説明

分注シール装置およびウェル開口部のシール方法

【課題】各ウェルの周縁部を全周に亘って一層確実にシールするとともに、装置を小型化・低コスト化し得る分注シール装置を提供する。
【解決手段】この分注シール装置1は、結晶化プレート100の上面にフィルムの粘着面を対向させた状態で押圧して複数のウェルの開口部を覆うようにフィルムを貼り付け可能なスライド押圧部2を備えている。そして、このスライド押圧部2は、フィルムの粘着面を結晶化プレート100の上面に貼り付け可能に配置され且つウェル同士のピッチに合わせた複数個の貫通孔をもつシール部材押圧プレート15を有するプレート面押圧手段と、シール部材押圧プレート15の複数個の貫通孔にその上方から所定深さだけ挿入される複数個のシール部材押圧ピン20を有するウェル周縁部押圧手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のウェルを格子状に有するプレートの上面にシール部材を貼り付けてウェルそれぞれの開口部をシールするための分注シール装置、およびウェル開口部のシール方法に係り、特に、分注を行なった結晶化プレートに対し、そのウェルそれぞれの開口部をシールするために好適な分注シール装置およびウェル開口部のシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の分注シール装置としては、例えば結晶化プレートのウェルにおいて、分注後のウェルを密閉して液体蒸発による条件変動を防止するために、テープ状のシートを結晶化プレート上面に貼り付けるものであって、結晶化プレート自体を移動可能な移動機構を備え、その結晶化プレート上の必要な位置に、ロール状に巻回されたテープ状のシートを適宜供給可能なシート供給手段と、その供給されたシートを結晶化プレート上面に貼り付け可能なシート貼付け手段と、その貼り付けたシートの端部を切断可能なシート切断手段とを備えた分注シール装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、この特許文献1に記載の技術では、そのシート貼付け手段は、供給されたシートを結晶化プレート上面に押圧して貼り付けるための押圧ローラを有している(例えば同文献での段落0045参照)。そして、この押圧ローラは、金属性のローラ状部材と、その外周面を被覆する弾性体とで構成されており、この押圧ローラを、シートを貼り付ける方向に沿って転がしつつ結晶化プレート上面を押圧することで、分注の完了したウェルに対してタイムラグなくテープ状のシートを貼り付け可能になっている。これにより、同文献に記載の技術によれば、ウェル内の液体蒸発による条件変動を防止することができる。
【特許文献1】特許第3685189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、押圧ローラを、金属性のローラ状部材と、その外周面を被覆する弾性体とで構成することで、シート貼着面の多少の凹凸を吸収可能になってはいるものの、シート貼着面の凹凸が大きければ、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を全周に亘って確実に押圧することは難しい。つまり、特許文献1に記載の技術では、ウェルそれぞれの開口部は、結晶化プレート上面に供給されたシートを、押圧ローラを転がしつつ押圧することのみによってシールしているので、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部に確実に押圧力を加えて、各ウェルそれぞれの周縁部を全周に亘って確実にシールする上では、未だ解決すべき課題が残されている。
【0005】
なおまた、特許文献1に記載の技術では、ウェルそれぞれの開口部のシールを自動化するために、上述のように、結晶化プレート自体の移動機構や、テープ状のシートの供給手段、シート切断手段までも必要であるため、装置が大型化し、高コストとなってしまうという問題もある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を全周に亘って一層確実にシールするとともに、装置を小型化・低コスト化し得る分注シール装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を全周に亘って一層確実にシールし得るウェル開口部のシール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、液体を収容可能な複数のウェルを有するプレートの上面に、一方の面に粘着面をもつとともに前記プレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けて前記複数のウェルそれぞれの開口部をシールするための分注シール装置であって、前記プレートの上面に前記シール部材を貼り付け可能なシール部材押圧手段を備え、前記シール部材押圧手段は、前記シール部材の粘着面を前記複数のウェルの開口部を覆うように前記プレートの上面に貼り付け可能なプレート面押圧手段と、各ウェルの上方それぞれから前記シール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を個別にシール可能なウェル周縁部押圧手段とを備えて構成されていることを特徴としている。
【0007】
第一の発明に係る分注シール装置によれば、プレートの上面にシール部材を貼り付け可能なシール部材押圧手段を備えている。そして、このシール部材押圧手段は、プレート面押圧手段およびウェル周縁部押圧手段を備えて構成されており、プレート面押圧手段は、シール部材の粘着面を複数のウェルの開口部を覆うようにプレートの上面に貼り付け可能なので、プレートの上面にシール部材を貼り付けて、各ウェルそれぞれの開口部をシールすることができる。
【0008】
さらに、ウェル周縁部押圧手段は、各ウェルの上方それぞれからシール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を個別にシール可能なので、プレート面押圧手段によって貼り付けられているプレート上面のシール部材に対し、更に各ウェルそれぞれの開口部の周縁を全周に亘って個別に押圧することができる。
つまり、この第一の発明に係る分注シール装置によれば、プレート面押圧手段とウェル周縁部押圧手段とによって、いわば二段階のシールを行うことができる。したがって、例えば上記特許文献1に記載の技術のように、ローラのみによる一段階のシール工程によってシールをする分注シール装置に比べて、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を一層確実にシールすることができる。
