説明

切断工具

【課題】 切断対象の基準位置から所定長離間した位置を正確に切断するのに好適な切断工具を提供する。
【解決手段】 アクセサリー用ニッパー10は、軸部12を介して回動し接近及び離反する2つの刃部13a、13bと、各刃部13a、13bの先端に、互いに対向するように形成された切刃14a、14bと、切刃14bから、金属ピンを切刃14bに対向させた場合に金属ピンに沿って所定長突出する突起部16とを備える。突起部16は、切刃14bから先端までの高さが所定長h1の突起部16aと、切刃14bから先端までの高さが所定長h1よりも高い所定長h2の突起部16bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッパーやカッター等の切断工具に係り、特に、切断対象の基準位置から所定長離間した位置を正確に切断するのに好適な切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切断工具としては、特許文献1記載のニッパーが知られている。
図3は、特許文献1記載のニッパーの構成を示す図である。同図(a)は、特許文献1記載のニッパーの平面図であり、同図(b)は、特許文献1記載のニッパーの右側面図である。
【0003】
特許文献1記載のニッパーは、図3に示すように、一対のアーム1a、1bが軸部2で交差して回動自在に連結され、アーム1a、1bの軸部2から先端側に、刃部3a、3bがそれぞれ形成され、各刃部3a、3bの先端に、互いに対向するように切刃4a、4bが形成されている。アーム1a、1bの後端側は、カバーに覆われたハンドル5a、5bとなっている。ハンドル5a、5bを接近又は離反すると、切刃4a、4bも互いに接近又は離反するようになっており、切刃4a、4bが接近するとき、間に挟まれた金属ピン等を切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−161118号公報(〔0002〕〜〔0003〕、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビーズを用いたアクセサリーを製作する場合は、9ピン又はTピン等の金属ピンにビーズを通し、ビーズから突出した金属ピンの足をビーズの端部(穴の開口部)で90°に折り曲げる。そして、ニッパーを使って金属ピンの足をビーズの端部から7〜8[mm]の長さに切断し、丸ペンチ等を使って金属ピンの足を円弧状に丸めて輪を形成する。このようなビーズパーツを複数製作し、例えば、金属ピンの足を丸めてなる輪と9ピンの頭を連結することでビーズが数珠つなぎとなったアクセサリーが完成する。
【0006】
ビーズパーツの製作の過程においては、ニッパーを使って金属ピンの足をビーズの端部から7〜8[mm]の長さに切断するが、これよりも長く切断しても短く切断しても、金属ピンの足をうまく丸めることができない。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のニッパーにあっては、製作者が目視で金属ピンの足を切断していたため、金属ピンの足の長さにばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、切断対象の基準位置から所定長離間した位置を正確に切断するのに好適な切断工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の切断工具は、切断対象の基準位置から所定長離間した位置を切断するための切断工具であって、少なくとも1つの切刃と、前記切刃から、前記切断対象を前記切刃に対向させた場合に前記切断対象に沿って所定長突出する突出する突起部とを備える。
【0010】
このような構成であれば、切断対象の基準位置に突起部の先端を合わせるとともに切断対象を切刃に対向させ、切断対象を切断すると、切断対象の基準位置から所定長離間した位置を比較的正確に切断することができる。
【0011】
〔発明2〕 さらに、発明2の切断工具は、発明1の切断工具において、前記突起部は、前記切刃から先端までの高さが第1所定長の第1突起部と、前記切刃から先端までの高さが前記第1所定長とは異なる第2所定長の第2突起部とを備える。
【0012】
このような構成であれば、切断対象の基準位置に第1突起部の先端を合わせるとともに切断対象を切刃に対向させ、切断対象を切断すると、切断対象の基準位置から第1所定長離間した位置を比較的正確に切断することができる。また、切断対象の基準位置に第2突起部の先端を合わせるとともに切断対象を切刃に対向させ、切断対象を切断すると、切断対象の基準位置から第2所定長離間した位置を比較的正確に切断することができる。
【0013】
〔発明3〕 さらに、発明3の切断工具は、発明2の切断工具において、根元の側を軸として回動し接近及び離反する2つの刃部を備え、前記各刃部に、互いに対向するように前記切刃が形成され、前記第2突起部は、前記第1突起部よりも高く且つ前記第1突起部よりも前記切刃の刃元側に設けられている。
