説明

刈取装置

【課題】畦際に植付けされた穀稈の刈り残しを少なくし、刈取作業の能率を高める。
【解決手段】穀稈掻込移送装置(12)及び刈刃装置(13)を備えた刈取装置(3)の前部に複数の引起装置(7,8)を左右方向に並べて設け、該複数の引起装置(7,8)のうちの右端に位置する引起装置(8)の前側下部に補助引起装置(9)を配置し、該補助引起装置(9)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、該補助引起装置(9)の前側に分草体(6b)を配置し、該分草体(6b)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、前記補助引起装置(9)と分草体(6b)とを一体で左右回動操作する操作レバー(24a)を刈取装置(3)の上部に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等に設ける刈取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバイン等の刈取装置には、その前部に複数の引起装置を左右方向に並べて設け、該引起装置の前側に分草体を設けている。
また、この複数の引起装置のうちの右端に位置する引起装置の前側下部に補助引起装置を配置を設けたものがある。
【0003】
このような技術として、特許文献1には、引起装置の下部前側に、この引起装置の引起しラグの移動経路と略平行で、且つ、該引起装置の前方下方から穀稈引起経路へ突出しながら楕円形状に作用するラグを有する補助引起装置を設ける技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭51−67229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穀稈の植付け位置が悪く、畦際に植付けされた穀稈があった時には、この畦際の穀稈を分草及び引起しできないことがあり、この分草及び引起しされなかった穀稈は、刈刃装置で刈取りされずに、最悪の場合は、走行装置の走行クローラで踏み付けられて収穫できないことがあり、このために穀粒ロスが発生することがあったが、これらの問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
即ち、穀稈掻込移送装置(12)及び刈刃装置(13)を備えた刈取装置(3)の前部に複数の引起装置(7,8)を左右方向に並べて設け、該複数の引起装置(7,8)のうちの右端に位置する引起装置(8)の前側下部に補助引起装置(9)を配置し、該補助引起装置(9)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、該補助引起装置(9)の前側に分草体(6b)を配置し、該分草体(6b)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、前記補助引起装置(9)と分草体(6b)とを一体で左右回動操作する操作レバー(24a)を刈取装置(3)の上部に設けたことを特徴とする刈取装置としたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によると、右端の引起装置8の前側下部に配置した補助引起装置9とこの補助引起装置9の前側に配置した分草体6bとを畦側に回動させてこの畦際の植立穀稈を刈巾内に掻き込んで刈り取ることができ、刈取作業の能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の前部には、立毛穀稈を刈取りする刈取装置3を設けると共に、該走行車台2の上側面には、該刈取装置3で刈取りした穀稈の供給を受けて、脱穀する脱穀装置4を載置している。該脱穀装置4の右横側で該走行車台2の上側面には、該脱穀装置4から脱穀済みで、選別済みの穀粒の供給を受けて、一時貯留する穀粒貯留タンク4aを載置している。
【0008】
前記刈取装置3の前部には、刈取りする穀稈を分離する右端側に左右回動移動する右分草体6bと、左端側に左右へ固定式の左分草体6aとを設け、又、畦際側の穀稈を引起しする、該刈取装置3の右端側に右側引起装置8と、該右側引起装置8の左側に複数の引起装置7と、該右側引起装置8の前側下部に畦際側の引起しされなかった穀稈を再度引起しする横補助引起装置9とを設けると共に、右端側に左右回動移動する右分草体6bと、左端側に左右へ移動しない固定方式の左分草体6aとを設け、該右側引起装置8の左右移動に連動して、該右分草体6bを左右移動自在に設けている。該引起装置7と、該右側引起装置8と、該横補助引起装置9と、該左・右分草体6a、6b等を主に図示して説明する。