【0009】
そして、この第一の発明に係る分注シール装置によれば、各ウェルそれぞれの開口部をシールするシール部材として、一方の面に粘着面をもつとともに、プレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けるようになっているので、例えば上記特許文献1に記載の技術に比べて、例えばテープ状のシートの供給手段やシート切断手段が不要である。したがって、分注シール装置を小型化・低コスト化することが可能である。
【0010】
ここで、上記第一の発明に係る分注シール装置において、前記プレート面押圧手段は、前記ウェル同士のピッチに合わせた複数個の貫通孔をもつシール部材押圧プレートを有し、当該シール部材押圧プレートは、前記シール部材の粘着面を、前記プレートの上面に対向させ且つ押圧して前記プレートの上面を覆うように貼り付け可能になっており、前記ウェル周縁部押圧手段は、前記シール部材押圧プレートの複数個の貫通孔にその上方から挿入可能な複数個のシール部材押圧ピンを有し、当該複数個のシール部材押圧ピンは、前記シール部材押圧プレートの貫通孔に挿通されるとともに、前記シール部材を押圧するように所定深さだけ挿入されるようになっていることは好ましい。
【0011】
このような構成であれば、このプレート面押圧手段は、そのシール部材押圧プレートが、ウェル同士のピッチに合わせた複数個の貫通孔をもっており、これに対し、シール部材押圧手段は、シール部材押圧プレートの複数個の貫通孔にその上方からシール部材を押圧するように所定深さだけ挿入される複数個のシール部材押圧ピンを有するので、分注の完了したウェルに対して上記二段階のシールを連続して行うことができる。したがって、タイムラグがなく各ウェルそれぞれの開口部の周縁部をシールする上でより好適である。
また、このような構成であれば、プレート面押圧手段の上方の位置にウェル周縁部押圧手段を配置する上で好適であり、これにより、例えばプレート面押圧手段に対しウェル周縁部押圧手段を水平方向に隣接して配置した場合と比べて、分注シール装置を小型化する上でより好適である。
【0012】
また、本発明のうち第二の発明は、液体を収容可能な複数のウェルを有するプレートの上面に、一方の面に粘着面をもつとともに前記プレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けて前記複数のウェルそれぞれの開口部をシールする方法であって、前記シール部材の粘着面を前記複数のウェルの開口部を覆うように前記プレートの上面に貼り付ける第一のシール工程と、その第一のシール工程の後に、各ウェルの上方それぞれから前記シール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を個別にシールする第二のシール工程とを含むことを特徴としている。
【0013】
第二の発明に係るウェル開口部のシール方法によれば、プレートの上面に、一方の面に粘着面をもつとともにそのプレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けるようにしており、その複数のウェルそれぞれの開口部をシールするに際し、シール部材の粘着面を複数のウェルの開口部を覆うように貼り付ける第一のシール工程と、その第一のシール工程の後に、各ウェルの上方それぞれからシール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部をシールする第二のシール工程とによってシールするので、第一のシール工程で、プレートの上面全体をシール部材で覆うことで、各ウェルそれぞれの開口部をシールするとともに、第二のシール工程で、各ウェルそれぞれの開口部の周縁を全周に亘って更にシールするという、二段階のシールを行うことができる。したがって、例えば上記特許文献1に記載の技術にように、ローラのみによる一段階のみのシール工程によるシール方法に比べて、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を一層確実にシールすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明によれば、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を全周に亘って一層確実にシールするとともに、装置を小型化・低コスト化し得る分注シール装置を提供することができる。
また、本発明によれば、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を全周に亘って一層確実にシールし得るウェル開口部のシール方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
まず、本発明に係る分注シール装置およびウェル開口部のシール方法に適用するプレートの一実施形態である結晶化プレートについて説明する。なお、図1は、その結晶化プレートの説明図であり、同図(a)はその平面図、同図(b)はその正面図である。
ここで、例えば、蛋白質の結晶化条件の探索方法としては、蒸気拡散法であるシッティングドロップ法が知られているが、この結晶化プレートは、そのシッティングドロップ法に使用する結晶化プレートの例である。
【0016】
同図に示すように、この結晶化プレート100は、平面視が長方形状をなし、その上面110に、複数のウェル101が格子状に整列して形成されている。各ウェル101は、容量の大きなリザーバウェル103と、容量の小さなドロップウェル104とがそれぞれ隣接して配置されている。この結晶化プレート100を使用する場合は、リザーバウェル103にリザーバ溶液を分注し、次いで、ドロップウェル104に、蛋白質溶液およびリザーバ溶液の混合ドロップを分注する。その後、ウェル開口部102をシール部材により塞ぎ、液体蒸発による条件変動を防止する。
【0017】
ここで、上記リザーバウェル103とドロップウェル104とは、いずれも平面視が円形であり、相互が重なり合う位置に設けられることで、略まゆ形をなしている。
なお、本実施形態では、結晶化プレート100の長方形状の短辺を同図(a)での縦方向(以下、「行方向」ともいう)とし、この行方向に8個のウェル101が一つのウェル列として形成され、また、長辺を同図(a)での横方向(以下、「列方向」ともいう)とし、この列方向に12個のウェル101が形成されており(つまり、ウェル列が12列)、全部で96個のウェル101が格子状に整列して形成されている例である。
