説明

分離カートリッジ、ならびにその製造および使用方法

本発明の実施形態は、分離カートリッジ、分離カートリッジを製造するための方法、および分離カートリッジを使用するための方法を提供する。本発明の一局面は、第1の末端、第2の末端、および上記第1の末端と上記第2の末端との間に位置した1種以上の吸収剤を含む分離カートリッジを提供し、上記1種以上の吸収剤は、疎水性を増大させる順序で、上記第1の末端から上記第2の末端へ配置される。本発明の別の局面は、種々の疎水性を有する分離カートリッジを作り出すための方法を提供する。上記方法は、シリンダーに濾過物質および架橋剤を装填する工程、および上記材料をエネルギー源に選択的に曝して、上記濾過物質内の架橋反応を選択的に開始する工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年4月25日に出願された米国仮特許出願第61/125,466号に対する優先権を主張する。この特許出願の内容は、その全体を参考として援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、分離カートリッジ、分離カートリッジを製造するための方法、および分離カートリッジを使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
液相における化学的サンプルもしくは生物学的サンプルの分析は、広い範囲の用途において非常に重要である。多くの用途(例えば、創薬および開発、環境試験、診断剤など)において、効率的かつ再現性の高い様式において、多数のサンプルを分析することが必要である。液相サンプルを分析するために使用される技術のうちの多くは、上記サンプルが、連続してデータを得る(interrogate)ことを要し、ここで各サンプルは、逐次的様式において試験される。サンプルを定量的に分析するための望ましい方法は、質量分析法(MS)(複雑な混合物のデータを得て、その分析物の分子量に基づいて選択された分析物を定量し得る方法)である。
【0004】
イオン化技術(例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)もしくは大気圧化学イオン化(APCI))を使用する現在の質量分析計は、溶液中のサンプルのデータを直接得るために使用され得る。しかし、MSによる感度の高くかつ正確な定量は、上記サンプルが精製され、かつ高濃度の塩、緩衝液、およびイオン化合物から分離されていることを要する。分析されるべきサンプル中の高濃度のイオンは、イオン抑制として公知の現象をもたらし得、ここで目的の分析物は、他のイオンの存在によって印をつけられる。さらに、上記サンプル内の不揮発性成分は、上記質量分析計の供給源領域に沈殿する傾向があり、MS性能を落とす。精製されていない高濃度の塩および緩衝液は、結局は、完全にMSの失敗を生じる。
【0005】
液体クロマトグラフィー(LC)は、MS分析の前に分析物を精製するために一般に使用される技術である。液体クロマトグラフィーのうちの多くのタイプが使用され、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高圧液体クロマトグラフィー(LTPLC)、および固相抽出(SPE)が挙げられるが、これらに限定されない。これら精製技術は、複雑なサンプル内の個々の分析物の特異な化学的特性を通じて機能する。目的の分析物を単離もしくは精製するために使用される化学的特性としては、極性、疎水性、イオン強度、電荷、サイズ、もしくは分子構造が挙げられ得る。これら技術の各々において、固体吸収剤は、カラムもしくはカートリッジに詰められ、上記複雑な混合物は、上記吸収剤に対して流され、上記目的の分析物と、上記吸収剤との間の相互作用が起こることを可能にする。
【0006】
