説明

分離膜の殺菌方法および装置並びにその方法により処理された分離膜

【課題】分離膜の劣化を防ぎつつ殺菌剤による処理を可能とし、殺菌処理された分離膜の安定した長期運用を実現することが可能な、分離膜の殺菌方法および装置並びにその方法により処理された分離膜を提供する。
【解決手段】ポリフェノールを含む有機物質を含む水を加圧通水することにより分離膜を殺菌剤耐性処理した後、殺菌剤を含む水を分離膜へ供給して分離膜を殺菌することを特徴とする分離膜の殺菌方法および装置、並びにその方法により処理された分離膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜、特に逆浸透膜(RO膜)またはナノろ過膜(NF膜)の殺菌に際し、あらかじめ殺菌剤耐性処理を施すことによって、殺菌剤による分離膜の劣化を防ぎ、安定した長期運用を実現するための処理に関する方法および装置、並びにその方法により処理された分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水の淡水化や超純水、各種製造プロセス用水を得る方法として、例えばRO膜やNF膜を分離膜とするモジュールを用い、原水中からイオン成分や低分子成分を分離する方法が知られている。以前と比較すると、RO膜やNF膜の性能は格段に向上し、高阻止性能・低圧力運転が可能な膜も使われている。
【特許文献1】特開2003−117360号公報
【特許文献2】特開昭58−109182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、恒常的な問題として、分離膜モジュールにおいて、微生物をはじめとする生物汚染の発生がある。特にスライムの発生として知られている現象であるが、例えばスパイラル型膜エレメントにおいてスライムが発生すると、原水と濃縮水の圧力差、すなわち通水差圧が上昇し、特に複数のエレメントを直列に配置した装置の場合、後段のエレメントになるほど、圧力が低くなってしまい、所定の透過水量が得られなくなってしまう。さらに極端に通水差圧が上昇すると、エレメントそのものが破損する恐れすらある。
【0004】
生物汚染の発生を抑止するために、酸化剤により殺菌することが考えられるが、ポリアミド素材などをスキン層に持つRO膜やNF膜は、酸化劣化しやすく、特に、原水中に次亜塩素酸ナトリウムをはじめとする酸化性の物質が含まれる場合や、原水のORP(酸化還元電位)が高い場合、膜の劣化は早まり、寿命を短くする原因となっている。そのため、RO膜やNF膜を酸化剤によって殺菌をすることは事実上不可能である。酸化作用が比較的緩やかなクロラミンを用いる例もあるが、酸化剤であることには変わりなく、膜の劣化は避けられない。酸化劣化に比較的強いピペラジンアミド系の膜もあるが、性能が十分ではない。
【0005】
本発明の課題は、このような実情に鑑み、分離膜の劣化を防ぎつつ殺菌剤による処理を可能とし、殺菌処理された分離膜の安定した長期運用を実現することが可能な、分離膜の殺菌方法および装置並びにその方法により処理された分離膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述のような実情に対し、本発明者らは鋭意検討を行った結果、酸化剤により殺菌する前に、ある種の有機物質を用いることで、分離膜、特にRO膜やNF膜に殺菌剤耐性を持たせることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る分離膜の殺菌方法は、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を加圧通水することにより分離膜を殺菌剤耐性処理した後、殺菌剤を含む水を分離膜へ供給して分離膜を殺菌することを特徴とする方法からなる。この方法を用いることで、分離膜の性能を低下させずに殺菌処理を行うことが可能になり、長期にわたって安定した運用が可能となる。
【0008】
この分離膜の殺菌方法においては、上記分離膜として、逆浸透膜またはナノろ過膜を使用することができる。この方法を用いることによって、特に高い殺菌剤耐性処理効果が得られる。
【0009】
また、上記分離膜として、スパイラル型膜エレメントを使用することができる。スパイラル型膜エレメントは、コストも安く、汎用性も高いため、この構造の膜を用いるメリットは大きい。また、生物汚染によるトラブルが多いため、本発明に係る方法の利点が特に活かされる。
【0010】
