説明

分級装置及び分級方法

【課題】 本発明は、溶媒中に分散された粒子を精度良く分級することができる分級装置を提供する。
【解決手段】 本発明の分級装置Aは、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を貯留する分散溶液貯留槽1と、上記分散溶液を分級する筒状篩体21が配設されてなる分級槽2と、上記分散溶液貯留槽2内と上記筒状篩体21の供給口21a とを接続して分散溶液を筒状篩体21内に供給する供給管8と、上記分散溶液貯留槽2と上記筒状篩体21の排出口21b とを接続して上記筒状篩体21内を通過した分散溶液を分散溶液貯留槽1内に排出する排出管9とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒中に分散した粒子を分級するための分級装置及び分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、合成樹脂粒子などの有機系粒子や、シリカ粒子などの無機系粒子が、各種分野において広く用いられており、使用目的や使用用途によって求められる粒子径や粒度分布が異なっている。
【0003】
特に、液晶表示装置に用いられる拡散板や拡散フィルムに用いられる光拡散剤、塗料などの艶消し剤として用いられる粒子や、静電トナー用粒子などでは、その平均粒子径や粒度分布がそれらの性能を大きく左右することから、粒子の平均粒子径や粒度分布を制御することが求められている。
【0004】
粒子の平均粒子径や粒度分布を制御する装置としては、サイクロン式、沈降式、篩式の分級装置が用いられているが、乾式方法による篩式の分級装置は、粒子の分級効率や取扱性の点において優れていることから最も広く採用されている。
【0005】
しかしながら、乾式方法による篩式の分級装置では、粒子の帯電が原因となって篩に粒子が付着し、或いは、粒子同士が静電気によって凝集してしまい、小さい粒子径の粒子を分級することが難しく、所望の粒度分布を有する粒子を得ることができないといった問題点を有していた。
【0006】
そこで、特許文献1には、液体に浸漬した網面よりなる篩を液体の水面よりも上方位置にまで変位せしめることにより、篩の網面の下方に網面での表面張力を介して液柱を形成し、次いで、液柱の頂面に被分級粒子と混合した液体を供給することにより、大径の粒子は網面上に、小径の粒子は液体と共に下方に分級する湿式篩による分級方法が提案されている。
【0007】
ところが、上記分級方法では、分級処理される粒子を混合した液体を篩でふるい、小径粒子は篩の下方に排出される一方、大径粒子は篩面上に堆積されることから、粒子の分級を進めていくにつれて篩上には大径粒子が多量に堆積した状態となり、大径粒子の重量によって篩が破れてしまう虞れがあった。更に、分級が進むにつれて篩上には大径粒子が堆積してくるために、分級作業中に篩上に堆積した大径粒子を集めて除去する必要があり、面倒な作業を要するといった問題点も有していた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−296121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、溶媒中に分散された粒子を精度良く分級することができる分級装置及び分級方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の分級装置は、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を貯留する分散溶液貯留槽と、上記分散溶液中の粒子を分級する筒状篩体が配設されてなる分級槽と、上記分散溶液貯留槽内と上記筒状篩体の供給口とを接続して分散溶液を筒状篩体内に供給する供給管と、上記分散溶液貯留槽と上記筒状篩体の排出口とを接続して上記筒状篩体内を通過した分散溶液を分散溶液貯留槽内に排出する排出管とからなることを特徴とする。
【0011】
