説明

切離機構およびこれを備えた水中切離装置

【課題】部品点数が少なく小型であるので安価であり、さらに駆動用のモータを簡便に制御することのできる切離機構およびこれを備えた水中切離装置を提供する。
【解決手段】切離機構1は、台座2の一面2a側に設けられたフック支持部材3に回転可能に一端部4aが軸支されたフック4と、台座2を貫通する孔部5に水密に嵌って回転自在なシャフト6と、台座2の他面2b側に固定されて、シャフト6に回転軸8aが連結されたモータ8とを備え、シャフト6は、その一端部6aの縁端の一部に、シャフト6の軸A方向に突出してシャフト6の回転と共にその軸Aの周りを移動するフック固定ピン7を有し、フック固定ピン7が台座2の一面2a側よりも突出して配置されており、フック固定ピン7が所定の位置でフック4の他端部4bを係止してフック4が固定され、モータ8の回転でフック固定ピン7が移動してフック4の固定が解除されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中であってもフックを開放させてロープ等を切り離すことのできる切離機構、およびこの切離機構を備えた水中切離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋の海流の流向や流速を測定したり、海洋や湖沼の水中の水質を調査したりするため、水中測定機器が用いられる。
【0003】
このような海洋等の水中の観測に用いられる水中測定機器は、浮力体が繋がれており、水中切離装置を介して錘に係留されて水底に沈められ、観測データを測定した後、水中切離装置を駆動させることにより錘を切り離し、浮力体により水上へ浮上させて、回収される。
【0004】
水中切離装置は、その底部に切離機構が備えられていて、この切離機構のフックにロープやチェーンが繋がれて錘に係留される。水中測定機器を回収する際には、切離機構のフックの固定を解除してロープ等を切り離す。このような切離機構が例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された位置検知切離し器(水中切離装置)は、切離し部(切離機構)を備えている。この切離機構は、開閉自在なフックと駆動機構とを備え、駆動機構の固定ピンが下部器体(台座)から突き出してフックのロック用穴に嵌ることでフックを固定する。ロープを切離す際には、ガス発生器の作動で固定ピンを台座内に引き込むことでロック用穴から固定ピンを引き抜いて、フックの固定を解除する。これにより、フックからロープ等が切り離される。
【0006】
この切離機構では、固定ピンを作動させる度にガス発生剤を交換する必要があり、その作業が煩雑であるので、電動式のモータで固定ピンを駆動することが行われている。この場合には、モータの回転運動を、固定ピンの直動運動に変換する必要がある。そのため、スラスト玉軸受で支持されたスクリューシャフトと、これに螺合するスライダーとを用いて、モータが平歯車を介してスクリューシャフトを回転させることでスライダーをシャフトの軸線方向に移動させる。スライダーには固定ピンを繋げておく。これにより、モータを正回転させることで固定ピンが台座から突出し、モータを逆回転させることで固定ピンが引き込まれる。
【0007】
しかしながら、このようにモータで固定ピンを駆動させる場合には、スクリューシャフトやスライダーなどの部材が必要になるため、部品点数が多くなると共に、機構全体が大型化してしまうという課題がある。また、このような大型化してしまう切離機構を水中切離装置に用いると装置が大型化してしまうので、耐圧構造が複雑化して高コストなものになってしまうという課題がある。
【0008】
また、固定ピンを往復移動させるためには、モータの回転方向を正回転および逆回転の両方に制御する必要があるので、モータ制御回路が複雑化すると共にモータ制御用のソフトウエアが複雑なものになるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3101430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、部品点数が少なく小型であって安価であり、さらに駆動用のモータの制御が簡便な切離機構およびこれを備えた水中切離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載された切離機構は、台座の一面側に設けられたフック支持部材に回転可能に軸支されたフックと、該台座の一面側から他面側に貫通する孔部に水密に嵌って回転自在なシャフトと、該台座の他面側に固定されて該シャフトに回転軸が連結されたモータとを備え、