また、上記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜を使用することが好ましい。中でも、好ましい素材として、全芳香族ポリアミド、さらに好ましくは架橋全芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリアミド系は、酸化剤による劣化が起こりやすく、通常は酸化剤による殺菌を行うことができないため、特に生物汚染のトラブルが多い。本発明に係る方法は、従来不可能であった、ポリアミド系素材のRO膜やNF膜の殺菌が可能となる画期的な技術である。
【0011】
また、上記分離膜として、殺菌剤耐性処理前の500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜を使用することが好ましい。より好ましい阻止率の範囲は、10%以上99%以下、さらに好ましくは20%以上98.5%以下、さらに好ましくは98%以下、さらに好ましくは30%以上98%以下である。この方法を用いることで、分離膜の高い殺菌剤耐性処理効果が得られる。阻止率99%を超える膜では、殺菌剤耐性処理の効果が低い。阻止率は、測定時の温度や透過流束によって異なるので、メーカーがその膜の性能を測定する標準的な条件を適用するか、スパイラル型膜エレメントの場合には、25℃、1.0m/dayの透過流束を目安に測定を行なうのが良い。本発明中で言う阻止率とは、特に断りのない限り、この方法で測定されたものを指している。
【0012】
なお、ここで言う「殺菌剤耐性処理前」に阻止率99%以下の性能を持つ分離膜とは、新品時に上記性能を持つ膜の他、もともとは99%以上の阻止率を有していたが、使用した結果劣化して上記性能となった膜や、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を接触させて、強制的に酸化劣化させて上記性能とした膜なども含まれる。
【0013】
上記殺菌剤としては、塩素系殺菌剤を用いることができる。次亜塩素酸ナトリウム、クロラミン、クロラミン-T、二酸化塩素など、各種塩素系殺菌剤は、汎用的に用いられるものであり、コストも安く、殺菌の効果も高い。塩素系以外の殺菌剤、例えば過酸化水素、過酢酸、過酢酸塩、過硫酸、過硫酸塩などを用いることもできるが、殺菌剤耐性処理を施した膜の劣化を特に防止できるのは、塩素系殺菌剤である。
【0014】
上記有機物質の平均分子量としては、200〜5000であることが好ましい。より好ましい平均分子量は、200〜3000、さらに好ましくは200〜2000である。平均分子量が200未満だと、有機物質が膜を透過してしまう場合があるため殺菌剤耐性効果が薄い。5000を超えると、膜のファウリングを引き起こして、透過流束の低下を招くため、好ましくない。
【0015】
上記有機物質としては、特に、タンニン酸を用いることが好ましい。ポリフェノール類の中でもとりわけタンニン酸の効果が高く、この物質を用いるのが良い。
【0016】
タンニン酸としては、加水分解型タンニンを用いることができる。タンニン酸には加水分解型と縮合型があり、とりわけ前者の方が効果が高い。
【0017】
また、タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものを用いることができる。五倍子から抽出されたタンニン酸は、一般に平均分子量が約1700程度のものが多く、殺菌剤耐性処理に好適であるものと推定される。
【0018】
本発明は、上記のような分離膜の耐性処理方法により処理された分離膜についても提供するものである。
【0019】
本発明に係る分離膜の殺菌装置は、ポリフェノールを含む有機物質を含む水を加圧通水することにより分離膜を殺菌剤耐性処理する手段と、該殺菌剤耐性処理後に殺菌剤を含む水を分離膜へ供給して分離膜を殺菌する手段とを有することを特徴とするものからなる。この装置を用いることにより、上記本発明に係る分離膜の殺菌方法を円滑に実施することができる。
【0020】
この本発明に係る分離膜の殺菌装置においては、上記分離膜は、例えば、逆浸透膜またはナノろ過膜からなる。
【0021】
また、上記分離膜として、スパイラル型膜エレメントを使用することができる。
【0022】
また、上記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜を使用することができる。
【0023】
また、上記分離膜として、殺菌剤耐性処理前の500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜を使用することが好ましい。
【0024】
上記殺菌剤としては、塩素系殺菌剤を用いることが好ましい。
【0025】
上記有機物質の平均分子量は、200〜5000であることが好ましい。
