説明

切削インサート収納用ケース

【課題】 切削インサートの切刃部が欠損することを抑制することができる切削インサート収納用ケースを提供する。
【解決手段】 切刃部と貫通穴とを備えた切削インサートが収納される収納部を有しており、該収納部は、底面と、該底面の外周に沿って立ち上がる壁面と、を有しており、前記底面は、前記貫通穴に挿嵌される突出部を有し、前記壁面は、コーナー部を構成するコーナー領域と、該コーナー領域から内方に突出する第1ストッパー領域および第2ストッパー領域を有している切削インサート収納用ケースである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート収納用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
切削インサートをホルダに取り付けて使用される切削工具が多用されている。このような切削工具においては、切削インサートの切刃部が寿命に達した時点で、使用済みの切削インサートは新しい切削インサートに交換される。該切削インサートの交換作業は、切削加工時に頻繁に繰り返される。そのため、一般的に、切削インサートは、管理、保管、輸送あるいは販売等される際、複数個の単位で取り扱われる。
【0003】
そこで、従来から、複数個の切削インサートを収納することができる収納ケースが使用されている。そして、該収納ケースは、複数個積み上げられ束にして整理される。これにより、何百個、何千個といった多数の切削インサートが一度に管理されている。
【0004】
特許文献1には、収納部を複数有した収納ケースが開示されている。前記収納部には、切削インサートの貫通穴に挿通される突起部が形成されている。そして、1つの収納部に、1つの切削インサートが収納される。
【0005】
このような構成により、切削インサートが収納部に収納された状態において、切削インサートが幅方向にスライドすることを防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の収納ケースでは、切削インサートが突起部を中心として回転する。このとき、収納部の容積が小さい場合、切削インサートの切刃部が収納ケースの壁面に接触してしまう。そのため、前記切刃部が欠損するという問題があった。
【0007】
特に、切削インサートは、上述のように一度に大量の数量で、まとめて管理される。そのため、収納ケースの小型化は、強く要求される課題である。収納ケースの小型化を図る上で、上記切刃部の欠損は、大きな問題であった。
【特許文献1】実開平05−71186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、切削インサートの切刃部が欠損することを抑制することができる切削インサート収納用ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る切削インサート収納用ケースは、切刃部と貫通穴とを備えた切削インサートが収納される収納部を有しており、該収納部は、底面と、該底面の外周に沿って立ち上がる壁面と、を有しており、前記底面は、前記貫通穴に挿嵌される突出部を有し、前記壁面は、コーナー部を構成するコーナー領域と、該コーナー領域よりも内方に突出する第1ストッパー領域および第2ストッパー領域と、を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る切削インサート収納用ケースによれば、突出部および第1ストッパー領域および第2ストッパー領域によって、切削インサートが幅方向に大きくスライドすることを抑制するとともに、切削インサートが突出部を中心に回転する範囲を、第1ストッパー領域および第2ストッパー領域との間に位置する壁面に対応する範囲に制限することができる。その結果、切刃部の欠損を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図3を用いて、本発明に係る第1の実施形態による切削インサート収納用ケース1(以下、ケース1と略す。)について、詳細に説明する。
【0012】
図1は、ケース1の(a)上面図、(b)長辺側側面図、(c)短辺側側面図、(d)背面図である。
【0013】
図2は、図1に示すケース1の収納部2を示す要部拡大図であり、インサート10が収納された状態を示す図である。図3は、図2に示す収納部2に、勝手の異なるインサート10’が収納された状態を示す図である。
【0014】
ケース1は、切削インサート10(以下、インサート10と略す。)を収納する収納部2を有しており、本実施形態においては、1つのケース1に10個の収納部2が設けられている。したがって、ケース1には、一度に10個のインサート10を収納することができる。
【0015】
また、ケース1は、板状の蓋体等で封をして使用することができる。例えば、ケース1は、蓋体と組合せて使用することができる。すなわち、インサート10を各収納部に1つずつ載置する。そして、蓋体を装着することにより、収納部を封じる(不図示)。この際、さらに、ケース1と蓋体との双方にかかるようにラベルを貼って封じてもよい。なお、蓋体は、ケースと一体に設けられていても、ケースと別部材であっても構わない。