多くの分析において、化学特性において広い範囲に及ぶ多数の異なる化合物は、分析される必要がある。このような分析の例としては、潜在的な薬物候補の特性を特徴付けることが非常に重要である薬物開発プロセスにおける適用が挙げられる。多くのアッセイが行われて、薬物候補の潜在的な適切さを決定し得る(例えば、溶解度アッセイ、代謝的安定性アッセイ、膜透過性アッセイ、血漿タンパク質結合アッセイ、毒性アッセイ、薬物動態特性および薬力学的特性の決定など)。これらアッセイのうちの全ては、経時的もしくは空間的な(over time or space)所定の化合物の定量を必要とする。上記アッセイは、生理学的条件を模倣するか、または細胞もしくはインタクトな生物中で実際に行われるかいずれかの高いイオン強度の緩衝液の存在を要する。正確なMSベースの定量は、分析する前のサンプル精製工程にかかっている。
【0007】
迅速な、経済的なかつ効率的な様式で多数の異なる化合物のデータを得る必要性が、研究者に難題を提示している。データを得るべき各分析物に対して特有の分析方法を開発することは、代表的には、望ましい選択肢ではない。なぜなら、方法の開発は、時間と資源を浪費するプロセスであり得るからである。結果として、1つ以上の標準的方法もしくは包括的方法が、代表的には、これらのうちの多くが受容可能なレベルにおいて機能するという目的で、試験化合物の全体のセットに適用される。例えば、ある試験化合物のセットは、上記分析物の極性親和性に基づいて、固相抽出によってMS分析の前に精製され得る。疎水性(すなわち、非極性)SPE吸収剤(例えば、C18物質)が、選択され得る。上記分析物は、上記SPE物質の上に載せられ得、水溶液で洗浄され得る。上記目的の分析物が吸着するか、もしくは上記疎水性SPE吸収剤に結合する一方で、塩、緩衝液および他のイオンは、上記樹脂を通過して洗浄されることが望まれる。次いで、上記目的の分析物は、イオン対合剤(ion pairing agent)(例えば、トリフルオロ酢酸)を含み得る有機溶媒(例えば、アセトニトリル、メタノールなど)を使用して、上記SPE吸収剤から溶出され得る。次いで、上記水溶性塩、緩衝液および他のイオンから分離されている上記溶出された分析物は、質量分析計のような検出器で定量され得る。
【0008】
多数の試験化合物が標準的な分析法(例えば、HPLCもしくはSPE)で精製しようとされている場合、上記分析物のうちの多くは不足することが理解される。なぜなら、目的の試験化合物は、その分析法に対して適切な化学的特性を有さないからである。例えば、低疎水性を有する吸収剤(例えば、C4もしくはシアノ相樹脂)が選択される場合、多くの極性化合物は、上記吸収剤に付着せず、上記塩および緩衝液とともに、上記吸収剤を通過して洗い流される。同様に、非常に高い疎水性能力を有するSPE樹脂(例えば、C18もしくはフェニル樹脂)が選択される場合、多くの非極性試験化合物は、上記吸収剤に不可逆的に吸着してしまい、全く溶出されないか、または上記分析物のごく少量が、上記吸収剤から実際に溶出されてくるかのいずれかである。1つの解決策は、1つの分析法において失敗したいくつかの試験化合物が、別の分析法で成功するという見込みで、広い範囲の化学的特性を網羅するいくつかの異なる標準的分析精製法を使用することである。しかし、このようなアプローチは、これまで高価でかつ時間を浪費するものであった。
【0009】
よって、種々の特性を有する種々のサンプルを精製し得るデバイスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明の実施形態は、分離カートリッジ、分離カートリッジを製造するための方法、および分離カートリッジを使用するための方法を提供する。
【0011】
本発明の一局面は、第1の末端、第2の末端、および上記第1の末端と上記第2の末端との間に位置した1種以上の吸収剤を含む分離カートリッジを提供し、上記1種以上の吸収剤は、疎水性を増大させる順序で、上記第1の末端から上記第2の末端へと配置されている。
【0012】
この局面は、種々の実施形態を有し得る。上記分離カートリッジは、上記第1の末端に隣り合って位置した第1のフリット、および上記第2の末端に隣り合って位置した第2のフリットを含み得る。上記フリットは、上記1種以上の吸収剤を保持するために適合されている。上記1種以上の吸収剤は、複数の領域中に配置され得る。各領域は、異なる疎水性を有する。上記分離カートリッジは、上記複数の領域を分離するために、1種以上のフリットを含み得る。上記1種以上の吸収剤は、シアノ樹脂、C1樹脂、C2樹脂、C3樹脂、C4樹脂、C8樹脂、C18樹脂、フェニル樹脂、ビフェニル樹脂、グラファイトカーボン、シアノプロピル、およびトリメチルシランからなる群より選択され得る。上記分離カートリッジは、シリンダーを含み得る。上記シリンダーは、上記1種以上の吸収剤を封じ込める(encapsulate)。上記シリンダーは、金属シリンダーであり得る。
