説明

切替弁

【課題】シール材の破損を防げる切替弁を提供する。
【解決手段】本体2内に設けられた弁体3を軸4を介し回動させることにより流路を切り替えできるように構成した切替弁1において、弁体3の外周は円錐形状の円錐面31に形成されているとともに、弁体3を回動操作する時に、弁体3を軸4方向へ移動させて、弁体3の円錐面31と本体2の円錐面21との間に隙間Sを形成させる移動手段を備え、この移動手段は、台座5のカム面5aと弁体3の底側に設けたカム面32で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を回動させることにより流路を切り替えできる切替弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弁体を回動させることにより流路を切り替えできるように構成した切替弁として、例えば特許文献1に開示されているような円筒バルブ型三方弁が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−45669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、円筒バルブ型の弁体と本体との摺接部分への粉粒体の噛み込みを防止する構造が開示されているが、弁体と本体との摺接部分にオーリング等のシール材が介在している構造を採用した場合、流路切り替え時に弁体を本体内で回動させると、弁体あるいは本体側に開口形成されている流路の端縁を通過する際に、シール材であるオーリングが剪断されて切れてしまい、弁体と本体との摺接部分のシール性が悪化してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、弁体と本体との摺接部分のシール性を悪化させることのない切替弁の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の切替弁は、本体内に設けられた弁体を軸を介し回動させることにより流路を切り替えできるように構成した切替弁において、前記弁体の外周は円錐形に形成されているとともに、該弁体を回動操作する時に該弁体を前記軸方向へ移動させて該弁体の外周と前記本体との間に隙間を形成させる移動手段を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の切替弁では、弁体の外周は円錐形に形成され、この弁体を回動操作する時に、移動手段を介して弁体が軸方向へ移動するため、弁体の外周と本体との間に良好に隙間が形成される。そのため、弁体を回動操作する時に回動を軽い力でスムーズに行うことができる。また、弁体の外周と本体との摺接部分にシール材が設けられている場合は、隙間が形成されるために従来のように切れることがなく、シール材が良好に保護されて、弁体と本体との摺接部分のシール性が良好に維持されるものとなる。
【0007】
また、本発明の切替弁において、前記移動手段は、前記本体内に固設されたカム面を有する台座と、該台座のカム面に摺接する前記弁体側に設けられたカム面で構成されているものとすることもできる。
こうすれば、本体側に固設された台座のカム面と、弁体側のカム面が摺接して、弁体を回動操作する時に、弁体を良好に軸方向へ移動させて、弁体の外周と本体との間に隙間を形成させ、弁体を軽い力でスムーズに回動操作することができる。また、シール材が設けられている場合は、シール材を保護することができるものとなる。
【0008】
また、本発明の切替弁において、前記本体内には、前記弁体を前記台座側へ付勢するバネが設けられているものとすることもできる。
こうすれば、常にはバネを介して弁体は台座側へ付勢されており、これにより弁体の外周と本体との摺接部分は良好に密着されて、シール性が確保されるものとなる。
【0009】
また、本発明の切替弁において、前記弁体の外周にはオーリングが嵌め込まれているものとすることもできる。
こうすれば、弁体の外周側に溝等を設けてオーリングを嵌め込んで、このオーリングにより弁体の外周と本体との摺接部分を良好にシールすることができ、弁体の回動操作時には弁体の外周と本体との間に隙間が良好に形成されるため、オーリングが本体側の流路の端縁で剪断されるようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】切替弁の通常時の概略断面構成図である。
【図2】切替弁における弁体回動操作時の概略断面構成図である。
【図3】弁体と台座の分解斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、切替弁の通常時の概略断面構成図である。
切替弁1は、流体を3方向あるいは4方向に切り替えることのできる三方弁あるいは四方弁で構成されており、本体2内に回動可能に弁体3が配置され、この弁体3の上面には上方へ突出して軸4が形成されており、この軸4には図示しないハンドルあるいはモーターが接続されるものである。また、本体2内の弁体3の下端側には、台座5が本体2に固設状に配置されている。
また、台座5と反対側の弁体3の上面にはバネ6が配置されており、このバネ6は、弁体3の上面と本体2間のバネ室24内に配置されたものである。
なお、軸4の外周には、本体2と軸4とのシール性を確保するために上下2本のオーリング4a,4aが設けられている。
【0012】
前記弁体3は、図3に斜視図で示すような構造となっている。
弁体3の外周の上下端側は垂直な垂直円筒面33,33となっているが、弁体3の外周の上下方向中央部分は、下方から上方に向かって拡径する円錐面31となっており、この円錐面31に上下方向に長い長孔状の流路3a,3bが、例えば外周に沿って90°の角度間隔で開口形成されている。また、弁体3の上面中央には、軸4が立設されており、弁体3の下端面は、凸部と凹部が周方向に沿って交互に形成されたカム面32となっている。
【0013】
なお、本体2内には、弁体3の流路3a,3bと連通整合する流路2a,2bが形成されており、例えば弁体3側の流路3a,3bおよび本体2側の流路2a,2bが水平面内で90°の角度を隔てて開口されている場合は、弁体3を本体2内で水平面内で45°回動させることにより、弁体3側の流路3a,3bと本体2側の流路2a,2bは整合せず切替弁1の流路が閉じられた状態となる。
