説明

切断装置及び切断方法

【課題】カッターロールに設けられた切断刃部の形状が複雑な場合であっても,シートの不切れを防止し,切断刃部の劣化を抑制することのできる切断装置及び切断方法を提供する。
【解決手段】切断刃部21が設けられたカッターロール20と微細振動する超音波振動装置10との間にシートSを導入して圧接通過させ,超音波振動装置20とシートSとのこすり合わせによる摩擦熱を利用してシートSを溶断することにより,シートの不切れを防止し,かつ切断刃部の劣化をも抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,切断装置及び切断方法に関するものである。具体的に説明すると,本発明は,シート状のワークを切断して所望の形に成型する用途に利用可能な切断装置及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,不織布,紙,又はフィルムのようなシート状のワークを所定形状に切断加工する技術として,カッターロールとアンビルロールとを有する切断装置,及びそれを用いた切断方法が知られている(特許文献1,特許文献2)。従来の切断装置及び切断方法は,回転可能なカッターロールとアンビルロールの間にワークを導入し,カッターロールの外周面に設けられた切断刃部とアンビルロールの外周面との間を圧接状態で通過させて,ワークを切断するものである。従来の切断技術は,回転可能なカッターロールとアンビルロールの間に帯状のシートを導入することにより,流れ作業的に連続してシートを切断可能であるため,シート成型の高速化を図ることができるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107047号公報
【特許文献2】特開2011−045942号公報
【特許文献3】特開2008−178568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,カッターロールに形成された切断刃部の形状が複雑である場合,カッターロールとアンビルロールによってシートを押圧切断すると,切断刃における線圧が不均一となってシートに不切れが生じたり,複雑な形状に彫刻されたカッターロールの切断刃部の寿命が著しく低下するという恐れがあった。
【0005】
また,例えば,従来から,カッターロールとアンビルロールを備える切断装置を用いて,テープ型使い捨ておむつに用いられる止着テープの切断成型が行われている。なお,止着テープとは,テープ型の使い捨ておむつの後身頃に取付けられており,着用者に装着されるに際し,使い捨ておむつの前身頃に止着され,使い捨ておむつを着用者の身体に保持するための部材である(特許文献3等参照)。止着テープは,一般的に,使い捨ておむつに取付けられる本体部と,この本体部から延出した先端部から構成され,本体部の幅は先端部の幅より幅広に形成されている(例えば,図6参照)。このような形状の止着テープを切断成型する場合には,カッターロールの切断刃部は,カッターロールの周方向(回転方向)に連続したS字型に形成される。そして,シート状のワークをカッターロールとアンビルロールの間を通過させることにより,反転された先端部が交互に連接し,先端部の幅に対応して本体部が先端部より幅広となるような止着テープを製造するための切込線を設けることができる(例えば,図6参照)。
【0006】
上記した例のように,カッターロールに設けられた切断刃部の形状が,連続したS字型であったり,さらに複雑な形状である場合,カッターロールとアンビルロールを用いた従来の押圧切断方法では,切断刃部の線圧が不均一であることや,切断刃部が劣化することが原因となり,シートを正確に切断成型し続けることが困難であった。
【0007】
また,カッターロールに設けられた切断刃部の形状が複雑化すると,刃の加工精度や,切断装置の操業時におけるクリアランス精度について,極めて高い精度が求められるようになる。従って,複雑な形状の切断刃部を有するカッターロールを採用すると,刃の加工費用や研磨費用が高額になると共に,操業時の調整作業に極めて時間がかかるという問題があった。
【0008】
このため,現在では,カッターロールに設けられた切断刃部の形状が複雑な場合であっても,シートの不切れを防止し,切断刃部の劣化を抑制することのできる切断装置及び切断方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで,本発明の発明者らは,上記の従来発明の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,切断刃部が設けられたカッターロールと微細振動する超音波振動装置の間にシートを導入して圧接通過させ,超音波振動装置のこすり合わせによる摩擦熱を利用してシートを溶断することにより,シートの不切れを防止し,かつ切断刃部の劣化をも抑制することができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に本発明は,以下の構成を有する。
【0010】
本発明の第1の側面は,シートを切断するための切断装置に関する。
本発明に係る切断装置は,少なくとも,超音波振動装置10とカッターロール20を備える。
超音波振動装置10は,シートの一面側に配置され,微細振動することによりシートの一面に対して摩擦熱を発生させる。
カッターロール20は,超音波振動装置10に対面して,シートの他面側に回転自在に配置され,超音波振動装置10と対面する表面に,超音波振動装置10との間でシートを圧接する切断刃部21を有する。
そして,切断装置は,シートを超音波振動装置10と切断刃部21の間を圧接状態で通過させることにより,摩擦熱によってシートを溶断することが可能である。
【0011】