又、本発明の分級方法は、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を分級槽内に配設された筒状篩体内にその供給口を通じて供給し、この筒状篩体で粒子を分級して分級槽中に排出すると共に、上記筒状篩体内を通過した分散溶液を上記筒状篩体の排出口を通じて分級槽外に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分級装置は、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を貯留する分散溶液貯留槽と、上記分散溶液中の粒子を分級する筒状篩体が配設されてなる分級槽と、上記分散溶液貯留槽内と上記筒状篩体の供給口とを接続して分散溶液を筒状篩体内に供給する供給管と、上記分散溶液貯留槽と上記筒状篩体の排出口とを接続して上記筒状篩体内を通過した分散溶液を分散溶液貯留槽内に排出する排出管とからなることを特徴とするので、分散溶液中の粒子を筒状篩体内に通過させることによって連続的に分級し、筒状篩体を通過した粒子を分級槽内に分離、貯留すると共に、筒状篩体で分級されずに筒状篩体内を通過した分散溶液を分散溶液貯留槽内に連続的に戻して、分散溶液中の粒子を筒状篩体のふるい目の目開きを境界として、目開き以下の粒子径を有する粒子と、目開きを超える粒子径を有する粒子とに連続的に分級して自動的に分離することができる。
【0013】
従って、本発明の分級装置によれば、目開き以下の粒子径を有する粒子と、目開きを超える粒子径を有する粒子の何れの粒子であっても簡単に且つ確実に分級し得ることができる。
【0014】
そして、筒状篩体のふるい目を通過しなかった粒子は、筒状篩体内に滞留、堆積することなく、筒状篩体内を通過して分散溶液貯留槽内に戻されるので、筒状篩体がこれを通過しなかった粒子の重量によって破れるようなことはない。
【0015】
又、上記分級装置において、筒状篩体に向かって流体を噴出する流体噴出装置が配設されている場合には、筒状篩体の内面に圧着して筒状篩体のふるい目の目詰まりを生じさせている粒子を流体噴出装置から噴出される流体によって筒状篩体の外方から内方に向かって押圧して筒状篩体の内面から離脱させて筒状篩体の目詰まりを解消することができ、筒状篩体による分散溶液の分級を常に円滑に行うことができる。
【0016】
更に、上記分級装置において、流体噴出装置は、筒状篩体に沿って移動可能に構成されている場合には、筒状篩体の同一個所に常に流体を噴出させるのではなく、筒状篩体にその長さ方向に順次、所定時間間隔毎に流体を噴出させており、筒状篩体の内側から外側に向いた分散溶液の分級方向の流れをできるだけ阻害することなく、筒状篩体の目詰まりを順次、解消することができ、筒状篩体による粒子の分級を円滑に且つ確実に行うことができる。
【0017】
又、上記分級装置において、流体噴出装置は、筒状篩体を取り囲むようにして配設された筒状の流体噴出部を有しており、この流体噴出部における筒状篩体に対向する面に流体を噴出させるための流体噴出口が形成されている場合には、筒状篩体に生じた目詰まりをその全周に亘って確実に解消することができ、筒状篩体による分散溶液中の粒子の分級を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の分級装置の一例を図面を参照しつつ説明する。図1に示したように、分級装置Aの分散溶液貯留槽1は、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を貯留可能に形成されている。
【0019】
そして、上記分散溶液貯留槽1には、分散溶液を攪拌して分散溶液中の粒子を溶媒中に均一に分散させておくための攪拌翼11が配設されていると共に、分散溶液貯留槽1内に溶媒を供給するための溶媒供給管12が分散溶液貯留槽1内に臨ませた状態に配設されている。
【0020】
又、図1乃至図3に示したように、分級槽2内には、一定長さを有する筒状篩体21がその長さ方向を水平方向に向けて分級槽2の内底面から所定高さだけ高い位置に配設されている。具体的には、筒状篩体21は、一定幅を有する帯状篩網をその幅方向に折り返して両端部同士を一体化させて筒状に形成されてなり、全面的に微細なふるい目が無数に形成されてなる。そして、筒状篩体21における長さと直径との比(L/D)が5〜50となるように調整することが好ましい。又、筒状篩体21のふるい目の目開きは、分級する粒子の粒子径によって適宜調整されるが、1〜100μmが好ましい。なお、筒状篩体21は、特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、スレンレスなどから形成されている。
【0021】
