説明

分配装置、通信システム及び通信方法

【課題】データを送受信する通信装置と、各通信装置からのデータを受信して分配する分配装置とを含む通信システムで、分配装置が各通信装置から受信するデータを一旦記憶しておく際に利用される記憶手段の容量をより小さくすることができる分配装置、通信システム、及び通信方法を提供する。
【解決手段】分配装置1a,1b,1c夫々が有しているデータベース11a,11b,11cを、分配装置1a,1b,1cで共通し、内容が同期されるデータが記憶される共通領域12a,12b,12cと、基本的に異なる通信線3a,3b,3cに接続されているECU4a,4b,4c間では送受信されない個別領域13a,13b,13cとに区別し、分配装置1aは、ECU4aからデータを受信した場合、共通領域12a又は個別領域13aのいずれに記憶するか決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを送受信する複数の通信装置と、各通信装置から送信されるデータを受信して更に分配する複数の分配装置とを含み、各分配装置によって各通信装置へ要求に応じてデータを分配する通信システムに関する。特に、各通信装置へのデータの送信の際の通信負荷を低減させることができると共に、分配装置が各通信装置から受信するデータを一旦記憶しておく記憶手段の容量をより小さくすることができる分配装置、該分配装置を含む通信システム、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、複数の通信装置を接続し、各通信装置に夫々機能を割り振り、相互にデータを交換して多様な処理を行なわせるシステムが各分野で利用されている。例えば、車輌に配される車載LAN(Local Area Network)の分野では、通信装置としてECU(電子制御装置;Electronic Control Unit)を用い、各ECUに夫々特化させた処理を行なわせ、相互にデータを交換することにより、システムとして多様な機能を実現させている。
【0003】
各通信装置の機能の特化、また各通信装置が行なうことができる機能の増加に伴ない、通信媒体に接続される通信装置の数及び種類も増加する。更に、システムとして多様な機能が期待されるようになることから、各通信装置がデータを共有して連携する必要が生じ、送出されるデータの量は増加する。
【0004】
そこで、通信装置を複数の群に分け、異なる通信線に通信装置を群毎に接続する構成が一般的である。また、通信装置の数の増大に対して効率的に通信線を利用するために、通信装置を分ける群を、送受信するデータの種類で分別して群毎に通信速度の異なる通信線に接続する構成もある。これらの構成では、異なる通信線間はデータの送受信を中継するゲートウェイ装置により接続される。
【0005】
特許文献1には、車載LANの分野でECUを複数の群に分けて群毎に通信線に接続し、通信線を更にゲートウェイ装置で接続する構成とし、送受信されるデータに優先順位を識別するための優先度情報を付加し、ゲートウェイ装置が異なる通信線間でデータを送受信する場合に受信したデータの優先度情報から優先度を判別して優先度が高いデータを優先的に送信し、通信線の通信負荷が増加した場合でも優先度が高いデータの送信が大きく遅れないようにする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−159568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異なる通信線に接続している通信装置間でデータを送信する場合、ゲートウェイ装置が各通信装置から送信されるデータをいずれも他の通信装置へ送信されるように異なる通信線間を転送する構成では、通信線における通信量を低減できない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、各通信装置から送信されるデータを他の通信装置へ送信する分配装置が、受信したデータを一度記憶手段に記憶し、データの種別毎に各通信装置へ分配する構成とし、更にデータを記憶する記憶手段を他の装置と重複するデータを記憶する共通領域と、それ以外のデータを記憶する個別領域とに区別しておく構成とすることにより、他の分配装置と重複して使用しないデータを記憶する必要がないので、記憶手段の記憶容量が少ない場合でも、データを一旦記憶手段に記憶してから必要に応じて各通信装置に分配する方法を用いてデータの送受信の効率化を図り、通信負荷を低減させることができる分配装置、該分配装置を含む通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、共通領域に記憶されているデータを分配装置間の同期の際に送受信する構成とすることにより、分配装置間の通信量を最小限に抑えて通信負荷を少なくすることができる通信システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、データの種別毎に共通領域又は個別領域のいずれに記憶すべきかを示す情報を記憶しておく構成とすることにより、分配装置が当該情報を参照することによっていずれの領域に記憶するかを簡易な構成で決定することができる分配装置及び該分配装置を含む通信システムを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、データの種別毎に共通領域又は個別領域のいずれに記憶すべきかを示す情報には、他の装置の個別領域に記憶されるデータの種別も含まれる構成とすることにより、他の装置と重複して記憶するデータの量を最小限にするために共通領域に記憶されていないデータについても、他の装置から取得してデータを送信することができる分配装置及び該分配装置を含む通信システムを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、データの種別毎に共通領域又は個別領域のいずれに記憶すべきかを示す情報を変更することができる構成とすることにより、外部装置からの送信されるデータに変更がある場合でも柔軟に、他の装置と重複して記憶するデータの量を最小限にすることができ、記憶手段の記憶容量が少ない場合でも、データを一旦記憶手段に記憶してから必要に応じて各通信装置に分配する方法を用いてデータの送受信の効率化を図り、通信負荷を低減させることができる分配装置及び該分配装置を含む通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る分配装置は、複数の種別のデータを送受信する複数の外部装置から送信されるデータを受信する手段と、受信したデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されているデータを外部装置へ分配する手段とを備える分配装置であって、前記記憶手段は、他の装置と共通するデータを記憶する共通領域、及び、それ以外のデータを記憶する個別領域に区別されており、外部装置から受信したデータを前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