【0018】
次に、本発明に係る分注シール装置およびウェル開口部のシール方法に適用するシール部材の一実施形態であるシートについて説明する。なお、図2は、そのシートの説明図である。
同図に示すように、このシート200は、片面に粘着面を有する透明なフィルム201と、そのフィルム201の粘着面を保護するための剥離紙202とを有して構成されている。なお、同図はシート200を剥離紙202の側から見た図である。この剥離紙202には両端付近に上下に沿って切れ目Kがあり、一端側の剥離紙202A、中央の剥離紙202Bおよび他端側の剥離紙202Cに分かれている。なお、フィルム201自体には切れ目はない。そして、その剥離紙202の切れ目から中央の剥離紙202Bを剥すと、両側に剥されずに残った剥離紙202A、202Cが、タブ(耳)としてハンドリング用に確保されるようになっている。
【0019】
ここで、本実施形態の例では、このシート200として、ハンプトンリサーチ社(米国)などから市販されている枚葉タイプのもの(商品名「ClearSeal Film」)を使用している。また、このシート200は、上記結晶化プレート同様に平面視が長方形状をなし、そのサイズがおおよそ141mm×79mmであり、上記結晶化プレート100の上面110を被覆可能な、必要十分な広さを有している。そして、このシート200は、同図に示すように、その長辺に沿った方向が、上記結晶化プレート100の列方向と一致するようにして使用される。
なお、通常、このシート200を用いて上記結晶化プレート100の各ウェル開口部102をシールする場合は、中央の剥離紙202Bを剥し、両側のタブを手で持って、上記結晶化プレート100の上面110に、その全面を覆うようにフィルム201の粘着面を貼り付ける。
【0020】
次に、本発明に係る分注シール装置の一実施形態について、図3〜図5を適宜参照しつつ説明する。なお、図3は、その分注シール装置を説明するための平面図、図4はその正面図、図5はその右側面図である。
図3ないし図5に示すように、この分注シール装置1は、スライド押圧部2およびセット部3を備えて構成されている。スライド押圧部2およびセット部3は、共に基台9上に載置されるようになっており、スライド押圧部2は、上記列方向に沿ってスライド移動可能なスライド部を有している。一方、セット部3は、基台9上に固定されており、セット部3上の所定の位置に、上記結晶化プレート100が載置されるようになっている。なお、以下、本明細書において、セット部3上の結晶化プレート100を基準として、上記行方向および列方向を示すとともに、列方向での上記スライド部の前進する側を前進側、後退する側を後退側という(図3参照)。
【0021】
まず、セット部3について図6を参照しつつ詳しく説明する。なお、図6は、セット部の説明図であり、同図では、理解を容易にするために図3ないし図5からスライド押圧部2を除いてセット部3のみを図示しており、同図(a)はセット部の正面図、同図(b)はその平面図、また、同図(c)はその右側面図をそれぞれ示している。
同図に示すように、このセット部3は、矩形状のテーブル4を有し、このテーブル4下面の四隅それぞれには、下方に延びる4本の脚4aが設けられている。このテーブル4は、図3ないし図5に示す電動アクチュエータ10(後述する)の上空に位置して配置される。また、その4本の脚4aは、この電動アクチュエータ10をまたぐように設けられており、このテーブル4上に、上記結晶化プレート100が載置されるようになっている。
【0022】
このテーブル4の上面には、これに載置される結晶化プレート100の列方向での位置決めを行なうための二つの列方向ガイド55が行方向の両側に装着されており、また、列方向とは直交する行方向での位置決めを行なうための一つの行方向ガイド56が列方向での前進側の端部に装着されている。そして、このテーブル4には、テーブル上に載置した結晶化プレート100の列方向での後退側の端面に沿った位置に、シート200の片側端部を挟むためのシート保持部7が備えられている。
次に、このシート保持部7について説明する。なお、図7は、シート保持部の説明図であり、同図(a)および(b)は、シート保持部が開いた状態を示しており、(a)はその平面図、(b)はその正面図であり、また、同図(c)および(d)は、シート保持部が閉じた状態を示しており、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【0023】
同図に示すように、このシート保持部7は、上記テーブル4上に保持プレート58を備えて構成されている。この保持プレート58は、矩形断面をもつ棒状の部材であり、その長手方向を、上記結晶化プレート100の行方向に沿う方向に向けて、結晶化プレート100の列方向での後退側の端部側に固定されている。そして、この保持プレート58は、その矩形状の面のうち、結晶化プレート100の列方向での前進側に向く面に、その前進側に向けて突出するとともに、結晶化プレート100の行方向の側面に沿って延びるシート受け部59を有している。また、この保持プレート58には、そのシート受け部59の上面側に且つ列方向での前進側に向く面に、板状のゴム60が貼られている。このゴム60の厚さは、シート受け部59の突出量よりも薄くなっており、そのシート受け部59上に且つこのゴム面に沿って、シート200の片側端部を載せられるようになっている。なお、結晶化プレート100の行方向での、シート受け部59の形成されている範囲およびゴム60の張られている範囲は、シート200の片側端部の幅に合わせた所定の範囲になっている。
【0024】
さらに、この保持プレート58には、その一端に、ヒンジ部61を介して開閉プレート62の基端部が取付けられており、開閉プレート62が開閉自在になっている。さらに、この開閉プレート62の先端部には、正面視がコの字状のシート保持用フック63が支軸63aを介して回動自在に取付けられている。また、保持プレート58の他端には、コの字状のシート保持用フック63に係合可能なフック用凸部64が形成されており、シート保持用フック63を支軸63aまわりに回動させることにより、フック用凸部64にシート保持用フック63を引っかけられるようになっている。
【0025】