このように,本発明に係る切断装置は,切断刃部21と超音波振動装置10の間に介在するシートの接触面に摩擦熱を発生させて,シートを溶断する。すなわち,本発明に係る切断装置は,従来のようにカッターロールとアンビルロール間の押圧力でシートを切断するものではなく,摩擦熱を利用してシートを溶断するものである。このため,本発明によれば,切断刃部21が複雑な形状であっても不切れを発生させることなく正確にシートを切断し続けることができる。また,本発明に係る切断装置は,従来のようにカッターロールの切断刃部をアンビルロール外表面に押し付けて切断するものではないため,カッターロール20の切断刃部21が磨耗しにくく,切断刃部21の長寿命化を図ることができる。
【0012】
本発明の第1の側面において,シートは複数のシートを重ね合わせたものであり,複数のシートには熱可塑性樹脂シートが含まれることが好ましい。
【0013】
このように,本発明に係る切断装置で,熱可塑性樹脂シートが含まれる複数のシート重ね合せて切断することにより,超音波振動装置10のこすり合わせによる摩擦熱で熱可塑性樹脂シートが溶融する。その後,溶融した熱可塑性樹脂シートが他のシートを接着して冷え固まるため,複数のシート同士を一体的に結合させることができる。要するに,本発明によれば,複数のシートの溶着と切断を同時に行うことができる。これにより,例えば,貼り合わされたシート同士が剥がれて分離してしまう事態を好適に解消できる。
【0014】
本発明の第1の側面の好ましい実施形態は,帯状のシートを切断することにより,テープ型の使い捨ておむつ100に用いられる止着テープ110を切断成型するための切断装置に関する。
止着テープ110は,テープ型の使い捨ておむつの後身頃に取付けられており,着用者に装着されるに際し,使い捨ておむつの前身頃に止着され,使い捨ておむつを着用者の身体に保持するための部材である。
止着テープ110は,使い捨ておむつに取付けられる本体部111と,本体部111から延出し本体部111より幅狭となった先端部112により構成されている。
本発明に係る切断装置では,帯状のシートを長手方向に略S字型に連続切断することにより,反転された先端部112が交互に連接し,先端部112の幅に対応して本体部111が先端部112より幅広となる止着テープ110を成型するための切込みを設けることができる(図5(b),図6(b),及び図6(d)参照のこと)。
具体的に説明すると,本発明の好ましい実施形態は,超音波振動装置10とカッターロール20を備えている。
超音波振動装置10は,シートの一面側に配置され,微細振動することによりシートの一面に対して,摩擦熱を発生させる。
カッターロール20は,超音波振動装置10に対面して,シートの他面側に回転自在に配置され,超音波振動装置10と対面する表面に,超音波振動装置10との間でシートを圧接する切断刃部21を有する。
この切断刃部21は,カッターロール20の周方向に連続して形成されており,止着テープ110を切断成型する部位に応じて,先端側縁切断刃211と,本体幅部切断刃212と,先端頂縁切断刃213を有している。
すなわち,先端側縁切断刃211は,止着テープ110の先端部112の左右の側縁を切断成型する対となる刃である。
また,本体幅部切断刃212は,対となる先端側縁切断刃211の端部同士を繋ぎ,止着テープ110の本体部111の幅部111Wを切断成型する刃である。
さらに,先端頂縁切断刃213は,対となる先端側縁切断刃211の中間部を繋ぎ,止着テープ110の先端部112の頂縁を切断成型する刃である。
そして,本発明に係る切断装置は,シートを,超音波振動装置10と切断刃部21の間に圧接状態で通過させることにより,摩擦熱によってシートを溶断することが可能である。
【0015】
本発明の第1の側面の好ましい実施形態は,使い捨ておむつに用いられる止着テープを切断成型するためのものであり,上記のように,カッターロール20の切断刃部21の刃型が複雑に構成されている。
つまり,切断刃部21は,カッターロール20の回転軸方向に延びる対となる先端側縁切断刃211を有する。先端側縁切断刃211の一方は,隣り合う先端側縁切断刃211と別の対をなし,他方の先端側縁切断刃211もまた,隣り合う先端側縁切断刃211とさらに別の対をなす。
また,切断刃部21は,カッターロール20の回転軸方向と直交する方向(周方向)に延び,対をなす先端側縁切断刃211の端部同士を繋ぐ本体幅部切断刃212を有する。このため,一の先端側縁切断刃211には,一方端においてある本体幅部切断刃212が連接しており,他方端において別の本体幅部切断刃212が連接している。
さらに,切断刃部21は,カッターロール20の周方向に延び,本体幅部切断刃212とは空隙を空けて,対をなす先端側縁切断刃211の中間部を繋ぐ先端頂縁切断刃213を有する。このように,先端頂縁切断刃213と本体幅部切断刃212は,略平行に形成されているものの,その間には所定距離の空隙が設けられている。
切断刃部21は,上記のように,先端側縁切断刃211と,本体幅部切断刃212と,先端頂縁切断刃213を構成要素とし,これらの構成要素がカッターロール20の周方向に略S字型に連続する構成を有している。
【0016】
本発明に係る切断装置は,上記のようにカッターロール20の切断刃部21が複雑な形状を有する場合であっても,超音波振動装置10とシートのこすり合わせによる摩擦力を利用して,シートの不切れを発生させずに切断することが可能である。特に,本発明の好ましい実施形態では,先端側縁切断刃211から先端頂縁切断刃213が分岐することとなるが,この分岐点では,2つの刃が重なり合うようになっており,従来の切断装置ではシートの不切れを発生させる可能性が極めて高いものであった。この点,本発明によれば,刃の分岐点においても,超音波振動装置10とシートのこすり合わせによる摩擦力を利用して,不切れを発生させることなく確実にシートを切断することができる。
【0017】
また,本発明の好ましい実施形態では,カッターロール20の切断刃部21において,本体幅部切断刃212と先端頂縁切断刃213の間に空隙が設けられた構成となっている。このため,本発明の好ましい実施形態により切断成型された止着テープ110は,先端部112の長さを比較的長く確保できる。しかも,先端部112を比較的長く形成した場合であっても,上下に反転された止着テープの先端部112が交互に重なりあう位置に,面ファスナーの凸部材等のシート(フックシート)を位置させることにより,高価な資材を使用する面積を増加させることなく,適切な面積に抑えることもできる。
【0018】
本発明の第2の側面は,シートの切断方法に関する。
本発明に係る切断方法においては,シートの一面側に配置され微細振動することによりシートの一面に対して摩擦熱を発生させる超音波振動装置10と,超音波振動装置10に対面してシートの他面側に回転自在に配置され超音波振動装置10と対面する表面に超音波振動装置10との間でシートを圧接する切断刃部21を有するカッターロール20を利用する。
まず,切断対象のシートを,振動状態の超音波振動装置10とカッターロール20の間に導入する。
そして,切断対象のシートを,超音波振動装置10と切断刃部21の間を圧接状態で通過させる。
これにより本発明に係る切断方法は,超音波振動装置10とシートのこすり合わせによる摩擦力を利用してシートを溶断する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,切断刃部が設けられたカッターロールと微細振動する超音波振動装置の間にシートを導入し圧接通過させて,超音波振動装置とシートのこすり合わせによる摩擦熱を利用して,シートを溶断することができるため,シートの不切れを防止し,かつ切断刃部の劣化をも抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は,本発明に係る切断装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は,超音波振動装置とカッターロールの構成例を抽出して示した斜視図である。
【図3】図3(a)は,テープ型使い捨ておむつの構成例を示している。図3(b)は,テープ型使い捨ておむつに用いられる止着テープの構成例を示している。
【図4】図4は,カッターロールの切断刃部の刃型の例を示している。
【図5】図5は,図4に示された刃型の切断刃部により切断成型された止着テープの例を示している。
【図6】図6は,従来の切断刃部の刃型の例,及び従来の切断刃部により切断成型された止着テープの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本願明細書においては,主として,本発明を,使い捨ておむつに用いられる止着テープを切断成型する切断装置又は切断方法に適用した場合の例について説明する。ただし,本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願明細書において,「A〜B」との表記は,「A以上B以下」であることを意味する。
【0022】
図1は,本発明に係る切断装置の概要を示した断面図である。
図1に示されるように,切断装置1は,上流側に,複数の巻出しロール30が配置されている。この巻出しロール30は,切断の対象となるシートが巻きつけられており,巻きつけられたシートを下流側に送り出す。本実施形態において,切断対象のワークは,3枚のシートが重ね合わされた積層シートである。このため,巻出しロール30は,シートの数に合わせて3台設けられている。また,巻出しロール30の下流側には,上下一対のピンチロール40が配置されている。このピンチロール40は,複数の巻出しロール30から送り出されたシートを挟み込んで重ね合わせ,さらに下流側へ搬送するように動作する。また,ピンチロール40の下流側には,超音波振動発生装置10とカッターロール20が対面して配置されている。ピンチロール40によって重ね合わされた積層シートは,超音波振動発生装置10とカッターロール20の間を圧接状態で通過し,切断される。超音波振動発生装置10とカッターロール20の間から排出されたシートは,上下一対の搬送ロール50により下流側に搬送され,平坦面を有するコンベヤ60上に載置される。コンベヤ60は,シートをさらに下流に搬送する。コンベヤ60の下流側には,裁断装置70が配置されている。この裁断装置70は,搬送されてきたワークを個別に裁断し,例えば止着テープのような製品とする。
【0023】
ここで,上記巻出しロール30,ピンチロール40,搬送ロール50,コンベヤ60,及び裁断装置70には,本願出願時における公知の構造を採用することができる。このため,以下では,主として,本発明に係る実施形態の要部である超音波振動装置10及びカッターロール20の構成について詳細に説明する。
【0024】
図2は,切断装置1の構成のうち,超音波振動装置10とカッターロール20の構造を抽出して図示したものであり,シートSが超音波振動装置10とカッターロール20の間を通過する状態が斜視的に示されている。
図2に示されるように,超音波振動装置10とカッターロール20の間にシートSが送り込まれる。カッターロール20は,周側面の表面に突起した切断刃部21を有し,超音波振動装置10とカッターロール20の切断刃部21の間においてシートSを圧接しながら,回転する。シートSは,超音波振動装置10とカッターロール20の下流側に位置する上下一対の搬送ロール50の駆動により,順次下流方向へ引き出されながら搬送される。このようにして,超音波振動装置10とカッターロール20が,シートSを各面から挟み込むことにより,超音波振動装置10から発生される超音波振動エネルギーが,シートSとカッターロール20との接点に伝達される。超音波振動エネルギーが伝達されると,カッターロール20とシートSが接する点に,超音波振動による摩擦熱が大きく発生し,シートSが高温となる。高温となった摩擦熱により,シートSの表面及び内部が溶融し始め,最終的には,超音波振動装置10とカッターロール20に挟み込まれたシートSが溶断され,切込線Cが形成される。
