説明

切断具

【課題】 切断刃が被切断材から受ける弾性変形の復元力を切断力に利用して、より簡単かつ確実な切断ができるようにする。
【解決手段】 一対の切断刃2を連結部材3で開閉可能に枢支連結し、各切断刃2の基部2aに刃枢着部材4を介してハンドル5の先端を枢着し、前記一対のハンドル5をハンドル枢着部材6で開閉可能に枢着する。前記ハンドル枢着部材6は、一対のハンドル5を開状態から閉状態に変更するとき、一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に手動で使用する切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術においては、図5に示す特許文献1の複こう杆式剪断鋏のように、鋏片12を中央部より先端に近くの支点ピン18にて枢着し、ハンドル15を支点16を介して開閉できるようにし、鋏片12の後端とハンドル15の先端とをピン14にて枢着しており、ハンドル15における握力はピン14において増大され、更に鋏片12の刃先12bにおいて増大されて大きい剪断力を生じようになっている。
【特許文献1】株式会社技報堂発行「機械運動機構、第13章倍力機構、706複こう杆式剪断鋏」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術は、握力を倍増して鋏片12で剪断できるが、被切断材が強靱なワイヤ素線又は撚り線の場合は、鋏片12が撓んで弾性変形をすることがあり、その弾性変形の復元力に抗する力をハンドルに与え続けることが困難であるため、切断を簡単かつ迅速に完結することが困難になることがある。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした切断具を提供することを目的とする。
本発明は、切断刃が被切断材から受ける弾性変形の復元力を切断力に利用して、より簡単かつ確実な切断ができるようにした切断具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、一対の切断刃2が連結部材3で開閉可能に枢支連結され、各切断刃2の基部2aに刃枢着部材4を介してハンドル5の先端が枢着され、前記一対のハンドル5がハンドル枢着部材6で開閉可能に枢着されており、
前記ハンドル枢着部材6は、一対のハンドル5を開状態から閉状態に変更するとき、一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切る位置に設定されている。
【0005】
第2に、前記一対のハンドル5には、ハンドル枢着部材6が一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切った位置でハンドル5の閉動作を停止させるストッパ7が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被切断材の切断を完結し難いときに切断刃2が弾性変形するが、その弾性変形による復元力を、ハンドル枢着部材6を刃枢着部材4の中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切らせることにより、切断刃2に切断力として作用させることができ、これにより被切断材をより確実に切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4において、例えばワイヤ素線又は撚り線の強靱な被切断材を切断可能な切断具1を例示している。
切断具1は、一対の切断刃2が連結部材3で開閉可能に枢支連結され、各切断刃2の基部2aに刃枢着部材4を介してハンドル5の先端が枢着され、前記一対のハンドル5がハンドル枢着部材6で互いに開閉可能に枢着されている。
各切断刃2は先端部に刃部2bが形成されていて、刃部2bから基部2a側が互いに離れる方向に傾斜していて次第に細くなっている。この刃部2bが対向するように一対の切断刃2が対向配置されており、一対の切断刃2の両面側に板片で形成された一対の連結部材3が配置されている。
【0008】
一対の連結部材3は、切断刃2の長手方向中央より刃部2b側で一対の切断刃2を挟んでおり、ボルトで形成された枢支部材8を両者に貫通して枢支連結している。従って、切断刃2は枢支部材8を中心に揺動して、被切断材を切断するための開閉動作をする。
切断刃2は刃部2bでてこ作用力が作用するように、連結部材3から刃部2b先端までの距離より連結部材3から基部2aまでの距離が長くなっており、この切断刃2の基部2aに刃枢着部材4を介してハンドル5の先端が枢着されている。
前記一対のハンドル5は先端に対向内方向に突出した枢着部5aが形成されており、両ハンドル5の枢着部5aがボルトで形成されたハンドル枢着部材6によって開閉(図2の実線状態から2点鎖線状態に変化する)可能に枢着されている。なお、ハンドル5の一方の枢着部5aは二股形状であり、他方の枢着部5aは二股に入る形状である。
【0009】
前記各ハンドル5は枢着部5aを有するのでベルクランク形状であり、ハンドル枢着部材6が支点を形成し、刃枢着部材4が作用点を形成することになるが、刃枢着部材4は切断刃2に連結されているので、ハンドル5の開閉動作でハンドル枢着部材6が刃枢着部材4の周囲を移動することになる。
前記ハンドル枢着部材6は、一対のハンドル5を閉状態(図1、3に実線で、図2に2点鎖線でそれぞれ示す)にしたとき、一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sの近傍で僅か寸法Qだけ切断刃2側に位置する。
【0010】