【0013】
本発明の別の局面は、分離カートリッジを提供し、上記分離カートリッジは、上記分離カートリッジの一方の末端に位置した入り口、上記入り口に隣り合う第1の吸収剤領域、上記第1の吸収剤領域に隣り合う第2の吸収剤領域、上記第2の吸収剤領域に隣り合う第3の吸収剤領域、上記第3の吸収剤領域に隣り合う第4の吸収剤領域、上記第4の吸収剤領域に隣り合う第5の吸収剤領域、および上記第5の吸収剤領域に隣り合う上記分離カートリッジの他方の末端に位置した出口を含む。
【0014】
この局面は、種々の実施形態を有し得る。上記第1の吸収剤領域はシアノ樹脂を含み得る。上記第2の吸収剤領域は、C4樹脂を含み得る。上記第3の吸収剤領域は、C8樹脂を含み得る。上記第4の吸収剤領域は、C18樹脂を含み得る。上記第5の吸収剤領域は、フェニル樹脂を含み得る。
【0015】
本発明の別の局面は、種々の疎水性を有する分離カートリッジを作り出すための方法を提供する。上記方法は、濾過物質および架橋剤を、シリンダーの中に充填する工程、ならびに上記物質をエネルギー源に選択的に曝して、上記濾過物質内の架橋反応を選択的に開始する工程を包含する。
【0016】
この局面は、種々の実施形態を有し得る。上記シリンダーは、ガラスチューブであってもよいし、溶融シリカチューブであってもよい。上記エネルギー源は、光源であってもよいし、放射線源であってもよい。上記濾過物質は、ポリマーおよび架橋剤を含み得る。
【0017】
本発明の別の局面は、濾過方法を提供し、上記方法は、第1の末端および第2の末端、ならびに上記第1の末端と上記第2の末端との間のシリンダー内に位置した1種以上の吸収剤を有するシリンダーを含む分離カートリッジを提供する工程であって、上記1種以上の吸収剤は、疎水性を増大させる順序で、上記第1の末端から上記第2の末端へと配置されている、工程;サンプルを、上記カートリッジを通して、上記第1の末端から上記第2の末端へと流す工程であって、ここで上記溶液中の1種以上の分析物は、上記1種以上の吸収剤中に吸着される工程;ならびに上記第2の末端から上記第1の末端へと溶媒を流し、それによって、上記1種以上の吸収剤から上記1種以上の分析物を溶出する工程を包含する。
【0018】
この局面は、種々の実施形態を有し得る。上記方法は、上記溶媒および上記1種以上の分析物を、検出器に与える工程を包含し得る。上記検出器は、質量分析計であり得る。上記1種以上の吸収剤は、複数の領域に配置され得、各領域は、異なる疎水性を有する。上記1種以上の吸収剤は、シアノ樹脂、C1樹脂、C2樹脂、C3樹脂、C4樹脂、C8樹脂、C18樹脂、フェニル樹脂、ビフェニル樹脂、グラファイトカーボン、シアノプロピル、およびトリメチルシランからなる群より選択され得る。
【0019】
本発明の性質および望ましい目的を十分に理解するために、添付の図面とともに、以下の詳細な説明が参照される。ここで同様の参照文字は、いくつかの図面全体を通じて対応する部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態による、増大する疎水性吸収剤の連続勾配を含むカートリッジの模式図である。
【図1B】図1Bは、本発明の一実施形態による、複数の異なる吸収剤領域を含むカートリッジの模式図である。
【図2】図2は、サンプルを精製するためのシステムの模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、汎用分離カートリッジの操作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、第1の末端から第2の末端へと疎水性の実質的連続増大を有するカートリッジを製造するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本発明の実施形態は、単一の分析法が、非常に広い範囲の試験化合物に適用可能であり得るように、変動性の疎水性を有するカートリッジを提供する。