説明

分注装置

【課題】スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる分注装置を提供する。
【解決手段】ピペットチップCPに貯留された液体を吸排出口CPHから全て排出する際に、当該液体の液面が吸排出口CPHに近くなるほど第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を低下させて当該液体の液面の移動速度がピペットチップCP内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度以下となるように第1ポンプ27、第2ポンプ28を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置に係り、特に、液体を貯留し、貯留した液体を分注する分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液などの各種の液体を貯留し、貯留した液体を分注する分注装置は、生化学実験・臨床検査・薬剤の開発研究など様々な方面で用いられている。
【0003】
この種の分注装置には、液体を吸引、貯留、排出する部分としてチップを用いているものがある。このチップの内面への液体の残留を抑制する技術として、特許文献1には、チップ内面の少なくとも液体が接触する部分を水との接触角が0度の超親水性材料で被覆し、少なくともチップ先端部分の外面を水との接触角が60度以上の樹脂により形成する技術が開示されいる。
【0004】
また、特許文献1には、このようにチップ内面を超親水性にした場合、液体を排出する速度に注意して液体をゆっくりと排出することでチップ内面の液体の残留量を抑えることが可能であることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−136236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チップ内面の液体の残留量を抑えるために、チップから液体をゆっくりと排出した場合、単位時間あたりに分注することができる処理回数(所謂、スループット)が低下してしまう、という問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも前記排出口の近傍において前記排出口に向けて漸次細幅となるように形成された貯留手段と、前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から排出させるポンプと、前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から全て排出する際に、当該液体の液面が前記排出口に近くなるほど前記ポンプの送液速度を低下させて、当該液体の液面の移動速度が前記貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度以下となるように前記ポンプを制御する制御手段と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の発明は、貯留手段が、貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該貯留手段の液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも排出口の近傍において排出口に向けて漸次細幅となるように形成され、ポンプにより、貯留部に貯留された液体が排出口から排出させるものとされており、制御手段により、貯留部に貯留された液体を排出口から全て排出する際に、当該液体の液面が排出口に近くなるほどポンプの送液速度を低下させて、当該液体の液面の移動速度が貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度以下となるようにポンプが制御される。
【0009】
このように請求項1記載の発明によれば、貯留部に貯留された液体を排出口から全て排出する際に、当該液体の液面が排出口に近くなるほどポンプの送液速度を低下させて当該液体の液面の移動速度が貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度以下となるようにポンプを制御しているので、スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる。
【0010】
なお、本発明の制御手段は、請求項2記載の発明のように、前記所定速度を前記貯留部の内部形状や前記貯留部内部の表面処理、前記貯留部の材質、前記貯留部に貯留された液体の種類、含有成分、濃度の少なくとも1つに応じて変化させてもよい。
【0011】
一方、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明は、貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも前記排出口の近傍において前記排出口に向けて漸次細幅となるように形成された貯留手段と、前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から排出させるポンプと、前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から全て排出する際に、前記貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で液体の排出を開始させ、前記排出口から全ての液体が排出される前に液体の排出を一旦所定時間停止させ、その後、残りの液体を排出させるように前記ポンプを制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
請求項3記載の発明は、貯留手段が、貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該貯留手段の液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも排出口の近傍において排出口に向けて漸次細幅となるように形成され、ポンプにより、貯留部に貯留された液体が排出口から排出させるものとされており、制御手段により、貯留部に貯留された液体を排出口から全て排出する際に、貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で液体の排出を開始させ、排出口から全ての液体が排出される前に液体の排出を一旦所定時間停止させ、その後、残りの液体を排出させるようにポンプが制御される。。
【0013】
このように請求項3記載の発明によれば、貯留部に貯留された液体を排出口から全て排出する際に、貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で液体の排出を開始させ、排出口から全ての液体が排出される前に液体の排出を一旦所定時間停止させ、その後、残りの液体を排出させるようにポンプを制御しているので、スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる。