該シャフトは、その一端部の縁端の一部に、該シャフトの軸方向に沿って突出して該シャフトの回転と共にその軸の周りを移動するフック固定ピンを有し、該フック固定ピンが該台座の一面側よりも突出して配置されており、
該フック固定ピンが所定の位置で該フックを係止して該フックが固定され、該モータの回転で該フック固定ピンが移動して該フックの固定が解除されることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された切離機構は、請求項1に記載に記載されたもので、前記シャフトが、玉軸受および/または樹脂製滑り軸受で回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された切離機構は、請求項2に記載に記載されたもので、前記玉軸受がラジアル玉軸受であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された切離機構は、請求項1から3のいずれかに記載に記載されたもので、前記フック固定ピンに係止される部分に樹脂製滑り部材が配されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載された水中切離装置は、請求項1〜4に記載のいずれかの切離機構が、密閉容器の壁部に、前記台座の一面側が該密閉容器の外側を向き、該台座の他面側が該密閉容器の内側を向いて水密に固定されて配されると共に、該密閉容器内には、切離指示信号が入力されたときに前記フック固定ピンを前記所定の位置から移動するように前記モータの回転を制御するモータ制御回路、および該モータ制御回路に前記切離指示信号を出力する指示回路を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の切離機構によれば、シャフトのフック固定ピンが、モータの回転によってシャフトの軸の周りを移動して所定の位置でフックを係止することでフックを固定して、モータの回転でフック固定ピンが移動してフックの固定を解除することにより、従来のようにモータの回転運動を直動運動に変換する必要がないため、部品点数を少なくすることができ、機構全体を小型化することができるので、ひいては安価な機構とすることができる。さらに、モータの回転方向を一方向にだけ回転制御すればよいので、従来のように両方向にモータの回転方向を制御する場合と比較して、モータの制御用の電気回路やソフトウエアを簡便なものにすることができる。
【0017】
本発明の切離機構によれば、台座の孔部には、シャフトを回転自在に支持する玉軸受および/または樹脂製滑り軸受が配されていることにより、モータの負荷を小さくすることができ、小型のモータを使用することができる。したがって、機構全体を一層小型化することができる。特に玉軸受、および樹脂製滑り軸受を併用してシャフトを支持することで、モータの負荷を一層軽減することができる。
【0018】
本発明の切離機構によれば、玉軸受がラジアル玉軸受であることにより、小型の玉軸受のため、機構全体を小型化することができる。従来のフック固定ピンを直動運動させる切離機構では、その直動運動に起因してシャフト軸線方向に大きな力が掛かってしまうため、シャフトの軸受にスラスト玉軸受を用いる必要があったが、本発明の切離機構では、フック固定ピンはシャフトと共に回転運動するだけであるのでシャフト軸線方向に大きな力がかからず、ラジアル玉軸受でシャフトを支持することができる。
【0019】
本発明の切離機構によれば、フックの他端部が円柱形状に形成されており、その円柱形状の外周に円筒形の樹脂製滑り部材が嵌められていることにより、フック固定ピンがこの樹脂製滑り部材の側面上を摺動するため、摩擦が小さくモータの負荷を小さくできるので、一層小型のモータを使用することができる。
【0020】
本発明の水中切離装置によれば、上記の本発明の切離機構を密閉容器の壁面に備えることにより、小型の水中切離装置とすることができる。特に大深海は高水圧であるので、装置が小型であるほど、高耐圧の容器の構成が簡便になるため、装置のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用する切離装置の使用状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明を適用する切離機構をフック側から観察した斜視図である。