定する決定手段と、前記共通領域に記憶されているデータを他の装置へ送信する手段と、他の装置から送信されたデータを前記共通領域に記憶する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る分配装置は、データの種別毎に前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶すべきかを示す記憶先情報を記憶しておく手段を備え、前記決定手段は前記記憶先情報に基づいていずれに記憶するかを決定するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る分配装置は、前記記憶先情報には、他の装置に記憶されるデータの種別が含まれており、外部装置からデータの送信要求を受け付けた場合に、受け付けた送信要求の対象データが他の装置に記憶されるデータであるか否かを判断する手段と、他の装置に記憶されるデータであると判断した場合、前記他の装置へ送信要求を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る分配装置は、前記記憶先情報は変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る通信システムは、複数の種別のデータを送受信する複数の通信装置群と、該通信装置の群毎に接続される第1乃至第4発明のいずれかに記載の複数の分配装置とを含む通信システムであって、前記分配装置は、前記共通領域に記憶されているデータを他の分配装置へ送信する手段と、他の分配装置から送信されたデータを前記共通領域に記憶する手段とを備え、各通信装置から送信されるデータを受信した場合、前記決定手段により共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る通信システムは、前記記憶先情報は、各分配装置の個別領域に記憶されるデータの種別を含み、各分配装置は、接続されている各通信装置からデータの送信要求を受け付けた場合、受け付けた送信要求の対象データが自身以外の分配装置の個別領域に記憶されているデータであるか否かを判断する手段と、自身以外の分配装置の個別領域に記憶されているデータであると判断した場合、前記分配装置へ送信要求を送信する手段と
を備えることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る通信システムは、前記分配装置は、一の通信装置の新規接続を検知する手段と、新規接続を検知した場合に、前記一の通信装置から送信されるデータの種別を取得する手段と、取得したデータの種別を前記記憶先情報に追加する手段と、追加後の前記記憶先情報を他の分配装置へ送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る通信システムは、前記分配装置は、一の通信装置の切断を検知する手段と、切断を検知した場合に、前記一の通信装置から送信されるデータの種別を取得する手段と、取得したデータの種別を前記記憶先情報から削除する手段と、削除後の前記記憶先情報を他の分配装置へ送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る通信方法は、複数の種別のデータを送受信する複数の通信装置を更に複数の群に分け、群毎に各通信装置に接続されて、各通信装置から送信されるデータを受信し、受信したデータを記憶手段に記憶し、記憶したデータを各通信装置へ分配する複数の分配装置により、各通信装置から送信されるデータを送受信する通信方法であって、前記記憶手段を、前記複数の分配装置間で共通するデータを記憶する共通領域、及び、それ以外のデータを記憶する個別領域に区別しておき、分配装置は、通信装置から受信したデータを前記記憶手段に記憶するに際し、受信したデータを前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定し、前記共通領域に記憶してあるデータを他の分配装置へ送信し、他の分配装置から受信したデータを前記共通領域に記憶することを特徴とする。
【0021】
本発明では、複数の外部装置から送信されるデータが分配装置により受信された場合、一度記憶手段に記憶され、記憶されたデータが更に外部装置へ夫々送信されるが、記憶手段は、他の分配装置と共通するデータが記憶される共通領域と、それ以外の夫々の分配装置のみで記憶されるデータが記憶される個別領域とに区別されており、外部装置から送信されたデータを受信した分配装置により、いずれの領域に記憶するかが決定される。
【0022】
また、本発明では、複数の群に分けられた複数の通信装置夫々に分配装置が接続される場合、他の分配装置へは共通領域に記憶されているデータが送信され、他の分配装置から受信したデータは共通領域に記憶され、共通領域に記憶されるデータの内容が同期される。
【0023】
本発明では、分配装置が外部装置から送信されたデータを共通領域又は個別領域のいずれに記憶するかを決定するに際し、データの種別毎にいずれに記憶すべきかが示されている記憶先情報が分配装置により参照される。
【0024】
本発明では、分配装置が参照する記憶先情報には、他の装置に記憶されるべきデータの種別が含まれており、分配装置がデータを送信するに際し記憶先情報が参照されて、送信するデータは他の装置に記憶されているか否かが判断され、他の装置に記憶されている場合は当該他の装置へ送信要求が更に送信される。
【0025】
本発明では、分配装置が参照する記憶先情報の内容を変更することが可能であり、分配装置へ外部装置から送信されるデータが変更された場合も対応可能である。即ち、外部装置が追加された場合又は取り外された場合でも、それに応じて記憶先情報の内容が更新される。
【発明の効果】
【0026】
本発明による場合、分配装置は他の装置と相互に送受信するデータは共通領域に記憶し、それ以外のデータについては個別領域に記憶するので、記憶手段に記憶されるデータが全て他の分配装置と重複するとは限らない。分配装置が記憶しているデータを全て他の装置と送受信して記憶している内容を同期させる場合と比較して、読み出されることのないデータが記憶手段に記憶されて記憶手段が無駄に利用されることを回避することができる。したがって、記憶手段の記憶容量を最小限に抑えても、各分配装置で各通信装置から受信したデータを記憶しておき、他の群の通信装置が必要とするデータを分配装置間で同期させてから各分配装置から送信する構成とする方法によって、通信装置間における送受信の効率化を図り、通信負荷を低減させることが可能になる。
【0027】
更に、本発明による場合、分配装置間で送受信するデータは、共通領域に記憶されているデータとするので、分配装置間におけるデータの通信量を抑えて、通信負荷を少なくすることができる。
【0028】
本発明による場合、分配装置は、いずれに記憶すべきかを示す記憶先情報を予め記憶しておき、通信装置から受信したデータを共通領域又は個別領域のいずれに記憶するかを決定するに際し、記憶先情報を参照する簡易な構成で決定することが可能である。