【0016】
まず、本実施形態のケース1に収納するインサート10について、図4を用いて説明する。
【0017】
図4は、インサート10の(a)上面図、(b)長辺側側面図、(c)短辺側側面図である。
【0018】
インサート10は、上面11と、下面12と、複数の側面13と、を有している。そして、インサート10は、複数の側面13のうち隣接する第1側面131と第2側面132との交差部に設けられた切刃部14を有している。すなわち、本実施形態においては、図4(b)および(c)に示すように、切刃部14は、インサート10の厚み方向に沿って形成されている。
【0019】
なお、切刃部は、本実施形態に限らず、インサートの上面11と側面13との交差部に形成されたものでも良い。
【0020】
第1側面131の少なくとも一部は、すくい面として機能する。図4(b)に示すように、第1側面131は、切刃部14に接続する曲面と、該曲面と接続する平面とを有している。切刃部14で生成された切屑は、前記曲面に沿ってカールされ、排出される。
【0021】
そして、第2側面132の少なくとも一部は、逃げ面として機能する。図4(a)に示すように、第2側面132は、切刃部14に接続する第1平面132−1と、該第1平面132−1に接続する第2平面132−2と、を有している。第1平面132−1は、実質的に逃げ面として機能する。第2平面132−2は、ホルダに装着した際の拘束面として機能する(不図示)。第1側面131の平面に対して第1平面132−1がなす角度は、第1側面131の平面に対して第2平面132−2がなす角度よりも大きい。これにより、切刃部14の強度を確保するとともに、第2平面132−2が被削材の加工壁面と接触することを抑制することができる。
【0022】
また、インサート10は、貫通穴15を有している。貫通穴15は、上面11から下面12に貫通している。該貫通穴15にねじなどの固定部材が挿通されて、インサート10がホルダに固定される。本実施形態では、貫通穴15の壁面は、側面視において、下面側における径が上面側における径よりも大きいテーパー形状となるよう形成されている。該貫通穴15には、ねじなどの固定部材が、下面12側から挿通される。また、本実施形態において、インサート10は、いわゆる勝手付きのインサートである。
【0023】
なお、本実施形態のインサート10は、2つの第1側面131、第2側面132および切刃部14を有している。すなわち、いわゆる2コーナー使いのインサートである。このようなインサートは、経済性に優れる。
【0024】
次に、上述したインサート10が収納されるケース1について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0025】
ケース1は、インサート10が収納される収納部2を有している。該収納部2は、底面3と、壁面4と、を有している。
【0026】
底面3は、インサート10が収納部2に収納された際に、インサート10の下面12の少なくとも一部と当接する。また、壁面4は、底面3の外周に沿って立ち上がるとともに、インサート10が収納部2に収納された際に、インサート10の側面13と対向する。壁面4は、底面3の外周全周に渡って形成されている。
【0027】
底面3は、インサート1の貫通穴15に挿嵌される突出部5を有している。また、壁面4は、コーナー部61を構成するコーナー領域6と、第1ストッパー領域7と第2ストッパー領域8とを有している。
【0028】
図2に示すように、第1ストッパー領域7は、インサート10が収納部2に収納された際に、インサート1の第1側面131に対応する。第2ストッパー領域8は、インサート1の第2側面132に対応する。そして、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8のいずれもコーナー領域6よりも内方に突出している。
【0029】
このような構成により、インサート10が収納部2に収納された状態において、インサート10が突出部5を中心に回転した際に、第1ストッパー領域7が第1側面131と接触したり、第2ストッパー領域8が第2側面132と接触したりする。その結果、インサート10が突出部5を中心に360度回転することを抑制することができる。具体的には、インサート10が突出部5を中心に、第1ストッパー領域7に接触する位置から第2ストッパー領域8に接触する位置までの回転範囲に制限される。このような回転範囲においては、切刃部14が壁面4と離間して配置される。したがって、回転範囲X内においては、切刃部14が壁面4と接触することが抑制される。
【0030】
以上より、収納部2の壁面4が突出部5と第1ストッパー領域7と第2ストッパー領域8とを備えていることで、切刃部14が壁面4と離間して配置される範囲内にインサート10の回転範囲が制限される。そのため、インサート10がケース1に収納されている際に、インサート10の切刃部14が欠損することを抑制できる。
【0031】
このような構成をなすことで、特に、従来のケースでは、非常に欠損し易かった、いわゆるシャープエッジに形成された切刃部14を有するインサートであっても、切刃部の欠損を好適に抑制することができる。
