分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる分析装置1は、キュベット21の識別情報とともにキュベット21のブランク値に関するブランク情報を記憶するRFIDタグをキュベット21に付し、このRFIDタグから読み取った情報と、当該分析装置1内に記憶される当該分析装置1において使用される各キュベット21の位置情報と各キュベット21の識別情報およびブランク情報とを対応づけたキュベット管理情報D1とをもとにキュベット21に対するブランク値測定処理の実行を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体と試薬とを反応容器(キュベット)に分注して検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応容器が空である場合またはこの反応容器に水が注入された場合における吸光度を「キュベットブランク値」として定期的に測定し、このキュベットブランク値を用いて各検体と試薬との反応液の吸光度を補正することによって、分析装置の分析精度を保持している(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−091518号公報
【特許文献2】特開平10−267935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、分析装置に対してさらなる分析精度向上が要求されており、この要求に応えるため、キュベットブランク値に対する厳格な管理を行なうことが望まれる。しかしながら、このキュベットブランク値を測定するキュベットブランク処理は、分析装置の各オペレータによってそれぞれ管理されているため、いずれの分析装置においてもキュベットブランク値を一定の精度で厳格に管理しているとはいえなかった。特に、反応容器は、一台の分析装置につき100個以上搭載されている場合が多く、さらに容量が数μL〜数mLと微量な容器であることからサイズも小さいため、個々の反応容器に対してキュベットブランク値を厳格に管理することは、分析装置のオペレータに大きな負担となる場合もあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、キュベットブランク値を厳格に管理し、さらに正確な分析結果を取得できる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分析装置は、検体と試薬とを反応容器に分注して前記検体を分析する分析装置において、前記反応容器に付され、該反応容器を識別する識別情報とともに該反応容器のブランク値に関するブランク情報を記憶する記憶媒体と、前記反応容器に付された記憶媒体から前記識別情報とブランク情報とを読み取る読取手段と、当該分析装置において使用される各反応容器の位置情報と、各識別情報およびブランク情報とを対応づけた反応容器管理情報を記憶する記憶手段と、前記読取手段によって読み取られた前記記憶媒体の情報と前記記憶手段によって記憶される反応容器管理情報とをもとに前記反応容器に対するブランク値測定処理の実行を制御する制御手段と、前記制御手段の制御によって前記ブランク値測定処理が実行された反応容器の記憶媒体に、該実行されたブランク値測定処理にもとづく前記ブランク情報を書き込む書込手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる分析装置は、前記制御手段は、前記ブランク値測定処理を実行した場合、前記記憶手段の反応容器管理情報のうち該ブランク値測定処理を実行した反応容器に対応するブランク情報を、該実行されたブランク値測定処理にもとづく前記ブランク情報に書き替えることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、前記制御手段は、前記読取手段によって読み取られた記憶媒体における識別情報と、前記記憶手段に記憶される反応容器管理情報のうち前記読取手段によって記憶媒体が読み取られた反応容器の位置に対応した識別情報とが一致するか否かを判断し、一致しないと判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器は新たに当該分析装置内に設置された反応容器であると判断して該反応容器に対して前記ブランク値測定処理を実行させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分析装置は、前記書込手段は、前記ブランク情報としてブランク値とともに該ブランク値を測定したブランク値測定処理実行日時を前記記憶媒体に書き込み、前記読取手段は、前記記憶媒体に記憶された前記ブランク値と前記ブランク値実行日時とを読み取り、前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記ブランク値測定処理実行日時からの経過時間が予め設定されたブランク値有効期間を超えているか否かを判断し、前記経過時間が前記ブランク値有効期間を超えていると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器に対して前記ブランク値測定処理を実行させることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分析装置は、前記書込手段は、前記記憶媒体に対して、前記ブランク情報とともに該記憶媒体が付された前記反応容器に対して行なわれたメンテナンス処理実行日時を書き込み、前記読取手段は、前記記憶媒体に記憶された前記ブランク値とともに前記メンテナンス処理実行日時を読み取り、前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記メンテナンス処理実行日時からの経過時間が予め設定されたメンテナンス有効期間を超えているか否かを判断し、前記経過時間が前記メンテナンス有効期間を超えていると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器に対して前記ブランク値測定処理とともに前記メンテナンス処理を実行させることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる分析装置は、前記記憶手段は、分析項目ごとに、前記反応容器に実行された前回分析項目に応じて前記反応容器が使用可能であるか否かを対応づけた分析項目組み合わせを記憶し、前記書込み手段は、前記分析項目が前記反応容器に対して実行されるごとに前記反応容器に対して実行された分析項目を前回分析項目として該反応容器に付された記憶媒体に書込み、前記読取手段は、次の分析項目が前記反応容器に実行される前に、該反応容器の前記記憶媒体に記憶された前回分析項目を読み取り、前記制御手段は、次に実行される分析項目と前記読取手段によって読み取られた前回分析項目との組み合わせが前記記憶手段に記憶された分析項目組み合わせのうち前記反応容器が使用可能である組み合わせに対応すると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器の使用を許可し、前記次に実行される分析項目と読取手段によって読み取られた前回分析項目との組み合わせが記憶手段に記憶された分析項目組み合わせのうち前記反応容器が使用不可である組み合わせに対応すると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