【図3】本発明を適用する水中切離装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の切離機構の好ましい形態について、図1、2を参照しながら説明する。
【0024】
本発明の切離装置1は、図1に示すように、台座2、フック支持部材3、フック4、シャフト6、およびモータ8を備えている。この切離機構1は、水中切離装置や船の底部に取り付けられて、フック4の保持したロープ50等を水中で保持解除して切離すために用いられるものである。図2は、図1の切離装置1の下側から観察した状態を示す斜視図である。
【0025】
図2に示すように、台座2およびフック支持部材3は、一体的に形成されており、一例として、SCS13などのステンレス鋳鋼品である。台座2は、一例として鍔付きの円盤形状に形成されており、フック支持部材3は、台座2の鍔状の一面2a側に突設されて設けられている。台座2は、水中切離装置等への取付部材にもなっていて、その一面2a側が水中に位置し、その反対面の他面2b側が水中切離装置等の内空側に位置するようにボルトで取り付け可能な取り付け孔が形成されている。
【0026】
図1に示すように、このフック支持部材3の先端部に、フック4の一端部4aが支点ピン3aで軸支されていて、フック4が回転自在になっている。
【0027】
フック4は、一例として台座2と同様の金属製であり、その他端部4bが円柱形状に形成されている。この円柱形状部分4bの中心軸は、同図に示すように、フック4を固定した位置でシャフト6の中心軸Aと一致する位置関係で、フック4が設けられている。このようにフック4を固定した際に、フック支持部材3とフック4との間にはロープ50が通せるように隙間が形成されている。また、この円柱形状部分4bには、その外周に円筒形の樹脂製滑り部材13が嵌められている。
【0028】
樹脂製滑り部材13は、ブッシュとも呼ばれ、滑り抵抗の小さい硬質の樹脂素材で形成されている。樹脂製滑り部材13の素材としては、一例として、ポリアセタール、フッ素樹脂、およびポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。特に滑り性、耐久性に優れたポリアセタールを用いることが望ましい。
【0029】
なお、他端部4bの形状は、円柱を軸方向に沿って切断したような半円柱形状に形成してもよい。また、その半円柱形状部分の側面に樹脂製滑り部材を嵌めてもよい。この場合には、フック4の固定状態で、フック固定ピン7が他端部4bの円弧側壁部分に当たる向きで他端部4bを形成する。
【0030】
台座2には、その一面2a側から他面2b側に貫通する孔部5が形成されている。この孔部5にはシャフト6が水密に嵌って、シャフト6が回転自在になっている。
【0031】
シャフト6は、一例として、SUS303などのステンレス鋼で丸棒状に形成されている。このシャフト6には、その一端部6a(図1の下側の端部)の縁端の一部に、シャフト6の軸A方向に沿って突設させたフック固定ピン7が、シャフト6と一体的に形成されている。このフック固定ピン7は、シャフト6の回転と共に軸Aの周りを周回するように移動する。
【0032】
フック固定ピン7は、図1,2に示すように、フック支持部材3から遠ざかった位置(所定の位置)に移動したときに、フック6の樹脂製滑り部材13の外周側壁に当接することでフック4を係止し、シャフトの回転でフック固定ピン7が移動したときに、フック4の係止が解除される大きさおよび位置関係でシャフト6に形成されている。
【0033】
フック固定ピン7の形状は、特に限定されず、例えば丸棒状、角柱状、および壁板状の形状であってもよいが、樹脂製滑り部材13の外周側壁にちょうど壁面が当たる円弧壁板形状であることが望ましい。このようにフック固定ピン7を円弧壁板形状にすることで、フック4の開放方向(図1の右方向)に掛る荷重を、フック固定ピン7が面で支えるので、耐荷重を大きくすることができる。
【0034】
フック固定ピン7は、樹脂製滑り部材13の外周側壁に摺動して周回する径か、またはそれ以上の周回径で移動するように、シャフト6に形成されている。フック固定ピン7を前述した円弧壁板形状としたときには、樹脂製滑り部材13の外周側壁にちょうど摺動する周回径で移動するようにシャフト6に形成する。
