説明

分配装置及び映像分配方法

【課題】 複数の通信経路のいずれかの伝送レートが低下しても、合成して表示される各映像を均質化する。
【解決手段】 複数の通信経路を介して伝送された少なくとも2つの映像を合成して表示する映像表示システムにおける分配装置は、複数の通信経路の伝送レートに基づいて、合成して表示する各映像の品質を決定する。そして各通信経路の伝送レートと各映像の品質とに応じて、各通信経路を介して伝送する映像を分配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線送信機と複数の無線受信機との間の複数の通信経路を介して映像データを複数の映像出力装置へ伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプロジェクタを用いて分割された映像を投影し、投影された画像を合成して大画面映像を表示するシステムや輝度が不足するプロジェクタの画像を複数重ねて表示するシステムがある。更に、左右の画像を重ねて3D映像を表示するシステム等、大画面を複数の画像として表示するマルチプロジェクションシステムもある。
【0003】
このような大画像のマルチプロジェクションシステムの映像は、高品位な画質も求められ、映像データは膨大になる。また、画面の大型化に伴い、プロジェクタ及び映像ソース間の距離が延び、配線が複数化するため、ワイヤレス化への要望が非常に大きくなってきている。
【0004】
無線通信システムにおいては、MIMO技術やミリ波伝送等、大容量化がなされてきているが、大画像、高品位の圧縮されていない映像を複数のプロジェクタに送信するためには複数の無線通信装置を用いて複数のチャネルで通信する必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、複数の映像データを複数のチャネルを用いて伝送する技術が提案されている()。特許文献1では、複数の伝送チャネルの合計伝送レート内で、画像チャネルごとの発生情報量に応じて、画像チャネルごとに伝送レートを可変にしている。さらに、1伝送チャネルの伝送レート以上に多く割り当てられた画像チャネルのデータを、隣接する画像チャネルに対応する伝送チャネルを利用して伝送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-268985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の映像データを複数の無線通信機で送受信するマルチプロジェクションシステムにおいて、無線通信の電磁波の遮蔽物や、他の通信機器による電波干渉等により伝搬環境が変化すると、必要な伝送レートが維持できない場合がある。1つの通信経路の伝送レートが低下すると、その通信経路を介して伝送される映像が乱れ、大画面映像の場合、乱れのある映像と乱れの無い映像とのつなぎ目が目立ち、映像全体の画質が低下してしまう。
【0008】
また、3D映像や輝度を向上させるために映像を重ね合わせる場合、高品位の映像と低品位の映像が重ね合わされると、低品位の映像による画像の乱れが際立ち、全体の映像の画質の低下が目立つことがある。
【0009】
本発明は、複数の通信経路のいずれかの伝送レートが低下しても、合成して表示される各映像を均質化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の通信経路を介して伝送された少なくとも2つの映像を合成して表示する映像表示システムにおける分配装置であって、前記複数の通信経路の伝送レートに基づいて前記合成して表示する各映像の品質を決定する決定手段と、前記各通信経路の伝送レートと前記決定手段により決定された各映像の品質とに応じて、各通信経路を介して伝送する映像を分配する分配手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の通信経路のいずれかの伝送レートが低下しても、合成して表示される各映像の品質の違いによる映像全体の画質低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態における映像伝送システムの構成例を示す図。
【図2】第1の実施形態における全体的な処理を示すフローチャート。
【図3】通信経路(無線伝送パス)の切り替え処理を示すフローチャート。
【図4】パケット構成の一例を示す図。
【図5】変形例1の構成例を示すブロック図。
【図6】変形例2の構成例を示すブロック図。
【図7】第2の実施形態における映像伝送システムの構成例を示す図。