器の使用を許可しないことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる分析装置は、前記記憶手段に記憶された反応容器管理情報を出力する出力手段をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる分析装置は、反応容器の識別情報とともに反応容器のブランク値に関するブランク情報を記憶する記憶媒体を反応容器に付し、この記憶媒体から読み取った情報と、当該分析装置内に記憶される当該分析装置において使用される各反応容器の位置情報と各反応容器の識別情報およびブランク情報とを対応づけた反応容器管理情報とをもとに反応容器に対するブランク値測定処理の実行を制御することによって、分析装置のオペレータの手を介さずに分析装置内においてキュベットブランク値を管理できるため、キュベットブランク値を厳格に管理し、さらに正確な分析結果を取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分析装置について、血液や尿等の液体検体を反応容器に分注して検体を分析する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
図1は、実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器(以下キュベットと称す)21にそれぞれ分注し、分注したキュベット21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、キュベット21は、容量が数μL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、たとえば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。キュベット21は、側壁と底壁とによって液体を保持する液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する。
【0016】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0017】
検体移送部11は、血液等の液体検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送されるキュベット21に分注される。
【0018】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なう検体プローブが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定の検体吸引位置に移送された検体容器11aの中から、プローブによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定の検体吐出位置に搬送されたキュベット21に検体を吐出して分注を行なう。
【0019】
反応テーブル13は、キュベット21への検体や試薬の分注、キュベット21の攪拌、測光、洗浄を行なうためにキュベット21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。また、反応テーブル13内には、所定周波数の電波を介して、RFIDタグに記憶される情報を読み取り、また、RFIDタグに記憶される情報を書き替えるリーダライタ13aが設けられている。
【0020】
試薬庫14は、キュベット21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、保冷庫が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を冷却し、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0021】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬プローブが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構16は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定の試薬吸引位置に移動された試薬容器15内の試薬をプローブによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定の試薬吐出位置に搬送されたキュベット21に試薬を吐出して分注する。攪拌部17は、キュベット21に分注された検体と試薬との攪拌を行ない、反応を促進させる。
【0022】
測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送されたキュベット21に光源から分析光(340〜800nm)を照射し、キュベット21内の液体を透過した光を分光し、PDA等の受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。また、測光部18は、検体と試薬との反応液における吸光度補正のために、反応容器(キュベット)が空である場合または反応容器(キュベット)に水が注入された場合における吸光度をキュベットブランク値として定期的に測定するキュベットブランク処理を行なう。測光部18は、測定した各吸光度を制御部31に出力する。
【0023】
洗浄部19は、洗浄プローブによって、測光部18による測定が終了したキュベット21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了したキュベット21を洗浄する。
【0024】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34、出力部35および送受信部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0025】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。
【0026】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。分析部33は、反応容器(キュベット)ごとに測定されたキュベットブランク値を用いて、反応液の吸光度を補正した上で、検体の成分分析等の各演算処理を行なっている。
【0027】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部34は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部34は、分析装置1において使用される各キュベット21の位置情報と、各キュベット21の識別情報およびブランク情報とを対応づけたキュベット管理情報D1を記憶しており、制御部31は、このキュベット管理情報D1を参照または書き替えることによって、分析装置1において使用される各キュベット21のキュベットブランク値を管理している。
【0028】
