説明

切断装置

【課題】一回転当たりの切込量を変更可能で高頻度の切断動作が可能であり、かつ、小型化可能な切断装置を提供する。
【解決手段】カッター40が設けられたロータプーリ3と、カム溝21を備えロータプーリ3と回転軸Aが一致したカムプーリ2と、カッター40に連結されカム溝21に摺接してロータプーリ3と共に回転するカムフォロア38と、を備え、ロータプーリ3とカムプーリ2とを貫通する被切断物挿通孔7aが設けられ、ロータプーリ3とのカムプーリ2と回転数差によりカムフォロア38がカム溝21に案内されて移動し、カッター40が移動して被切断物挿通孔7aに挿通された被切断物に押し当てられることにより、被切断物が切断される切断装置1において、ロータプーリ3とカムプーリ2とを、それぞれ別個の回転数可変な第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12により、互いに独立して回転させるように構成した切断装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ成形機により連続的に成形される合成樹脂製パイプ等の被切断物を切断するための切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製パイプの切断装置として、下記特許文献1、2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1記載の切断装置は、外周面にそれぞれ差動歯車が形成されたカムリングと回転体とを有し、両差動歯車は歯数が僅かに異なり、両差動歯車が同時に同じ入力用歯車に噛み合って回転駆動されることにより、その歯数の差によってカムリングと回転体とが僅かに異なる回転数で差動回転する。そして、刃物台に取り付けられたカム軸が、回転体のフランジ部の孔に貫通されて、その先端に取り付けられたカムフォロアがカムリングに形成されたカム溝に嵌入されており、カムリングと回転体との差動回転によってカムフォロアがカム溝に沿って移動することにより、刃物台が揺動してパイプを切断する構造とされている。
【0004】
特許文献2記載の切断装置は、第1タイミングプーリーと第2タイミングプーリーとを有し、両プーリーに位相差を与えることにより、第1タイミングプーリーに設けられた第2カムフォロアーを、第2タイミングプーリーに形成された第2カム溝に沿って移動させ、この移動に伴って、切断刃がパイプの外周面に押付けられ、パイプが切断される構造とされている。両プーリーに位相差を与える駆動機構は、主電動機と、主電動機に直結されて回転する第1駆動プーリーと、位相差を与えるための差動装置と、差動装置を作動させるための副電動機と、差動装置の出力軸に設けられた第2駆動プーリーとにより形成され、第1駆動プーリーと第1タイミングプーリー、第2駆動プーリーと第2タイミングプーリーとが、それぞれベルトで連結されている。差動装置は、第1駆動プーリー側の第1内歯歯車と、第2駆動プーリー側の第2内歯歯車と、両内歯歯車に歯合する内部ギアとを有しており、この内部ギアに副電動機が接続されている。そして、第1内歯歯車と第2内歯歯車とは、同径で歯数が僅かに異なるものであって、副電動機を作動させて内部ギアを第1内歯歯車に対して相対的に一回転させると、第1内歯歯車に対し第2内歯歯車の位相が歯数の差だけずれ、両プーリーに位相差を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−136981号公報
【特許文献2】特開平11−300690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の切断装置のように、カム溝が設けられる歯車とカムフォロアが設けられる歯車との歯数差で、刃物台を揺動させるタイプの切断装置では、一回転当たりの切込量は、両歯車の歯数差とカム溝の形状で決まるため、変更は不可能であり、被切断物の変更に柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
一方、上記特許文献2記載の切断装置のように、差動装置を用いるタイプの切断装置では、内部ギアの回転数を変えることにより両プーリーに与える位相差を変えられるため、一回転当たりの切込量は可変であり、また、切断待機時は差動装置を停止すれば両プーリーを停止する必要はないため、高頻度の切断動作も可能である。しかしながら、差動装置は、部品点数が多く、大型で重いため、切断装置を小型化できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するものであり、一回転当たりの切込量を変更可能で高頻度の切断動作が可能であり、かつ、小型化可能な切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の切断装置は、加工具が設けられた第1の回転体と、カムを備えて前記第1の回転体と回転軸を一致させて設けられた第2の回転体と、前記加工具に連結され前記カムに摺接して前記第1の回転体と共に回転するように設けられたカムフォロアと、を備え、前記第1の回転体と前記第2の回転体とを貫通する被切断物挿通孔が設けられ、前記第1の回転体と前記第2の回転体との回転数差により前記カムフォロアが前記カムに案内されて移動して、当該移動に伴って前記加工具が移動して前記被切断物挿通孔に挿通された被切断物に押し当てられることにより、前記被切断物が切断される切断装置において、前記第1の回転体と前記第2の回転体とを、それぞれ別個の回転数可変な駆動装置により、互いに独立して回転させるように構成したことを特徴とする。
