分注部品
【課題】メニスカス曲率が相違しても分注体積のばらつきを抑えることが可能な分注部品を提供すること。
【解決手段】保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品1。上部に形成される開口部と、開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、開口部に形成される気液界面Mと空間とによって規定される容積を利用して、空間に充填される液体を計量および保持する計量部1aと、開口部と対向して計量部に連設されると共に、加圧気体の圧力が液体に印加された際に計量部に保持された液体を吐出する吐出流路1bとを具備し、気液界面の相違によって発生する計量部で計量および保持される液体の体積のばらつきを抑えるように、計量部1aの中心軸Acに沿った断面における液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmよりも大きく設定されている。
【解決手段】保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品1。上部に形成される開口部と、開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、開口部に形成される気液界面Mと空間とによって規定される容積を利用して、空間に充填される液体を計量および保持する計量部1aと、開口部と対向して計量部に連設されると共に、加圧気体の圧力が液体に印加された際に計量部に保持された液体を吐出する吐出流路1bとを具備し、気液界面の相違によって発生する計量部で計量および保持される液体の体積のばらつきを抑えるように、計量部1aの中心軸Acに沿った断面における液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmよりも大きく設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノリットル(nL)からマイクロリットル(μL)オーダーの液体の分注に使用する分注部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、nL〜μLオーダーの微量液体を加圧気体によって吐出して分注する分注装置として、リザーバから流路を通って運ばれる液体の出口が相互に対向する一対の開口を有し、液体が表面張力によって前記一対の開口の間に保持される分注装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2002−509023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分注装置は、図17に示すように、上下の開口Oの間に液体Lqが表面張力によって保持される。このとき、上下の開口Oの間に保持される液体Lqは、上下の開口部分に規定される幾何学的形状に比べると、メニスカス(気液界面)に起因した凹部によって上下部分が欠落してしまう。また、液体Lqのメニスカスは、一般に、溶質の種類と濃度に関係する液体Lqの表面張力の違いによって曲率が変化する。
【0005】
そこで、液体Lqの上側部分を拡大した図18において、メニスカスMの半径をrmm、開口Oにおける液体Lqの壁面との接触角をθ°とし、メニスカスMの凹部によって欠落する液体Lqの欠落体積ΔV(nL)と開口Oの直径(mm)との関係を、開口Oの直径0.05〜1mmの範囲で、接触角θ=75°,80°,85°毎に算出したところ、図19に示す結果が得られた。この結果から明らかなように、例えば、接触角θ=80°を基準として接触角が±5°変化すると、液体Lqの欠落体積ΔVは最大で±49%変化する。従って、特許文献1の分注装置は、上下に存在するメニスカスによって上下部分に液体の欠落体積ΔVが生ずることから、吐出される液体の体積が液体の密度や粘度等の相違に基づく表面張力の差異によって起こるメニスカス曲率の違いによって大きくばらつくという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メニスカス曲率が相違しても分注体積のばらつきを抑えることが可能な分注部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分注部品は、保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品であって、上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、前記開口部に形成される気液界面と当該空間とによって規定される容積を利用して、当該空間に充填される前記液体を計量および保持する計量部と、前記開口部と対向して前記計量部に連設されると共に、前記加圧気体の圧力が前記液体に印加された際に前記計量部に保持された前記液体を吐出する吐出流路と、を具備し、前記気液界面の相違によって発生する前記計量部で計量および保持される前記液体の体積のばらつきを抑えるように