【0035】
シャフト6には、その中途に2本の周回溝が形成され、各々の周回溝に一例としてニトリルゴム製のOリング21、および一例としてPTFE(ポリテトラフルオロチレン(4フッ化)樹脂)製のバックアップリング22が嵌めこまれている。このリング21,22が孔部5の内壁に密に当たることで、シャフト6が孔部5に水密に嵌って、孔部5からの水の侵入を防止する防水構造になっている。また台座2の側面に形成された周回溝には、同様の材質のOリング23およびバックアップリング24が嵌め込まれ、この切離機構1が水中切離装置等に水密に取り付け可能になっている。
【0036】
また、シャフト6は、台座2の他面2b側(図1の上側)に軸受固定部材11aで固定された玉軸受11によって、回転自在に支持されている。シャフト6には、フック4の荷重がシャフト6の横方向に掛るため、玉軸受11は小型で安価なラジアル玉軸受を用いることができる。シャフト6には図1の下側から上側に向かう水圧が掛るが、シャフト6の一端部6aの面積は小さいため、ラジアル玉軸受を用いても、そのスラスト方向の耐荷重内で充分使用可能である。ラジアル玉軸受は玉のサイズの大きいものの方がスラスト方向の耐荷重が大きいため、使用する水圧に耐えられる大きな玉サイズのラジアル玉軸受を用いるが、背景技術に記載した切離機構に用いるスラスト玉軸受よりも小型の形状のラジアル玉軸受を使用することができる。
【0037】
さらに、シャフト6は、孔部5内の台座2の一面2a側に設けられた円筒形の樹脂製滑り軸受12に嵌って回転自在に支持されている。シャフト6は、樹脂製滑り軸受12の円筒の内側に、低い滑り抵抗で摺動する。樹脂製滑り軸受12は、ブッシュとも呼ばれ、前述した樹脂製滑り部材13と同様の素材で形成されている。
【0038】
なお、玉軸受11および樹脂製滑り軸受12のいずれか一方だけを配してもよい。また、玉軸受11を複数配したり、樹脂製滑り軸受12を複数配したりしてもよい。
【0039】
シャフト6の他端部6b側(図1の上側)には、その軸Aと同軸に、モータ8の回転軸8aが連結部材9で連結されている。このモータ8は、モータ取付板を支持する六角支柱10および軸受固定部材11aを介して台座2の他面2b側に固定されている。
【0040】
モータ8は、一例として、DC(直流)モータである。このモータ8に、非図示のモータ制御用の電気回路が配線を介して接続されて、回転軸8aの回転が制御される。この切離機構1は、モータ8の回転によるシャフト6の回転でフック固定ピン7を移動させて、フック4の固定および固定解除を行えるものである。
【0041】
次に、切離機構1の動作について説明する。
【0042】
フック4を固定する際には、まず、モータ8を駆動して回転軸8aを回転させ、それに連結されたシャフト6を回転させることで、図1の右側円枠内に図示したように、フック固定ピン7をフック支持部材3に近接する位置、つまり、フック4の回転に干渉しない位置(固定解除位置)に移動させる。
【0043】
この状態でフック4を同図に実線で示した固定位置に持ち上げてから、モータ8を駆動して、フック固定ピン7を同図に示すように、フック支持部材3から最も遠ざかる位置、つまり、樹脂製滑り部材13の取り付けられたフック4の他端部4aを係止する所定の位置(固定位置)に移動させる。
【0044】
以上で、フック4が固定される。フック4が固定された状態で、フック支持部材3とフック4との間に、ロープ50を通す。なお、先にロープ50をフック支持部材3とフック4との間に通してから、フック固定ピン7を移動させてフック4を固定してもよい。
【0045】
ロープ50を切り離す際には、モータ8を駆動させてフック固定ピン7を、同図の右側円枠内に記載したように、解除位置に移動させる。この際に、シャフト6は、軸受11および樹脂製滑り軸受12によって支持されているため、フック4開き方向への負荷がかかっても少ない抵抗でスムーズに回転する。さらに、フック4の他端部4aには樹脂製滑り部材13が嵌められているので、フック固定ピン7が少ない抵抗でスムーズに樹脂製滑り部材13側面を摺動して移動する。
【0046】
以上により、フック4の固定が解除されて、同図に二点鎖線で示すように、フック4が支点ピン3aを軸に下側(図の下側)に回転する。このため、フック4の保持していたロープ50が、フック4から外れて切り離される。
【0047】
