説明

切花用水切り装置

【課題】 切花に付着した水を容易に除去可能な切花用水切り装置を提供する。
【解決手段】 切花用水切り装置10は、上部に挿入口13が形成される一方、下部に排水孔14が形成されるハウジング12を有しており、このハウジング12の内部には、相互に平行となる2つの水切りローラ31,32が、回転自在に収容されている。また、水切りローラ31,32は柔軟性を有する樹脂製発泡体によって形成されており、花束Fを傷つけることのないよう水切りローラ31,32は変形自在となっている。花束Fに付着した水を除去する際には、挿入口13から水切りローラ31,32間に花束Fの茎が挿し込まれる。次いで、花束Fがハウジング12内から引き抜くことにより、水切りローラ31,32は矢印b方向に回転して花束Fの茎を下方に向けて扱くことになり、茎に付着していた水は水切りローラ31,32によって除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切花の茎に付着した水を除去する切花用水切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製や段ボール製の輸送容器に収容され、卸売業者等から販売店に輸送された切花は、販売店おいて水揚げバケツ等の陳列容器に収容された状態で陳列販売されることが一般的である。この容器内には切花の鮮度を保持するための水が溜められているが、陳列された容器が横倒しになった場合であっても、容器からの水の流出を防止するため、容器の底に向かうスリーブを蓋に形成するようにした陳列容器が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−105448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、陳列容器から水が流出し得る状況としては、容器が倒される状況に限られることはなく、通常の使用状態においても容器から水が流出してしまうことがある。たとえば、スーパーマーケット等の量販店において容器内の花束を購入する際には、購入者が花束を抜き取ってレジまで持ち歩くため、花束に付着していた水が店内の床に滴り落ちることになる。特に、量販店においては切花の販売量も多いため、切花から滴り落ちる水の量も増加する傾向にあり、床の清掃作業に手間を要することになっていた。
【0004】
また、陳列容器の周辺が常に濡れた状態になることもあり、この場合には、陳列された切花の見栄えも低下させる要因となっていた。特に、切花は贈り物として購入されることも多く、切花の見栄えを向上させることは売り上げ面においても重要となっている。
【0005】
本発明の目的は、切花の茎に付着した水を容易に除去することができる切花用水切り装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、切花用水切り装置の低コスト化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切花用水切り装置は、切花の茎に付着した水を除去する切花用水切り装置であって、上部に挿入口が形成される一方、下部に排水孔が形成されるハウジングと、前記ハウジング内に回転自在に収容され、相互に平行となる第1および第2の水切りローラとを有し、切花の茎を前記挿入口を介して前記水切りローラ間に案内することにより、前記水切りローラによって切花の茎から水を除去することを特徴とする。
【0008】
本発明の切花用水切り装置は、前記水切りローラは樹脂製発泡体により形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の切花用水切り装置は、前記排水孔に取り外し自在に接続され、除去された水を貯留する貯留タンクを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の切花用水切り装置は、切花用収容袋を掛けるフック部を前記ハウジングに形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の切花用水切り装置は、前記ハウジングに掲示板を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相互に平行となる第1および第2の水切りローラをハウジング内に回転自在に収容するようにしたので、水切りローラ間に切花の茎を案内することにより、切花の茎に付着していた水を除去することができる。これにより、切花から水が滴り落ちてしまうことがなく、店内の床などを清潔に保つことが可能となる。しかも、水を除去するために送風機などを組み込む必要がないため、極めて簡易な構造によって切花用水切り装置を構成することができ、水切り装置の低コスト化を達成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である切花用水切り装置10の使用状態を示す斜視図であり、図2は切花用水切り装置10を単体で示す斜視図である。
【0014】
図1に示す切花用水切り装置10(以下、水切り装置という)は、花束F(切花)の茎に付着した水を除去するために使用される装置である。スーパーマーケット等の販売店においては、花束Fが水揚げバケツBに収容された状態で陳列されており、水揚げバケツB内には花束Fの鮮度を保持するために水が溜められている。このような花束Fを購入する際には、購入者が花束Fを抜き取ってレジまで持ち歩くため、花束Fから滴り落ちる水によって店内の床を汚してしまうことになっていた。そこで、水揚げバケツBから花束Fを抜き取った後に、水切り装置10を用いて水切り処理を施すことにより、花束Fの茎に付着した水を除去するようにしている。
【0015】