そして、上記筒状篩体21の両端開口部には円環状の取付部材22a 、22b が一体的に固着されており、この取付部材22a 、22b によって筒状篩体21の両端開口部は常時、円形状に開放された状態を保持しており、筒状篩体21の一端開口部を分散溶液の供給口21a に、他端開口部を分散溶液の排出口21b に形成している。
【0022】
一方、分級槽2の内底面上には一対の側面縦長長方形状支持部材3、3が筒状篩体21の長さ方向に該筒状篩体21の長さよりも若干短い間隔を存して上方に向かって立設、固定されており、これら支持部材3、3に一対の取付部材22a 、22b を貫通、支持させることによって、筒状篩体21が、分級槽2内にその長さ方向を水平方向に指向させた状態にて分級槽2の内底面から所定高さ位置に配設されている。
【0023】
そして、上記支持部材3、3の上端間には支持桟31が水平方向に架設されており、この支持桟31にその長さ方向に変位可能に流体噴出装置4が支持されている。この流体噴出装置4は、上記支持桟31にこの長さ方向に変位可能に配設された駆動部材5と、この駆動部材5から垂直下方に向かって突出した状態に一体的に設けられた一対の支持杆6、6と、この支持杆6、6の下端に一体的に設けられた短尺の円筒状の流体噴出部7とからなる。なお、駆動部材5は、分級槽2内に貯留される分散溶液に浸漬しない高さ位置に配設されている。
【0024】
駆動部材5は、筐体51内に駆動モータMが配設され、この駆動モータMの駆動軸にピニオン52が一体的に設けられており、このピニオン52を筐体51の底部に貫設した貫通孔53を通じて、上記支持桟31の上面にその長さ方向に配設したラック31a に噛合させている。そして、駆動モータMを駆動させることによって、駆動部材5を支持桟31の長さ方向に往復動するように構成している。なお、筐体51の外底面には一対のローラ54、54が配設されており、このローラ54、54を、支持桟31の上面に一体的に設けられ且つ筒状篩体21の長さ方向に延びるレール部材31b 、31b 内に回動自在に配設している。
【0025】
更に、筐体51の外底面における筒状篩体21の長さ方向に直交する方向の両端部には下方に向かってL字状の接続部材55、55が一体的に突設されており、この接続部材55、55の水平部55a 、55a を支持桟31の下方に位置させ、この水平部55a 、55a の長さ方向の中央部に一定長さを有する支持杆6、6の上端部を固着一体化させることによって、駆動部材5に支持杆6、6が垂直下方に向かって突出した状態に一体的に設けられている。
【0026】
又、支持杆6、6の下端部には短尺の円筒状の流体噴出部7がその直径線上における対向する外周面に水平方向に突設された突片70、70を支持杆6、6の下端部に固着させることによって一体的に設けられている。
【0027】
具体的には、流体噴出部7は、その中央部に形成された貫通孔71に筒状篩体21を挿通させた状態に配設されており、駆動部材5を支持桟31の長さ方向に往復動させることによって、流体噴出部7が筒状篩体21を取り囲んだ状態を維持しながら筒状篩体21の長さ方向に沿って筒状篩体21に接触することなく筒状篩体21の全長に亘って往復動するように構成されている。
【0028】
図3及び図4に示したように、流体噴出部7内には、その内部に円環状の流路72が形成されていると共に、流体噴出部7の内周面には、その表面に開口し且つ上記流路72に連通する円環状のスリット部を全周に亘って形成し、このスリット部を流体噴出口73としている。
【0029】
そして、流体噴出部7には、一端部が分級槽2外の流体供給源(図示せず)に接続された流体供給管74の他端部が流路72に連通させた状態で接続されており、流体供給管74を通じて供給された流体を流体噴出口73から筒状篩体21の外周部に向かって円環状に噴出、衝突させて、筒状篩体21のふるい目に詰まった粒子を筒状篩体21内に押圧して筒状篩体21のふるい目の目詰まりを解消するように構成されている。なお、流体供給管74を通じて供給される流体としては、特に限定されず、分散液貯留槽内に貯留される分散溶液の溶媒と同一の溶媒の他に、空気であってもよい。
【0030】
なお、一対の支持部材3、3間には、筒状篩体21の長さ方向に直交する方向の両端部のそれぞれにおいて、上下方向に所定間隔を存して一対の誘導桟32a 、32b 、33a 、33b が架設されており、誘導桟32a 、33a を支持杆6、6の上部に一体的に設けた筒部61、61内に、誘導桟32b 、33b を突片70、70内に往復動自在に挿通させており、流体噴出部7が筒状篩体21の長さ方向に安定的に往復動自在に構成されている。