、前記計量部の中心軸に沿った断面における前記液体の吐出方向の長さがこの吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る分注部品は、上記の発明において、前記計量部は、前記断面における前記液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmに対して2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る分注部品は、上記の発明において、前記吐出流路は、前記液体の吐出方向に直交する方向の長さdが前記計量部の長さDmよりも小さく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる分注部品は、液体を導く吐出流路が計量部に連設され、計量部の液体の吐出方向の長さが吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されるので、計量部に保持される液体の体積に比べて欠落体積が微量となり、メニスカス曲率の相違による分注体積のばらつきを抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注部品にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。図2は、分注部品の断面正面図である。
【0012】
分注部品1は、図1に示すように、計量部1aと吐出流路1bとを液体吐出の1構成単位として備えており、目的に応じて1構成単位を使用するか、1構成単位を複数直線状或いはマトリクス状に配列して使用する。分注部品1は、計量部1aに保持したnL〜μLオーダーの液体全体を計量部1aの上方から作用させる加圧気体によって吐出流路1bから一括して吐出することによって液体を分注する。計量部1aは、上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有し、nL〜μLオーダーの液体を計量する円筒形の部分である。計量部1aは、上方から液体を滴下、或いはマイクロピペッターの先端を接触させる等の方法で分注対象の液体が充填される。このとき、計量部1aは、上面の開口部まで液体を満たすことにより、予め設定された量の液体が保持される。吐出流路1bは、計量部1aに連設され、計量部1aに保持された液体を下端から吐出する。分注部品1は、図2に示すように、計量部1aの中心軸Acに沿った断面における液体Lqの吐出方向の長さLmを吐出方向に直交する方向の長さ、即ち、直径Dmよりも大きく設定する。
【0013】
ここで、分注部品1は、計量部1aに液体を充填すると、毛細管力によって計量部1a内の液体が浸入し、図2に示すように、計量部1aの上部と吐出流路1bの下部に液体Lqのメニスカスがそれぞれ形成される。この場合、計量部1aは、上部に液体LqのメニスカスMが形成されるのみである。このため、計量部1aは、メニスカスによる欠落体積が、上下の開口Oの間に液体Lqが保持される特許文献1の分注装置に比べて半分になる。しかも、計量部1aは、液体Lqの吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さである直径Dmよりも大きく設定されている(Lm>Dm)。従って、計量部1aは、保持する液体の体積に比べてメニスカスに起因した欠落体積が微量となり、メニスカス曲率の相違に起因した分注体積のばらつきを抑えることができる。
【0014】
このとき、計量部1aは、より好ましくは、液体Lqの吐出方向の長さLmを2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定する。計量部1aは、長さLmが直径Dmの2倍よりも小さくなると、メニスカス曲率の相違に起因した液体の欠落体積が大きくなり、保持する液量のばらつきが大きくなるという問題がある。一方、計量部1aは、長さLmが直径Dmの10倍を超えると、射出成形等によって成形する場合に計量部1aを成形する金型の成形ピンが長くなり、成形時に成形ピンが折れ易くなるという不具合がある。最も好ましくは、液体Lqの吐出方向の長さLmをLm≒2Dm〜3Dmの範囲に設定する。
【0015】
一方、吐出流路1bは、計量部1aに保持した液体を吐出するための流路であり、液体を保持する部分ではない。このため、分注部品1は、図2に示すように、吐出流路1b内に液体Lqが浸入しても、予め設計した所定量の液体が常に安定して吐出されるように、吐出流路1b内の液体Lqの体積vが計量部1aに保持される液体Lqの体積Vに比べて微量(V≫v)となるように設定することが望ましい。従って、分注部品1は、図2および図3に示すように、吐出流路1bの内直径dfを計量部1aの内直径Dmよりも小さく(df<Dm)設定すると共に、長手方向に沿った長さLmを吐出流路1bの長さLfよりも長く(Lm>Lf)設定する。このように、nL〜μLオーダーの液体を吐出する分注部品1は、例えば、シリコン基板をエッチング加工するか、射出成形等によってポリカーボネート,ポリプロピレン,アクリル,シクロオレフィンコポリマー(COC),シクロオレフィンポリマー(COP)等の合成樹脂を成形することによって製造することができる。