【0014】
9ピンやTピン等の金属ピンには太さに複数の種類があり、ビーズを用いたアクセサリーの製作においては、細い金属ピンは足を短く切断し、太い金属ピンは足を長く切断して用いる。
【0015】
このような構成であれば、細い切断対象を基準位置から短い位置で切断する場合は、切断対象の基準位置に第1突起部の先端を合わせるとともに切断対象を切刃に対向させ、切断対象を切断する。このとき、第1突起部は、第2突起部よりも切刃の刃先側に設けられているので、切断対象は、切刃の刃先側で切断される。
【0016】
これに対し、太い切断対象を基準位置から長い位置で切断する場合は、切断対象の基準位置に第2突起部の先端を合わせるとともに切断対象を切刃に対向させ、切断対象を切断する。このとき、第2突起部は、第1突起部よりも切刃の刃元側に設けられているので、切断対象は、切刃の刃先側よりも大きな力が加わる刃元側で切断される。
【0017】
ここで、刃部の根元の側とは、刃部の根元のほか、刃部の根元に他の部材が連結したり刃部の根元から他の部材が延出したりする構成の場合は、当該他の部材も含む概念である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、発明1の切断工具によれば、切断対象の基準位置から所定長離間した位置を比較的正確に切断することができるという効果が得られる。
【0019】
さらに、発明2の切断工具によれば、切断対象の基準位置から第1所定長又は第2所定長離間した位置を比較的正確に切断することができるという効果が得られる。
【0020】
さらに、発明3の切断工具によれば、太い切断対象を基準位置から長い位置で切断する場合、切断対象は、切刃の刃先側よりも大きな力が加わる刃元側で切断されので、太くても切断しやすいという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】アクセサリー用ニッパー10の前方斜視図である。
【図2】ビーズパーツの製作の過程においてアクセサリー用ニッパー10を使用する方法を説明するための図である。
【図3】特許文献1記載のニッパーの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本実施の形態に係るアクセサリー用ニッパー10の構成を説明する。
【0023】
図1は、アクセサリー用ニッパー10の前方斜視図である。
アクセサリー用ニッパー10は、図1に示すように、一対のアーム11a、11bが軸部12で交差して回動自在に連結され、アーム11a、11bの軸部12から先端側に、刃部13a、13bがそれぞれ形成され、各刃部13a、13bの先端に、互いに対向するように切刃14a、14bが形成されている。アーム11a、11bの後端側は、カバーに覆われたハンドル15a、15bとなっている。ハンドル15a、15bを接近又は離反すると、切刃14a、14bも互いに接近又は離反するようになっており、切刃14a、14bが接近するとき、間に挟まれた金属ピン等を切断することができる。
【0024】
刃部13bには、切刃14bから外方(切刃14a、14bに切断対象が挿入される側(図1では上方))に突出する突起部16が形成されている。
【0025】
突起部16は、切刃14bから先端までの高さが所定長h1(例えば、7[mm])の突起部16aと、切刃14bから先端までの高さが所定長h1よりも高い所定長h2(例えば、8[mm])の突起部16bとで構成されている。突起部16bは、突起部16aよりも切刃14bの刃元側に設けられている。
【0026】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図2は、ビーズパーツの製作の過程においてアクセサリー用ニッパー10を使用する方法を説明するための図である。
【0027】
ビーズを用いたアクセサリーを製作する場合は、図2(a)に示すように、まず、9ピン又はTピン等の金属ピン17にビーズ18を通す。ここで、金属ピン17には太さに複数の種類(例えば、0.5[mm]〜0.8[mm])があり、細い金属ピンは足を短く切断し、太い金属ピンは足を長く切断して用いる。これは、後述するように、9ピンの足を円弧状に丸めて輪を形成する場合に、その輪を、9ピンの頭(既成の輪)と同じ大きさにするには、太い金属ピン(例えば、太さが0.7[mm])は、細い金属ピン(例えば、太さが0.5[mm])よりも1[mm]程度長く切断する必要があるからである。
【0028】
細い金属ピン17を基準位置(例えば、ビーズ18の端部)から短い位置で切断する場合は、図2(b)に示すように、金属ピン17の基準位置に突起部16aの先端を合わせるとともに金属ピン17の足を切刃14a、14bの間に挿入し、金属ピン17の足を切断する。このとき、突起部16aは、突起部16bよりも切刃14bの刃先側に設けられているので、金属ピン17は、切刃14a、14bの刃先側で切断される。これにより、金属ピン17の足を基準位置から所定長h1で切断することができる。
