説明

切断機における製品搬出装置

【課題】真直性が良くない素材の切断時に製品搬出バイス装置の基準バイスジョウに切断製品が移動衝突して鋸刃の歯欠けが生じない切断機における製品搬出装置の提供。
【解決手段】本体バイス装置4と搬出バイス装置1とを備えた切断機における製品搬出装置において、基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5とを接近離反させる流体圧シリンダ25を連結固定して設け、基準バイスジョウを本体バイス装置の固定バイス基準方向に常時付勢する弾機41を設け、固定バイス基準をY=0とし、鋸刃走行ライン近傍の製品側素材の許容曲がり量をΔYとしたとき、基準バイスジョウの前記固定バイス基準に対するY方向の移動可能範囲をY=±ΔYに規制するストローク規制手段30を設けると共に、素材把持後の基準バイスジョウのY方向の移動を規制する基準バイスジョウ固定手段を設けたことを特徴とする切断機における製品搬出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切断機における製品搬出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯鋸盤の如き切断機において、例えば長尺の素材を切断する場合、一般的に帯鋸盤の鋸刃走行ライン近傍でかつ素材側(送材方向における上流側)に設置した本体バイスと、鋸刃走行ライン近傍でかつ製品側(送材方向における下流側)に設置したフロントバイスとで素材をクランプして切断が行われる。
【0003】
上述の本体バイスの基準面(固定バイスの基準面)とフロントバイスの基準面(固定バイスの素材当接面)とは、通常、同一の基準位置に設定されているので、素材の真直性が良くない、例えば、素材先端がフロントバイスの基準面から離れる方向に曲がっている、いわゆる鼻曲がりした素材の場合、本体バイスでクランプした後にフロントバイスでクランプする際に、フロントバイスの基準面と素材との間に間隙(マイナスの隙間の場合もある)が生じた状態でのクランプとなり、本体バイスとフロントバイスとの間の素材に剪断応力が生じることになる。
【0004】
上述のような真直性が良くない素材の切断においては、切断終了間際になると、鋸刃による切削と両バイスによる把持で生ずる材料内部の残留応力と前記剪断応力とが、破断によって切断が完了したと同時に一気に開放されるので、切断製品がフロントバイスの基準面側に移動衝突して鋸刃の歯欠けが生じる原因となる。
【0005】
このように、真直性が良くない素材の切断時に切断製品がフロントバイスの基準面側に移動衝突して鋸刃の歯欠けが生じる原因を防止する素材クランプ方法およびその装置に係る発明が、例えば「特許文献1」に記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の発明の概要は、図14に示す如く本体バイス装置103のバイスジョー開閉用の駆動軸109には、スプリングにより駆動軸109の軸方向である左右方向に一定の推力が作用する機構(フローティング機構113)が設けてあり、このスプリングによる設定推力を越えた推力が駆動軸109に作用した場合、駆動軸109が左右方向にへ移動可能に軸支されており、かつこの駆動軸109に設けた右ネジと左ネジとにそれぞれ螺合する左右のバイスジョー107(L、R)は、駆動軸109を正逆方向に回転駆動させることにより、バイスジョー107(L、R)を開閉することができる様になっている。
【0007】
また、フロントバイス装置105の左右のバイスジョー117(L、R)は、駆動軸119に設けた右ネジと左ネジとにそれぞれ螺合しており、駆動軸119を正逆方向に回転駆動させることにより、バイスジョー117(L、R)は素材搬送中心X−X線を中心に相対的に開閉がなされるように設けてある。
【0008】
上記構成の切断機における素材切断時には、まず、基準となるフロントバイス装置105の左右のバイスジョー117(L、R)を作動させて素材Wを素材搬送中心X−X線を中心にクランプし、続いて、本体バイス装置111を作動させてバイスジョー107(L、R)を閉方向へ移動させる。このとき、素材Wが曲っているとバイスジョー107(L、R)のいずれか一方が先に素材Wに当接する。