出力部35は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部35は、記憶部34に記憶されたキュベット管理情報D1を出力するほか、キュベットブランク処理に関する各種情報を出力する。送受信部36は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0029】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数のキュベット21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた反応液の分光強度測定を行ない、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行なわれる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送されるキュベット21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行なわれる。
【0030】
つぎに、キュベット21およびリーダライタ13aについて説明する。たとえば図2に示すように、各キュベット21の底面等には、RFIDタグ22が記憶媒体としてそれぞれ付されている。このRFIDタグ22は、RFID(Radio Frequency Identification)システムにおいて用いられるタグ形状の記憶媒体である。RFIDタグ22は、書き込みおよび読み取りを指示する所定周波数の電波を介して、読出しが可能であるとともに、書き込み、書き換えが可能である。
【0031】
このRFIDタグ22には、このRFIDタグ22が付されたキュベット21の識別情報とともに、このRFIDタグ22が付されたキュベット21のキュベットブランク値に関するブランク情報を記憶する。RFIDタグ22は、キュベット21の識別情報として、このキュベット21のロット番号およびシリアル番号を記憶する。また、RFIDタグ22は、このRFIDタグ22が付されたキュベット21が、反応テーブル13を構成するキュベットホルダー13b内のいずれのポジションに位置するかを示すポジション情報を記憶する。また、RFIDタグ22は、このRFIDタグ22が付されたキュベット21が搭載される分析装置の識別情報である搭載装置番号、このキュベット21の分析装置への搭載年月日、これまで実行されたテスト数の累計および前回実行されたテスト項目を記憶する。さらに、RFIDタグ22は、このRFIDタグ22が付されたキュベット21に対して実施されたキュベットブランク処理実行日時の履歴、および、専用の洗剤でキュベット21を洗浄する洗浄処理を含むメンテナンス処理のメンテナンス処理実行日時の履歴を記憶する。
【0032】
リーダライタ13aは、キュベットホルダー13b底壁下方であってRFIDタグ22と近接可能な所定の位置に設けられ、制御部31の制御のもと、所定周波数の電波を介して、キュベット21底壁に付されたRFIDタグ22に記憶される情報を読み取るとともに、キュベットブランク処理に関する各種情報等をRFIDタグ22に書き込む。リーダライタ13aは、リーダライタ13aの上部に搬送されたRFIDタグ22に対して、情報の読み取りおよび書き込みを行なう。
【0033】
この分析装置1においては、キュベット21に付されたRFIDタグ22の情報と記憶部34に記憶されるキュベット管理情報D1とをもとに、キュベットブランク処理が必要であるキュベット21に対して、自動的にキュベットブランク処理を行なえるようにしている。図3を参照して、図1に示す分析装置1におけるキュベットブランク値の管理方法について具体的に説明する。図3においては、反応テーブル13の蓋の開閉タイミングをトリガーとしてキュベットブランク管理に関する各処理を行なう場合を例に説明する。
【0034】
まず、図3に示すように、制御部31は、反応テーブル13の蓋の開閉があったか否かを判断する(ステップS2)。反応テーブル13の蓋の所定位置直下には、たとえば圧力センサーが設けられており、制御部31は、この圧力センサーによって検出された圧力値の変動によって、反応テーブル13の蓋が開閉されたか否かを判断する。
【0035】
制御部31は、反応テーブル13の蓋が開閉されたと判断するまでステップS2の判断処理を繰り返し、反応テーブル13の蓋が開閉されたと判断した場合には(ステップS2:Yes)、リーダライタ13aに対して、反応テーブル13内に設置される全てのキュベット21に対してRFIDタグ22の情報を読み取らせるキュベット読取処理を行なう(ステップS4)。この場合、リーダライタ13aは、全RFIDタグ22に記憶される識別情報、ポジション情報、搭載装置番号、搭載年月日、キュベットブランク処理実行日時の履歴およびメンテナンス処理実行日時の履歴を少なくとも読み取る。そして、リーダライタ13aは、読み取ったRFIDタグ22の情報を、各RFIDタグ22が付されたキュベット21のキュベットホルダー13b内のポジションに対応させて制御部31に出力する。
【0036】
制御部31は、リーダライタ13aから出力された全RFIDタグ22の読取情報を一時的に記憶した後(ステップS6)、キュベットごとに使用期限を算出する(ステップS8)。制御部31は、読取情報のうち搭載年月日を参照し、この搭載年月日に予め設定された使用許容期間を加算してキュベットの使用期限を算出する。次いで、制御部31は、RFIDタグ22の読取処理を行なった読取日時が算出したキュベット使用期限を超えているか否かをもとに、読取処理を行なった全キュベットのうち使用期限切れのキュベットがあるか否かを判断する(ステップS10)。
【0037】
制御部31は、算出した使用期限を超えた使用期限切れのキュベットがあると判断した場合(ステップS10:Yes)、使用期限切れのキュベットの位置を示して使用期限切れのキュベットの交換を促す警報を出力し(ステップS12)、ステップS2の判断処理に戻る。リーダライタ13aが読み取った各ポジションのRFIDタグ22の読取情報Drが、図4に示すものであった場合を例として説明する。たとえば使用期限が装置への搭載年月日から6ヶ月間であり、実際にリーダライタ13aで読み取った読取日時が2008年1月23日であった場合には、行R2に示すポジション2のキュベット21が使用期限切れとなる。この場合には、制御部31は、ポジション2に位置するキュベット21が使用期限切れとなるため、ポジション2のキュベットを別のキュベットに交換するように促すメッセージを出力する。分析装置のオペレータは、このメッセージにしたがって、反応テーブル13の蓋を開け、ポジション2のキュベット21を別のキュベット21に交換し、蓋を閉める。このキュベット交換による反応テーブル13の蓋の開閉が終了した後に、ステップS4以降の各処理が再度繰り返される。この結果、分析装置1においては、使用期限切れのキュベット21の使用を確実に回避することができるため、使用期限切れのキュベット使用による分析精度低下を防止することができる。
【0038】
一方、制御部31は、使用期限切れのキュベットがないと判断した場合(ステップS10:No)、記憶部34によって記憶されたキュベット管理情報D1を参照する(ステップS16)。このキュベット管理情報D1は、図5に例示するように、前回読取処理によって読み取られた全キュベット21の各RFIDタグ22の情報をもとに、反応テーブル13内のポジションごとに、各ポジションに設置されたキュベット21のRFIDタグ22に記憶されたキュベット21のロット番号、シリアル番号、搭載装置番号、搭載年月日、キュベットブランク処理実行年月日、メンテナンス処理実行年月日、累積テスト数および前回テスト項目が対応付けられている。
【0039】
