説明

分枝鎖アミノ酸生成能が改善した変異微生物及びそれを使用した分枝鎖アミノ酸の製造方法

本発明は、分枝鎖アミノ酸生成能が改善した変異微生物及びそれを使用した分枝鎖アミノ酸の製造方法に関するもので、より具体的には、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を弱化または欠失させて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子をその発現が増加するように変異させて収得したL−バリン生成能が改善した変異微生物及びそれを使用したL−バリンの製造方法に関するものである。部位特異的突然変異方法と代謝流れ操作によって収得された本発明による変異微生物は、分枝鎖アミノ酸、特に、L−バリンを高効率で生成することができて、L−バリンの産業的生成微生物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分枝鎖アミノ酸生成能が改善した変異微生物及びそれを使用した分枝鎖アミノ酸の製造方法に関するもので、より詳細には、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を弱化または欠失させて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子をその発現が増加するように変異させて収得したL−バリン生成能が改善した変異微生物、及びそれを使用したL−バリンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在は、大部分のアミノ酸が無作為突然変異化技法で製造された微生物によって生成されている。これら菌株は、正確な生理代謝特性の把握が難しくて、追加菌株改良が複雑で難しいという短所を有している。それで、特定遺伝子のみを欠失または増幅して必要なアミノ酸を生成するようにするラショナルデザイン技法が求められている。
【0003】
一方、分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acid)というのは、9種の必須アミノ酸の中でバリン、ロイシン及びイソロイシンの3種を指称し、大部分のアミノ酸が肝臓で代謝されるのに比べて、分枝鎖アミノ酸は主に筋肉で代謝されて活動時にエネルギー源として使用されるアミノ酸をいう。
【0004】
現在、分枝鎖アミノ酸のマーケットシェアは全体アミノ酸市場の約1%に過ぎないが、最近分枝鎖アミノ酸が活動時に筋肉の維持及び増量に重要な役割をすることが知られるようになり、非常に早い速度で増加している。特に、L−バリンの場合、高い還元力を有していて、乳牛のミルク生産能力を高めることが知られるようになり、飼料成分として有用に使用されている。現在まで大部分のL−バリンは、ブレビバックテリウム、コリネバックテリウムまたはセラチア属などの菌株から生成されてきたが、最近培養が容易で、分子生物学的技術が発達した大腸菌での生成が報告されている。特に、日本味の素社では無作為突然変異化技法でL−バリンに耐性を有する菌株を選別して、23.4g/lのL−バリン生成を報告した(米国特許6,737,255号)。
【0005】
また、ラショナルデザイン(rational design)方法によるL−バリン生成微生物製造が最近、コリネバクテリウム・グルタミカムで報告されたが、二つの遺伝子(ilvA,panB)を欠失させて、L−バリン生合成に関与するオペロン(ilvBNC)を増幅した後、ilvN遺伝子に存在するフィードバック阻害を除去して、130mMのL−バリンを生成したという内容が発表された(Veronika等,Appl.Environ.Microbiol.,2005年,第71巻,207頁)。しかし、未だに大腸菌を使用してラショナルデザイン方法でL−バリンを生成した例は報告されたことがない。
【0006】
多様なラショナルデザイン方法の中でインシリコシミュレーション方法、特に代謝回路を通じた分析及び予測技術は、最近、急速に増加するゲノム情報とともにその可能性を示している。特に、各微生物の代謝回路モデルが数学的モデル及び最適化技術などと結合して、遺伝子の除去または追加後に起きる代謝回路の反応を予測することが可能になってきている。また、代謝回路を使用した代謝流れ分析技法は、動的情報を必要としないにもかかわらず細胞の理想的な代謝流れを示し、実際的に細胞の行動を正確に描写して予測することができることが知られている。代謝流れ分析は、生化学反応式の質量数値と細胞造成情報のみを使用して、細胞が到達可能な理想的な代謝流れ空間を求めて、特定の目的関数を最適化方法を通じて最大化したり最小化したりすることを目的とする(細胞成長速度最大化または特定攝動による代謝調節の最小化など)。その他に代謝流れ分析は、一般的に菌株改良を通じて所望する代謝産物の特定遺伝子の致死性を確認するために使用することができ、これを使用して菌株内部の代謝回路特性を把握することができる。また、遺伝子の除去または追加によって起きる代謝回路の流れ変化などを予測するために、代謝流れ分析方法を応用した多様な研究が報告されている。
【0007】
したがって、当業界では既存の無作為突然変異化技法とは異なり、特定遺伝子の欠失による代謝回路再構成及び必要遺伝子の増幅を通じたラショナルデザイン方法によって分枝鎖アミノ酸の高生成能を有する微生物、特に、L−バリン高生成能を有する大腸菌の開発が切実に求められている。
【0008】
それで、本発明者等は、ラショナルデザイン方法によって分枝鎖アミノ酸、特に、L−バリン高生成能を有する微生物を開発するために鋭意努力した結果、L−バリン生合成オペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターを強力プロモーターに置換して、前記置換されたプロモーターを含むオペロンを組換えベクターに挿入した後、競争経路に関与する遺伝子であるilvA、leuA及びpanBなどが欠失した大腸菌に導入して、高効率のL−バリン生成能が画期的に増加することを確認して本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結局、本発明の主な目的は、L−バリン高生成能変異微生物及びその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記変異微生物を使用したL−バリンの製造方法を提供することである。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は微生物で、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を弱化または欠失させて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増加するように変異させることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記方法で製作され、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が弱化または欠失されて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増加するように変異されたことを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物を提供する。
【0013】
本発明は、また、(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が増幅または導入されていることを特徴とするL−バリン高生成能を有する変異微生物を提供する。
【0014】
本発明は、また、(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)aceF及びpfkA遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とするL−バリン高生成能を有する変異微生物を提供する。
【0015】
本発明は、また、(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)aceF、pfkA及びmdh遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とするL−バリン高生成能を有する変異微生物を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記L−バリン生成高生成能を有する変異微生物を培養した後、前記微生物の培養液からL−バリンを回収することを特徴とする、L−バリンの製造方法を提供する。
【0017】
本発明の他の特徴及び具現例は、次の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲から、さらに明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の詳細な説明及び具体的な具現例
一観点で、本発明は微生物で、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を弱化または欠失させて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増加するように変異させることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法に関するものである。
【0019】
他の観点で、本発明はL−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が弱化または欠失されて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増加するように変異されたことを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物に関するものである。
【0020】
本発明において、前記微生物はバクテリア、酵母及びカビからなる群から選択されることを特徴とし、好ましくは前記バクテリアは、コリネバックテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバックテリウム(Brevibacterium)属及び大腸菌からなる群から選択されることを特徴として、さらに好ましくは大腸菌であることを特徴とする。
【0021】