【0009】
バイスジョー107Rが先に素材Wに当接した場合、更にバイスジョー開閉用駆動軸109を回転させれば、バイスジョー107Rは停止して駆動軸109が右方向へ移動し、未当接のバイスジョー107Lが素材Wに当接してクランプが完了する。
【0010】
すなわち、バイスジョー開閉用駆動軸109を右側へ移動させながらバイスジョー107R,107Lを素材Wに当接させてクランプするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−141833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の特許文献1記載の発明においても、本体バイス装置103がフロントバイス装置105に追随するべく、スプリングの撓みにより本体バイス装置の駆動軸の軸方向の移動を吸収しているため、常にそのスプリングの撓みによる推力が予圧として本体バイス装置にかかり、切断終了時にこの推力が開放されるため切断製品を駆動軸の軸方向である左右方向に動かしてしまい、この動きにより、鋸刃が製品に食い込んだりして鋸刃の刃先に損傷を与えるという問題がある。
【0013】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の課題は、切断機の鋸刃走行ラインを境界に素材側において素材を把持固定する本体バイス装置と、前記鋸刃走行ラインを境界に製品側において素材を把持固定すると共に、素材切断後の製品を把持して前記製品側へ搬出する搬出バイス装置とを備えた切断機における製品搬出装置において、真直性が良くない素材の切断時においても切断製品が切断製品搬出バイス装置における基準バイスジョウのバイスの基準面側に移動衝突して鋸刃の歯欠けが生じることのない切断機における製品搬出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の切断機における製品搬出装置は、切断機の鋸刃走行ラインを境界に素材側において素材を把持固定する本体バイス装置と、前記鋸刃走行ラインを境界に製品側において素材を把持固定すると共に、素材切断後の製品を把持して前記製品側へ搬出する搬出バイス装置とを備えた切断機における製品搬出装置において、該製品搬出装置に製品搬出方向であるX軸方向に移動位置決め可能なスライドベースを設け、該スライドベースに前記X軸方向に直交するY軸方向のY軸ガイドレールを設け、該Y軸ガイドレールに前記搬出バイス装置の基準バイスジョウと移動バイスジョウとを移動可能に設けると共に、該基準バイスジョウと移動バイスジョウとの間に該基準バイスジョウと移動バイスジョウとを接近離反させる流体圧シリンダを連結固定して設け、前記スライドベースと前記基準バイスジョウの間に該基準バイスジョウを前記本体バイス装置の固定バイス基準方向に常時付勢する弾機を設け、前記固定バイス基準をY=0とし、前記鋸刃走行ライン近傍の製品側における素材の許容曲がり量をΔYとしたとき、前記基準バイスジョウの前記固定バイス基準に対するY方向の移動可能範囲をY=±ΔYに規制するストローク規制手段を設けると共に、前記素材把持後の前記基準バイスジョウのY方向の移動を規制する基準バイスジョウ固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載の切断機における製品搬出装置は、請求項1に記載の切断機における製品搬出装置において、前記ストローク規制手段は、前記基準バイスジョウのガイド保持部材に弾機当接部材を設け、前記スライドベース下面に弾機保持部材を設け、該弾機保持部材と前記弾機当接部材との間に前記基準バイスジョウを前記固定バイス基準方向に常時付勢する弾機を設け、前記弾機保持部材に前記基準バイスジョウのY方向の移動可能範囲をY=−ΔYの位置に規制する係止部材を設けると共に、前記スライドベース下面に前記基準バイスジョウのY方向の移動可能範囲をY=+ΔYの位置に規制する係止部材を設け、前記基準バイスジョウ固定手段は前記スライドベースに前記基準バイスジョウのガイド保持部材上面に当接係合自在のピストンロッドを備えた流体圧シリンダを設けてなることを特徴とする切断機における製品搬出装置。