多くのアッセイの迅速かつ効率的な分析を可能にする、試験化合物の広範囲に適合する単一のカートリッジは、創薬および開発、環境分析、および診断適用に対して大きな影響力を有し得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「カートリッジ」とは、より大きな装置部品(例えば、液体クロマトグラフィー装置、固相抽出装置、およびハイスループットオートサンプラー)に挿入されるように設計されたモジュラーユニットをいう。よって、カートリッジは、多くの実施形態において、このようなシステムにおいて使用される既存のカラムと同じ機能を発揮する。
【0023】
カートリッジの実施形態は、サンプル装填および洗浄が、サンプル溶出の反対方向において起こる装置において使用されるように設計される。このようなシステムは、米国特許出願公開第2005/0123970号および同第2005/0194318号に記載されている。このような「逆溶出(reverse elution)」デバイスの1つの利点は、直線状拡散が最小化されることである。なぜなら、上記目的の分析物は、上記カートリッジの全長にわたって移動しないので、流体の乱れ(turbulence)に供されないからである。直線状拡散の最小化は、狭いクロマトグラフィーピークを生じる非常に鋭いバンドで上記分析物の溶出を容易にする。狭いクロマトグラフィーピークは、非常に望ましい。なぜなら、狭いピークにおいて同じ量の分析物が溶出されると、高められたピーク高を生じ、それによって、上記装置のシグナル対ノイズ比が増大するからである。さらに、ピーク幅は、上記装置の全体のスループットの最終的な決定因子である。なぜなら、個々のサンプルからのピークのベースライン分離が必要とされるからである。
【0024】
本発明の実施形態は、上記サンプル入り口側において非常に親水性の物質を含むカートリッジの中に装填された吸収剤を含む。上記吸収剤の疎水性は、上記カートリッジ全体を通して、上記カートリッジの出口において非常に疎水性になるまで、高まる。サンプルが、上記サンプル入り口側で上記カートリッジ上に載せられる場合、上記サンプルは、上記目的の分析物が上記吸収剤に吸着される上記吸収剤の一部に達するまで上記吸収剤を通って動く。上記分析物は、非常に非極性である場合、上記カラム入り口に近い上記カートリッジの親水性領域に吸着され得る。同様に、上記分析物は、非常に極性である場合、上記カラムの出口付近の、上記カラムの非常に疎水性の領域に吸着するまで、カラムに浸透し得る。
【0025】
上記分析物を溶出するために、その流れの方向は、切り替えられ、有機溶出溶媒(例えば、アセトニトリル、メタノールなど)が、反対の方向に上記カートリッジを通して流される。上記分析物は、上記樹脂から脱着され、上記カートリッジの入り口末端からもどって溶出してくる。
【0026】
本発明の1つの利点は、非常に非極性の分析物が、これが不可逆的に結合されてしまう可能性のある上記カートリッジの疎水性領域と決して接触しないことである。同様に、多くの極性化合物は、同じ方法およびカラムでなお精製され得る。なぜなら、それらは、上記極性化合物が可逆的に吸着される上記カートリッジの疎水性領域へと単純に浸透し得るからである。
【0027】
本発明の一実施形態において、多くの個々のカートリッジもしくはサブカートリッジ(subcartridge)(各々は、単一の吸収剤化学性質を含む)は、極性が低下した単純な配置において、互いに流体連絡した状態で配置される。
【0028】
他の局面において、上記カートリッジは、異なる吸収剤の異なる領域を含み得る。これは、いくつかの実施形態において、それらの空間的配向を維持するためにフリットもしくはフィルターによって分離され得る。あるいは、上記カートリッジは、疎水性を増大させる異なる領域ではなく、実質的に連続した疎水性の勾配を有する架橋ポリマー樹脂を含み得る。低下する極性の異なる領域もしくは連続する極性勾配のいずれかを含む単一のカートリッジが、特に有利である。なぜなら、上記必要に大きいカートリッジが、複数のカートリッジに関して最小化され、それによって、直線状拡散を最小化し、クロマトグラフィーピークを狭くするからである。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記吸収剤は、上記カートリッジが、適用され得る高圧を維持し得ることを確実にするために、鋼もしくは類似の剛性物質内に覆われる。他の局面において、上記吸収剤は、ガラス、プラスチック、もしくは他の物質で覆われ得る。いくつかの実施形態において、上記チューブのいずれかの末端にあるフィルターもしくはフリットは、上記ポリマー樹脂が、上記カートリッジ内で保持されることを確実にする。