本発明において、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子は、ilvA(スレオニンデヒドラターゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴とし、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子はleuA(2−イソプロピルマレイン酸シンターゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴として、D−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子はpanB(3−メチル−2−オキソブタン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴とする。
【0022】
本発明において、前記L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子をその発現が増加するように変異させるために、次の方法を使用することができる:(a)lacI(lacオペロンリプレッサーを暗号化する遺伝子)遺伝子の欠失;(b)ilvH(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムIII)遺伝子のフィードバック阻害(feedback inhibition)除去;(c)ilvGMEDA(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムI)及びilvBN(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムII)オペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターを強力プロモーターに置換;及び(d)強力プロモーターを含む発現ベクターの導入からなる群から選択されることを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記強力プロモーターは、trcプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター及びtrpプロモーターからなる群から選択されることを特徴として、前記強力プロモーターを含む発現ベクターは、ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子を含むベクターであることを特徴とし、前記発現ベクターは、pKBRilvBNCEDベクターであることを特徴とする。
【0024】
本発明において、aceE、aceF、lpdA、pfkA、pfkB、tpiA、sdhA、sdhB、sdhC、sdhD、fumA、fumB、fumC、eptB、gpmA、gpmB、ptsG、mdh、ppc、pgi、glgC、sucA、sucB、ribA、folE及びackAからなる群から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とし、好ましくは、aceF及びpfkA遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とし、さらに好ましくは、aceF、pfkA及びmdh遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とする。
【0025】
本発明において、分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子を追加で増幅または導入させることを特徴とし、前記分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子は、配列番号43及び配列番号44のアミノ酸配列を暗号化する塩基配列からなる群から選択されるいずれか一つ以上または、配列番号45の塩基配列を有することを特徴とする。
【0026】
本発明において、グローバルレギュレーターであるlrp遺伝子を追加で増幅または導入させることを特徴とし、前記lrp遺伝子は配列番号46の塩基配列を有することを特徴とする。
【0027】
また他の観点で、本発明は(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が増幅または導入されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物に関するものである。
【0028】
本発明において、前記L−バリン高生成能を有する変異微生物は、配列番号46のlrp遺伝子が追加で増幅または導入されていることを特徴とする。
【0029】
また他の観点で、本発明は(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが 強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)aceF及びpfkA遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物に関するものである。
【0030】
本発明において、前記L−バリン高生成能を有する変異微生物は、配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が追加で増幅または導入されていることを特徴とし、配列番号46のlrp遺伝子が追加で増幅または導入されていることを特徴とする。
【0031】
また他の観点で、本発明は(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失;(b)lacI遺伝子が欠失;(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去;(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換;(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入;及び(f)aceF、pfkA及びmdh遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物に関するものである。
【0032】
本発明において、前記L−バリン高生成能を有する変異微生物は、配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が追加で増幅または導入されていることを特徴とし、配列番号46のlrp遺伝子が追加で増幅または導入されていることを特徴とする。
【0033】
また他の観点で、本発明は前記L−バリン生成高生成能を有する変異微生物を培養した後、前記微生物の培養液からL−バリンを回収することを特徴とするL−バリンの製造方法に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明では、L−バリン高生成能を有する変異微生物(Val)を製造するために、図1に示したように、大腸菌野生菌株W3110からL−バリン生合成に関与する酵素の活性を増加させて、L−イソロイシン生合成に関与する酵素、L−ロイシン生合成に関与する酵素及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素の活性を弱化または欠失させた。すなわち、L−バリン生合成オペロンのネーティブプロモーターを強力プロモーターに置換して、L−バリン生合成経路と競争関係にある経路に関与する遺伝子であるilvA、leuA及びpanBなどを欠失させて製作する。
【0035】
また、前記製作された変異微生物のL−バリン生成能を高めるために、追加で欠失対象遺伝子を選定して製作したL−バリン高生成能を有する変異微生物(VAMF)は、図1に現示したように、大腸菌変異菌株ValからaceF、mdh及びpfkAを欠失させて製作する。
【0036】
現在、大部分のアミノ酸生成微生物が無作為突然変異、または生合成経路の末端酵素の増幅等で製造されている。このような方法はそれぞれ、生成微生物に該当のアミノ酸の耐性を付与して、生合成酵素の濃度を高めることでアミノ酸生成効率を高める効果を有する。しかし、アミノ酸生合成に必要な前駆体の確保(precursor availability)に限界があるので、一定水準以上の生成能確保が不可能である。そのため、本発明では、L−バリンの前駆体確保を容易にするために細胞内代謝流れを調節することで高生成能のL−バリン生成微生物を製造することができた。細胞内代謝流れを最適化するために、インシリコシミュレーション方法を使用してピルビン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(aceF)、マレイン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(mdh)、ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子(pfkA)などを欠失対象遺伝子に選定した。図2は、前記のように製作されたaceF、mdh及びpfkA遺伝子を欠失させた変異微生物VAMFの代謝回路を示したものである。
【0037】
また、アミノ酸のエクスポーターは、該当のアミノ酸の生産に必須であり、特に、L−バリンの場合、大腸菌がその他菌株に比較してチャージ率が非常に低いので、生産能力を高めるためにはエクスポーターの増幅が要求される。しかし、現在まで大腸菌のL−バリンエクスポーターが明らかにされていないので、L−バリン生産効率向上に限界があった。
【0038】
ニコール・ケンネルケネクト(Nicole Kennerknecht)などは、コリネバクテリウム・グルタミカムでL−バリンを含めた分枝鎖アミノ酸のエクスポーターの役割をするタンパク質(BrnFE)を報告した(Nicole等,J.Bacteriol.,2002年,第184巻,3947頁,米国6,841,360号B2)。また、エカテリナ・アレキサンドロブナ・タボリナ(Ekaterina Alexsandrovna Tabolina)などは、前記同上タンパク質が大腸菌でもL−バリンのエクスポーターの役割をすることを報告した(米国特許2005/0239175)。
【0039】