【0014】
なお、本発明の制御手段は、請求項4記載の発明のように、前記残りの液体を排出する際の当該液体の液面の移動速度が前記所定速度以下となるように前記ポンプを制御してもよい。
【0015】
また、本発明の制御手段は、請求項5記載の発明のように、前記液体の排出を一旦停止させる前記所定時間を、前記貯留部の内部形状や前記貯留部内部の表面処理、前記貯留部の材質、前記貯留部に貯留された液体の種類、含有成分、濃度の少なくとも1つに応じて変化させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、表面プラズモン共鳴現象(Surface Plasmon Resonance:SPR)による全反射減衰の発生によって暗線が発生した反射角度を検出することにより、検体物質の特性を測定する測定装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
本実施の形態に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴現象を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0019】
図1〜図4に示すように、バイオセンサー10は、下部筐体11及び上部筐体12を備えている。上部筐体12は、断熱部材で構成されており、バイオセンサー10の上半分全体を覆っている。上部筐体12内と、外部及び下部筐体11内との間は、断熱されている。上部筐体12の手前側は、上方へ開放可能とされており、把手13が取り付けられている。上部筐体12の外側には、ディスプレイ14及び入力部16が設置されている。
【0020】
図2は、上部筐体12を取り去って、図1の奥側からみたバイオセンサー10の内部を示す図であり、図3は筐体の内部を上面からみた図、図4は図2の手前側からみた内部の側面図である。
【0021】
上部筐体12の内部には、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、保冷部46、廃液プレート47、測定チップストック部48、ラジエータ60、ラジエータ送風ファン62、水平方向送風ファン64が備えられている。
【0022】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに検体物質の特性の測定に用いる試料として各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0023】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0024】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファー供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、測定の基準となる基準試料としてのバッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファー供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファー液が供給される。
【0025】
バッファー供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に保冷部46が配置され、その隣に廃液プレート47が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。保冷部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。保冷部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。廃液プレート47は、ホースによって図示しない廃液タンクと接続されており、廃液プレート47に排出された溶液は、廃液タンクに収容される。
【0026】
測定チップストック部48には、測定チップ収容プレート48Pがセットされている。測定チップ収容プレート48Pには、測定チップ50が複数本収納されている。
【0027】
測定チップストック部48と測定部30との間には、測定チップ搬送機構49が備えられている。測定チップ搬送機構49は、測定チップ50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定チップ50が載せられる搬送レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定チップ50が測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0028】
測定チップ50は、図5及び図6に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0029】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、金属性の薄膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から薄膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0030】
薄膜57の表面には、測定対象とする検体物質としてタンパクTaを薄膜57上に付着させるための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが付着される。
【0031】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0032】
図6に示すように、流路部材54は、6個のベース部54Aを備え、ベース部54Aの各々に4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部54Aは、3個のベース部54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成されている。このように、流路部材54を弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保している。
【0033】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0034】
ベース部54Aには、図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、端部の各々が1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部54Aは、底面が誘電体ブロック52の上面と密着され、流路溝54Cと誘電体ブロック52の上面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。
【0035】
1個のベース部54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0036】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させ、参照流路55Rの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させない状態で測定が行われる。