【0025】
超音波振動装置10は,微細な振動幅で振動することにより,超音波振動装置10とカッターロール20に挟み込まれたシートに対して摩擦熱を発生させることができる。超音波振動装置10は,導入されるシートの面に対して垂直に微振動し,シートを連続的に叩打することにより摩擦熱を発生させるものであってもよい。また,超音波振動装置10は,導入されるシートの面に対して平行に微振動し,シートの面を摺動することにより摩擦熱を発生させるものであってもよい。超音波振動装置10は,例えば,15kHz〜40kHz,又は20kHz〜30kHzの超音波を発生させる。このため,超音波振動装置10は,シート面に対して垂直方向又は平行方向に,例えば,10μm〜100μmの微細幅で振動する。
【0026】
超音波振動装置10は,図2に示されるように,摩擦対象のシートに接するホーン11と,ホーン11に接続されたブースタ12と,ブースタ12に接続されたコンバータ13を備える。コンバータ13は,高周波電気信号を機械振動に変換し,ブースタ12に伝導する。ブースタ12は,コンバータ13が発生せた振動を増減し,ホーン11を振動させる。ホーン11は,コンバータ13及びブースタ12の超音波振動に共鳴して振動し,振動エネルギーを摩擦対象のシートに対して加える。また,ホーン11は,摩擦エネルギーを集約して摩擦対象に付与するために,摩擦対象に接触する接触点又は接触線を頂点した円形,楕円形,又は球形であることが好ましい。また,ホーン11は,超音波振動に共鳴するように,直方体や立法体などの単純な形状で形成されていることしてもよく,また摩擦対象を圧着する圧着面は平坦な面で形成されていることとしてもよい。また,ホーン11は,シートの幅方向全体に対して摩擦エネルギーを付与できるよう,シートの幅に合せた寸法で形成されることが好ましい。
【0027】
カッターロール20は,シートを下流側に向かって搬送可能な方向に回転するドラム状の装置であって,超音波振動装置10と協働してシートを挟み込み,超音波振動装置10とのこすり合わせによる摩擦熱を利用してシートを溶断する。カッターロール20の周側面の表面には,突出した切断刃部21が形成されている。すなわち,正確に説明すると,超音波振動装置10のホーン11とカッターロール20の切断刃部21の間をシートが圧接状態で通過する。カッターロール20は,超音波振動装置10が発生させた摩擦熱によってもその形状が変形しない硬質な素材により形成されていることが好ましい。カッターロール20の材質としては,熱膨張が小さく,硬くて粘りのある材質が好ましい。例えば,カッターロール20は,ステンレス,銅,又はダイス鋼といった金属製とすることができる。また,カッターロール20に形成された切断刃部21は,カッターロール20の周側面の表面に金属製の板材を巻きつけて凸形状が形成されることとしてもよい。また,切断刃部21は,カッターロール20の表面に彫刻を施して凸形状が形成されることとしてもよい。
【0028】
図2に示される例において,カッターロール20には,カッターロール20の周方向に連続して形成されたS字型の切断刃部21が形成されている。このため,超音波振動装置10とカッターロール20の間を通過したシートSには,S字型の切込線Cが形成される。また,図2に示す例においては,シートの幅方向全体に渡る切込線が形成されていないため,カッターロール20を通過した段階においては,個別の製品とはなっていない。このため,カッターロール20の下流側に設けられた裁断装置70により,切込線Cがシートの幅方向全体に渡るように補足的に裁断され,個別の製品となる。図2に示されるように,切断刃部21は,カッターロール20の周方向に連続して設けられるこことしてもよいし,カッターロール20の回転軸方向に延びるように形成されることとしてもよい。切断刃部21の形状は,切断成型される製品の形状に応じて設計すればよい。なお,カッターロール20の周方向と回転軸方向は互いに直交する方向である。
【0029】
カッターロール20の周側面の表面から切断刃部21の頂部までの高さは,例えば,0.05mm〜15mm,又は0.1mm〜10mmで形成することが好ましい。また,切断刃部21の高さは,切断対象のシートの厚みに対して適宜変更可能であり,例えば,シートの厚みより0.01mm以上高いものであることが好ましい。例えば,切断刃部21は,0.01mm〜20mm,1mm〜10mm,又は2mm〜5mm程度,シートの厚みより高くなっている。また,切断刃部21の先端は,尖端形状となっており,超音波振動装置10のホーン11との間にシートを挟み込み,切断(溶断)できるようになっている。切断刃部21の先端は,Rが0mmの鋭端となっていてもよい。また,本発明では,超音波振動装置10とのこすり合わせによる摩擦熱によりシートを溶断するものであるため,切断刃部21の先端は必ずしも鋭端となっていなくても,シートを切断することができる。例えば,切断刃部21の先端にR加工を施し,0.1〜0.5mm,0.2〜0.4mm,又は0.3mm程度のR形状とすることとしてもよい。切断刃部21が0.5mm以下のR形状であれば,超音波振動装置10の摩擦熱を利用して,シートを溶断することが可能である。特に,切断刃部21の耐久性度を向上させるために,切断刃部21の先端を鋭端とせず,R形状とすることが好ましい。
【0030】