【図8】第2の実施形態における全体的な処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態について詳細に説明する。実施の形態では、複数の通信経路を介して伝送された少なくとも2つの映像を合成して表示する映像表示システムにおける分配装置及び映像分配方法について説明する。
【0014】
尚、複数の通信経路が、第1の通信経路と第2の通信経路の場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、第1の映像と第2の映像を映像分配する場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1の(A)は通常の伝送状態を示す図である。一方、図1の(B)は障害物によって無線送信機(TxRF)から無線受信機(RxRF)への無線通信経路が妨害され、壁の反射パスを用いたため、データ伝送量が低下した場合の動作を示す図である。尚、以下の説明では、無線送信機及び無線受信機を単に送信機及び受信機と呼ぶ。
【0016】
本実施例では、プロジェクタ141が大画面の右側の映像を映写し、プロジェクタ142が左側の映像を映写し、これら左右の映像をつなぎ合わせることで大画面の映像を映写するシステムを例に説明する。しかしながら、プロジェクタ141、142の各映像を重ね合わせて映写映像の輝度を向上させるシステム、プロジェクタ141、142が3D映像の左右の映像を映写し、これら映像を重ねて3D化した映像を表示するシステムであっても本発明を適用できる。
【0017】
図1に示すデータ分配器(TxDiv)101は、1つの映像データが右側映像(HDMI1)と左側画像(HDMI2)に分割された各映像データを入力し、複数の映像出力装置(プロジェクタ)141、142の映像データに分配する。送信機111、112はそれぞれの映像データを無線送信する。受信機121、122はそれぞれの映像データを受信する。データ合成器131、132は、受信機121、122の両方に有線で接続されている。なお、データ分配機101に右側映像(HDMI1)と左側画像(HDMI2)が入力される構成を例に説明するが、データ分配機101が1つの映像を右側映像と左側画像とに分割する構成にしてもよい。
【0018】
プロジェクタ141、142は、伝送レートが2Gbpsの通信経路を介して映像を伝送すれば、最高品位の映像を得ることができるものとする。ここで、図1の(A)のように、送信機111及び受信機121と、送信機112及び受信機122との間の通信経路の伝送レートがそれぞれ2Gbpsで通信できている場合、プロジェクタ141、142から映写される映像は最高品位である。データ分配機101はプロジェクタ141の映像データのみを送信機111に分配し、プロジェクタ142の映像データのみを送信機112に分配する。送信機111への映像データのヘッダには映像データの宛先が全てプロジェクタ141であることを示す内容が含まれる。また同様に、送信機112への映像データのヘッダには映像データの宛先が全てプロジェクタ142であることを示す内容が含まれる。
【0019】
受信機121は、データ合成器131、132の両方に有線で接続されているが、受信されたヘッダの内容に従ってデータ合成器131のみに映像データを送信し、データ合成器131からプロジェクタ141へ全ての映像データが送信される。受信機122も、データ合成器131、132の両方に有線で接続され、受信されたヘッダの内容に従ってデータ合成器132のみに映像データを送信し、データ合成器132からプロジェクタ142へ全ての映像データが送信される。
【0020】
図1の(B)では、送信機111及び受信機121の間の通信経路は最高品位の2Gbpsの伝送レートでで通信できている。一方、送信機112及び受信機122の間の通信経路は伝送レートが1Gbpsの品位でしか通信できていない。そこで、データ分配器101は合計で3Gbpsの伝送レートで通信するように映像データの品質を決め、各通信経路で伝送される映像データの分配を決定する。つまり、プロジェクタ141、142のぞれぞれに、1.5Gbpsの伝送レートで映像が伝送されるように映像品質を決定し、入力された映像の品質を調整する。映像品質の調整は、映像の解像度又は階調度のビット幅を調整することにより行われる。しかしながら、映像の圧縮率を調整してもよいし、フレームレートを調整してもよいし、両方を調整しても、他の方法により調整してもよい。
【0021】