【0009】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図1で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ10aを張設した走行装置10を配設し、該走行車台2の上側面に脱穀装置4を載置している。該走行車台2の前方部の刈取装置3で立毛穀稈を刈取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置4のフィードチェン11aと、挟持杆11bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済みの穀粒は、該脱穀装置4の右横側へ配設した穀粒貯留タンク4a内へ供給され、一時貯留される。
【0010】
前記走行車台2の前方部には、図1で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド5、及び左・右分草体6a、6bと、立毛穀稈を引起す各引起装置7と、右側引起装置8と、横横補助引起装置9とにより、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置12の各掻込装置12aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置13と、刈取りされた穀稈を挟持移送して、該脱穀装置4のフィードチェン11aと、挟持杆11bとへ受渡しする穀稈掻込移送装置12の根元・穂先移送装置14・15等からなる刈取装置3を設けている。該刈取装置3は、油圧駆動による伸縮シリンダ16により、土壌面に対して昇降する構成である。
【0011】
前側刈取装置3の前方部には、図1〜図4で示すように、畦際側の穀稈を引起しする右端側には、右側引起装置8と、該右側引起装置8の左側には、穀稈を引起しする複数の引起装置7と、該右側引起装置8の前側下部には、畦際側の引起しされなかった穀稈を再度引起しする横補助引起装置9とを設けている。
【0012】
又、左右両側の該引起装置7と、該右側引起装置8との外側には、左側の該引起装置7の左外側には、左右へ回動移動しない固定方式の左分草体6aを設けると共に、該右側引起装置8の右外側には、左右へ回動移動自在な回動方式の右分草体6bを設けている。該右側引起装置8の左右移動に連動して、該右分草体6bを左右移動自在に設けた構成である。
【0013】
前記右側引起装置8の内側には、内伝動装置8aを設け、この内伝動装置8aの前側下部には、支持パイプ杆8bを設け、この支持パイプ杆8bの先端部には、前・後分草パイプ8c、8dを軸支して設け、前分草パイプ8cの前端部には、正面側、及び側面側共に、略三角形状の分草板8eを設けている。
【0014】
前記内伝動装置8aの右端部側の先端部には、前記横補助引起装置9を設けている。該横補助引起装置9と、該各引起装置7と、該右側引起装置8とには、箱形状の各引起ケースに内装した引起チェン8jに所定間隔に複数個の引起ラグ8mを装着して設け、これら各引起チェン8jの各引起ラグ8mの回転駆動により、立毛穀稈は引起しされる構成である。該横補助引起装置9は、図1、及び図2で示すように、右側端の右側引起装置8の後側に設けた調節具9aを設けたリモコン調節レバー24aの操作により、このリモコン調節レバー24aと、該内装伝動装置8aに設けた調節具9aとを、ワイヤ9bで接続させて、左右位置を調節する構成である。
【0015】
畦際側へ植付けされた穀稈を引起しする、前記刈取装置3の右端側の右側引起装置8と、該右側引起装置8の左側に穀稈を引起しする複数の引起装置7と、該右側引起装置8の前側下側部に畦際側の引起しされなかった穀稈を再度引起しする横補助引起装置9とを設けている。又、右端側に左右回動移動する右分草体6bと、左端側の固定方式の左分草体6aとを設け、該右側引起装置8の左右移動に連動して、該右分草体6bを左右移動自在に設けたことにより、畦際側の穀稈を刈り残しなく刈取りが可能になる。又、分草巾を変更時でも、該右側引起装置8を活用することができる。
【0016】
前記横補助引起装置9と、該リモコン調節レバー24aの操作で左右移動する右側の該右分草体6bとは、一体に形成した構成である。
これにより、前記横補助引起装置9は、該右分草体6bの左右移動の構成を容易にすることができる。
【0017】
図2で示すように、前記内伝動装置8aの短部側に軸支内装された短用軸8fと、支持パイプ8bに軸支内装された長用軸8hとは、前後方向に同じ線上に軸支した構成である。
【0018】
これにより、前記横補助引起装置9は、リモコン方式の前・後分草パイプ8c、8dの左右移動の構成を容易にすることができる。
図3で示すように、前記引起装置7の引起チェン8jに所定間隔で装着した、引起ラグ8mの回転外周の下側先端部位置と、横補助引起装置9の引起チェン9dに所定間隔で装着した補助引起ラグ9eの回転外周の下側先端部位置とは、略同じ高さ位置にした構成である。又、図2で示すように、該右側引起装置8の該引起ラグ8mの周速と、該横補助引起装置9の該補助引起ラグ9e先端の周速とを略同等とした構成である。