本発明者等は、前記L−バリンエクスポーターを本発明で製造したL−バリン生成変異菌株で確認するために、YgaZHタンパク質を暗号化するygaZHオペロンをクローニングした。すなわち、大腸菌の染色体DNAを鋳型にして、大腸菌遺伝体配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用した重合酵素連鎖反応(PCR)で、ygaZHオペロンを増幅させた。前記増幅されたygaZH遺伝子をNcoI/KpnIで切断して、pTrc99A発現ベクターにクローニングしてpTrc99AygaZHを製作し、前記pTrc99AygaZHベクターをBspHI/EcoRVで切断して収得した遺伝子切片を、同一酵素(BspHI/EcoRV)で切断したpACYC184に挿入して、ygaZH遺伝子を過発現させるための発現ベクターであるpTrc184ygaZHを製作して、これを前記L−バリン高生成能を有する変異微生物(Val+pKBRilvBNCED)に導入した場合、エカテリナ・アレキサンドロブナ・タボリナ(Ekaterina Alexsandrovna Tabolina)などが提案した水準より、L−バリンの生成能が飛び抜けて増加することを確認した。
【0040】
また、グローバルレギュレーターであるLrpが、L−バリン生合成の重要なアイソエンザイムの一つであるアセトヒドロキシ酸シンターゼIII酵素をコードするilvIHオペロンの発現を促進するという事実(Platko等,J.Bacteriol.,1990年,第172巻,4563〜4570頁)とL−バリンの吸収に関与するトランスポーターをコードするlivJ遺伝子の発現を抑制するという事実(Haney等,J.Bacteriol.,1992年,第174巻,108−115頁)に基づいて本発明者等は、lrp遺伝子の増幅がL−バリンの生成能を増加させると予想して、lrp遺伝子をクローニングした。すなわち、大腸菌の染色体DNAを鋳型にして、大腸菌遺伝体配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用した重合酵素連鎖反応(PCR)でlrp遺伝子を増幅させた。前記増幅されたlrp遺伝子をNcoI/KpnIで切断して、pTrc99A発現ベクターにクローニングしてpTrc99Alrpを製作し、前記pTrc99AlrpベクターをBspHI/EcoRVで切断して収得した遺伝子切片を、同一酵素(BspHI/EcoRV)で切断したpACYC184に挿入してlrp遺伝子を過発現させるための発現ベクターであるpTrc184lrpを製作して、これを前記L−バリン高生成能を有する変異微生物(Val+pKBRilvBNCED)に導入した場合、L−バリンの生成能が増加することを確認した。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではないということは、当業界で通常の知識を有した者において自明であろう。
【0042】
下記実施例では、大腸菌W3110由来のL−バリン生成微生物に欠失対象遺伝子を導入して、分枝鎖アミノ酸中、L−バリンを高濃度で製造する方法に対して記載したが、他の大腸菌及び微生物を使用して同一欠失対象遺伝子を導入して、それを使用してL−バリンを製造することと、L−バリンではないL−ロイシン及びL−イソロイシンを製造することも同様に当業界で通常の知識を有した者において自明であろう。
【0043】
また、下記実施例では、大腸菌W3110から分離及び精製されたygaZHを使用して、分枝鎖アミノ酸中、L−バリンを高濃度で製造する方法及びygaZHを含むベクター製造方法に対して記載したが、他の大腸菌を使用してL−バリンエクスポーターを分離及び精製して、それを使用してL−バリンを製造することと、L−バリンではないL−ロイシン及びL−イソロイシンを製造することも同様に当業界で通常の知識を有した者において自明であろう。
【0044】
また、下記実施例では、大腸菌来由L−バリンエクスポーター遺伝子を含む組換えベクターを、大腸菌W3110を基盤にして製造されたL−バリン生成微生物(WLGBHABA+pKBRilvBNCED)に導入して形質転換微生物を製造する方法、及びL−バリンを収得する方法に対して記載したが、本発明の組換えベクターをバクテリア、酵母及びカビからなる群から選択されたL−バリン生成能を有する宿主細胞に導入して製造される形質転換された微生物、及びそれらからL−バリンを収得することも当業界で通常の知識を有した者において自明であろう。
【0045】
また、下記実施例では特定培地と培養方法のみを例示したが、文献に報告されたように(Lee等,Bioprocess Biosyst.Eng.,2003年,第26巻,63頁;Lee等,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2002年,第58巻,663頁;Lee等,Biotechnol.Lett.,2003年,第25巻,111頁;Lee等,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2000年,第54巻,23頁;Lee等,Biotechnol.Bioeng.,2001年,第72巻,41頁)、乳清(whey)、CSL(corn steep liguor)などの糖化液と異なる培地を使用した場合や、硫加培養(fed−batch culture)、連続培養など多様な方法を使用することも当業界で通常の知識を有したる者において自明であろう。
実施例1:L−バリン高生成変異微生物の製作及びL−バリンの生成能測定
1−1:L−バリン高生成微生物の製作
1−1−1:pSacHR06の製作
染色体DNAの特定塩基または塩基の置換のためにバチルススブチリス来由のsacB相同組換え技法(Wohlleben等,J.Bacteriol.,1992年,第174巻,5462頁)を使用する目的でpSacHR06ベクターを製作した(図3)。図3は、pSacHR06ベクターを製作する過程を示したものである。
【0046】
まず、pUC19(New England Biolab)ベクターのアンピシリンに対する耐性特性をカナマイシンに対する耐性特性に置換するために、pUC19ベクターをNdeI及びAhdIで切断して得た1.5kb切片を、pACYC177ベクター(New England Biolabs)をStuIで切断して得た1.3kb切片とDNA縮合反応を遂行してpUC19KMベクターを得た。
【0047】
次に、前記pUC19KMベクターをPvuIIで切断して得た2.5kb切片とpBluescriptIIKS(+)ベクターをPvuIIで切断して得た400bp切片を縮合反応して、pUC19KKSベクターを得た。以後、前記ベクターにDNA複製起点の除去を容易いに可能にするために、配列番号1及び2のプライマーとpUC19ベクター鋳型を使用してPCRを遂行した。その結果、同一な切断酵素の認識部位を両端末にそれぞれ有していてDNA複製起点を有するDNA切片を獲得した。前記切片をSalI及びDraIIIで切断して、pUC19KKSベクターをSalI及びDraIIIで切断して得た1.5kb切片とDNA縮合反応してpUC19Kベクターを得た。前記pUC19Kベクターにバチルススブチリス(Bacillus subtilis)のsacB遺伝子を導入するためにバチルススブチリスのゲノミックDNA鋳型と配列番号3及び4のプライマーを使用してPCRを遂行して、sacB遺伝子を有するDNA切片を合成し、前記合成されたDNA切片とpUC19KベクターすべてをXbaI及びSpeI酵素で切断して縮合し、sacB遺伝子を有する新しいベクターを製作してそれをpSacHR06と命名した。
【0048】
pSacHR06ベクターは、バチルススブチリス来由のsacB遺伝子を有して制限酵素を使用して容易にDNA複製起点の除去と再縮合反応を遂行することができるので、sacBポジチブセレクションに使用可能である。
【0049】
[配列番号1]pucoriup
5'-gccgtcgacgctagcgcatgcacgcgtgtgcacccatgggacgtcctcactgactcgctgcgctc-3'
[配列番号2]pucorido
5'-ggctcacaacgtggctagcgacgtcgtgcacccatgggttccactgagcgtcagacc-3'
[配列番号3]sacBf
5'-actctctagacgcgggtttgttactgataa-3'
[配列番号4]sacBr
5'-gctagatatcaggatatcggcattttcttt-3'
1−1−2:lacI遺伝子の欠失
L−バリン生成微生物である大腸菌W3110(ATTC 39936)で配列番号5及び6のプライマーを使用したワンステップインアクティベーション方法(Warner等,PNAS,2000年,第6;97(12)巻,6640−6645頁)を使用して、lacオペロンのリプレッサーを暗号化する遺伝子で、ラクトース分解を担当するlacオペロンの転写を抑制する機能を有するlacI遺伝子を欠失させて、抗生剤耐性を除去した。
【0050】
[配列番号5] lacI_1stup:
5'-gtgaaaccagtaacgttatacgatgtcgcagagtatgccggtgtctcttagattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号6] lacI_1stdo:
5'-tcactgcccgctttccagtcgggaaacctgtcgtgccagctgcattaatgcacttaacggctgacatggg-3'
1−1−3:ilvHのフィードバック阻害の除去
味の素社が出願した特許(米国6,737,255 B2)を参考にして、アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムIIIをコードする遺伝子であるilvHの41番目塩基(G)と50番目塩基(C)をそれぞれAとTで置換し、大腸菌W3110(ATTC 39936)の染色体DNAは、公知された方法で分離及び精製した(Sambrook,等,Molecular cloning,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989年)。
【0051】
すなわち、配列番号7及び8と9及び10のプライマーと、大腸菌W3110ゲノミックDNA鋳型を使用してそれぞれPCRを遂行した後、収得された二つのPCR切片を同一濃度で混ぜて鋳型にして、配列番号7及び10をプライマーに使用してオーバーラッピングPCRを遂行した。前記のような方法で得た1280bpのPCR切片をPstI及びSalI酵素で切断して、やはり、PstI及びSalI酵素で切断したsacB相同組換え用ベクターであるpSacHR06に挿入した後、シーケンシングして、ilvHの41番目塩基(G)と50番目塩基(C)がそれぞれAとTに置換されたことを確認した。
【0052】
