説明

分離的なパス計算アルゴリズム

プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供するために、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を自動的に生成するようにマルチプロトコルラベルスイッチングを実装するネットワークエレメントである。当該ネットワークエレメントは、LSPの生成についての要求を受信し、前記LSPの前記生成についての前記要求が前記バックアップLSPを対象とすることを判定し、トラフィックエンジニアリングデータベース内で前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定し、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPの各リンクの使用を抑制するために、実際のリンクコストよりも大幅に大きいリンクコストを有するように、前記プライマリLSPの各リンクを修正し、CSPFアルゴリズムを実行して、前記プライマリLSPの各リンクの修正されたコストに起因して前記プライマリLSPからの最大の分離度を有する前記バックアップLSPを取得し、そして前記バックアップLSPを返却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ネットワーク上のマルチプロトコルラベルスイッチングを管理するためのシステムに関する。具体的には、本発明の実施形態は、プライマリラベルスイッチパスについての最適なバックアップパスを決定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)は、ネットワーク上のトラフィックを管理するために利用される技術である。MPLSは、ネットワークをまたがるトラフィックをルーティングするために、トラフィックのストリームに割当てられる。ネットワークの各ノードは、ネットワーク上で受信されるインカミングのトラフィックを検査し、そのラベルに基づいて当該トラフィックを転送することにより、MPLSをサポートする。
【0003】
トラフィックエンジニアリングのケイパビリティを有するMPLSネットワークは、カスタマイズされるトラフィックサービスのために、トラフィックエンジニアリングのリソース割当てを最適化することができる。トラフィックエンジニアリングを伴うMPLSネットワークにおいて、プライマリラベルスイッチパス(LSP)は、カスタマイズされるトラフィックサービスごとにセットアップされる。プライマリLSPは、制約付きの最短経路優先(CSPF:Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを用いて計算される。プライマリLSPは、通常、パスの起点となるノードであるヘッドエンドノードにおいて計算される。プライマリLSPの確立は、自動化され得る。LSPの自動的な生成は、ヘッドエンドノード又は別個のパス計算エレメント(PCE)により行われ得る。
【0004】
カスタマイズされるトラフィックサービスごとのバックアップLSPは、プライマリLSPの障害の場合に利用され、手動で構成されなければならない。バックアップLSP内のリンクの各々は、プライマリLSPが障害の状態にある時に頼ることのできる分離した(disjointed)パスを生成するという目標をもって、バックアップLSPを構築するように手動で選択される。バックアップLSPの手動構成のための技術は、リンクのカラーリング(coloring)及びノードの排除(exclusion)を含む。
【0005】
しかしながら、これら技術は、管理者によるバックアップLSPの手動での構成に強く依存している。結果として、バックアップLSPの構成は、ヒューマンエラーを引き起こし易い。バックアップLSPを確立しようとする管理者は、バックアップLSPがカスタマイズされるトラフィックサービスの全ての制約又は要件を充足しているかを検証しなければならない。彼らは、考え得る最良の保護をバックアップLSPが提供し、又はバックアップLSPがプライマリLSPからの最大の分離度(disjointness)を有することを、手動で判定しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するネットワークエレメント上で実行される、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を自動的に生成して、プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供する方法であって、前記ネットワークエレメントにより、シグナリングプロトコルを通じて、LSPの生成についての要求を受信するステップと、前記LSPの前記生成についての前記要求が前記バックアップLSPを対象とすることを判定するステップと、前記要求が前記バックアップLSPを対象とするという判定に応じて、トラフィックエンジニアリングデータベース内で、前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定するステップと、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPの各リンクの使用を抑制するために、実際のリンクコスト以外のリンクコストを有するように、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを修正するステップと、前記トラフィックエンジニアリングデータベース上でCSPF(Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを実行して、前記バックアップLSPを取得するステップと、前記バックアップLSPは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクの修正されたコストに起因して、前記プライマリLSPからの最大の分離度を有することと、前記シグナリングプロトコルを通じて、前記バックアップLSPを返却することと、を含む方法である。
【0007】
プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供するために、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を自動的に生成するようにマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するためのシステムであって、LSPの生成についての要求を受信するように適合され、及び、パス計算エレメントを呼び出して前記LSPを取得し、前記LSPを要求側へ返却するように適合されるラベルスイッチルータと、前記ラベルスイッチルータに連結される前記パス計算エレメント(PCE)と、前記PCEは、前記LSPの前記生成についての前記要求がバックアップLSPを対象とするかを判定するように適合されることと、前記PCEは、トラフィックエンジニアリングデータベース内で、前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定するように適合されることと、前記PCEは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを、修正されたコストを有するように修正するように適合されることと、前記修正されたコストは、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPのリンクの使用を抑制することと、前記PCEは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース上でCSPF(Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを実行して、前記バックアップLSPを取得するように適合されることと、前記バックアップLSPは、前記バックアップLSPの計算において使用される前記プライマリLSPの各リンクの前記修正されたコストに起因して、前記プライマリLSPからの最大の分離度を有することと、前記PCEは、前記第1のラベルスイッチルータへ前記バックアップLSPを返却するように適合されることと、を含むシステムである。
【0008】
プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供するために、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を生成するようにマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するためのネットワークエレメントあって、プライマリLSPについてのリンク状態情報を含むネットワークトポロジーについてのリンク状態情報を記憶するように適合されるトラフィックエンジニアリングデータベースと、前記トラフィックエンジニアリングデータベースに連結され、前記バックアップLSPについての要求を処理するように適合されるバックアップパス計算モジュールと、前記バックアップパス計算モジュールは、トラフィックエンジニアリングデータベース内で前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定し、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPの各リンクの使用を抑制するために、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを、実際のコスト以外のコストを有するように修正するするように適合されることと、前記バックアップパス計算モジュールに連結され、前記トラフィックエンジニアリングデータベースからの前記リンク状態情報を用いて、宛て先ノードへの最適なパスを判定するための最適パス判定モジュールと、を含むネットワークエレメントである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付図面の図において限定の形ではなく例示の形で示されており、同等の参照は同様のエレメントを指し示す。なお、本開示における“一”実施形態又は“1つの”実施形態という異なる参照は、必ずしも同じ実施形態へのものではなく、そうした参照は、少なくとも1つを意味する。さらに、特定の特性、構造又は特徴が一実施形態との関連で説明される場合に、明示的に説明されているかによらず、そうした特性、構造又は特徴が他の実施形態との関連でも効果を有することは、当業者の知識の範囲内である。