【0016】
ここで、図1〜図3に示す分注部品1は、計量部1aと吐出流路1bとの連設部分で断面積が大きく変化し(急縮)、吐出される液体に大きなエネルギー損失が生ずる。このため、分注部品1は、図4に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を曲面1eに成形することが好ましい。このとき、分注部品1は、図5に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面1fに成形してもよい。また、吐出流路1bは、疎水加工を施すことによって抵抗を小さくすると、液体が吐出され易くなる。
【0017】
一方、分注部品1は、図6に示すように、計量部1a全体の直径が吐出流路1bに向かって減少する円錐状或いは角錐状のテーパ面1gとし、吐出流路1bも内側よりも外側の直径が僅かに大きく形成されていてもよい。この場合、分注部品1は、図7に示すように、上金型11と、吐出流路1bに対応する凸部12aを有する下金型12とを用いて樹脂成形する。また、分注部品1は、図8に示すように、吐出流路1bに対応する凸部11aを有する上金型11と、下金型12とを用いて樹脂成形してもよく、この場合には外側よりも内側の直径が僅かに大きい吐出流路1bが形成される。更に、分注部品1は、図9に示すように、上金型11と下金型12とを用いて樹脂成形してもよく、吐出流路1bは、成形後、機械加工或いはレーザ加工によって形成する。
【0018】
上述のように、分注部品1は、液体を吐出する吐出流路を計量部に連設し、計量部1aの液体Lqの吐出方向の長さLmを吐出方向に直交する方向の長さである直径Dmよりも大きく設定した(Lm>Dm)。従って、分注部品1は、計量部1aに保持される液体の体積に比べて欠落体積が微量となり、メニスカス曲率が相違しても吐出される液量のばらつきが抑えられるので、常に略一定量の液体を吐出することができる。
【0019】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注部品にかかる実施の形態2について説明する。実施の形態1の分注部品は、計量部1aと吐出流路1bが同じ中心軸Ac上に存在していたが、実施の形態2の分注部品は、計量部の中心軸と吐出流路の中心軸がオフセットされている。図10は、分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。図11は、分注部品の断面正面図である。
【0020】
分注部品3は、図10に示すように、計量部3aの中心軸Acmと吐出流路3bの中心軸Acfがオフセットされている。また、分注部品3は、実施の形態1と同様に、計量部3aの長さLmが直径Dmよりも大きく設定され(Lm>Dm)、吐出流路3bの内直径dfが計量部3aの内直径Dmよりも小さく(df<Dm)設定されると共に、長さLmが吐出流路3bの長さLfよりも長く(Lm>Lf)設定されている。
【0021】
分注部品3は、計量部3aの中心軸Acmと吐出流路3bの中心軸Acfとをオフセットしても、計量部3aの長さLmが直径Dmよりも大きく設定されている(Lm>Dm)。このため、分注部品3は、計量部3aに保持される液体のメニスカス曲率が違っても、計量部3aに保持する液量のばらつきが抑えられ、常に略一定量の液体を吐出することができる。
【0022】
ここで、分注部品3は、図12および図13に示すように、吐出流路3bと接続される計量部3a下部の内径が吐出流路3bに向かって漸減するように、計量部3a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面3fに成形してもよい。このとき、分注部品3は、図14および図15に示すように、テーパ面3fと吐出流路3bとの接続部分に段部3gを形成してもよい。
【0023】
尚、本発明の分注部品は、図16に示す分注部品5のように、吐出流路5bの吐出端に液体の吐出方向に突出し、先端に端面5dを有する突出部5cを形成すると共に、突出部5cの外面を計量部5a下部の円錐状或いは角錐状のテーパ面5fに並行なテーパ面5gに成形してもよい。
【0024】
また、実施の形態1,2の分注部品は、計量部および吐出流路が断面円形のものについて説明したが、断面形状は円形以外の多角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1の分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。
【図2】液体を保持した分注部品のメニスカスを示す断面正面図である。
【図3】図1に示す分注部品の断面正面図である。
【図4】図1に示す分注部品の第1の変形例を示す断面正面図である。
【図5】図1に示す分注部品の第2の変形例を示す断面正面図である。
【図6】図1に示す分注部品の第3の変形例を示す断面正面図である。