【0037】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図7に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、L2は、図8に示すように、ベース部54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaが付着した測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0038】
図9には、分注ヘッド20の詳細な構成が示されている。
【0039】
分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。各分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されるように保持部材20Bにより保持されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、一方が液体供給用、他方が液体排出用とされている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取り付けられる。ピペットチップCPは、テーパ状に形成され、先端部に液体を吸入・排出するための吸排出口CPH(図10参照。)が設けられており、吸入した液体を貯留する貯留部CPTの内径寸法が吸排出口CPHに向けて漸次細幅となるように形成されている。また、ピペットチップCPの内面は、親水性材料で被覆されている。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0040】
図2に示すように、分注ヘッド20は、上部筐体12内の上部に設けられ、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bの回転駆動によってボールねじ22Aが回転することにより、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、廃液プレート47、保冷部46、補正用プレート45、バッファー供給部44B(バッファプレート44P)、測定部30(測定チップ50)、試料セット部40B(試料プレート40P)、及びピペットチップセット部42B(ピペットチップストッカー42P)に対向する位置にそれぞれ移動可能とされている。
【0041】
また、図9に示すように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、モータ24Aの回転駆動によって駆動軸24Bが回転することにより、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファー供給部44Bにセットされたバッファプレート44P、補正用プレート45、保冷部46にセットされたプレート、及び測定部30にセットされた測定チップ50などにアクセス可能となっている。
【0042】
図10に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続されている。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0043】
分注ヘッド20は、第1モータ27C及び第2モータ28Cの回転駆動が各々制御されて第1ピストン27B及び第2ピストン28Bの駆動が制御されることにより、吸引、排出する溶液の液量、及び吸引、排出する際の溶液の速度が調整可能とされている。
【0044】
一方、図4に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される上部台32A、上部台32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、上部台32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。上部台32Aには、Y方向沿って測定チップ50がセットされるものとされている。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定チップ50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。光学定盤32の隣には、光学定盤32を冷却する水冷ジャケット32Jが設けられている。
【0045】
図11に示すように、光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。CCD36Bは、バイオセンサー10の全体の制御を司る制御部70が接続された画像処理部38と接続されている。
【0046】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。レンズユニット34Bは、偏光ビームスプリッタを内蔵しており、光源34Aから入射する光ビームLのP偏光成分とS偏光成分に分離し、光ビームLのP偏光成分をZ方向に対して一定の幅を持った比較的太い2本の平行な光ビームL1、L2に分ける。そして、レンズユニット34Bは、この2本の平行な光ビームL1、L2を薄膜57と誘電体ブロック52との界面の測定領域E1と参照領域E2に対して全反射角以上の種々の入射角で測定領域E1と参照領域E2において収束光状態となるように入射させる。よって、測定領域E1及び参照領域E2に入射する光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と薄膜57との界面において種々の反射角で全反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bに結像される。CCD36Bは、全反射された2本の光ビームL1、L2を共に受光可能な面積の受光面を有するエリアセンサとされており、受光面に結像した像を示す画像情報を生成して出力する。この出力された画像情報は画像処理部38に入力される。画像処理部38では、入力された画像情報に基づいて所定の処理を行なって、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データを導出する。導出された屈折率変化データは、制御部70へ出力される。
【0047】
ここで、この屈折率変化データは、測定チップ50に試料及びバッファー液をそれぞれ個別に供給してそれぞれ光出射部34から光ビームLを出射させて測定領域E1及び参照領域E2に光ビームL1、L2を照射し、測定領域E1及び参照領域E2において全反射された光ビームL1、L2に暗線が発生する反射角度をそれぞれ求めた場合の、測定領域E1において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差と、参照領域E2において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差との差に基づいて求められるものである。薄膜57と誘電体ブロック52との界面に特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、測定領域E1及び参照領域E2において検出される全反射減衰角θSPの変化(角度差)の差が屈折率変化データとなる。