前記収得したベクターをNheI酵素で切断して、複製起点を欠失させた後、セルフライゲーションさせて、前記1−1−2で製作したlacI遺伝子が欠失された大腸菌W3110コンピテント細胞(electroporation−competent cell)にエレクトロポレーションした。次に、sacBポジチブセレクション(Wohlleben等,J.Bacteriol.,1992年,第174巻,5462頁)方法によってフィードバック阻害が除去された菌株を収得した。
【0053】
[配列番号7] ilvH1:5'-gactctgcagggtgatcgagactctttggcggttgac-3'
[配列番号8] ilvH2:5'-ggaaaaaaggccaatcacgcggaataacgcgtctgattcattttcgagtaag-3'
[配列番号9] ilvH3:5'-cttactcgaaaatgaatcagacgcgttattccgcgtgattggccttttttcc-3'
[配列番号10] ilvH4:5'-gctccgtcgaccagtttcacaattgccccttgcgtaaa-3'
1−1−4:ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータのtacプロモーターへの置換
1−1−3で製作されたlacI遺伝子とilvHのフィードバック阻害が除去された大腸菌W3110で、アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムI及びIIの構成的な発現を誘導するために、アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムI及びIIをそれぞれ暗号化するilvBN及びilvGMEDAオペロンの転写調節機序に関与するアッテネータを、強力なプロモーターであるtacプロモーターに置換した。
【0054】
まず、ilvGMEDAオペロンアッテネータの置換のために、配列番号11及び12と13及び14を、それぞれ一対のプライマーと大腸菌W3110ゲノミックDNA鋳型を使用してPCRを遂行した後、PCR切片、ilvGatt1及びilvGatt2をそれぞれ収得した。前記収得された二つのPCR切片を、それぞれSalI/BamHI及びEcoRI/PstI酵素で切断してpKK223−3ベクター(Pharmacia Biotech)の該当の酵素切断部位にクローニングした後、シーケンシングで塩基配列を確認した後、SalI及びPstI酵素で切断した部位を前記pSacHR06ベクターの該当の酵素切断部位にクローニングして、前記フィードバック阻害除去と同一な方法で、アッテネータを含むネーティブプロモーターをtacプロモーターに置換した。
【0055】
ilvBNオペロンのアッテネータ除去のために、配列番号15及び16と17及び18をそれぞれ一対のプライマーに使用して、前記ilvGMEDAアッテネータ除去と同一な方法でPCR及びクローニングした後、前記でilvGMEDAアッテネータが除去された大腸菌W3110コンピテント細胞にエレクトロポレーションした。その結果、ilvBNアッテネータを含むネーティブプロモーターをtacプロモーターに置換することができた。
【0056】
[配列番号11] ilvGatt1f:5'-gactgtcgacctaacttattggctgtaagctgttctgaggcc-3'
[配列番号12] ilvGatt1r:5'-gctcggatccgaatgttgttcccttcctcgtagttcatcc-3'
[配列番号13] ilvGatt2f:5'-gactgaattcatgaatggcgcacagtgggtggtacatgcg-3'
[配列番号14] ilvGatt2r:5'-gctcctgcagtcaccgctggctaactggatatcttttggg-3'
[配列番号15] ilvBatt1f:5'-gactcgtcgacagagatggtagggcggataa-3'
[配列番号16] ilvBatt1r:5'-gctcggatcccacactgtattatgtcaaca-3'
[配列番号17] ilvBatt2f:5'-gactgaattcatggcaagttcgggcacaac-3'
[配列番号18] ilvBatt2r:5'-gctcactgcagtgcgtcacgaatgctttctt-3'
1−1−5:ilvA、panB及びleuA遺伝子の欠失
1−1−4で収得されたlacI遺伝子とilvHのフィードバック阻害除去されてilvGMEDA及びilvBNオペロンアッテネータのtacプロモーターへの置換されたW3110で、ilvA、panB及びleuA遺伝子の欠失させるために、配列番号19ないし24プライマーを使用して前記1−1−2で言及したワンステップインアクティベーション方法(Warner等,PNAS,2000年,第6;97(12)巻,6640頁)によってilvA(イソロイシン生合成経路の一番目酵素であるスレオニンデヒドラターゼを暗号化する遺伝子)、panB(パントテン酸生合成に必要な酵素の中で3−メチル−2−オキソブタン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼを暗号化する遺伝子)及びleuA(ロイシン生合成に必要な酵素の中で2−イソプロピルマレイン酸シンターゼを暗号化する遺伝子)などの遺伝子を欠失させた。
【0057】
すなわち、1−1−4で製作されたlacI遺伝子が除去されて、ilvHのフィードバック阻害が除去され、ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含んだ本来のプロモーターが、強力な転写活性を有するtacプロモーターに置換された大腸菌W3110コンピテント細胞で前記遺伝子3種の欠失を誘導した。
【0058】
[配列番号19] ilvA1stup:
5'-atggctgactcgcaacccctgtccggtgctccggaaggtgccgaatatttgattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号20] ilvA1stdo:
5'-ctaacccgccaaaaagaacctgaacgccgggttattggtttcgtcgtggccacttaacggctgacatggg-3'
[配列番号21] panB1stup:
5'-atgaaaccgaccaccatctccttactgcagaagtacaaacaggaaaaaaagattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号22] panB1stdo:
5'-ttaatggaaactgtgttcttcgcccggataaacgccggactccacttcagcacttaacggctgacatggg-3'
[配列番号23] leuA1stup:
5'-atgagccagcaagtcattattttcgataccacattgcgcgacggtgaacagattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号24] leuA1stdo:
5'-ttcagaacgtgcaccatggctttggcagatgactcgacaatatcggtagcacttaacggctgacatggg-3'
1−1−6:pKBRilvBNCEDベクターの製作
配列番号25ないし30のプライマーを使用してL−バリン生合成経路に必須な遺伝子、すなわち、ilvB(アセトヒドロキシ酸シンターゼI大サブユニットを暗号化する遺伝子)、ilvN(アセトヒドロキシ酸シンターゼI小サブユニットを暗号化する遺伝子)、ilvC(アセトヒドロキシ酸イソメロレラクターゼを暗号化する遺伝子)、ilvE(分枝鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼを暗号化する遺伝子)及びilvD(ジヒドロキシ酸デヒドラターゼを暗号化する遺伝子)などを順次にpKK223−3発現ベクター(Pharmacia Biotech)にクローニングして、pKKilvBNCEDベクターを収得して、シーケンシングで塩基配列を確認した。前記pKKilvBNCEDベクターをPciI及びSphI酵素で切断した9.0kb切片と、pBR322ベクターをPciI及びSphI酵素で切断した1.9kb切片をライゲーションしてpKBRilvBNCEDベクターを最終的に収得した(図4)。
【0059】
[配列番号25] ilvBNf:5'-actcgaattcatggcaagttcgggcacaacat-3'
[配列番号26] ilvBNr:5'-actcgaattcatggcaagttcgggcacaacat-3'
[配列番号27] ilvCf:5'-agtgctgcagacgaggaatcaccatggctaac-3'
[配列番号28] ilvCrSX:5'-gctcctgcagtctagagctagcgagctcttaacccgc-3'
[配列番号29] ilvEDepfs:5'-actcgagctctttccacgtctgctcaatgaatat-3'
[配列番号30] ilvEDr:5'-tacgtctagattaaccccccagtttcgatttatc-3'
1−1−7:L−バリン生成微生物の製作
前記1−1−1ないし1−1−5の過程を通じてilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターがtacプロモーターに置換されて、ilvHのフィードバック阻害が除去されて、lacI、ilvA、panB及びleuA遺伝子が欠失された大腸菌W3110菌株に、前記1−1−6で製作したpKBRilvBNCEDベクターを導入してL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)を製作した。
1−2:L−バリンの生成能測定
前記1−1で製作されたL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)をアンピシリン(ampicillin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)各50μg/ml及び30μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を5g/lグルコースを含むLB培地30mlに接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース50g 、KHPO4g 、(NHSO・7HO 15g 、MnSO・5 HO 20mg、MgSO・7 HO 2g、CaCO30g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg 、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分を有しKOHでpHを8.0で合わせた培地30mlを含んだ250mlバッフルフラスコに、前記前培養液1mlを接種して、31℃で250rpmで48時間培養した。