なお、この本体側の流路2a,2bと弁体3側の流路3a,3bの数は、三方弁あるいは四方弁に対応する数となっている。
【0014】
なお、本例では、弁体3の円錐面31に開口された各流路3a,3bの外周にオーリング溝が形成されており、このオーリング溝内にオーリング7が外側から嵌め込まれたものとなっている。
従って、通常では、弁体3の円錐面31と対応して本体2側に同一傾斜で上傾状に形成された円錐面21にオーリング7が当接し、弁体3の円錐面31の外周と本体2の円錐面21の内周との摺接部分が良好にオーリング7によりシールされて、オーリング7により流体の漏れを確実に防ぐことができる。なお、本体2の円錐面21の上下端側は、弁体3の垂直円筒面33,33と対応する垂直な垂直面23,23となっている。
【0015】
切替弁1の弁体3を水平面内で回動させ、弁体3側の流路3a,3bと本体2側の流路2a,2bを切り替える時に、弁体3の回動に伴い、弁体3の下面のカム面32が台座5のカム面5aに対し回動し、弁体3を左右何れ方向に回動させた時にも、カム面32,5aを介して弁体3が上方へ移動されるように構成されている。
即ち、台座5のカム面5aの凸部と弁体3のカム面32の凸部が図2のように整合されてゆき、バネ6の付勢力に抗して弁体3が上方へ移動するものであり、これにより弁体3の円錐面31は本体側の円錐面21から離れて、両円錐面31,21間に隙間Sが形成されることとなる。このため、オーリング7は本体側の円錐面21に開口されている流路2a,2bの端縁に引っ掛かって剪断力を受けて切れることがない。
【0016】
さらに弁体3の回動が進むと、カム面5aの凹部内にカム面32の凸部が嵌まり込んで、図1のように本体2の円錐面21に対し弁体3の円錐面31が摺接状態となり、本体側の円錐面21にオーリング7が押し付けられた状態となって、良好なシール性を確保することができるものである。
【0017】
このように、例えば弁体3側と本体2側の流路が水平面内で90°の間隔をなして開口されている場合には、90°の位置が流路が整合されて開となる開状態であり、45°の位置が流路が整合されない閉状態であるため、45°の位置から90°の位置へ向かって弁体3を回動させる際に、弁体3が良好に上方へ移動し、本体側の円錐面21と弁体3側の円錐面31間に隙間Sが形成されるように、台座5のカム面5aと弁体3の底側のカム面32の凹凸形状が設定されている。
【0018】
なお、水平面内において180°の位置で流路が整合されて開となり、90°の位置で流路が閉となるような切替弁1においては、90°の閉状態から180°の開位置に向かって弁体3を回動させる際に、弁体3が上昇し、本体側の円錐面21と弁体3側の円錐面31間に隙間Sが形成され、180°の開位置で再び下降して、円錐面21と円錐面31が摺接状態となるように、台座5側のカム面5aと弁体3側のカム面32の凹凸形状が設定される。
即ち、弁体3を回動操作する時に、本体側の円錐面21と弁体3側の円錐面31間に隙間Sが形成されるようにして、オーリング7が本体の円錐面21に形成されている流路2a,2bの周縁側に接触しないようにし、オーリング7の切れを防ぐことができるとともに、回動操作時以外には、このオーリング7により本体2と弁体3の外周間のシール性を良好に確保するものである。
【0019】
なお、本例では、オーリング7は弁体3の外周に嵌め込んだものを例示しているが、逆に、このオーリング7は本体2側の円錐面21に嵌め込んだ形式のものであっても、同様に、このオーリング7が弁体3に形成されている流路3a,3bの周縁側に触れて切れることを防ぐために、弁体3をその回動操作時に軸4方向へ移動させるように構成することができる。
さらに、弁体3全体をゴム製とし、オーリング7を用いない構造においても、弁体3をその回動操作時に軸4方向へ移動させるように構成することで、本体2側の円錐面21と弁体3側の円錐面31間に隙間Sが形成されて、弁体3を回動操作する時に回動を軽い力でスムーズに行うことができるものとなる。
【0020】
なお、本例では、弁体3を上下方向に移動するように構成しているが、移動方向は上下方向に限定するものではなく、また、台座5は弁体3の下面側に配置しているが、弁体3の上方側であっても良く、また、バネ6は弁体3の上面側に限らず、下面側にあっても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 切替弁
2 本体
2a,2b 流路
3 弁体
3a,3b 流路
4 軸
5 台座
5a カム面
6 バネ
7 オーリング
21,31 円錐面
32 カム面
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられた弁体を軸を介し回動させることにより流路を切り替えできるように構成した切替弁において、
前記弁体の外周は円錐形に形成されているとともに、
該弁体を回動操作する時に、該弁体を前記軸方向へ移動させて該弁体の外周と前記本体との間に隙間を形成させる移動手段を備えている
ことを特徴とする切替弁。
【請求項2】
前記移動手段は、前記本体内に固設されたカム面を有する台座と、該台座のカム面に摺接する前記弁体側に設けられたカム面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の切替弁。
【請求項3】
前記本体内には、前記弁体を前記台座側へ付勢するバネが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切替弁。
【請求項4】
前記弁体の外周にはオーリングが嵌め込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の切替弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−92176(P2013−92176A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233456(P2011−233456)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(506124181)株式会社イデアリンク (2)
【Fターム(参考)】