【0029】
本発明による場合、他の装置と重複して記憶するデータの量を最小限にするために他の装置の個別領域にデータが記憶されている場合でも、そのデータが他の装置の個別領域に記憶されているかを認識することができる。したがって、通信装置へ送信するデータが、自身の記憶手段に記憶されていないデータであっても、他の装置から取得することができ、通信装置へ送信することができる。
【0030】
本発明による場合、データの種別毎に共通領域又は個別領域のいずれに記憶すべきかを示す情報の内容を変更することができるので、通信装置の追加、取り外し、休止等に応じて、さらにはデータの使用状況に応じて柔軟に各分配装置で共通して記憶するデータの量を最小限にすることができ、分配装置の記憶手段の記憶容量がより少ない場合でもデータを一旦記憶手段に記憶してから必要に応じて各通信装置に分配する方法を用いてデータの送受信の効率化を図り、通信負荷を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0032】
なお、以下に示す実施の形態では、本発明に係る通信システムを、CAN(Controller Area Network)プロトコルに準じてデータの送受信処理を行なう車載ECUを複数接続して構成する車載通信システムに適用する例について説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。車載通信システムは、複数の群で構成される夫々データを送受信する通信装置であるECU(Electronic Control Unit)4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…と、群毎に各ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…を接続している通信線3a,3b,3cと、通信線3a,3b,3cに夫々接続しており、各ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…へデータを分配する分配装置1a,1b,1cと、分配装置1a,1b,1cを接続している通信線2とを含む。実施の形態1における車載通信システムは、幹線となる通信線2に接続された分配装置1a,1b,1cを介して複数の群に分けられたECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…間を接続する幹線型の車載ネットワークを構成している。
【0034】
分配装置1a,1b,1c間の通信線2を介した接続形態(トポロジー)は、バス型、スター型、ディジーチェーン型等、いずれの形態でもよい。ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…、及び分配装置1a,1b,1c間の通信線3a,3b,3cを介した接続形態もバス型、スター型、ディジーチェーン型等、いずれの形態でもよい。
【0035】
分配装置1a,1b,1cは夫々、データベース11a,11b,11cとして使用する記憶領域を備えている。分配装置1aは基本的に、通信線3aに接続しているECU4a,4a…から送信されたデータをデータベース11aに記憶し、データベース11aから読み出されたデータをECU4a,4a…へ送信する。
【0036】
ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…は、測定値、計算値、制御値等の各種物理量の数値情報を含むデータの送信又はエンジン、ブレーキ等のマイクロコンピュータによる制御が可能な装置である。例えば一のECU4aはABS(Antilock Brake System)として機能し、車輪の回転速度(車輪速)を検知する図示しないセンサと接続されている。一のECU4aは、車両の制動時にセンサを介して検知した車輪速に基づいてブレーキを制御すると共に、車輪速の測定値を含むデータを分配装置1aへ送信する。
【0037】
ここで、ECU4aから送信された車輪速のデータを他の通信線3b,3cに接続しているECU4b,4b,…,4c,4c,…でも使用する場合、分配装置1aは車輪速のデータを他の分配装置1b,1cのデータベース11b,11cにも記憶させ、分配装置1b,1cからECU4b,4b,…,4c,4c,…へ送信させる。そのため、分配装置1a,1b,1cは、ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…から送信されるデータを他の分配装置1a,1b,1cへ送信し、分配装置1a,1b,1cが受信して、夫々が有するデータベース11a,11b,11cに記憶する。これにより、データベース11a,11b,11cの内容が同期され、異なる通信線3a,3b,3cに接続しているECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…間で同一のデータを使用することができる。
【0038】
また、この場合、分配装置1a,1b,1cで一度データを記憶しておくことにより、分配装置1a,1b,1cからECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…へ送信するタイミングを夫々における処理に応じて最適化すること、ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…における処理に応じてデータを組み合わせて送信すること、又は必要に応じてデータ間で演算を行なってから送信することができる。このように分配装置1a,1b,1cからデータを効率的に送信することができるので、通信線3a,3b,3cにおける通信負荷を低減させることもできる。
【0039】
なお、実施の形態1における分配装置1a,1b,1cのデータベース11a,11b,11cの内容は、必ずしも全てが同じ内容とならなくてもよい。ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…から送信されるデータの種類によっては、異なる通信線3a,3b,3cに接続されているECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…では使用されないデータも含められる。例えば、ECU4aから送信される車輪速のデータは、通信線3aに接続されているECU4a,4a,…間では使用されるが、ECU4b,4b,…,4c,4c,…では使用されない場合がある。このようなデータについても全てのデータベース11a,11b,11cに記憶される構成では、使用されることのないデータを記憶するために記憶領域が使用されることになる。
【0040】