【0048】
図12には、バイオセンサー10の動作を制御する制御系の機能構成を示すブロック図が示されている。
【0049】
同図に示されるように、制御部70には、ディスプレイ14及び入力部16が接続されている。
【0050】
また、制御部70には、上記モータ22B、モータ24A、第1モータ27C、及び第2モータ28Cが接続されている。
【0051】
制御部70は、モータ22B及びモータ24Aの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20のX方向及びZ方向への移動を制御する。また、制御部70は、第1モータ27C、及び第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20の各分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPへの試料やバッファー液の吸引や排出を制御する。
【0052】
制御部70では、入力部16を介してオペレータにより入力されたバイオセンサー10に対する動作指示に応じて測定チップ50の各液体流路55への試料やバッファー液などの溶液の注入、屈折率データの取得、解析等を含む測定処理が実行される。また、制御部70は、画像処理部38より入力する屈折率変化データに基づいて、タンパクTaと試料Aとの反応状態を測定し、測定結果をディスプレイ14に表示させる。
【0053】
次に、タンパクTaの特性を測定する際の本実施の形態に係るバイオセンサー10の作用について説明する。
【0054】
バイオセンサー10は、測定チップ50の各液体流路55に試料やバッファー液などの溶液の供給する場合、分注ヘッド20を、供給対象とする溶液が保存された保冷部46や、試料セット部40B、バッファー供給部44B上へ移動させ、一対の分注管20Aの液体供給用側に取り付けられた計6本のピペットチップCPで溶液を吸引する。このときの吸引量は、一対の液体流路55A、55Rに供給するため、2本分の量である。そして、溶液を吸引した液体供給用側の6本のピペットチップCPを、測定チップ50の測定流路55A側の片方の出入口53(以下「供給口53A」という)へ挿入すると共に、液体排出用側の6本のピペットチップCPを他方の出入口53(以下「排出口53B」という)へ挿入する。そして、液体供給用側の分注管20Aから供給口53Aに半量の溶液を供給すると共に、液体排出用側の分注管20Aで排出口53Bから液体を吸入することにより行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の溶液が供給される。
【0055】
一方、バイオセンサー10は、液体排出用側のピペットチップCPに吸引した溶液や、液体供給用側のピペットチップCPに残った溶液を廃棄する場合、分注ヘッド20を、廃液プレート47上へ移動させ、ピペットチップCP内に貯留された溶液を全て排出する。
【0056】
制御部70は、この貯留された溶液を吸排出口CPHから全て排出する際に、第1モータ27C、及び第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、ピペットチップCP内の溶液の液面が吸排出口CPHに近くなるほど第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を低下させて当該溶液の液面の移動速度が貯留部CPT内面への当該溶液の残留を抑制できる所定速度以下となるように制御する。この上記所定速度は、ピペットチップCPの内部形状やピペットチップCP内部の表面処理、材質、貯留された溶液の種類、含有成分、濃度等によって異なるが、予め実験等によって溶液の残留を防止するのに十分な速度として求められる。
【0057】
すなわち、本実施の形態に係るピペットチップCPは、貯留部CPTが吸排出口CPHに向けて漸次細幅に形成されている。このため、図13(A)に示すように、排出開始から排出終了まで第1ポンプ27、第2ポンプ28から一定の送液速度で送液した場合は、吸排出口CPHから単位時間あたりの一定の液量で溶液が排出されるため、図13(B)に示すように、吸排出口CPH(排出終了)に近くなるほど溶液の液面の移動速度が速くなる。
【0058】
一方、本実施の形態によれば、図14(A)に示すように、排出開始後、第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を連続的に減少させて、ピペットチップCP内の溶液の液面が吸排出口CPHに近くなるほど第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を低下させる。これにより、吸排出口CPHに近くなるほど吸排出口CPHから排出される単位時間あたりの液量が減り、図14(B)に示すように、液面の移動速度が速まることを抑えることができるため、貯留部CPTの内面に溶液が付着して残留することを抑制することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、ピペットチップCP内の溶液の液面が吸排出口CPHから遠く、液面の面積が広いときは、吸排出口CPHから排出される溶液の液量が多いため、スループットの低下を抑えることもできる。
【0060】
なお、本実施の形態では、図14(A)に示すように、第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を連続的に減少させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図15の実線に示すように、第1ポンプ27、第2ポンプ28の送液速度を段階的に減少させるものとしてもよい。これにより、第1ポンプ27、第2ポンプ28の制御が容易となる。なお、図15では図14(A)の実線を破線で示している。
【0061】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るバイオセンサー10の構成は、上記第1の実施の形態(図1、図1〜図12参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
本実施の形態では、制御部70は、貯留された溶液を全て排出する際に、第1モータ27C、及び第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、図16に示すように、ピペットチップCP内面への溶液の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で溶液の排出を開始させ、吸排出口CPHから全ての溶液が排出される前に溶液の排出を一旦所定時間停止させ、その後、残りの溶液を排出させるように制御するしている。なお、この溶液の排出を一旦させるタイミングは、全ての溶液が排出される排出終了のタイミングに近いほど好ましい。
【0063】