ここで、制御部31は、この記憶部34によって記憶されたキュベット管理情報D1とリーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の情報とをもとにキュベットに対するキュベットブランク処理の実行を制御している。
【0040】
具体的には、制御部31は、参照したキュベット管理情報D1と、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の情報とを比較する(ステップS16)。この場合、制御部31は、参照したキュベット管理情報D1の各ポジションのロット番号、シリアル番号および搭載装置番号と、リーダライタ13aに読み取られた各RFIDタグ22のロット番号、シリアル番号および搭載装置番号とを比較する。そして、制御部31は、参照したキュベット管理情報D1と、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の情報とが一致しないキュベットがあるか否かを判断する(ステップS18)。すなわち、制御部31は、参照したキュベット管理情報D1の各ポジションのロット番号、シリアル番号および搭載装置番号と、リーダライタ13aに読み取られた各ポジションのRFIDタグ22のロット番号、シリアル番号および搭載装置番号とが一致しないキュベットがあるか否かを判断する。
【0041】
制御部31は、参照したキュベット管理情報D1の各ポジションのロット番号、シリアル番号および搭載装置番号と、リーダライタ13aに読み取られた各ポジションのRFIDタグ22のロット番号、シリアル番号および搭載装置番号とが一致しないキュベットがあると判断した場合には(ステップS18:Yes)、反応テーブル13の蓋の開閉によってキュベットの交換があったものと判断し(ステップS20)、参照したキュベット管理情報D1の各ポジションのロット番号、シリアル番号および搭載装置番号と、リーダライタ13aに読み取られた各ポジションのRFIDタグ22のロット番号、シリアル番号および搭載装置番号とが一致しないキュベットを、当該分析装置1内に新たに交換された設置されたキュベットとして判断し、新たに交換されたと判断されたキュベット21を処理対象として設定する(ステップS22)。たとえば、図4および図5に示すように、図4のリーダライタ13aの読取情報Drの行R3におけるポジション3の装置搭載番号と、図5のキュベット管理情報D1の行R13の装置搭載番号とが一致していない場合には、制御部31は、反応テーブル13の蓋の開閉によってポジション3のキュベットの交換があったものと判断し(ステップS20)、読取情報Drとキュベット管理情報D1とにおける装置搭載番号が一致しないポジション3のキュベット21を、新たに交換され当該分析装置1内に設置されたキュベットとし、処理対象として設定する(ステップS22)。
【0042】
一方、制御部31は、参照したキュベット管理情報D1の各ポジションのロット番号、シリアル番号および搭載装置番号と、リーダライタ13aに読み取られた各ポジションのRFIDタグ22のロット番号、シリアル番号および搭載装置番号とが一致しないキュベットがないと判断した場合には(ステップS18:No)、反応テーブル13の蓋の開閉によってキュベットの交換がなかったものと判断する(ステップS24)。
【0043】
次いで、制御部31は、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読取情報をもとにキュベットブランク有効期間を超えたキュベットがあるか否かを判断する(ステップS26)。具体的には、制御部31は、読取情報のうちキュベットブランク処理実行年月日を参照し、このキュベットブランク処理実行年月日から読取処理時間までの期間が、予め設定されたキュベットブランク有効期間を超えているか否かを判断する。
【0044】
制御部31は、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読取情報の中にキュベットブランク有効期間を超えたキュベットがあると判断した場合(ステップS26:Yes)、このキュベットブランク有効期間を超えたキュベットを処理対象として設定する(ステップS28)。たとえばキュベットブランク有効期間が前回キュベットブランク処理実行日から7日間であり、実際にリーダライタ13aで読み取った読取日時が2008年1月23日であった場合には、図4の読取情報Drの行R4に示すポジション4のキュベット21がキュベットブランク有効期間を超えることとなる。このため、制御部31は、ポジション4のキュベット21を、キュベットブランク有効期間を超えたキュベットとして判断し、このポジション4のキュベット21を処理対象として判断する(ステップS28)。
【0045】
そして、制御部31は、キュベットブランク有効期間を超えたキュベットがないと判断した場合(ステップS26:No)、または、ステップS28における設定処理後、ステップS22およびステップS28において処理対象として設定されたキュベットがあったか否かを判断する(ステップS30)。制御部31は、ステップS22およびステップS28において処理対象として設定されたキュベットがあったと判断した場合(ステップS30:Yes)、すなわち、交換されたと判断されたキュベットおよびキュベットブランク有効期間を超えたと判断されたキュベットがあった場合には、これらのキュベット21の適正なキュベットブランク値を取得するために、分析装置1の各構成部位に、これらのキュベット21に対してキュベットブランク処理を実行させる(ステップS32)。具体的には、制御部31は、これらの処理対象として設定されたキュベット21が空である場合またはキュベット21に水が注入された場合の吸光度を測光部18に測定させて、この測定させた吸光度を、各キュベット21のキュベットブランク値として取得する。たとえば、図4および図5に例示した場合においては、ステップS22およびステップS28において処理対象として設定されたポジション3およびポジション4のキュベット21に対してキュベットブランク処理が実行される。なお、キュベット21のロットによって構成材料が異なる場合があるため、制御部31は、処理対象として設定した各ポジションのキュベット21におけるロットに応じた条件でキュベットブランク処理を実行する。
【0046】
制御部31は、実行したキュベットブランク処理において取得したキュベットブランク値およびキュベット読取処理(ステップS4)においてリーダライタ13aによって読み取られた読取情報Drをもとに、キュベット管理情報D1の情報を更新する(ステップS42)。たとえば、制御部31は、キュベット管理情報D1のポジション3およびポジション4に対応するロット番号、シリアル番号、搭載装置番号、搭載年月日をリーダライタ13aによって読み取られた読取情報に書き替える。そして、制御部31は、キュベット管理情報D1のポジション3およびポジション4に対応するキュベットブランク処理実行年月日を、今回行なったキュベットブランク処理実行年月日に書替え、メンテナンス処理実行年月日、テスト数および前回テスト項目を初期化する。すなわち、制御部31は、記憶部34内のキュベット管理情報D1のうち該キュベットブランク処理を実行したキュベット21に対応するブランク情報を今回行なったキュベットブランク処理にもとづくブランク情報に書き替える。この結果、分析装置1が有するキュベット管理情報D1は、最新のものとなる。もちろん、制御部31は、ポジション3およびポジション4に対応するキュベット21のキュベットブランク値を今回行なったキュベットブランク処理において取得したキュベットブランク値に更新する。