【0019】
これにより、両者の引起し性能を安定させることができる。
前記横補助引起装置9の外側向きの「拡大」に連動して、伝動クラッチ9cが「ON」状態になる構成である。
【0020】
これにより、分草巾拡大時に確実に、引起し性能の向上を図ることができる。
前記横補助引起装置9の「縮小」に連動して、伝動クラッチ9cが「OFF」状態になる構成である。
【0021】
これにより、分草巾縮小時は、前記横補助引起装置9は必要なく、自動的に伝動クラッチ9cが「OFF」し、耐久性向上となり、又、騒音低減することができる。
図4で示すように、前記刈取装置3へ入力する回転速度を変速して入力するミッションケース21には、油圧式無段変速装置25を設けると共に、この油圧式無段変速装置25には、主変速レバー25aを設けて、該油圧式無段変速装置25を変速して、ミッションケース21へ入力して、該刈取装置3、及び走行装置10の走行速度を変速する構成である。
【0022】
前記走行装置10の車速に、該横補助引起装置9の回転数が同調する構成である。又、該横補助引起装置9の回転数(N)と、走行車速(V)との関係は、図5で示すように構成している。
【0023】
これにより、前記各引起装置7と、該右側引起装置8と、該横補助引起装置9等とにより、引起しされる穀稈の引起し性能が向上する。
前記刈取装置3の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆17aの上端部に設ける支持パイプ杆を走行車台2の上側面に設けた支持装置で回動自在に支持させている。該伸縮シリンダ16を作動させると支持杆17aと共に、下端部には、下支持パイプ杆17bを設けている。刈取装置3が上下回動する構成である。
【0024】
前記刈取装置3の穀稈掻込移送装置12によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置4への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサを設けた構成である。
【0025】
前記穀粒貯留タンク4a側の前部には、図1で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う制御装置18と、操縦席19とを設け、この操縦席19の下側にエンジン20を載置している。
【0026】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース21内の伝動機構21aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ21bを設けている。
【0027】
前記穀粒貯留タンク4a内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク4aの後側には、縦移送螺旋を内装した排出支持筒を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋23を伸縮自在に内装した排出オーガ22を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバイン前部の側面図
【図2】右端の引起装置と補助引起装置との関係を示す説明用側面図
【図3】右端の引起装置と補助引起装置との配置関係を示す説明用正面図
【図4】刈取装置の伝動構造を示す説明図
【図5】横補助引起装置の回転数(N)と走行車速(V)との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0029】
3 刈取装置
6b 右分草体(分草体)
7 引起装置
8 右側引起装置(引起装置)
9 横補助引起装置(補助引起装置)
12 穀稈掻込移送装置
13 刈刃装置
24a リモコン調節レバー(操作レバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈掻込移送装置(12)及び刈刃装置(13)を備えた刈取装置(3)の前部に複数の引起装置(7,8)を左右方向に並べて設け、該複数の引起装置(7,8)のうちの右端に位置する引起装置(8)の前側下部に補助引起装置(9)を配置し、該補助引起装置(9)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、該補助引起装置(9)の前側に分草体(6b)を配置し、該分草体(6b)を刈取装置(3)の機枠側に左右回動自在に取り付け、前記補助引起装置(9)と分草体(6b)とを一体で左右回動操作する操作レバー(24a)を刈取装置(3)の上部に設けたことを特徴とする刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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