説明

分注検査装置

【課題】分注プレートの分注穴に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を自動化できる分注検査装置を提供する。
【解決手段】分注検査装置10は、筐体プレート3上に配置された光源11と、光源11の上方に配置された第1の拡散防止フィルタ12と、第1の拡散防止フィルタ12の上方に所定の間隔を開けて配置された第2の拡散防止フィルタ13と、ステージ16に設けられた取付孔16a、16bに挿嵌された2つのテレセントリックレンズ17a、17bと、テレセントリックレンズ17a、17bの下方に取り付けられたブルーエンハンスドフィルタ18a、18bと、テレセントリックレンズ17a、17bの上方に配置された2台の撮像手段19a、19bからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注プレートの分注穴に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を行う分注検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新薬の基礎研究の分野において、微量の薬液等を分注プレートの分注穴に分注し、さらにその分注穴に別の薬液等を分注し、それらを混合して反応を見る研究が行われている。この分注プレートとしては、例えば、特許文献1に示されるようなものがある。この分注プレート本体の表面には、行および列を形成するように縦横に穿設された複数の分注穴が設けられている。研究をする際には、分注装置を用いて、分注プレートの分注穴に薬液等を自動的に分注し、分注穴に薬液等が正確に分注されたかを人間が目視で検査している。
【特許文献1】特開平10−90260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、分注穴に薬液等が正確に分注されたかを人間が目視で検査していたので、検査工程が大変非効率であった。また、検査を自動化しようとしても、分注穴のアスペクト比が高い場合には、分注穴の奥に分注された薬液等を検出するのが困難であった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、分注プレートの分注穴に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を自動化できる分注検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
係る目的を達成すべく、本発明は、分注プレート本体の表面に形成された複数の分注穴に薬液等が分注されているかを検査する分注検査装置であって、前記分注プレートの裏面に光をあてる光源と、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記光源から入射する光の拡散を防止する第1の拡散防止フィルタと、前記第1の拡散防止フィルタのルーバー層と所定の角度で交叉するように配置された光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記第1の拡散防止フィルタを通過した光の拡散をさらに防止する第2の拡散防止フィルタと、前記光源から前記第1の拡散防止フィルタ及び前記第2の拡散防止フィルタを介して、前記分注プレートに光をあてた時の前記分注穴の升の画像を撮像する撮像手段からなる構成を採用した。
【0006】
これにより、光源から発せられた光が第1の拡散防止フィルタ及び第2の拡散防止フィルタによって拡散が防止されて分注プレートの裏面にあてられるので、その分注穴の升の画像を鮮明に撮像することができる。そして、その画像から薬液等が分注されているかを検査することができるので、検査を自動化できる。
【0007】
また、本発明は、前記撮像手段の先端にテレセントリックレンズが配置されているので、分注プレートを透過した光が平行な光線として撮像手段に入射されるので、より正確に分注穴の升の画像を撮像できる。
【0008】
また、本発明は、予め前記分注穴の升の記録画像を記録しておく記録手段、前記記録手段に記録されている前記記録画像を読み出して、前記記録画像と前記撮像手段で撮像された前記分注穴の升の撮像画像から相関の取れた前記升の個数と位置を検出する検出手段、前記相関の取れた升があるかどうかを判断する判断手段、前記相関の取れた升がある場合には、前記記録手段に記録されている前記記録画像を読み出して、前記記録画像と相関の取れた升の前記撮像画像を比較して、前記薬液等が前記分注穴に入っているかどうかを検査する検査手段、を備える。これにより、予め記録した記録画像と撮像画像を比較して検査するので、分注穴の形状によらず、薬液等の存在する部分を正確に認識できるので、薬液等が分注されているかをより明確に、そして簡潔に検査することができる。