【0010】
【図1】マルチプロトコルラベルスイッチングを実装するネットワークの1つの実施形態の図である。
【図2】ヘッドエンドノード又はパス計算エレメントの1つの実施形態の図である。
【図3】バックアップラベルスイッチングパスを生成するための処理の1つの実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、多くの具体的な詳細が例示される。しかしながら、本発明の実施形態がこれら具体的な詳細がなくとも実践され得ることが理解される。他の例において、よく知られた回路、構造及び技術は、本説明の理解を曖昧にしないために、詳細には示されていない。しかしながら、当業者であれば、そうした具体的な詳細がなくとも本発明を実践し得ることを理解するであろう。ここに含められる説明によって、当業者は、必要以上の実験を行わなくても、適切な機能性を実装することができるであろう。
【0012】
図1及び図2の例示的な実施形態を参照しながら、フロー図の作用について説明する。しかしながら、理解されるべき点として、フロー図の作用は、図1及び図2を参照しながら議論されるもの以外の本発明の実施形態によって奏されてもよく、図1及び図2を参照しながら議論される実施形態は、図3のフロー図を参照しながら議論されるものとは異なる作用を奏することもできる。
【0013】
図に示される技術を、1つ以上の電子デバイス(例えば、エンドステーション、ネットワークエレメントなど)上で記憶され実行されるコード及びデータを用いて実行することができる。そうした電子デバイスは、例えばマシン読取可能な又はコンピュータ読取可能な記憶媒体(例えば、磁気ディスク、光学ディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリメモリ、フラッシュメモリデバイス及び相変化メモリ)などの、マシン読取可能な又はコンピュータ読取可能な媒体を用いて、コード及びデータを記憶し及び(内部的に及び/又はネットワーク上で他の電子デバイスと)通信する。加えて、そうした電子デバイスは、典型的には、1つ以上のプロセッサのセットを含み、1つ以上のプロセッサのセットは、例えば1つ以上の記憶デバイス、ユーザ入出力デバイス(例えば、キーボード、タッチスクリーン及び/又はディスプレイ)及びネットワーク接続などの、1つ以上の他のコンポーネントと連結される。プロセッサのセットと他のコンポーネントとの連結(coupling)は、典型的には、1つ以上のバス及びブリッジ(バスコントローラともいう)を介する。記憶デバイス及びネットワークトラフィックを搬送する信号は、それぞれ、1つ以上のマシン読取可能な又はコンピュータ読取可能な記憶媒体、及び、マシン読取可能な又はコンピュータ読取可能な通信媒体を表す。よって、所与の電子デバイスの記憶デバイスは、典型的には、当該電子デバイスの1つ以上のプロセッサのセット上での実行のためのコード及び/又はデータを記憶する。当然ながら、本発明の実施形態の1つ以上の部分は、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアの様々な組合せを用いて実装されてよい。
【0014】
ここで使用されるような、ネットワークエレメント(例えば、ルータ、スイッチ、ブリッジなど)は、ネットワーク上の他の機器(例えば、他のネットワークエレメント、エンドステーションなど)と通信可能に相互接続する、ハードウェア及びソフトウェアを含む1つのネットワーク機器である。いくつかのネットワークエレメントは、複数のネットワーク機能(例えば、ルーティング、ブリッジング、スイッチング、レイヤ2集約、セッションボーダ制御、マルチキャスティング及び/又は加入者管理)についてのサポートを提供し、及び/又は複数のアプリケーションサービス(例えば、データ、音声及び映像)についてのサポートを提供する“マルチサービスネットワークエレメント”である。加入者エンドステーション(例えば、サーバ、ワークステーション、ラップトップ、パームトップ、モバイルフォン、スマートフォン、マルチメディアフォン、VoIP(Voice over Internet Protocol)、ポータブルメディアプレーヤ、GPSユニット、ゲームシステム、セットトップボックス(SIB)など)は、インターネット上で提供されるコンテンツ/サービス、及び/又は、インターネット上に重畳されるVPN(Virtual Private Network)上で提供されるコンテンツ/サービスにアクセスする。コンテンツ及び/又はサービスは、典型的には、サービス又はコンテンツプロバイダに属する1つ以上のエンドステーション(例えば、サーバエンドステーション)、又はピアツーピアサービスに参加しているエンドステーションにより提供され、パブリックウェブページ(フリーコンテンツ、ストアフロント、検索サービスなど)、プライベートウェブページ(例えば、ユーザネーム/パスワードでアクセスされる、電子メールサービスを提供するウェブページなど)、VPN上の企業ネットワーク、IPTVなどを含み得る。典型的には、加入者エンドステーションは、エッジネットワークエレメントに(例えば、(有線で又は無線で)アクセスネットワークに連結される顧客設備機器を通じて)連結され、エッジネットワークエレメントは、他のエンドステーション(例えば、サーバエンドステーション)に(例えば、他のエッジネットワークエレメントへの1つ以上のコアネットワークエレメントを通じて)連結される。