【0047】
次いで、制御部31は、リーダライタ13aに対して、キュベットブランク処理が実行されたキュベット21に対して新たな情報を書き込ませるキュベット書込処理を行ない(ステップS44)、キュベットブランク値の管理を終了する。たとえば、制御部31は、反応テーブル13内のポジション3に位置するキュベット21のRFIDタグ22の情報を、本分析装置1の搭載装置番号、本分析装置1への搭載年月日、今回行なったキュベットブランク処理実行年月日に対応するように、リーダライタ13aに新たに書替えさせる。さらに、制御部31は、反応テーブル13内のポジション3に位置するキュベット21のRFIDタグ22のメンテナンス処理実行年月日、テスト数および前回テスト項目を初期化するようにリーダライタ13aに指示する。また、制御部31は、反応テーブル13内のポジション4に位置するキュベット21のRFIDタグ22のキュベットブランク処理実行年月日を、今回行なったキュベットブランク処理実行年月日に対応するように、リーダライタ13aに書替えさせる。すなわち、制御部31は、リーダライタ13aに対して、キュベットブランク実行されたキュベット21のRFIDタグ22に、今回実行されたキュベットブランク処理にもとづくブランク情報を書き込ませる。
【0048】
一方、制御部31は、ステップS22およびステップS28において処理対象として設定されたキュベットがないと判断した場合(ステップS30:No)、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読取情報をもとにメンテナンス有効期間を超えたキュベットがあるか否かを判断する(ステップS34)。
【0049】
制御部31は、読取情報のうちメンテナンス処理実行年月日を参照し、このメンテナンス処理実行年月日から読取処理時間までの期間が、予め設定されたメンテナンス有効期間を超えているか否かを判断する。制御部31は、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読み取り情報の中にメンテナンス有効期間を超えたキュベットがあると判断した場合(ステップS34:Yes)、このメンテナンス有効期間を超えたキュベットを処理対象として設定する(ステップS36)。たとえばメンテナンス有効期間が前回メンテナンス処理実行日から7日間であり、実際にリーダライタ13aで読み取った読取日時が2008年1月23日であった場合には、図4のリーダライタ13aの読取情報Drの行R5に示すポジション5のキュベット21がメンテナンス有効期間を超えることとなる。このため、制御部31は、ポジション5のキュベット21を、メンテナンス有効期間を超えたキュベットであって処理対象であるキュベットとして設定する(ステップS36)。
【0050】
そして、制御部31は、メンテナンス有効期間を超え処理対象として設定されたキュベットに対して、分析装置1の各構成部位にメンテナンス処理を実行させた後に(ステップS38)、キュベットブランク処理を実行させる(ステップS40)。たとえば、図4および図5に例示した場合においては、ステップS36において処理対象として設定されたポジション5のキュベット21に対してメンテナンス処理およびキュベットブランク処理が実行される。
【0051】
次いで、制御部31は、実行したメンテナンス処理およびキュベットブランク処理の処理結果をもとに、キュベット管理情報D1の情報を更新する(ステップS42)。たとえば、制御部31は、キュベット管理情報D1のポジション5に対応するメンテナンス処理実行年月日およびキュベットブランク処理実行年月日を、今回行なったメンテナンス処理およびキュベットブランク処理の実行年月日に書替える。もちろん、制御部31は、ポジション5に対応するキュベット21のキュベットブランク値を今回行なったキュベットブランク処理において取得したキュベットブランク値に更新する。
【0052】
次いで、制御部31は、リーダライタ13aに対して、メンテナンス処理およびキュベットブランク処理が実行されたキュベット21のRFIDタグ22に対して新たな情報を書き込ませるキュベット書込処理を行ない(ステップS44)、キュベットブランク値の管理を終了する。たとえば、制御部31は、反応テーブル13内のポジション5に位置するキュベット21のRFIDタグ22の情報を、今回行なったメンテナンス処理実行年月日およびキュベットブランク処理実行年月日に対応するようにリーダライタ13aに書替えさせる。
【0053】
これに対し、制御部31は、リーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読取情報をもとにメンテナンス有効期間を超えたキュベットがないと判断した場合(ステップS34:No)、キュベットブランク値の管理を終了する。
【0054】
このように、実施の形態にかかる分析装置1においては、反応テーブル13の蓋の開閉が行なわれるごとに、キュベット21に付されたRFIDタグ22から情報を読み取り、読み取った読取情報と、当該分析装置1内に記憶される当該分析装置1において使用される各キュベット21の位置情報と各キュベット21の識別情報およびブランク情報とを対応づけたキュベット管理情報D1とをもとに、交換されたキュベット21およびキュベットブランク有効期間を超えたキュベット21を自動的に抽出してキュベットブランク処理を実行する。このため、分析装置1によれば、分析装置のオペレータの手を介さずに、交換されたキュベット21およびキュベットブランク有効期間を超えたキュベット21に対して処理漏れなくキュベットブランク処理を実行しブランク情報を確実に取得できるため、分析装置1内においてキュベットブランク値を簡易かつ厳格に管理し、さらに正確な分析結果取得を図ることができる。
【0055】
さらに、分析装置1においては、キュベット21に付されたRFIDタグ22から読み取った読取情報をもとに、メンテナンス有効期間を超えたキュベット21を自動的に抽出してメンテナンス処理およびキュベットブランク処理を実行する。このため、分析装置1においては、分析装置のオペレータの手を介さずに分析装置1内においてメンテナンス処理およびキュベットブランク処理を処理漏れのないように厳格に管理できることから、適正に洗浄されたキュベットを使用でき、正確な分析結果取得を図ることができる。
【0056】
また、分析装置1においては、出力部35が記憶部34内のキュベット管理情報D1を出力できるため、分析装置1のオペレータ自身が、出力部35から出力されたキュベット管理情報D1を確認することももちろん可能である。
【0057】
なお、図3においては、反応テーブル13の蓋の開閉タイミングをトリガーとしてキュベットブランク管理に関する各処理を行なう場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。たとえば、制御部31は、一定期間ごとにリーダライタ13aに対して、反応テーブル13内に設置される全てのキュベット21に対してRFIDタグ22の情報を読み取るキュベット読取処理を行ない(ステップS4)、ステップS6以下のキュベットブランク管理に関する各処理を行なってもよい。また、制御部31は、分析装置1の停止時に、前回キュベットブランク処理実行時から所定期間を過ぎているかを判断し、前回キュベットブランク処理実行時から所定期間を過ぎていると判断した場合には、リーダライタ13aに対して、反応テーブル13内に設置される全てのキュベット21に対してRFIDタグ22の情報を読み取るキュベット読取処理を行ない(ステップS4)、ステップS6以下のキュベットブランク管理に関する各処理を行なってもよい。また、制御部31は、分析装置1の分析処理非実行時を利用して、リーダライタ13aに対して、反応テーブル13内に設置される全てのキュベット21に対してRFIDタグ22の情報を読み取るキュベット読取処理を行ない(ステップS4)、ステップS6以下のキュベットブランク管理に関する各処理を行なってもよい。