【0026】
また、上記有機物質としては、特に、タンニン酸を用いることが好ましい。タンニン酸としては、加水分解型タンニンを用いることができる。また、タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものを用いることができる。
【0027】
このような本発明に係る分離膜の殺菌装置は、例えば、水処理システムに組み込むことができる。水処理システムとしては、純水製造設備を例示できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、市販の分離膜、特に従来殺菌剤を使用することができなかった、RO膜やNF膜を殺菌することが可能となり、長年の懸案であった生物汚染のトラブルに対処することが可能となる。したがって本発明は、幅広い産業での利用価値が高く、特に医製薬産業や食品産業など、菌類の繁殖を確実に避けなければならない分野への適用が可能であり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明の内容を制限するものではない。
【0030】
図1は、本発明の一実施態様に係る分離膜の殺菌装置を組み込んだ水処理システムを示しており、この図1を参照して本発明における分離膜モジュールの運転方法を説明する。図1は分離膜装置を組み込んだ水処理システムのフロー図を示しており、図においては、圧力計、流量計、弁などは適宜省略してある。1は分離膜供給水タンク(原水タンク)、2は加圧ポンプ、3は分離膜モジュール、4〜9はボール弁(4は圧力調節弁)、10、20は薬液タンク、11、21は薬注ポンプを、それぞれ示している。なお、分離膜モジュール3は、分離膜そのものである膜エレメント31と、膜エレメント31を格納するための耐圧容器であるベッセル32から成る。
【0031】
通常の運転時は、前段からの水、例えば除濁処理された原水を、供給水タンク1に受ける。弁5、7を開、弁4を所定の圧力になるように開、弁6、8、9を閉として、加圧ポンプ2にて加圧された原水を、分離膜モジュール3で濃縮水と透過水とに分離し、濃縮水はブローされ、透過水は後段の装置へ送水される。なお、ボール弁6および7を適宜調整し、濃縮水を一部循環する場合もある。
【0032】
殺菌処理は、例えば、あらかじめ設定した所定の間隔で実施する。殺菌の前には、殺菌剤耐性処理工程を実施し、その後殺菌剤添加工程を実施する。これらのために、タンク10には所定の濃度とした前述の有機物質の水溶液を、タンク20には所定の濃度とした酸化剤(殺菌剤)の水溶液を貯留しておく。
【0033】
殺菌剤耐性処理工程においては、薬注ポンプ11を起動し、分離膜モジュール3へ有機物質を供給する。所定時間経過後、薬注ポンプ11を停止し、続いて薬注ポンプ21を起動して、分離膜モジュール3へ殺菌剤を供給する。所定時間経過後、薬注ポンプ11を停止する。
【0034】
有機物質の添加中、後段への支障がなければ、通常の運転を停止する必要はない。有機物質の透過水への漏洩が見られる場合で、後段への支障が生じ得る場合には、添加中に弁5を閉、弁9を開として、透過水をブローすることもできるし、あるいは、弁5を閉、弁8を開として、透過水を循環することもできる。循環する場合には、弁7を閉、弁6を開として、濃縮水も循環してもよい。この場合には、薬液濃度が一定濃度に達した時点で、薬注ポンプ11を停止する。
【0035】
殺菌剤耐性処理工程の時間は、5分間〜2時間、好ましくは5分間〜1時間とすることが、好適な処理のために望ましい。5分間未満では、処理の効果が小さく、2時間を超えても、処理の効果が高くなることはなく、薬品の無駄使いとなってしまう。
【0036】
殺菌剤耐性処理工程は、殺菌の前に毎回実施しても、毎回実施しなくてもよい。毎回実施しない場合は、殺菌剤耐性処理工程によって分離膜表面にコーティングされた有機物質が残存している期間、例えば2〜10回の殺菌に対して1回、というように設定すればよい。
【0037】
殺菌剤耐性処理工程は、必ずしも殺菌剤添加工程の直前に行わなくてもよい。例えば殺菌剤添加工程の直後に実施し、これを、次回の殺菌に対する前処理工程とみなしてもよい。
【0038】