データ分配器101は、送信機111及び受信機121の間の通信経路の2Gbpsの伝送レートのうち、プロジェクタ141宛ての映像データに1.5Gbpsを割り当て、プロジェクタ142宛ての映像データに0.5Gbpsを割り当てる。そしてこれらの伝送レートで伝送する映像データを送信機111に分配する。また、送信機112及び受信機122の間の通信経路の1Gbpsの伝送レートの全てをプロジェクタ142の映像データに割り当て、1Gbpsで伝送する映像データを送信機112に分配する。この分配は、プロジェクタ142に伝送する1.5Gbpsの映像データのうち、0.5Gbps分のパケットをを送信機111に分配し、1.0Gbps分のパケットを送信機112に分配すればよい。
【0022】
送信機111への映像データのヘッダには1.5Gbpsの映像データの宛先がプロジェクタ141であり、0.5Gbpsの映像データの宛先がプロジェクタ142であることを示す内容が含まれる。一方、送信機112への映像データのヘッダには映像データの宛先が全てプロジェクタ142であることを示す内容が含まれる。
【0023】
受信機121は、受信されたヘッダの内容に従ってデータ合成器131に1.5Gbpsの伝送レートで伝送されたプロジェクタ141宛ての映像データを送信する。更に、受信機121は、データ合成器132に0.5Gbpsの伝送レート伝送されたプロジェクタ142宛ての映像データを送信する。これにより、データ合成器131からプロジェクタ141へ1.5Gbpsの伝送レートで伝送された映像データが送信される。受信機122は、受信されたヘッダの内容に従ってデータ合成器132のみに1Gbpsの伝送レートで伝送されたプロジェクタ142宛ての映像データを送信する。そして、データ合成器132により受信機121から送信された0.5Gbpsの映像データと合成されてプロジェクタ142へ1.5Gbpsの映像データが送信される。
【0024】
上述したように、複数のプロジェクタに伝送される映像データの品質を均質化することにより、左右の映像出力が均質化され、映像の境界を目立たなくすることが可能になる。
【0025】
ここで、第1の実施形態におけるデータ分配器、送信機、及び受信機によって行われる全体的な処理を、図2を用いて説明する。まず、データ分配器は、複数の通信経路の初期状態を調べるために、接続されている全ての送信機から全ての受信機へテスト信号を送信させるテスト信号送信指示を行う(201)。次に、全ての受信機から返されてきた肯定応答(Ack)から各通信経路の伝送レートを把握する(202)。尚、図1に示す例では送信機及び受信機は各々2台であるが、映像画面の大きさ、分割の仕方、伝送レート等で通信経路の必要数が変化するので、この台数に限定されるものではない。
【0026】
次に、データ分配器は、全ての通信経路の伝送レートの総和を算出し、総和の伝送レートで伝送できるデータ量に基づいて、映像品質を決定する(203)。さらに、各プロジェクタに伝送される映像の画質が均質化されるように、各プロジェクタに伝送される映像の品質を調整することにより、各プロジェクタに伝送される映像データの量を決定する。そして、データ分配器は、各通信経路の伝送レートに合わせて、各送信機から送信させる複数の映像データのデータ配分を決定する(204)。次に、データ分配器は、各送信機に送信させる映像データにヘッダを挿入する(205)。尚、ヘッダには、データ配分に従って決定された映像データの宛先、データ量、順番、伝送レート等の情報が含まれる。
【0027】
次に、データ分配器は、通信経路が確保されていない送信機を除く全ての送信機に対してヘッダを挿入したデータを送信する(206)。その後、通信経路の伝送レートを把握する処理に戻り、各送信機が送信した映像データに対する肯定応答から各通信経路の伝送レートの把握を行う。
【0028】
また、各送信機では、初期状態として伝送レートが最大に設定されている(211)。そして、送信機がデータ分配器からテスト信号送信指示を受けると、受信機へテスト信号を送信する(212)。このテスト信号の送信後、受信機から肯定応答(Ack)を受信するのを待ち(213)、肯定応答を受信できなければ、伝送レートが最小か判断する(214)。判断の結果、最小でなければ、伝送レートの引き下げを行い(215)、受信機にテスト信号を送信する処理に戻る。ここで、最小の伝送レートでも、肯定応答を受信できない場合、その伝送ルートは切断する(216)。一方、肯定応答を受信できた場合、その時の伝送レートを保存し、データ分配器に伝送レートを伝える。
【0029】
また、その後のデータ伝送時には、テスト信号の肯定応答を受信できた伝送レートでデータを送信する(217)。そして、肯定応答の受信を待ち(218)、肯定応答を受信できないときは、テスト信号の送信と同様に、最小伝送ルートか判断する(219)。判断の結果、最小でなければ、伝送レートの引き下げを行う(21a)。ここで、最小の伝送レートでも、肯定応答を受信できなければ、その伝送ルートは切断する(21b)。