【0030】
図1Aを参照すると、本発明の一実施形態に従うカートリッジ100aが提供される、カートリッジ100aは、第1の末端102および第2の末端104、ならびに上記第1の末端102と第2の末端104との間に位置した吸収剤106aを有する。上記吸収剤は、上記吸収剤106aの疎水性が、上記カートリッジ100の一方の末端から上記カートリッジの他方の末端へと増大するように配置される。例えば、上記吸収剤106は、図1Aにおける吸収剤106aの影を濃くすることによって視覚的に表されるように、第1の末端102から第2の末端104へと疎水性が増大し得る。
【0031】
上記吸収剤の疎水性の増大は、図1Aに示されるように、実質的に連続性であり得る。あるいは、図1Bに示されるように、カートリッジ100bは、吸収剤106bの複数の異なる領域108a〜eを含み得、各々の領域108a〜eは、実質的に均質な疎水性を有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、カートリッジ100a、100bは、カートリッジ100a、100b内に吸収剤を保持するために、1つ以上のフリット110a、110bを含み得る。上記フリット110a、110bは、上記末端102、104に、および/もしくは1つ以上の領域108a〜eとの間に位置して、望ましくない吸収剤の移動を防ぎ得る。フリットは、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン)、金属(例えば、ステンレス鋼もしくはチタン)などのような物質から構成され得る。
【0033】
1つの実施形態は、フリットによって分離される単一のカートリッジ内の2つの異なる吸収剤ゾーンを含む。上記2つの異なるゾーンは、上記カートリッジの近位末端において大きい方の極性領域および上記カートリッジの遠位末端において小さい方の極性領域を含む。
【0034】
このようなカートリッジは、単一吸収剤を有するカートリッジと比較して、上記装置の全体的な容積も直線的拡散も大きく変化させることなく、単純に製造され得る。フリットは、空のカートリッジの中心に配置される。次いで、上記2つの異なる吸収剤は、上記カートリッジのいずれかの末端から、加圧下で連続してスラリー充填され得る。上記充填された吸収剤は、上記カートリッジのいずれかの末端においてさらなるフリットを配置することによって、上記カートリッジ内に密封され得る。
【0035】
カートリッジ100は、複数の吸収剤106を含み得る。本明細書で議論されるように、上記吸収剤は、疎水性を増大させるかもしくは低下させる順序で配置され得る。本発明のいくつかの実施形態は、わずか2つの異なる吸収剤を含み得る一方で、他は、わずかに異なる特徴を有する一連の吸収剤を含み得る。例えば、図1Bを繰り返して参照すると、領域108aは、シアノ樹脂であり得、領域108bは、C4樹脂であり得、領域108cは、C8樹脂であり得、領域108dは、C18樹脂であり得、そして領域108eは、フェニル樹脂であり得る。当業者に公知であるように、樹脂(例えば、「C18樹脂」)は、シリカに結合した定常相に言及する。本発明に容易に含められ得る種々の他の逆相定常相が存在する。それらとしては、最小限の疎水性特徴を有するC1樹脂、C2樹脂およびC3樹脂、もしくは極めて疎水性であるビフェニル相が挙げられる。上記カートリッジの1つ以上の領域はまた、あまり一般には使用されていない特別な逆相(例えば、グラファイトカーボン、シアノプロピル、トリメチルシラン(TMS)官能基)を含み得る。
【0036】