【0015】
本発明の実施形態は、ヒューマンエラー、非最適なラベルスイッチパス(LSP)、最大限分離していないプライマリ及びバックアップLSP、バックアップLSPの決定論的な生成、並びに、バックアップLSPを手動でセットアップするための管理者の時間及びリソースの莫大な使用、を含む従来技術の欠点を回避するためのシステム、ネットワーク及び方法を提供する。
【0016】
本発明の実施形態は、バックアップLSPを生成する際に、プライマリLSPのリンクの使用を禁止はしないものの抑制するように、各リンクに高い又は最大のコストを与えることで、トラフィックエンジニアリングデータベース内のプライマリLSPのパスを“ポイズニング”して、これら欠点を克服する。プライマリLSPのリンクが一度このように修正されると、制約付きの最短経路優先(CSPF)アルゴリズムなどのパス発見アルゴリズムが、自動的に、プライマリLSPから最も分離した最適なバックアップLSPを決定論的に判定するために使用され得る。
【0017】
図1は、MPLSを実装するネットワークの1つの実施形態の図である。例としてのネットワーク100は、ノードA〜Fを含む。他の実施形態において、ネットワーク内にいかなる数のノードが存在してもよい。ノードの各々は、コンピュータ又はネットワークエレメントを含むいかなる種類のコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットワーキングエレメント、ルータ、サーバ又は同様のコンピューティングデバイスを含み得る。ノードの各々は、どういったネットワーク媒体上で接続されてもよく、ネットワークのサイズ又は構成も問わない。ネットワークは、ローカリエリアネットワーク(LAN)、インターネット又は同様の通信システムなどのワイドエリアネットワーク(WAN)であってよい。ネットワーク100内のノードの各々は、ラベルスイッチパス(LSP)に従ってネットワーク100にわたるトラフィックを管理するための、MPLS又は同様の技術をサポートする。ネットワーク媒体は、いかなる有線又は無線ネットワーキング技術であってもよい。ネットワーク100は、ヘッドエンドノード101及び宛て先ノード111を含み得る。LSPは、ヘッドエンドノード101を起点とし、宛て先ノード111を終点とする。別個のLSPについて、ネットワーク100内のいかなる数のノードが、ヘッドエンドノード又は宛て先ノードとして記憶されてもよい。
【0018】
ヘッドエンドノード101は、トラフィックサービス要求に応じて、プライマリLSP107を確立する。ヘッドエンドノード101は、ネットワーク100上のトラフィックサービスごとにプライマリLSP107を確立することもできる。ヘッドエンドノード101は、プライマリLSP107を計算するパス計算エレメント(PCE)103を含み得る。他の実施形態において、PCE103は、別個のデバイス又はそうでなければヘッドエンドノード101とは別々である。本実施形態では、ヘッドエンドノード101は、パス計算クライアント(PCC)を介してPCEと通信する。
【0019】
ヘッドエンドノード101は、バックアップLSP109を確立するための責任をも有する。バックアップLSP109は、理想的には、プライマリ107から最大限の分離度を有する一方で、ヘッドエンドノード101から宛て先ノードC111へ最良の、最も効率的な又は最適なルートを依然として有するLSPである。PCE103がバックアップLSP109を計算することもできる。バックアップLSP109は、プライマリLSP107が生成される都度、又は、バックアップLSPを計算すべきことを示すトラフィックサービス要求に応じて、計算されてよい。
【0020】
ネットワーク100の例において、ノードA〜F間のリンクの各々は、例えば毎秒1ギガビットなどの同等の帯域幅を有する。但し、ノードC及びFの間のリンクを除く。このリンクは、毎秒0.5ギガビットの帯域幅を有する。ヘッドエンドノードにより処理される、ヘッドエンドノード101から宛て先ノードCへのトラフィックサービス要求が、毎秒1ギガビットの帯域幅の要件を有するものとする。プライマリLSP107は、最少のホップを有する最も近道のルートとして、ノードA、B及びCを通過する。同じ制約付きの最短経路優先(CSPF)アルゴリズム又は同等のアルゴリズムを単純に用いてバックアップLSP109を生成すると、プライマリLSP107と同じルートが生成されるであろう。プライマリLSP107の各リンクが除外されると、バックアップLSP109は、トラフィックサービス要求の制約を満たさないノードF及びCの間のリンクを含まざるを得ないであろう。以下にさらに詳細に説明するPCEは、プライマリLSP107のリンクの各々を最大のコストで重み付けすることによりバックアップLSP109を生成し、それにより、それらリンクの使用を抑制し、但しそれらを禁止しない。この改変された重み又はコストでCSPF又は同等のパス発見アルゴリズムが実行され、それにより、修正されたトポロジーについてのコストに基づく最良のパスが生み出される。結果として生じるバックアップLSP109は、プライマリLSP107から最大限の分離度を提供しつつ、一方で要求されたトラフィックサービスの制約を維持する。バックアップLSP109は、依然として、プライマリLSP107との間で共有されるノードB及びCの間のリンクを含み、これは必要であればプライマリLSP107のリンクを使用するという柔軟さの実例である。