【0030】
更に、各受信機では、送信機からテスト信号又はデータを受信し(221、223)、受信できた場合には肯定応答を送信する(222、224)。
【0031】
次に、通信経路(無線伝送パス)の切り替えを伴う場合の送信機及び受信機の処理を、図3を用いて説明する。ここでは、送信機及び受信機の間の無線伝送パス切り替えを伴う以外は変わらないため、図2に示すデータ分配器の処理は省いている。
【0032】
図3では、図2に示す処理に次の処理が追加されている点が異なる。つまり、受信機の肯定応答に含まれる受信品質が予め決められた閾値以上か否かを判定し(301、304)、閾値以上でない場合に、同じ閾値以上の無線伝送パスがあれば(302、305)、その無線伝送パスに切り替える(303、306)。このように、無線伝送パス切り替えと伝送レートの引き下げの2重ループにより、最適な伝送パスで且つ最大伝送レートでデータ送信が可能となる。
【0033】
このように、データ分配器101は、全通信経路の伝送レートの総和に応じて、解像度又は階調度のビット幅を調整する。更に、各通信経路を介して伝送する各プロジェクタへの映像データの映像品質及びデータ量を調整し、各プロジェクタから出力される映像品質をほぼ等しくする。そして、映像データをそれぞれ無線パケットサイズに細分化し、送信機111、112へ送信する。ここで、映像データをパケットサイズに細分化する際に、複数のプロジェクタ141、142の映像が均質化されるように、各通信経路の伝送レートと各通信経路で伝送する映像データの比率と各映像データのパケットサイズを決定する。
【0034】
図4に、図1に示す送信機111、112のパケット構成の一例を示す。図4の(A)は、図1の(A)における送信機111、112から送信されるパケットの構成を示す図である。パケットは、プリアンブル411、421、ヘッダ412、422、データ区間413、423、CRC(周期的冗長検査)415、425で構成されている。ここで、映像データを伝送する場合、映像データを伝送するパケットに加え、不図示のAck受信期間、次の映像データ用のプリアンブルまでの待ち時間を含む時間で必要なデータを伝送する必要がある。従って、スループットが2Gbpsの映像データを伝送する通信経路の場合は、データ区間413、423での伝送レートは2Gbpsより大きい。ヘッダ412、422には、データ区間413、423の伝送レート又はその伝送レートを実現する時の変調方式(図1では16QAM)、符号化率、データ長等の情報が含まれる。そして、これらの情報からプロジェクタ141、142の映像データのスループット2Gbpsが実現される。
【0035】
図4の(B)は、図1の(B)における送信機111、112のパケットの構成を示す図である。パケットの構成は図4の(A)の場合と同様である。しかし、図4の(B)の送信機111のヘッダ432は、変調方式、符号化率等の情報、データ区間433、434の位置と長さ、データ区間434がプロジェクタ142用のどの部分のデータかを示す情報等を含んでいる。また、送信機112のヘッダ442は、伝送レートが下がった後の変調方式(図1ではQPSK)、符号化率等の情報と、プロジェクタ142用のどの部分のデータかを示す情報等を含んでいる。
【0036】
尚、図4にはパケット内のデータの長さでデータシェアを行う方法の一例を示したが、OFDM変調のサブキャリア等、異なるデータシェアを行ってもよい。
【0037】
ここで、第1の実施形態の変形例を、図5、図6を用いて説明する。図5は、変形例1の構成例を示すブロック図である。変形例1では、受信機121、122はそれぞれ一つのデータ合成器131、132に接続され、データ合成器131、132はデータ伝送が双方向に可能なように有線で接続されている。データ合成器131は受信した映像データのヘッダの内容に従って映像データをプロジェクタ141またはデータ合成器132に送信する。同様に、データ合成器132は受信した映像データのヘッダの内容に従って映像データをプロジェクタ142またはデータ合成器131に送信する。図5(B)の例では、データ合成器131は受信した映像データのうち、プロジェクタ141宛ての1.5Gbpsの映像データをプロジェクタ141に送信する。また、データ合成器131は受信した映像データのうち、プロジェクタ142宛ての0.5Gbpsの映像データをデータ合成器132に送信する。データ合成器132は、データ合成器131から受信した0.5Gbpsの映像データと受信機122から受信した1Gbpsの映像データとを合成し、プロジェクタ142に送信する。この構成によれば、受信機とデータ合成器の数が多い場合や受信機とデータ合成器の距離が離れている場合に有効でなる。