非シリカ支持体を含む定常相はまた、単独で、もしくはシリカベースの吸収剤を使用する領域とともに、いずれかで使用され得る。このような定常相は、ポリマーおよび/もしくはゲルベースマトリクスを含み得る。ポリマー定常相は、代表的には、ポリスチレンとジビニルベンゼンとのコポリマーから構成される。ジビニルベンゼンコポリマーの量を変化させることによって、上記カートリッジの疎水性は、弱められ得る。広い範囲のポリマー定常相が、多くの業者から市販されている。従来のシリカベースのカートリッジのものに類似した疎水性は、種々の周知の方法および特許された方法に従って、疎水性特徴を有するコポリマーの量を改変することによって得られ得る。
【0037】
本発明の他の実施形態において、上記カートリッジは、1つ以上の順相定常相を含む。例えば、上記複数の吸収剤は、弱イオン交換樹脂を有する領域および強イオン交換樹脂を有する領域を含み得る。弱イオン交換樹脂の例としては、カルボン酸および三級アミンが挙げられる。強イオン交換体の例としては、スルホン酸および四級アミノ基が挙げられる。この実施形態において、単一のカートリッジは、酸性特性もしくは塩基性特性に基づいて、広い範囲の化合物を保持するために使用され得る。
【0038】
本発明のなお別の実施形態において、増大する強度の親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)吸収剤は、上記カートリッジにおいて使用され得る。代表的なHILIC樹脂の例としては、非改変シリカ、非改変アルミナ、シラノール、ジオール、アミン、アミド、カチオン結合相、もしくは双性イオン結合相が挙げられる。
【0039】
(汎用分離カートリッジの操作)
図2および図3は、本発明の実施形態に従う汎用分離カートリッジの操作を記載する。カートリッジ100は、サンプル供給源202、廃棄物収集器204、溶媒供給源206、および検出器208に連結される。上記カートリッジ100の流体の流れは、1つ以上のバルブ210a、210bによって制御され得る。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、上記カートリッジは、上記カートリッジに対してサンプルを流す前に、上記カートリッジに対して調節溶媒を流すことによって「調節」される(S302)。調節溶媒は、1種以上の極性液体および/もしくは非極性液体(例えば、メタノール、続いて、水もしくは水性緩衝液)を含み得る。調節は、上記カートリッジ中の充填物質をぬらし、上記吸収剤106の官能基を溶媒和化する。
【0041】
工程S304において、サンプル供給源202からの試験化合物は、第1の方向(例えば、図2において左から右)において上記カートリッジ100に対して流される。1種以上の目的の分析物(例えば、非極性化合物)は、上記カートリッジ100中の親水性吸収剤に結合する一方で、イオン性化合物は、上記カートリッジ102を通って洗浄され、廃棄物収集器204の中に捕捉される。
【0042】
工程S306において、溶媒供給源206からの有機溶媒(例えば、アセトニトリル、メタノールなど)は、第2の方向(例えば、図2において右から左)において上記カートリッジ100に対して流されて、上記カートリッジ100から上記目的の分析物を溶出する。
【0043】
工程S308において、次いで、上記溶出された分析物は、分析のために検出器208に与えられる。検出器は、質量分析計のような種々のデバイスを含み得る。広く種々の質量分析計が、Santa Clara,CaliforniaのAgilent Technologies,Inc.;Waltham,MassachusettsのPerkinElmer,Inc.;Foster City,CaliforniaのApplied Biosystems,Inc.;Kyoto,JapanのShimadzu Corporation;Waltham,MassachusettsのThermo Fisher Scientific Inc.;Milford,MassachusettsのWaters Corporation;およびPalo Alto,CaliforniaのVarian,Inc.のような会社から入手可能である。
【0044】
(変動性疎水性カラムの製造)
図4は、図1Aに示されるように、第1の末端から第2の末端へと疎水性が実質的に連続的に増大したカートリッジ100aを製造するための方法400を示す。