【0032】
なお、収納部2を上面視した状態で、壁面4に対して突出部5側を「内方」という。
【0033】
また、本実施形態においては、コーナー領域6は、切刃部14に対応するコーナー部61を構成する。第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8は、コーナー部61に対して非対称に配置されている。
【0034】
このような構成により、インサート10の2つの側面13と、各々対応するケース1の壁面4との間に生じる空間領域を、一方を他方より広く形成することができる。したがって、すくい面として機能する側面13側に生じる空間領域Aをより広く確保することができる。そのため、切刃部14と壁面4との接触を抑制する効果が高まる。
【0035】
特に、すくい面として機能する側面13側には、ブレーカとして機能する突起部などが形成されている場合が多い。そのような場合においても、空間領域Aが広く確保されているため、切刃部14および突起部が壁面4と接触して、欠損することを抑制することができる。
【0036】
一方で、逃げ面は通常、略平坦面や曲面等で構成されるため、インサート10において、大きく外方に突出した形状をなす傾向が低い。したがって、逃げ面として機能する側面側に生じる空間領域Bを、空間領域Aよりも狭くすることで、ケース1の小型化が図れる。
【0037】
このように、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を、コーナー部61に対して非対称に形成することで、切刃部14の欠損を抑制する効果が高まるとともに、ケース1の小型化が図れる。
【0038】
本実施形態においては、第1ストッパー領域7は、コーナー部61に対して、すくい面として機能する第1側面131に対応するコーナー領域62に位置している。そして、第2ストッパー領域8は、逃げ面として機能する第2側面132に対応するコーナー領域63に位置している。
【0039】
なお、ここでいうコーナー部61に対して非対称とは、上面視において、インサート10の回転運動の中心となる突出部5とコーナー部61とを結ぶ基準線Lに対して、線対称ではない構成をいう。上面視とは、底面に略垂直な方向からみた状態をいう。
【0040】
第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8のコーナー部61に対する配置は、本実施形態においては、第1ストッパー領域7は、第2ストッパー領域8よりもコーナー部61よりも離間した配置をなす。すなわち、第1ストッパー領域7とコーナー部61との距離D1は、第2ストッパー領域8とコーナー部61との距離D2よりも大きい。
【0041】
このような構成では、コーナー領域6のうちコーナー部61に対して第1ストッパー領域7側に位置する部分62にインサート10のすくい面側の側面を対向するよう配置することで、切刃部14の欠損を抑制する効果が高まる。加えて、第2ストッパー領域8は、よりコーナー部61寄りに配置されているため、ケース1の小型化が図れる。
【0042】
なお、第1ストッパー領域7とコーナー部61との距離D1とは、上面視において、壁面4と第1ストッパー領域7との交差部とコーナー部61との距離をいう。本実施形態においては、コーナー部61から第1ストッパー領域7までの壁面4(コーナー領域6のうちコーナー部61に対して第1ストッパー領域7側に位置する部分62)が、略平坦面で構成されている。したがって、図2に示すように、本実施形態においては、D1は、コーナー部61から第1ストッパー領域7の交差部までの壁面4の距離と略同一である。
【0043】
また、第2ストッパー領域8とコーナー部61との距離D2も、D1と同様にして算出することができる。
【0044】
さらに、第1ストッパー領域7は、第2ストッパー領域8よりも内方に突出している。すなわち、図2に示すように、上面視において、コーナー領域6に対して略垂直な方向における、コーナー領域6と第1ストッパー領域7との最大の距離d1が、コーナー領域6に対して略垂直な方向における、コーナー領域6と第2ストッパー領域8との最大の距離d2よりも大きい。
【0045】
このように本実施形態においては、第1ストッパー領域7は、第2ストッパー領域8に対して、コーナー部61からより離間した位置に且つより内方に突出した位置に設けられる。
【0046】
これにより、インサート10のすくい面として機能する第1側面131の中央側を、第1ストッパー領域7に当接させることができる。すなわち、インサート10の第1側面131のうち切刃部14から離間した部分が第1ストッパー領域7と当接する。したがって、インサート10の最外方に位置する切刃部14を、安定して壁面4から離間させることができる。その結果、切刃部14が壁面4に接触して欠損することを抑制する効果が高まる。
【0047】
さらに、第2ストッパー領域8は、コーナー部61側に位置する第1領域81と、該第1領域81と接続する第2領域82と、を有している。上面視において、コーナー領域6のうち第1領域81に隣接する部分62に対する第1領域81の傾斜角度θ1は、コーナー領域6のうち第2領域82に隣接する部分63に対する第2領域82の傾斜角度θ2よりも大きい(θ1>θ2)。