【0038】
図6は、変形例2の構成例を示すブロック図である。変形例2では、送信機111及び受信機121と、送信機112及び受信機122とが64QAMで通信可能で、各無線通信経路は3Gbpsに相当するデータ伝送レートがある。一方、プロジェクタ141、142、143はそれぞれ2Gbpsのスループットがあればよく、プロジェクタ3台分のデータを無線通信経路2本で伝送できる。図6の(A)は、送信機111及び受信機121の間でプロジェクタ141用のデータ2Gbpsとプロジェクタ143用のデータ1Gbpsを伝送する。そして、送信機112及び受信機122の間でプロジェクタ142用のデータ2Gbpsとプロジェクタ143用のデータ1Gbpsを伝送する。ここで、データ合成器131、132はプロジェクタ143用のデータ1Gbps分をデータ合成器133に有線経由で送信する。そして、データ合成器133では、それらの映像データを合成してプロジェクタ143に送信する。
【0039】
図6の(B)は、送信機112及び受信機122の間で伝送レートが1Gbpsになると、送信機111及び受信機121の間でプロジェクタ141、143、142の映像データをそれぞれ1.3Gbps、1.3Gbps、0.3Gbps伝送する。一方、送信機112及び受信機122の間ではプロジェクタ142のデータ1Gbpsのみを伝送する。データ合成器131ではそれぞれのプロジェクタのデータを分離し、プロジェクタ143、142用の映像データを有線経由で送信する。データ合成器133ではプロジェクタ143、142用の映像データからプロジェクタ143用のデータのみを選択、分離し、プロジェクタ143へ伝送する。また、データ合成器132ではプロジェクタ143、142用の映像データからプロジェクタ142用の映像データのみを選択、分離し、受信機122で受信された映像データと合成してプロジェクタ142へ伝送する。
【0040】
第1の実施形態では、プロジェクタ数と無線通信経路の数が一致している場合と、プロジェクタ数が無通信経路の数より多い場合を説明したが、これに限定されるものではなく、無線通信経路の数がプロジェクタ数より多くてもよい。
【0041】
以上のように本実施例によれば、一部の通信経路の伝送レートが低下しても、各映像出力装置から出力される映像品質をほぼ等しく均質化することができる。また、複数の通信経路全体の伝送レートに基づいて映像品質を決め、各通信経路で伝送する映像を決めるので、通信経路を効率よく利用でき、出力される映像品質をより高くすることができる。例えば、各映像出力装置から出力された映像をつなぎ合わせて大画面化する場合には、各画像の画質の違いによるつなぎ目の目立ちを抑制できる。また、各映像出力装置から出力された映像を重ね合わせて輝度をあげたり、3D化する場合にも映像全体の画質低下を抑制できる。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る第2の実施形態を、図7、図8を用いて詳細に説明する。尚、図7に示す構成要素において、図1に示す第1の実施形態と同じ構成要素には同じ番号を用いている。
【0043】
第2の実施形態では、送信機111及び受信機121がデータ分配器101とプロジェクタ141との間のデータ伝送線の置き換えを目的に挿入されている。また、送信機112及び受信機122もデータ分配器101とプロジェクタ142との間のデータ伝送線の置き換えを目的に挿入されている。
【0044】
この構成において、データ分配器101は、プロジェクタ141、142が同じ画質になるように映像データを分配する。また、図7の(B)のように、送信機112及び受信機122の間の通信経路が障害物152によって妨害され、反射パスで伝送レートが低くなった場合、低くなった経路に合わせて送信機111及び受信機121の間の通信経路の伝送レートも下げる。これにより、プロジェクタ141、142へのスループットが等しくなり、画質が均質化されるため、一方の画質の低下により画像の継ぎ目が気になることはない。
【0045】
図8は、第1の実施形態におけるデータ分配器、送信機、及び受信機によって行われる全体的な処理を示すフローチャートである。図8において、送信機及び受信機の動作は、図2と同様である。
【0046】