【0045】
このようなカラムは、ポリマーと、非常に疎水性の基を含む架橋剤とを架橋することによって製造され得る。上記ポリマー中の架橋剤の量は、上記疎水性を有することが可能な樹脂の量を決定する。適切な逆相システムは、スチレンとジビニルベンゼンとのコポリマーから構成される。非常に疎水性のジビニルベンゼンコポリマーの相対量は、上記樹脂の全体的な特徴を決定する。
【0046】
工程S402において、シリンダーには、シリンダーの中に濾過物質および架橋剤が装填される。工程S404において、上記濾過物質および上記架橋剤は、エネルギー源に選択的に曝されて、上記濾過物質内の架橋反応を選択的に開始する。
【0047】
本発明の一実施形態において、上記架橋反応は、光もしくは紫外線放射によって開始される。上記ポリマーおよび架橋試薬は、上記架橋反応を開始するために使用される光もしくは放射を透過させる物質(例えば、ガラスもしくは溶融シリカチューブ)から製造されたカートリッジに装填される。親水性であるべき入り口末端における上記カートリッジの領域は、低線量もしくは短時間の間、放射に曝され、上記放射に対する曝露の量は、上記カラムの長さに沿って増大させられる。
【0048】
(ハイスループットオートサンプラーに対する適用)
本明細書中のカートリッジ、システム、および方法は、迅速な装填、溶出、および検出器(例えば、質量分析計)へのサンプル提示を促進するハイスループットオートサンプラーに対して容易に適用され得る。このようなデバイスは、Woburn,MassachusettsのBioTrove,Inc.からのRAPIDFIRE(登録商標)商標の下で入手可能であり、米国特許出願公開第2005/0123970号および同第2005/0194318号に記載される。
【0049】
(等価物)
前述の明細書およびその一部を形成する図面は、本質的に例示であり、本発明の特定の好ましい実施形態を示す。しかし、上記説明は、本発明の限定として解釈されるべきではないことが認識されかつ理解されるべきである。なぜなら、多くの変更、改変およびバリエーションは、本発明の本質的な範囲、趣旨もしくは意図から逸脱することなく、当業者によって行われ得るからである。また、上記記載された実施形態の要素、工程、特徴、および/もしくは局面の種々の組み合わせは、たとえこのような組み合わせが本明細書で明示的に同定されないとしても、可能でありかつ企図される。
【0050】
(援用)
本明細書で引用される全ての特許、公開特許出願および他の参考として援用される文献の全体的内容は、それらの全体が本明細書に明示的に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離カートリッジであって、
第1の末端;
第2の末端;および
該第1の末端と該第2の末端との間に位置した1種以上の吸収剤であって、該1種以上の吸収剤は、疎水性を増大させる順序で、該第1の末端から該第2の末端へと配置される、1種以上の吸収剤
を含む、分離カートリッジ。
【請求項2】
前記第1の末端に隣り合って位置した第1のフリット;および
前記第2の末端に隣り合って位置した第2のフリット、
をさらに含み、
該第1および第2のフリットは、前記1種以上の吸収剤を保持するように適合されている、
請求項1に記載の分離カートリッジ。
【請求項3】
前記1種以上の吸収剤は、複数の領域中に配置され、各領域は、異なる疎水性を有する、請求項1に記載の分離カートリッジ。
【請求項4】
前記複数の領域を分離するための1つ以上のフリットをさらに含む、請求項3に記載の分離カートリッジ。
【請求項5】
前記1種以上の吸収剤は、シアノ樹脂、C1樹脂、C2樹脂、C3樹脂、C4樹脂、C8樹脂、C18樹脂、フェニル樹脂、ビフェニル樹脂、グラファイトカーボン、シアノプロピル、およびトリメチルシランからなる群より選択される、請求項1に記載の分離カートリッジ。
【請求項6】
シリンダーをさらに含み、該シリンダーは、前記1種以上の吸収剤を封じ込めている、請求項1に記載の分離カートリッジ。
【請求項7】
前記シリンダーは、金属シリンダーである、請求項6に記載の分離カートリッジ。
【請求項8】
分離カートリッジであって、