この上記所定時間は、予め実験等によって求めた、ピペットチップCPの内面に付着した溶液が落ちるのに十分な時間とされている。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、溶液の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で溶液の排出することで、ピペットチップCP内面への溶液の残留するが、全ての溶液が排出される前に排出を一旦停止させることにより、ピペットチップCPの内面に残留した溶液が落ちて収集されるため、貯留部CPTの内面に残留することを抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、排出を一旦停止させるまで、上記所定速度よりも速い速度で溶液の排出することで、スループットの低下を抑えることもできる。
【0066】
なお、第2の実施形態は、制御部70にROMやHDD等の記憶部を設けて、内部形状や内部の表面処理、材質の異なるピペットチップCPの種類毎や、溶液の種類、含有成分、濃度毎に、ピペットチップCPの内面に付着した当該溶液が落ちる時間を記憶させておき、制御部70が、排出を一旦停止させる所定時間を、ピペットチップCPの種類や、ピペットチップCPに貯留された液体の種類、含有成分、濃度に応じて変化させるようにしてもよい。
【0067】
また、制御部70は、残りの溶液が少ない場合、当該残りの溶液を排出する際の当該溶液の液面の移動速度が上記所定速度よりも速するように制御してもよい。
【0068】
また、上記各実施の形態では、ピペットチップCPの内面が親水性材料で被覆されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ピペットチップCPの内面が疎水性材料で被覆されている場合でも界面活性剤が添加された溶液であれば、同様の送液の制御を行うことにより、スループットの低下を抑えつつ、液体の残留を抑制することができる。
【0069】
その他、本実施の形態では、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、分注装置としては、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態に係るバイオセンサー全体の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図3】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の上面図である。
【図4】実施の形態に係るバイオセンサーの内部の側面図である。
【図5】実施の形態に係る測定チップの斜視図である。
【図6】実施の形態に係る測定チップの分解斜視図である。
【図7】実施の形態に係る測定チップの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係る測定チップの流路部材を下側からみた図である。
【図9】実施の形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図10】実施形態に係るバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図11】実施の形態に係るバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図12】実施の形態に係るバイオセンサーの制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図13】(A)は送液速度の変化を示すグラフであり、(B)は(A)の送液速度で送液した場合の溶液の液面の移動速度の変化を示すグラフである。
【図14】(A)は第1の実施の形態に係る送液速度の変化を示すグラフであり、(B)は第1の実施の形態に係る送液速度で送液した場合の溶液の液面の移動速度の変化を示すグラフである。
【図15】第1の実施の形態に係る送液速度の変化の別な例を示すグラフである。
【図16】第2の実施の形態に係る溶液の液面の移動速度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド
CP ピペットチップ(貯留手段)
CPH 吸排出口(排出口)
CPT 貯留部
27 第1ポンプ
28 第2ポンプ
70 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも前記排出口の近傍において前記排出口に向けて漸次細幅となるように形成された貯留手段と、
前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から排出させるポンプと、
前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から全て排出する際に、当該液体の液面が前記排出口に近くなるほど前記ポンプの送液速度を低下させて、当該液体の液面の移動速度が前記貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度以下となるように前記ポンプを制御する制御手段と、
を備えた分注装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定速度を前記貯留部の内部形状や前記貯留部内部の表面処理、前記貯留部の材質、前記貯留部に貯留された液体の種類、含有成分、濃度の少なくとも1つに応じて変化させる
請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
貯留された液体を排出するための排出口が形成されると共に、当該液体を貯留する貯留部の内径寸法が少なくとも前記排出口の近傍において前記排出口に向けて漸次細幅となるように形成された貯留手段と、
前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から排出させるポンプと、
前記貯留部に貯留された液体を前記排出口から全て排出する際に、前記貯留手段内面への当該液体の残留を抑制できる所定速度よりも速い速度で液体の排出を開始させ、前記排出口から全ての液体が排出される前に液体の排出を一旦所定時間停止させ、その後、残りの液体を排出させるように前記ポンプを制御する制御手段と、
を備えた分注装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記残りの液体を排出する際の当該液体の液面の移動速度が前記所定速度以下となるように前記ポンプを制御する
請求項3記載の分注装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記液体の排出を一旦停止させる前記所定時間を、前記貯留部の内部形状や前記貯留部内部の表面処理、前記貯留部の材質、前記貯留部に貯留された液体の種類、含有成分、濃度の少なくとも1つに応じて変化させる
請求項3又は請求項4記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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