【0060】
前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をHPLCで測定した。その結果、表1に示したように、W3110野生菌株では生成されなかったL−バリンが本発明のL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)では、3.73g/lの濃度で生成された。前記の結果から、本発明のアッテネータを含むネーティブプロモーターの強力tacプロモーターへの置換、競争遺伝子欠失が、L−バリンの生成性向上に重要な役割をするということが分かった。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例2:インシリコシミュレーション方法による欠失対象遺伝子選定
前記1−1で製作されたL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)のL−バリン生成能をさらに向上させるために、インシリコシミュレーション方法を使用して、代謝流れをL−バリン生成に合うように最適化するために導入する欠失対象遺伝子を選定した。本実施例のインシリコシミュレーション方法は、本出願人の特許(WO2006/107127)に記載された方法を参考にして各遺伝子の組み合わせ(combination)に対して複合遺伝子変異菌株(multi−gene mutant)に対するシミュレーションを実施して予測されたL−バリン生産速度を比較して一番高い候補遺伝子をスクリーニングした。
2−1:Val菌株に基づいた代謝回路の構築
本発明では、L−バリンを生成するための大腸菌変異微生物の新しい代謝流れ分析システムを構築した。前記システムは、大腸菌の代謝回路を大部分含んでいて、実施例1で製作されたL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)の培地条件を代謝回路上にすべて反映した。前記構築した代謝回路を使用して遺伝子一つまたはそれ以上の組み合わせを作って、そのような候補遺伝子を代謝流れ分析を使用してL−バリンを生成しようとする対象菌株でシミュレーション上に不活性化させた時、比増殖速度と有用物質の形成収率を予測して効率が一番高い遺伝子をスクリーニングした。
2−2:複合遺伝子変異微生物のシミュレーション
前記2−1のように構築された代謝回路を数学的に表現するためにすべての代謝産物、該代謝産物の代謝経路及び前記代謝経路での化学量論マトリックス(stoichiometric matrix)(Sij,j番目反応でi番目代謝産物の時間による化学量論係数)を使用して、代謝流れベクター(ν,j番目代謝反応の代謝流れ)を計算することができ、時間による代謝産物濃度Xの変化はすべての代謝反応の流れの合計で現わすことができる。また、時間によるXの変化量が一定であると仮定すると、すなわち準正常状態仮定下で、時間による代謝産物濃度の変化量は、下の数式1で定義することができる。
【0063】
【化1】

【0064】
(ここで、S・ν:時間によるXの変化量、X:代謝産物の濃度、t:時間)
各遺伝子の組み合わせに対して、複合遺伝子変異微生物に対するシミュレーションを実施しようとすると、多様な組み合わせの突然変異に対するシミュレーションを遂行しなければならない。まず、インシリコ遺伝子ノックアウトシミュレーションを使用して単一遺伝子を欠失する場合、L−バリン生成速度が一番高い遺伝子群を捜し出した(表2)。前記シミュレーションは、http://mbel.kaist.ac.kr/を通じてダウンロードすることができるMetaFluxNetを使用して遂行した(Lee等,Bioinformatics,2003年,第19巻,2144頁)。
【0065】
すなわち、表2に示したように、aceE、aceF、lpdA、pfkA、pfkB、tpiA、sdhA、sdhB、sdhC、sdhD、fumA、fumB、fumC、eptB、gpmA、gpmB、ptsG、mdh、ppc、pgi、glgC、sucA、sucB、ribA、folE及びackAからなる群から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子を欠失させる場合、単一遺伝子を欠失する場合にも実施例1で製作された基準菌株であるL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)に比較してL−バリン生成速度が顕著に高くなることが分かった。
【0066】
本発明者は、前記遺伝子の最適組み合わせを捜し出して、L−バリン生成速度及び生成効率をさらに高めようと、報告されている順次的な(sequential)複合遺伝子シミュレーション方法を使用して(Segre等,PNAS,2002年,第99巻,15112−15117頁)、複合遺伝子変異微生物に対するシミュレーションを実施した。すなわち、単一遺伝子欠失によって予測されたL−バリン生成速度を比較して一番高い候補遺伝子をスクリーニングした(表2)。
【0067】
すなわち、一番目シミュレーション上でスクリーニングされた候補遺伝子をシミュレーション上で不活性化させた状態で、また他の単一遺伝子欠失によって予測されたL−バリン生成速度を比較して一番高い候補遺伝子をスクリーニングして、このように決定された候補遺伝子もシミュレーション上で不活性化させた状態で、次の単一遺伝子欠失によるL−バリン生成速度を比較して、最高のL−バリン収率を示す組み合わせをスクリーニングした(表2及び図5)。
【0068】
図5は、順次処理方式を使用して三番目までの欠失によるL−バリン生成速度と細胞成長速度間の関係を図示したもので、その具体的な値は下の表2に示した。
【0069】
表2に示したように、目的の代謝回路に該当する遺伝子組み合わせを詳しく見た結果、単一遺伝子欠失時にも基本菌株より高い生成速度を示し、aceE及びaceF及びlpdAを欠失させた変異微生物のL−バリン生成速度が一番高いことが分かった。順次的シミュレーションのための遺伝子は、aceE及びaceF及びlpdA遺伝子中で、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの役割をする遺伝子中で酵素活性が一番高い(Lee等,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2004年,第65巻,56−60頁)ことが知られているaceF遺伝子を一番目遺伝子欠失対象に選択した。
【0070】
この中で遺伝子欠失シミュレーションは、aceFを基本にして、他の候補遺伝子を追加で欠失させた時をシミュレーションした。その結果、表2に示したように、aceFとtpiA欠失時に最高のL−バリン生成速度を示した。しかし、tpiA遺伝子を欠失させる場合、表2に示したように、細胞成長速度が大きく減少することが予測されて、二番目にL−バリン生成速度が速いpfkA及びBを候補遺伝子に決定し、その中の6−ホスホフルクトキナーゼ−1の活性中で90%を占めているpfkAを最終二番目欠失対象遺伝子に選択した(Daldal F,J.Mol.Biol.,1983年,第168巻,285−305頁)。
【0071】
【表2】

【0072】
最終的にaceFとpfkAを基本にして三重遺伝子欠失シミュレーション結果、mdh欠失時に最高のL−バリン生成速度を示したので、三番目遺伝子欠失対象にmdhを選択した。一方、追加的な遺伝子欠失シミュレーションでL−バリン生成速度を高める候補群を捜すことはできるが、表2の予測成長速度が遺伝子欠失によって減少したので、追加的な遺伝子欠失シミュレーションは実施しなかった。それで、前記インシリコシミュレーション結果を土台に最終的にaceF及びpfk及びmdhを欠失対象遺伝子に選定した。
実施例3:aceF、pfk及びmdhの追加欠失及びL−バリン生成能測定
3−1:aceF、mdh及びpfkAの追加欠失
前記1−1−7で製作されたL−バリン生成微生物で、前記実施例2で選定された欠失対象遺伝子を欠失させて高性能L−バリン生成微生物(VAMF+pKBRilvBNCED)を製作した。
【0073】
配列番号31ないし36プライマーを使用して実施例1で開示したワンステップインアクティベーション方法(Warner等,PNAS,2000年,第6;97(12)卷,6640頁)によって、aceF(ピルビン酸デヒドロゲナーゼを暗号化する遺伝子)、mdh(マレイン酸デヒドロゲナーゼを暗号化する遺伝子)及びpfkA(ホスホフルクトキナーゼを暗号化する遺伝子)などの遺伝子を欠失させた。すなわち、実施例1−1−5で製作された大腸菌W3110変異微生物で前記遺伝子3種を欠失させた後、実施例1−1−6で製作されたpKBRilvBNCEDベクターを導入して高性能L−バリン生成微生物(VAMF+pKBRilvBNCED)を製作した。
【0074】
[配列番号31] aceF1stup:
5'-ttgaagccgaacagtcgctgatcaccgtagaaggcgacaaagcctctatggattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号32] aceF1stdo:
5'-aaggagagagaaatcggcagcatcagacgcggcacgaactctttaccattcacttaacggctgacatggga-3'
[配列番号33] mdh1stup:
5'-atgaaagtcgcagtcctcggcgctgctggcggtattggccaggcgcttgcgattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号34] mdh1stdo:
5'-ttacttattaacgaactcttcgcccagggcgatatctttcttcagcgtatcacttaacggctgacatggga-3'
[配列番号35] pfkA1stup:
5'-atgattaagaaaatcggtgtgttgacaagcggcggtgatgcgccaggcatgattgcagcattacacgtcttg-3'