殺菌剤耐性処理工程と同時に、還元剤を添加してもよい。有機物質を添加する水に、酸化性物質が含まれている場合、有機物質が分離膜表面に到達する前に、殺菌剤耐性効果を失ってしまうことがある。これを防ぐためには、有機物質の注入点より前に、還元剤の注入点を設け、あらかじめ還元しておくことが好ましい。還元剤としては、特に限定されないが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどを用いることができ、濃度は注入点において0.1〜100mg/L程度に設定すると良い。さらに、有機物質と還元剤を混合して添加してもよい。この方法を用いることで、分離膜に供給している原水や、有機物質を溶解させる水が酸化性雰囲気である場合でも、有機物質単独で用いる場合と比較して、作業を煩雑とすることなく、殺菌剤耐性効果を得ることができる。
【0039】
上記実施態様では、1モジュールの形態を例示したが、本発明は、クリスマスツリー状の配置や2段ROなど、複数エレメントを含む複数モジュールで構成される分離膜装置にも適用できる。
【0040】
殺菌剤耐性処理工程に使用する有機物質の濃度は、特に限定されないが、分離膜モジュール入口において0.1〜200mg/L、好ましくは0.5〜100mg/Lであることが、効率の良い処理をするために好ましい。0.5mg/L未満では効果が薄く、200mg/Lを超えるとファウリングを起こす場合があり、好ましくない。
【0041】
前記殺菌剤耐性処理工程における加圧通水時の透過流束は、0.3〜5.0m/dayの範囲とすることが、好適な処理効果を得るために望ましい。より好ましい透過流束の範囲は、0.5〜3.0m/day、さらに好ましくは0.7〜2.0m/dayである。 0.3m/day未満では、有機物質の吸着効果が低く、殺菌剤耐性効果が見込めない。5.0m/dayを超えると、ファウリングを起こす場合があり、好ましくない。
【0042】
前記有機物質を含む水に酸を添加し、pHを1〜5としてもよい。pHを上記範囲にコントロールすることにより、有機物質の沈殿を防ぎ、殺菌剤耐性処理を適切に実施することができる。酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、カルボン酸などを用いることができ、特にクエン酸は入手が容易で、毒性も低いことから用いやすく、操作性が良い。
【0043】
本特許で言うポリフェノールとは、複数の水酸基が結合した芳香族化合物を総称した、一般的なポリフェノール類のことを指す。ポリフェノールとしては例えば、アントシアニン、カテキン、タンニン、ルチン、ケルセチン、イソフラボン、フラボノイド、フミン類、フルボ酸などが挙げられるが、特に限定はされない。
【0044】
タンニンはタンニン酸、タンニン類とも呼ばれ、混同して用いられるが、本特許中では全て同義で用いている。また、五倍子タンニンのことをガロタンニンと呼ぶこともある。なお五倍子とは、ヌルデ属植物の虫コブのことである。
【0045】
タンニン酸には、加水分解型と縮合型がある。前者の原料の例としては、五倍子、没食子、チェストナット(Chestnut)、オーク(Oak Wood)、ユーカリプタス(Eucalyptus)、ディビディビ(Divi-Divi)、タラ(Tara)、スマック(Sumac)、ミラボラム(Myrabolam)、アルガロビア(Algarobilla)、バロニア(Valonea)、胡桃、栗、木苺、グミ、ザクロ、アカメガシワ、ウルシ科、サンシュユ、ゲンノショウコ、などが挙げられる。後者の原料の例としては、ケプラチョ(Quebracho)、ビルマカッチ(Burma Cutch)、ワットル(Wattle)、ミモザ(Mimosa)、スプルース(Spruse)、ヘムロック(Hemlock)、マングローブ(Mangrove)、カシワ樹皮(Oak bark)、アバラム、ガンビア(Gambier)、茶、柿渋、ユキノシタ、ブドウ、リンゴ、蓮根、コーヒー、しそ、ボケ、椿、ローズマリー、パセリ、サルビアの花、ヒマワリ、などが挙げられる。なお、加水分解型はピロガロール型(Hydrolyzable Tannin)、縮合型はカテコール型(Condensel Tannin)とも呼ばれる。また、前者の加水分解生成物として、没食子酸プロピルなどを用いることもできる。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0047】
実施例1
有機物質として五倍子タンニンを、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウム用いて、図1に示した装置にて、前記方法により連続運転を行った。タンク1に受けた原水は、前段の膜除濁装置にて除濁処理された地下水であり、運転期間中の導電率は、平均20mS/m前後で安定していた。膜は日東電工製ES-15-D8を用いた。有機物質濃度、殺菌剤濃度は、分離膜モジュールの入口でそれぞれ10mg/L、0.5mg/Lとなるように調整した。殺菌剤耐性処理工程、殺菌剤添加工程は、それぞれ1日に1回、30分間とした。