【0009】
また、本発明は、前記光源が青色LEDであるので、特に乳白色をした分注プレートについて、より鮮明な画像を撮像できる。
【0010】
さらに、本発明は、前記撮像手段の前方にブルーエンハンスドフィルタを設けるので、分注プレートを透過した青色LEDの光をより明確に捉えることができ、鮮明な画像を撮像できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る分注検査装置は、分注プレート本体の表面に形成された複数の分注穴に薬液等が分注されているかを検査する分注検査装置であって、前記分注プレートの裏面に光をあてる光源と、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記光源から入射する光の拡散を防止する第1の拡散防止フィルタと、前記第1の拡散防止フィルタのルーバー層と所定の角度で交叉するように配置された光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記第1の拡散防止フィルタを通過した光の拡散をさらに防止する第2の拡散防止フィルタと、前記光源から前記第1の拡散防止フィルタ及び前記第2の拡散防止フィルタを介して、前記分注プレートに光をあてた時の前記分注穴の升の画像を撮像する撮像手段からなるので、分注プレートの分注穴に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を自動化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
分注プレート本体の表面に形成された複数の分注穴に薬液等が分注されているかを検査する分注検査装置であって、前記分注プレートの裏面に光をあてる光源と、光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記光源から入射する光の拡散を防止する第1の拡散防止フィルタと、前記第1の拡散防止フィルタのルーバー層と所定の角度で交叉するように配置された光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記第1の拡散防止フィルタを通過した光の拡散をさらに防止する第2の拡散防止フィルタと、前記光源から前記第1の拡散防止フィルタ及び前記第2の拡散防止フィルタを介して、前記分注プレートに光をあてた時の前記分注穴の升の画像を撮像する撮像手段からなる。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る分注検査システムの実施形態を示す構成図である。図2は、本発明に係る分注検査装置の実施形態を示す構成図であり、(a)はその上面図、(b)はその正面図である。図3は、拡散防止フィルタの構成を示す斜視図である。図4は、テレセントリックレンズの説明のための図であり、(a)は従来のレンズの原理、(b)はテレセントリックレンズの原理である。なお、以下の説明では、分注検査装置の上下方向をZ軸、その水平方向をX軸(図1の左右方向)、Y軸(図1の奥行き方向)とする。
【0014】
図1に示すように、分注検査システム1は、装置の外側を覆う箱状の筐体2と、筐体2の略中央に配置され、XY平面状に広がる平板状をした筐体プレート3と、筐体プレート3上に配置された検査前の分注プレート31を収納する検査前プレート収納体4と、その隣に配置された分注プレート31の分注穴34(図5参照)に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を行う分注検査装置10と、分注検査装置10で薬液等が正確に分注されていると判断された分注プレート31を収納する第1の検査済みプレート収納体5と、分注検査装置10で薬液等が正確に分注されていないと判断された分注プレート31を収納する第2の検査済みプレート収納体6と、分注検査装置10と収納体4、5、6の間で分注プレート31を把持してX方向に移動させるチャック7からなる。なお、図1では、分注検査装置10と収納体4、5、6の全てにチャック7及び分注プレート31が配置されている例が示されているが、実際には、チャック7は一つ備えられているだけで、分注検査装置10と収納体4、5、6の間でX方向に移動する。
【0015】