データ分配器は、通信経路の初期状態を調べるために、接続されている全ての送信機から受信機へテスト信号を送信させるテスト信号送信指示を行う(201)。次に、第2の実施形態では、全通信経路を最小伝送レートの通信経路に合わせるため、切断されているルートがないことを確認する(802)。もし、切断されている通信経路が存在する場合は、その経路の送信機に通信経路が確立されるまでテスト信号を送信させる。切断ルートがなくなると、全ての送信機が受信した肯定応答から各通信経路の伝送レートを把握する(202)。尚、図8では送信機及び受信機はそれぞれ2台を例に説明したが、映像画面の大きさ、分割の仕方、伝送レート等で通信経路の必要数が変化するので、この台数に限定されるものではない。
【0047】
次に、データ分配器は、全ての送信機の肯定応答からそれぞれの伝送レートがわかると、最小伝送レートに合わせて、プロジェクタの映像品質を決定する(803)。そして、データ分配器は、各送信機に送信させるデータの前にヘッダを挿入する(804)。このヘッダには、決定された伝送レート等の情報が含まれる。次に、データ分配器は、各送信機に対してヘッダを挿入した映像データを送信する(206)。その後、切断されているルートがないかを判定する処理に戻り、各送信機が送信した映像データに対する肯定応答から各通信経路の伝送経路の伝送レートの把握を行う。
【0048】
以上、複数の映像データを複数の無線通信装置で伝送し、複数の映像出力装置を用いて複数の映像データを合成して1つの映像を表示するシステムにおいて、無線伝送する際に、伝送レートに合わせて複数の映像データから出力される映像の品質を均質化できる。
【0049】
また、映像のスループットの変更の仕方として、映像の最小ピクセルの大きさを変えたり、色調の分解能を変える等、様々な方法が考えられるが、映像のスループットの変更の仕方も本発明の適応範囲外である。
【0050】
[他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信経路を介して伝送された少なくとも2つの映像を合成して表示する映像表示システムにおける分配装置であって、
前記複数の通信経路の伝送レートに基づいて前記合成して表示する各映像の品質を決定する決定手段と、
前記各通信経路の伝送レートと前記決定手段により決定された各映像の品質とに応じて、各通信経路を介して伝送する映像を分配する分配手段と、
を有することを特徴とする分配装置。
【請求項2】
前記決定手段は、各映像の品質が均質になるように、各映像の品質を決定することを特徴とする請求項1に記載の分配装置。
【請求項3】
前記各通信経路を介して伝送される映像のそれぞれに、宛先となる映像出力装置を示す情報が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の分配装置。
【請求項4】
前記分配手段は、前記複数の通信経路の第1の通信経路の伝送レートが第2の通信経路の伝送レートよりも大きな場合、前記分配手段は、複数の映像のうちの第1の映像と第2の映像の一部を前記第1の通信経路に分配することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の分配装置。
【請求項5】
前記決定手段は、伝送レートが最小の通信経路に基づいて、各映像の品質を決定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の分配装置。
【請求項6】
前記複数の通信経路を介して受信した映像を合成して表示する表示手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の分配装置。
【請求項7】
複数の通信経路を介して伝送された少なくとも2つの映像を合成して表示する映像表示システムにおける分配装置の映像分配方法であって、
決定手段が、前記複数の通信経路の伝送レートに基づいて前記合成して表示する各映像の品質を決定する工程と、
分配手段が、前記各通信経路の伝送レートと前記決定された各映像の品質とに応じて、各通信経路を介して伝送する映像を分配する工程と、
を有することを特徴とする分配装置の映像分配方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の分配装置と、映像出力装置とを有する映像表示システム。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至6の何れか1項に記載の分配装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−222571(P2012−222571A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85651(P2011−85651)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】