そこで実施の形態1における車載通信システムを構成する分配装置1a,1b,1cのデータベース11a,11b,11cは夫々、図1に示すように分配装置1a,1b,1cで共通して記憶されるべきデータが記憶される共通領域12a,12b,12cと、それ以外のデータが記憶される個別領域13a,13b,13cとに区別される。分配装置1a,1b,1cは、共通領域12a,12b,12cに記憶されるデータを相互に送受信して内容を同期させ、夫々が接続している通信線3a,3b,3cに接続しているECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…間で使用されるデータは個別領域13a,13b,13cに記憶する。
【0041】
図2は、実施の形態1における車載通信システムを構成する分配装置1a,1b,1c及びECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…の内部構成を示すブロック図である。
【0042】
分配装置1aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部10aと、揮発性のメモリを利用した記憶部14aと、通信線3aに接続されている第1通信制御部15aと、通信線2に接続されている第2通信制御部16aとを備える。他の分配装置1b,1cも分配装置1aと同様の内部構成であるので詳細な説明を省略する。
【0043】
制御部10aは、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない不揮発性の内臓メモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部を制御する。
【0044】
記憶部14aには、制御部10aがECU4a,4a,…から受信したデータを記録するデータベース11aのための記憶領域が設けられている。制御部10aは、受信したデータから「車輪速」等のデータの種別毎に、対応する具体的な測定値、計算値、制御値を読み出してデータベース11aに記憶する。
【0045】
ここでデータベース11aは、共通領域12aと個別領域13aとに区別されており、制御部10aはECU4a,4a,…から受信したデータを夫々共通領域12a又は個別領域13aのいずれに記憶すべきかを決定する。このため、記憶部14aには、ECU4a,4a,…から受信したデータの種別毎に、いずれに記憶すべきかが示されている参照テーブル17aが記憶されている。なお、参照テーブル17aは、図2に示すようにデータベース11aとは別に記憶部14aに記憶される構成でもよいが、データベース11aの内の共通領域12a内に記憶されることにより、同一の内容を分配装置1a,1b,1cで共通に記憶することが可能な構成としてもよい。テーブルとしての形式のみならず、データの種別毎にデータベース11aにおけるインデックスによって記述されていてもよい。
【0046】
第1通信制御部15aは、通信線3aを介して接続されているECU4a,4a,…とのデータの送受信を実現する。制御部10aは、第1通信制御部15aによりECU4a,4a,…からデータを受信し、データを送信する。
【0047】
また、第2通信制御部16aは、通信線2を介して接続されている他の分配装置1b,1cとのデータの送受信を実現する。制御部10aは、第2通信制御部16aによりデータベース11aの内の共通領域12aから読み出したデータを他の分配装置1b,1cへ送信し、他の分配装置1b,1cから送信されるデータを受信する。
【0048】
ECU4aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部40と、不揮発性のメモリを利用した記憶部41と、通信線3aに接続されている通信制御部42と、図示しないセンサからの信号を入力する入力部43と、図示しない制御対象装置へ制御信号を出力する出力部44とを備える。他のECU4b,4cは、ECU4aと同様の構成であることから詳細な説明を省略する。なお、ECU4a,4b,4cによっては入力部43及び出力部44はいずれか一方のみ備える構成でもよい。
【0049】
ECU4aの制御部40は、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等から電源回路41を介して電力の供給を受け、入力部43を介してECU4aに接続されている図示しないセンサからの測定値を表す信号を検知し、出力部44を介してECU4aに接続されている制御対象の装置へ制御信号を送信する。
【0050】
記憶部41には、制御部40が処理の過程で発生する各種情報又は例えば図示しないセンサから入力された信号が表す測定値が一時的に記憶される。
【0051】
通信制御部42は、ネットワークコントローラチップ又はネットワークコントロール機能を有して通信線3aとの通信を実現する。ECU4aの制御部40は、例えば1ミリ秒の一定時間毎に図示しないセンサからの信号を検知し、検知した信号が示す物理量の数値を含むデータを通信制御部42を介して送信する。また、ECU4aの制御部40は、通信制御部42を介して分配装置1aから送信されるデータを受信する。
【0052】
上述のように構成される実施の形態1における車載通信システムにおいて、分配装置1aの制御部10aが、記憶部14aに記憶されている参照テーブル17aを参照し、ECU4a,4a,…から受信したデータを共通領域12a及び個別領域13aのいずれかに記憶する処理について説明する。
【0053】
図3は、実施の形態1における分配装置1aの記憶部14aに記憶される参照テーブル17aの内容例を示す説明図である。図3の説明図に示すように、データの種別毎に記憶されるべき領域が示されている。図3の説明図に示される内容例では、車輪速のデータ及び操舵角のデータは共通領域12aに記憶され、オイル温度のデータは分配装置1aのデータベース11a中の個別領域13aに記憶されるべきであることが示されている。
【0054】
また、図3の説明図に示すように、実施の形態1における分配装置1aの記憶部14に記憶される参照テーブル17aには、室内温度のデータは分配装置1bのデータベース11b中の個別領域13bに記憶されるべきことが示されている。これにより、分配装置1aの制御部10aは、例えばECU4a,4a,…のいずれかから室内温度のデータの送信要求を受け付けた場合、参照テーブル17aを参照することによってデータベース11a中には室内温度のデータは記憶されていないこと、及び室内温度のデータは分配装置1bのデータベース11b中の個別領域13bに記憶されているので分配装置1bから取得すべきであることを認識することが可能となる。
【0055】
なお、実施の形態1では図3の説明図に示したように、分配装置1aの記憶部14aに記憶される参照テーブル17aには、他の分配装置1b,1cのデータベース11b,11c中の個別領域13b,13cに記憶されているデータの種別も含まれている。しかしながら、本発明はこれに限らず、分配装置1aの制御部10aが通信線3aを介して接続しているECU4a,4a,…から受信したデータをいずれの領域に記憶すべきかのみを示すためのテーブルであってもよい。
【0056】
次に、分配装置1aの制御部10aが参照テーブル17aに基づき、通信線3aを介して接続しているECU4a,4a,…から受信したデータをデータベース11aに記憶する処理について説明する。