【図7】図1に示す分注部品の第3の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図8】図1に示す分注部品の第4の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図9】図1に示す分注部品の第5の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図10】実施の形態2の分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。
【図11】図10に示す分注部品の断面正面図である。
【図12】図10に示す分注部品の第1の変形例を示す断面斜視図である。
【図13】図12に示す分注部品の断面正面図である。
【図14】図10に示す分注部品の第2の変形例を示す断面斜視図である。
【図15】図14に示す分注部品の断面正面図である。
【図16】本発明の分注部品の変形例を示す断面正面図である。
【図17】従来の分注装置によって保持される液体の形状を示す断面図である。
【図18】図17に示す分注装置に保持された液体の上側部分を拡大した断面図である。
【図19】メニスカスによる液体の欠落体積と開口の直径との関係を接触角毎に算出した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1,3 分注部品
1a,3a 計量部
1b,3b 吐出流路
1e,3e 曲面
1f、3f テーパ面
1g テーパ面
3g 段部
5 分注部品
5a 計量部
5b 吐出流路
5c 突出部
5f テーパ面
5g テーパ面
Ac 中心軸
Acm 計量部の中心軸
Acf 吐出流路の中心軸
df 吐出流路の内直径
Dm 計量部の内直径
Lf 吐出流路の長さ
Lm 計量部の長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノリットル(nL)からマイクロリットル(μL)オーダーの液体の分注に使用する分注部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、nL〜μLオーダーの微量液体を加圧気体によって吐出して分注する分注装置として、リザーバから流路を通って運ばれる液体の出口が相互に対向する一対の開口を有し、液体が表面張力によって前記一対の開口の間に保持される分注装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2002−509023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分注装置は、図17に示すように、上下の開口Oの間に液体Lqが表面張力によって保持される。このとき、上下の開口Oの間に保持される液体Lqは、上下の開口部分に規定される幾何学的形状に比べると、メニスカス(気液界面)に起因した凹部によって上下部分が欠落してしまう。また、液体Lqのメニスカスは、一般に、溶質の種類と濃度に関係する液体Lqの表面張力の違いによって曲率が変化する。
【0005】
そこで、液体Lqの上側部分を拡大した図18において、メニスカスMの半径をrmm、開口Oにおける液体Lqの壁面との接触角をθ°とし、メニスカスMの凹部によって欠落する液体Lqの欠落体積ΔV(nL)と開口Oの直径(mm)との関係を、開口Oの直径0.05〜1mmの範囲で、接触角θ=75°,80°,85°毎に算出したところ、図19に示す結果が得られた。この結果から明らかなように、例えば、接触角θ=80°を基準として接触角が±5°変化すると、液体Lqの欠落体積ΔVは最大で±49%変化する。従って、特許文献1の分注装置は、上下に存在するメニスカスによって上下部分に液体の欠落体積ΔVが生ずることから、吐出される液体の体積が液体の密度や粘度等の相違に基づく表面張力の差異によって起こるメニスカス曲率の違いによって大きくばらつくという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メニスカス曲率が相違しても分注体積のばらつきを抑えることが可能な分注部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分注部品は、保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品であって、上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、前記開口部に形成される気液界面と当該空間とによって規定される容積を利用して、当該空間に充填される前記液体を計量および保持する計量部と、前記開口部と対向して前記計量部に連設されると共に、前記加圧気体の圧力が前記液体に印加された際に前記計量部に保持された前記液体を吐出する吐出流路と、を具備し、前記気液界面の相違によって発生する前記計量部で計量および保持される前記液体の体積のばらつきを抑えるように、前記計量部の中心軸に沿った断面における前記液体の吐出方向の長さがこの吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る分注部品は、上記の発明において、前記計量部は、前記断面における前記液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmに対して2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る分注部品は、上記の発明において、前記吐出流路は、前記液体の吐出方向に直交する方向の長さdが前記計量部の長さDmよりも小さく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる分注部品は、液体を導く吐出流路が計量部に連設され、計量部の液体の吐出方向の長さが吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されるので、計量部に保持される液体の体積に比べて欠落体積が微量となり、メニスカス曲率の相違による分注体積のばらつきを抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の分注部品にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。図2は、分注部品の断面正面図である。
【0012】
分注部品1は、図1に示すように、計量部1aと吐出流路1bとを液体吐出の1構成単位として備えており、目的に応じて1構成単位を使用するか、1構成単位を複数直線状或いはマトリクス状に配列して使用する。分注部品1は、計量部1aに保持したnL〜μLオーダーの液体全体を計量部1aの上方から作用させる加圧気体によって吐出流路1bから一括して吐出することによって液体を分注する。計量部1aは、上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有し、nL〜μLオーダーの液体を計量する円筒形の部分である。計量部1aは、上方から液体を滴下、或いはマイクロピペッターの先端を接触させる等の方法で分注対象の液体が充填される。このとき、計量部1aは、上面の開口部まで液体を満たすことにより、予め設定された量の液体が保持される。吐出流路1bは、計量部1aに連設され、計量部1aに保持された液体を下端から吐出する。分注部品1は、図2に示すように、計量部1aの中心軸Acに沿った断面における液体Lqの吐出方向の長さLmを吐出方向に直交する方向の長さ、即ち、直径Dmよりも大きく設定する。
【0013】
ここで、分注部品1は、計量部1aに液体を充填すると、毛細管力によって計量部1a内の液体が浸入し、図2に示すように、計量部1aの上部と吐出流路1bの下部に液体Lqのメニスカスがそれぞれ形成される。この場合、計量部1aは、上部に液体LqのメニスカスMが形成されるのみである。このため、計量部1aは、メニスカスによる欠落体積が、上下の開口Oの間に液体Lqが保持される特許文献1の分注装置に比べて半分になる。しかも、計量部1aは、液体Lqの吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さである直径Dmよりも大きく設定されている(Lm>Dm)。従って、計量部1aは、保持する液体の体積に比べてメニスカスに起因した欠落体積が微量となり、メニスカス曲率の相違に起因した分注体積のばらつきを抑えることができる。
【0014】
このとき、計量部1aは、より好ましくは、液体Lqの吐出方向の長さLmを2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定する。計量部1aは、長さLmが直径Dmの2倍よりも小さくなると、メニスカス曲率の相違に起因した液体の欠落体積が大きくなり、保持する液量のばらつきが大きくなるという問題がある。一方、計量部1aは、長さLmが直径Dmの10倍を超えると、射出成形等によって成形する場合に計量部1aを成形する金型の成形ピンが長くなり、成形時に成形ピンが折れ易くなるという不具合がある。最も好ましくは、液体Lqの吐出方向の長さLmをLm≒2Dm〜3Dmの範囲に設定する。
【0015】
一方、吐出流路1bは、計量部1aに保持した液体を吐出するための流路であり、液体を保持する部分ではない。このため、分注部品1は、図2に示すように、吐出流路1b内に液体Lqが浸入しても、予め設計した所定量の液体が常に安定して吐出されるように、吐出流路1b内の液体Lqの体積vが計量部1aに保持される液体Lqの体積Vに比べて微量(V≫v)となるように設定することが望ましい。従って、分注部品1は、図2および図3に示すように、吐出流路1bの内直径dfを計量部1aの内直径Dmよりも小さく(df<Dm)設定すると共に、長手方向に沿った長さLmを吐出流路1bの長さLfよりも長く(Lm>Lf)設定する。このように、nL〜μLオーダーの液体を吐出する分注部品1は、例えば、シリコン基板をエッチング加工するか、射出成形等によってポリカーボネート,ポリプロピレン,アクリル,シクロオレフィンコポリマー(COC),シクロオレフィンポリマー(COP)等の合成樹脂を成形することによって製造することができる。