【0048】
これにより、第2ストッパー領域8と対向するインサート10の側面との間に生じる空間領域Bにおいて、コーナー部61側により広い空間を確保することができる。したがって、ケースの小型化とともに切刃部14の欠損を抑制する効果も高めることができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、コーナー領域6のうちコーナー部61に対して第2ストッパー領域8側に位置する部分63および第2ストッパー領域8が略平坦面であるため、上面視において、コーナー領域6の前記部分63の仮想延長線と第2ストッパー領域8の仮想延長線とのなす角度としてθ1およびθ2を各々求めることができる。
【0050】
コーナー領域6の前記部分63および第2ストッパー領域8が曲面をなす場合は、コーナー領域6の前記部分63と第2ストッパー領域8との交差部における、コーナー領域6の前記部分63の接線と第2ストッパー領域8の接線とのなす角度としてθ1を求めることができる。
【0051】
θ2は、コーナー領域6の前記部分63の接線と、第1領域81と第2領域82との交差部における第2領域82の接線とのなす角度として求めることができる。
【0052】
本実施形態においては、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8は、コーナー部61を構成する隣接した2面に各々接続している。これにより、ケース1の小型化が図れ、且つ、インサート10の回転可能な範囲を狭い範囲に制限することができる。したがって、インサート10が収納部2に収納された状態において、運搬などの管理の際に、インサート10がケース1内で移動することを低減させることができる。そのため、切刃部14の移動も低減できる。その結果、ケース1の小型化が図れ、且つ、切刃部14が壁面4に接触して欠損することを抑制することができる。
【0053】
なお、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8は、コーナー部61を構成する隣接する2つの面に各々接続される構成に限定されない。コーナー部61から複数の面を介した位置にある面に各ストッパー領域7、8が設けられていてもよい。
【0054】
すなわち、コーナー領域6のうちコーナー部61に対して第1ストッパー領域7側に位置する部分62および第2ストッパー領域8側に位置する部分63が、複数の面で構成されていてもよい。
【0055】
また、壁面4の高さは、突出部5の高さと略同一である。このような構成により、インサート10が突出部5から外れることを抑制することができる。そのため、収納部2内でインサート10が移動することを抑制する効果が高まる。
【0056】
さらに、本実施形態のケース1において、壁面4は、突出部5を中心とし互いに点対称に位置する2つの第1ストッパー領域7を有している。そして、同様に、壁面4は、突出部5を中心とし互いに点対称に位置する2つの第2ストッパー領域8を有している。
【0057】
このような構成により、上述した2コーナー使いのインサート10を好適に収納することができる。つまり、収納部2に、2箇所に切刃部14を逃がす空間が形成されるため、2箇所に位置する切刃部14のいずれにおいても、欠損を抑制することができる。
【0058】
すなわち、1つのコーナー部61の両側に位置する第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8によって、インサート10の回転運動の範囲を制限する。これによって1つのコーナー部61に対応する切刃部14が、壁面4に接触して欠損することを抑制することができる。そして、1つのコーナー部61の対角に位置するコーナー部61(他方のコーナー部61)の両側に位置する第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8によって、インサート10の回転運動の範囲を抑制することができる。これによって他方のコーナー部61に対応する切刃部14が、壁面4に接触して欠損することを抑制することができる。
【0059】
このように、一対の第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8が1つの切刃部14の欠損防止に機能する。本実施形態のケース1は、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を2対有するため、2コーナー使いのインサート10を収納することができる。
【0060】
またさらには、本実施形態のケース1において、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8は、収納部2に各々4つずつ設けられている。すなわち、4対の第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を有している。具体的には、上述した2対の第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を、突出部5を中心として互いに点対称に位置する更なる2対の第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を有している。
