説明

分注ヘッドのシリンジ構造

【課題】分注ポンプを構成するシリンジおよびプランジャの個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収し、長寿命化および微量な吐出精度等の高精度化を図る。
【解決手段】分注ポンプにおいて、シリンジ3のフランジ31内部に、摺動特性の良好なガイドA34、もしくはシリンジ3のバレル32内部に、摺動特性の良好なガイドA35を備え、またプランジャ4のツマミ41を固定するためのプランジャベース2内に、先端が球形状のアジャスタボルト6、もしくは球形状のプランジャ4のツマミ41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的分析、免疫学的分析などに用いる試薬分注その他の液体容器内の液体を所定量吸引・分注する際に、容器内の液体を少量かつ正確に吸引し、効率よく分注できるようにした分注ヘッドのシリンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分注ヘッドのシリンジ構造には、2つの構造が提案されている。第1には、プランジャーロッドにストッパを具備したものである(例えば、特許文献1参照)。図3は、その構造を示す模式図である。プランジャーロッド10の雄ねじ部基底13には、凸部11に対応する一対の凹部14が形成され、これにより、プランジャーロッド10が凹部14を凸部11に合致するように回動調整されて押し込まれる時、凸部11と凹部14が干渉することなくプランジャーロッド10の先端部のガラスカートリッジ内への挿入される。また、プランジャーロッド10には、凸部11に係合する四半円形状の第1、第2のストッパ板15,16がリブ部12の間に、1つのリブ部12を間に挟んで互いに隣接するようにかつプランジャーロッド10の長さ方向に間隔をあけて設けられている。
第2には、ルアースリップ方式のものである(例えば、特許文献2参照)。図4は、その構造を示す側断面図である。注射器アセンブリ20は、予め充填可能でシールされた注射器21およびカバー23からなっている。注射器21は、長手方向線に沿って延在する細長い注射器本体すなわち胴部22、その一端部を封止的に固設された注射ホルダー24および胴部22の他端を通して挿入可能な排出用プランジャ16から構成されている。カバー23は注射ホルダー24に設けられた開口25を包括している。プランジャ26に圧力が加えられた時、前方ピストン27は注射ホルダー24のセクション24a内に押し込まれ、スロット26aが前方ピストン27を通りニードルから流体が排出される。
【特許文献1】:実用新案登録2603027公報(第4頁 図1)
【特許文献2】:特開平11−104239公報(第4頁 図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の分注ヘッドのシリンジ構造では、ガラス等を含む複数の材質より構成されており、個々の部品精度または組み合わせ精度があまり良くないため、シリンジのバレルとプランジャのプランジャが直接接触した場合に、部品の磨耗が著しく大きく寿命が極端に短くなるという問題点が生じていた。
また、各々の部品精度や取付精度が悪いために、プランジャが精度良く動かなくなり、微量な吐出精度等の高精度化が図りにくいという問題点が生じていた。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、分注ヘッドを構成する際にシリンジおよびプランジャの個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収でき、これらの問題点を解決できる分注ヘッドのシリンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、一方に吐出口を有するヘッドともう一方にプランジャの挿入口とを有するシリンジと、前記シリンジの前記プランジャの挿入口側に取り付けられたフランジと、前記フランジが締結されるシリンジベースと、前記シリンジ内を往復動する前記プランジャと、前記プランジャの先端に取り付けられたチップと、前記プランジャのもう一端に配設されたツマミと、前記ツマミが締結されるプランジャベースとからなる分注ヘッドのシリンジ構造において、前記フランジに前記プランジャが可動するようにあけられた穴内面に摺動部材を具備したガイドと、前記シリンジのバレル内面に摺動部材を備えたガイドとの少なくとも1つを備えたものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記摺動部材が、フッ素樹脂等の樹脂材料やダイヤモンドライクカーボン、窒化ボロンや炭化ケイ素等の炭化化合物等の少なくと1つからなるものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記プランジャベースに、先端が球形状のアジャスタボルトを備えたものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記プランジャの前記ツマミを球形状に形成したものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1および2に記載の発明によると、シリンジのフランジ内部に、摺動特性の良好な部材でできたガイドもしくは、表面に摺動特性の良好な部材をコーティングしたガイドを備えたことにより、シリンジおよびプランジャの個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収できるため、シリンジのバレルとプランジャのプランジャバーが直接接触することを回避させ、長寿命を確保することができる。
請求項3に記載の発明によると、プランジャのツマミを固定するためのプランジャベース内に、先端が球形状のアジャスタボルトを備えたことにより、シリンジおよびプランジャの個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収できるため、微量な吐出精度等の高精度化を図ることができる。