【0048】
実施例2
実施例1において、殺菌剤としてクロラミンを用いた以外は、実施例1と同じ方法にて処理を行った。
【0049】
実施例3
有機物質として五倍子タンニンを、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウム用いて、図1に示した装置にて、前記方法により連続運転を行った。タンク1に受けた原水は、前段の膜除濁装置にて除濁処理された地下水であり、運転期間中の導電率は、平均20mS/m前後で安定していた。膜は日東電工製LES90-D8を用いた。有機物質濃度、殺菌剤濃度は、分離膜モジュールの入口でそれぞれ10mg/L、0.5mg/Lとなるように調整した。殺菌剤耐性処理工程、殺菌剤添加工程は、それぞれ1日に1回、30分間とした。
【0050】
実施例4
実施例3において、殺菌剤としてクロラミンを用いた以外は、実施例3と同じ方法にて処理を行った。
【0051】
比較例1
実施例1において、殺菌剤耐性処理工程を行わず、殺菌剤添加工程のみを実施、すなわち通常の殺菌のみを実施した以外は、実施例1と同じ方法にて処理を行った。
【0052】
比較例2
実施例2において、殺菌剤耐性処理工程を行わず、殺菌剤添加工程のみを実施、すなわち通常の殺菌のみを実施した以外は、実施例2と同じ方法にて処理を行った。
【0053】
比較例3
実施例1において、殺菌剤耐性処理工程、殺菌剤添加工程を行わず、すなわち一切殺菌を行わずに運転を実施した以外は、実施例1と同じ方法にて処理を行った。
【0054】
比較例4
実施例3において、殺菌剤耐性処理工程を行わず、殺菌剤添加工程のみを実施、すなわち通常の殺菌のみを実施した以外は、実施例3と同じ方法にて処理を行った。
【0055】
比較例5
実施例4において、殺菌剤耐性処理工程を行わず、殺菌剤添加工程のみを実施、すなわち通常の殺菌のみを実施した以外は、実施例4と同じ方法にて処理を行った。
【0056】
比較例6
実施例3において、殺菌剤耐性処理工程、殺菌剤添加工程を行わず、すなわち一切殺菌を行わずに運転を実施した以外は、実施例3と同じ方法にて処理を行った。
【0057】
上記条件にて連続運転を実施し、運転初期、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後においてそれぞれ性能評価を行った。なお阻止率は、導電率を基準に計算した。透過水量は、運転初期を100とした相対値で示した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、殺菌剤添加工程のみの比較例1、2、4、5では、殺菌によって通水差圧の上昇は抑制できたものの、膜が劣化し、阻止性能が悪化した。殺菌も行わない比較例3、6では、阻止性能はほぼ保たれたものの、通水差圧の上昇が生じてしまった。さらに連続運転を継続すると、透過水量の大幅な低下が引き起こされるものと予想される。一方、殺菌剤耐性処理工程、殺菌剤添加工程を実施した実施例1〜4では、3ヶ月間の連続運転後でも、初期と同等の性能が維持できた。なお、殺菌剤の相違による効果の違いはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る分離膜の殺菌方法および装置並びにその方法により処理された分離膜は、分離膜の殺菌が要求されるあらゆる用途に適用でき、とくに逆浸透膜やナノろ過膜を殺菌するのに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施態様に係る分離膜の殺菌装置を組み込んだ水処理システムの機器系統図である。
【符号の説明】
【0062】
1 分離膜供給水タンク(原水タンク)
2 加圧ポンプ
3 分離膜モジュール
4、5、6、7、8、9 弁
10 薬液タンク(有機物質水溶液貯留)
11、21 薬注ポンプ
20 薬液タンク(殺菌剤水溶液貯留)
31 膜エレメント
32 耐圧容器としてのベッセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノールを含む有機物質を含む水を加圧通水することにより分離膜を殺菌剤耐性処理した後、殺菌剤を含む水を分離膜へ供給して分離膜を殺菌することを特徴とする、分離膜の殺菌方法。
【請求項2】
前記分離膜として、逆浸透膜またはナノろ過膜を使用することを特徴とする、請求項1に記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項3】
前記分離膜として、スパイラル型膜エレメントを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項4】