【0021】
図2は、ヘッドエンドノード又はPCEの1つの実施形態の図である。バックアップLSPを計算する機能性は、ヘッドエンドノード、又はヘッドエンドノード内のPCCを介してヘッドエンドノードと通信する別個のPCEのいずれにおいて実装されてもよい。1つの実施形態において、ヘッドエンドノードがその機能性を実装し、当該機能性は、ヘッドエンドノード内に組み込まれる個別のPCE内にやはりセグメント化されてよい。当業者であれば、バックアップLSPの計算に直接的に関係するヘッドエンドノードのコンポーネント又はPCEのみが示されていることを理解するであろう。ヘッドエンドノード又はPCEは、プライマリLSPを計算するために必要な標準的な機能性及びコンポーネント、並びに他の同様の機能の全てを有することができる。1つの実施形態において、ヘッドエンドノード又はPCEは、バックアップLSPモジュール201、トラフィックエンジニアリングデータベース203、及び制約付きの最短経路優先(CSPF)モジュール205を含む。1つの実施形態において、上記機能性はヘッドエンドノード内に実装され、トラフィックサービス要求にサービスを提供し及び隣接ノードへトラフィックを転送するシグナリングエンジン207が存在する。
【0022】
バックアップLSPモジュール201は、バックアップLSPを生成しヘッドエンドノードと宛て先ノードとの間にバックアップLSPを確立する責任を有する。バックアップLSPモジュール201は、プライマリLSPのリンクの各々を“ポイズニング”し又は最大のコストを与えるように、トラフィックエンジニアリングデータベース203を修正する。すると、バックアップLSPモジュール201は、CSPFモジュール205が修正されたトラフィックエンジニアリングデータベース203に基づいてバックアップLSPを計算するように要求する。CSPFモジュール205は、トラフィックエンジニアリングデータベース203の修正された属性には気づかず、最適なLSPの通常の計算を行う。CSPFモジュール205によりバックアップLSPがバックアップLSPモジュール201へ返却された後、バックアップLSPモジュール201は、トラフィックエンジニアリングデータベースを再び修正して、プライマリLSP内のリンクの各々についての実際のコストを示す元の値を復元する。プライマリLSPの障害の後、シグナリングエンジンにより、バックアップLSPを利用して、ネットワーク上で関連するトラフィックを転送することができる。
【0023】
図3は、バックアップLSPを計算するための処理の1つの実施形態のフローチャートである。1つの実施形態において、当該プロセスは、ラベルスイッチパス生成要求又はトラフィックサービシング要求に応じて開始される(ブロック301)。この要求は、ネットワーク上のヘッドエンドノード又はPCEと通信状態にあるいかなるノードにより生成されてもよい。1つの実施形態において、当該要求は、ヘッドエンドノードにより受信され、又はヘッドエンドノードによりPCEへ転送される。受信後に、当該要求がプライマリLSPを対象としているか又はバックアップLSPを対象としているかを判定するために、当該要求は分析されなければならない(ブロック303)。他の実施形態において、プライマリLSPを対象とする要求は、プライマリLSPの完了後に、バックアップLSPの生成を自動的に開始する。プライマリLSPの計算が完了するまで、バックアップLSPを計算することはできない。受信された要求がバックアップLSPを生成しようとするものである場合、プライマリLSP内の各リンクの位置が、トラフィックエンジニアリングデータベース内で特定されなければならない(ブロック307)。リンクの位置を、ラベル又はプライマリLSPと関連付けられる同様の識別子によって特定することができる。トラフィックエンジニアリングデータベース内で識別されるプライマリLSPの各リンクは、修正される(ブロック309)。その修正は、そのコストを定義するいかなる値をリンクに与えてもよい。1つの実施形態において、当該コストは、バックアップLSPの計算においてプライマリLSPのリンクの使用が強く抑制されるような、最大のコスト、又はネットワークトポロジーの他のリンクよりも大幅に大きい任意の値である。
【0024】
リンクの各々が修正された後、CSPF又はプライマリLSPを計算するために使用されたものと同じ同様のパス発見アルゴリズムを用いて、最良のパスが計算される(ブロック305)。CSPFアルゴリズムは、修正されたリンク情報に依存し、結果として、最大限の分離度を有し、但しトラフィックサービス要求の制約を充足する点で最適なバックアップパスを生成する。バックアップLSPが計算された後、修正されたリンクの各々の元の値が復元される(ブロック311)。そして、バックアップLSPは、トラフィックの転送及びMPLSネットワーク上でのLSPの確立における使用のために、要求側へ供給される(ブロック313)。