超音波振動装置10とカッターロール20を対向して設置するに際し,超音波振動装置10のホーン11とカッターロール20の切断刃部21の間には,シートを圧接可能な範囲で間隙を設けることとしてもよい。間隙の長さは,例えば,0mm〜10mm,又は,0mm〜5mmであることが好ましく,0mm〜1mmであることが特に好ましい。また,ホーン11と切断刃部21の間に微細な間隙を設けることにより,ホーン11と切断刃部21が直接接することがなくなるため,切断刃部21が磨耗することを防止でき,切断刃部21の長寿命化を図ることができる。
【0031】
また,超音波振動装置10のホーン11とカッターロール20の切断刃部21の間の微細な間隙を維持するためのスペーサー(図示省略)を設けることとしてもよい。このスペーサーは,例えば,ホーン11とカッターロール20本体の間,又は超音波振動装置10
本体とカッターロール20本体の間に設けられる。スペーサーを設けることにより,超音波振動装置10が振動した状態であっても,常に,超音波振動装置10と切断刃部21の微細間隙幅を一定に維持することが可能である。
【0032】
一方,超音波振動装置10とカッターロール20は,ホーン11と切断刃部21が接するように配置することもできる。ホーン11と切断刃部21が接していれば,ホーン11と切断刃部21に導入されたシートを高速に切断することができる。
【0033】
[本発明の実施形態]
以下,本発明の代表的な実施形態について説明する。本発明の代表的な実施形態は,テープ型の使い捨ておむつの止着テープを切断成型するに際し用いられる切断装置である。本実施形態は,上説した切断装置と基本的に同じ構成を有している。ただし,本実施形態は,カッターロール20に設けられた切断刃部21の形状に特徴があり,その点において上説した切断装置と異なる。
【0034】
まず,本発明に係る切断装置を用いて切断成型される止着テープについて説明する。
図3(a)は,止着テープ110が取付けられたテープ型使い捨ておむつ100を,使い捨ておむつの前身頃側から見た正面図である。テープ型の使い捨ておむつの後身頃には,左右の側縁から突出するように止着テープ110が取り付けられている。一方,前身頃2の外表面側には止着テープ110を止め付けるためのフロントパッチ120が設けられている。このため,テープ型の使い捨ておむつ100は,後身頃を着用者の背部にあてがい,前身頃を着用者の腹部にあてがった状態で,後身頃に取り付けられている止着テープ110を,前身頃に設けられたフロントパッチ120に止め付けることにより,着用者に装着することが可能である。ただし,使い捨ておむつ100,止着テープ110,及びフロントパッチ120の形態については,図3(a)において図示した形態に限定されるものではなく,本願出願時における公知の形態を採用することができる。例えば,図3(a)においては,止着テープ110が,左右二対取付けられているが,止着テープ110は,左右一対ずつ設けられたものであってもよいし,三対以上設けられていてもよい。
【0035】
止着テープ110は,図3に示されるように,使い捨ておむつに取付けられる幅広の本体部111と,フロントパッチ120に止め付けられる幅狭の先端部112により構成されている。図3に示された例において,先端部112は,長方形状の本体部111の中央部分から延出している。また,先端部112が本体部111よりも幅狭であることにより,本体部111から先端部112が延出する部分がくびれて,幅部111wが形成される。本体部111は,幅部111wの分だけ先端部112よりも幅広となる。
【0036】
図3(b)は,止着テープ110を構成するシート層ごとに分離して描画した斜視図である。図3(b)に示されるように,止着テープ110は,本体部111と先端部112が一体となった基材シート115と,基材シート115の他方面から先端部112に貼り合わされるフックシート116と,基材シート115の一方面の全体に貼り合わされるループシート117が積層して形成されている。基材シート115は,止着テープ110を形作り,止着テープ110の基盤となる。フックシート116は,面ファスナーの凸部材(雄部材)であり,使い捨ておむつの前身頃に設けられたフロントパッチ120の凹部材(雌部材)と機械的に係合する。また,ループシート117も,面ファスナーの凹部材(雌部材)となっており,フックシート116と機械的に係合可能になっている。すなわち,ある止着テープ110のフックシート116は,他の止着テープ110のループシート117と係合する。このため,止着テープ110と互いに重ね合わせて,使い捨ておむつの前身頃に止め付けることができるようになっている。
なお,止着テープ110は,基本的に,基材シート115とフックシート116を積層させて形成したものであればよく,ループシート117は任意の構成である。
【0037】
基材シート115は,例えば,不織布からなり,具体的には,スパンボンド,SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド),SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド),カードエンボス,レジンボンド等の各種公知の不織布を採用することができる。不織布の構成材料としては,ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル,脂肪族ポリアミド,その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維を挙げることができる。この場合,合成繊維は単繊維であってもよいし,芯鞘構造等を有する複合繊維であってもよい。
【0038】