【0010】
これによれば、第1の回転体と第2の回転体とが、それぞれ別個の回転数可変な駆動装置により、互いに独立して回転するので、大型で重い差動装置を用いることなく、第1の回転体と第2の回転体の回転数を異ならせることができ、装置サイズを小型化することができる。また、各駆動装置の回転数を変えることにより、第1の回転体と第2の回転体との回転数差を変えられるので、第1の回転体一回転当たりの切込量を変更可能であり、各駆動装置の回転数を同一として、第1の回転体と第2の回転体との回転数差をなくせば、第1の回転体と第2の回転体とを回転させたまま加工具の移動を停止できるので、切断待機時に回転を停止する必要がなく、高頻度の切断動作が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切断装置によれば、一回転当たりの切込量を変更可能で高頻度の切断動作が可能であり、かつ、小型化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る要部を示す概略縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る一部破断正面図である。
【図3】同実施形態に係るロータプーリの正面図である。
【図4】同実施形態に係るカムプーリの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1,2に示すように、実施形態に係る切断装置1は、合成樹脂製パイプを被切断物とするものであり、ベース板4と、ベース板4の下面に取り付けられたモータブラケット5と、モータブラケット5に支持されてベース板4の下方に設けられた第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12と、第1駆動モータ11の回転駆動軸11aに取り付けられた第1駆動プーリ13と、第2駆動モータ12の回転駆動軸12aに取り付けられた第2駆動プーリ14と、第1の回転体に相当するロータプーリ3と、第2の回転体に相当するカムプーリ2と、第1駆動プーリ13とロータプーリ3とに掛け渡された第1タイミングベルト15と、第2駆動プーリ14とカムプーリ2とに掛け渡された第2タイミングベルト16と、を備えている。第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12は、いずれもサーボモータであり、回転数が可変である。なお、以下の説明においては、被切断物であるパイプの進行方向を前方とする(図1参照)。
【0015】
第1駆動プーリ13と第2駆動プーリ14は、同径の円盤状に形成され、それぞれ、第1タイミングベルト15、第2タイミングベルト16の内周面に形成された歯(図示せず。)に噛合する歯を、外周面に有し、第1駆動プーリ13と第2駆動プーリ14の歯数は同一とされている。
【0016】
ロータプーリ3とカムプーリ2は、ベース板4の上方に配設され、第1タイミングベルト15、第2タイミングベルト16は、ベース板4に形成された貫通孔4aを貫通して、それぞれ、第1駆動プーリ13とロータプーリ3、第2駆動プーリ14とカムプーリ2を、連結している。ロータプーリ3とカムプーリ2は、正面視において外周が同径の円形状をなし、それぞれ、第1タイミングベルト15、第2タイミングベルト16の内周面に形成された歯に噛合する歯を、外周面に有し、ロータプーリ3とカムプーリ2の歯数は同一とされている。
【0017】
ロータプーリ3は、円筒状のカムプーリ支持部31と、カムプーリ支持部31前端の円形開口部の周囲に円環状に広がる工具取付部32と、から構成されている。カムプーリ支持部31内の貫通孔に相当するロータプーリ3の中央の貫通孔33には、ボールベアリング9及びブッシュブラケット8を介して、円筒状の被切断物挿通部7が挿通され、ロータプーリ3は、被切断物挿通部7の周りを回転可能とされ、その回転軸Aは、被切断物挿通部7が形成する被切断物挿通孔7aの中心軸と一致している。被切断物挿通部7は、ベース板4の上面に立設された支持部材6に支持されている。
【0018】