【0031】
又、分級槽2内には、この分級槽2内に貯留された分散溶液中の粒子が沈殿しないように攪拌翼22が配設されていると共に、分散槽2内の分散溶液を排出するための取出口23が形成されている。
【0032】
そして、筒状篩体21の供給口21a には取付部材22a を介して供給管8の一端部が接続されていると共に、供給管8の他端部を分散溶液貯留槽1内に臨ませた状態としており、分散溶液貯留槽1内に貯留した分散溶液を供給管8に介在させたポンプPによって筒状篩体21内にその供給口21a を通じて圧入可能に構成されている。
【0033】
更に、筒状篩体21の排出口21b には取付部材22b を介して排出管9の一端部が接続されていると共に、排出管9の他端部を分散溶液貯留槽1内に臨ませた状態としており、筒状篩体21を通過した分散溶液が排出管9を通じて分散溶液貯留槽1内に戻されるように構成されている。
【0034】
次に、上記分級装置を用いて分散溶液中の粒子を分級する要領について説明する。先ず、分散溶液貯留槽1内に、分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液S1を所定量だけ供給し、攪拌翼11を回転させて分散溶液S1中の粒子が沈殿しないようにして、常に粒子が溶媒中に均一に分散した状態に維持する。なお、分散溶液S1中における粒子の含有量は、5〜40重量%に調整することが分級効率の点で好ましい。
【0035】
上記粒子としては、合成樹脂粒子や、シリカ微粒子、アルミナ微粒子などの無機粒子などが挙げられる。又、上記溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、アセトン、トルエンなどが挙げられる。
【0036】
そして、例えば、合成樹脂粒子を水系溶媒中に分散した分散溶液は、単量体を水系溶媒中にて懸濁重合することによって得ることができる。この際に使用できる単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系単量体、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。なお、これら単量体を二種以上使用して共重合樹脂粒子としてもよい。更に、架橋剤を用いて合成樹脂粒子を架橋させてもよい。
【0037】
又、上記した方法で懸濁重合して得られた、合成樹脂粒子を水系溶媒中に分散してなる分散溶液をそのまま本願の分散溶液として用いて合成樹脂粒子を分級することもできるが、懸濁重合して得られた分散溶液から合成樹脂粒子を一旦、固液分離し、洗浄した後、再度、合成樹脂粒子を溶媒中に再分散させたものを分散溶液として用いてもよい。
【0038】
一方、分級槽2内に、分散溶液に用いられている溶媒と同一組成を有する溶媒を筒状篩体21が完全に浸漬した状態となるように供給する。次に、ポンプPを作動させて分散溶液貯留槽1内の分散溶液S1を供給管8を通じて供給口21a から筒状篩体21内に圧入する。この際、筒状篩体21内に供給する分散溶液の供給速度は、0.5〜10リットル/分が好ましい。
【0039】
すると、分散溶液S1中の粒子のうち、筒状篩体21のふるい目の目開き以下の粒子の一部は、ポンプPによる圧力によって、筒状篩体21のふるい目を通じて分級されて筒状篩体21外に排出され、これ以外の残余の粒子は溶媒中に分散した状態でそのまま筒状篩体21内を通過し、筒状篩体21の排出口21b から排出されて排出管9を通じて分級溶液貯留槽1内に戻される。
【0040】
このように、筒状篩体21によって分級されなかった粒子は、溶媒中に分散した状態のまま筒状篩体21内を通過して筒状篩体21内に残留することなく速やかに分散溶液貯留槽1内に戻され、筒状篩体21内に粒子が滞留することに起因した筒状篩体の破れを生じることはない。
【0041】
そして、筒状篩体21は、分級槽2内に貯留された分散溶媒中に完全に浸漬された状態となっており、筒状篩体21内を通過する分散溶液の重量は筒状篩体21に加わることはなく、筒状篩体21内を通過する分散溶液の自重によって筒状篩体21に破れが生じるといったこともない。
【0042】