このシート保持部7によってシート200を保持させるには、まず、図7(a)に示すように、開閉プレート62を開けた状態で、保持プレート58のシート受け部59にシート200の片側端部を載置する。次に、開閉プレート62を閉めることで、シート200の片側端部を挟み込み、さらに、その状態でシート保持用フック63を保持プレート58のフック用凸部64に引っかけて固定する。このとき、シート200の片側端部は、挟持されつつ、ゴム60により押圧されるため、シート200が抜けにくくなっている。
さらに、上記テーブル4上には、シート200から一部はがした中央部の剥離紙202Bの片側端部を挟むための剥離紙保持部70が備えられている。
【0026】
次に、この剥離紙保持部70について説明する。なお、図8は、その剥離紙保持部の説明図である。
同図に示すように、この剥離紙保持部70は、テーブル4上に、上記シート保持部7よりも更に列方向での後退側の端部に位置して設けられている。剥離紙保持部70は、テーブル4上での両側それぞれに立設する支柱である第二ポスト71を有している。そして、これら第二ポスト71相互には、その上部に、第二固定バー72が行方向に沿って掛け渡されており、第二ポスト71と第二固定バー72とによって結晶化プレート100を跨ぐことのできる幅をもつ門型をなしている。さらに、この第二固定バー72には、剥離紙202を挿入するために用いられる凹の段部74が長手方向(行方向)での中央部にシート200の幅に合わせて必要な長さをもって形成されている。また、この第二固定バー72には、その一端側に、ヒンジ部75を介して棒状の第二開閉バー73が取付けられており、第二開閉バー73は、ヒンジ部75の軸まわりに回動して第二固定バー72に対して開閉可能になっている。そして、この第二開閉バー73には、その先端部に、正面視がコの字状の剥離紙保持用フック76が、支軸76aを介して回動自在に取付けられている。なお、第二開閉バー73には、第二固定バー72との当たり面にゴム78が貼られている。また、第二固定バー72の他端側には、剥離紙保持用フック76を引っかけるためのフック用凸部77が形成されている。
【0027】
この剥離紙保持部70で剥離紙202Bを保持するには、まず第二開閉バー73を開けた状態で、第二固定バー72の凹の段部74に沿って剥離紙202Bの片側端部を載せる。次に、第二開閉バー73を閉めることでその片側端部を挟持し、剥離紙保持用フック76を第二固定バー72のフック用凸部に引っかけて固定する。このとき剥離紙202Bは第二開閉バー73に貼られたゴム78により押圧されつつ保持されるため、抜けにくくなっている。
【0028】
次に、この分注シール装置1の、上記スライド押圧部2について詳しく説明する。
このスライド押圧部2は、上記セット部3上の結晶化プレート100の上面110に、シート200から剥離紙202Bを剥がしつつフィルム201の粘着面を貼り付け可能なシール部材押圧手段であり、分注の完了したウェル列毎に、フィルム201を列方向に沿って送るとともに、結晶化プレート100の上面110にフィルム201の粘着面を押圧することで、タイムラグなく分注後のウェルを密閉可能になっている。
【0029】
詳しくは、図3ないし図5に示すように、スライド押圧部2は、長手方向を上記列方向に一致して配置された電動アクチュエータ10を備えている。この電動アクチュエータ10は、その列方向での後退側(図3、4での左側)にモータ11を有している。このモータ11は、不図示の制御部からの信号に応じて適宜駆動されるようになっている。さらに、この電動アクチュエータ10は、モータ11が駆動されることで、その長手方向(列方向)に沿ってスライド移動可能なスライド部材12を電動アクチュエータ本体10aの上面10bに有して構成されている。
【0030】
そして、このスライド部材12には、矩形状の板部材であるスライドバー13が、その長手方向を前記列方向に直行する向き(行方向)にして、その中央部がスライド部材12上面に対し取付けられている。これにより、このスライドバー13は、上記列方向に沿ってスライド部材12と共にスライド移動可能である。なお、スライド部材12の長手方向での長さは、上記結晶化プレート100の短辺よりも必要十分に長く、結晶化プレート100の行方向での両側に両端部それぞれが張り出すようになっている。ここで、以下に説明するスライド押圧部2の他の構成部材についても、このスライドバー13上にすべて備えられており、これにより、スライド押圧部2のスライドバー13上の構成部材は、モータ11が制御部からの信号に応じて駆動されることで、上記列方向に沿って所望の位置にスライド移動可能になっている。なお、このスライド押圧部2での、そのスライド部材12を含みこれに固定されてスライド移動可能な部分が上記スライド部に対応している。
【0031】
ここで、このスライド押圧部2は、フィルム201の粘着面を複数のウェル101の開口部102を覆うように結晶化プレート100の上面に貼り付け可能なプレート面押圧手段と、各ウェル101の上方それぞれからフィルム201を押圧して、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102s(図1参照)を個別にシール可能なウェル周縁部押圧手段とを備えて構成されている。
【0032】
まず、プレート面押圧手段について説明する。
プレート面押圧手段は、第1エアシリンダ14と、フィルム押えプレート15とを備えて構成されている。
詳しくは、第1エアシリンダ14は、図5に示すように、上記スライドバー13の上面に且つその長手方向での両端側でのテーブル4と干渉しない位置にそれぞれ取付けられている。この第1エアシリンダ14は、スライドバー13の上面にシリンダ本体が固定されており、また、その軸方向を上下とし且つそのシリンダロッド14aを上方に向けて配置されている。そして、この第1エアシリンダ14は、(以下、不図示の)エア配管を介して電磁弁、レギュレータ、コンプレッサに順に接続されており、コンプレッサの圧力はレギュレータにより所定の圧力に調節され、電磁弁は、上記制御部からの信号に応じて、シリンダヘのエア供給、シリンダのエア大気開放を電気的に切り替え可能になっている。そして、この第1エアシリンダ14の近傍には、シリンダロッド14aの軸がこじらないで円滑に動くように案内可能に設けられた第1ガイド部材14bが装着されている。これにより、この第1エアシリンダ14用の電磁弁を開閉させることにより、第1エアシリンダ14を作動可能になっている。なお、この第1エアシリンダ14は単動引込み型であり、エア圧の供給でそのシリンダロッド14aを引込み方向(結晶化プレート100の上面110側)に移動させ、エア圧の開放でシリンダロッド14aを引き上げ可能になっている。
【0033】