以下、水切り装置10の構造について説明する。図1および図2に示すように、水切り装置10は、脚部11を備えたハウジング12を有しており、ハウジング12の上部には花束Fの茎が挿入される挿入口13が形成される一方、ハウジング12の下部には花束Fの茎から除去した水を排出する排水孔14が形成されている。また、脚部11には筒状のタンク保持部15が設けられており、ホース16を介して排水孔14に接続される貯留タンク17がタンク保持部15に収容されている。さらに、ハウジング12の背面には掲示板18が取り付けられる一方、ハウジング12の正面にはフック部19が形成されており、このフック部19には購入者が花束Fを持ち運ぶための切花収容袋20が掛けられている。
【0016】
このようなハウジング12の内部には、花束Fの茎から水を除去する水切り機構25が収容されている。続いて、ハウジング12内の水切り機構25について説明する。図3はハウジング12内の水切り機構25を上方から示す平面図であり、ハウジング12の上部に着脱自在に設けられる蓋26を取り外した状態で図示している。また、図4は図3の範囲aで水切り機構25を示す斜視図であり、図5は図3のb−b線に沿って水切り機構25を示す断面図である。
【0017】
図3〜図5に示すように、ハウジング12を形成する正面壁27と背面壁28とには、相互に平行となる2枚の支持板29の両端が溶接されており、それぞれの支持板29には2つの収容溝29aが形成されている。また、それぞれの支持板29には樹脂製の軸受板30が取り付けられており、軸受板30には支持板29の収容溝29aに重なる2つの軸受溝30aが形成されている。そして、水切りローラ31,32に組み付けられる回転軸33は、それぞれの軸受板30に回転自在に支持されており、2本の水切りローラ31,32は相互に平行となって配置されている。なお、樹脂製の軸受板30を採用することにより、水切りローラ31,32の回転抵抗の低減を図ることができ、水切りローラ31,32を滑らかに回転させることが可能となっている。
【0018】
また、図3および図4に示すように、水切りローラ31,32の両端にはスペーサ34が装着されており、水切りローラ31,32の軸受板30に対する接触が回避されている。さらに、軸受溝30aに収容される回転軸33の両端を挟み込むように、支持板29にはストッパ35が取り付けられており、ストッパ35によって回転軸33の抜けが防止されている。なお、図示する場合には、U字型の軸受溝30aに回転軸33が上方から収容されているが、図5に示すように、ハウジング12の蓋26には抑え板36が設けられており、ハウジング12に蓋26を取り付けたときには、抑え板36によって軸受溝30aの上方が閉じられ、回転軸33の脱落防止が図られている。
【0019】
このように、ハウジング12内に回転自在に収容される水切りローラ31,32は、樹脂材料を発泡させて得られる多孔質の樹脂製発泡体となっており、柔軟性に富んだ構造を有している。また、図示する場合には、水切りローラ31,32の外周面が滑らかに形成されているが、これに限られることはなく、外周面に多孔質の凹凸が現れるように形成しても良い。
【0020】
続いて、前述した水切り機構25を備える水切り装置10の使用手順について説明する。図6(A)および(B)は水切り機構25による水切り過程を示す説明図であり、(A)は挿入口13から花束Fを挿し込んだ状態を示し、(B)は挿入口13から花束Fを抜き出した状態を示している。
【0021】
まず、図6(A)に示すように、水揚げバケツBから取り出された花束Fは茎側から挿入口13に挿し込まれ、水切りローラ31,32は花束Fの茎を挟み込むように矢印a方向に回転する。なお、水切りローラ31,32の外周面は花束Fの茎に密接することになるが、水切りローラ31,32は柔軟性に富んでいるため、花束Fの茎を傷つけてしまうことはなく、花束Fの商品価値を低下させることもない。次いで、図6(B)に示すように、花束Fがハウジング12内から引き出されると、水切りローラ31,32は花束Fの茎を下方に向けて扱くように矢印b方向に回転することになり、茎に付着していた水は水切りローラ31,32によって除去されることになる。そして、茎から滴り落ちた水は、ハウジング12の下部に形成される排水孔14から排出され、ホース16を介して貯留タンク17に案内されるようになっている。なお、貯留タンク17は取り外し自在となっており、貯留タンク17が水で満たされた場合には、排水処理を容易に施すことが可能となっている。
【0022】
そして、図6(A)および(B)に示すこれらの作業を数回に渡って繰り返すことにより、茎に付着した水の大部分を取り除くことが可能となる。これにより、花束Fから水が滴り落ちてしまうことはなく、店内の床を清潔に保つことが可能となる。また、水を除去するために送風機などを組み込む必要がないため、極めて簡易な構造によって水切り装置10を構成することができ、水切り装置10の低コスト化を達成することができる。しかも、花束Fを挿入口13に出し入れするだけの簡単な作業によって花束Fから水を除去することが可能である。
【0023】
これまで説明したように、花束Fの茎に付着した水を水切りローラ31,32によって扱き落とすようにしているが、水の除去方法としては、これに限られることはなく、水切りローラ31,32によって水を吸収させるようにしても良い。たとえば、水切りローラ31,32の外周面に多孔質の凹凸が現れるように形成したり、水切りローラ31,32を柔軟性を有する繊維材料によって形成したりすることによって、水切りローラ31,32に水を吸収させることが可能となる。このような場合には、図6(A)に示すように、水切りローラ31,32間に茎を挿し込むだけで、茎に付着していた水を除去することが可能となり、水の除去性能を高めることもできる。なお、水切りローラ31,32に水を吸収させる場合には、水切りローラ31,32の脱水を行うようにすることが望ましい。続いて、脱水機能を組み込むようにした水切り装置40の構造について説明する。
【0024】