【0057】
図4は、実施の形態1における分配装置1aの制御部10aにより、ECU4a,4a,…から受信したデータがデータベース11aに記憶される処理手順を示すフローチャートである。なお、他の分配装置1b,1cの制御部10b,10cによる処理手順も同様であるので詳細な説明を省略する。
【0058】
分配装置1aの制御部10aは、ECU4a,4a,…のいずれかからデータを受信したか否かを判断する(ステップS11)。制御部10aは、ECU4a,4a,…のいずれからもデータを受信していないと判断した場合(S11:NO)、処理をステップS11へ戻し、データを受信したと判断するまで待機する。
【0059】
制御部10aは、ECU4a,4a,…のいずれかからデータを受信したと判断した場合(S11:YES)、受信したデータの種別を特定する(ステップS12)。制御部10aは、参照テーブル17aを参照し(ステップS13)、特定されたデータの種別に基づいて、共通領域12aに記憶すべきか否かを決定する(ステップS14)。
【0060】
制御部10aは、参照テーブル17aを参照することにより、共通領域12aでなく個別領域13aに記憶すべきと決定した場合(S14:NO)、ステップS11で受信したデータを個別領域13aに記憶し(ステップS15)、処理を終了する。
【0061】
制御部10aは、参照テーブル17aを参照することにより、共通領域12aに記憶すべきと決定した場合(S14:YES)、ステップS11で受信したデータを共通領域12aに記憶し(ステップS16)、処理を終了する。
【0062】
上述のように共通して使用される頻度の高いデータは共通領域12a,12b,12cに記憶して同期させるようにしておき、共通して読み出されるデータ以外は個別領域13a,13b,13cに記憶する。これにより、制御部10a,10b,10cによって読み出されないデータが記憶部14a,14b,14c内の記憶領域を占める量をできる限り少なくすることができる。
【0063】
例えば、図3の説明図に示したようなオイル温度のデータについては、ECU4a,4a,…は夫々比較的高い頻度で使用する一方で、室内温度のデータについてはECU4a,4a,…は夫々ほとんど使用しない場合、室内温度のデータが分配装置1aのデータベース11aに記憶されていても、ほとんど読み出されず使用されない。この場合、室内温度のデータが記憶されている記憶領域は無駄に使用されていることになる。参照テーブル17aに基づいて共通領域12a及び個別領域13aとに区別して記憶されることによって、ECU4a,4a,…との関係において比較的頻繁に使用する最小限のデータをデータベース11aに記憶することができる。
【0064】
なお、上述のように制御部10aはECU4a,4a,…から受信したデータを、共通領域12a又は個別領域13aのいずれに記憶すべきかを、予め記憶される参照テーブル17aを参照することによって決定する構成とした。本発明はこれに限らず、制御部10aは、受信したデータに付与されている重要度、優先度が高い程、共通領域12aに記憶するように決定する構成としてもよい。また、他の分配装置1b,1cからの送信要求の頻度が高い程共通領域12aに記憶するように決定するようにしてもよい。
【0065】
次に、分配装置1a,1b,1cが夫々有するデータベース11a,11b,11cの内の共通領域12a,12b,12cを同一の内容に同期させる処理について以下に説明する。図5は、実施の形態1における分配装置1a,1b,1c間でデータベース11a,11b,11cの内容を同期させる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0066】
データベース11a,11b,11cの内容を同期させる際、分配装置1aの制御部10aは、データベース11aの共通領域12aのデータを読み出し(ステップS21)、読み出したデータを通信線2へ送出して分配装置1b,1cへ送信する(ステップS22)。ステップS21において読み出されてステップS22で送信されるデータは、共通領域12a全体でもよい。
【0067】
分配装置1b,1cの制御部10b,10cは、分配装置1aから送信されたデータを受信し(ステップS23)、受信したデータをデータベース11b,11cの共通領域12b,12cに夫々記憶し(ステップS24)、処理を終了する。
【0068】
図5のフローチャートには、分配装置1aから分配装置1b,1cへ同期のためのデータが送信される処理手順を示した。分配装置1bから分配装置1a,1cへ、分配装置1cから分配装置1a,1bへのデータの送信も同様である。なお、例えば分配装置1aから共通領域12aから読み出されて送信されたデータを受信した分配装置1bの制御部10bは、受信したデータが自身のデータベース11bの共通領域12bに記憶してあるデータよりも新しいデータであるときのみステップS24により記憶することが望ましい。
【0069】
図5のフローチャートに示したように、分配装置1a,1b,1cでデータベース11a,11b,11cの内容を同期させる場合、共通領域12a,12b,12cに記憶されているデータのみを相互に送受信する。これにより、共通領域12a,12b,12cと個別領域13a,13b,13cとに区別して記憶部14a,14b,14cの記憶容量を最小限にすることができるのみならず、データベース11a,11b,11cに記憶されているデータ全体を同期させる場合よりも、通信線2で送受信されるデータの量を低減し、通信負荷を少なくすることができる点、優れた効果を奏する。
【0070】
次に、ECU4a,4a,…へ分配装置1aからデータが送信された場合の分配装置1aにおける処理について以下に説明する。なお、実施の形態1では、ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…から、通信線3a,3b,3cを介して接続している分配装置1a,1b,1cへ夫々送信要求が送信され、分配装置1a,1b,1cからはその送信要求に応じてデータベース11a,11b,11cから読み出したデータを分配送信する構成とする。
【0071】
図6は、実施の形態1における分配装置1aの制御部10aからデータを送信する処理手順を示すフローチャートである。
【0072】
ECU4aの制御部40は、使用するデータの送信要求を通信線3aを介して接続されている分配装置1aへ通信制御部42により送信する(ステップS301)。
【0073】
分配装置1aの制御部10aは、ECU4aから送信されたデータの送信要求を受信し(ステップS302)、参照テーブル17aを参照し(ステップS303)、送信要求の対象データは自身のデータベース11aに有るか否かを判断する(ステップS304)。
【0074】
制御部10aは、送信要求の対象データはデータベース11aに有ると判断した場合(S304:YES)、更に参照テーブル17aにより共通領域12aに記憶されているか否かを判断する(ステップS305)。制御部10aは、共通領域12aに記憶されていると判断した場合(S305:YES)、共通領域12aから対象データを読み出し(ステップS306)、読み出したデータをECU4aへ送信する(ステップS307)。