ここで、この第1エアシリンダ14は、上記結晶化プレート100に対して、フィルム201の1段階目のシール(第一のシール工程)を行なうためのものである。つまり、この第1エアシリンダ14は、結晶化プレート100の複数のウェル101の開口部102を覆うようにフィルム201の粘着面を貼り付けるための押圧をするための駆動源になっている。
【0034】
そして、上記フィルム押えプレート15は、これら二つの第1エアシリンダ14のシリンダロッド14aの先端に且つ結晶化プレート100の上面よりも高い位置に、シリンダロッド14a相互を繋ぐように取付けられている。このフィルム押えプレート15は、矩形状の板部材であり、その長手方向を上記スライドバー13と同じ向きにして配置されている。さらに、このフィルム押えプレート15には、上記列方向での前進方向を向く側の上部側端面に、面取りを施すことによって形成されたフィルム折り返し部15aを備えている(図14(b)参照)。また、フィルム押えプレート15の下面には、フィルム押えプレート15とフィルム201との接触面となる部分に、フッ素樹脂などのすべりのよい材質であるすべり部材24が装着されており、このすべり部材24が装着された面が、上記結晶化プレート100の上面110に対向する面として配置されている。ここで、このフィルム押えプレート15は、上記プレート面押圧手段を構成するシール部材押圧プレートに対応するものである。
【0035】
つまり、このフィルム押えプレート15は、上述のモータ11が駆動されることで、上記列方向に沿って、分注の完了したウェル列毎に、各ウェル101に対向する必要な位置にスライド移動し、フィルム201の粘着面を結晶化プレート100の上面110に対向させつつフィルム201を送ることが可能であり、さらに、上記第1エアシリンダ14が作動されることによって、フィルム201を結晶化プレート100の上面110側に向けて押圧して結晶化プレート100の上面110を覆うように貼り付け可能になっている。
【0036】
次に、ウェル周縁部押圧手段について説明する。
ウェル周縁部押圧手段は、第2エアシリンダ16と、複数のフィルム押圧ピン20が装着されたプッシュバー19とを備えて構成されている。
詳しくは、第2エアシリンダ16は、図5に示すように、上記フィルム押えプレート15の上面且つその両側にそれぞれ取付けられている。この第2エアシリンダ16は、そのシリンダ本体がフィルム押えプレート15の上面に固定されており、また、その軸方向を上下とし且つそのシリンダロッド16aを上方に向けて配置されている。そして、この第2エアシリンダ16は、上記第1エアシリンダ14同様に、(以下、不図示の)エア配管を介して電磁弁、レギュレータ、コンプレッサに順に接続されており、コンプレッサの圧力はレギュレータにより所定の圧力に調節され、電磁弁は、上記制御部からの信号に応じて、シリンダヘのエア供給、シリンダのエア大気開放を電気的に切り替え可能になっている。そして、この第2エアシリンダ16の近傍には、そのシリンダロッド16aの軸がこじらないで円滑に動くように案内可能に設けられたガイド部材16bが装着されており、さらに、シリンダロッド16aの先端には、シリンダロッド16aの軸がこじらないで円滑に動くように、フローティングジョイント16cを設けている。これにより、この第2エアシリンダ16用の電磁弁を開閉させることにより、第2エアシリンダ16を作動可能になっている。なお、この第2エアシリンダ16は単動引込み型であり、エア圧の供給でそのシリンダロッド16aを引込み方向に移動させ、エア圧の開放でシリンダロッド16aを引き上げ可能になっている。
【0037】
ここで、この第2エアシリンダ16は、上記プレート面押圧手段での1段階目のシールの後に、分注の完了したウェル列毎に、フィルム201を各ウェル101の開口部102に対してさらに押圧するものである。つまり、上記1段階目のシール(第一のシール工程)の後に、各ウェル101の上方それぞれからフィルム201を押圧して、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102s(図1参照)をシールする2段階目のシール(第二のシール工程)を行なうための駆動源になっている。
【0038】
そして、各第2エアシリンダ16のシリンダロッド16aの先端には、略L字形状の板部材17がそれぞれに装着されており、また、各板部材17には、その裏面の側に、下方に向けて延びる軸部材18がそれぞれ固定され、さらに、この軸部材18を介してプッシュバー19が結晶化プレート100を跨ぐように張り渡されている。そして、プッシュバー19は、上記フィルム押えプレート15の上方に位置するように配置されており、その下面には、複数のフィルム押圧ピン20が備えられている。
【0039】
ここで、上記フィルム押えプレート15およびプッシュバー19部分の構成および相対位置の関係等について図面を適宜参照しつつより詳しく説明する。
図9に、図5でのA部拡大図を示す。なお、同図(a)は、フィルム押えプレート15およびプッシュバー19を上昇させた状態を示し、また、同図(b)は、フィルム押えプレート15およびプッシュバー19を下降させた状態を示しており、同図では、理解を容易にするために一部を断面で図示している。また、図10〜図12は、上記モータ11を駆動して、フィルム押圧ピン20が結晶化プレート100のウェル列の各ウェル101それぞれの開口部102の直上にくるように、スライド押圧部2を位置させた状態の図であり、図10はその平面図、図11はその正面図である。また、図12は、図10でのA−A断面図である。
【0040】
図9に示すように、上記フィルム押えプレート15には、複数の貫通孔22が第1エアシリンダ14での昇降方向に沿って貫通形成されている。これら複数の貫通孔22は、ウェル列での複数のウェル101同士の行方向でのピッチに合わせて、各ウェル101それぞれに対向する位置に形成されている。
一方、上記プッシュバー19の下面に備えられている複数のフィルム押圧ピン20は、その横断面が円形の軸部材であり、結晶化プレート100に対向するように下向きに固定されており、また、各フィルム押圧ピン20が、結晶化プレート100の各ウェル列のウェル101それぞれの開口部102の直上に位置可能なように配置されている。さらに、各フィルム押圧ピン20は、フィルム押えプレート15に貫通形成されている複数の貫通孔22に挿入可能な位置に設けられており、これにより、各ウェル101の開口部102上に位置するフィルム201に対して、その上方から貫通孔22を通過してフィルム201上面への押圧を可能としている。なお、上記シール部材押圧プレートには、このフィルム押えプレート15が対応している。