ここで、図7は本発明の他の実施の形態である水切り装置40を示す断面図であり、図5に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図7に示すように、ハウジング12内の支持板41には下方に伸びる支持片42が形成されており、この支持片42には回転自在に脱水ローラ43が支持されている。脱水ローラ43は金属材料や樹脂材料を用いて形成され、水切りローラ31,32に対して押し付けられるようになっている。つまり、脱水ローラ43によって水切りローラ31,32は絞られるようになっており、水切りローラ31,32を回転させることによって水切りローラ31,32を脱水することが可能となっている。なお、脱水ローラ43を押し付けることにより、水切りローラ31,32の回転抵抗が増大するため、脱水ローラ43を移動自在に組み込むことにより、脱水する際に必要に応じて脱水ローラ43を水切りローラ31,32に押し付けるようにしても良い。
【0025】
続いて、ハウジング12に設けられる掲示板18について説明する。図8は水切り装置10を後方側から示す斜視図である。図8に示すように、掲示板18はハウジング12の蓋26に対して着脱自在に設けられており、必要に応じて使用することができるようになっている。また、掲示板18は、略コ字状に折り曲げられた心材18aと、これにスポット溶接される板材18bとを有しており、図1および図2に示すように、板材18bの上部には挟み込み自在にホルダ18cが取り付けられている。このホルダ18cはばね力によって板材18bに押圧されるようになっており、販売情報等を記載した紙P等を挟み込んで掲示することが可能となっている。このように、ハウジング12に掲示板18を設けることにより、目立つ位置にPOP広告(購買時点広告)を打つことができ、花束Fの販売促進に寄与することができる。
【0026】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図示する場合には、水切りローラ31,32が相互に接触するように、その軸間距離が固定されているが、水切りローラ31,32の軸間距離を任意に設定可能な構造にしても良い。
【0027】
また、ハウジング12の排水孔14にホース16を介して貯留タンク17が接続されているが、必ずしも貯留タンク17を備える必要はなく、ハウジング12内を貯留タンクとして機能させるようにしても良い。この場合には、排水孔14にコックを設けることにより、使用時には排水孔14を閉じておくことが望ましい。
【0028】
なお、ハウジング12等はステンレスを用いて形成されているが、材料としてはステンレスに限られることはなく、アルミニウムやスチール等の他の金属材料であっても良く、樹脂材料等を用いてハウジング12等を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態である切花用水切り装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】切花用水切り装置を単体で示した斜視図である。
【図3】ハウジング内の水切り機構を上方から示す平面図である。
【図4】図3の範囲aで水切り機構を示す斜視図である。
【図5】図3のb−b線に沿って水切り機構を示す断面図である。
【図6】(A)および(B)は、水切り機構による水切り過程を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である切花用水切り装置を示す断面図である。
【図8】切花用水切り装置を後方側から示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 水切り装置(切花用水切り装置)
11 脚部
12 ハウジング
13 挿入口
14 排水孔
15 タンク保持部
16 ホース
17 貯留タンク
18 掲示板
18a 心材
18b 板材
18c ホルダ
19 フック部
20 切花収容袋
25 水切り機構
26 蓋
27 正面壁
28 背面壁
29 支持板
29a 収容溝
30 軸受板
30a 軸受溝
31 水切りローラ(第1の水切りローラ)
32 水切りローラ(第2の水切りローラ)
33 回転軸
34 スペーサ
35 ストッパ
36 抑え板
40 水切り装置(切花用水切り装置)
41 支持板
42 支持片
43 脱水ローラ
F 花束(切花)
B 水揚げバケツ
P 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切花の茎に付着した水を除去する切花用水切り装置であって、
上部に挿入口が形成される一方、下部に排水孔が形成されるハウジングと、
前記ハウジング内に回転自在に収容され、相互に平行となる第1および第2の水切りローラとを有し、
切花の茎を前記挿入口を介して前記水切りローラ間に案内することにより、前記水切りローラによって切花の茎から水を除去することを特徴とする切花用水切り装置。
【請求項2】
請求項1記載の切花用水切り装置において、前記水切りローラは樹脂製発泡体により形成されることを特徴とする切花用水切り装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の切花用水切り装置において、前記排水孔に取り外し自在に接続され、除去された水を貯留する貯留タンクを有することを特徴とする切花用水切り装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の切花用水切り装置において、切花用収容袋を掛けるフック部を前記ハウジングに形成することを特徴とする切花用水切り装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の切花用水切り装置において、前記ハウジングに掲示板を設けることを特徴とする切花用水切り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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