【0058】
また、制御部31は、図3のステップS34においてリーダライタ13aによって読み取られた全キュベット21のRFIDタグ22の読取情報をもとにメンテナンス有効期間を超えたキュベットがあると判断した場合には(ステップS34:Yes)、自動的にメンテナンス処理およびキュベットブランク処理に行なうほか、メンテナンス処理が必要である旨を報知する警告を出力部35に出力させて、分析装置1のオペレータにメンテナンス処理およびキュベットブランク処理の実行を促してもよい。
【0059】
また、分析装置1においては、反応テーブル13内のキュベットポジションによって使用頻度が異なり、キュベットの汚れの度合いがキュベットポジションによって変わってくる場合がある。そこで、制御部31は、分析処理受付時等に、リーダライタ13aにキュベット読取処理を実行させ、各キュベットのテスト数の累計を取得し、このテスト数の累計と受付されたテスト項目等に応じて、新たなキュベットへの交換、または、使用頻度の少ないキュベットとの入れ替えを促す警告を出力部35に出力させてもよい。なお、このテスト数の累計は、各テストの終了ごとに、リーダライタ13aによって、各キュベット21のRFIDタグ22に新たなテスト数の累計に書き換えられている。
【0060】
また、分析装置1においては、テスト項目の試薬によってキュベットの汚れの度合いが変わってくる場合がある。たとえば、ラテックス試薬を使用した場合には、他の試薬を使用した場合と比較して、キュベット21の内壁に汚れが吸着しやすくなることが知られている。また、テスト項目の組み合わせによっては、前回測定したテスト項目の試薬の成分が、キュベット21内部に残存してしまい、この残存した成分が次に測定するテスト項目の反応に影響を与え、正確な分析結果を得ることができないという問題がある。ここで、分析装置1においては、各テストの終了ごとに分析が行なわれたキュベット21のRFIDタグ22に対して直前に行なったテスト項目を書き込むようにする。そして、分析装置1は、分析処理が受け付けられた場合には、使用対象となるキュベット21のRFIDタグ22を読み込み、キュベットブランク処理実行日時および前回実行されたテスト項目および受け付けられたテスト項目に応じて、使用するキュベット21を選択する。
【0061】
図6を参照して、このキュベット選択処理に関する処理手順を説明する。図6に示すように、まず、制御部31は、分析処理の受付があったか否かを判断する(ステップS52)。制御部31は、分析処理の受付があったと判断するまでステップS52の判断処理を繰り返し、分析処理の受付があったと判断した場合には(ステップS52:Yes)、リーダライタ13aに対して、反応テーブル13内に設置される全てのキュベット21に対してRFIDタグ22の情報を読み取らせるキュベット読取処理を行なう(ステップS54)。この場合、リーダライタ13aは、全RFIDタグ22に記憶される識別情報、ポジション情報、キュベットブランク処理実行日時の履歴および前回実行されたテスト項目を少なくとも読み取る。リーダライタ13aは、読み取ったRFIDタグ22の情報を、各RFIDタグ22が付されたキュベット21のキュベットホルダー13b内のポジションに対応させて制御部31に出力する。
【0062】
制御部31は、リーダライタ13aから出力された全RFIDタグ22の読取情報を一時的に記憶する(ステップS56)。そして、受付された分析処理に使用するキュベット21を選択するための処理を行なう。
【0063】
まず、制御部31は、リーダライタ13aに読み取られたキュベット21のうち、受付されたテストに使用するか否かの判断対象となるキュベット21の読取情報を取得する(ステップS58)。
【0064】
そして、制御部31は、取得した読取情報のうちキュベットブランク処理実行年月日を参照し、この判断対象のキュベット21のキュベットブランク残り有効期間が所定の許容期間以上か否かを判断する(ステップS60)。この許容期間は、テスト項目ごとにそれぞれ予め設定されている。たとえば、図7のキュベットブランク残り有効期間の許容期間に関する許容期間情報D2に示すように、テストA〜Dごとにキュベットブランク残り有効期間の許容期間が予め設定されており、記憶部34に記憶されている。テストDやテストAにおいては、使用する試薬がキュベット21内部に残存した汚れと反応しやすいため、他のテスト項目と比較して、使用可能であるキュベット残り有効期間が36時間以上あるいは48時間以上と長く設定されている。制御部31は、図7に例示する許容期間情報D2を参照し、リーダライタ13aによって読み取られた読取情報のキュベットブランク実行年月日と参照した許容期間情報D2とを比較することによってこの判断対象のキュベット21のキュベットブランク残り有効期間が所定の許容期間以上か否かを判断する。
【0065】
制御部31は、この判断対象のキュベット21のキュベットブランク残り有効期間が所定の許容期間以上でないと判断した場合(ステップS60:No)、すなわち、この判断対象のキュベット21のキュベットブランク残り有効期間が所定の許容期間を下回っている場合、この判断対象のキュベット21は受付されたテスト項目には使用できない。このため、制御部31は、この判断対象のキュベット21は選択せず、リーダライタ13aによって読取処理が行なわれた次のキュベット21を受付されたテストに使用するか否かの判断対象として設定し(ステップS62)、上述したステップS58以下の各処理を再度行なう。たとえば、図4のリーダライタ13aの読取情報Drの行R6に示すポジション6のキュベットブランク残り有効期間が36時間であるキュベット21が判断対象であった場合であって、受付されたテスト項目がDであった場合には、テスト項目Dに設定されているキュベットブランク残り有効期間の許容期間48時間を下回っているため、制御部31は、このポジション6のキュベット21はテスト項目D用に使用できないと判断する。
【0066】
一方、制御部31は、この判断対象のキュベット21のキュベットブランク残り有効期間が所定の許容期間以上であると判断した場合(ステップS60:Yes)、この判断対象のキュベット21に対して行なわれた前回テスト項目と、本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせであるか否かを判断する(ステップS64)。この使用可能組み合わせは、テスト項目ごとにそれぞれ予め設定されている。たとえば、図8の組み合わせ情報D3に示すように、キュベット21における前回テスト項目と、次に実施される次回テスト項目との組み合わせごとに、各組み合わせのキュベット21が使用できるか否かの対応づけが予め設定されており、記憶部34に記憶されている。制御部31は、図8に例示する組み合わせ情報D3を参照し、リーダライタ13aによって読み取られた読取情報と参照した組み合わせ情報D3とを比較することによって、判断対象であるキュベット21に対して前回行なわれたテスト項目と本受付のテスト項目とが、使用可能である組み合わせか否かを判断する。