この時、筒状篩体21内に圧入された分散溶液S1中の粒子の一部が筒状篩体21のふるい目を通じて分級されて筒状篩体21外に排出されると同時に、分散溶液S1中における筒状篩体21のふるい目の目開きよりも大きな粒子径の粒子もポンプPによる流体圧によって筒状篩体21の内周面に押し付けられ、これが原因となって筒状篩体21に目詰まりを生じる。
【0043】
そこで、上記分級装置Aでは、筒状篩体21による分散溶液S1中の粒子の分級と同時に、流体供給管74を通じて分散溶液を構成している溶媒と同一組成を有する溶媒を流体噴出部7の円環状の流路72内に圧入して流体噴出口73から円環状に筒状篩体21に向かって噴射して筒状篩体21の全周に外方から溶媒を衝突させていると共に、筒状篩体21の全長に亘って隈なく溶媒が衝突するように、流体噴出装置4の駆動部材5の駆動モータMを作動させて、流体噴出部7を筒状篩体21の供給口21a と排出口21b との間の全長において同一速さにて往復動させている。なお、流体噴出部7から溶媒の代わりに空気を噴出させてもよい。
【0044】
このように、流体噴出部7の流体噴出口73から噴出された溶媒を筒状篩体21に外方から衝突させることによって、筒状篩体21のふるい目の目詰まりを生じさせている筒状篩体21の内周面に圧着した状態の粒子を外方から内方に向かって押圧して筒状篩体21の内周面から離脱させ、筒状篩体21に生じたふるい目の目詰まりを解消し、筒状篩体21の分級効率が低下するのを防止している。
【0045】
しかも、流体噴出部7は、筒状篩体21の長さ方向に沿って常時、往復動しているので、筒状篩体21の同一部分に常時、流体噴出部7から噴出された流体が衝突しておらず、筒状篩体21にはその長さ方向に順次、流体噴出部7から噴出された流体が所定時間間隔毎に衝突しており、粒子の分級に伴う筒状篩体21の内側から外側に向かう分散溶液の流れを阻害することなく、筒状篩体21のふるい目の目詰まりを解消しながら、筒状篩体21による分散溶液中の粒子の分級を円滑に行うことができる。
【0046】
そして、分散溶液貯留槽1内に戻された分散溶液は、これより前に筒状篩体21で分級処理が施された後に分散溶液貯留槽1内に戻された分散溶液や、分散溶液貯留槽1内に当初、供給された分散溶液と、攪拌翼11によって混合された上で、再度、ポンプPによって供給管8を通じて供給口21a から筒状篩体21内に圧入され、筒状篩体21内を通過しながら、分散溶液中の粒子の一部を筒状篩体21によって分級して筒状篩体21外に排出する。
【0047】
なお、分散溶液の分級操作を進めていくうちに、分級槽2内の分散溶液S2の量が増加するが、このような場合は適宜、分散槽2の取出口23を通じて分級槽2外から取り出せばよく、同様に、分散溶液貯留槽1内の分散溶液S1中の溶媒量が少なくなり、分散溶液S1の粘度が高くなることがあるが、このような場合は、溶媒供給管12を通じて溶媒を適宜、供給すればよい。
【0048】
上述の要領を連続的に繰り返すうちに、分級槽2内には、筒状篩体21のふるい目の目開き以下の粒子径を有する粒子のみが分離され、攪拌翼22により攪拌されて溶媒中に均一に分散した状態となっている一方、筒状篩体21で分級処理された上で分散溶液貯留槽1内に戻される分散溶液中に含まれる粒子は、筒状篩体21のふるい目の目開きよりも大きな粒子径を有する粒子が殆どを占めるようになり、ある時点を超えると、それ以上、分級作業を続けてもそれほど分級効率は上がらないので、予め定めた時間、或いは、分散溶液貯留層1内に戻された分散溶液中に含有される粒子中における筒状篩体のふるい目の目開き以下の粒子径を有する粒子の割合が所定割合以下となった時点をもって分級装置Aによる分散溶液の分級操作を終了する。
【0049】
このように、上記分級装置Aによれば、筒状篩体21のふるい目の目開き以下の粒子径を有する粒子と、筒状篩体21のふるい目の目開き以下の粒子径を有する粒子を極僅かながら含有するものの、殆どが筒状篩体21のふるい目の目開きを超える粒子径を有する粒子とに自動的に且つ確実に分離させることができる。
【0050】
なお、上記分級装置では、筒状篩体21をその長さ方向が水平方向に指向した状態に配設した場合を説明したが、筒状篩体21をその長さ方向が垂直に指向した状態に配設してもよい。
【実施例】
【0051】
(粒子径)
粒子の平均粒子径及び粒度分布は、ベックマンコールター社から商品名「マルチサイザーII」で市販されている測定装置を用い、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に準拠して測定した。
