説明

切削加工用刃物

【課題】 従来の加工刃物では、刃先に大きな負荷が加わったとき、台金の先端が開いてしまい、そこに切屑が詰まってしまうなどの問題が生じ、耐久的に健全な切削加工を行なうことができなかった。
【解決手段】 先端に多数の切刃チップa〜kを配設した円盤状の台金2a〜2kを設け、これら台金2a〜2kを多数枚重ねて切削刃物Aを構成すると共に、上記台金2a〜2kの全部若しくは隣り合う複数枚のものにおいて、その一側および他側に配置したものに、外側に向けて大きく開くテーパ状の受穴4a、4kをそれぞれ設け、その他のものに両受穴を連通する挿通穴4を設けると共に、上記の受穴4aに嵌合するテーパ頭6をもち、かつ内部にナット部を設けたナット体5と、同じく受穴4kに嵌合するテーパ頭10をもち、かつ伸長部にネジ部11を突設したネジ軸9とを設け、これらナット体5とネジ軸9によって構成した締結部材Bを、前記挿通穴4を通して螺合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の切刃チップを有する円盤状の台金を多数枚重ね合わせて構成した切削加工用刃物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削負荷の軽減、メンテナンスの容易化などを図る目的から、多数枚のチップソーを厚さ方向に重ね合わせ、これらによって1ユニットの切削刃物を構成する技術が特許文献1に記載されている。そして、上記のチップソー群を厚さ方向において固定するためにネジ手段を用いることもこの文献によって明らかにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭45−6578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の文献では、台金厚さが幾分大きいおが屑取り鋸105の一枚に対して、外側に位置する縁仕上鋸106のみを螺釘108で固定するものであって、厚さ方向の全体を一体化するものではない。このため、金属切削のような場合において、刃先に大きな負荷が加わると、台金の先端が開いてしまい、そこに切屑が詰まってしまうなどの問題が生ずる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、大きな切削負荷が作用した場合においても、台金間に開きがなく耐久的に健全な切削加工を行なうことができるようにした切削加工用刃物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る切削加工用刃物は、先端に多数の切刃チップを配設した円盤状の台金を設け、これら台金を多数枚重ねて切削刃物を構成すると共に、上記台金の全部若しくは隣り合う複数枚のものにおいて、その一側および他側に配置したものに、外側に向けて大きく開くテーパ状の受穴をそれぞれ設け、その他のものに両受穴を連通する挿通穴を設けると共に、上記の受穴に嵌合するテーパ頭をもち、かつ内部にナット部を設けたナット体と、同じく受穴に嵌合するテーパ頭をもち、かつ伸長部にネジ部を突設したネジ軸とを設け、これらナット体とネジ軸によって構成した締結部材を、前記挿通穴を通して螺合したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このように構成した課題解決手段によれば、円盤状台金を強固に締め付けて一体的に固定することができる。このため、切削負荷が大きく作用しても開きがなく、耐久的に健全な切削加工を行なうことができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る切削加工用刃物の一実施例の構成を示す縦断側面である。
【図2】同じく、多刃刃物の構成を示す正面図である。
【図3】刃物構成を拡大して示す一部縦断側面図である。
【図4】締結部材の構成を示す説明図である。
【図5】本発明に係る切削加工用刃物の第2実施例を示す一部縦断側面図である。
【図6】従来の切削加工用刃物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る切削加工用刃物の実施形態を説明する。図1〜図3において、1a〜1kは薄い円盤状の台金2a〜2kと、その外周に配設した多数の切刃チップa〜kからなる多刃刃物 この多刃刃物1a〜1kは、多数枚(実施例では11枚)を厚さ方向に重ね合わせた状態で一つの切削加工刃物Aを構成する。3は各台金2a〜2kの中心部に設けた取付穴(図2参照)である。
【0010】
上記の各多刃刃物1a〜1kは、同じ厚さであるが次第に直径を小さくして配設してあり、切刃チップa〜kが描く切削周面は滑らかに連続した截頭円錐形状である。なお、ここでは各多刃刃物1a〜1kの厚さは全て同じにしたが、それぞれ異なってもよい。このときの切刃チップa〜kの厚さ寸法は、台金の厚さに順ずるものとする。
【0011】
4aは一側の多刃刃物1aにおける台金2aの外周部付近に穿設したテーパ頭状の受穴 この受穴4aは、外側に向けて大きく開口するように形成してあり、台金2aの中心から放射状に複数個(実施例では6個)を設ける。
【0012】
4kは他側の多刃刃物1kにおける台金2kの外周部近くに穿設したテーパ状の受穴 この受穴4kは、前記した受穴4aと同様にして外側に向けて大きく開くように形成してあり、台金2kの中心から放射状に設ける。