【0029】
これに対し、太い金属ピン17を基準位置から長い位置で切断する場合は、図2(c)に示すように、金属ピン17の基準位置に突起部16bの先端を合わせるとともに金属ピン17の足を切刃14a、14bの間に挿入し、金属ピン17の足を切断する。このとき、突起部16bは、突起部16aよりも切刃14bの刃元側に設けられているので、金属ピン17は、切刃14a、14bの刃先側よりも大きな力が加わる刃元側で切断される。これにより、金属ピン17の足を基準位置から所定長h2で切断することができる。
【0030】
そして、図2(d)に示すように、ビーズ18から突出した金属ピン17の足を基準位置で90°に折り曲げ、図2(e)に示すように、丸ペンチ等を使って金属ピン17の足を円弧状に丸めて輪を形成する。このようなビーズパーツを複数製作し、例えば、金属ピン17の足を丸めてなる輪と9ピンの頭を連結することでビーズが数珠つなぎとなったアクセサリーが完成する。
【0031】
このようにして、本実施の形態では、アクセサリー用ニッパー10は、軸部12を介して回動し接近及び離反する2つの刃部13a、13bと、各刃部13a、13bの先端に、互いに対向するように形成された切刃14a、14bと、切刃14bから、金属ピンを切刃14bに対向させた場合に金属ピンに沿って所定長突出する突起部16とを備える。
【0032】
これにより、金属ピンの基準位置から所定長離間した位置を比較的正確に切断することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態では、突起部16は、切刃14bから先端までの高さが所定長h1の突起部16aと、切刃14bから先端までの高さが所定長h1よりも高い所定長h2の突起部16bとを備える。
【0034】
これにより、金属ピンの基準位置から所定長h1又は所定長h2離間した位置を比較的正確に切断することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態では、所定長h1と所定長h2との差を1[mm]程度に設定した。
これにより、太さが0.5[mm]の9ピンであっても、太さが0.7[mm]の9ピンであっても、その足を円弧状に丸めて輪を形成する場合に、その頭と同じ大きさの輪を形成することができるので、太さが0.5[mm]及び0.7[mm]の9ピンの両方に好適に適用することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、突起部16bは、突起部16aよりも切刃14bの刃元側に設けられている。
【0037】
これにより、太い金属ピンを基準位置から長い位置で切断する場合、金属ピンは、切刃の刃先側よりも大きな力が加わる刃元側で切断されので、太くても切断しやすい。
【0038】
さらに、本実施の形態では、突起部16は、左側の刃部13bにのみ形成されている。
これにより、金属ピンを左手で持ち、アクセサリー用ニッパー10を右手で持てば、金属ピンの足を切刃14a、14bの間に挿入したときに突起部16及び切刃14bの手前に金属ピンが位置するので、切断しようとする位置を目視することができ、より正確に切断することができる。右利きの製作者にとって好適である。
【0039】
さらに、本実施の形態では、突起部16は、刃部13bの正面側に形成されている。
切刃14a、14bは、正面側が平坦となっているので、金属ピンを切断した場合に、切断された金属ピンのうち正面側の切り口が平坦となるのに対し、背面側の切り口が山型となる。したがって、突起部16が刃部16bの正面側に形成されていれば、切断された金属ピンのうち製品として使用する側(正面側)の切り口をきれいに仕上げることができる。
【0040】
本実施の形態において、所定長h1は、発明2の第1所定長に対応し、所定長h2は、発明2の第2所定長に対応し、突起部16aは、発明2又は3の第1突起部に対応し、突起部16bは、発明2又は3の第2突起部に対応している。
【0041】
なお、上記実施の形態において、突起部16は、刃部13bに一体形成して構成したが、これに限らず、L字状の金属板で突起部16を形成し、刃部13bに接着して構成することもできる。
【0042】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16は、左側の刃部13bにのみ形成したが、これに限らず、右側の刃部13aにのみ形成することもできる。
【0043】
これにより、金属ピンを右手で持ち、アクセサリー用ニッパー10を左手で持てば、金属ピンの足を切刃14a、14bの間に挿入したときに突起部16及び切刃14aの手前に金属ピンが位置するので、切断しようとする位置を目視することができ、より正確に切断することができる。左利きの製作者にとって好適である。