検査前プレート収納体4、第1の検査済みプレート収納体5及び第2の検査済みプレート収納体6は全体として箱状の筐体4a、5a、6aを有しており、その内部に分注プレート31をZ方向に水平に重ねて収納することができる。収納体4、5、6の下部には、エアアクチュエータ4b、5b、6bが配置されており、チャック7で把持した分注プレート31をZ方向上方に押し上げ、筐体4a、5a、6aに収納することができる。
【0016】
図2に示すように、分注検査装置10は、筐体プレート3上に配置された光源11と、光源11の上方に配置された第1の拡散防止フィルタ12と、第1の拡散防止フィルタ12の上方に所定の間隔を開けて配置された第2の拡散防止フィルタ13と、チャック7及び分注プレート31の上方に配置された載置台14と、載置台14上に平行に配置されたY方向に延びたレール15上を高精度に移動するステージ16と、ステージ16に設けられた取付孔16a、16bに挿嵌された2つのテレセントリックレンズ17a、17bと、テレセントリックレンズ17a、17bの下方に取り付けられたブルーエンハンスドフィルタ18a、18bと、テレセントリックレンズ17a、17bの上方に配置された2台の撮像手段19a、19bからなる。
【0017】
光源11は、例えば、青色LED(Light Emitting Diode)を例示することができる。特に、分注プレート31が乳白色の場合には、青色LEDを用いるとその画像が好適に撮像できる。光源11は、分注プレート31の裏面(下面)の全体に光をあてることができるように、分注プレート31の大きさよりも大きい、XY平面の広い範囲に配置されている。
【0018】
第1の拡散防止フィルタ12と第2の拡散防止フィルタ13は、図3に示すように、XY平面に広がる薄い平板状をしている。なお、この図では、第1の拡散防止フィルタ12と第2の拡散防止フィルタ13の一部が拡大して示されているが、実際には、さらに薄く大きい平板状をしており、後述する光透過帯12a、13aと遮光帯12b、13bを多数有するルーバー層12c、13cを有している。
【0019】
第1の拡散防止フィルタ12は、光透過帯12aと遮光帯12bとが交互に配されているルーバー層12cを有している。遮光帯12bはX軸方向に延びる壁状をしており、Y方向に入射してきた光を遮光する。遮光帯12bに区切られた部分は、光透過帯12aとなっており、入射してきた光を透過する。ルーバー層12cの上下には、透明保護層12d、12eが積層されている。
【0020】
第2の拡散防止フィルタ13は、光透過帯13aと遮光帯13bとが交互に配されているルーバー層13cを有している。遮光帯13bはY軸方向に延びる壁状をしており、X方向に入射してきた光を遮光する。遮光帯13bに区切られた部分は、光透過帯13aとなっており、入射してきた光を透過する。ルーバー層13cの上下には、透明保護層13d、13eが積層されている。
【0021】
光透過帯12a、13aと遮光帯12b、13bのZ方向の厚さは、0.1〜2.5mm程度が好ましい。光透過帯12aのY方向の幅と光透過帯13aのX方向の幅は、50μm〜0.3mmの範囲内が好ましい。遮光帯12bのY方向の幅と遮光帯13bのX方向の幅は、5μm〜50μmの範囲内が好ましい。
【0022】
光透過帯12a、13aの材料としては、透明性が高い樹脂が用いられる。具体的には、Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、より好ましくは85%以上である。例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、具体例としては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0023】
遮光帯12b、13bの材料としては、光透過帯12a、13aの材料として上記に挙げた樹脂を基材とし、これに顔料や染料等の着色剤を添加してなる着色樹脂が好適に用いられる。遮光帯12b、13bの色調は、遮光帯12b、13bにおける好ましい遮光性が得られればよく、例えば黒、赤、黄、緑、青、水色等とすることができる。遮光帯12b、13bの色調は、着色剤の種類および添加量によって調整できる。具体的には、遮光帯12b、13bの壁面に光を透過させたときの光線透過率が40%以下、好ましくは10%以下となるような遮光性を有する。
【0024】