【0075】
制御部10aは、参照テーブル17aにより共通領域12aでなく個別領域13aに記憶されていると判断した場合(S305:NO)、個別領域13aから対象データを読み出し(ステップS308)、読み出したデータをECU4aへ送信する(S307)。
【0076】
制御部10aは、送信要求の対象データはデータベース11aの共通領域12a及び個別領域13aのいずれにも無いと判断した場合(S304:NO)、参照テーブル17aにより対象データが記憶されている個別領域13b,13cのいずれか、例えば分配装置1bの個別領域13bを特定し(ステップS309)、特定した個別領域13bを有している分配装置1bへデータの送信要求を送信する(ステップS310)。次に制御部10aは、要求先の分配装置1bからデータを受信したか否かを判断し(ステップS311)、データを受信していないと判断した場合(S311:NO)、処理をステップS311へ戻してデータを受信したと判断するまで待機する。制御部10aは、データを受信したと判断した場合(S311:YES)、受信したデータをECU4aへ送信する(S307)。
【0077】
ECU4aの制御部40は、分配装置1aから送信されたデータを受信し(ステップS312)、処理を終了する。
【0078】
なお、図6のフローチャートの処理手順の内のステップS310によって送信された送信要求を受信した分配装置1bの制御部10bの処理は、上述のステップS302からステップS303まで、及びステップS305からステップS308までの処理と同様である。なお、参照テーブル17aにより、対象データが記憶されている個別領域13bは特定された上で送信要求が送信されているので、分配装置1bの制御部10bは、自身のデータベース11bに対象データが有るか否かの判断(S304)は行なわなくともよい。
【0079】
図6のフローチャートに示したように、分配装置1aの制御部10aは参照テーブル17aを参照することにより、自身のデータベース11aの共通領域12a及び個別領域13aのいずれにも記憶されていないデータの記憶先の個別領域13bを特定した。これは、上述のように参照テーブル17aに他の分配装置1b,1cの個別領域13b,13cに記憶されているデータの種別も含まれている構成、即ち参照テーブル17a,17b,17cの内容は同一の内容であるとする構成としたために可能である。
【0080】
しかしながら本発明はこれに限らず、分配装置1aの参照テーブル17aには、他の分配装置1b,1cのデータベース11b,11cの個別領域13b,13cに記憶されているデータについては記載されておらず、ECU4a,4a,…から受信したデータを制御部10aがいずれに記憶すべきかを決定するために基準のみが記憶されていてもよい。この場合、分配装置1aの制御部10aは、自身のデータベース11aの共通領域12a及び個別領域13aのいずれにも記憶されていないデータについては、記憶先の個別領域13b,13cを特定せず分配装置1b,1cへ送信要求を送信する構成でもよい。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態2では上述の実施の形態1の構成に加え、通信線3aにより接続されているECU4a,4a,…に更に新たにECU4xが追加された場合、分配装置1a,1b,1cの記憶部14a,14b,14cに記憶されている参照テーブル17a,17b,17cが新たに追加されたECU4xに応じて自動的に更新される構成とする。
【0082】
実施の形態2における車載通信システムの構成は実施の形態1と同様である。したがって、実施の形態1と共通する構成についての詳細な説明を省略し、実施の形態1と同一の符号を用いて分配装置1aの制御部10aにより、新たにECU4xが追加された場合に参照テーブル17a,17b,17cが更新される処理について説明する。
【0083】
ECU4xの構成はECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0084】
なお、実施の形態2では、ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…,4xは夫々車載通信システムに加えられて起動する際に、分配装置1a,1b,1cへ自身が送信するデータ及び分配装置1a,1b,1cから受信するデータの種別を表わす識別情報を送信する機能を有する。更にECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…,4xは、受信するデータについての分配装置1a,1b,1cからECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…への送信タイミングを示す情報を送信する機能を更に有してもよい。これにより分配装置1a,1b,1cの制御部10a,10b,10cは夫々、通信線3a,3b,3cを介して接続されているECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…から送信されるデータ、ECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…へ送信すべきデータ、及び送信すべきタイミングを認識することが可能である。
【0085】
したがって、分配装置1aの制御部10aは、新たに通信線3aに接続されたECU4xから送信される識別情報及びタイミングを示す情報により、ECU4xから送信されるデータが、他の分配装置1b,1cに接続されているECU4b,4b,…,4c,4c,…へ頻繁に送信すべきデータであるか否かを判断する。制御部10aは、頻繁に送信すべきデータであると判断した場合は共通領域12a,12b,12cに記憶すると決定し、それ以外であれば個別領域13aに記憶すると決定する。また、分配装置1aの制御部10aは、データの種別毎に予め付与されている優先度に応じて、所定の優先度以上のデータであると判断した場合は、共通領域12a,12b,12cに記憶すると決定し、所定の優先度未満のデータであると判断した場合は個別領域13aに記憶すると決定してもよい。
【0086】
図7は、実施の形態2における分配装置1aの制御部10aにより、新たにECU4xが追加された場合に参照テーブル17a,17b,17cが変更される処理手順を示すフローチャートである。
【0087】
ECU4xの制御部40は、車載通信システムに加えられて起動する際、送信するデータ及び受信するデータの識別情報を送信する(ステップS401)。
【0088】
分配装置1aの制御部10aは、新たに追加されるECU4xから送信するデータ及び受信するデータの識別情報を受信したか否かを判断することにより、ECU4xが追加されたか否かを判断する(ステップS402)。制御部10aは、ECU4xが追加されていないと判断した場合(S402:NO)、処理をステップS402へ戻してECU4xが追加されたと判断するまで待機する。
【0089】