該分離カートリッジの一方の末端に位置した入り口;
該入り口に隣り合う、第1の吸収剤領域;
該第1の吸収剤領域に隣り合う、第2の吸収剤領域;
該第2の吸収剤領域に隣り合う、第3の吸収剤領域;
該第3の吸収剤領域に隣り合う、第4の吸収剤領域;
該第4の吸収剤領域に隣り合う、第5の吸収剤領域;および
該第5の吸収剤領域に隣り合う該分離カートリッジの他方の末端に位置した出口、
を含む、分離カートリッジ。
【請求項9】
前記第1の吸収剤領域は、シアノ樹脂を含み;
前記第2の吸収剤領域は、C4樹脂を含み;
前記第3の吸収剤領域は、C8樹脂を含み;
前記第4の吸収剤領域は、C18樹脂を含み;そして
前記第5の吸収剤領域は、フェニル樹脂を含む、
請求項8に記載の分離カートリッジ。
【請求項10】
種々の疎水性を有する分離カートリッジを作り出すための方法であって、該方法は、
濾過物質および架橋剤を、シリンダーに装填する工程;および
該物質をエネルギー源に選択的に曝して、該濾過物質内の架橋反応を選択的に開始する工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
前記シリンダーは、ガラスチューブである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリンダーは、溶融シリカチューブである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギー源は、光源である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記エネルギー源は、放射線源である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記濾過物質は
ポリマー;および
架橋剤
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
濾過方法であって、該方法は、
以下:
第1の末端および第2の末端を有するシリンダー;ならびに
該シリンダー内の、該第1の末端と該第2の末端との間に位置した1種以上の吸収剤であって、該1種以上の吸収剤は、該第1の末端から該第2の末端へと、疎水性を増大させる順序で配置されている、1種以上の吸収剤、
を含む分離カートリッジを提供する工程;
該カートリッジを通じて、該第1の末端から該第2の末端へと、サンプルを流す工程であって、ここで溶液中の1種以上の分析物は、該1種以上の吸収剤に吸着される、工程;ならびに
該第2の末端から該第1の末端へ溶媒を流し、それによって、該1種以上の分析物を、該1種以上の吸収剤から溶出する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記溶媒および前記1種以上の分析物を、検出器に与える工程、
をさらに包含する、請求項16に記載の濾過方法。
【請求項18】
前記検出器は、質量分析計である、請求項17に記載の濾過方法。
【請求項19】
前記1種以上の吸収剤は、複数の領域に配置され、各領域は、異なる疎水性を有する、請求項16に記載の濾過方法。
【請求項20】
前記1種以上の吸収剤は、シアノ樹脂、C1樹脂、C2樹脂、C3樹脂、C4樹脂、C8樹脂、C18樹脂、フェニル樹脂、ビフェニル樹脂、グラファイトカーボン、シアノプロピル、およびトリメチルシランからなる群より選択される、請求項16に記載の濾過方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−519036(P2011−519036A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506491(P2011−506491)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/041771
【国際公開番号】WO2009/132330
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510280693)バイオシアス ライフ サイエンシーズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】