【0061】
このような構成により、図3に示すように、勝手の異なるインサートも収納することができる。つまり、勝手違いのインサートが収納可能なケースを提供することができる。これにより、ケースの種類を減らすことができる。そのため、ケースの製造コストの低減が図れる。
【0062】
さらに、このような構成においては、一方の勝手のインサートが収納部2に収納された状態において、収納部2のうち勝手違いの他方の勝手のインサートが収納される空間が空いている。そのため、インサートを収納部2から取り出す際に、該空間に指を入れることができる。その結果、インサートの取り出しが容易となり、インサートの交換作業の効率が高まる。
【0063】
なお、本実施形態においては、2つの第1ストッパー領域7は一体して設けられている。また、第2ストッパー領域8も一体して設けられている。壁面4に複数のストッパー領域を設ける場合は、本実施形態に限らず、各々、離隔して設けられていてもよい。
【0064】
図5および図6に、本発明に係る第2および第3の実施形態のケース1’および1”を示す。
【0065】
図5は、第2の実施形態に係るケース1’の要部拡大図を示す。ケース1’には、切刃部14を1つ有するインサート10’が収納される。ケース1’の収納部2’は、少なくとも第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8を各々1つずつ有していればよい。これにより、インサート10’の回転範囲を抑制し、切刃部14が壁面4に接触して欠損することを抑制することができる。
【0066】
なお、図5に示すように、本実施形態においては、インサートを収納部2’から取り出す際に、指を入れる空間が広く確保される。そのため、インサートの出し入れが容易になり、作業効率が高まる。
【0067】
また、図6は、第3の実施形態に係るケース1” の要部拡大図を示す。ケース1”には、切刃部14を2つ有するインサート10”が収納される。ケース1” の収納部2”においては、1対の第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8は、互いに対向するよう配置されている。本実施形態においては、貫通穴15に対して180回転対称なインサートが収納される形態である。したがって、2つの第1ストッパー領域7および2つの第2ストッパー領域は、各々、突出部5に対して180度回転対称に配置されている。該配置は、収納されるインサート10”の2つの切刃部14の配置に対応すればよく、本配置に限定されない。
【0068】
なお、図6に示すケース1”は、特に、ケースの小型化の観点において優れた形態である。
【0069】
また、上述した実施形態のいずれにおいても、第1ストッパー領域7および第2ストッパー領域8の形状が同一であるものを例示したが、これに限らない。第1ストッパー領域および第2ストッパー領域は、収納されるインサートの回転範囲を制限するとともに、切刃部が壁面に接触しないようコーナー領域6よりも内方に突出するよう設けられれば良い。例えば、壁面に球が付着したような構成をなすものであってもよい。このような場合、球がストッパー領域に相当することとなる。すなわち、球がインサートの側面に接触し、インサートの回転範囲を制限する。
【0070】
なお、本実施形態においては、ケース1が単一の部材からなる形態を例示したがこれに限らない。
【0071】
例えば、図7に示す本発明に係る第4の実施形態のように、ケース1が、上述した収納部2を有する収納部材91と、該収納部材がはめ込まれるケース基体92とで構成される形態であってもよい。該形態では、収納部材91が上述したケース1と同様の形状をなす。ケース基体92は、中枠で仕切られた複数の凹部を有している。そして、各凹部に、収納部材91の収納部2が各々はめ込まれる。
【0072】
なお、収納部材91とケース基体92とを接着すれば、収納部材91がケース基体92から浮き上がったり、外れたりすることを抑制できる。そして、インサートが安定して収納することができるとともに、ケースを長期に渡って使用可能となる。
【0073】
さらに、上述の実施形態等と同様、本実施形態のケースは、スライド式の蓋と組み合わせた箱体として使用することができる。そして、本実施形態のケースは、該蓋体の底面にケース同士を積層する時に係止めとなる突起を備えているタイプに対しても好適に適用することができる。
【0074】
このような形態においては、収納部2を有する収納部材91とケース基体92とを別素材で構成することができる。収納部材91およびケース基体92の材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が強度、軽さ、保形性、コスト、リサイクル性に優れている点から、好適に使用できる。また、特に、インサートを収納する収納部2を備える収納部材の材質としては、衝撃吸収力、軽さ、保形性、コストの点でウレタンフォーム、発砲ポリスチレン、発砲スチロール等の発砲プラスチックまたは発砲ゴムであってもよい。