【0025】
受信された要求がバックアップLSPを対象としないケースでは、処理は、既存のトラフィックエンジニアリングデータを用いて、単純に最良のパスを計算する(ブロック305)。このプライマリLSPは、要求側への応答において、MPLSネットワーク上のプライマリLSPを確立するために返却される。
【0026】
よって、MPLSを実装するネットワーク内でバックアップLSPを計算するための方法、システム及び装置が説明された。上述した説明が例示を目的としており、限定的ではないことは、理解されるべきである。上述した説明を読んで理解した後、当業者には、他の多くの実施形態が明らかであろう。本発明の範囲は、従って、添付の特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきであり、それに伴う均等の範囲の全体が特許請求の範囲に与えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するネットワークエレメント上で実行される、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を自動的に生成して、プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供する方法であって、
前記ネットワークエレメントにより、シグナリングプロトコルを通じて、LSPの生成についての要求を受信するステップと、
前記LSPの前記生成についての前記要求が前記バックアップLSPを対象とすることを判定するステップと、
前記要求が前記バックアップLSPを対象とするという判定に応じて、トラフィックエンジニアリングデータベース内で、前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定するステップと、
前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPの各リンクの使用を抑制するために、実際のリンクコスト以外のリンクコストを有するように、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを修正するステップと、
前記トラフィックエンジニアリングデータベース上でCSPF(Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを実行して、前記バックアップLSPを取得するステップと、前記バックアップLSPは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクの修正されたコストに起因して、前記プライマリLSPからの最大の分離度を有することと、
前記シグナリングプロトコルを通じて、前記バックアップLSPを返却することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記バックアップLSPが決定された後に、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクについて、元のコストを有するようにコスト値を復元するステップ、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記プライマリLSP内の障害の検出に応じて、前記バックアップLSPに切り替えるステップ、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記要求は、パス通信クライアントから受信される、請求項1の方法。
【請求項5】
前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定する前記ステップは、MPLSラベルを用いる、請求項1の方法。
【請求項6】
前記バックアップLSPは、前記プライマリLSPの少なくとも1つのリンクを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供するために、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を自動的に生成するようにマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するためのシステムであって、
LSPの生成についての要求を受信するように適合され、及び、パス計算エレメントを呼び出して前記LSPを取得し、前記LSPを要求側へ返却するように適合されるラベルスイッチルータと、
前記ラベルスイッチルータに連結される前記パス計算エレメント(PCE)と、
前記PCEは、前記LSPの前記生成についての前記要求がバックアップLSPを対象とするかを判定するように適合されることと、
前記PCEは、トラフィックエンジニアリングデータベース内で、前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定するように適合されることと、