[配列番号36] pfkA1stdo:
5'-ttaatacagttttttcgcgcagtccagccagtcacctttgaacggacgctcacttaacggctgacatggga-3'
3−2:L−バリンの生成能測定
前記3−1で製作されたL−バリン生成微生物(Val+pKBRilvBNCED)をアンピシリン、クロラムフェニコール各50μg/ml及び30μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を5g/lグルコースを含むLB培地30mlに接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース50g 、KHPO4g 、(NHSO・7HO 15g 、MnSO・5 HO 20mg、MgSO・7 HO 2g、CaCO30g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg 、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分を有しKOHでpHを8.0で合わせた培地30mlを含んだ250mlバッフルフラスコに、前記前培養液1mlを接種して、31℃で250rpmで48時間培養した。VAMF菌株には、酢酸ナトリウム3g/lを添加した。
【0075】
前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をアミノ酸分析機(Sykam S433;Sykam GmbH、Eresing,ドイツ)で測定した。その結果、表3に示したように、欠失対象遺伝子の欠失導入前の生成微生物で3.73g/lの濃度を示し、欠失対象遺伝子(aceF、mdh及びpfkA)を追加欠失させたL−バリン生成微生物で生成されたL−バリンの濃度は、4.22g/lで、欠失対象遺伝子の欠失を導入しないL−バリン生成微生物(3.73g/l)に比較して約13.1%増加した。このような結果から、欠失対象遺伝子導入による代謝流れ操作がL−バリンの生成能向上に重要な役割をするということが分かった。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例4:L−バリン生成微生物に大腸菌のygaZHオペロンを含む組換えベクターの導入及びL−バリンの生成能測定
4−1:大腸菌のygaZHオペロンを含む組換えベクター(pTrc184ygaZH)の製作
大腸菌W3110(ATTC 39936)の染色体DNAを公知された方法で分離及び精製した(Sambrook等,Molecular cloning,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989)。前記精製された遺伝体配列を鋳型にして、配列番号37及び38をプライマーに使用して、95℃で20秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分20秒間伸張を一周期にして、総24周期反復しながらPCRを遂行して、PCR切片を収得した。
【0078】
[配列番号37] ygaZHf:5'-actaccatggaaagccctactccaca-3'
[配列番号38] ygaZHr:5'-gctcggtaccttatataatcgccatcactt-3'
前記増幅されたPCR切片(ygaZH遺伝子)をNcoI及びKpnIで切断して、pTrc99A発現ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)にクローニングしてpTrc99AygaZHを製作して、前記pTrc99AygaZHベクターをBspHI及びEcoRVで切断して収得した遺伝子切片を、同一酵素(BspHI及びEcoRV)で切断したpACYC184(New England Biolabs)に挿入して、ygaZH遺伝子を発現させるための発現ベクターであるpTrc184ygaZHを製作した(図6)。
4−2:組換えベクター(pTrc184ygaZH)のL−バリン生成微生物への導入
実施例1で製作されたL−バリン生成微生物Val+pKBRilvBNCEDに、前記4−1で製作されたベクターpTrc184ygaZHを導入して、組換え大腸菌(Val+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZH)を製作した。
4−3:L−バリンの生成能測定
前記4−2で製作されたL−バリン生成大腸菌(Val+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZH)を、アンピシリン、クロラムフェニコール各50μg/ml及び30μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を5g/lグルコースを含むLB培地30mlに接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース50g 、KHPO4g 、(NHSO・7HO 15g 、MnSO・5 HO 20mg、MgSO・7 HO 2g、CaCO30g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg 、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分を有しKOHでpHを8.0で合わせた培地30mlを含んだ250mlバッフルフラスコに、前記前培養液1mlを接種して、31℃で250rpmで48時間培養した。
【0079】
前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をアミノ酸分析機で測定した。その結果、表4に示したようにVal+pKBRilvBNCEDと比較して、エクスポーターを導入させたVal+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZHの場合、L−バリンの生成が増加するということが分かった。
【0080】
前記のような結果から、ygaZH遺伝子の過発現がL−バリンの生成性向上に重要な役割をするということが分かった。
【0081】
【表4】

【0082】
実施例5:L−バリン生成微生物に大腸菌のlrp遺伝子を含む組換えベクターの導入及びL−バリンの生成能測定
5−1:大腸菌のlrp遺伝子を含む組換えベクター(pTrc184lrp)の製作
大腸菌W3110(ATTC39936)の染色体DNAを公知された方法で分離及び精製した(Sambrook等,Molecular cloning,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989年)。前記精製された遺伝体配列を鋳型にして、配列番号39及び40をプライマーに使用して、95℃で20秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分20秒間伸張を一周期にして、総24周期反復しながらPCRを遂行して、PCR切片を収得した。
【0083】
[配列番号39] lrpf:5'-actgccatggtagatagcaagaagcgcc-3'
[配列番号40] lrpr:5'-gctcggtaccttagcgcgtcttaataacca-3'
前記増幅されたPCR切片(lrp遺伝子)をNcoI及びKpnIで切断して、pTrc99A発現ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)にクローニングしてpTrc99Alrpを製作して、前記pTrc99AlrpベクターをBspHI及びEcoRVで切断して収得した遺伝子切片を、同一酵素(BspHI及びEcoRV)で切断したpACYC184(New England Biolabs)に挿入してlrp遺伝子を発現させるための発現ベクターであるpTrc184lrpを製作した(図7)。
5−2:組換えベクター(pTrc184lrp)のL−バリン生成微生物への導入
実施例1で製作されたL−バリン生成微生物Val+pKBRilvBNCEDに、前記5−1で製作されたベクターpTrc184lrpを導入して、組換え大腸菌(Val+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZH)を製作した。
5−3:L−バリンの生成能測定
前記5−1で製作されたL−バリン生成大腸菌(Val+pKBRilvBNCED+pTrc184lrp)を、アンピシリン、クロラムフェニコール各50μg/ml及び30μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を5g/lグルコースを含むLB培地30mlに接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース50g、KHPO4g、(NHSO・7HO 15g、MnSO・5 HO 20mg、MgSO・7 HO 2g、CaCO30g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分を有しKOHでpHを8.0で合わせた培地30mlを含んだ250mlバッフルフラスコに、前記前培養液1mlを接種して、31℃で250rpmで48時間培養した。
【0084】
前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をアミノ酸分析機で測定した。その結果、表5に示したようにVal+pKBRilvBNCEDと比較して、lrp遺伝子を導入させたVal+pKBrilvBNCED+pTrc184lrpの場合、L−バリンの生成が増加することが分かった。
【0085】
前記のような結果から、lrp遺伝子の過発現がL−バリンの生成性向上に重要な役割をするということが分かった。
【0086】
【表5】

【0087】
実施例6:L−バリン生成微生物に大腸菌のygaZHオペロンとlrp遺伝子を同時に含む組換えベクターの導入及びL−バリンの生成能測定
6−1:大腸菌のygaZHオペロンとlrp遺伝子を同時に含む組換えベクター(pTrc184ygaZHlrp)の製作
大腸菌W3110(ATTC39936)の染色体DNAを公知された方法で分離及び精製した(Sambrook,等,Molecular cloning,2nd ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989年)。前記精製された遺伝体配列を鋳型にして、配列番号41及び42をプライマーに使用して、95℃で20秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分20秒間伸張を一周期にして、総24周期反復しながらPCRを遂行して、PCR切片を収得した。