透明保護層12d、12e、13d、13eの材料としては、光透過帯12a、13aの材料として上記に挙げた樹脂を用いることができる。透明保護層12d、12e、13d、13eの単体に対して、Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、より好ましくは85%以上である。透明保護層12d、12e、13d、13eの材料は、特に、透明性と耐熱性の点からポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンポリマー)、セルロース系樹脂が好ましく、中でもポリカーボネート、およびポリエステル樹脂がより好ましい。
【0025】
この例では、第1の拡散防止フィルタ12のルーバー層12cと第2の拡散防止フィルタ13のルーバー層13cとが直交するように配置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な角度、例えば60度で交叉するように配置することもできる。
【0026】
光源11から発せられた光は、第1の拡散防止フィルタ12に入射すると、Y方向に拡散した光が遮光帯12bによって遮光される。その第1の拡散防止フィルタ12を透過した光が、第2の拡散防止フィルタ13に入射すると、X方向に拡散した光が遮光帯13bによって遮光される。このようにして、XY方向に拡散した光がそれぞれ遮光されるので、分注プレート31には、拡散が防止されたZ方向の光があたることになり、その画像を極めて鮮明に撮像することができる。透過される光の角度は、Z軸に対して、例えば60〜120度の範囲内の光であって、それ以外は遮光帯12b、13bによって遮光される。
【0027】
テレセントリックレンズ17a、17bは、図4(b)に示すように、比較的大きなレンズの中央部分を用いて光を通過させるものである。つまり、従来は、図4(a)に示すように、レンズ21の外端部に近い部分に入射した光は、鉛直方向に平行にはならず、鉛直方向と所定の角度をもって斜めに通過してしまう。一方、テレセントリックレンズ17a、17bを用いた場合には、レンズの外端部を用いることなく、その中央部分のみを用いるので、レンズを通過した光が鉛直方向に平行になる。
【0028】
ブルーエンハンスドフィルタ18a、18bは、特定の波長の光の撮像感度を向上させるためのものであり、光源11として青色LEDを用いた場合に特に有用である。
【0029】
撮像手段19a、19bとしては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラを例示することができる。CCDカメラは、光から発生した電荷を読み出す電荷結合素子を用いて、画像を電気信号に変換するものである。撮像手段19a、19bは、図2(a)に示すように、テレセントリックレンズ17a、17bの干渉を避けるため、X方向に並べて配置されておらず、Y方向にずらして配置されている。このように、ずらして配置することによって、撮像手段19aの撮像できるX方向の範囲と撮像手段19bの撮像できるX方向の範囲の間に隙間が生じることなく、撮像手段19aで分注プレート31の図の左半分を撮像し、撮像手段19bで分注プレート31の図の右半分を撮像することができる。具体的には、撮像手段19a、19bは、同時に6行6列の分注穴の升の画像を撮像できる。そして、ステージ16をY方向に移動させることにより、分注プレート31の全面を撮像することができる。
【0030】
次に、本発明の分注検査装置で検査を行う分注プレートについて説明する。
図5は、分注プレートの形状を示す斜視図である。
【0031】
分注プレート31は、XY平面に広がるベース32と、ベース32の上部に形成された分注プレート本体33からなる。ベース32の外周面は、分注プレート本体33から突出しており、チャック7で把持しやすいようになっている。この分注プレート31は、乳白色をしており、合成樹脂製で射出成型にて形成される。
【0032】
分注プレート本体33には、上面に開口部を有する有底の分注穴34が複数形成されている。この例では、X方向に12行、Y方向に20列の分注穴34が形成されている。分注穴34は、正四角柱の凹形状にくりぬかれており、くりぬかれていない部分は、薄い側壁35となっている。この分注穴34は、相対する側壁間距離よりもZ方向の深さの深い高アスペクト比の穴となっている。その寸法は、例えば、正四角柱の水平断面の一辺が3mmで深さが30mmというものを検査できる。
【0033】
撮像手段19a、19bによって、分注プレート31の表面を通過してきた光を撮像するので、その撮像画像は、側壁35の像によって区切られた複数の升(分注穴34の底面)の画像として認識される(図7参照)。なお、この例では、分注穴34が正四角柱の凹形状にくりぬかれている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、円柱の凹形状にくりぬかれている分注プレートや円錐形の凹形状にくりぬかれている分注プレートの検査をすることもできる。