そのためハンドル枢着部材6の移動は、一対のハンドル5を開状態(図2に実線で示す)から閉状態に変更するとき、一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切ることになる。また、前記中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切るように、ハンドル5における刃枢着部材4とハンドル枢着部材6の位置が設定されている。
前記一対のハンドル5には、ハンドル枢着部材6より握り部5b側に対向内方向に突出したストッパ7が設けられている。この両ストッパ7は、ハンドル枢着部材6が一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sをハンドル5側から切断刃2側へ横切った位置で当接するものであり、両ストッパ7が当接することにより、ハンドル5の閉動作は停止される。
【0011】
前記構成の切断具1の切断動作を次に説明する。
一対の切断刃2でワイヤ等の被切断物を切断するために、一対のハンドル5を握って開状態から閉状態に変更していくと、刃枢着部材4がハンドル枢着部材6を中心に回動し、切断刃2の基部2aを対向外方向に移動し、切断刃2を閉動作させていく。
切断刃2が閉動作により被切断物に次第に食い込んでいき、ハンドル枢着部材6が一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sに略達すると、一対の切断刃2は当接する。より正確には、ハンドル枢着部材6が一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sに達する若干手前で一対の切断刃2は当接する。
【0012】
ハンドル枢着部材6が一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sに達するときに、被切断物が軟質のものであれば切断を完了することになるが、被切断物が強靱であると、切断刃2は枢支部材8と刃枢着部材4との間で弾性変形(逃げ)を生じ、その弾性変形は一対のハンドル5に開く方向の復元力を生じる。
そして、ハンドル枢着部材6がハンドル5側から一対の刃枢着部材4を結ぶ中心線Sを越えて切断刃2側へ横切ると、切断刃2は理論的完全閉鎖状態を通過するので、切断刃2の刃部2a側に完全な当接をさせる方向の復元力を発生し、ハンドル5に開く方向の力がハンドル5を閉じる方向に作用する。そして、弾性変形の復元力が切断刃2を閉じる方向の切断力となり、前記完了されていなかった強靱な被切断物に刃部2aを更に食い込ませていき、切断を完結させる。
【0013】
その上、ハンドル枢着部材6が中心線Sを横切った後は、切断刃2の弾性変形の復元力はハンドル5を閉じる方向に作用するので、ハンドル5の閉動作をストッパ7で停止させると、その切断力が維持され、弾性変形していた切断刃2の復元作用によって強靱な被切断物を更に確実に切断する。
この被切断物を切断した状態での切断刃2の当接状態は、切断刃2の弾性変形の復元力が残ったままであることが好ましい。
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜4に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
【0014】
例えば、ストッパ7は一対のハンドル5の一方に設けて、他方に当接するように形成してもよく、前記刃枢着部材4、ハンドル枢着部材6及び枢支部材8はボルトで形成されていて、ナットを螺合することにより抜け止めされているが、ピン又は頭付きピンで形成してその端部をカシメることにより止めるようにしてもよい。
また、切断具1は主に手動で使用されるが、一対のハンドル5を駆動手段を介して開閉するように構成することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の拡大正面図である。
【図2】ハンドル枢着部材の移動を示す説明図である。
【図3】同全体正面図である。
【図4】同全体平面図である。
【図5】従来技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 切断具
2 切断刃
2a 基部
2b 刃部
3 連結部材
4 刃枢着部材
5 ハンドル
5a 枢着部
6 ハンドル枢着部材
7 ストッパ
8 枢支部材
S 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の切断刃(2)が連結部材(3)で開閉可能に枢支連結され、各切断刃(2)の基部(2a)に刃枢着部材(4)を介してハンドル(5)の先端が枢着され、前記一対のハンドル(5)がハンドル枢着部材(6)で開閉可能に枢着されており、
前記ハンドル枢着部材(6)は、一対のハンドル(5)を開状態から閉状態に変更するとき、一対の刃枢着部材(4)を結ぶ中心線(S)をハンドル(5)側から切断刃(2)側へ横切る位置に設定されていることを特徴とする切断具。
【請求項2】
前記一対のハンドル(5)には、ハンドル枢着部材(6)が一対の刃枢着部材(4)を結ぶ中心線(S)をハンドル(5)側から切断刃(2)側へ横切った位置でハンドル(5)の閉動作を停止させるストッパ(7)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の切断具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−151889(P2007−151889A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352478(P2005−352478)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(390019091)東邦工機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】