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の切断機における製品搬出装置によれば、真直性が良くない素材の切断時においても、素材切断後の製品を把持して前記製品側へ搬出する搬出バイス装置において、基準バイスジョウを本体バイス装置の固定バイス基準方向に常時付勢する弾機を設け、固定バイス基準をY=0とし、素材の許容曲がり量をΔYとしたとき、基準バイスジョウがY方向にY=±ΔYの移動可能に設けたので、搬出バイス装置で素材を把持固定する際に、素材の曲がった形状に合わせて基準バイスジョウが移動して把持するので、切断製品が切断間近に剪断されて動いて鋸刃の刃先が製品へ食い込むことによる歯欠け等の損傷の発生を防止することができる。
【0017】
また、素材把持後の基準バイスジョウのY方向の移動を規制する基準バイスジョウ固定手段を設けたので、切断終了後に基準バイスジョウをY方向に移動させる力をゼロにすることができるため、切断終了後に切断された製品が動くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係る切断機における製品搬出装置における搬出バイス装置の説明図(正面図)。
【図2】図1の左側面図。
【図3】図1の右側面図。
【図4】図3のA矢視図。
【図5】スライドベース19を除外(仮想線で示す)した図2の上面図。
【図6】図3のB−B断面図。
【図7】図5におけるストローク規制手段30の拡大図。
【図8】本願発明に係る切断機における製品搬出装置における搬出バイス装置の搬送架台の説明図(正面図)。
【図9】図8の左側面図。
【図10】図8の右側面図。
【図11】図8の上面図。
【図12】図8のC−C断面図。
【図13】図9のD−D断面図。
【図14】従来の切断機における製品搬出装置における搬出バイス装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0020】
本願発明に係る搬出バイス装置1は、図5に示す如く、切断機(図示省略)の鋸刃走行ラインLを境界に素材側(鋸刃走行ラインLの右側)において素材Wを把持固定する本体バイス装置4と、前記鋸刃走行ラインLを境界に製品側(鋸刃走行ラインLの左側)において素材Wを把持固定すると共に、素材切断後の製品を把持して製品側へ搬出する搬出バイス装置1とを備えたものである。なお、本体バイス装置4の構成は公知のものであるのでそのの説明は省略した。
【0021】
図1、図2、図5を参照するに、搬出バイス装置1の基準バイスジョウ3には、平板状のガイド保持部材3aが一体的に設けてあり、この平板状のガイド保持部材3aの下面から下方前方の素材W側にかつ搬出方向(X軸方向)に平行に延伸する腕部3bが一体的に設けてある。
【0022】
図3に示す様に、搬出バイス装置1の基準バイスジョウ3に対向する移動バイスジョウ5には、基準バイスジョウ3と同様な平板状のガイド保持部材5aが一体的に設けてあり、この平板状のガイド保持部材5aの下面から下方前方の素材W側にかつ搬出方向(X軸方向)に平行に延伸する腕部5bが設けてある。
【0023】
前記基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5の腕部3bと腕部5bの先端部で素材Wに当接接触する側には、耐摩耗性の高い材質からなるバイスプレート7、9が着脱交換可能に装着してある。
【0024】
図1、図8を参照するに、搬送架台11には、切断製品の搬出方向13(図5参照)に平行な2本のX軸ガイドレール15が設けてあり、図1、図4、図6に示す様にこの2本のX軸ガイドレール15のそれぞれに係合する2個一組計4個のX軸ガイド17を備えたスライドベース19が設けてある。
【0025】
したがって、スライドベース19は切断製品の搬出方向13へ移動自在に設けてある。すなわち、スライドベース19はX軸方向へ移動自在である。
【0026】
図2、図3によく示される様に、上述のスライドベース19の下面には、前記X軸方向に直交するY軸方向に延伸した2本の平行なY軸ガイドレール21が設けてあり、この2本のY軸ガイドレール21のそれぞれに係合する2個一組で係合する計4個のY軸ガイド23が前記平板状のガイド保持部材3aとガイド保持部材5aの上面に設けてある。