次に、この切離機構1を備えた水中切離装置について図3を参照しつつ説明する。なお、すでに説明した構成と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本発明の水中切離装置40は、密閉容器41の底壁部(図の下部)に、切離機構1が配されたものである。密閉容器41は、金属で形成されており、略円筒形状の側壁部41aの上部(図の上部)側が、上壁部41bで蓋をされて水密に六角穴付ボルトで固定されて構成されている。
【0049】
切離機構1は、その密閉容器41の底部に、台座2の一面2a側が密閉容器41の外側を向き、台座2の他面2b側が密閉容器41の内側を向いて水密に六角穴付ボルトで固定されている。
【0050】
密閉容器41の内部には、モータ制御回路45、送受信回路46、および電源部48が配されている。また、上壁部41bには、超音波トランスデューサ47が密閉容器41の内部側と電気接続可能に、密閉容器41の外部側に突出して固定されている。
【0051】
モータ制御回路45は、切離機構1のモータ8に電気配線で接続されており、モータ8の回転を制御するものである。モータ制御回路45は、CPU(中央処理装置)、このCPUの動作用のソフトウエアが記録された半導体不揮発性メモリ、およびモータ駆動用の電気回路(何れも非図示)を有している。このモータ制御回路45は、固定指令信号が入力されたときに、モータ8を駆動して、フック固定ピン7をフック4の固定位置に移動させ、フック切離指示信号が入力されたときに、モータ8を駆動して、フック固定ピン7をフック4の固定解除位置に移動させる。その回路構成やソフトウエアは、周知の回路やソフトウエアを用いることができる。
【0052】
このモータ制御回路45は、送受信回路46に接続されている。送受信回路46は、超音波トランスデューサ47に電気配線で接続されて、例えば図外の船に設けられた超音波通信機器と超音波によって信号を送受可能なものである。送受信回路46および超音波トランスデューサ47は、本発明における指示回路に相当し、船上の超音波通信機器から送信された固定指令信号および切離指令信号を受信してモータ制御回路45に固定指示信号および切離指示信号を与えるものである。
【0053】
電源部48は、回路45,46、超音波トランスデューサ47、およびモータ8の各々に作動用の電力を供給するものであり、非図示の電池を有している。回路45、46、超音波トランスデューサ47、および電源部48は、公知の種々のものを用いることができる。
【0054】
また、上壁部41bには、非図示の水中測定機器とロープ等で繋ぐための固定具49が設けられている。
【0055】
この水中切離装置40は、次のように動作する。
【0056】
水中切離装置40は、切離機構1の固定状態のフック4(図3の状態)にロープ等で錘(非図示)が接続され、固定具49に浮力体の繋がれた水中測定機器(非図示)が接続されて、水底に沈められて係留される。
【0057】
船上の超音波通信機器から切離指令信号が超音波で送信されたときに、超音波トランスデューサ47がその超音波を受信して電気信号に変換し、送受信回路46が受信した電気信号を復調して、その内容が切離指令信号であることを判別する。これにより、送受信回路46は、モータ制御回路45に切離指示信号を出力する。モータ制御回路45は、切離指示信号が入力されると、モータ8の回転軸8aを半回転だけゆっくりとした速度(一例として、0.26回毎秒(rps))で滑らかに回転させる。シャフト6を支持するラジアル玉軸受11は、早い回転数で回転させるほどスラスト方向の耐荷重が小さくなるので、ゆっくりとした速度で回転させることが望ましい。
【0058】
回転軸8aの回転により、フック固定ピン7が固定解除位置に移動することで、フック4が固定解除され、ロープが切り離される。
【0059】
なお、船上で水中切離装置40のフック4にロープを固定する際には、フック4を固定位置に持ち上げてから、船上の超音波通信機器から固定指令信号を送信させる。これにより、超音波トランスデューサ47および送受信回路46がこの固定指令信号を受信して、モータ制御回路45に固定指示信号を出力する。モータ制御装置45は、固定指示信号が入力されると、モータ8の回転軸8aをゆっくりとした速度で半回転だけ回転させ、フック固定ピン7をフック4の固定位置に移動させる。
【0060】