【0044】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16は、左側の刃部13bにのみ形成したが、これに限らず、刃部13a、16bの両方に形成することもできる。この場合、突起部16の高さを2段階以上として構成してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16bは、突起部16aよりも切刃14bの刃元側に設けたが、これに限らず、突起部16aよりも切刃14bの刃先側に設けることもできる。
【0046】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、突起部16a、16bを一体形成したが、これに限らず、別体のものとして形成することもできる。
【0047】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、刃部13bに1つの突起部16を形成したが、これに限らず、複数の突起部16を形成することもできる。この場合、突起部16の高さを2段階以上として構成してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16は、高さを2段階として構成したが、これに限らず、段差を設けなくてもよいし、3段階以上として構成することもできる。
【0049】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、所定長h1と所定長h2との差を1[mm]程度に設定したが、これに限らず、適用する金属ピンの太さの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、太さが0.5[mm]及び0.8[mm]の9ピンに適用するのであれば、所定長h1と所定長h2との差を1.5[mm]程度に設定すればよい。
【0050】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16は、刃部13bに形成したが、これに限らず、突起部16が切刃14bから外方に所定長突出する構成であれば、アーム11a、11b、軸部12、ハンドル15a、15bその他の部位に形成することもできる。
【0051】
また、上記実施の形態及びその変形例において、突起部16は、刃部13bの正面側に形成したが、これに限らず、刃部13bの背面側に形成することもできる。
【0052】
また、上記実施の形態及びその変形例においては、本発明をニッパーに適用したが、これに限らず、ペンチ、ハサミ、ナイフ、カッター、ノコギリその他の切断工具に適用することもできる。この場合、ニッパーのような両刃の切断工具に限らず、カッターナイフのように片刃の切断工具にも適用することができる。また、刃部が軸部を介して回動し接近及び離反するような切断工具に限らず、刃部が横方向に開閉し接近及び離反するような切断工具にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…アクセサリー用ニッパー、 1a,1b,11a,11b…アーム、 2,12…軸部、 3a,3b,13a,13b…刃部、 4a,4b,14a,14b…切刃、 5a,5b,15a,15b…ハンドル、 16,16a,16b…突起部、 17…金属ピン、 18…ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象の基準位置から所定長離間した位置を切断するための切断工具であって、
少なくとも1つの切刃と、
前記切刃から、前記切断対象を前記切刃に対向させた場合に前記切断対象に沿って所定長突出する突出する突起部とを備えることを特徴とする切断工具。
【請求項2】
請求項1において、
前記突起部は、
前記切刃から先端までの高さが第1所定長の第1突起部と、
前記切刃から先端までの高さが前記第1所定長とは異なる第2所定長の第2突起部とを備えることを特徴とする切断工具。
【請求項3】
請求項2において、
根元の側を軸として回動し接近及び離反する2つの刃部を備え、
前記各刃部に、互いに対向するように前記切刃が形成され、
前記第2突起部は、前記第1突起部よりも高く且つ前記第1突起部よりも前記切刃の刃元側に設けられていることを特徴とする切断工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85773(P2013−85773A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230202(P2011−230202)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(511237379)
【Fターム(参考)】