前記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項5】
前記分離膜として、殺菌剤耐性処理前の500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜を使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項6】
前記殺菌剤として、塩素系殺菌剤を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項7】
前記有機物質の平均分子量が、200〜5000であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項8】
前記有機物質として、タンニン酸を用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項9】
前記タンニン酸として、加水分解型タンニンを用いることを特徴とする、請求項8に記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項10】
前記タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものを用いることを特徴とする、請求項8または9に記載の分離膜の殺菌方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の分離膜の殺菌方法により処理された分離膜。
【請求項12】
ポリフェノールを含む有機物質を含む水を加圧通水することにより分離膜を殺菌剤耐性処理する手段と、該殺菌剤耐性処理後に殺菌剤を含む水を分離膜へ供給して分離膜を殺菌する手段とを有することを特徴とする、分離膜の殺菌装置。
【請求項13】
前記分離膜が、逆浸透膜またはナノろ過膜からなることを特徴とする、請求項12に記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項14】
前記分離膜として、スパイラル型膜エレメントが使用されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項15】
前記分離膜として、少なくとも芳香族ポリアミド系素材を含む膜が使用されていることを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項16】
前記分離膜として、殺菌剤耐性処理前の500mg/L塩化ナトリウム水溶液の阻止率が、99%以下の性能を持つ分離膜が使用されていることを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項17】
前記殺菌剤として、塩素系殺菌剤が用いられることを特徴とする、請求項12〜16のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項18】
前記有機物質の平均分子量が、200〜5000であることを特徴とする、請求項12〜17のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項19】
前記有機物質として、タンニン酸が用いられることを特徴とする、請求項12〜18のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項20】
前記タンニン酸として、加水分解型タンニンが用いられることを特徴とする、請求項19に記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項21】
前記タンニン酸として、五倍子を原料として作られたものが用いられることを特徴とする、請求項19または20に記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項22】
水処理システムに組み込まれていることを特徴とする、請求項12〜21のいずれかに記載の分離膜の殺菌装置。
【請求項23】
水処理システムが純水製造設備からなる、請求項22に記載の分離膜の殺菌装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−160173(P2007−160173A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357692(P2005−357692)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】