請求項4に記載の発明によると、プランジャのツマミが球形状であることにより、シリンジおよびプランジャの個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収できるため、微量な吐出精度等の高精度化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の第1実施例を示す分注ポンプの側断面図である。1はシリンジベース、2はプランジャベース、3はシリンジ、4はプランジャ、5はツマミホルダ、6はアジャスタホルダである。
シリンジ3は、ステンレス製のフランジ31と、ガラス製のバレル32と、ステンレス製のヘッド33とから構成されており、シリンジベース1にフランジ31部により固定されている。フランジ31内には、フッ素樹脂等の樹脂材料やダイヤモンドライクカーボン、窒化ボロンや炭化ケイ素等の炭化化合物をコーティングしたガイドA34を備えている。また、バレル32内にも表面をフッ素樹脂等の樹脂材料やダイヤモンドライクカーボン、窒化ボロンや炭化ケイ素等の炭化化合物をコーティングしたガイドB35を備えている。
プランジャ4は、ステンレス製のツマミ41と、ステンレス製のプランジャバー42と、樹脂製のチップ43とから構成され、ツマミ41部においてツマミホルダ5とプランジャベース2内の先端が球形状のアジャスタボルト6により固定されている。
プランジャ4はシリンジ3に挿入され、ガイドA34およびガイドB35によりシリンジ3の長手方向に可動できるように支持され、プランジャベース2が図示しない駆動部により軸方向に往復動されることにより、バレル32内の液体は少量かつ正確に吸引、吐出される。
従来の分注ヘッドのシリンジ構造と異なるのは、フランジ内面とバレル内面にフッ素樹脂等の摺動特性の良好な部材をコーティングし、プランジャを移動方向に支持した点である。
シリンジ3およびプランジャ4は、ガラス等を含む複数の材質より構成されているので、個々の部品精度または組み合わせ精度が望めないため、シリンジベース1のフランジ31取付部の幾何公差およびプランジャベース2のツマミ41取付部の幾何公差が良くなくなる。しかしながら、プランジャ4は、フランジ31内のガイドA34またはバレル32内のガイドB35で移動方向に支持されるので、シリンジ3のバレル32とプランジャ4のプランジャバー42が直接接触することが回避され、長寿命を確保することができ、かつプランジャベース2内の先端が球形状のアジャスタボルト6により、シリンジ3およびプランジャ4の個々の部品精度または組み合わせ精度の悪さを吸収できるため、微量な吐出精度等の高精度化を図ることができる。
【実施例2】
【0008】
図2は、本発明の第2実施例を示す分注ポンプの側断面図である。
実施例1と異なる点は、プランジャベース2内のアジャスタボルト6の代わりに、プランジャ4のツマミ41が球形状である点である。その他の構造および動作については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例を示す分注ヘッドのシリンジ構造の側断面図
【図2】本発明の第2実施例を示す分注ヘッドのシリンジ構造の側断面図
【図3】従来の分注ヘッドのシリンジ構造の模式図
【図4】従来のルアースリップ方式分注ヘッドのシリンジ構造の側断面図
【符号の説明】
【0010】
1 シリンジベース
2 プランジャベース
3 シリンジ
31 フランジ
32 バレル
33 ヘッド
34 ガイドA
35 ガイドB
4 プランジャ
41 ツマミ
42 プランジャバー
43 チップ
5 ツマミホルダ
6 アジャスタボルト
10 プランジャーロッド
11 凸部
12 リブ部
13 雄ねじ部基底
14 凹部
15 第1のストッパ板
16 第2のストッパ板
20 注射器アセンブリ
21 注射器
22 胴部
23 カバー
24 注射ホルダー
25 開口
26 プランジャ
26a スロット
27 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に吐出口を有するヘッドともう一方にプランジャの挿入口とを有するシリンジと、前記シリンジの前記プランジャの挿入口側に取り付けられたフランジと、前記フランジが締結されるシリンジベースと、前記シリンジ内を往復動する前記プランジャと、前記プランジャの先端に取り付けられたチップと、前記プランジャのもう一端に配設されたツマミと、前記ツマミが締結されるプランジャベースとからなる分注ヘッドのシリンジ構造において、
前記フランジに前記プランジャが可動するようにあけられた穴内面に摺動部材を具備したガイドと、前記シリンジのバレル内面に摺動部材を備えたガイドとの少なくとも1つを備えたことを特徴とする分注ヘッドのシリンジ構造。
【請求項2】
前記摺動部材が、フッ素樹脂等の樹脂材料やダイヤモンドライクカーボン、窒化ボロンや炭化ケイ素等の炭化化合物等の少なくと1つからなることを特徴とする請求項1に記載の分注ヘッドのシリンジ構造。
【請求項3】
前記プランジャベースに、先端が球形状のアジャスタボルトを備えたことを特徴とする請求項1に記載の分注ヘッドのシリンジ構造。
【請求項4】
前記プランジャの前記ツマミを球形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の分注ヘッドのシリンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226675(P2006−226675A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37035(P2005−37035)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】