制御部10aは、ECU4xから送信するデータ及び受信するデータの識別情報を受信したことによってECU4xが追加されたと判断した場合(S402:YES)、受信したデータの識別情報に基づいて、ECU4xから送信されるデータの種別を特定する(ステップS403)。制御部10aは、特定したデータの種別に応じて共通領域12aに記憶すべきか否かを判断する(ステップS404)。
【0090】
制御部10aは、ECU4xから送信されるデータを共通領域12aに記憶すべきと判断した場合(S404:YES)、共通領域12a、即ち他の分配装置1b,1cの共通領域12b,12cにも記憶すべきデータとして参照テーブル17aに追加する(ステップS405)。また、ECU4xから送信されるデータを共通領域12aに記憶すべきでなく、個別領域13aに記憶すべきと判断した場合(S404:NO)、個別領域13aに記憶すべきデータとして参照テーブル17aに追加する(ステップS406)。
【0091】
制御部10aは次に、ECU4xから送信されるデータが共通領域12a又は個別領域13aのいずれに記憶すべきかを追加した参照テーブル17aを他の分配装置1b,1cへ送信することによって同期させる(ステップS407)。次に制御部10aは、ECU4xから送信されるデータの参照テーブル17a,17b,17cへの追加を完了したことを示す完了通知をECU4xへ送信する(ステップS408)。
【0092】
ECU4xの制御部40は、分配装置1aから完了通知を受信したか否かを判断し(ステップS409)、完了通知を受信していないと判断した場合(S409:NO)、処理をステップS409へ戻して完了通知を受信したと判断するまで待機する。ECU4xの制御部40は、完了通知を受信したと判断した場合(S409:YES)、データの送信を開始し(ステップS410)、処理を終了する。
【0093】
新たにECU4xが追加された場合は、図7のフローチャートに示した処理手順のように、分配装置1aの制御部10aにより参照テーブル17aが変更され、他の分配装置1b,1cへ送信されて分配装置1a,1b,1cにおける参照テーブル17a,17b,17cの内容が同一となる。ECU4xから送信されるデータが共通領域12aに記憶されるべきデータである場合は、そのデータは分配装置1a,1b,1c間で同期されて他の分配装置1b,1cからECU4b,4b,…,4c,4c,…へ送信される。ECU4xから送信されるデータが個別領域13aに記憶されるべきデータである場合は、そのデータについて送信を要求するECU4bへは、分配装置1bによる送信要求に応じて分配装置1aが個別領域13aから読み出して送信し、分配装置1bがこれを受信して送信する。このように、新たにECU4xが追加されたことに応じて参照テーブル17a,17b,17cの内容を自動的に変更することができ、柔軟に対応することが可能である。
【0094】
次に、逆にECU4xが通信線3aから切断され、車載通信システムから取り外された場合、又はECU4xが休止状態となった場合に、参照テーブル17aが変更される処理手順について説明する。
【0095】
図8は、実施の形態2における分配装置1aの制御部10aにより、一のECU4xが取り外された場合に参照テーブルが変更される処理手順を示すフローチャートである。
【0096】
分配装置1aの制御部10aは、ECU4xが取り外されたことを検知したか否かを判断する(ステップS51)。
【0097】
なお、ステップS51における検知は、ECU4xから送信されるべきデータを所定時間以上受信できていないか否かによって検知する。他に、ECU4xが取り外されることを示す通知が分配装置1aへ送信され、分配装置1aの制御部10aがこの通知を受信することによって検知する構成でもよい。ECU4xが取り外されることを示す通知は、ECU4xから送信される構成でも、通信線3a又は通信線2に接続される外部装置から送信される構成でもよい。
【0098】
分配装置1aの制御部10aは、ECU4xが取り外されたことを検知していないと判断した場合(S51:NO)、処理をステップS51へ戻してECU4xが取り外されたことを検知したと判断するまで処理を繰り返す。
【0099】
制御部10aは、ECU4xが取り外されたことを検知したと判断した場合(S51:YES)、ECU4xから送信されるデータの種別を特定する(ステップS52)。制御部10aは、特定したデータ種別について記憶してある記憶先(共通領域12a,12b,12c又は個別領域13a)の情報を参照テーブル17aから削除する(ステップS53)。制御部10aは、削除した後の参照テーブル17aを他の分配装置1b,1cへ送信することによって参照テーブル17a,17b,17cの内容を同期させ(ステップS54)、処理を終了する。
【0100】
図8のフローチャートに示した処理により、それまで接続されていたECU4xが取り外されたことに応じて参照テーブル17a,17b,17cの内容を自動的に変更することができる。これにより、分配装置1a,1b,1c及びECU4a,4a,…,4b,4b,…,4c,4c,…の接続構成に応じて柔軟に対応し、分配装置1a,1b,1cのデータベース11a,11b,11cの共通領域12a,12b,12cに記憶されるデータの量を最小限にすることが可能である。
【0101】
なお、ECU4xが取り外された場合に、図8のフローチャートに示した処理手順によって参照テーブル17a,17b,17cの内容を変更せず放置する構成としてもよい。
【0102】
なお、実施の形態1及び実施の形態2では、データの種別毎に共通領域12a,12b,12c、又は個別領域13a,13b,13cのいずれに記憶すべきかが予め決められ、参照テーブル17a,17b,17cに記憶してある構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、分配装置1aの制御部10aは、自身に接続しているECU4a,4a,…から他の分配装置1b,1cの個別領域13b,13cのいずれかに記憶されているデータを要求する送信要求を所定回数以上受信した場合、当該データを共通領域12aに記憶するように決定してもよい。この場合、制御部10aは、参照テーブル17aを更新して他の分配装置1b,1cの参照テーブル17b,17cと同期させる処理を行なう。このように、動的に参照テーブル17a,17b,17cの内容を更新して、共通領域12a,12b,12c及び個別領域13a,13b,13cのいずれに記憶すべきかを柔軟に決定して変更することも可能である。
【0103】
また、図4乃至図8のフローチャートに示した、実施の形態1及び2における分配装置1aの制御部10aによる処理手順には、処理中の異常処理については含まれていない。しかしながら、各処理手順を実現する場合、図4のフローチャートに示した処理手順の内のステップS11、図6のフローチャートに示した処理手順の内のステップS311等、データ又は通知等の情報を待機するループ処理中は特に異常処理が必要となる。異常処理としては例えば、タイマーを用いて所定時間が経過したか否かを別途判断する処理を実行しておき、所定時間が経過したと判断した場合は、各種処理及び要求を棄却して夫々初期状態に戻る等の処理を行なうようにする。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1における車載通信システムを構成する分配装置及びECUの内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における分配装置の記憶部に記憶される参照テーブルの内容例を示す説明図である。