【0075】
なお、図7(b)および(c)においては、ケース基体92にはめ込まれる収納部材91と、ケース基体92の中枠と、を点線で示している。
【0076】
以上、本発明にかかるいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る第1の実施形態による切削インサート収納用ケース1の(a)上面図、(b)長辺側側面図、(c)短辺側側面図である。
【図2】図1に示すケース1の収納部2を示す要部拡大図であり、インサート10が収納された状態を示す図である。
【図3】図2に示す収納部2に、勝手の異なるインサート10’が収納された状態を示す図である。
【図4】ケース1に収納される切削インサート10の(a)上面図、(b)長辺側側面視図、(c)短辺側側面視図、(d)背面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施形態による切削インサート収納用ケース1’の収納部2’を示す要部拡大図であり、インサート10が収納された状態を示す図である。
【図6】本発明に係る第3の実施形態による切削インサート収納用ケース1”の収納部2”を示す要部拡大図であり、インサート10が収納された状態を示す図である。
【図7】本発明に係る第3の実施形態によるケースの(a)平面図、(b)長辺側側面図、(c)長辺側側面図、(d)背面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 切削インサート収納用ケース
2 収納部
3 底面
4 壁面
5 突出部
6 コーナー領域
61 コーナー部
62 コーナー領域のうちコーナー部に対して第1ストッパー領域側の部分
63 コーナー領域のうちコーナー部に対して第2ストッパー領域側の部分
7 第1ストッパー領域
8 第2ストッパー領域
81 第1領域
82 第2領域
91 収納部材
92 ケース基体
10 切削インサート
11 上面
12 下面
13 側面
131 第1側面
132 第2側面
132−1 第1平面
132−2 第2平面
14 切刃部
15 貫通穴

1’ 第2の実施形態に係るケース
1” 第3の実施形態に係るケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃部と貫通穴とを備えた切削インサートが収納される収納部を有しており、
該収納部は、底面と、該底面の外周に沿って立ち上がる壁面と、を有しており、
前記底面は、前記貫通穴に挿嵌される突出部を有し、
前記壁面は、コーナー部を構成するコーナー領域と、該コーナー領域よりも内方に突出する第1ストッパー領域および第2ストッパー領域と、を有している切削インサート収納用ケース。
【請求項2】
前記第1ストッパー領域および第2ストッパー領域は、前記コーナー部に対して非対称に配置されている請求項1に記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項3】
前記第1ストッパー領域は、前記第2ストッパー領域よりも前記コーナー部から離間している請求項2に記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項4】
前記第1ストッパー領域は、前記第2ストッパー領域よりも内方に突出している請求項3に記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項5】
前記第2ストッパー領域は、前記コーナー部側に位置する第1領域と、該第1領域と接続する第2領域とを有しており、
上面視において、前記コーナー領域のうち前記第1領域に隣接する部分に対する前記第1領域の傾斜角度は、前記コーナー領域のうち前記第1領域に隣接する部分に対する前記第2領域の傾斜角度よりも大きい請求項3または4に記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項6】
前記第1ストッパー領域および第2ストッパー領域は、前記コーナー部を構成する隣接した2面に各々接続している請求項5に記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項7】
前記壁面の高さは、前記突出部の高さと略同一である請求項1乃至6のいずれかに記載の切削インサート収納用ケース。
【請求項8】
前記壁面は、前記突出部を中心とし互いに点対称に位置する2つの前記第1ストッパー領域と、前記突出部を中心とし互いに点対称に位置する2つの前記第2ストッパー領域と、を有している請求項1乃至7のいずれかに記載の切削インサート収納用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−5755(P2010−5755A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169110(P2008−169110)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】