【0027】
したがって、前記基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5はY軸ガイドレール21に沿ってY軸方向へ移動が可能である。
【0028】
図5によく示される様に、前記基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5との間には、基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5とを接近離反させるための流体圧シリンダ25が設けてある。
【0029】
基準バイスジョウ3の先端の腕部3bには、この腕部3bから前記スライドベース19の下面と同水準まで立ち上がったシリンダ取付部3cが一体的に設けてあり、このシリンダ取付部3cに流体圧シリンダ25のほぼ中央部に設けられたフランジ27を介して流体圧シリンダ25のシリンダヘッド側が固定してある。
【0030】
前記移動バイスジョウ5のガイド保持部材5aの下部から鋸刃走行ラインL側に延伸した延伸部5cが一体的に設けてあり、この延伸部5cに立設したピストンロッド取付部29にピストンロッド31の先端部がナット33により連結固定してある。
【0031】
図2、図5、図7を参照しながら、本体バイス4の固定バイス基準Kに対して基準バイスジョウ3のY方向の移動可能範囲を規制するストローク規制手段30について説明する。
【0032】
ストローク規制手段30は、前記スライドベース19の下面に弾機受け部材35をボルト37により垂設固定すると共に、基準バイスジョウ3の上部のガイド保持部材3aに係止部材39を立設し設け、この係止部材39と前記弾機受け部材35との間に、基準バイスジョウ3をY軸方向の−方向に、常時押圧付勢する3本の圧縮スプリング41を装着し、前記スライドベース19の−Y軸方向の端部にスライドベース19の裏面から下方に突出し、基準バイスジョウ3のガイド保持部材3aの−Y軸方向の端部に当接係合可能な係止部材43を設け、弾機受け部材35には、基準バイスジョウ3の固定バイス基準KからのY方向移動範囲を規制する位置調節部材としてボルト45が螺合して設けてなるものである。
【0033】
上述のボルト45の頭部が係止部材39に係合当接することにより、基準バイスジョウ3の固定バイス基準から+Y軸方向の移動量ΔYを規制する。
【0034】
図1、図5、図7は、基準バイスジョウ3の固定バイス基準からの+Y方向の許容移動量ΔYがゼロで、−Y方向の許容移動量がΔYの状態を示したものである。すなわち、搬出バイス装置1が素材Wの真直性が良好な鼻曲がりのない素材を把持したときの状態の例を示したものであり、基準バイスジョウ3が前記本体バイス装置4の固定バイス基準Kと同一位置に在る状態の例を示したものである。
【0035】
上述の図1、図5、図7に示す状態において、位置調節部材としてのボルト45を固定しているロックナット47を弛めて、ボルト45を+Y方向に適宜に移動して固定すれば、例えば、Y=ΔYの位置においてボルト45と係止部材39とが係合当接するように設定すれば、搬出バイス装置1の基準バイスジョウ3のY方向の移動可能範囲をY=±ΔYに規制することができる。なお、このΔYは鋸刃走行ラインLの製品側近傍位置での素材の許容曲がり量であってY軸方向に約±10mmに設定してある。
【0036】
図1、図5、図6を参照するに、前記スライドベース19上面には基準バイスジョウ3とスライドベース19とのY方向の相対的移動を規制する油圧または空圧で作動するロックシリンダ49が設けてある。このロックシリンダ49のピストンロッド51が突出する様に作動させると、ピストンロッド51が基準バイスジョウ3のガイド保持部材3aに当接して、基準バイスジョウ3とスライドベース19とのY方向の相対的移動が規制される様になっている。
【0037】
図6を参照するに、スライドベース19の前部のエンコーダ取付部19fに設けたX軸用のロータリーエンコーダ53のピニオン(図示省略)に移動バイスジョウ5に設けたラック55が係合させてある。したがって、固定バイス基準Kに対する移動バイスジョウ5のY方向の位置をX軸エンコーダ53により知ることが可能である。
【0038】