ここで、前記フィルム押えプレート15の上面には、分注シール装置1の作動時に、シート200をフィルム201と剥離紙202とに分離するためのフィルム剥離部40がさらに備えられている。
【0041】
次に、このフィルム剥離部40について説明する。なお、図13および図14は、フィルム剥離部の説明図であり、図13および図14では、理解を容易にするために、プッシュバー19の図示を省略している。
図13ないし図14に示すように、このフィルム剥離部40は、前記フィルム押えプレート15の両側の第2エアシリンダ16の間に1個ずつ立設される第一ポスト41を備えている。なお、上記プッシュバー19には、この第一ポスト41との干渉を避けるために、第一ポスト41を挿通可能な貫通孔19aが各第一ポスト41に対向する位置にそれぞれ形成されており、これにより、第一ポスト41がプッシュバー19の昇降を妨げないようになっている。
【0042】
そして、これら第一ポスト41相互には、第一固定バー42が掛け渡されており、第一ポスト41と第一固定バー42とによってシート200の幅に合わせて必要な幅をもつ門型をなしている。第一固定バー42には、第一固定バー42の一端側にヒンジ部材43aを介して第一開閉バー43が取り付けられており、この第一開閉バー43は、その所定方向を向く側の端面に、面取りを施すことによって形成された剥離紙折り返し部44を有している。そして、閉状態において、第一固定バー42と第一開閉バー43の間にシート200を挿入できるように所定の隙間が確保されるようになっている。さらに、この第一開閉バー43は、ヒンジ部材43aの軸まわりに回動して第一固定バー42に対して開閉可能になっている。なお、第一開閉バー43は、その先端部に、マグネット45が装着されており、このマグネット45によって、閉じた状態が保持されるようになっている。
【0043】
次に、シート200のセッティング方法について図15を適宜参照しつつ説明する。なお、図15(a)〜(h)は、シート200のセッティング方法の説明図である。
この分注シール装置1では、シート200のセッティングを、以下の手順によって人手により行なう。
まず、シート200を一枚用意し、同図(a)に示すように、上記シート保持部7に対し、シート長手方向での一方の端部(剥離紙202Aまたは剥離紙202C側)を、その剥離紙202が結晶化プレート100側に向くようにして、保持プレート58のシート受け部59上に載せる。次に、同図(b)に示すように、開閉プレート62を閉じてシート200の一方の端部を固定する。
【0044】
次に、同図(c)に示すように、シート200をフィルム剥離部40の第一固定バー42の上から通し、そのシート200を第一固定バー42と剥離紙保持部70の第二固定バー72との間の隙間に挿入する。次に、同図(d)に示すように、フィルム剥離部40の第一開閉バー43を閉め、シート200を第一固定バー42と第一開閉バー43との間に挟む。次に、同図(e)に示すように、シート保持部7側の剥離紙202の切れ目から剥離紙202Bの端部を部分的に剥す。次に、同図(f)に示すように、部分的に剥した剥離紙202Bの端部を第一開閉バー43上で折り返し、剥離紙保持部70の第二固定バー72の段部74に載せる。
【0045】
次に、同図(g)に示すように、第二開閉バー73を閉め、剥離紙202Bを剥離紙保持部70に固定する。次に、同図(h)に示すように、この状態でシート200を手で引張り、剥離紙202が剥されているフィルム201部分のたるみを解消する。以上の手順によってシート200のセッティングが完了する。ここで、このシート200のセッティングによれば、シート200のセッティングを自動化しないことと、枚葉タイプのシート200を使用することによって、分注シール装置1を小型化・低コスト化することに寄与している。
【0046】
次に、この分注シール装置1の動作について図16および図17を適宜参照しつつ説明する。なお、図16および図17は、分注シール装置1の動作の説明図である。
まず、図16(a)に示すように、上記シート200のセッティング方法によってシート200をセットするとともに、結晶化プレート100を、テーブル4上に配置されている列方向ガイド55および行方向ガイド56に沿って予め所定の位置にセットする。なお、このとき、上記スライド押圧部2のスライド部は、列方向での後退側のスタート位置に必要十分に後退して位置しており、これにより、結晶化プレート100の載置作業が容易になっている。
【0047】
次いで、分注を開始する前に、スライド押圧部2のスライド部を上記スタート位置から、図16(b)に示すように、結晶化プレート100のウェル101の一列目の手前の所定の待機位置まで送る。この待機位置への移動に応じて、フィルム押えプレート15のフィルム折り返し部15aによりフィルムが押圧されることで送られていき、第一開閉バー43の剥離紙折り返し部44によって、剥離紙202がフィルム201の粘着面から送り量に応じて剥がされていく。
【0048】
次いで、第1エアシリンダ14用の電磁弁をエア供給に切り替え、第1エアシリンダ14を作動させることで、図16(c)に示すように、フィルム押えプレート15を結晶化プレート100の上面110との対向方向に下降させ、結晶化プレート100の上面110にフィルム201を押し付ける。これにより、フィルム201の粘着面が結晶化プレート100の上面110に押圧され、フィルム201の粘着面と結晶化プレート100の上面110とが密着する(第一のシール工程)。
次いで、図16(d)に示すように、結晶化プレート100のウェル101一列分を分注する(なお、同図での符号300は分注チップである。)。次いで、図16(e)に示すように、スライド押圧部2をウェル列一列分に対応する距離だけ送る。
【0049】
次いで、図16(f)に示すように、第2エアシリンダ16用の電磁弁をエア供給に切り替え、第2エアシリンダ16を作動させ、プッシュバー19を結晶化プレート100の上面110との対向方向に下降させる。このとき、プッシュバー19の下面に備えられたフィルム押圧ピン20がフィルム押えプレート15の貫通孔22内を貫通し、所定の距離だけ下降してフィルム201の上面にフィルム押圧ピン20の先端部が押圧される。この時、コンプレッサの圧力をエアレギュレータにより一定圧力に調節したエアを第2エアシリンダ16に送るようにしているので、第2エアシリンダ16によって作動するフィルム押圧ピン20の押圧力は一定になっている。
【0050】