【0052】
(実施例1)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02重量%及びピロリン酸マグネシウム2.5重量%を分散させてなる水2600重量部中に、メタクリル酸メチル1300重量部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10.4重量部を供給してホモジナイザー(キネマチカ社製 商品名「ポリトロン」)を用いて4000rpmの回転速度にて5分間に亘って攪拌して、メタクリル酸メチルを水中に均一に分散させて懸濁液を作製した。
【0053】
そして、上記懸濁液をオートクレーブ中に供給してオートクレーブ内を窒素置換した後、懸濁液を300rpmの攪拌速度にて攪拌しながら60℃にて3時間に亘って懸濁重合を行い、更に、オートクレーブ内を100℃に昇温した上で1時間に亘って100℃に保持して懸濁重合を終了した。
【0054】
次に、オートクレーブ内を室温まで冷却した後、懸濁重合液中に20重量%の塩酸100重量部を添加してピロリン酸マグネシウムを溶解させた上で、懸濁重合液について固液分離及び水洗浄を繰り返し、更に、固液分離を行った後、60℃で24時間に亘って乾燥してポリメタクリル酸メチル粒子を得た。得られたポリメタクリル酸メチル粒子の粒度分布を測定し、その結果を表1の「原料粒子」の欄に記載した。なお、ポリメタクリル酸メチル粒子は、その平均粒子径が11.5μmで且つ粒子径の標準偏差が4.41μm)であった。
【0055】
図1〜4に示した分級装置を用いて上記ポリメタクリル酸メチル粒子を分級した。円筒状篩体21としては、目開きが20μmである一定幅を有するナイロン製の篩網をその幅方向に折り返して両端部同士を熱融着一体化して円筒状に形成したものを用いた。円筒状篩体21は、その内径が20mmで且つ長さが200mmで、単位面積当たりの開口率は14%で、ふるい目の総面積は17.6cm2 であった。
【0056】
上記ポリメタクリル酸メチル粒子300gを水1500ミリリットルに分散させてなる分散溶液を分散溶液貯留槽1内に供給し、分散溶液中のポリメタクリル酸メチル粒子が沈降するのを防止するために攪拌翼11を用いて分散溶液を攪拌し続けた。なお、分散溶液中のポリメタクリル酸メチル粒子の分級を行っている間、分散溶液貯留槽1内の分散溶液量が1200〜2000ミリリットルとなるように溶媒供給管12から水を適宜、分散溶液貯留槽1内に供給した。
【0057】
そして、分級槽2内に水を筒状篩体21が完全に浸漬した状態となるように供給した上で、ポンプPを作動させて分散溶液貯留槽1内の分散溶液S1を供給速度2リットル/分の流量でもって供給管8を通じて供給口21a から筒状篩体21内に圧入し、筒状篩体21によって分散溶液中の粉体を分級して筒状篩体21のふるい目から筒状篩体21外に排出して分級槽2内に貯留させる一方、これ以外の残余の粒子は水中に分散した状態のまま筒状篩体21内を通過し、筒状篩体21の排出口21b から排出されて排出管9を通じて分級溶液貯留槽1内に戻した。なお、分散溶液中のポリメタクリル酸メチル粒子の分級を行っている間、分散溶液中のポリメタクリル酸メチル粒子が沈降するのを防止するために、分級槽2の攪拌翼22を用いて分散溶液を攪拌し続けた。
【0058】
これと同時に、流体供給管74を通じて水を流体噴出部7の円環状の流路72内に圧入して流体噴出口73から水を円環状に筒状篩体21に向かって噴射して筒状篩体21の全周に外方から水を衝突させると共に、流体噴出装置4の駆動部材5の駆動モータMを作動させて、流体噴出部7を筒状篩体21の供給口21a と排出口21b との間の全長において同一速度にて往復動させた。
【0059】
上述の要領を30分間に亘って行って分散溶液中に分散されていたポリメタクリル酸メチル粒子を分級した。分級槽2内の分散溶液を取出口23から取り出して固液分離を行ってポリメタクリル酸メチル粒子を得た。得られたポリメタクリル酸メチル粒子の粒度分布を測定し、その結果を表1の「分級槽」の欄に記載した。
【0060】
同様に、分散溶液貯留槽1内の分散溶液を取り出して固液分離を行ってポリメタクリル酸メチル粒子を得た。得られたポリメタクリル酸メチル粒子の粒度分布を測定し、その結果を表1の「分散溶液貯留槽」の欄に記載した。なお、分散溶液貯留槽1内のポリメタクリル酸メチル粒子は、その平均粒子径が21.87μmで且つ粒子径の標準偏差が1.67μmであった。