フックシート116は,例えば合成樹脂からなるフィルムと,このフィルムの一方の面に形成された多数の突起を備えるシート状の部材である。多数の突起としては,例えば,鉤状,きのこ状,又は錨状等の突起を挙げることができる。その他,フックシートとしては,面状ファスナーに用いられる公知の凸部材を採用することができる。フックシート116を構成するフィルムと突起の素材としては,例えば,ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル,脂肪族ポリアミド,その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維を用いることができる。特に,ポリエチレンやポリプロピレンを好適に用いることができる。なお,フィルムと突起の素材は,同じであっても,異なっていてもよい。フックシート116を基材シート115に接着させる方法としては,例えば,ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0039】
ループシート117は,フィルムとループ材を有する。フィルムの一方面は基材シート115に貼り合わされ,フィルムの他方面にはループ材が配置される。フィルムは合成樹脂により形成することができ,ループ材としてはループ状の繊維を用いればよい。具体的に説明すると,フィルムとしては,例えば,ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル,脂肪族ポリアミド,又はその他の熱可塑性樹脂製フィルムを用いることができる。ループシート117を基材シート115に接着させる方法は,例えば,ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0040】
上述した止着テープ110は,帯状の基材シート115,フックシート116,及びループシート117の帯状の各種シートを重ね合わせて,所望の形状に切断成型することにより製造される。各種シートの積層シートは,例えば図1や図2に示された超音波振動装置10とカッターロール20を具備する切断装置1により切断成型される。以下,使い捨ておむつ100に用いられる止着テープ110を切断成型するに際して,好適に用いられるカッターロール20の切断刃部21の形状について説明する。
【0041】
図4は,カッターロール20の切断刃部21の形状を抽出して描画した概略図であり,カッターロール20の周側面の展開図に相当する。つまり,図4における上下方向が,カッターロール20の周方向に相当し,図4における左右方向が,カッターロール20の回転軸方向に相当する。図4には,図の上下方向に連続して形成された略S字型の切断刃部21が形成されているため,これをカッターロール20に当てはめると,カッターロール20の周方向に連続して略S字型の切断刃部21が形成される。図5では,図4に示された切断刃部21の形状と対比して,帯状のシートに形成される切込線の形状を示している。図5(a)には,切断刃部21の形状が示されており,図5(b)に帯状シートの切込線が実線で表されている。図5(b)のうち,実線と破線で囲まれたものが個々の止着テープ110となる。
【0042】
図4及び図5に図示されるように,切断刃部21は,カッターロール20の周方向に略S字型に連続して形成されている。図5に示されるように,この切断刃部21により帯状のシートを切断することにより,幅広の本体部111から幅狭の先端部112が延出した止着テープ110が交互に上下反転して連接されたシートが形成される。なお,図5(b)に示された点線部分は,切断刃部21によっては切断できない部分であるため,カッターロール20によって切断された後,カッターロール20の下流側に配置された裁断装置70により裁断される。これにより,個別の止着テープ110が仕上がる。
【0043】
切断刃部21の刃形状について,切断成型する止着テープ110の部位に対応して説明する。
切断刃部21は,止着テープ110の先端部112の左右の側縁を切断成型する対となる先端側縁切断刃211を有する。また,切断刃部21は,止着テープ110の本体部111のうち,先端部112により幅広となっている幅部111Wを切断成型する本体幅部切断刃212を有する。また,切断刃部21は,止着テープの先端部112の頂縁を切断成型する先端頂縁切断刃213を有する。
そして,本発明の好ましい形態において,切断刃部21は,上記した対となる先端側縁切断刃211,本体幅部切断刃212,及び先端頂縁切断刃213が連続的に形成されて成る。
【0044】
先端側縁切断刃211は,カッターロール20の回転軸方向(図中左右方向)に延びて形成されており,止着テープ110の先端部112の左右側縁を切断成型できるよう2本で一対となっている。先端側縁切断刃211は,止着テープ110の先端部112の側縁の形状に合わせて形成される。例えば,止着テープ110の先端部112が頂部に向かって先細となるように形成されていれば,対となる先端側縁切断刃211も,先端部112の形状に合せてハの字型に配置される。一の先端側縁切断刃211は,隣接する両隣の先端側縁切断刃211とそれぞれ対をなしている。すなわち,一の先端側縁切断刃211は,ある止着テープ110の先端部112の一側縁を切断成型するとともに,ある止着テープ110と反転した位置に形成される他の止着テープ110の先端部112の一側縁も切断成型する。
【0045】
本体幅部切断刃212は,カッターロール20の周方向(図中上下方向)に延びて形成されており,対となる先端側縁切断刃211の一端部を繋ぐように配置される。一の先端側縁切断刃211を見てみると,その両端部に,本体幅部切断刃212が位置しており,先端側縁切断刃211と本体幅部切断刃212により,切断刃部21がS字型となっている。図5(a)及び(b)からも明らかなように,一の本体幅部切断刃212は,隣接する2つの止着テープ110の本体部111の幅部111Wを切断成型することとなる。