【0016】
ここで、図1〜図3に示す分注部品1は、計量部1aと吐出流路1bとの連設部分で断面積が大きく変化し(急縮)、吐出される液体に大きなエネルギー損失が生ずる。このため、分注部品1は、図4に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を曲面1eに成形することが好ましい。このとき、分注部品1は、図5に示すように、吐出流路1bと接続される計量部1a下部の内径が吐出流路1bに向かって漸減するように、計量部1a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面1fに成形してもよい。また、吐出流路1bは、疎水加工を施すことによって抵抗を小さくすると、液体が吐出され易くなる。
【0017】
一方、分注部品1は、図6に示すように、計量部1a全体の直径が吐出流路1bに向かって減少する円錐状或いは角錐状のテーパ面1gとし、吐出流路1bも内側よりも外側の直径が僅かに大きく形成されていてもよい。この場合、分注部品1は、図7に示すように、上金型11と、吐出流路1bに対応する凸部12aを有する下金型12とを用いて樹脂成形する。また、分注部品1は、図8に示すように、吐出流路1bに対応する凸部11aを有する上金型11と、下金型12とを用いて樹脂成形してもよく、この場合には外側よりも内側の直径が僅かに大きい吐出流路1bが形成される。更に、分注部品1は、図9に示すように、上金型11と下金型12とを用いて樹脂成形してもよく、吐出流路1bは、成形後、機械加工或いはレーザ加工によって形成する。
【0018】
上述のように、分注部品1は、液体を吐出する吐出流路を計量部に連設し、計量部1aの液体Lqの吐出方向の長さLmを吐出方向に直交する方向の長さである直径Dmよりも大きく設定した(Lm>Dm)。従って、分注部品1は、計量部1aに保持される液体の体積に比べて欠落体積が微量となり、メニスカス曲率が相違しても吐出される液量のばらつきが抑えられるので、常に略一定量の液体を吐出することができる。
【0019】
(実施の形態2)
次に、本発明の分注部品にかかる実施の形態2について説明する。実施の形態1の分注部品は、計量部1aと吐出流路1bが同じ中心軸Ac上に存在していたが、実施の形態2の分注部品は、計量部の中心軸と吐出流路の中心軸がオフセットされている。図10は、分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。図11は、分注部品の断面正面図である。
【0020】
分注部品3は、図10に示すように、計量部3aの中心軸Acmと吐出流路3bの中心軸Acfがオフセットされている。また、分注部品3は、実施の形態1と同様に、計量部3aの長さLmが直径Dmよりも大きく設定され(Lm>Dm)、吐出流路3bの内直径dfが計量部3aの内直径Dmよりも小さく(df<Dm)設定されると共に、長さLmが吐出流路3bの長さLfよりも長く(Lm>Lf)設定されている。
【0021】
分注部品3は、計量部3aの中心軸Acmと吐出流路3bの中心軸Acfとをオフセットしても、計量部3aの長さLmが直径Dmよりも大きく設定されている(Lm>Dm)。このため、分注部品3は、計量部3aに保持される液体のメニスカス曲率が違っても、計量部3aに保持する液量のばらつきが抑えられ、常に略一定量の液体を吐出することができる。
【0022】
ここで、分注部品3は、図12および図13に示すように、吐出流路3bと接続される計量部3a下部の内径が吐出流路3bに向かって漸減するように、計量部3a下部を円錐状或いは角錐状のテーパ面3fに成形してもよい。このとき、分注部品3は、図14および図15に示すように、テーパ面3fと吐出流路3bとの接続部分に段部3gを形成してもよい。
【0023】
尚、本発明の分注部品は、図16に示す分注部品5のように、吐出流路5bの吐出端に液体の吐出方向に突出し、先端に端面5dを有する突出部5cを形成すると共に、突出部5cの外面を計量部5a下部の円錐状或いは角錐状のテーパ面5fに並行なテーパ面5gに成形してもよい。
【0024】
また、実施の形態1,2の分注部品は、計量部および吐出流路が断面円形のものについて説明したが、断面形状は円形以外の多角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1の分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。
【図2】液体を保持した分注部品のメニスカスを示す断面正面図である。
【図3】図1に示す分注部品の断面正面図である。
【図4】図1に示す分注部品の第1の変形例を示す断面正面図である。
【図5】図1に示す分注部品の第2の変形例を示す断面正面図である。
【図6】図1に示す分注部品の第3の変形例を示す断面正面図である。