ここで、フィルム押圧ピン20のフィルム201に対する接触面積は、ウェル101の開口部102の開口面積よりも小さくなっており、フィルム押圧ピン20は、ウェル101の周縁部102sに接触することなく、ウェル101の開口部102の上端面よりも下方の位置までフィルム201を所定深さだけ挿入されることで押し付けて、フィルム201を下向きに凸状に変形させることが可能になっている。これにより、複数のフィルム押圧ピン20それぞれは、フィルム201を各ウェル開口部102の周縁部102sに全周に亘って個別に押し付ける作用をする。そのため、各ウェル101それぞれの独立した密閉が一層確実に実現される(第二のシール工程)。
【0051】
次いで、図16(g)に示すように、次のウェル列の分注を行なう。次いで、図17(a)に示すように、第2エアシリンダ16用の電磁弁をエア大気開放に切り替え、プッシュバー19を上昇させる。次いで、図17(b)に示すように、スライド押圧部2のスライド部をウェル列一列分に対応する距離だけ送る(上記図16(e)と同様の動作)。以下、図17(c)に示すように、上記と同様にして分注シール動作を繰り返し行ない、最後のウェル列まで順次にシールをする。そして、最後のウェル列までシールがなされると、フィルム201と剥離紙202Bが第一固定バー42と第一開閉バー43の間から抜ける。次いで、図17(d)に示すように、第1エアシリンダ14用の電磁弁をエア大気開放に切り替え、フィルム押えプレート15を上昇させる。最後に、図17(e)に示すように、スライド押圧部2のスライド部を上記スタート位置まで戻らせる。その後、剥離紙202Bを手で取り除く。なお、剥離紙202Bを取除いた後に、スライド部をスタート位置まで戻らせてもよい。
【0052】
次に、この分注シール装置1およびウェル開口部102のシール方法の作用・効果について説明する。
上述のように、この分注シール装置1によれば、結晶化プレート100の上面110にフィルム201を貼り付け可能なスライド押圧部2を備え、このスライド押圧部2は、プレート面押圧手段およびウェル周縁部押圧手段を備えて構成されており、プレート面押圧手段は、結晶化プレート100の上面110にフィルム201の粘着面を対向させ且つ押圧して複数のウェル101の開口部102を覆うようにそのフィルム201の粘着面を結晶化プレート100の上面110に貼り付け可能に配置されているので、結晶化プレート100の上面110にフィルム201を貼り付けて、各ウェル101それぞれの開口部102をシールすることができる。
【0053】
さらに、このプレート面押圧手段を構成するシール部材押圧プレート21は、ウェル101同士のピッチに合わせた複数個の貫通孔22をもっており、これに対し、シール部材押圧手段を構成するプッシュバー19は、シール部材押圧プレート21の複数個の貫通孔22にその上方からフィルム201を押圧するように所定深さだけ挿入される複数個のフィルム押圧ピン20を有するので、シール部材押圧プレート21によって押圧されて貼り付けられているプレート上面110のフィルム201に対し、その状態で、更に各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを全周に亘って個別に押圧することができる。つまり、この分注シール装置1によれば、プレート面押圧手段で押圧しつつ、さらにウェル周縁部押圧手段によって周縁部102sを全周に亘って個別に押圧するという、二段階のシールを行うことができる。したがって、例えば上記特許文献1に記載の技術にように、ローラのみによる一段階のシール工程によってシールをする分注シール装置に比べて、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを一層確実にシールすることができる。
【0054】
さらに、この分注シール装置1によれば、各ウェル101それぞれの開口部102をシールするシール部材として、一方の面に粘着面をもつとともに結晶化プレート100の上面110を被覆可能な広さをもつフィルム201を貼り付けるようになっているので、例えば上記特許文献1に記載の技術に比べて、例えばテープ状のシートの供給手段やシート切断手段が不要である。したがって、分注シール装置を小型化・低コスト化することが可能である。
【0055】
そして、この分注シール装置1によれば、上記プッシュバー19は、その複数個のフィルム押圧ピン20が、シール部材押圧プレート21の複数個の貫通孔22にその上方からフィルム201を押圧するように所定深さだけ挿入されるので、分注の完了したウェル101に対して上記二段階のシールを連続して行うことができる。したがって、タイムラグなく各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを効率良く二段階にシールする上でより好適である。また、シール部材押圧プレート21の上方の位置にプッシュバー19を配置しているので、例えばプレート面押圧手段に対しウェル周縁部押圧手段を水平方向に隣接して配置した場合と比べて、分注シール装置を小型化する上でより好適である。
【0056】
そして、上述したウェル開口部102のシール方法によれば、結晶化プレート100の上面110に、一方の面に粘着面をもつとともにその結晶化プレート100の上面110を被覆可能な広さをもつシート200のフィルム201を貼り付けるようにしており、その複数のウェル101それぞれの開口部102をシールするに際し、フィルム201の粘着面を複数のウェル101の開口部102を覆うように貼り付ける第一のシール工程と、その第一のシール工程の後に、各ウェル101の上方それぞれからフィルム201を押圧して、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを個別にシールする第二のシール工程とによってシールするので、結晶化プレート100の上面全体をフィルム201で覆うことで、各ウェル101それぞれの開口部102をシールするとともに、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを全周に亘って更にシールするという、二段階のシールを行うことができる。したがって、例えば上記特許文献1に記載の技術にように、ローラのみによる一段階のシール工程によるシール方法に比べて、各ウェルそれぞれの開口部の周縁を一層確実にシールすることができる。
【0057】