【0088】
[配列番号41] lrpacfb:5'-atgcggatccgaacagtgatgtttcagggt-3'
[配列番号42] lrpacrp:5'-atctctgcaggttccgtgttagcgcgtctt-3'
前記増幅されたPCR切片(lrp遺伝子)をBamHI及びPstIで切断した後、前記4−1で製作されたベクターpTrc184ygaZHを同一酵素(BamHI及びPstI)で切断して収得したpTrc184ygaZHの遺伝子切片に挿入して、ygaZHオペロンとlrp遺伝子を同時に含む組換えベクターpTrc184ygaZHlrpを製作した(図8)。
6−2:組換えベクター(pTrc184ygaZHlrp)のL−バリン生成微生物への導入
実施例1で製作されたL−バリン生成微生物Val+pKBRilvBNCEDに、前記6−1で製作されたベクターpTrc184ygaZHlrpを導入して、組換え大腸菌(Val+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp)を製作した。
6−3:L−バリンの生成能測定
前記6−2で製作されたL−バリン生成大腸菌(Val+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp)を、アンピシリン、クロラムフェニコール各50μg/ml及び30μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を5g/lグルコースを含むLB培地30mlに接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース50g、KHPO4g、(NHSO・7HO 15g、MnSO・5 HO 20mg、MgSO・7 HO 2g、CaCO30g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分を有しKOHでpHを8.0で合わせた培地30mlを含んだ250mlバッフルフラスコに、前記前培養液1mlを接種して、31℃で250rpmで48時間培養した。
【0089】
前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をアミノ酸分析機で測定した。その結果、表6に示したようにVal+pKBRilvBNCED、Val+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZH、Val+pKBRilvBNCED+pTrc184lrp、Val+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZHlrpと比較して、ygaZHオペロンとlrpを同時に導入させたVal+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZHlrpの場合、L−バリンの生成が増加することが分かった。
【0090】
前記のような結果から、ygaZHオペロンとlrp遺伝子の同時過発現がL−バリンの生成性向上に重要な役割をすることが分かった。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例7:aceF、pfkA及びmdhが追加欠失された高性能L−バリン生成微生物(VAMF+pKBRilvBNCED)に大腸菌のygaZHオペロンとlrp遺伝子を同時に含む組換えベクターの導入及びL−バリンの生成能測定
7−1:組換えベクター(pTrc184ygaZHlrp)の高性能L−バリン生成微生物への導入
実施例2で製作された高性能L−バリン生成微生物VAMF+pKBRilvBNCEDに、前記6−1で製作されたベクターpTrc184ygaZHlrpを導入して、組換え大腸菌(VAMF+pKBrilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp)を製作した。
7−2:L−バリンの生成能測定
前記7−1で製作されたL−バリン生成大腸菌(VAMF+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp)を、アンピシリン、クロラムフェニコール及びカナマイシンが、各50μg/ml、30μg/ml 及び40μg/mlが添加されたLB平板培地で選別した。前記形質転換菌株及びVal+pKBRilvBNCED、VAMF+pKBRilvBNCED、Val+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp菌株を5g/lグルコースを含む200mlのLB培地に接種して、31℃で24時間前培養を遂行した。その後、蒸留水1リットル当たりグルコース20g、KHPO2g、(NHSO・7HO 20g、MgSO・7 HO 0.4g、NaCl 1.6g、酵母抽出物2g、L−イソロイシン262mg、L−ロイシン262mg、D−パントテン酸ヘミカルシウム塩425μg、希金属溶液(蒸留水1リットル当たりFeSO・7HO 10g、CaCl1.35g、ZnSO・7HO 2.25g、MnSO・4 HO 0.5g、CuSO・5HO 1g、(NH)6Mo24・4 HO 0.106g、Na・10 HO 0.23g、35%HCl 10mlを含む)5mlの成分で構成された培地1.8リットルを含んだ6.6リットル発酵器(Bioflo 3000,New Brunswick Scientific Co.,Edison,NJ,米国)に前記前培養液を接種して、31℃で培養した。pHは、25%(v/v)NHOHの自動供給によって6.0に維持され、溶存酸素濃度(dissolved oxygen concentration)は空気を1vvm(air volume/working volume/minute)で供給しながら撹拌速度を1000rpmまで自動調節することで飽和空気(air saturation)の40%以上に維持した。VAMF菌株には、酢酸ナトリウム3g/lを添加した。
【0093】
前記培地中のグルコースをグルコース分析器(モデル2700 STAT,Yellow Springs Instrument,Yellow Springs,Ohio,米国)で測定して、グルコースがすべて消耗した時に前記培地を採取して、それから生成されるL−バリンの濃度をアミノ酸分析機で測定した。その結果、表7に示したようにVal+pKBRilvBNCED菌株にaceF、pfkA及びmdhの追加欠失を導入した時のL−バリンの生成増加効果(45.5%)より、Val+pKBRilvBNCED+pTrc184ygaZHlrp菌株にaceF、pfkA及びmdhの追加欠失を導入した時のL−バリンの生成増加効果(126.7%)が、ずっと大きいことが分かる。
【0094】
前記のような結果から、aceF、pfkA及びmdhの追加欠失による代謝流れ調節効果が、エクスポーター(ygaZHオペロン)とグローバルレギュレーター(lrp遺伝子)の同時過発現時にさらに上昇することが分かった。また、aceF、pfkA及びmdhの追加欠失による代謝流れ調節効果とエクスポーター(ygaZHオペロン)、グローバルレギュレーター(lrp遺伝子)の同時過発現効果がお互いにシナジー効果を発生して、L−バリン生成増加にさらに効果的であることが分かった。
【0095】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0096】
以上で詳しく説明して立証したように、本発明のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法は、既存の無作為突然変異技法とは異なり、特定遺伝子の欠失による代謝回路再構成及び必要遺伝子の増幅を通じたラショナルデザイン方法によって、分枝鎖アミノ酸の高生成能を有する微生物を効果的に提供することができ、本発明による変異微生物は、部位特異的突然変異方法と代謝流れ操作によって分枝鎖アミノ酸を高効率で生成することができる。特に、分枝鎖アミノ酸の中でL−バリンを高効率で生成することができ、本発明の変異微生物はL−バリンの産業的生成微生物として有用である。
【0097】
以上で、本発明内容の特定部分を詳しく記述したように、当業界の通常の知識を有した者において、このような具体的技術は単に好ましい実施様態であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されるのではないことは明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】大腸菌野生菌株W3110から目的遺伝子のみを操作してL−バリン生成微生物を製作して、前記生成微生物に欠失対象遺伝子の欠失を導入する過程を示した図である。
【図2】大腸菌L−バリン生成微生物からaceF、mdh及びpfkA遺伝子を欠失させた変異微生物VAMFの代謝回路を示した図である。
【図3】sacB相同組換えベクターpSacHR06の製作過程及び遺伝子地図を示した図である。
【図4】ilvBNCED遺伝子を含む組換えベクターpKBRilvBNCEDの製作過程及び遺伝子地図を示した図である。
【図5】インシリコシミュレーション結果を示した図で、Aは一番目遺伝子欠失による細胞成長速度とL−バリン生成速度との関係、Bは二番目遺伝子欠失による細胞成長速度とL−バリン生成速度との関係及びCは三番目遺伝子欠失による細胞成長速度とL−バリン生成速度との関係を図示したものである。
【図6】ygaZH遺伝子を含む組換えベクターpTrc184ygaZHの遺伝子地図を示した図である。
【図7】lrp遺伝子を含む組換えベクターpTrc184lrpの遺伝子地図を示した図である。
【図8】ygaZH遺伝子とlrp遺伝子を同時に含む組換えベクターpTrc184ygaZHlrpの遺伝子地図を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物で、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を弱化または欠失させて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子をその発現が増加するように変異させることを特徴とするL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項2】