止着テープ110の本体部111が先端部112より幅広となる長さは,本体幅部切断刃212の長さによって決定される。すなわち,本体幅部切断刃212を長く形成すればするほど,止着テープ110の本体部111がより幅広となる。
【0046】
先端頂縁切断刃213は,カッターロール20の周方向(図中上下方向)に延びて形成されており,対となる先端側縁切断刃211の中間部を繋ぐように配置される。特に,先端頂縁切断刃213は,先端側縁切断刃211の中心よりも,本体幅部切断刃212寄りの位置に形成される。すなわち,図4においては,各先端側縁切断刃211の中心が一点鎖線により結ばれている。そして,先端頂縁切断刃213は,各先端側縁切断刃211の中心を結ぶ線(一点鎖線)よりも,本体幅部切断刃212寄りの位置に配置されている。
【0047】
また,図4及び図5に示されるように,対となる先端側縁切断刃211,本体幅部切断刃212,及び先端頂縁切断刃213によって周囲を囲われた空隙214が設けられている。従って,帯状のシートが切断刃部21によって切断されると,空隙214の形状に応じて,切断対象のシートの一部がくり貫かれる。
【0048】
以下,切断刃部21の寸法の概要について説明する。以下の寸法は,基本的に,成人用使い捨ておむつに用いられる止着テープを切断成型する切断刃部21の寸法を例に説明したものである。幼児用使い捨ておむつに用いられる止着テープを切断成型する際には,以下に示された寸法を,適宜変更することができる。
【0049】
図4に示されるように,本体幅部切断刃212の頂部と先端頂縁切断刃213の頂部の間の距離(線分A)は,例えば,0.1mm〜50mm,又は5mm〜40mmであることが好ましく,10mm〜30mmであることが特に好ましく,20mmであってもよい。また,ある本体幅部切断刃212の頂部から,反転した位置にある他の本体幅部切断刃212の頂部までの距離(線分B)は,50mm〜130mm,又は70mm〜110mmであることが好ましく,80mm〜100mmであることが特に好ましい。ここで,線分Aは,線分Bの長さに対して,例えば,5%〜40%,又は10%〜30%であることが好ましく,15%〜25%であることが特に好ましい。
【0050】
また,カッターロール20の回転軸方向における先端頂縁切断刃213と先端頂縁切断刃213の間の距離(線分C)は,20mm〜60mm,25mm〜55mm,30mm〜50mmであることが特に好ましい。特に,図5(b)に示されるように,回転軸方向における先端頂縁切断刃213同士の間の領域には,止着テープ110を形成するためフックシート116が位置することが好ましい。回転軸方向における先端頂縁切断刃213同士の間の領域にフックシート116を位置させて,超音波振動装置10とカッターロール20の間に導入することにより,高価なフックシート116を使用する面積を節約しつつ,止着テープ110の先端部112を長く確保して成型することができる。止着テープ110の先端部112を長く確保することにより,フロントパッチへの止め付け易さや,使い捨ておむつの装着感を向上させることができる。
【0051】
また,図4に示されるように,本体幅部切断刃212の長さ(線分D)は,10mm〜50mm,又は20mm〜40mmであることが好ましく,25mm〜35mmであることが特に好ましい。また,切断成型される止着テープ110の本体部111の幅に対応した本体幅部切断刃212の中心から本体幅部切断刃212の中心までの周方向における距離(線分E)は,40mm〜120mm,又は50mm〜110mmであることが好ましく,60mm〜100mmであってもよく,70mm〜90mmであることが特に好ましい。
【0052】
次に,切断刃部21において,本体幅部切断刃212の他に,先端頂縁切断刃213を別途設け,それらの間に空隙214を形成することの意義について説明する。
従来の切断刃部21´の刃型の例が,図6に示されている。図6(a)に示された切断刃部21´によって,図6(b)に示された止着テープ110´が切断成型される。また,図6(c)に示された切断刃部21´によって,図6(d)に示された止着テープ110´が切断成型される。
図6(a)や(c)に示されるように,従来から,カッターロールの周方向に連続して形成されたS字型の切断刃部21´が知られている。従来の切断刃部21´は,図6(a)や(c)に示されるように,本発明の好ましい形態における先端頂縁切断刃213に相当する刃を有していない。
このため,図6(a)に示された切断刃部21´によってシートを切断成型すると,図6(b)に示されるように,適切な位置にフックシート116´を位置させたまま,止着テープ110´の先端部112´を長く確保することができなかった。
一方,止着テープ110´の先端部112´を長く確保するために,図6(c)に示されるように,切断刃部21´のS字型を深く形成することもできる。しかし,切断刃部21´のS字型を深く形成し,適切な位置にフックシート116´を位置させようとすると,図6(d)に示されるように,フックシート116´の幅も拡大させる必要があり,高価な資材を余分に使用せざるを得なかった。
【0053】
そこで,本発明の好ましい形態においては,切断刃部21において,本体幅部切断刃212の他に,先端頂縁切断刃213を別途設け,それらの間に空隙214を形成する。そして,超音波振動装置10とカッターロール20の間にシートを導入するに際し,回転軸方向における先端頂縁切断刃213と先端頂縁切断刃213の間の領域にフックシート116を位置させることとしている。この構造を有する切断刃部21は,図4や図5(a)に示されている。そして,図5(a)に示された切断刃部21によって切断成型されたシートが図5(b)に示されている。図5(b)に示されるように,本発明の好ましい形態によれば,空隙214の分だけ,止着テープ110の先端部112を長く確保できる。さらに,回転軸方向における先端頂縁切断刃213と先端頂縁切断刃213の間の領域に,フックシート116を位置させることにより,適切な幅のフックシート116を,適切な位置に配置することができる。