【0067】
制御部31は、この判断対象のキュベット21に対して行なわれた前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせでないと判断した場合(ステップS64:No)、この判断対象のキュベット21は受付されたテスト項目には使用できない。このため、制御部31は、この判断対象のキュベット21は選択せず、リーダライタ13aによって読取処理が行なわれた次のキュベット21を受付されたテストに使用するか否かの判断対象として設定し(ステップS62)、上述したステップS58以下の各処理を再度行なう。たとえば、図4のリーダライタ13aの読取情報Drの行R7に示すポジション7のキュベット21が判断対象であった場合であって、受付されたテスト項目がDであった場合には、このキュベットの前回テスト項目がAとなり、次回テスト項目がDの組み合わせとなることから、図8の組み合わせ情報D3に示すように、使用可能組み合わせとはならない。この場合には、制御部31は、このポジション7のキュベット21は、テスト項目Dに対するキュベット21としては使用できないと判断する。
【0068】
これに対し、制御部31は、この判断対象のキュベット21に対して行なわれた前回テスト項目と、本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせであると判断した場合(ステップS64:Yes)、この判断対象のキュベット21を本受付のテスト項目に使用可能であると判断する(ステップS66)。そして、制御部31は、このキュベット21に対して、受付されたテスト項目に応じた所定の分析処理を実行するように各構成部位に指示する(ステップS68)。制御部31は、このキュベット21に対する分析処理が終了した後、記憶部34内のキュベット管理情報D1のうちテスト数の累計と前回テスト項目とを、終了した分析処理内容に対応するように書き替えて更新する(ステップS70)。次いで、制御部31は、リーダライタ13aに対して、分析処理が実行されたキュベット21のRFIDタグ22が記憶するテスト数の累計と前回テスト項目とを、終了した分析処理内容に対応した情報に書き替える書込処理を行ない(ステップS72)、このキュベット21に対する分析処理を終了する。
【0069】
制御部31は、新たに分析処理の受付があったか否かを判断する(ステップS74)。制御部31は、新たに分析処理の受付があっと判断した場合には(ステップS74:Yes)、ステップS54に戻り、ステップS54以下の各処理を実行する。一方、制御部31は、新たに分析処理の受付はないと判断した場合には(ステップS74:No)、分析処理を終了する。
【0070】
このように、分析装置1においては、使用対象となるキュベット21のRFIDタグ22を読み込み、キュベットブランク処理実行日時および前回実行されたテスト項目および受け付けられたテスト項目に応じて、使用するキュベット21を選択することによって、キュベット21内部に残存した成分による次回テスト項目の反応への影響を適切に回避することができる。
【0071】
なお、図6のステップS62に示すように、キュベットブランク残り有効期間が許容期間を下回ると判断されたキュベット21、および、前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせでないと判断されたキュベット21の使用を回避した場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。たとえば、制御部31は、キュベットブランク残り有効期間が許容期間を下回ると判断されたキュベット21、および、前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせでないと判断されたキュベット21に対しては、キュベット洗浄専用の洗浄液を使用した洗浄処理を行なってから、受付されたテスト項目の分析処理を実行するように制御してもよい。
【0072】
この場合、図9に示すように、分析装置1は、図6のステップS52〜ステップS60およびステップS64と同様に、分析処理受付判断処理(ステップS152)、キュベット読取処理(ステップS154)、読取情報一時記憶処理(ステップS156)、使用可否判断対象のキュベット情報取得処理(ステップS158)、キュベットブランク残り有効期間判断処理(ステップS160)、および、前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせ判断処理(ステップS164)を行なう。そして、制御部31は、使用可否判断対象のキュベットに対して、キュベットブランク残り有効期間が許容期間を下回ると判断した場合(ステップS160:No)、または、前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせでないと判断した場合には(ステップS164:No)、このキュベット21に対する専用の洗浄液を使用した洗浄処理を各構成部位に行なわせる(ステップS162)。
【0073】
制御部31は、キュベットブランク残り有効期間が許容期間以上であると判断し(ステップS160:Yes)、さらに前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせであると判断した場合(ステップS164:Yes)と同様に、洗浄処理(ステップS162)を実行した後にも、本受付のテスト項目に使用可能と判断して(ステップS166)、図6に示すステップS68と同様に、分析処理実行指示処理(ステップS168)を行なう。そして、制御部31は、図6に示すステップS70〜ステップS74と同様に、キュベット管理情報更新処理(ステップS170)、キュベット書込処理(ステップS172)および新たな分析処理受付判断処理(ステップS174)を行なう。
【0074】
このように、分析装置1においては、キュベット別途ブランク残り有効期間が許容期間を下回ると判断されたキュベット21、および、前回テスト項目と本受付のテスト項目との組み合わせが使用可能組み合わせでないと判断されたキュベット21を専用の洗浄液で洗浄し、キュベット21内部に残存した成分を確実に除去することによって、キュベット内部に残存した成分の次回テスト項目の反応への影響を適切に回避することができる。
【0075】
また、図6のステップS60および図9のステップS160においては、使用可否判断対象のキュベット21に対して、キュベットブランク残り有効期間が許容期間以上であるか否かを判断した場合を例に説明したが、この判断処理は必ずしも必要ではなく、この判断処理を行なわず、そのまま図6のステップS64または図9のステップS164に示すテスト項目の組み合わせに関する判断処理を行なってもよい。
【0076】
また、分析装置1は、液体と接触しても変質せず読取可能なRFIDタグを記憶媒体として用いることによって、液体を収容し液体と接触するキュベット21の管理を適正に行なうことができる。