上記構成の搬出バイス装置1において、素材の真直性が良くない、例えば、素材先端がフロントバイスの基準面(固定バイスの素材当接面)から離れる方向(+Y方向)にΔYの範囲内で曲がった、いわゆる鼻曲がりした直径がDの丸棒からなる素材Wを本体バイスでクランプした後にフロントバイスでクランプする場合について説明する。
【0039】
はじめに、搬出バイス装置1の基準バイスジョウ3はストローク規制手段30の圧縮スプリング41により、常時、−Y方向に押圧されているため、固定バイス基準Kの位置より−Y方向にΔYだけ移動した位置に押圧されて、係止部材43に係合して停止した初期状態にある。
【0040】
次いで、上述の初期状態にある搬出バイス装置1の移動バイスジョウ5を流体圧シリンダ25を作動させて、基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5の間隔を素材直径(丸棒の場合)Dより大きく、例えばパラメータで指定する2ΔY分大きくなるように開いた状態にして、搬出バイス装置1を鋸刃走行ラインLの製品側に位置決めされている素材Wをクランプすべく、後述するX軸駆動手段60により、鋸刃走行ラインLの近傍に設定された適宜な位置に前進位置決めする。
【0041】
次いで、流体圧シリンダ25をピストンロッド31が収縮する方向に作動させれば、基準バイスジョウ3または移動バイスジョウ5のどちらかが先に素材Wに当接し、次いで残りのバイスジョウが素材Wに当接して素材Wが流体圧シリンダ25の締め付け力(実施例では約1,600kgf)で把持される。
【0042】
なお、上述の如く素材Wを把持するとき、基準バイスジョウ3と移動バイスジョウ5は、共に同一のY軸ガイドレール21上を移動自在に係合しているので、Y軸方向の抵抗はほとんどなく、前記本体バイス装置4と搬出バイス装置1との間における素材Wに作用する剪断応力は、前記ストローク規制手段30における圧縮スプリング41の僅かな押圧荷重(実施例では約15kgf)のみである。
【0043】
もし、素材Wの先端が基準バイスジョウ3から離隔する方向へΔYの範囲内で曲がっていた場合には、素材Wを把持した際に基準バイスジョウ3の素材当接面は、固定バイス基準(Y=0)を越えて移動して、鼻曲がりの隙間分だけ移動して素材Wに当接して停止する。
【0044】
その結果、移動バイスジョウ5の方が−Y方向に、すなわち基準バイスジョウ3に接近する方向に移動してきて素材Wに当接して素材Wが、流体圧シリンダ25の締め付け力(実施例では約1,600kgf)で把持されることになる。なお、この状態において素材Wに作用する剪断応力は、やはり圧縮スプリング41の押圧荷重(実施例では約15kgf)である。
【0045】
上述の如くして、素材Wを把持した後にロックシリンダ49を作動させれば、基準バイスジョウ3とスライドベース19とのY方向の相対的移動が規制されるため、上述の圧縮スプリング41の押圧荷重による素材Wに作用する剪断応力をゼロにすることができる。
【0046】
素材Wを把持した後にロックシリンダ49を作動させることにより、搬出バイス装置1による素材Wに作用する剪断応力を完全にゼロにすることができる。したがって、製品が素材Wから完全に切り離されるまで製品は搬出バイス装置1に保持されて動かないので鋸刃刃先が製品に引っかかることがない。
【0047】
前記搬送架台11には、搬出バイス装置1を鋸刃走行ラインLの製品側に位置決めされている素材Wを把持すべく、鋸刃走行ラインLの近傍に設定された適宜な位置に前進させたり、把持した製品を後方の適宜な位置まで搬出させるための後述のX軸駆動手段60が設けてある。
【0048】
図8〜図13を参照するに、搬送架台11は、製品搬出方向に離隔した門型支柱79、81を備えており、この門型枠部材79、81の上部の水平梁部79hと水平梁部81hとの間には、搬出方向に平行したX軸ガイドレール支持部材70が架け渡してある。
【0049】
図12を参照するに、前記スライドベース19の上面に設けたX軸ガイド17に係合する2本のX軸ガイドレール15がX軸ガイドレール支持部材70の下面に設けてある。
【0050】