【0034】
次に、本発明の分注検査装置の動作について説明する。
図6は、本発明の分注検査装置の画像処理の動作を示すフローチャートである。
【0035】
分注検査装置10を用いて、分注穴34に薬液等が正確に分注されているかを検査する場合には、予め分注穴34の升の記録画像(図7参照)をコンピュータが備える記録手段に記録しておく(S101)。そして、記録手段に記録されている記録画像を読み出して、その記録画像と撮像手段(CCDカメラ)19a、19bで撮像された分注穴34の升の撮像画像から相関の取れた升の個数と位置を検出する(S102)。相関を取るというのは、予め記録されている記録画像と撮像画像を重ね合わせて、それらの画像から升の位置合わせを行い、撮像された升の画像が記録画像のどの升に該当するかを認識することである。これによって、升の個数と位置を検出できる。
【0036】
続いて、相関の取れた升があるかどうかを判断し(S103)、相関の取れた升がある場合には(S103−Yes)、記録手段に記録されている記録画像を読み出して、記録画像と相関の取れた升の撮像画像を比較して、薬液等が分注穴34に入っているかどうかを検査する(S104)。具体的には、薬液等が分注穴34に入っている場合には、撮像画像に黒に近い色で表示されるので、撮像画像から予め記録されている記録画像を差し引くと、その薬液等の黒い画像が検出できるので、その薬液等の黒い画像があるかどうかを各升について検査する。この処理は、薬液等が入っているか入っていないかを検査する必要がある升が残っている間中、続けられる(S105)。なお、この薬液等の画像の検出は、ある程度の面積を有するものが薬液等であると認識するので、異物(細かいゴミなど)が混入されていても薬液等が分注されていなければ、分注されていない升として判断される。
【0037】
相関の取れた升があるかどうかを判断し(S103)、相関の取れた升がない場合には(S103−No)、処理を終了する。
【0038】
次に、撮像手段により撮像される画像について説明する。
図7は、撮像手段により撮像される画像を示す図であり、(a)は予め記録手段に記録される記録画像、(b)は撮像手段により撮像される撮像画像を示す。
【0039】
図7(a)に示すように、記録画像は、灰色に表示される側壁35(図中ではハッチングで示す)と、側壁35に区切られた白色に近い色で表示される升(分注穴34の底面)36からなる(図中ではハッチング無しの白色で表示される)。これは、分注プレート31の裏面に光源11から光をあて、分注プレート31を通過した光を撮像手段19a、19bで撮像するので、肉厚の薄い分注穴34の底面を通過した光は、光量が多く、撮像手段19a、19bにおいては、白色に近い画像として認識され、肉厚の厚い側壁35を通過した光は、光量が少なく、灰色に表示されるものである。
【0040】
図7(b)に示すように、撮像画像は、灰色に表示される側壁35(図中ではハッチングで示す)と、側壁35に区切られた升(分注穴34の底面)36(図中ではハッチング無しの白色で表示される)と、分注穴34に分注された薬液等(図中では黒色で表示される)からなる。薬液等は、各分注穴34に、約1μlずつ分注される。薬液等は、その部分を通過する光が多方向に拡散されるので、撮像手段19a、19bで撮像されにくく、黒色に近い色で表示される。薬液等は、分注穴34の内側の側壁35に付着している場合(符号37a)や升36の略中央部に溜まっている場合(符号37b)、分注穴34の側壁35で囲われた角部に溜まっている場合(符号37c)等がある。
【0041】
この例では、升36aには、薬液等が分注されておらず、黒色に近い画像が表示されていない。また、升36bには、薬液等が分注されておらず、代わりに異物(糸屑)38が検出されている。
【0042】
なお、この薬液等37a、37b、37cと異物38の判別は、その面積に応じて判別を行っている。具体的には、分注検査装置10の画像処理においては、薬液閾値及び異物閾値を設定できるようになっており、検出された対象物の内、薬液閾値以上の面積を持つものは薬液と判断し、薬液閾値未満で異物閾値以上の面積を持つものは、異物と判断し、異物閾値未満の面積を持つものはノイズと判断して無視する。
【0043】
ここで、分注プレートの各升の検査を行って、全ての升で「薬液有り・異物無し」と判断された場合には、各升に薬液が入っており、異物は入っていないと判断して、その分注プレートを第1の検査済みプレート収納体5(図1参照)へ格納する。そして、ディスプレイ58(図8参照)の画面上には、薬液が入っている升の位置が表示される。「薬液有り・異物有り」の升が存在する場合には、薬液が入っており、異物も入っている升があると判断して、その分注プレートは第2の検査済みプレート収納体6(図1参照)に格納される。そして、画面上には、薬液が入っている升と異物が入っている升の位置が表示される。