以上説明したように、この分注シール装置1によれば、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを全周に亘って一層確実にシールするとともに、分注シール装置を小型化・低コスト化することができる。そして、上述したウェル開口部102のシール方法によれば、各ウェル101それぞれの開口部102の周縁部102sを全周に亘って一層確実にシールすることができる。
なお、本発明に係る分注シール装置およびウェル開口部のシール方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、プレート面押圧手段に対しその上方の位置にウェル周縁部押圧手段を備える例で説明したが、これに限定されず、プレート面押圧手段とウェル周縁部押圧手段とは、二段階のシールが可能であれば、任意の構成や配置を採用可能である。例えばプレート面押圧手段とウェル周縁部押圧手段とを列方向に隣接して並列配置してもよい。しかし、タイムラグなく各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を二段階に効率良くシールするとともに、分注シール装置を一層小型化する上では、上記実施形態のように、プレート面押圧手段に対しその上方の位置にウェル周縁部押圧手段を備える構成とすることは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るプレートの一実施形態である結晶化プレートの説明図である。
【図2】本発明に係るシール部材の一実施形態であるシート200の説明図である。
【図3】本発明に係る分注シール装置の一実施形態を説明するための平面図である。
【図4】本発明に係る分注シール装置の一実施形態を説明するための正面図である。
【図5】本発明に係る分注シール装置の一実施形態を説明するための右側面図である。
【図6】本実施形態の分注シール装置のセット部の説明図である。
【図7】本実施形態の分注シール装置のシート保持部の説明図である。
【図8】本実施形態の分注シール装置の剥離紙保持部の説明図である。
【図9】シール部分の説明図であり、同図は、図5でのA部拡大図である。
【図10】本実施形態の分注シール装置の動作を説明するための平面図である。
【図11】本実施形態の分注シール装置の動作を説明するための正面図である。
【図12】図7でのA−A断面図である。
【図13】本実施形態の分注シール装置のフィルム剥離部の説明図である。
【図14】本実施形態の分注シール装置のフィルム剥離部の説明図である。
【図15】本実施形態の分注シール装置でのシートのセッティング方法の説明図である。
【図16】本実施形態の分注シール装置の動作の説明図である。
【図17】本実施形態の分注シール装置の動作の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 分注シール装置
2 スライド押圧部(シール部材押圧手段)
3 セット部
4 テーブル
7 シート保持部
9 基台
10 電動アクチュエータ
11 モータ
12 スライド部材
13 スライドバー
14 第1エアシリンダ
15 フィルム押えプレート
16 第2エアシリンダ
17 板部材
18 軸部材
19 プッシュバー
20 フィルム押圧ピン(シール部材押圧ピン)
21 シール部材押圧プレート
22 貫通孔
24 すべり部材
40 フィルム剥離部
41 第一ポスト
42 第一固定バー
43 第一開閉バー
44 剥離紙折り返し部
45 マグネット
55 列方向ガイド
56 行方向ガイド
58 保持プレート
59 シート受け部
60 ゴム
61 ヒンジ部
62 開閉プレート
63 シート保持用フック
64 フック用凸部
70 剥離紙保持部
71 第二ポスト
72 第二固定バー
73 第二開閉バー
74 段部
75 ヒンジ部
76 剥離紙保持用フック
77 フック用凸部
78 ゴム
100 結晶化プレート(プレート)
101 ウェル
102 (ウェルの)開口部
103 リザーバウェル
104 ドロップウェル
110 (結晶化プレートの)上面
200 シート
201 フィルム(シール部材)
202 剥離紙
300 分注チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な複数のウェルを有するプレートの上面に、一方の面に粘着面をもつとともに前記プレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けて前記複数のウェルそれぞれの開口部をシールするための分注シール装置であって、
前記プレートの上面に前記シール部材を貼り付け可能なシール部材押圧手段を備え、
前記シール部材押圧手段は、前記シール部材の粘着面を前記複数のウェルの開口部を覆うように前記プレートの上面に貼り付け可能なプレート面押圧手段と、各ウェルの上方それぞれから前記シール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を個別にシール可能なウェル周縁部押圧手段とを備えて構成されていることを特徴とする分注シール装置。
【請求項2】
前記プレート面押圧手段は、前記ウェル同士のピッチに合わせた複数個の貫通孔をもつシール部材押圧プレートを有し、当該シール部材押圧プレートは、前記シール部材の粘着面を、前記プレートの上面に対向させ且つ押圧して前記プレートの上面を覆うように貼り付け可能になっており、
前記ウェル周縁部押圧手段は、前記シール部材押圧プレートの複数個の貫通孔にその上方から挿入可能な複数個のシール部材押圧ピンを有し、当該複数個のシール部材押圧ピンは、前記シール部材押圧プレートの貫通孔に挿通されるとともに、前記シール部材を押圧するように所定深さだけ挿入されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の分注シール装置。
【請求項3】
液体を収容可能な複数のウェルを有するプレートの上面に、一方の面に粘着面をもつとともに前記プレートの上面を被覆可能な広さをもつシール部材を貼り付けて前記複数のウェルそれぞれの開口部をシールする方法であって、
前記シール部材の粘着面を前記複数のウェルの開口部を覆うように前記プレートの上面に貼り付ける第一のシール工程と、その第一のシール工程の後に、各ウェルの上方それぞれから前記シール部材を押圧して、各ウェルそれぞれの開口部の周縁部を個別にシールする第二のシール工程とを含むことを特徴とするウェル開口部のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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