【0013】
4は、上記した多刃刃物1a、1k以外の多刃刃物1b〜1jの台金2b〜2jに設けた多数の挿通穴 これら挿通穴は、上記の受穴4a、4kに対応する位置に設けてあり、一連の直線状穴を形成する。
【0014】
5は一方の受穴4aに嵌合するテーパ頭6と、テーパ頭6から伸長する円筒部7をもち、内部にナット部8を設けたナット体(図4参照) 上記の円筒部7は、前記した挿通穴4に緊密に嵌合する直径を有する。8はテーパ頭6の端部に設けたスパナ掛である。
【0015】
9は他方の受穴4kに嵌合するテーパ頭10と、テーパ頭10からナット体5側に突出するネジ部11とを有するネジ軸 12はテーパ頭10の端部に設けたスパナ掛である。なお前記のナット体5とネジ軸9は、両者によって締結部材Bを構成する。
【0016】
次に、15は一端に固定フランジ16を、他端に締付ナット17を螺合した中空軸状のアダプタ軸 このアダプタ軸15には、台金2a〜2kの受穴3によって多数の多刃刃物1a〜1kを装着し、重ね合わせた状態でセットする。このアダプタ軸20と多刃刃物1a〜1kとは、図示省略のキー部材によって回り止め措置されている。
【0017】
18は切削加工装置(図示省略)のスピンドル 19はスピンドル18の先端に設けたアダプタ軸15の取付軸部 20はワッシャー部材21を介してアダプタ軸15をスピンドル18固定する固定ネジである。なお上記のアダプタ軸15と各多刃刃物1a〜1kとはキー手段(図示省略)によって回り止め措置がされている。
【0018】
以上のように構成した切削加工刃物は、一側の多刃刃物1aの台金2aと他側の台金2kに設けた受穴4a、4kにそれぞれナット体5とネジ軸9を嵌装し、両者をレンチによって締め付けることで台金2a〜2kを一体的に固定することができる。そして、このことで多刃刃物1a〜1kにおける切削負荷による開きをなくすることができる。
【0019】
次に図5は、本発明に係る切削加工用刃物の第2実施例を示したものであり、切削周面の勾配が大きい截頭円錐形刃物に適用されるものである。
【0020】
すなわち、この場合においては、一側の台金2aと他側の台金2kとの直径差が大きく、一つの締結部材Bだけでは直径の大きい側(一側の台金2a側)において強固な締結力が得られず、開きが生ずる。
【0021】
上記の課題を解消するために、第2実施例では第1の締結部材Bに加えて第2の締結部材Cを施したものである。この締結部材Cは、直径の大きい台金2a〜2dに対して作用するものである。同図において、5aはナット体 9aはネジ軸であり、ネジ軸9aのテーパ頭10aは隣接する台金2eと干渉しないように埋没状に構成してある。
【0022】
なお上記の第2の実施例において、前記第1の実施例で説明した部分と同一のものは同じ符号をもって示してあり、重複した説明を省略する。
【0023】
また上記の第1および第2の実施例では、全ての台金2a〜2kを1つの締結部材Bによって1つに締付固定したものである。しかしながら、例えば台金群を3つのグループ(台金2a〜2d、台金2e〜2g、台金2h〜2k)に分け、これらを各別の締結部材によって締め付け固定し、そしてこれらをアダプタ軸によってまとめるようにしても良い。
【0024】
また上記の第1および第2の実施例では、截頭円錐形状の切削周面をもつ切削加工刃物に適用して説明したが、円筒状の切削周面をもつもの、曲面状の切削周面をもつものなどにおいても例外なく適用できる。
【符号の説明】
【0025】
A 加工刃物
1a〜1k 多刃刃物
2a〜2k 台金
3 取付穴
4a テーパ状の受穴
4k テーパ状の受穴
4 挿通穴
5 ナット体
6 テーパ頭
7 円筒部
9 ネジ軸
10 テーパ頭
11 ネジ部
B 締結部材
15 アダプタ軸
5a ナット体
9a ネジ軸
10a テーパ頭
C 締結部材
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に多数の切刃チップを配設した円盤状の台金を設け、これら台金を多数枚重ねて切削刃物を構成すると共に、上記台金の全部若しくは隣り合う複数枚のものにおいて、その一側および他側に配置したものに、外側に向けて大きく開くテーパ状の受穴をそれぞれ設け、その他のものに両受穴を連通する挿通穴を設けると共に、上記の受穴に嵌合するテーパ頭をもち、かつ内部にナット部を設けたナット体と、同じく受穴に嵌合するテーパ頭をもち、かつ伸長部にネジ部を突設したネジ軸とを設け、これらナット体とネジ軸によって構成した締結部材を、前記挿通穴を通して螺合したことを特徴とする切削加工用刃物。



























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218133(P2012−218133A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89750(P2011−89750)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000190725)シンクス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】