【図4】実施の形態1における分配装置の制御部により、ECUから受信したデータがデータベースに記憶される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1における分配装置間でデータベースの内容を同期させる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1における分配装置の制御部からデータを送信する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2における分配装置の制御部により、新たにECUが追加された場合に参照テーブルが変更される処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2における分配装置の制御部により、一のECUが取り外された場合に参照テーブルが変更される処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
1a,1b,1c 分配装置
10a,10b,10c 制御部
11a,11b,11c データベース
12a,12b,12c 共通領域
13a,13b,13c 個別領域
14a,14b,14c 記憶部
17a,17b,17c 参照テーブル
2,3a,3b 通信線
4a,4b,4c,4x ECU
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種別のデータを送受信する複数の外部装置から送信されるデータを受信する手段と、受信したデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されているデータを外部装置へ分配する手段とを備える分配装置であって、
前記記憶手段は、他の装置と共通するデータを記憶する共通領域、及び、それ以外のデータを記憶する個別領域に区別されており、
外部装置から受信したデータを前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定する決定手段と、
前記共通領域に記憶されているデータを他の装置へ送信する手段と、
他の装置から送信されたデータを前記共通領域に記憶する手段と
を備えることを特徴とする分配装置。
【請求項2】
データの種別毎に前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶すべきかを示す記憶先情報を記憶しておく手段を備え、
前記決定手段は前記記憶先情報に基づいていずれに記憶するかを決定するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の分配装置。
【請求項3】
前記記憶先情報には、他の装置に記憶されるデータの種別が含まれており、
外部装置からデータの送信要求を受け付けた場合に、受け付けた送信要求の対象データが他の装置に記憶されるデータであるか否かを判断する手段と、
他の装置に記憶されるデータであると判断した場合、前記他の装置へ送信要求を送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の分配装置。
【請求項4】
前記記憶先情報は変更可能に構成されていること
を特徴とする請求項2又は3に記載の分配装置。
【請求項5】
複数の種別のデータを送受信する複数の通信装置群と、該通信装置の群毎に接続される請求項1乃至4のいずれかに記載の複数の分配装置とを含む通信システムであって、
前記分配装置は、
前記共通領域に記憶されているデータを他の分配装置へ送信する手段と、
他の分配装置から送信されたデータを前記共通領域に記憶する手段と
を備え、
各通信装置から送信されるデータを受信した場合、前記決定手段により共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定するようにしてあること
を特徴とする通信システム。
【請求項6】
前記記憶先情報は、各分配装置の個別領域に記憶されるデータの種別を含み、
各分配装置は、接続されている各通信装置からデータの送信要求を受け付けた場合、受け付けた送信要求の対象データが自身以外の分配装置の個別領域に記憶されているデータであるか否かを判断する手段と、
自身以外の分配装置の個別領域に記憶されているデータであると判断した場合、前記分配装置へ送信要求を送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記分配装置は、
一の通信装置の新規接続を検知する手段と、
新規接続を検知した場合に、前記一の通信装置から送信されるデータの種別を取得する手段と、
取得したデータの種別を前記記憶先情報に追加する手段と、
追加後の前記記憶先情報を他の分配装置へ送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記分配装置は、
一の通信装置の切断を検知する手段と、
切断を検知した場合に、前記一の通信装置から送信されるデータの種別を取得する手段と、
取得したデータの種別を前記記憶先情報から削除する手段と、
削除後の前記記憶先情報を他の分配装置へ送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の通信システム。
【請求項9】
複数の種別のデータを送受信する複数の通信装置を更に複数の群に分け、群毎に各通信装置に接続されて、各通信装置から送信されるデータを受信し、受信したデータを記憶手段に記憶し、記憶したデータを各通信装置へ分配する複数の分配装置により、各通信装置から送信されるデータを送受信する通信方法であって、
前記記憶手段を、前記複数の分配装置間で共通するデータを記憶する共通領域、及び、それ以外のデータを記憶する個別領域に区別しておき、
分配装置は、
通信装置から受信したデータを前記記憶手段に記憶するに際し、受信したデータを前記共通領域又は前記個別領域のいずれに記憶するかを決定し、
前記共通領域に記憶してあるデータを他の分配装置へ送信し、
他の分配装置から受信したデータを前記共通領域に記憶する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−33251(P2009−33251A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192346(P2007−192346)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】