前記PCEは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを、修正されたコストを有するように修正するように適合されることと、前記修正されたコストは、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPのリンクの使用を抑制することと、
前記PCEは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース上でCSPF(Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを実行して、前記バックアップLSPを取得するように適合されることと、前記バックアップLSPは、前記バックアップLSPの計算において使用される前記プライマリLSPの各リンクの前記修正されたコストに起因して、前記プライマリLSPからの最大の分離度を有することと、
前記PCEは、前記第1のラベルスイッチルータへ前記バックアップLSPを返却するように適合されることと、
を含むシステム。
【請求項8】
前記PCEは、前記バックアップLSPを取得した後に、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクについて、元のコストを有するようにコスト値を復元するように適合される、請求項7のシステム。
【請求項9】
前記ラベルスイッチルータは、前記プライマリLSP内の障害の検出に応じて、前記バックアップLSPに切り替えるように適合される、請求項7のシステム。
【請求項10】
前記ラベルスイッチルータは、前記要求を前記PCEへ送信するパス通信クライアントを含む、請求項7のシステム。
【請求項11】
前記PCEは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを、MPLSラベルによって識別するように適合される、請求項7のシステム。
【請求項12】
前記PCEは、ラベルスイッチルータとは別個のデバイスのコンポーネントである、請求項7のシステム。
【請求項13】
プライマリLSPに信頼できるバックアップを提供するために、プライマリLSPから最も分離した最適で決定論的なバックアップラベルスイッチパス(LSP)を生成するようにマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)を実装するためのネットワークエレメントあって、
プライマリLSPについてのリンク状態情報を含むネットワークトポロジーについてのリンク状態情報を記憶するように適合されるトラフィックエンジニアリングデータベースと、
前記トラフィックエンジニアリングデータベースに連結され、前記バックアップLSPについての要求を処理するように適合されるバックアップパス計算モジュールと、
前記バックアップパス計算モジュールは、トラフィックエンジニアリングデータベース内で前記プライマリLSPの各リンクの位置を特定し、前記バックアップLSP内での前記プライマリLSPの各リンクの使用を抑制するために、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクを、実際のコスト以外のコストを有するように修正するするように適合されることと、
前記バックアップパス計算モジュールに連結され、前記トラフィックエンジニアリングデータベースからの前記リンク状態情報を用いて、宛て先ノードへの最適なパスを判定するための最適パス判定モジュールと、
を含むネットワークエレメント。
【請求項14】
前記バックアップパス計算モジュールは、前記バックアップLSPを取得した後に、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクについて、前記実際のコストを有するようにコスト値を復元するように適合される、請求項13のネットワークエレメント。
【請求項15】
前記バックアップパス計算モジュールは、前記トラフィックエンジニアリングデータベース内の前記プライマリLSPの各リンクの位置を、MPLSラベルによって特定するように適合される、請求項13のネットワークエレメント。
【請求項16】
前記要求は、パス通信クライアントから受信される、請求項13のネットワークエレメント。
【請求項17】
前記バックアップLSPは、前記プライマリLSPの少なくとも1つのリンクを含む、請求項13のネットワークエレメント。
【請求項18】
前記最適パス判定モジュールは、CSPF(Constrained Shortest Path First)アルゴリズムを実装する、請求項13のネットワークエレメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510459(P2013−510459A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535992(P2012−535992)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054852
【国際公開番号】WO2011/055273
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】