X軸駆動手段60は、出力軸にピニオンギヤ73を備えたX軸駆動モータ71を前記スライドベース19上に設け、前記X軸ガイドレール支持部材70の側面にピニオンギヤ73に係合するX軸ラック75からなるものであり、X軸駆動モータ71を正転または逆転駆動させることにより、前記スライドベース19を搬出方向に移動位置決めすることが出来るものであり、すなわち、前記搬出バイス装置1を搬出方向に移動位置決めすることが出来るものである。
【符号の説明】
【0051】
1 搬出バイス装置
3 基準バイスジョウ
3a ガイド保持部材
3b 腕部
3c シリンダ取付部
4 本体バイス装置
5 移動バイスジョウ
5a ガイド保持部材
5b 腕部
7、9 バイスプレート
11 搬送架台
13 搬出方向
15 X軸ガイドレール
17 X軸ガイド
19 スライドベース
19f エンコーダ取付部
21 Y軸ガイドレール
23 Y軸ガイド
25 流体圧シリンダ
27 フランジ
29 ピストンロッド取付部
30 ストローク規制手段
31 ピストンロッド
33 ナット
35 弾機受け部材
37 ボルト
39 係止部材
41 圧縮スプリング
43 係止部材
45 ボルト
47 ロックナット
49 ロックシリンダ
51 ピストンロッド
53 ロータリーエンコーダ
55 ラック
60 X軸駆動手段
71 X軸駆動モータ
73 ピニオンギヤ
75 X軸ラック
79、81 門型枠部材
79h、81h 水平梁部
K 固定バイス基準
L 鋸刃走行ライン
W 素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機の鋸刃走行ラインを境界に素材側において素材を把持固定する本体バイス装置と、前記鋸刃走行ラインを境界に製品側において素材を把持固定すると共に、素材切断後の製品を把持して前記製品側へ搬出する搬出バイス装置とを備えた切断機における製品搬出装置において、該製品搬出装置に製品搬出方向であるX軸方向に移動位置決め可能なスライドベースを設け、該スライドベースに前記X軸方向に直交するY軸方向のY軸ガイドレールを設け、該Y軸ガイドレールに前記搬出バイス装置の基準バイスジョウと移動バイスジョウとを移動可能に設けると共に、該基準バイスジョウと移動バイスジョウとの間に該基準バイスジョウと移動バイスジョウとを接近離反させる流体圧シリンダを連結固定して設け、前記スライドベースと前記基準バイスジョウの間に該基準バイスジョウを前記本体バイス装置の固定バイス基準方向に常時付勢する弾機を設け、前記固定バイス基準をY=0とし、前記鋸刃走行ライン近傍の製品側における素材の許容曲がり量をΔYとしたとき、前記基準バイスジョウの前記固定バイス基準に対するY方向の移動可能範囲をY=±ΔYに規制するストローク規制手段を設けると共に、前記素材把持後の前記基準バイスジョウのY方向の移動を規制する基準バイスジョウ固定手段を設けたことを特徴とする切断機における製品搬出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断機における製品搬出装置において、前記ストローク規制手段は、前記基準バイスジョウのガイド保持部材に弾機当接部材を設け、前記スライドベース下面に弾機保持部材を設け、該弾機保持部材と前記弾機当接部材との間に前記基準バイスジョウを前記固定バイス基準方向に常時付勢する弾機を設け、前記弾機保持部材に前記基準バイスジョウのY方向の移動可能範囲をY=−ΔYの位置に規制する係止部材を設けると共に、前記スライドベース下面に前記基準バイスジョウのY方向の移動可能範囲をY=+ΔYの位置に規制する係止部材を設け、前記基準バイスジョウ固定手段は前記スライドベースに前記基準バイスジョウのガイド保持部材上面に当接係合自在のピストンロッドを備えた流体圧シリンダを設けてなることを特徴とする切断機における製品搬出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−235387(P2011−235387A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108415(P2010−108415)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダマシンツール (65)
【出願人】(309039347)株式会社アマダマシンツールエムエフジー (5)
【Fターム(参考)】