【0044】
「薬液無し・異物無し」の升がある場合には、薬液が入っておらず、異物も入っていない升があると判断して、その分注プレートは第2の検査済みプレート収納体6に格納される。そして、画面上には、薬液と異物が入っていない升の位置が表示される。「薬液無し・異物有り」の升がある場合には、薬液が入っておらず、異物が入っている升があると判断して、その分注プレートは第2の検査済みプレート収納体6に格納される。そして、画面上には、薬液が入っておらず、異物が入っている升の位置が表示される。
【0045】
したがって、上記升36aの場合には、薬液が入っておらず、異物も入っていない升があると判断して、この分注プレートの検査を終えた後に、その分注プレートは第2の検査済みプレート収納体6に格納される。そして、画面上には、薬液と異物が入っていない升36aの位置が表示される。また、升36bの場合には、薬液が入っておらず、異物38が入っているので、この分注プレート31は第2の検査済みプレート収納体6に収納される。そして、画面上には、薬液が入っておらず、異物が入っている升36bの位置が表示される。
【0046】
次に、本発明の分注検査装置の処理を実行するコンピュータの構成について説明する。
図8は、本発明の分注検査装置の処理を実行するコンピュータの構成図である。
【0047】
コンピュータ44は、図8に示すように、タイマ48が内蔵されたCPU47と、RAM49、ROM50、ハードディスク51(HD)等の記憶部と、入力インターフェース52(入力I/F)及び出力インターフェース53(出力I/F)等を有し、これらがバスライン54を介して接続されている。また、入力I/F52には、入力装置としてのキーボード55やマウス56が接続され、出力I/F53にはスピーカ57やディスプレイ58が接続されている。
【0048】
入力インターフェース52には、撮像手段19a、19bが接続されており、撮像画像が入力される。また、入力インターフェース52には、ステージ16の位置情報61、エアアクチュエータ4b、5b、6bのシリンダ位置情報62、及び分注プレート31の有無信号63等が入力される。
【0049】
出力インターフェース53には、ステージ16の位置を制御するステージ制御手段64、エアアクチュエータ4b、5b、6bのシリンダの位置を制御するシリンダ制御手段65、及び光源11の照度などを制御する光源制御手段66等が接続されている。
【0050】
これらの構成により、ステージ16の位置情報61等からステージ制御手段64に信号を出力してステージ16の位置を制御し、エアアクチュエータ4b、5b、6bのシリンダ位置情報62等からシリンダ制御手段65に信号を出力してシリンダの位置を制御し、分注プレート31の有無信号63等からシリンダ制御手段65に信号を出力してエアアクチュエータ4b、5b、6bのシリンダを制御したり、光源11のON・OFFを制御したり、撮像手段19a、19bから入力された撮像画像等に応じて光源制御手段66に信号を出力して光源11の照度をコントロールすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る分注検査装置は、分注プレートの分注穴に薬液等が正確に分注されているかどうかの検査を行う分注検査装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る分注検査システムの実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る分注検査装置の実施形態を示す構成図であり、(a)はその上面図、(b)はその正面図である。
【図3】拡散防止フィルタの構成を示す斜視図である。
【図4】テレセントリックレンズの説明のための図であり、(a)は従来のレンズの原理、(b)はテレセントリックレンズの原理である。
【図5】分注プレートの形状を示す斜視図である。
【図6】本発明の分注検査装置の画像処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】撮像手段により撮像される画像を示す図であり、(a)は予め記録手段に記録される記録画像、(b)は撮像手段により撮像される撮像画像を示す。
【図8】本発明の分注検査装置の処理を実行するコンピュータの構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・・・・・・・・分注検査システム