【0054】
さらに,本発明の好ましい形態のように,切断刃部の刃に分岐点(図4中点線の円によって示した箇所)が形成されると,その分岐点において,シートの不切れが発生する恐れがある。特に,カッターロールとアンビルロールによって押圧切断する従来の切断装置では,切断刃部として本発明の好ましい形態のような複雑な刃型を採用した場合,シートの不切れが顕著なものとなっていた。そこで,本発明では,切断刃部が,刃の分岐点があるような複雑な刃型を有する場合であっても,シートの不切れが発生することなく確実にシートを切断できるように摩擦熱を利用する。すなわち,本発明では,超音波振動装置10によって摩擦熱を発生させ,超音波振動装置10とカッターロール20との間で,シートを溶断することとしている。
【0055】
以上の通り,カッターロール20の切断刃部21において,本体幅部切断刃212の他に,先端頂縁切断刃213を別途設け,それらの間に空隙214を形成することは,使い捨ておむつの止着テープ110を切断成型する用途に適している。さらに,カッターロール20の切断刃部21に先端頂縁切断刃213を設けると,刃型が複雑になりシートの不切れが懸念されるが,この問題は,シートの切断機構として超音波振動装置10カッターロール20を採用することにより解決できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は,シート材を切断成型するための切断装置及び切断方法に関する。このため,本発明は,シート材の加工成型が必要な製造業において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 切断装置
10 超音波振動装置
11 ホーン
12 ブースタ
13 コンバータ
20 カッターロール
21 切断刃部
211 先端側縁切断刃
212 本体幅部切断刃
213 先端頂縁切断刃
214 空隙
30 巻出しロール
40 ピンチロール
50 搬送ロール
60 コンベヤ
70 裁断装置
100 使い捨ておむつ
110 止着テープ
111 本体部
111W 幅部
112 先端部
115 基材シート
116 フックシート
117 ループシート
120 フロントパッチ
S シート
C 切込線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを切断するための切断装置であって,
超音波振動装置(10)とカッターロール(20)を備え,
前記超音波振動装置(10)は,前記シートの一面側に配置され,微細振動することにより,前記シートの一面に対して摩擦熱を発生させ,
前記カッターロール(20)は,前記超音波振動装置(10)に対面して前記シートの他面側に回転自在に配置され,前記超音波振動装置(10)と対面する表面に,前記超音波振動装置(10)との間で前記シートを圧接する切断刃部(21)を有し,
前記シートを,前記超音波振動装置(10)と前記切断刃部(21)の間を圧接状態で通過させることにより,前記摩擦熱によって前記シートを溶断する
切断装置。

【請求項2】
前記シートは,複数のシートを重ね合わせたものであり,
前記複数のシートには,熱可塑性樹脂シートが含まれる
請求項1に記載の切断装置。

【請求項3】
前記切断装置は,帯状のシートを切断し,テープ型の使い捨ておむつ(100)の止着テープ(110)を切断成型するものであり,
前記止着テープ(110)は,前記使い捨ておむつに取付けられる本体部(111)と,前記本体部から延出し前記本体部(111)より幅狭となった先端部(112)により構成されており,
前記切断装置が前記帯状のシートを長手方向にS字型に連続切断することにより,反転された前記先端部(112)が交互に連接し,前記先端部(112)の幅に対応して前記本体部(111)が前記先端部(112)より幅広となる止着テープ(110)が切断成型されるものであって,
前記カッターロール(20)の切断刃部(21)は,
前記カッターロール(20)の周方向に連続して形成されており,
前記止着テープ(110)の先端部(112)の左右の側縁を切断成型する対となる先端側縁切断刃(211)と,
前記対となる先端側縁切断刃(211)の端部を繋ぎ,前記止着テープ(110)の本体部(111)の幅部(111W)を切断成型する本体幅部切断刃(212)と,
前記対となる先端側縁切断刃(211)の中間部を繋ぎ,前記止着テープ(110)の先端部(112)の頂縁を切断成型する先端頂縁切断刃(213)を有する
請求項1又は請求項2に記載の切断装置。

【請求項4】
シートの切断方法であって,
前記シートの一面側に配置され,前記シートの一面に沿って微細振動することにより,摩擦熱を発生させる超音波振動装置(10)と,
前記超音波振動装置(10)に対面して前記シートの他面側に回転自在に配置され,前記超音波振動装置(10)と対面する表面に,前記超音波振動装置(10)との間で前記シートを圧接する切断刃部(21)を有するカッターロール(20)との間に,
前記シートを導入し,
前記シートを,振動状態の前記超音波振動装置(10)と前記切断刃部(21)の間を圧接状態で通過させることにより,前記摩擦熱によって前記シートを溶断する
切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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