フック4の固定および固定解除の際には、モータ制御回路45は、モータ8の回転軸8aを、いずれの方向に回転させてもよい。この場合、一方向への回転でフック4の固定および固定解除を行うと、モータ8の制御が簡便になるので、モータ制御回路45の電気回路やソフトウエアを簡便なものにすることができるので望ましい。なお、ソフトウエア等は複雑になるが、フック4の固定の際と、固定解除の際との回転軸8aの回転方向を逆方向に制御してもよい。
【0061】
なお、上記の水中切離装置40では、切離機構1が密閉容器41の底壁部全体を構成していたが、切離機構1よりも大きな底面壁板の一部に切離機構1を配してもよい。
【0062】
また、モータ制御回路45に切離指示信号を与える指示回路は、一例として、24時間、1週間、3カ月または1年などの所定の時間の経過で切離指示信号を出力するタイマ回路であってもよい。
【0063】
さらに、水中切離装置40の外壁に防水性の操作用スイッチ(指示回路の他の一例)を配して、このスイッチの接点信号(固定指示信号および切離指示信号の一例)で、フック固定ピン7が固定位置、および固定解除位置に位置するように、モータ制御回路45がモータ8を制御する構成とすることもできる。この場合、陸上や船上で切離機構1にロープ等を繋ぐ作業を簡便に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1は切離機構、2は台座、2aは台座の一面、2bは台座の他面、3はフック支持部材、3aは支点ピン、4はフック、4aはフックの一端部、4bはフックの他端部、5は孔部、6はシャフト、6bはシャフトの一端部、6bはシャフトの他端部、7はフック固定ピン、8はモータ、8aは回転軸、9は連結部材、10は六角支柱、11は玉軸受、11aは軸受固定部材、12は樹脂製滑り軸受、13は樹脂製滑り部材、21,23はOリング、22,24はバックアップリング、40は水中切離装置、41は密閉容器、41aは密閉容器の側壁部、41bは密閉容器の上壁部、45はモータ制御回路、46は送受信回路、47は超音波トランスデューサ、48は電源部、49は固定具、50はロープ、Aはシャフトの中心軸である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座の一面側に設けられたフック支持部材に回転可能に軸支されたフックと、該台座の一面側から他面側に貫通する孔部に水密に嵌って回転自在なシャフトと、該台座の他面側に固定されて該シャフトに回転軸が連結されたモータとを備え、
該シャフトは、その一端部の縁端の一部に、該シャフトの軸方向に沿って突出して該シャフトの回転と共にその軸の周りを移動するフック固定ピンを有し、該フック固定ピンが該台座の一面側よりも突出して配置されており、
該フック固定ピンが所定の位置で該フックを係止して該フックが固定され、該モータの回転で該フック固定ピンが移動して該フックの固定が解除されることを特徴とする切離機構。
【請求項2】
前記シャフトが、玉軸受および/または樹脂製滑り軸受で回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の切離機構。
【請求項3】
前記玉軸受がラジアル玉軸受であることを特徴とする請求項2に記載の切離機構。
【請求項4】
前記フックには、前記フック固定ピンに係止される部分に樹脂製滑り部材が配されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切離機構。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のいずれかの切離機構が、密閉容器の壁部に、前記台座の一面側が該密閉容器の外側を向き、該台座の他面側が該密閉容器の内側を向いて水密に固定されて配されると共に、該密閉容器内には、切離指示信号が入力されたときに前記フック固定ピンを前記所定の位置から移動するように前記モータの回転を制御するモータ制御回路、および該モータ制御回路に該切離指示信号を出力する指示回路を備えていることを特徴とする水中切離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63159(P2011−63159A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216935(P2009−216935)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】