【0061】
(実施例2)
実施例1で筒状篩体21のふるい目を通過して分級槽2内に貯留されたポリメタクリル酸メチル粒子を用いたこと、円筒状篩体21として、目開きが10μmである一定幅を有するナイロン製の篩網をその幅方向に折り返して両端部同士を熱融着一体化して円筒状に形成したものを用いたこと、分級を30分の代わりに40分間亘って行ったこと以外は実施例1と同様にして分散溶液中に分散されていたポリメタクリル酸メチル粒子を分級した。なお、円筒状篩体21は、その内径が20mmで且つ長さが200mmで、単位面積当たりの開口率は0.06%で、ふるい目の総面積は7.5cm2 であった。
【0062】
分散溶液貯留槽1内の分散溶液を取り出して固液分離を行ってポリメタクリル酸メチル粒子を得た。得られたポリメタクリル酸メチル粒子の粒度分布を測定し、その結果を表1の「分散溶液貯留槽」の欄に記載した。なお、分散溶液貯留槽1内のポリメタクリル酸メチル粒子は、その平均粒子径が13.6μmで且つ粒子径の標準偏差が2.63μmであった。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の分級装置を示した模式断面図である。
【図2】筒状篩体及び流体噴出装置を示した斜視図である。
【図3】筒状篩体及び流体噴出装置を示した縦断面図である。
【図4】筒状篩体部分を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 分散溶液貯留層
11 攪拌翼
12 溶媒供給管
2 分散槽
21 筒状篩体
21a 供給口
21b 排出口
22 攪拌翼
22a 取付部材
22b 取付部材
23 取出口
3 支持部材
4 流体噴出装置
5 駆動部材
6 支持杆
7 流体噴出部
73 流体噴出口
8 供給管
9 排出管
A 分級装置
M 駆動モータ
P ポンプ
S1 分散溶液
S2 分散溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を貯留する分散溶液貯留槽と、上記分散溶液中の粒子を分級する筒状篩体が配設されてなる分級槽と、上記分散溶液貯留槽内と上記筒状篩体の供給口とを接続して分散溶液を筒状篩体内に供給する供給管と、上記分散溶液貯留槽と上記筒状篩体の排出口とを接続して上記筒状篩体内を通過した分散溶液を分散溶液貯留槽内に排出する排出管とからなることを特徴とする分級装置。
【請求項2】
筒状篩体に向かって流体を噴出する流体噴出装置が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の分級装置。
【請求項3】
流体噴出装置は、筒状篩体に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の分級装置。
【請求項4】
流体噴出装置は、筒状篩体を取り囲むようにして配設された筒状の流体噴出部を有しており、この流体噴出部における筒状篩体に対向する面に流体を噴出させるための流体噴出口が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の分級装置。
【請求項5】
分級処理される粒子が溶媒中に分散されてなる分散溶液を分級槽内に配設された筒状篩体内にその供給口を通じて供給し、この筒状篩体で上記粒子を分級して分級槽中に排出すると共に、上記筒状篩体内を通過した分散溶液を上記筒状篩体の排出口を通じて分級槽外に排出することを特徴とする分級方法。
【請求項6】
分散溶液を分散溶液貯留層に貯留し、この分散溶液貯留槽内から筒状篩体内に供給すると共に、上記筒状篩体内を通過した分散溶液を分散溶液貯留層内に排出することを特徴とする請求項5に記載の分級方法。
【請求項7】
筒状篩体の外周面に向かって流体を噴出することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の分級方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−245042(P2007−245042A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73961(P2006−73961)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】