【0077】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記憶媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置1の処理動作を実現する。ここで、所定の記憶媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」等、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記憶媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワークを介して接続した他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置1の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すキュベットおよびリーダライタを説明する図である。
【図3】図1に示す分析装置におけるキュベットブランク値の管理処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すリーダライタが読み取った読取情報を例示した図である。
【図5】図1に示す記憶部が記憶するキュベット管理情報を例示した図である。
【図6】図1に示す分析装置のキュベット選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す記憶部が記憶するキュベットブランク残り有効期間の許容期間に関する許容期間情報を例示した図である。
【図8】図1に示す記憶部が記憶する組み合わせ情報を例示した図である。
【図9】図1に示す分析装置のキュベット選択処理の他の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a アーム
13 反応テーブル
13a リーダライタ
13b キュベットホルダー
14 試薬庫
15 試薬容器
16 試薬分注機構
16a アーム
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 キュベット(反応容器)
22 RFIDタグ
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部
36 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応容器に分注して前記検体を分析する分析装置において、
前記反応容器に付され、該反応容器を識別する識別情報とともに該反応容器のブランク値に関するブランク情報を記憶する記憶媒体と、
前記反応容器に付された記憶媒体から前記識別情報とブランク情報とを読み取る読取手段と、
当該分析装置において使用される各反応容器の位置情報と、各識別情報およびブランク情報とを対応づけた反応容器管理情報を記憶する記憶手段と、
前記読取手段によって読み取られた前記記憶媒体の情報と前記記憶手段によって記憶される反応容器管理情報とをもとに前記反応容器に対するブランク値測定処理の実行を制御する制御手段と、
前記制御手段の制御によって前記ブランク値測定処理が実行された反応容器の記憶媒体に、該実行されたブランク値測定処理にもとづく前記ブランク情報を書き込む書込手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ブランク値測定処理を実行した場合、前記記憶手段の反応容器管理情報のうち該ブランク値測定処理を実行した反応容器に対応するブランク情報を、該実行されたブランク値測定処理にもとづく前記ブランク情報に書き替えることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記読取手段によって読み取られた記憶媒体における識別情報と、前記記憶手段に記憶される反応容器管理情報のうち前記読取手段によって記憶媒体が読み取られた反応容器の位置に対応した識別情報とが一致するか否かを判断し、一致しないと判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器は新たに当該分析装置内に設置された反応容器であると判断して該反応容器に対して前記ブランク値測定処理を実行させることを特徴とする請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記書込手段は、前記ブランク情報としてブランク値とともに該ブランク値を測定したブランク値測定処理実行日時を前記記憶媒体に書き込み、
前記読取手段は、前記記憶媒体に記憶された前記ブランク値と前記ブランク値実行日時とを読み取り、
前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記ブランク値測定処理実行日時からの経過時間が予め設定されたブランク値有効期間を超えているか否かを判断し、前記経過時間が前記ブランク値有効期間を超えていると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器に対して前記ブランク値測定処理を実行させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項5】
前記書込手段は、前記記憶媒体に対して、前記ブランク情報とともに該記憶媒体が付された前記反応容器に対して行なわれたメンテナンス処理実行日時を書き込み、
前記読取手段は、前記記憶媒体に記憶された前記ブランク値とともに前記メンテナンス処理実行日時を読み取り、
前記制御手段は、前記読取手段が読み取った前記メンテナンス処理実行日時からの経過時間が予め設定されたメンテナンス有効期間を超えているか否かを判断し、前記経過時間が前記メンテナンス有効期間を超えていると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器に対して前記ブランク値測定処理とともに前記メンテナンス処理を実行させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、分析項目ごとに、前記反応容器に実行された前回分析項目に応じて前記反応容器が使用可能であるか否かを対応づけた分析項目組み合わせを記憶し、
前記書込み手段は、前記分析項目が前記反応容器に対して実行されるごとに前記反応容器に対して実行された分析項目を前回分析項目として該反応容器に付された記憶媒体に書込み、
前記読取手段は、次の分析項目が前記反応容器に実行される前に、該反応容器の前記記憶媒体に記憶された前回分析項目を読み取り、
前記制御手段は、次に実行される分析項目と前記読取手段によって読み取られた前回分析項目との組み合わせが前記記憶手段に記憶された分析項目組み合わせのうち前記反応容器が使用可能である組み合わせに対応すると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器の使用を許可し、前記次に実行される分析項目と読取手段によって読み取られた前回分析項目との組み合わせが記憶手段に記憶された分析項目組み合わせのうち前記反応容器が使用不可である組み合わせに対応すると判断した場合には前記読取手段によって読み取られた記憶媒体が付された反応容器の使用を許可しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の分析装置。
【請求項7】
前記記憶手段に記憶された反応容器管理情報を出力する出力手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−180606(P2009−180606A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19661(P2008−19661)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】