【図7】図1に示す分注部品の第3の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図8】図1に示す分注部品の第4の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図9】図1に示す分注部品の第5の変形例を金型と共に示した断面正面図である。
【図10】実施の形態2の分注部品の1構成単位を示す断面斜視図である。
【図11】図10に示す分注部品の断面正面図である。
【図12】図10に示す分注部品の第1の変形例を示す断面斜視図である。
【図13】図12に示す分注部品の断面正面図である。
【図14】図10に示す分注部品の第2の変形例を示す断面斜視図である。
【図15】図14に示す分注部品の断面正面図である。
【図16】本発明の分注部品の変形例を示す断面正面図である。
【図17】従来の分注装置によって保持される液体の形状を示す断面図である。
【図18】図17に示す分注装置に保持された液体の上側部分を拡大した断面図である。
【図19】メニスカスによる液体の欠落体積と開口の直径との関係を接触角毎に算出した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1,3 分注部品
1a,3a 計量部
1b,3b 吐出流路
1e,3e 曲面
1f、3f テーパ面
1g テーパ面
3g 段部
5 分注部品
5a 計量部
5b 吐出流路
5c 突出部
5f テーパ面
5g テーパ面
Ac 中心軸
Acm 計量部の中心軸
Acf 吐出流路の中心軸
df 吐出流路の内直径
Dm 計量部の内直径
Lf 吐出流路の長さ
Lm 計量部の長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品であって、
上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、前記開口部に形成される気液界面と当該空間とによって規定される容積を利用して、当該空間に充填される前記液体を計量および保持する計量部と、
前記開口部と対向して前記計量部に連設されると共に、前記加圧気体の圧力が前記液体に印加された際に前記計量部に保持された前記液体を吐出する吐出流路と、
を具備し、
前記気液界面の相違によって発生する前記計量部で計量および保持される前記液体の体積のばらつきを抑えるように、前記計量部の中心軸に沿った断面における前記液体の吐出方向の長さがこの吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする分注部品。
【請求項2】
前記計量部は、前記断面における前記液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmに対して2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注部品。
【請求項3】
前記吐出流路は、前記液体の吐出方向に直交する方向の長さdが前記計量部の長さDmよりも小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注部品。
【請求項1】
保持した液体の全量を加圧気体を利用して一度に吐出する分注部品であって、
上部に形成される開口部と、この開口部に連なる一定容量の空間とを有すると共に、前記開口部に形成される気液界面と当該空間とによって規定される容積を利用して、当該空間に充填される前記液体を計量および保持する計量部と、
前記開口部と対向して前記計量部に連設されると共に、前記加圧気体の圧力が前記液体に印加された際に前記計量部に保持された前記液体を吐出する吐出流路と、
を具備し、
前記気液界面の相違によって発生する前記計量部で計量および保持される前記液体の体積のばらつきを抑えるように、前記計量部の中心軸に沿った断面における前記液体の吐出方向の長さがこの吐出方向に直交する方向の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする分注部品。
【請求項2】
前記計量部は、前記断面における前記液体の吐出方向の長さLmが吐出方向に直交する方向の長さDmに対して2Dm<Lm<10Dmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注部品。
【請求項3】
前記吐出流路は、前記液体の吐出方向に直交する方向の長さdが前記計量部の長さDmよりも小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載の分注部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−223944(P2006−223944A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38162(P2005−38162)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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