図3に示すように、工具取付部32には、軸挿通孔32aと軸挿通孔32aから所定距離離れた連結ピン挿通孔32bとの組が、複数組形成されている。軸挿通孔32aと連結ピン挿通孔32bとの組のうちの1組を用いて、図1,2に示すように、ロータプーリ3に、加工具に相当するカッター40が設けられ、カッター40にはカムフォロア38が連結されている。詳しくは、図1に示すように、工具取付部32の前面側にカッターアーム43が配設され、工具取付部32の後面側(すなわち、カムプーリ2に対向する側)に細長い板状の連結部材36が配設されて、軸挿通孔32aに挿通された支点ピン34により、カッターアーム43と連結部材36とが連結されている。支点ピン34は、ボールベアリング35を介して軸挿通孔32aに回動可能に挿通されており、カッターアーム43は支点ピン34を軸として揺動可能である。カッターアーム43の支点ピン34側と反対側の端部には、カッター40が取り付けられ、カッター40は、切断刃41と、切断刃41を保持するホルダー42とから構成されている。連結部材36の支点ピン34側と反対側の端部には、カムフォロア38が取り付けられ、カムフォロア38は、後述するカム溝21内に嵌入されて、カム溝21に摺接している。カムフォロア38は、ロータプーリ3に挿通された支点ピン34に連結部材36を介して連結されているので、ロータプーリ3が回転するとロータプーリ3と共に回転する。
【0019】
連結部材36とカッターアーム43とは、それぞれの中央部付近で、連結ピン39により連結されている。連結ピン39は、前端が図2に示すようにカッターアーム43に形成された長孔43aに挿通され、連結ピン挿通孔32bを通って、後端が連結部材36に取り付けられている。連結ピン39は、連結部材36とカッターアーム43とのなす角度を保持するものであり、連結ピン39を緩めて長孔43a内で移動させることにより、連結部材36とカッターアーム43とのなす角度を調整して、カッター40の初期位置を調整することができ、連結ピン39を締付けることにより、連結部材36とカッターアーム43とのなす角度を保持できる。
【0020】
また、他の軸挿通孔32aと連結ピン挿通孔32bとの組には、押えローラ45が配設されている。押えローラ45の取付構造は、上述したカッター40の取付構造と同様であり、カッター40の代わりに押えローラ45が取り付けられている。
【0021】
カムプーリ2は、カム溝21が前面に形成された正面カムであり、図4に示すように、中央に貫通孔22を有する円盤状に形成されている。カム溝21は、カムプーリ2の中心に近づいたりカムプーリ2の中心から遠ざかったりするように形成されている。図1に示すように、貫通孔22内にはブッシュ10を介して、ロータプーリ3のカムプーリ支持部31が挿通され、カムプーリ2は、ロータプーリ3と同じく回転軸Aを軸として、ロータプーリ3とは独立に回転可能とされている。上述したようにカムプーリ支持部31内には被切断物挿通部7が挿通されているので、被切断物挿通部7はカムプーリ2を貫通し、すなわち、被切断物挿通部7内の被切断物挿通孔7aは、カムプーリ2とロータプーリ3を貫通している。
【0022】
ベース板4上には、ロータプーリ3の前方、及び、カムプーリ2の後方に、被切断物であるパイプ(図示せず。)を把持するためのチャック装置(図示せず。)がそれぞれ配設されている。また、被切断物であるパイプは、パイプ成形機により連続的に成形されて進行するため、ベース板4と共に切断装置1及び各チャック装置を、初期位置からパイプの進行速度と等速度で前方に移動し、再び初期位置に復帰させる移動機構(図示せず)が設けられている。
【0023】
以上のように構成された切断装置1の動作について、次に説明する。
【0024】
被切断物であるパイプは、被切断物挿通孔7aに挿通され、所定速度で前方に進行する。切断待機時は、カッター40が初期位置にある状態で、第1駆動モータ11と第2駆動モータ12とを同じ回転数(回転速度)で駆動する。すると、第1駆動プーリ13と第2駆動プーリ14の歯数は同一とされ、ロータプーリ3とカムプーリ2の歯数も同一とされているため、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数に差が生じない。したがって、ロータプーリ3とカムプーリ2の相対的な位置関係は変わらず、カムフォロア38はカム溝21内の同じ位置に留まるため、カッター40は移動しない。
【0025】
切断時には、パイプの進行速度と等速度で切断装置1を前方に移動させながら、第1駆動モータ11と第2駆動モータ12を、回転数を異ならせて駆動する。すると、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数に差が生じ、この差によりロータプーリ3とカムプーリ2の相対的な位置関係が変わるので、カムフォロア38はカム溝21に案内されて移動し、カムプーリ2の中心に近づいたりカムプーリ2の中心から遠ざかったりする。このカムフォロア38の移動に伴って、連結部材36及びカッターアーム43が支点ピン34を中心に揺動し、カッター40が径方向に移動して、カッター40の切断刃41が被切断物挿通孔7aに挿通されたパイプに押し当てられたりパイプから離れたりする。パイプは、切断刃41が押し当てられることにより切断される。パイプの切断毎に、切断装置1は初期位置に復帰される。