前記微生物が、バクテリア、酵母及びカビからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の変異微生物の製造方法。
【請求項3】
前記バクテリアが、コリネバックテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバックテリウム(Brevibacterium)属及び大腸菌からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項4】
L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、ilvA(スレオニンデヒドラターゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、leuA(2−イソプロピルマレイン酸シンターゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
D−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、panB(3−メチル−2−オキソブタン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼを暗号化する遺伝子)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子をその発現が増加するように変異させることが、次に構成された群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
(a)lacI(lacオペロンリプレッサーを暗号化する遺伝子)遺伝子の欠失、
(b)ilvH(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムIII)遺伝子のフィードバック阻害(feedback inhibition)除去、
(c)ilvGMEDA(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムI)及びilvBN(アセトヒドロキシ酸シンターゼアイソザイムII)オペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターを強力プロモーターに置換、及び
(d)強力プロモーターを含む発現ベクターの導入。
【請求項8】
前記強力プロモーターが、trcプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター及びtrpプロモーターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記強力プロモーターを含む発現ベクターが、ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子を含むベクターであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記発現ベクターが、pKBRilvBNCEDベクターであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
aceE、aceF、lpdA、pfkA、pfkB、tpiA、sdhA、sdhB、sdhC、sdhD、fumA、fumB、fumC、eptB、gpmA、gpmB、ptsG、mdh、ppc、pgi、glgC、sucA、sucB、ribA、folE及びackAからなる群から選択されたいずれか一つ以上の遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項12】
aceF及びpfkA遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項13】
aceF、pfkA及びmdh遺伝子を追加で弱化または欠失させることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項14】
分枝鎖アミノ酸エクスポーター(exporter)遺伝子を追加で増幅または導入させることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項15】
前記分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が、配列番号43及び配列番号44のアミノ酸配列を暗号化する塩基配列からなる群から選択されるいずれか一つ以上か、配列番号45の塩基配列を有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グローバルレギュレーターであるlrp遺伝子を追加で増幅または導入させることを特徴とする、請求項1に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物の製造方法。
【請求項17】
前記lrp遺伝子が、配列番号46の塩基配列を有することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のいずれか1項の方法で製作され、L−イソロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子、L−ロイシン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子及びD−パントテン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子が弱化または欠失されて、L−バリン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増加するように変異されたことを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項19】
(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失、
(b)lacI遺伝子が欠失、
(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去、
(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換、
(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入、及び
(f)配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が増幅または導入されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項20】
配列番号46のlrp遺伝子が、追加で増幅または導入されていることを特徴とする、請求項19に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項21】
(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失、
(b)lacI遺伝子が欠失、
(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去、
(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換、
(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入、及び
(f)aceF及びpfkA遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項22】
配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が、追加で増幅または導入されていることを特徴とする、請求項21に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項23】
配列番号46のlrp遺伝子が、追加で増幅または導入されていることを特徴とする、請求項21に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項24】
(a)ilvA、leuA及びpanBが弱化または欠失、
(b)lacI遺伝子が欠失、
(c)ilvH遺伝子のフィードバック阻害が除去、
(d)ilvGMEDA及びilvBNオペロンのアッテネータを含むネーティブプロモーターが強力プロモーターに置換、
(e)ilvB、ilvN、ilvC、ilvE及びilvD遺伝子と強力プロモーターを含む発現ベクターが導入、及び
(f)aceF、pfkA及びmdh遺伝子が弱化または欠失されていることを特徴とする、L−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項25】
配列番号45の分枝鎖アミノ酸エクスポーター遺伝子が、追加で増幅または導入されていることを特徴とする、請求項24に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項26】
配列番号46のlrp遺伝子が、追加で増幅または導入されていることを特徴とする、請求項24に記載のL−バリン高生成能を有する変異微生物。
【請求項27】
請求項18のL−バリン生成高生成能を有する変異微生物を培養した後、前記微生物の培養液からL−バリンを回収することを特徴とする、L−バリンの製造方法。
【請求項28】
請求項19ないし請求項26のいずれか1項のL−バリン生成高生成能を有する変異微生物を培養した後、前記微生物の培養液からL−バリンを回収することを特徴とする、L−バリンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−521960(P2009−521960A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554160(P2008−554160)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/KR2007/001263
【国際公開番号】WO2008/088104
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508047668)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (9)
【Fターム(参考)】