2・・・・・・・・・・・筐体
3・・・・・・・・・・・筐体プレート
4・・・・・・・・・・・検査前プレート収納体
4a、5a、6a・・・・筐体
4b、5b、6b・・・・エアアクチュエータ
5・・・・・・・・・・・第1の検査済みプレート収納体
6・・・・・・・・・・・第2の検査済みプレート収納体
7・・・・・・・・・・・チャック
10・・・・・・・・・・分注検査装置
11・・・・・・・・・・光源
12・・・・・・・・・・第1の拡散防止フィルタ
12a、13a・・・・・光透過帯
12b、13b・・・・・遮光帯
12c、13c・・・・・ルーバー層
12d、12e、13d、13e・・・透明保護層
13・・・・・・・・・・第2の拡散防止フィルタ
14・・・・・・・・・・載置台
15・・・・・・・・・・レール
16・・・・・・・・・・ステージ
16a、16b・・・・・取付孔
17a、17b・・・・・テレセントリックレンズ
18a、18b・・・・・ブルーエンハンスドフィルタ
19a、19b・・・・・撮像手段
31・・・・・・・・・・分注プレート
32・・・・・・・・・・ベース
33・・・・・・・・・・分注プレート本体
34・・・・・・・・・・分注穴
35・・・・・・・・・・側壁
36、36a、36b・・升
37a・・・・・・・・・薬液等が分注穴34の内側の側壁35に付着している場合
37b・・・・・・・・・薬液等が升36の略中央部に溜まっている場合
37c・・・・・・・・・薬液等が分注穴34の側壁35に囲われた角部に溜まっている場合
38・・・・・・・・・・異物
47・・・・・・・・・・CPU
48・・・・・・・・・・タイマ
49・・・・・・・・・・RAM
50・・・・・・・・・・ROM
51・・・・・・・・・・ハードディスク
52・・・・・・・・・・入力インターフェース
53・・・・・・・・・・出力インターフェース
54・・・・・・・・・・バスライン
55・・・・・・・・・・キーボード
56・・・・・・・・・・マウス
57・・・・・・・・・・スピーカ
58・・・・・・・・・・ディスプレイ
61・・・・・・・・・・ステージ位置情報
62・・・・・・・・・・シリンダ位置情報
63・・・・・・・・・・分注プレートの有無信号
64・・・・・・・・・・ステージ制御手段
65・・・・・・・・・・シリンダ制御手段
66・・・・・・・・・・光源制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注プレート本体の表面に形成された複数の分注穴に薬液等が分注されているかを検査する分注検査装置であって、
前記分注プレートの裏面に光をあてる光源と、
光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記光源から入射する光の拡散を防止する第1の拡散防止フィルタと、
前記第1の拡散防止フィルタのルーバー層と所定の角度で交叉するように配置された光透過帯と遮光帯とが交互に配されているルーバー層を有し、前記第1の拡散防止フィルタを通過した光の拡散をさらに防止する第2の拡散防止フィルタと、
前記光源から前記第1の拡散防止フィルタ及び前記第2の拡散防止フィルタを介して、前記分注プレートに光をあてた時の前記分注穴の升の画像を撮像する撮像手段からなる分注検査装置。
【請求項2】
前記撮像手段の先端にテレセントリックレンズが配置されている請求項1記載の分注検査装置。
【請求項3】
予め前記分注穴の升の記録画像を記録しておく記録手段、
前記記録手段に記録されている前記記録画像を読み出して、前記記録画像と前記撮像手段で撮像された前記分注穴の升の撮像画像から相関の取れた前記升の個数と位置を検出する検出手段、
前記相関の取れた升があるかどうかを判断する判断手段、
前記相関の取れた升がある場合には、前記記録手段に記録されている前記記録画像を読み出して、前記記録画像と相関の取れた升の前記撮像画像を比較して、前記薬液等が前記分注穴に入っているかどうかを検査する検査手段、
を備える請求項1又は2に記載の分注検査装置。
【請求項4】
前記光源が青色LEDである請求項1乃至3いずれか1項に記載の分注検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段の前方にブルーエンハンスドフィルタを設ける請求項4記載の分注検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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