【0026】
ロータプーリ3の一回転当たり(ロータプーリ3が一回転する間)の切断刃41の切込量(切込深さ)は、ロータプーリ3が一回転する間のカムプーリ2の回転量、すなわち、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数差で決まる。したがって、第1駆動モータ11と第2駆動モータ12の回転数差を変えることにより、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数差を変えれば、ロータプーリ3の一回転当たりの切込量が変わる。ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数差を大きくすれば、ロータプーリ3が一回転する間にカムフォロア38がカム溝21を移動する量が多くなり、切込量は増大する。一方、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数差を小さくすれば、切込量は減少する。
【0027】
以上説明したように、切断装置1によれば、ロータプーリ3とカムプーリ2とが、それぞれ回転数可変な第1駆動モータ11、第2駆動モータ12により、互いに独立して回転するので、大型で重い差動装置を用いることなく、ロータプーリ3とカムプーリ2の回転数を異ならせることができ、装置サイズを小型化することができる。
【0028】
また、差動装置はオーバーホールが必要でメンテナンス負担が大きいが、切断装置1では、差動装置を用いず、第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12で、互いに独立にロータプーリ3とカムプーリ2とを回転させる構造であるため、メンテナンス負担が小さく、略メンテナンスフリーといえる。
【0029】
また、第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12の回転数を同一として、ロータプーリ3とカムプーリ2との回転数差をなくせば、ロータプーリ3とカムプーリ2とを回転させたまま切断刃41の移動を停止できるので、切断待機時に回転を停止する必要がなく、高頻度の切断動作が可能である。
【0030】
また、第1駆動モータ11及び/又は第2駆動モータ12の回転数を変えることにより、ロータプーリ3とカムプーリ2との回転数差を変えられるので、ロータプーリ3の一回転当たりの切込量(切込速度)を変更可能である。
【0031】
なお、上記実施形態では、カムプーリ2を、正面カムを備えるものとしたが、正面カム以外の板カム等、他のカムを備えるものとしてもよい。
【0032】
また、第1駆動モータ11及び第2駆動モータ12は、サーボモータに限らず、回転数が可変な駆動装置であればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、加工具としてカッター40を用いたが、加工具は被切断物を切断可能なものであればよく、例えばバイトであってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、被切断物挿通孔7aの中心軸は、回転軸Aに一致しているが、必ずしも被切断物挿通孔7aの中心軸と回転軸Aとは一致しなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…切断装置
2…カムプーリ(第2の回転体)
3…ロータプーリ(第1の回転体)
7a…被切断物挿通孔
11…第1駆動モータ(駆動装置)
12…第2駆動モータ(駆動装置)
38…カムフォロア
40…カッター(加工具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工具が設けられた第1の回転体と、カムを備えて前記第1の回転体と回転軸を一致させて設けられた第2の回転体と、前記加工具に連結され前記カムに摺接して前記第1の回転体と共に回転するように設けられたカムフォロアと、を備え、前記第1の回転体と前記第2の回転体とを貫通する被切断物挿通孔が設けられ、前記第1の回転体と前記第2の回転体との回転数差により前記カムフォロアが前記カムに案内されて移動して、当該移動に伴って前記加工具が移動して前記被切断物挿通孔に挿通された被切断物に押し当てられることにより、前記被切断物が切断される切断装置において、
前記第1の回転体と前記第2の回転体とを、それぞれ別個の回転数可変な駆動装置により、互いに独立して回転させるように構成したことを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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